特許第6469972号(P6469972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469972局所出力領域中性子検出器集合体および局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469972
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】局所出力領域中性子検出器集合体および局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/10 20060101AFI20190204BHJP
   G21C 17/12 20060101ALI20190204BHJP
   G01T 3/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G21C17/10 400
   G21C17/12 300
   G01T3/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-113528(P2014-113528)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227814(P2015-227814A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 禎司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏明
(72)【発明者】
【氏名】勝田 昌治
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 正人
(72)【発明者】
【氏名】大川 清文
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−325189(JP,A)
【文献】 実開昭50−039698(JP,U)
【文献】 実開昭60−003383(JP,U)
【文献】 実開昭59−163285(JP,U)
【文献】 特開昭61−144596(JP,A)
【文献】 特開2001−221886(JP,A)
【文献】 特開平08−201572(JP,A)
【文献】 特開昭55−017500(JP,A)
【文献】 特開平02−102490(JP,A)
【文献】 実開昭52−070299(JP,U)
【文献】 特開平02−145996(JP,A)
【文献】 特開平07−027892(JP,A)
【文献】 特開平02−186295(JP,A)
【文献】 特開昭53−117195(JP,A)
【文献】 米国特許第4318776(US,A)
【文献】 米国特許第5442665(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00−17/14
G01T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の出力運転中に原子炉圧力容器に収納された炉心の局所中性子束を測定する局所出力領域中性子検出器集合体において、
前記原子炉圧力容器内で、中性子検出器および中性子検出用収納品の径方向外側を囲み上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、
上端および下端が開放されて上下方向に延びるハウジングパイプであって、上端が前記カバーパイプと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びて、前記中性子検出用収納品がその下端を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、
前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、
を備え、
前記カバーパイプは、前記炉心内の部分と前記炉心の下端より下方において上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有し、前記ハウジングパイプとの接続部における前記拡大部の下端の断面と前記ハウジングパイプの上端の断面とが重なる面積が、前記カバーパイプの前記炉心内の部分の断面積より大きい、
ことを特徴とする局所出力領域中性子検出器集合体。
【請求項2】
原子炉の出力運転中に原子炉圧力容器に収納された炉心の局所中性子束を測定する局所出力領域中性子検出器集合体において、
前記原子炉圧力容器内で、中性子検出器および中性子検出用収納品の径方向外側を囲み上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、
上端および下端が開放され、上端が前記カバーパイプの下端と溶接されたアダプタと、
上端および下端が開放されて上下方向に延びるハウジングパイプであって、前記上端が前記アダプタの下端と溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びて、前記中性子検出用収納品がその下端を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、
前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、
を備え、
前記アダプタは、上端と下端の間に拡大部を有し、前記ハウジングパイプとの接続部における当該アダプタの下端の断面と前記ハウジングパイプの上端の断面とが重なる面積が当該拡大部の上端の断面積より大きい、
ことを特徴とする局所出力領域中性子検出器集合体。
