(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記照射手段は、前記特定車両のそれぞれ異なる停止位置に対応すべく、各停止位置に合致する前記プラットホームの縁に沿って前記ライン状の光を照射可能な範囲で複数配置され、
前記制御手段は、前記各停止位置ごとに合致する前記プラットホームの縁に沿って、当該位置に対応した前記照射手段にライン状の光を照射させることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
前記制御手段は、駅に対する列車の接近を検知する検知手段からの情報に応じて、前記照射手段による照射を開始する前記所定のタイミングを判断することを特徴とする請求項1,2または3に記載の照明システム。
前記制御手段は、列車の運行を集中的に管理する運行管理システムからの情報に応じて、前記列車における前記特定車両の種類と停止位置を判断することを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の照明システム。
前記照射手段は、前記ライン状の光を前記特定車両の停止位置に合致する前記プラットホームの縁のうち、乗車口の前に位置する一部に照射することを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の照明システム。
前記制御手段は、前記照射手段によるライン状の光を点滅またはスクロールを含む動的に照射させることで、前記プラットホームに列車が到着することを報知することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の照明システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1,2に記載された従来の技術では、いずれも文字や画像等で表現された各種情報を投影するための手段と、投影された各種情報を実際に表示するための手段とを必須の構成として組み合わせて成る。よって、装置全体として構成要素が多く複雑で高価なものとなり、設置する作業の工数も多く煩雑であり、採用するには多大なコストを強いられるという問題があった。
【0009】
特に、各種情報を表示するための表示部は、文字や画像の表示を前提とするため、誰もが見やすい表示とするには相当な大きさの表示領域が必要となる。かかる表示部を駅構内の限られたスペース内に設置することは容易でなく、なおさら設置スペースの確保や設置する作業に苦労するという問題もあった。また、文字等による表示では、どうしても直感的に分かり易い情報の伝達が難しいという問題もあった。
【0010】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、構成が簡易であるだけでなく、設置作業や設置スペースの確保も容易であり、様々な車両編成等に応じて異なる特定車両の停止位置を、誰もが直感的に分かり易い形態で容易に知らせることができる照明システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]駅のプラットホーム(1)にて、到着する列車(2)における特定車両(3,4)の停止位置を案内するための照明システム(10)において、
前記プラットホーム(1)の縁に沿って延びるライン状の光
を照射可能な照射手段(20,20A)と、
前記照射手段(20,20A)による照射を制御する制御手段(30,30A)と、を備え、
前記制御手段(30,30A)は、前記プラットホーム(1)に列車(2)が到着する時の所定のタイミングで、該列車(2)の特定車両(3,4)の停止位置に合致する前記プラットホーム(1)の縁に沿って、前記照射手段(20,20A)に前記ライン状の光を前記特定車両(3,4)に対応した任意の発光色で照射させる
と共に、前記ライン状の光の一部を前記特定車両(3,4)の側壁にも照射させることを特徴とする照明システム(10)。
【0012】
[2]前記照射手段(20,20A)は、前記特定車両(3,4)のそれぞれ異なる停止位置に対応すべく、各停止位置に合致する前記プラットホーム(1)の縁に沿って前記ライン状の光を照射可能な範囲で複数配置され、
前記制御手段(30,30A)は、前記各停止位置ごとに合致する前記プラットホーム(1)の縁に沿って、当該位置に対応した前記照射手段(20,20A)にライン状の光を照射させることを特徴とする前述の[1]に記載の照明システム(10)。
【0013】
