(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハイドロフルオロオレフィンの配合量(a)が熱可塑性樹脂1kgあたり0.1〜0.5モルである、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
前記ハイドロフルオロオレフィンが1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の製造方法について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板(以下、単に発泡断熱板ともいう。)の製造方法においては、熱可塑性樹脂と物理発泡剤と難燃剤とを含有する発泡性樹脂溶融物を押出機出口に付設されたフラットダイを通して押出発泡し、板状に賦形することにより、発泡断熱板が製造される。
【0013】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂と、特定のポリエチレンテレフタレート系共重合体(I)との混合物からなるものである。
【0014】
本発明において用いられるポリスチレン系樹脂としては、例えばスチレン単独重合体やスチレンを主成分とするスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレンアクリレート共重合体、スチレン−メチルスチレン共重合体、スチレン−ジメチルスチレン共重合体、スチレン−エチルスチレン共重合体、スチレン−ジエチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して使用される。なお、上記スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は50モル%以上が好ましく、特に好ましくは80モル%以上である。
【0015】
前記ポリスチレン樹脂の中でも、スチレン単独重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体が好適である。
【0016】
本発明において用いられるポリスチレン系樹脂の溶融粘度(ηx)は、温度200℃、剪断速度100sec
−1の条件下において500〜4000Pa・sであることが好ましく、更に700〜2000Pa・sが好ましく、特に800〜1500Pa・sが好ましい。溶融粘度(ηx)が上記範囲内のポリスチレン樹脂は、発泡断熱板を製造する際の押出成形性に優れ、得られる押出発泡断熱板の機械的強度が優れるという効果を発現するものである。
【0017】
本発明において用いられるポリエチレンテレフタレート系共重合体(I)(以下、単に共重合体(I)ともいう。)は、JIS K7122に基づく樹脂の融解に伴う融解熱量(A)(以下、単に融解熱量(A)ともいう)が5J/g未満である。なお、上記融解熱量量が5J/g未満である共重合体(I)とは、非晶性又は低結晶性のポリエチレンテレフタレート系共重合体であることを意味する。
【0018】
共重合体(I)の結晶化度が高く、該融解熱量(A)が高すぎる場合には押出機内にて熱可塑性樹脂を発泡温度まで冷却する前に、ポリエチレンテレフタレート系共重合体の結晶化が開始してしまい、目的とする発泡断熱板を得ることが困難となる。かかる観点から、共重合体(I)の融解熱量(A)は、2J/g未満(0も含む。)であることが好ましく、より好ましくは1J/g未満(0も含む。)である。
【0019】
本願明細書における、前記融解熱量(A)は、JIS K7122(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置(以下、DSC装置という。)を使用して得られるDSC曲線に基づいて測定されるものである。
【0020】
本発明においては、前記共重合体(I)の溶融粘度(ηy)は、押出安定性の観点から、温度200℃、剪断速度100sec
−1の条件下において1000〜7000Pa・sであることが好ましく、1500〜5000Pa・sが更に好ましく、2000〜4000Pa・sが特に好ましい。溶融粘度がこの範囲の共重合体(I)は前記ポリスチレン系樹脂との混練性に優れ、ポリスチレン系樹脂中で微分散することができ、この気泡膜断面におけるモルフォロジーによりガスバリア効果を発現させることができるものである。
【0021】
なお、物理発泡剤として、後述する炭素数1〜5の脂肪族アルコールを用いる場合には、前記ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)との溶融粘度比(ηx/ηy)が0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましい。
【0022】
また、前記共重合体(I)のガラス転移温度は、80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、さらに好ましくは90℃以上である。一方、耐熱性の観点からはその上限は特に制限されるものではないが、その上限は概ね130℃程度である。本発明におけるガラス転移温度は、JIS K7121−1987に基づき、窒素ガスの流入速度は30ml/分とし、(3)「一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合」を採用して、熱流束示差走査熱量測定により測定される値である。
【0023】
なお、前記共重合体(I)は、ジカルボン酸成分単位としてテレフタル酸成分単位、ジオール成分単位としてエチレングリコール成分単位を、主たる成分単位として有するものである。さらに、前記共重合体(I)の結晶性を制御するために、その他の成分単位が用いられる。
【0024】
本発明で用いられる共重合体(I)の、その他のジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸或いはそのエステル形成性誘導体が使用できる。エステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数1〜4程度のアルキルエステルなどのエステル誘導体、ジアンモニウム塩などの塩、ジクロリドなどの酸ハロゲン化物などを挙げることができる。該共重合体(I)中のジカルボン酸成分単位としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物等の誘導体、またはシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体、または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で使用してもよく2種以上の複合使用でもよい。