【請求項3】
前記中性子検出用収納品は、
前記中性子検出器に接続されて前記中性子検出器の下方に前記原子炉圧力容器を貫通して延び、前記中性子検出器の出力信号を伝送する信号出力用ケーブルと、
前記中性子検出器を校正するための走行型中性子検出器が内部を上下動するために設けられ、前記中性子検出器の設置レベルから下方に前記原子炉圧力容器を貫通して延びて上端が閉止され下端が開放された校正用導管と、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の局所出力領域中性子検出器集合体。
【請求項4】
原子炉圧力容器内で上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、
上端および下端が開放されて上下方向に延び、上端が前記カバーパイプと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、
前記カバーパイプの内側に配置される中性子検出器と、
前記カバーパイプの内側から前記ハウジングパイプの下端を貫通して伸びる中性子検出用収納品と、
前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、
を備える局所出力領域中性子検出器集合体の組み立て方法であって、
前記中性子検出用収納品前記シール部に貫通させ、前記中性子検出用収納品を前記シール部と気密に接合するシール部内接合ステップと、
前記シール部内接合ステップの後に、前記ハウジングパイプに前記中性子検出用収納品が貫通した前記シール部を挿入し、前記ハウジングパイプと前記シール部とを気密に接合するシール部外側接合ステップと、
前記シール部外側接合ステップの後に、前記ハウジングパイプと、下部に上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有する前記カバーパイプの前記拡大部下端または前記拡大部下端よりも下側の端部と、を溶接する全体接合ステップと、
を有することを特徴とする局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法。
【請求項5】
原子炉圧力容器内で上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、
上端および下端が開放され、上端が前記カバーパイプの下端と溶接され、その上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有するアダプタと、
上端および下端が開放されて上下方向に延び、上端が前記アダプタと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、
前記カバーパイプの内側に配置される中性子検出器と、
前記カバーパイプの内側から前記ハウジングパイプの下端を貫通して伸びる中性子検出用収納品と、
前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、
を備える局所出力領域中性子検出器集合体の組み立て方法であって、
前記中性子検出用収納品前記シール部に貫通させ、前記中性子検出用収納品を前記シール部と気密に接合するシール部内接合ステップと、
前記シール部内接合ステップの後に、前記ハウジングパイプに前記中性子検出用収納品が貫通した前記シール部を挿入し、前記ハウジングパイプと前記シール部とを気密に接合するシール部外側接合ステップと、
前記カバーパイプと前記アダプタの上端とを溶接し、放射線検査を実施するアダプタ溶接ステップと、
前記アダプタ溶接ステップの後に、前記ハウジングパイプと前記アダプタの下端とを溶接する全体接合ステップと、
を有することを特徴とする局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、局所出力領域中性子検出器集合体およびその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に沸騰水型原子炉には、原子炉圧力容器を貫通し、炉心内の複数の燃料集合体間の隙間に挿入された複数の中性子検出器と、炉心の中性子束またはガンマ線束を測定し、中性子検出器の校正を実施する移動式炉心内計装機器の導管(以下、校正用導管)が組み込まれた、局所出力領域中性子検出器集合体(Local Power Range neutron Monitor、以下、LPRMと呼ぶ)が設置されている。
【0003】
図6は、従来の局所出力領域中性子検出器集合体の一部の構成を示す縦部分断面図である。このLPRMにおいては、校正用導管13と、中性子検出器11に接続された信号出力用ケーブル12とが、LPRMの下部にあるシール部17において気密に溶接されている。また、校正用導管13と、中性子検出器11に接続された信号出力用ケーブル12とは、シール部17と溶接されたハウジングパイプ15と、ハウジングパイプ15に溶接されたカバーパイプ8によって覆われている。カバーパイプ8は、燃料集合体の隙間に挿入されるため外径が制約され、内径も中性子検出器11のガンマ線加熱による温度上昇影響を軽減するための冷却水流量を確保するため、制約される。一方、ハウジングパイプ15は、カバーパイプ8に比べて制約がないため、肉厚はカバーパイプ8より厚い(特許文献1)。
【0004】
カバーパイプ8とハウジングパイプ15の溶接部Aの溶接検査は、非破壊試験として溶接部外面に対する液体浸透探傷試験(PT)は、実施可能である。しかし、溶接部内面に対する放射線透過試験(RT)は、当該溶接部Aの内側に校正用導管13と信号出力用ケーブル12を内蔵しているため、適切に実施できない。