[3]前記照射手段(20,20A)は、複数の発光色のうち選択された任意の発光色で前記ライン状の光を照射可能であり、
前記制御手段(30,30A)は、前記特定車両(3,4)の種類に対応した任意の発光色で前記照射手段(20,20A)にライン状の光を照射させることを特徴とする前述の[1]または[2]に記載の照明システム(10)。
【0014】
[4]前記制御手段(30,30A)は、駅に対する列車(2)の接近を検知する検知手段からの情報に応じて、前記照射手段(20,20A)による照射を開始する前記所定のタイミングを判断することを特徴とする前述の[1],[2]または[3]に記載の照明システム(10)。
【0015】
[5]前記制御手段(30,30A)は、列車(2)の運行を集中的に管理する運行管理システムからの情報に応じて、前記列車(2)における前記特定車両(3,4)の種類と停止位置を判断することを特徴とする前述の[1],[2],[3]または[4]に記載の照明システム(10)。
【0017】
[
6]前記照射手段(20,20A)は、前記ライン状の光を前記特定車両(3,4)の停止位置に合致する前記プラットホーム(1)の縁のうち、乗車口の前に位置する一部に照射することを特徴とする前述の[1],[2],[3],[4
]または[
5]に記載の照明システム(10)。
【0018】
[
7]前記制御手段(30,30A)は、前記照射手段(20,20A)によるライン状の光を点滅またはスクロールを含む動的に照射させることで、前記プラットホーム(1)に列車(2)が到着することを報知することを特徴とする前述の[1],[2],[3],[4],[5
]または[
6]に記載の照明システム(10)。
【0019】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の照明システム(10)によれば、照射手段(20,20A)は制御手段(30,30A)の制御により、プラットホーム(1)に列車(2)が到着する時の所定のタイミングで、列車(2)の特定車両(3,4)の停止位置に合致するプラットホーム(1)の縁に沿って、特定車両(3,4)に対応した任意の発光色でライン状の光を照射する。
【0020】
これにより、列車(2)の到着を待つ利用客は、プラットホーム(1)の縁に沿って照らされたライン状の光の位置を見るだけで、特定車両(3,4)の停止位置を容易に知ることができる。また、ライン状の光の色によって、例えば、緑の光であればグリーン車、ピンクの光であれば女性専用車である等の識別も容易となる。従って、本照明システム(10)によれば、特定車両(3,4)の停止位置や種類を、誰もが直感的に分かり易い形態で容易に知らせることができる。
さらに、照射手段(20A)は、ライン状の光を特定車両(3,4)の停止位置に合致するプラットホーム(1)の縁に沿って照射すると共に、ライン状の光の一部が前記特定車両(3,4)の側壁にも照射されるので、特定車両(3,4)の側壁自体も照らし出す。これにより、特定車両(3,4)の停止位置をいっそう分かり易く目立たせることができる。特に、プラットホーム(1)上が混雑している場合は、プラットホーム(1)の縁を視認しにくいので、なおさら分かりやすい案内となる。
【0021】
このような照明システム(10)では、照射手段(20,20A)から照射されたライン状の光を受光して表示するための特別な構成は必要なく、単にプラットホーム(1)の縁に沿って照らす
と共に、特定車両(3,4)の側壁を照らすことができれば足りる。よって、駅構内の外部の適所に設置すべき構成は、基本的には照射手段(20,20A)だけであり、これは通常の駅構内の照明器具と同様に比較的簡易なものであり、設置スペースの確保や設置する作業も容易となる。従って、本照明システム(10)によれば、その採用に伴うコストを大幅に抑えることが可能となる。
【0022】
前記ライン状の光の具体的な発光色は、一種類の特定車両(3,4)に予め対応付けた一色のみに限らず、特定車両(3,4)が複数種類ある場合には、その数に応じて予め複数色を用意すれば良い。なお、照射手段(20,20A)によるライン状の光の消灯のタイミングは、列車(2)がプラットホーム(1)を発車した後の所定のタイミングで適宜定めれば良い。
【0023】
前記[2]に記載の照明システム(10)によれば、照射手段(20,20A)は、特定車両(3,4)のそれぞれ異なる停止位置に対応すべく、各停止位置に合致するプラットホーム(1)の縁に沿って前記ライン状の光を照射可能な範囲で複数配置する。ここで各停止位置とは、同一の列車(2)中における異なる種類の特定車両(3,4)のほか、異なる列車(2)間における同一種類の特定車両(3,4)の停止位置が異なる場合も含む。