【0025】
前記共重合体(I)は、前記その他のジカルボン酸成分の中でも、ジカルボン酸成分単位として、芳香族ジカルボン酸またはその酸無水物、またはその誘導体からなる酸成分単位、例えばイソフタル酸成分単位、ナフタレンジカルボン酸成分単位、これらのジカルボン酸成分を一種類以上含むことが好ましい。
【0026】
本発明で用いられる共重合体(I)の、その他のジオール成分としては、脂肪族系および芳香族系ジオール(二価のフェノールを含む)或いはそのエステル形成性誘導体を使用することができる。
【0027】
該共重合体(I)中の、その他のジオール成分単位として、具体的には、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,6−シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族ジオール、または3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下、スピログリコールという)や(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン(以下、ジオキサングリコールという)等の環状エーテル骨格を有するジオールを挙げることができる。これらのジオール成分は、単独使用でもよく2種以上の複合使用でもよい。
【0028】
本発明においては、前記の中でも、ジオール成分単位として、環状エーテル骨格を有するジオール成分単位を含有することが好ましく、これらの環状エーテル骨格を有するジオール成分の合計量はジオール成分中10モル%以上であることが好ましく、さらにはジオール成分中10〜80モル%、更に10〜60モル%であることが好ましい。
また、ジオール成分単位としては、環状アセタール骨格を有するジオール成分単位を含有することがより好ましい。さらに、環状アセタール骨格を有するジオール成分単位としては、スピログリコールまたはジオキサングリコールが好ましい。
【0029】
また、該ジオール成分単位として、シクロヘキサンジメタノール成分単位、ネオペンチルグリコール成分単位選択される一種類以上を含むものも好ましい。なお、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール成分単位の含有量はジオール成分中25〜60モル%であることが好ましい。
【0030】
前記共重合体(I)の結晶性の程度は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸等2種以上使用してそれらジカルボン酸成分単位のモル比を変える方法や、ジオール成分としてエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノール等2種以上使用してそれらジオール成分単位のモル比を変える方法等により調整することができる。
【0031】
なお、前記共重合体(I)は、例えば少量の安息香酸,ベンゾイル安息香酸,メトキシポリエチレングリコール等のごとき単官能化合物から誘導される成分単位によって分子末端を封止されていてもよい。また、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される成分単位を少量含んでいてもよい。
【0032】
本発明における熱可塑性樹脂において、前記ポリスチレン系樹脂と前記共重合体(I)の重量比率(ポリスチレン系樹脂:共重合体(I))は、95:5〜50:50である。共重合体(I)の配合量が少なすぎると、発泡断熱板のガスバリアー性を向上させる効果が小さくなる虞がある。一方、共重合体(I)の配合量が多すぎると、熱可塑性樹脂の溶融張力が低下して発泡成形が困難になり、低見かけ密度(高発泡倍率)の押出発泡断熱板が得られなくなる虞れがある。
さらに、ガスバリアー性に優れ、低見かけ密度と高い独立気泡率とを兼ね備えた押出発泡断熱板を得る観点から、ポリスチレン樹脂:共重合体(I)は、90:10〜55:45であることが好ましく、85:15〜60:40であることがより好ましい。
【0033】
本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲内で、前記熱可塑性樹脂中に、ポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマーやポリフェニレンエーテル樹脂のような他の樹脂や重合体を、配合目的に応じて混合して使用することもできる。なお、その配合量は、発泡断熱板を構成する熱可塑性樹脂中(熱可塑性樹脂を100重量%として)に、30重量%を上限とすることが好ましく、20重量%以下であることが更に好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
本発明においては、必須の物理発泡剤として、炭素数3〜5の飽和炭化水素とハイドロフルオロオレフィン(HFO)と炭素数1〜5の脂肪族アルコールとが少なくとも用いられる。
【0035】
該物理発泡剤の熱可塑性樹脂1kgあたりの合計配合量(前記必須の物理発泡剤と、必要により配合されるその他の発泡剤との合計配合量)は、所望する見かけ密度との関連で適宜選択されるが、見かけ密度が20〜50kg/cm
3の発泡断熱板を得るには、概ね0.5〜3モルであり、好ましくは0.6〜2.5モルである。
【0036】
本発明においては、必須の物理発泡剤のうちの一つとして炭素数3〜5の飽和炭化水素が用いられる。該飽和炭化水素は、ポリスチレン樹脂に対する溶解度が高いので押出安定性を向上させることができる。また、ポリスチレン樹脂に対するガス透過速度が遅いので、該飽和炭化水素が発泡断熱板中に残存することにより比較的長期にわたって発泡断熱板の熱伝導率を低く保つことができる。
【0037】
該飽和炭化水素としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタンシクロブタン、シクロペンタン、等が挙げられる。なお、本願明細書においては、ノルマルブタンとイソブタンを併せてブタンという。これらの中でも、ガス透過速度が遅く、低見かけ密度の発泡断熱板を容易に得ることができることから、イソブタンが特に好ましい。なお、これらの飽和炭化水素は単独または2種以上を併用することもできる。
【0038】
該飽和炭化水素の熱可塑性樹脂1kgあたりの配合量は0.1〜3モルが好ましく、より好ましくは0.2〜2.5モル、更に好ましくは0.3〜2モルである。上記範囲内であれば、安定した押出発泡が可能となり、所望される見かけ密度の発泡断熱板を得ることが容易となる。