【0005】
また、カバーパイプ8とハウジングパイプ15を溶接後、校正用導管13と信号出力用ケーブル12を内蔵しない状態でRTを実施後に、校正用導管13および信号出力用ケーブル12を取り付ける場合も、校正用導管13および信号出力用ケーブル12の取付け後のこれらの長さを測定することができず、LPRMによる測定時の中性子検出器11の炉心内における高さ位置が不明確となり、正確な測定ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−221886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カバーパイプ8は、地震時に燃料集合体内の隙間部で径方向に振動する。曲げモーメントはカバーパイプ8の下側ほど大きくなるため、カバーパイプ8の下端部のハウジングパイプ15との溶接部Aが最も応力が厳しくなる。
【0008】
ここで、溶接部においては、強度評価上、継手効率を見込む必要がある。継手効率は、RTを全箇所について実施する場合は1.0、すなわち母材と同じ値を使用できる。RTを実施する割合が低下すると使用できる溶接効率は低い値となる。
【0009】
カバーパイプ8とハウジングパイプ15管の溶接部については、非破壊試験としてRTを実施できないことから、溶接部の継手効率として低い値を使用せざるを得ず強度上の余裕を十分に確保できない場合があった。
【0010】
そこで、本発明の実施形態は、上述した課題を解決するためになされたものであり、LPRMにおける構造強度上の余裕を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本実施形態は、局所出力領域中性子検出器集合体において、原子炉の出力運転中に原子炉圧力容器に収納された炉心の局所中性子束を測定する局所出力領域中性子検出器集合体において、前記原子炉圧力容器内で、中性子検出器および中性子検出用収納品の径方向外側を囲み上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、上端および下端が開放されて上下方向に延びるハウジングパイプであって、上端が前記カバーパイプと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びて、前記中性子検出用収納品がその下端を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、を備え、前記カバーパイプは、前記炉心内の部分と前記炉心の下端より下方において上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有し、前記ハウジングパイプとの接続部における前記拡大部の下端の断面と前記ハウジングパイプの上端の断面とが重なる面積が、前記カバーパイプの前記炉心内の部分の断面積より大きい、ことを特徴とする。
【0012】
また、本実施形態は、原子炉の出力運転中に原子炉圧力容器に収納された炉心の局所中性子束を測定する局所出力領域中性子検出器集合体において、前記原子炉圧力容器内で、中性子検出器および中性子検出用収納品の径方向外側を囲み上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、上端および下端が開放され、上端が前記カバーパイプの下端と溶接されたアダプタと、上端および下端が開放されて上下方向に延びるハウジングパイプであって、前記上端が前記アダプタの下端と溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びて、前記中性子検出用収納品がその下端を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、を備え、前記アダプタは、上端と下端の間に拡大部を有し、前記ハウジングパイプとの接続部における当該アダプタの下端の断面と前記ハウジングパイプの上端の断面とが重なる面積が当該拡大部の上端の断面積より大きい、ことを特徴とする。
【0013】
また、本実施形態は、局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法において、原子炉圧力容器内で上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、上端および下端が開放されて上下方向に延び、上端が前記カバーパイプと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、前記カバーパイプの内側に配置される中性子検出器と、前記カバーパイプの内側から前記ハウジングパイプの下端を貫通して伸びる中性子検出用収納品と、前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、を備える局所出力領域中性子検出器集合体の組み立て方法であって、前記中性子検出用収納品前記シール部に貫通させ、前記中性子検出用収納品を前記シール部と気密に接合するシール部内接合ステップと、前記シール部内接合ステップの後に、前記ハウジングパイプに前記中性子検出用収納品が貫通した前記シール部を挿入し、前記ハウジングパイプと前記シール部とを気密に接合するシール部外側接合ステップと、前記シール部外側接合ステップの後に、前記ハウジングパイプと、下部に上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有する前記カバーパイプの前記拡大部下端または前記拡大部下端よりも下側の端部と、を溶接する全体接合ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