【0024】
例えば、同一の列車(2)中にグリーン車と女性専用車の両方を特定車両(3,4)として含む場合がある。また、車両編成の違い等により、グリーン車や女性専用車の位置が列車(2)ごとに異なる場合もある。これらの特定車両(3,4)が停止する可能性のある全ての箇所を少なくともカバーできるように、予め複数の照射手段(20,20A)を配置しておく。
【0025】
そして、制御手段(30,30A)は、前記各停止位置ごとにプラットホーム(1)の縁に沿って、当該位置に対応した照射手段(20,20A)に前記ライン状の光を照射させることになる。これにより、照射手段(20,20A)による案内は、固定的な位置の表示だけに限られることなく、様々な特定車両(3,4)の停止位置の変化にも対応することができる。
【0026】
前記[3]に記載の照明システム(10)によれば、照射手段(20,20A)は、複数の発光色のうち選択された任意の発光色で前記ライン状の光を照射可能なものとする。そして、制御手段(30,30A)は、特定車両(3,4)の種類に対応した任意の発光色で前記照射手段(20,20A)にライン状の光を照射させる。これにより、照射手段(20,20A)には、必ずしも複数色の光源を別々に用意する必要はなく、複数の発光色を照射可能な1つの光源で、特定車両(3,4)の種類に応じた発光色の選択が可能となり、よりコストを低減することができる。
【0027】
前記[4]に記載の照明システム(10)によれば、制御手段(30,30A)は、駅に対する列車(2)の接近を検知する検知手段からの情報に応じて、前記照射手段(20,20A)による照射を開始する所定のタイミングを判断する。これにより、実際に列車(2)が駅に到着する前の最適なタイミングを容易に定めることができ、かかるタイミングで前記照射手段(20,20A)による照射を開始することができる。
【0028】
前記[5]に記載の照明システム(10)によれば、制御手段(30,30A)は、列車(2)の運行を集中的に管理する運行管理システムからの情報に応じて、列車(2)における特定車両(3,4)の種類と停止位置を判断する。これにより、実際に列車(2)が駅に到着する前でも、当該列車(2)にある特定車両(3,4)の種類と停止位置を正確かつ容易に判断することができ、より確実な案内が可能となる。
【0030】
前記[
6]に記載の照明システム(10)によれば、照射手段(20,20A)は、ライン状の光を特定車両(3,4)の停止位置に合致するプラットホーム(1)の縁のうち、乗車口の前に位置する一部にのみ照射する。このように、乗車口の前の一部だけピンポイントで照射するようにすれば、列車(2)接近時にドア位置を案内することにもなり、また、乗降時には利用客の足元の注意喚起を促すことができる。
【0031】
前記[
7]に記載の照明システム(10)によれば、照射手段(20,20A)によるライン状の光を点滅またはスクロールを含む動的に照射させることで、プラットホーム(1)に列車(2)が到着することを報知する。これにより、特定車両(3,4)の停止位置の案内の加えて、列車(2)の到着に対する注意を喚起することができる。なお、ライン状の光を動的に照射するタイミングは、列車(2)が到着する直前等と適宜定めれば良く、通常のライン状の光の継続的な照射の途中で一時的に切り換えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る照明システムによれば、列車の特定車両の停止位置に合致するプラットホームの縁に沿ってライン状の光を照射することにより、構成が簡易であるだけでなく、設置作業や設置スペースの確保も容易であり、様々な車両編成等に応じて異なる特定車両の停止位置を、誰もが直感的に分かり易い形態で容易に知らせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づいて、本発明を代表する実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る照明システム10は、駅のプラットホーム1にて、到着する列車2における特定車両3,4の停止位置を案内するものである。ここで駅とは、主として鉄道の駅であり、プラットホーム1とは、利用客が列車2に乗降するために線路に接して設けられた台であり、単に「ホーム」とも略す。また、特定車両3,4とは、通常の車両とは異なる特別な車両であり、例えば、グリーン車3や女性専用車4等が該当する。