【0039】
本発明おいては、必須の物理発泡剤のうちの一つとしてハイドロフルオロオレフィン(HFO)が用いられる。該HFOとしては、炭素数3〜5のハイドロフルオロオレフィン、さらに具体的には、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランスHFO−1234ze)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シスHFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd)等が挙げられる。なお、これらのハイドロフルオロオレフィンには一部塩素が導入されたヒドロクロロフルオロオレフィンも含まれる。これらの発泡剤は単独でまたは2種以上を併用することもできる。なお、これらのハイドロフルオロオレフィンは、オゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数も非常に小さく、環境に与える負担が小さい発泡剤である。さらに、気体状態の熱伝導率が低く、燃えにくい特性を有するので、前記飽和炭化水素と併用することによって前記飽和炭化水素の使用量を減らすことができ、難燃剤の添加量を低減させることができる。
【0040】
該HFOの熱可塑性樹脂1kgあたりの配合量は、0.1〜0.5モル/kgであることが好ましい。上記範囲内であれば、押出発泡後の発泡断熱板に、HFOが有効量残存して、長期断熱性を有する押出発泡断熱板となる。上記観点から、前記HFOの配合量は0.13〜0.4モル/kgであることがより好ましく、0.15〜0.3モル/kgがさらに好ましい。
【0041】
本発明においては、必須の物理発泡剤の内の一つとして、炭素数1〜5の脂肪族アルコールが用いられる。該脂肪族アルコールは、物理発泡剤として気泡を形成させる働きをすることに加え、気泡膜において共重合体(I)をポリスチレン樹脂中に微分散させることができる。即ち、該脂肪族アルコールは、ポリスチレン系樹脂よりも前記共重合体(I)に対して、特異的に可塑性を向上させることができる。その働きにより、熱可塑性樹脂の構成比率においてポリスチレン樹脂が多く存在する場合に、ポリスチレン樹脂に対して前記共重合体(I)の粘度を相対的に低下させることによって、共重合体(I)の分散性を向上させることができる。
【0042】
また、脂肪族アルコールは、オゾン層を破壊することがなく、地球を温暖化させることもない上に、発泡断熱板から早期に逸散することから、発泡断熱板の形状を早期に安定化させることができるとともに、建材に要求される低見かけ密度(発泡倍率向上効果)の発泡断熱板を得ることに寄与できるものである。
【0043】
炭素数1〜5の脂肪族アルコールとしては、例えばメチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、n−アミルアルコール,sec−アミルアルコール,イソアミルアルコール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール等が挙げられる。これらの中では、エタノールが環境、人体への安全性に優れるため好ましい。
【0044】
該脂肪族アルコールの配合量は熱可塑性樹脂1kgあたり0.05〜0.3モルであることが好ましい。該配合量が上記範囲内であれば、ポリスチレン樹脂中に共重合体(I)を微分散させることが容易となる。さらには発泡時に微分散した共重合体(I)を延伸させて、気泡膜中で層状に分散させることができる。
かかる観点から、該配合量は、熱可塑性樹脂1kgあたり0.07〜0.28モルがより好ましく、0.08〜0.25モルが更に好ましく、0.10〜0.23モルが特に好ましい。
【0045】
前記の通り、本発明の特徴は、ポリスチレン樹脂と共重合体(I)とからなる熱可塑性樹脂を、前記HFOと特定の脂肪族アルコールと特定の飽和炭化水素を含有する物理発泡剤を用いて押出発泡することにより、気泡膜を構成するポリスチレン樹脂中に共重合体(I)を微分散させてHFOの逸散に対するバリア効果を高めて、長期断熱性を発現させることにある。
【0046】
そのためには、前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量(b)に対する、前記ハイドロフルオロオレフィンの配合量(a)のモル比(a/b)が0.3〜4であることが好ましい。該モル比が上記範囲内であれば、該脂肪族アルコールの作用により前記共重合体(I)をスチレン系樹脂中に微分散させることができると共に、気泡中には十分な量のHFOを残存させることができるので、優れた長期断熱性を有する発泡断熱板を得ることができる。
かかる観点から、該モル比は0.5〜3.5であることがより好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。
【0047】
前記熱可塑性樹脂1kgあたりの、前記炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合重量(g)に対する、前記共重合体(I)の配合重量(g)の比(共重合体(I)/脂肪族アルコール)は10〜100であることが好ましい。該比がこの範囲内であることは、脂肪族アルコールの配合量より、共重合体(I)の配合量が10倍以上であることを意味し、共重合体(I)に対して、炭素数1〜5の脂肪族アルコールの配合量は少量であっても、前記共重合体(I)をスチレン系樹脂中に微分散させることができ、気泡膜断面におけるモルフォロジーにより、優れた長期断熱性を有する発泡断熱板を得ることができることを意味する。
かかる観点から、該重量比は、15〜80であることがより好ましく、20〜60であることがさらに好ましい。
【0048】
なお、前記HFOは従来のフロン類に比べるとポリスチレン樹脂に対する透過速度が相対的に速いことから、従来の押出発泡板においては、発泡後、比較的早期に発泡体から逸散してしまっていた。すなわち、該HFOの低熱伝導性が発泡断熱板の長期断熱性に大きく貢献することはできなかった。本発明においては、発泡断熱板を構成する熱可塑性樹脂がポリスチレン樹脂と前記共重合体(I)とからなる上に、炭素数1〜5の脂肪族アルコールを含有する物理発泡剤を用いることによって、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂の連続相中に均一に微分散、更には層状に分散させることが可能になる。該共重合体(I)が微分散した構造を有する発泡断熱板は、従来においては比較的早期に発泡断熱板から逸散していたHFOの逸散を効果的に防止することにより、従来のものより長期断熱性に優れるものとなる。