本実施形態は、局所出力領域中性子検出器集合体組立て方法において、原子炉圧力容器内で上端および下端が開放され上下方向に延びた管状のカバーパイプと、上端および下端が開放され、上端が前記カバーパイプの下端と溶接され、その上端から下端に至るまでに外径が拡大する拡大部を有するアダプタと、上端および下端が開放されて上下方向に延び、上端が前記アダプタと溶接され前記原子炉圧力容器の下部を貫通して延びる管状のハウジングパイプと、前記カバーパイプの内側に配置される中性子検出器と、前記カバーパイプの内側から前記ハウジングパイプの下端を貫通して伸びる中性子検出用収納品と、前記ハウジングパイプの上端と下端の間に設けられて、前記中性子検出用収納品が気密に貫通する円板状のシール部と、を備える局所出力領域中性子検出器集合体の組み立て方法であって、前記中性子検出用収納品前記シール部に貫通させ、前記中性子検出用収納品を前記シール部と気密に接合するシール部内接合ステップと、前記シール部内接合ステップの後に、前記ハウジングパイプに前記中性子検出用収納品が貫通した前記シール部を挿入し、前記ハウジングパイプと前記シール部とを気密に接合するシール部外側接合ステップと、前記カバーパイプと前記アダプタの上端とを溶接し、放射線検査を実施するアダプタ溶接ステップと、前記アダプタ溶接ステップの後に、前記ハウジングパイプと前記アダプタの下端とを溶接する全体接合ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、LPRMにおける構造強度上の余裕を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体を原子炉に取り付けた状態を示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体の一部の構成を示す縦部分断面図である。
図3】第1の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体の組立て方法の手順を示すフロー図である。
図4】第2の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体の一部の構成を示す縦部分断面図である。
図5】第2の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体の組立て方法の手順を示すフロー図である。
図6】従来の局所出力領域中性子検出器集合体の一部の構成を示す縦部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体および局所出力領域中性子検出器集合体の組立て方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体を原子炉に取り付けた状態を示す縦断面図である。なお、図1では、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心シュラウド、原子炉冷却材の再循環用のジェットポンプ、炉心上部の気水分離器等の図示を省略している。
【0019】
原子炉圧力容器(RPV)1の内部に炉心2が収納されている。炉心2の下側には水平方向に広がる炉心支持板3が設けられている。また、炉心2の上側には水平方向に広がる上部格子板4が設けられている。
【0020】
RPV1の底部には、局所出力領域中性子検出器集合体(LPRM)10がRPV1を貫通するために、RPV管台部5および下部閉止部7が設けられている。RPV管台部5は、RPV1の管台およびその延長部分である。RPV管台部5および下部閉止部7とLPRM10の外側部分は、RPV1内部雰囲気とRPV1の外部雰囲気とを隔離している。RPV1の内部においては、LPRM10をガイドしかつ保護するための上下方向に延びる案内管6がRPV1の底部から炉心支持板3の下面までの間に設けられている。
【0021】
LPRM10は、互いに上下に接続されたハウジングパイプ15とカバーパイプ16、およびカバーパイプ16に内蔵された中性子検出器11(図2)および中性子検出用収納品とを有する。ここで、中性子検出用収納品は、信号出力用ケーブル12(図2)と校正用導管13(図2)とを有する。
【0022】
カバーパイプ16は、上下に延びた管状であり、上端および下端が開放されている。LPRM10は炉心2内では、炉心2の位置に配列された図示しない燃料集合体の間に設けられている。このため、LPRM10の炉心2内の部分であるカバーパイプ16の径は配置上所定の寸法を超えないように制限されている。
【0023】
カバーパイプ16の炉心2の下端高さの位置にあたる部分より下側には拡大部16aが形成されている。また、カバーパイプ16の上端には伸縮部16bが取り付けられている。伸縮部16bは、たとえば上下に伸縮するコイルばねを内蔵しており、上下に伸縮可能に形成されている。ハウジングパイプ15は、上下の端部が開放された管状である。ハウジングパイプ15は、カバーパイプ16の下端に溶接される。
【0024】
LPRM10がRPV1内に設けられている状態では、LPRM10は、全体としてRPV1の内部に上下の方向に設置されている。LPRM10の上端、すなわち伸縮部16bはその上端が、上部格子板4の下面に形成された凹み部にはめ込まれている。LPRM10、具体的にはハウジングパイプ15は、炉心支持板3を貫通し、また、下側部分すなわちハウジングパイプ15の下部は、RPV1の底部を貫通している。
【0025】