【0035】
図1は、照明システム10の一例を概略的に示すブロック図であり、
図2は、同システム10の照射手段20による照射イメージを模式的に示す説明図である。また、
図3は、同じく照射手段20の照射イメージを模式的に示すプラットホーム1の平面図であり、
図4は、同プラットホーム1の側面図である。なお、
図2に示す列車2では、6両編成の例を示しているが、この編成数に限定されるものではない。
【0036】
図1に示すように、照明システム10は、プラットホーム1(
図2参照)の縁に沿って延びるライン状の光を照射可能な照射手段20と、この照射手段20による照射を制御する制御手段30と、を備えている。かかる照明システム10では、制御手段30による照射手段20の制御はデータの送信によって実行される。なお、制御手段30によって照射手段20を直接点灯制御するように構成しても良く、これについては変形例として後述する(
図8参照)。
【0037】
照射手段20は、真っ直ぐなライン状の光を照射できる照明具であれば何でも良い。本実施の形態に係る照射手段20は、
図5に示すように、離れた位置に向かって左右方向に光が広がるが、前後方向には光が広がらず、一定幅で左右方向に延びるライン状の光を照射するものである。かかる照射手段20は具体的には、
図6に示すように、LED光源21と、該LED光源21から入射した光を前述したライン状の光に照射する集光レンズ22から成る。
【0038】
このような照射手段20は、いわゆる直線(ライン)照明と称されており、その詳細は公知であるので省略するが、通常はLED光源21から所定の最短距離で直交する平面上に、該最短距離より数倍の長さのライン状の光を発生させる。また、LED光源21は、任意の発光色として一色だけの単色LEDに限らず、様々な発光色に調色可能なフルカラーLEDが適する。ここでフルカラーLEDとは、光の三原色である赤・緑・青の3色のLEDが一つのユニットとして構成され、これらのLEDの点灯ないし消灯の組み合わせによって、様々な発光色のうち選択された任意の発光色を表現することができる。
【0039】
照射手段20は、プラットホーム1の縁に沿って延びるライン状の光を発生させるように、例えば
図1に示すように、駅構内の屋根の天井に取り付けられる。ここでライン状の光は、ホームの縁に重なっていても良く、あるいは縁より所定距離だけホーム内側で縁と平行に延びる状態でも良い。また、照射手段20は、ホーム全長に亘ってライン状の光が連続するように設置する必要はなく、少なくとも前記特定車両3,4の停止位置だけ照射できれば足りる。
【0040】
列車2の車両編成の違い等により、グリーン車3や女性専用車4の位置が列車2ごとに異なる場合がある。よって、当該駅に停車する様々な列車2の特定車両3,4が停止する可能性のある全ての箇所に対応できるように、予め複数の照射手段20を駅構内の適所に配置しておく。ここで例えば、照射手段20が、その設置箇所である天井からホーム表面までの距離が5mの場合に、ホーム表面上に10mの長さのライン状の光を発生させる性能を有する場合、1車両の全長約20mに亘り照射するには、照射手段20が2つ必要となる。
【0041】
図4では、1車両につき照射手段20を1つだけ配置しているが、これに限定されることなく、1車両につき2つ以上の照射手段20を離隔させて配置しても良い。
また、照射手段20によるライン状の光の長さは、特定車両3,4の全長に必ずしも合致させる必要はなく、その停止位置に合致するプラットホーム1の縁のうち、乗車口の前等の一部だけを局所的に照射するように設定しても良い。
【0042】
照射手段20によるライン状の光の発光色は、特定車両3,4の種類に対応した任意の発光色が予め選択される。具体的には例えば、特定車両3,4ごとにイメージしやすい発光色として、グリーン車3に対しては緑色、女性専用車4に対してはピンク色の発光色等と適宜定めれば良い。ここでの発光色は、それぞれの単色LEDを用いても良いが、前述のフルカラーLEDを用いた場合、三原色のうち緑のLEDのみ点灯させれば緑の発光色となり、赤と青のLEDを点灯させて緑を消灯させればピンク色の発光色となり、これ以外の発光色も適宜調色することができる。
【0043】
なお、照射手段20を構成する光源の種類は特に限定されないが、前述したようにLEDランプであることが好ましい。LEDランプは、調色および調光の制御が容易なだけでなく、小型である、低消費電力である、長寿命である等の利点があり、また、高輝度であり、ライン状の光の照射に適している。また、照射手段20は、LED光源21や集光レンズ22の他にも、制御手段30との関係で、後述するがアドレス設定部23と送受信部24を有している。