【0049】
なお、本発明においては、前記必須の物理発泡剤に加えて水を発泡剤として用いることが好ましい。前記飽和炭化水素と前記HFOと前記脂肪族アルコールと共に、水を用いることにより、得られる発泡断熱板の発泡倍率をさらに向上させて、見かけ密度をより小さくすることが可能となる。
【0050】
本発明における、好適な物理発泡剤としては、前記飽和炭化水素と前記HFOと前記脂肪族アルコールの3種の物理発泡剤を必須とし、これに必要に応じて水を加えた4種の物理発泡剤であって(但し、水を用いないものも含む)、その配合割合が、炭素数3〜5の飽和炭化水素20〜60モル%、HFO3〜50モル%、炭素数1〜5の脂肪族アルコール3〜40モル%、水0〜50モル%(ただし、ハイドロフルオロオレフィンと、炭素数1〜5の脂肪族アルコールと、炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)で構成されるものを物理発泡剤として用いることが好ましい。
【0051】
なお、さらに好適な物理発泡剤の配合割合としては、炭素数3〜5の飽和炭化水素20〜60モル%、HFO3〜50モル%、炭素数1〜5の脂肪族アルコール3〜40モル%、水5〜50モル%(ただし、ハイドロフルオロオレフィンと、炭素数1〜5の脂肪族アルコールと、炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水との配合割合の合計量は100モル%である)である。
【0052】
該4種の物理発泡剤において、飽和炭化水素の配合割合が前記範囲内であれば、押出安定性を低下させることなく、多量の難燃剤を添加しなくても、低見かけ密度化が可能であり、また、長期断熱性にも優れる発泡断熱板を容易に得ることができる。かかる観点から、該飽和炭化水素の配合割合は、25〜60モル%が好ましく、より好ましくは30〜50モル%である。
【0053】
該4種の物理発泡剤において、HFOの配合割合が前記範囲内であれば、得られる発泡断熱板の独立気泡率や、見かけ密度が低下したり、発泡状態が悪くなったりすることなく、気泡内にHFOが多く残存させることができるので、長期断熱性に優れた発泡断熱板が得られる。かかる観点から、該HFOの配合割合は、5〜40モル%が好ましく、より好ましくは10〜30モル%である。
【0054】
該4種の物理発泡剤において、脂肪族アルコールの配合割合が前記範囲内であれば、所望される見かけ密度を得つつ、共重合体(I)の微分散状態をガスバリア性に優れるモルフォロジーにすることができる。かかる観点から、該配合割合は、5〜30モル%、より好ましくは7〜20モル%である。
【0055】
該4種の物理発泡剤において、水の配合割合が前記範囲内であれば、見かけ密度の低い発泡板をさらに容易に得ることができ、長期断熱性に優れた発泡断熱板を容易に得ることが可能となる。かかる観点から、該配合割合は、5〜45モル%、より好ましくは10〜40モル%である。
【0056】
また、その他の物理発泡剤として、炭素数1〜3の塩化アルキル、アルキル鎖の炭素数が1〜3のエーテル類、二酸化炭素等を用いることができる。炭素数1〜3の塩化アルキルとしては、例えば塩化メチル,塩化エチル等が挙げられる。アルキル鎖の炭素原子数が1〜3のエーテル類としては例えばジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチレンジメチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
これらその他の発泡剤の中では、二酸化炭素を使用することが特に好ましい。二酸化炭素は、得られる押出断熱発泡断熱板の気泡を小さくする効果があるので気泡調整剤の添加量を減らすことができる効果や断熱性能を向上させる効果が期待できる。
【0058】
本発明により得られる熱可塑性樹脂押出発泡断熱板は、主に建築用断熱板として使用されることから、JIS A9511(2006年)5・13・1に規定される、「測定方法A」に記載の押出ポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足する高度な難燃性が要求される。さらに、本発明により得られる熱可塑性樹脂発泡断熱板は、JIS A9511(2006年)4.2で規定される熱伝導率の規格を満足することが望ましい。
【0059】
前記燃焼性規格を満足する高度な断熱性能が要求される熱可塑性樹脂押出発泡断熱板は、前記飽和炭化水素の発泡断熱板中の含有量の調整に加えて、難燃剤を添加することにより達成される。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂押出発泡断熱板に配合できる難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく使用される。該臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤または臭素化されたブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤などが挙げられる。
【0061】
本発明において、臭素化ビスフェノール系難燃剤とはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、又はこれらの誘導体の臭素化物である。
【0062】
臭素化ビスフェノール系難燃剤の具体例としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA−オリゴマーのエポキシ基付加物等が挙げられる。上記の臭素化ビスフェノ−ル系難燃剤の中でも、特に、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)が、ポリスチレン系樹脂との混練時において分解しにくく、難燃効果も高く発現し易いため好ましい。
【0063】
これらの中でも、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とを併用することが好ましく、その混合比は、重量比で90:10〜30:70であることが好ましく、より好ましくは70:30〜40:60である。この重量比の混合難燃剤は、特に、難燃性に優れると共に、熱安定性に優れるものである。なお、臭素化ビスフェノール系難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がさらに好ましい。