ハウジングパイプ15は、炉心支持板3を貫通後、RPV1の底部までの間は、案内管6の内部に収納されている。ハウジングパイプ15は、さらに下方に延びて、RPV1の底部を貫通している。RPV1の底部を貫通した後、ハウジングパイプ15は、RPV管台部5内を延びて、下部閉止部7を貫通後に外部の空気雰囲気内に延びている。
【0026】
図2は、局所出力領域中性子検出器集合体10の一部の構成を示す縦部分断面図である。RPV1、RPV管台部5および下部閉止部7は、LPRM10とは接合されていない周囲の構造物であり、破線で表示している。図2では、カバーパイプ16の上端に取り付けられた伸縮部16b、および下部閉止部7の一部を省略している。
【0027】
カバーパイプ16の下部には、前述のように拡大部16aが形成されている。拡大部16aにおいては、カバーパイプ16の炉心2内(図1)を通過する部分の径から下方に行くに従って外径が徐々に増加し、ハウジングパイプ15の外径と同等となってからその外径を維持して延びている。したがって、カバーパイプ16とハウジングパイプ15との溶接部Bにおいては、互いに対向するカバーパイプ16の断面とハウジングパイプ15の断面とは同じ外径となっている。なお、必ずしも、同じ外径である必要はなく、互いに対向するカバーパイプ16の断面とハウジングパイプ15の断面が重なり合う面積が強度評価上十分な面積であれば、両者の外径および内径の互いの大小を問わない。
【0028】
カバーパイプ16は、RPV1内で、4つの中性子検出器11と、それぞれの中性子検出器11に接続された信号出力用ケーブル12と、校正用導管13を収納している。中性子検出器11は、互いに間隔をあけて上下に配列されている。信号出力用ケーブル12は、中性子検出器11との接続箇所から下方に延びている。また、校正用導管13は、最上部の中性子検出器11の高さから下方に延びている。
【0029】
すなわち、信号出力用ケーブル12と校正用導管13は、互いに平行に下方に延びており、カバーパイプ16の下端を過ぎるとハウジングパイプ15内をさらに下方に延びている。信号出力用ケーブル12と校正用導管13は、ハウジングパイプ15が下部閉止部7を貫通し、空気雰囲気内に至るまで延びている。信号出力用ケーブル12の端部は、空気雰囲気に設けられた図示しないコネクタに接続されている。すなわち、コネクタで外部のケーブル(図示せず)と接続および切り離しが可能である。
【0030】
カバーパイプ16内には、上下方向に互いに間隔をおいて複数のスペーサ14が設けられており、信号出力用ケーブル12および校正用導管13が水平方向の振動によりカバーパイプ16およびハウジングパイプ15の内壁に接触したり、互いに接触したりすることによる不具合の発生を防止するために、信号出力用ケーブル12および校正用導管13を支持している。
【0031】
ハウジングパイプ15内には、シール部17が設けられている。シール部17は円板形状であり、ハウジングパイプ15内に水平に設けられている。シール部17の外周は、ハウジングパイプ15の内面と気密に接合されている。また、シール部17を4本の信号出力用ケーブル12と校正用導管13が上下に貫通している。4本の信号出力用ケーブル12と校正用導管13のシール部17を貫通す部分は、気密に接合されている。したがって、シール部17は、その上下を気密に隔離する隔壁となっている。すなわち、ハウジングパイプ15の内側は、シール部17において、上側の原子炉冷却材と下側の空気とが隔離されている。
【0032】
校正用導管13は、上端が閉止されており、RPV1内には開放されていない管である。原子炉の出力運転中にLPRM10の中性子検出器11の出力信号を校正する目的で、図示しない走行型中性子検出器(TIP)が、LPRM10のそれぞれの中性子検出器11と同じ高さの位置において中性子検出を行い、LPRM10の中性子検出器11の校正を行う。校正用導管13は、このTIPが上下に移動する通路を形成している。したがって、校正用導管13の下方の端部は、TIPの図示しない駆動装置に接続されている。
【0033】
ハウジングパイプ15の外面は、上部と下部とで外形が異なり、途中の高さの部分で周方向にわたって上から下に行くにつれて外径が減少するようにテーパ部15aが形成されている。また、テーパ部15aに対応するように、下部閉止部7に下向きの円錐状にくり抜くようにテーパ部7aが形成されている。テーパ部15aとテーパ部7aとの接触面は気密に形成されており、ハウジングパイプ15の外側について、RPV1内の雰囲気とRPV1外の雰囲気を隔離する境界となっている。
【0034】
RPV管台部5の下端にはフランジ部5aが形成されている。下部閉止部7の上面は、RPV管台部5のフランジ部5aと対向して図示しないボルトによりに互いに密着するように形成されている。下部閉止部7に形成された貫通孔とハウジングパイプ15の外面との間は図2に図示していないが気密に形成されている。このため、この部分も、テーパ部15aとテーパ部7aとの接触面と同様にRPV1内の雰囲気とRPV1外の雰囲気を隔離する境界となっている。
【0035】
なお、ボルトを締め付けることにより下部閉止部7の上面とフランジ部5aとが密着するとともに、ハウジングパイプ15のテーパ部15aと下部閉止部7のテーパ部7aとが密着する。この際、LPRM10の上端の伸縮部16bが上下方向に伸縮することにより、LPRM10に過大な圧縮力はかからない。
【0036】
図3は、局所出力領域中性子検出器集合体10の組立て方法の手順を示すフロー図である。まず、シール部17と、4本の信号出力用ケーブル12および校正用導管13とを組立てる(ステップS101)。すなわち、4本の信号出力用ケーブル12および校正用導管13がシール部17を貫通する状態とする。次に、4本の信号出力用ケーブル12および校正用導管13のそれぞれについて、シール部17の貫通部分において、シール部17と気密に接合する。