【0044】
以上の照射手段20は、制御手段30によって制御される。制御手段30は、具体的にはマイクロプロセッサから成り、CPUのほか、CPUで実行するプログラムや各種の固定的データを記憶するROM、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶するためのRAM等を主要部とする回路で構成され、例えば駅舎内に設置される。かかる照射手段20は、その機能として
図1に示すように、各種情報を受信する判定部31と、自動制御から手動制御への切り替え操作を行う手動設定部32と、自動制御か手動制御かを切り替える切替部33と、各照射手段20への制御信号を出力する送受信部34とを備えている。
【0045】
判定部31が受信する各種情報には、編成情報と列車運行情報が含まれている。ここで編成情報とは、列車2の車両の編成に関する情報であり、例えば列車2ごとに、普通か特急か等の運行種別、編成数、停車駅、到着時刻、グリーン車、女性専用車、指定席、禁煙車の号車番号、ドア開位置等のデータが含まれる。この編成情報に基づいて判定部31は、次に駅に入線して停車する列車2が何両編成か、グリーン車3や女性専用車4の有無、これら特定車両3,4がある場合の車両位置(停止位置)等を判定する。
【0046】
編成情報は、例えば、列車2の運行を集中的に管理する図示省略した運行管理システムの内蔵メモリカード(運行カード)に登録される。制御手段30は、編成情報を外部から随時受信するが、自身の記憶手段に予め登録するようにしても良い。
判定部31は、受信した編成情報を元にして列車2の停車駅ごとに、前記照射手段20によるライン状の光の照射タイミングや照射内容等の照射パターンを生成する。
【0047】
列車運行情報とは、列車2の運行に関する情報である。この列車運行情報に基づいて判定部31は、次に駅に入線して停車する列車2の到着時間や、遅延の有無、運転見合わせや運転再開等を判定する。かかる列車運行情報は、前記運行管理システムから随時出力される。
制御手段30は、この列車運行情報に基づいて、前記生成した照射パターンに従い各停車駅ごとに前記照射手段20による照射制御を行う。すなわち、判定部31で生成された照射パターンは、列車運行情報に基づき列車2が到着する時の所定のタイミングで、切替部33を経由して送受信部34から各照射手段20へ送信される。
【0048】
図示省略した前記運行管理システムは、管理する列車2の現在位置認識機能を有しており、かかる機能が、駅に対する列車2の接近を検知する検知手段を成している。すなわち、運行管理システムは、例えば運用中の場合は、種別(急行、普通等)と行先の設定に応じた停車駅パターンと各停車駅間の距離情報を元に、走行距離とドア開信号により駅到着を判断して現在位置の認識を行う。また、基点駅(基準となる地点)と各駅の絶対距離、および基点駅と主要駅からなる停車駅パターンを予め定めておき、運用外の場合は、この停車駅パターンに従って主要駅の地点認識を行っても良い。
【0049】
手動設定部32は、列車2ダイヤに乱れが生じたとき等、自動制御から手動制御への切り替え操作を手動で行うスイッチであり、手動制御用の照射パターンを予め登録しておき、この登録された中から選択した照射パターンに従って、前記照射手段20の点灯や消灯を制御するためのものである。あるいは、列車2が到着する度に、前記編成情報に基づきグリーン車3や女性専用車4等の停車位置に関する情報や照射パターンを、その都度、手動設定部32から手作業で入力するように設定しても良い。かかる手動設定部32からの情報も、前述の自動制御の場合と同様に、切替部33を経由して送受信部34から各照射手段20へ送信される。
【0050】
切替部33は、通常は前記判定部31からの情報を受信して、送受信部34を介して前記照射パターンを含む自動照射制御に関するデータを各照射手段20へ送信する。ここで切替部33が前記手動設定部32からの操作信号を受信した場合には、送受信部34を介して前記照射パターンを含む手動照射制御に関するデータを各照射手段20へ送信する。
送受信部34は、各照射手段20との間で、例えばRS−485等の通信方式によりデータ通信を行うものであり、制御手段30と各照射手段20とを接続するために用いられる。
【0051】
また、前記照射手段20は、