【0064】
該臭素化イソシアヌレート系難燃剤とは、イソシアヌル酸又はイソシアヌル酸誘導体の臭素化物である。
【0065】
前記臭素化イソシアヌレート系難燃剤の具体例としては、モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ジ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0066】
前記臭素化イソシアヌレート系難燃剤の配合量は熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、より好ましくは0.2重量部以上であり、更に好ましくは0.5重量部である。また、その上限は、小気泡の発生を抑制するという観点からは特に制限されるものではないが、概ね5重量部程度である。
【0067】
前記臭素化ブタジエン−スチレン共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体又はグラフト共重合体など、従来公知のものがそのまま使用できる。
また、前記共重合体を構成するスチレン系単量体としては、スチレン、臭素化スチレン、塩素化スチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチルスチレンなどが例示でき、これらの中でも、スチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン又はこれらの混合物が好ましく、より好ましくはスチレンである。
上記の中でも、熱可塑性樹脂との相溶性を考慮すると、ポリスチレン重合体ブロックと臭素化ポリブタジエンブロックとのブロック共重合体であることがより好ましい。
【0068】
一般に、代表的な臭素化ブタジエン−スチレン共重合体である臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体は下記一般式(1)で表すことができる。
【0069】
【化1】
(式中、X、Y及びZは、正の整数である。)
【0070】
このようなポリスチレン−臭素化ポリブタジエンブロック共重合体難燃剤は、例えばブタジエン−スチレンブロック共重合体を臭素化することにより製造される。
本発明で好ましく用いられるポリスチレン−臭素化ポリブタジエン共重合体難燃剤としては、Chemtura社のEmerald3000、ICL−IP社のFR122Pなどの市販品が挙げられる。
【0071】
本発明で用いられる臭素化ブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤は、従来公知のものがそのまま使用できる。例えば、特表2009-516019のものを使用することができる。また、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、1〜7重量部がさらに好ましい。
【0072】
前記臭素系難燃剤の総配合量は、所望の難燃性に応じて適宜決定されるものであるが、JIS A9511(2006R)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満足するポリスチレン系樹脂押出発泡体を得るためには、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部配合することが好ましく、より好ましくは2〜8重量部である。上記範囲内であれば、難燃剤が発泡性を阻害することなく、良好な表面状態の押出発泡体が得られる。
【0073】
なお、前記難燃剤は、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤及び臭素化ブタジエン−スチレン共重合体系難燃剤以外のその他の難燃剤を含むことができる。該その他の難燃剤の添加量は、臭素系難燃剤の添加量全体に対して20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0074】
該難燃剤の熱可塑性樹脂への配合方法としては、所定割合の難燃剤を熱可塑性樹脂と共に押出機上流に設けられている供給部に供給し、押出機中にて混練する方法を採用することができる。その他、押出機途中に設けられた難燃剤供給部より溶融熱可塑性樹脂中に難燃剤を供給する方法も採用することができる。尚、難燃剤を押出機に供給する場合、難燃剤と熱可塑性樹脂を構成するポリスチレン系樹脂とをドライブレンドしたものを押出機に供給する方法や、難燃剤マスターバッチや難燃剤溶融混練物を作製し、熱可塑性樹脂と共に押出機に供給する方法を採用することができる。特に、分散性の点から難燃剤マスターバッチを作製し押出機に供給する方法を採用することが好ましい。
【0075】
本発明においては、ヒンダードフェノール系安定剤、リン系安定剤、およびヒンダードアミン系安定剤等の安定剤を熱可塑性樹脂に添加することができる。これらの安定剤は、加工時に臭素系難燃剤が分解して発生するハロゲンラジカルやハロゲンイオンを補足することにより、ポリスチレン系樹脂の分子量低下や着色を抑制することができるものである。
【0076】
本発明においては、難燃助剤として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタンなどのジフェニルアルカンや、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテンなどのジフェニルアルケン、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼンなどのポリアルキルベンゼン、トリフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、すず酸亜鉛、シアヌル酸、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛などの無機化合物、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等を熱可塑性樹脂に配合することができる。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0077】
本発明においては熱可塑性樹脂に、断熱性向上剤を配合してさらに断熱性を向上させることができる。断熱性向上剤としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物、アルミ等の金属、セラミック、カーボンブラック、黒鉛等の微粉末、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイトなどが例示される。これらは1種又は2種以上を使用することができる。該断熱性向上剤の添加量は熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部の範囲で使用される。