【0037】
次に、ステップS101で組立てられたシール部17と信号出力用ケーブル12および校正用導管13の組み合わせと、ハウジングパイプ15との組立てを行う(ステップS102)。具体的には、まず、ハウジングパイプ15内に、4本の信号出力用ケーブル12および校正用導管13が貫通し接合されたシール部17を挿入する。その上で、シール部17の外周とハウジングパイプ15の内面とを全周にわたり接合する。この段階で、ハウジングパイプ15内の気密の隔壁が形成される。
【0038】
次に、ハウジングパイプ15とカバーパイプ16とを直列に溶接する(ステップS103)。すなわち、ハウジングパイプ15の上端面と、カバーパイプ16の拡大部16aの部分が溶接部Bにおいて溶接される。
【0039】
以上のような本実施形態に係るLPRM10においては、ハウジングパイプ15とカバーパイプ16の溶接部Bにおけるカバーパイプ16の断面積が大きくなっている。すなわち、従来は、ハウジングパイプ15との溶接部における断面積は、炉心2内における部分の断面積と同じであった。一方、本実施形態においては、拡大部16aで断面積が増大した後の部分で溶接が行われる。
【0040】
ハウジングパイプ15とカバーパイプ16との溶接部Bの溶接検査でRTができないため、溶接効率としては、RT実施の場合に比べて低い溶接効率を許容応力に乗じる必要がある。しかしながら、許容されるせん断力は、許容応力と溶接効率と溶接部の断面積であるから、許容されるせん断力は、面積の増加割合だけ増加することになる。このため、溶接部における応力評価上の余裕を確保することができる。
【0041】
また、肉厚が薄い部分から肉厚が厚い部分に移行する境界が、従来溶接部であったが、本実施形態においては、この部分は溶接部ではなくなったため、継手効率を乗ずることによる許容値の減少はなく、この部分においても応力評価上の余裕を確保することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、断面積の変化する箇所と溶接箇所とを分離することによって、LPRMにおける構造強度上の余裕を確保することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る局所出力領域中性子検出器集合体10の一部の構成を示す縦部分断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、LPRMのカバーパイプ22には第1の実施形態における拡大部のような部分はなく、上端から下端まで同じ外形である。本第2の実施形態においては、カバーパイプ22とハウジングパイプ15の間にアダプタ21が設けられている。
【0044】
アダプタ21は、上下が開放された管状であり、内面は一定の径を有する。アダプタ21の上端はカバーパイプ22の断面に対向する形状の断面を有し、また、下端は上端に比べて大きな断面積を有する。アダプタ21は、途中に円錐台状の拡大部21aを有し、外径が増大後下方に延びている。アダプタ21は、上端はカバーパイプ22と溶接される。また、アダプタ21の下端はハウジングパイプ15と溶接される。
【0045】
なお、アダプタ21の下端は、必ずしもハウジングパイプ15と同じ外径である必要はなく、互いに対向するアダプタ21の断面とハウジングパイプ15の断面が重なり合う面積が強度評価上十分な面積であれば、両者の外径および内径の互いの大小を問わない。
【0046】
図5は、局所出力領域中性子検出器集合体の組立て方法の手順を示すフロー図である。本実施形態においては、まず、シール部17と4本の信号出力用ケーブル12および校正用導管13を組立てる(ステップS101)。次にハウジングパイプ15との組立てを行う(ステップS102)というステップは、第1の実施形態と同様である。
【0047】
次に、カバーパイプ22にアダプタ21を溶接する(ステップS121)。カバーパイプ22とアダプタ21との溶接部においては、カバーパイプ22とアダプタ21のいずれの断面積も小さい。この溶接部については、RTを実施する。
【0048】
次に、カバーパイプ22に溶接したアダプタ21にハウジングパイプ15を溶接する(ステップS122)。
【0049】
本実施形態によれば、断面積の変化する箇所をアダプタ21の内部とし、アダプタ21の両端部を溶接箇所として、断面積の変化する箇所と溶接箇所とを分離することによって、LPRMにおける構造強度上の余裕を確保することができる。
【0050】
また、断面積の変化する部分をカバーパイプ22およびハウジングパイプ15に比べて短尺のアダプタ21内とすることにより、製作上の負担を大幅に軽減することができる。
【0051】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0052】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…原子炉圧力容器(RPV)、2…炉心、3…炉心支持板、4…上部格子板、5…RPV管台部、5a…フランジ部、6…案内管、7…下部閉止部、7a…テーパ部、8…カバーパイプ、10…局所出力領域中性子検出器集合体(LPRM)、11…中性子検出器、12…信号出力用ケーブル(中性子検出用収納品)、13…校正用導管(中性子検出用収納品)、14…スペーサ、15…ハウジングパイプ、15a…テーパ部、16…カバーパイプ、16a…拡大部、16b…伸縮部、17…シール部、21…アダプタ、21a…拡大部、22…カバーパイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6