図1に示すように、アドレス設定部23と送受信部24を有している。ここでアドレス設定部23は、各照射手段20ごとに、その設置位置を識別するためのアドレスを付与するものである。これにより、プラットホーム1の例えばグリーン車3の停止位置に合致する照射手段20を特定することができる。
【0052】
制御手段30は、照射パターンを含む照射制御に関するデータを、特定車両3,4の停車位置に対応するアドレスの照射手段20に向けて送受信部34を介して送信することになる。また、送受信部24は、前記制御手段30の送受信部34との間でデータ通信を行うものであり、照射手段20から制御手段30へ送信されるデータとしては、前記アドレス設定部23で設定したアドレス情報のほか、例えば、LED光源21の断線情報等がある。
【0053】
以上の制御手段30は、その代表的な制御として、プラットホーム1に列車2が到着する時の所定のタイミングで、該列車2の特定車両3,4の停止位置に合致するプラットホーム1の縁に沿って、照射手段20にライン状の光を特定車両3,4に対応した任意の発光色で照射させる。
【0054】
ここで照射開始の所定のタイミングは、詳しく後述するが前記列車運行情報に基づいて、制御手段30の機能の1つである検知手段により判断される。
また、任意の発光色とは、例えば前述したように、グリーン車3に対しては緑色、女性専用車4に対してはピンク色が該当する。このような複数の発光色は、照射手段20のLED光源21をフルカラーLEDで構成することにより、容易に調色することができる。
【0055】
また、照射手段20は、列車2の車両編成ごとに異なる特定車両3,4のそれぞれ異なる停止位置に対応すべく、複数配置されており、制御手段30は、各停止位置ごとに合致するプラットホーム1の縁に沿って、当該位置に対応したアドレスの照射手段20にライン状の光を照射させる。
図3,
図4に示す例では、停車した列車2の全長に亘ってライン状の光を照射しているが、乗車口の前等の一部だけを局所的に照射しても良い。
【0056】
次に、本実施の形態に係る照明システム10の作用について説明する。
図7は、制御手段30による照射手段20の制御の流れを示すフローチャートである。
制御手段30の判定部31は、外部から列車2の車両の編成に関する編成情報を取得する(ステップS101)。一般に編成情報は、外部の運行管理システム(図示省略)に登録されているが、制御手段30自体の記憶手段に予め登録して随時読み出すようにしても良い。
【0057】
判定部31は、前記編成情報に基づいて、次に駅に入線して停車する列車2が何両編成か、グリーン車3や女性専用車4の有無、これら特定車両3,4がある場合の車両位置(停止位置)等を判定する。かかる判定を元にして、照射手段20によるライン状の光の照射タイミングや照射内容等の照射パターンを生成する(ステップS102)。なお、照射パターンを生成するときに用いる点灯に関する固定的なデータは、予め登録されている。
【0058】
続いて判定部31は、外部から列車2の運行に関する列車運行情報を取得する(ステップS103)。この列車運行情報も、外部の運行管理システム(図示省略)から出力される。判定部31は、列車運行情報から特に列車2の現在位置を認識して、列車2が到着する時の所定のタイミングを判断する。これにより、実際に列車2が駅に到着する前の最適なタイミングを容易に定めることが可能となる。
【0059】
前記運行管理システム(図示省略)では、現在位置認識機能として、列車2に備えられた速度発電機(図示せず)から車輪回転数に応じたパルス信号を受信し、これを基に演算処理を行い、車輪直径に対応する係数で車輪径補正した距離パルスを積算することで、列車2の現在位置を認識する。よって、判定部31は、前記列車運行情報に含まれる列車2の現在位置と、予め取得してある停車駅間の距離とを比較して、列車2の現在位置から次の停車駅までの距離を算出し、この距離が前記所定のタイミングと予め定めたT[km]以下であるか否かを判定することができる。
【0060】
かかる判定の結果、列車2の現在位置と次の停車駅の距離がT[km]以下となった時点で、制御手段30は、当該時点を所定のタイミングと判断して、前記照射パターンに関するデータを、切替部33を経由して送受信部34から各照射手段20へ送信する。これにより、プラットホーム1では照射手段20によるライン状の光の照射が開始される(ステップS104)。ここでライン状の光は、特定車両3,4の停止位置に合致するプラットホーム1の縁に沿った位置に、特定車両3,4に対応した任意の発光色で照らされることになる。