【0078】
また、本発明においては基材樹脂に、必要に応じて、気泡調整剤、顔料,染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を適宜配合することができる。
【0079】
前記気泡調整剤として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、クレー、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末、アゾジカルボジアミド等の従来公知の化学発泡剤などを用いることができる。なかでも難燃性を阻害することがなく気泡径を調整することが容易であるタルクが好適である。気泡調整剤の添加量は、該気泡調整剤の種類、目的とする気泡径等によって異なるが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、概ね、0.01〜8重量部、更に0.01〜5重量部、特に0.05〜3重量部が好ましい。
【0080】
気泡調整剤も他の添加剤と同様にマスターバッチを調製して使用することが添加剤の分散性の点から好ましい。マスターバッチ中の気泡調整剤の含有量は、例えば、気泡調整剤としてタルクを使用した場合、マスターバッチの基材樹脂に対してタルクの含有量が20〜80重量%となるように調製されることが好ましく、30〜70重量%となるように調整されることがより好ましい。
【0081】
以下、本発明により得られる熱可塑性樹脂押出発泡断熱板の諸物性について詳述する。
【0082】
本発明により得られる発泡断熱板においては、その気泡膜を構成する熱可塑性樹脂がポリスチレン系樹脂と前記共重合体(I)から構成されている。さらに、本発明によれば、特定の物理発泡剤を用いることにより、その気泡膜において、ポリスチレン樹脂が連続相を形成し、その連続相中に前記共重合体(I)を微分散させることができる。
【0083】
前記のように分散された前記共重合体(I)が空気の気泡膜中への浸入を抑え、ハイドロフルオロオレフィンをはじめとする物理発泡剤の大気中への逸散を抑えることにより、熱伝導率の増加を抑え、断熱性を長期に亘り低く抑えることができる発泡断熱板が得られる。
【0084】
本発明により得られる発泡断熱板の見かけ密度は、20〜50kg/m
3である。見かけ密度が低すぎる場合は、発泡断熱板を製造すること自体かなり困難であり、用途によっては機械的強度が不十分な発泡断熱板となる。一方、見かけ密度が高すぎる場合は、押出発泡断熱板の厚みを相当厚くしない限り、充分な断熱性を発揮させることが困難であり、また軽量性の点からも好ましくない。上記観点から、25〜45kg/m
3であることが好ましい。
【0085】
該発泡断熱板の厚みは10〜150mmである。厚みが薄すぎる場合には、特に断熱材として使用する場合に要求される断熱性が不十分となる虞がある。一方、押出機の大きさにもよるが、厚みが厚すぎる場合には発泡成形が難しくなる虞がある。なお、厚みは15mm〜120mmがより好ましい。
【0086】
該発泡断熱板の厚み方向平均気泡径は、好ましくは0.05〜2mmであり、より好ましくは0.06〜0.7mmであり、さらに好ましくは0.06〜0.3mmである。厚み方向の平均気泡径が上記範囲内にあることにより、前記見かけ密度範囲の構成と相俟って赤外線透過を抑制することができるなどの理由からより一層高い断熱性を有する発泡断熱板をとなるなどの利点がある。
【0087】
本明細書における平均気泡径の測定方法は次の通りである。
発泡断熱板の厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)及び発泡断熱板幅方向の平均気泡径(D
W:mm)は発泡断熱板の幅方向垂直断面(発泡断熱板の押出方向と直交する垂直断面)を、発泡断熱板の押出方向の平均気泡径(D
L:mm)は発泡断熱板の方向垂直断面(発泡断熱板の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分する垂直断面)の顕微鏡拡大写真を得る。次いで、該拡大写真上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(当然のことながら、この長さは拡大写真上の直線の長さではなく、写真の拡大率を考慮した直線の真の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求める。
【0088】
平均気泡径の測定方法について更に詳述すると、厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)の測定は、幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、厚み方向に発泡断熱板の全厚みに亘る直線を引き、各々の直線の長さと該直線と交差する気泡の数から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(D
T:mm)とする。
【0089】
幅方向平均気泡径(D
W:mm)は、幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、発泡断熱板を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を幅方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(D
W:mm)とする。
【0090】
押出方向の平均気泡径(D
L:mm)は、発泡断熱板の幅方向を二等分する位置で、発泡断熱板を押出方向に切断して得られた押出方向垂直断面の、中央部及び両端部の計3箇所の顕微鏡拡大写真を得、各々の写真上において、発泡断熱板を厚み方向に二等分する位置に、3mmに拡大率を乗じた長さの直線を押出方向に引き、該直線と該直線と交差する気泡の数から、各直線上に存在する気泡の平均径を式(3mm/(該直線と交差する気泡の数−1))にて求め、求められた3箇所の平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(D
L:mm)とする。また、発泡断熱板の水平方向の平均気泡径(D
H:mm)は、D
WとD
Lの相加平均値とする。
【0091】