【0061】
これにより、列車2の到着を待つ利用客は、プラットホーム1の縁に沿って照らされたライン状の光の位置を見るだけで、特定車両3,4の停止位置を容易に知ることができる。また、ライン状の光の発光色によって、例えば、緑の光であればグリーン車3、ピンクの光であれば女性専用車4である等と、容易に種類まで識別することができる。従って、本照明システム10によれば、特定車両3,4の停止位置や種類を、誰もが直感的に分かり易い形態で容易に知らせることができる。
【0062】
図3,
図4に示すように、照射手段20は、プラットホーム1の編成によって異なる特定車両3,4の位置を全てカバーできるように複数配置されており、各停止位置に対応する照射手段20(のアドレス)は、前記編成情報に基づき特定される。よって、照射手段20による案内は、固定的な位置の表示だけに限られることなく、様々な停止位置の変化にも対応することができる。なお、各照射手段20のLED光源21をフルカラーLEDとすることで、1つの光源でも様々な発光色の照射が可能となり、コストを低減することができる。
【0063】
また、
図3,
図4に示す例では、停車した列車2の全長に亘ってライン状の光を照射しているが、特定車両3,4の全長に必ずしも合致させる必要はなく、その停止位置に合致するプラットホームの縁のうち、乗車口の前等の一部だけを局所的に照射するように設定しても良い。このように、乗車口の前の一部だけピンポイントで照射するようにすれば、列車2接近時にドア位置を案内することにもなり、また、乗降時には利用客の足元の注意喚起を促すことができる。
【0064】
ところで、照射手段20による照射は、その開始から一定時間経過後に自動的にタイマー設定等により消灯するようにしても良いが、再び列車運行情報に基づいて消灯のタイミングを設定しても良い。
図7に示したフローチャートは後者の例であり、列車2がプラットホーム1に到着すると、例えば列車2の乗車口を開閉するドア装置(図示せず)からドア開状態を示す信号が出力され、この信号に基づいて、判定部31では各駅間における列車2の現在位置に関する情報をリセットする。
【0065】
そして、列車2が再び出発する際に、前記ドア装置からドア閉状態を示す信号が出力されるが、この信号を含む前記列車運行情報を制御手段30の判定部31は再び取得する(ステップS105)。判定部31は、この列車運行情報に基づいて、照射手段20の消灯に関するデータを、切替部33を経由して送受信部34から各照射手段20へ送信する。
【0066】
これにより、プラットホーム1では照射手段20によるライン状の光の照射が終了する(ステップS106)。なお、照射手段20によるライン状の光の消灯のタイミングは、列車2がプラットホーム1を発車した後の所定のタイミングで適宜定めれば良い。
その後、再びステップS101から処理が繰り返されることになる。なお、前述したように照射手段20の消灯のタイミングを列車運行情報に依存しない場合には、ステップS105ないしS106を省略しても良い。
【0067】
以上のような照明システム10では、照射手段20から照射されたライン状の光を受光して表示するための特別な構成は必要なく、単にプラットホーム1の縁に沿って照らすことができれば足りる。よって、駅構内の外部の適所に設置すべき構成は、基本的には照射手段20だけであり、これは通常の駅構内の照明器具と同様に比較的簡易なものであり、設置スペースの確保や設置する作業も容易となる。従って、本照明システム10によれば、その採用に伴うコストを大幅に抑えることが可能となる。
【0068】
また、前述したライン状の光の照射は、一定時間継続する静的な照射に限らず、点滅またはスクロールを含む動的に照射しても良い。さらに、
図3に示すプラットホーム1の一方の縁(図中の下側)には、前記特定車両3,4の停止位置に限らず、ライン状の光をホームの一端から他端まで全長に亘ってスクロール照射する例を示している。かかる場合は、複数の照射手段20を前記各停止位置も含めて連続して並ぶように配置する必要があるが、それぞれ一体に連ねる必要はなく、プラットホーム1の全長をカバーできる範囲で所定間隔おきに配置しても良い。
【0069】
また、動的な照射に関しては、前記スクロール照射に限らず、他に例えば、点滅させたり、あるいは、スクロールと点滅を同時に組み合わせて照射しても良い。もちろん、動的な照射の範囲は、ホーム全長に亘ることなく一部のみに限定しても良い。このような動的な照射の具体的態様は、前述した照射パターンに含まれる情報として予め定められる。例えば、スクロール照射の場合には、そのスクロール速度や発光色、スクロールするプラットホーム1上の照射位置(範囲)、点滅照射の場合には、その点滅速度や発光色、プラットホーム1の照射位置(範囲)等の情報が予め登録されて、適宜選択されることになる。
【0070】
このようなライン状の光の動的な照射によって、プラットホーム1に列車2が到着することを報知する。特に、ホーム全長に亘る照射であれば、特定車両3,4の停止位置に関係なく、電車の接近を広く知らせることができる。これにより、前述した特定車両3,4の停止位置の案内に加えて、列車2の到着に対する注意を喚起することができる。かかる動的な照射のタイミングは、例えば前述したライン状の光による停止位置の案内後、列車2が到着する直前等と適宜定めれば良く、あるいは、前述したライン状の光の継続的な照射の途中で一時的に切り換えるようにしても良い。また、動的な照射に関しては、その発光色を前述したライン状の光と異ならせても良い。
【0071】
また、
図8は、前記制御手段30の変形例として、各照射手段20を直接点灯制御する制御手段30Aの一例を示している。かかる制御手段30Aでは、前記制御手段30にある送受信部34の代わりに、各照射手段20の照射手段切替部35が設けられている。なお、前記制御手段30と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0072】
照射手段切替部35は、各照射手段20にそれぞれ信号線を介して接続されている。そして、照射手段切替部35は、前記切替部33からの照射パターンを含む照射制御に関するデータを、特定車両3,4の停車位置に対応すべく切替選択した照射手段20に向けて信号線を介して送信することになる。本制御手段30Aによれば、前記制御手段30のような通信を介さずに、各照射手段20を直接点灯制御することができる。
【0073】
また、
図9は、前記照射手段20の変形例として、プラットホーム1の縁に沿ったライン状の光のみならず、特定車両3,4の側壁にも光を照射するタイプの照射手段20Aの一例を示している。かかる照射手段20Aは、図示した照射範囲で、ライン状の光を特定車両3,4の停止位置に合致するプラットホーム1の縁に沿って照射すると共に、特定車両3,4の側壁にも光を照射することができる。
【0074】
ここで特定車両3,4の側壁に照射する光は、図示したようにライン状の光の一部でも良いが、別系統の光源からの光を照射するようにしても良い。例えば、照明手段において、ライン状の光の光源と、車両側壁を照射する光の光源を別々に用意しても良い。
いずれの照射形態にせよ、プラットホーム1の縁に沿ったライン照明だけでなく、特定車両3,4の側壁自体も照らし出すことによって、いっそう分かり易く目立たせることができる。特に、プラットホーム1上が混雑している場合は、プラットホーム1の縁を視認しにくいので、なおさら分かりやすい案内となる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記ライン状の光の具体的な発光色は、グリーン車3や女性専用車4に対応した2色だけに限らず、他に例えば、指定席車両、自由席車両、喫煙車両、貸切り車両等があれば、その数に応じて予め複数色を用意すれば良い。
【0076】
また、前記列車2の特定車両が、グリーン車または女性専用車のみ等と1種類だけの場合は、照射手段20のLED光源21を緑またはピンクに発光する単色LEDとしたり、あるいは、LED光源21を白色の単色LEDとして、集光レンズ22やカバーを緑やピンクに着色した透明材質(ガラスやアクリル樹脂等)で構成してもかまわない。
【0077】
また、
図1に示す例では、照射手段20を屋根の天井に取り付けたが、他の設置箇所として例えば、ホーム自体に埋め込むように設けたり、ホームの縁に立設されたホームドア(可動式の開口部を持った仕切り)に設けたり、ホーム上に立設された屋根を支える支柱に取り付けても良く、要は、プラットホーム1の縁に沿って照射が可能であれば、設置場所が限定されることはない。また、プラットホーム1の縁に沿って、光の反射材を設けても良い。
【0078】
さらにまた、前記制御手段30では、運行管理システムの現在位置認識機能が成す検知手段からの情報に応じて、照射手段20による照射を開始する所定のタイミングを判断するようにしたが、例えば運行管理システムとは別の検知手段として、線路脇に列車2の通過を検知するセンサを設けたり、あるいは一般的なGPS機能を利用して、駅に対する列車2の接近を検知するようにしても良い。