本発明により得られる発泡断熱板においては、気泡変形率が0.7〜2.0であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められたD
TをD
Hで除すことにより算出される値(D
T/D
H)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が小さすぎる場合は、気泡が扁平なので圧縮強度が低下する虞れがあり、扁平な気泡は球形に戻ろうとする傾向が強いので、発泡断熱板の寸法安定性も低下する虞がある。気泡変形率が大きすぎる場合は、厚み方向における気泡数が少なくなるので、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。そのような観点から、上記気泡変形率は、0.8〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有する熱可塑性樹脂押出発泡断熱板となる。
【0092】
本発明により得られる発泡断熱板の独立気泡率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。独立気泡率が高い程、発泡剤としてしようしたHFOが長く気泡中に留まることが可能となり、高い断熱性能を長期に亘って維持することができる。独立気泡率S(%)は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定される。
【0093】
本明細書において発泡断熱板の独立気泡率は、下記式(1)から求められる。押出発泡断熱板の中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して各々のカットサンプルを測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を採用する。なお、カットサンプルは発泡断熱板から縦25mm×横25mm×厚み20mmの大きさに切断された、発泡断熱板表皮を有しないサンプルとし、厚みが薄く厚み方向に20mmのサンプルが切り出せない場合には、例えば縦25mm×横25mm×厚み10mmの大きさに切断された試料(カットサンプル)を2枚重ねて測定する。
【0094】
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(VA−W/ρ) (1)
ただし、
Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm
3)(発泡断熱板のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
VA:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
3)
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡断熱板を構成する基材樹脂の密度(g/cm
3)
【0095】
本発明により得られる発泡断熱板の熱伝導率は、0.0280W/(m・K)以下であることが望ましく、0.0270W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.0260W/(m・K)以下であることが更に好ましい。
上記範囲内であれば、断熱性に優れる発泡断熱板となる。なお、熱伝導率は、製造直後から変動するが、発泡断熱板の使用時に、上記範囲内の熱伝導率となっていればよい。さらに、該発泡断熱板は、長期の断熱性にも優れるため、製造後100日経過後の熱伝導率においても、0.0270W/(m・K)以下であることが望ましく、0.0260W/(m・K)以下であることが更に好ましい。本発明の発泡断熱板は、熱可塑性樹脂として、前記ポリスチレン樹脂と共重合体(I)からなり、更に前記脂肪族アルコールを含有する物理発泡剤を用いて押出発泡していることから、気泡膜中で共重合体(I)がガスバリア性を発揮するモルフォロジーで存在し、前記HFOの発泡断熱板からの逸散が効果的に防止されるためと考えられる、したがって、製造後100日経過後であっても、熱伝導率が低く維持される。
【0096】
なお、本発明において熱伝導率は、発泡断熱板から縦200mm×横200mm×厚み25mmの押出発泡断熱板表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片についてJIS A1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定される。
【0097】
発泡断熱板中のHFOの残存量は、製造後100日経過後で発泡断熱板1kg当たり0.2モル以上存在することが好ましい。上記範囲内であれば、HFOが断熱性向上効果を発揮して、より断熱性に優れるものとなる。
一方、HFO残存量の上限は、発泡断熱板の見かけ密度などとも関連するが、概ね0.8モルであり、好ましくは0.7モルである。なお、HFOの残存量は、製造直後から変動するものであるが、発泡断熱板の使用時に、上記範囲内のHFO残存量であればよい。
【0098】
本明細書における発泡断熱板中の前記HFO残存量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定される値である。具体的には、発泡断熱板から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し発泡断熱板中のHFOをトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って発泡断熱板中のHFO残存量を求める。
【実施例1】
【0099】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
実施例及び比較例で使用したポリスチレン系樹脂を表1に、共重合体(I)を表2に示す。
なお、実施例、比較例ではポリスチレン系樹脂として、表1に示す樹脂の混合樹脂を用いた。
樹脂1:表1に示すPS1とPS2の配合比率が、PS1:PS2=60重量%:40重量%の混合樹脂(なお、この配合比率で溶融混練してペレットとし、このペレットの溶融粘度を測定すると、溶融粘度は(200℃、100s
−1)950Pa・sであった)。
樹脂2:PS1:PS2=65重量%:35重量%の混合樹脂(上記と同様にして測定した溶融粘度(200℃、100s
−1)は906Pa・sであった。
樹脂3:PS1:PS2=50重量%:50重量%の混合樹脂(上記と同様にして測定した溶融粘度(200℃、100s
−1)は1069Pa・sであった。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
気泡調整剤
ポリスチレン樹脂をベースレジンとし、タルク(松村産業(株)製、商品名:ハイフィラー#12)60重量%を含有するタルクマスターバッチを用いた。
【0104】
難燃剤
SR130:テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)(第一工業製薬製SR130)
SR720:テトラブロモビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)(第一工業製薬製SR720)
FR122P:臭素化されたブタジエン−スチレン共重合体(ICL−IP社のFR122P)
【0105】
発泡剤
(1)炭素数3〜5の飽和炭化水素:イソブタン(略称「i−Bu」)
(2−1)HFO:トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(略称「HFO1234ze」)
(2−2)HFO
:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(略称「HFO1233zd」)
(3)炭素数1〜5の脂肪族アルコール:エタノール
(4)水
【0106】
装置
内径65mmの第1押出機と内径90mmの第2押出機が直列に連結されており、発泡剤注入口が第1押出機の終端付近に設けられており、間隙1mm×幅115mmの幅方向断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第2押出機の出口に連結されており、更にフラットダイの樹脂出口にはこれと平行するように上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板が設置された賦形装置(ガイダー)が付設されている製造装置を用いた。
【0107】
実施例1〜10、比較例1〜6
表3、表4中に示すそれぞれの配合量となるように樹脂、難燃剤及び気泡調整剤を、前記第1押出機に供給し、これらを220℃まで加熱し、溶融、混練し、第1押出機の先端付近に設けられた発泡剤注入口から表3、表4中に示す配合組成の物理発泡剤を表中に示す割合で溶融物に供給し溶融混練して発泡性樹脂溶融物とし、続く第2押出機及び第3押出機に供給して樹脂温度を表中に示すような発泡適性温度(表中では押出樹脂温度と表記した。この発泡温度は押出機とダイとの接合部の位置で測定された発泡性樹脂溶融物の温度である。)に調整した後、吐出量70kg/hrでダイリップからガイダー内に押出し、発泡させながら厚み方向に28mmの間隙で平行に配置されたガイダー内を通過させることにより板状に成形(賦形)し熱可塑性樹脂押出発泡断熱板(厚み28mm)を製造した。得られた発泡断熱板の物性、評価結果を表3、表4にまとめて示す。
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
実施例1は、ポリスチレン系樹脂80重量%と共重合体(I)20重量%(三菱瓦斯化学(株)製 Altester30)とからなる熱可塑性樹脂を用い、表3の配合割合の物理発泡剤用いた例である。得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真を
図1に示す。
図1に示すように、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂中に微分散されていることから、製造後100日経過後のHFO残存量率が高く、長期断熱性に優れた発泡断熱板を得ることができた。
【0111】
実施例2は、実施例1に対して、エタノールと水の配合量を増やした例であり、実施例1と同様に発泡状態も良好で、HFOの残存率も高く、長期断熱性に優れた発泡断熱板であることが分かる。なお、実施例1と比較すると発泡剤量が多いために低見かけ密度となっている。
【0112】
実施例3は実施例1に対して、エタノールの配合量を減らし、水の配合量を同じにした例である。得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真を
図2に示す。エタノールの配合量を減らしても、
図2に示すように、共重合体(I)がポリスチレン系樹脂中に微分散されている。そのため、実施例1と同様に長期断熱性に優れた発泡断熱板となっている。しかし、
図1(実施例1)と比較すると、共重合体(I)の微分散による島部分が大きく、細かく均一な分散状態が形成されていない部分が観察される。
【0113】
実施例4は、実施例1に対し、エタノールの配合量を増やし水の配合量を減らした例である。得られた発泡断熱板は実施例1と同様に長期断熱性に優れたものとなっている。エタノールの配合量を増加させても、HFOの残存率が高く、共重合体(I)の微分散効果は維持されていることがわかる。
【0114】
実施例5は、実施例1に対し、難燃剤の種類を変えた例である。実施例1と同様に、長期断熱性に優れた発泡断熱板を得ることができた。
【0115】
実施例6,7は、実施例1に対し、共重合体(I)の種類を変えた例である。実施例7においては、変性PET共重合体(イーストマンケミカル社製 FN001)、実施例8においては、ジオキサングリコールPET共重合体を使用した。実施例1と同様に、融解熱量についての要件を満足する共重合体(I)であれば、エタノールを用いることによって、気泡膜中のポリスチレン系樹脂中に共重合体(I)が微分散され、実施例1と同様の長期断熱性に優れた発泡断熱板を得ることができた。
【0116】
実施例8は実施例1に対して共重合体(I)の配合量を増やした例である。得られた発泡断熱板の気泡膜の断面写真を
図3に示す。
図3に示すように、共重合体(I)はポリスチレン系樹脂中に微分散されているが、
図1(実施例1)と比較すると共重合体(I)が微分散状態とはならない部分が観察される。そのため、実施例1と比較してガスバリア性に劣り、製造後100日経過後のHFO残存率が実施例1よりは低下している。しかし、熱伝導率は実施例1よりも小さくなっている。なお、グリコール成分単位としてスピログリコールを含有する、SPET共重合体は輻射伝熱を抑制する効果に優れることから、該SPET共重合体の増量により、熱伝導率が低下したと考えられる。
【0117】
実施例9は実施例1に対して発泡剤をトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd)に変更した例である。得られた発泡断熱板は実施例1と同様に長期断熱性に優れたものとなっている。ハイドロフルオロオレフィンの分子構造を変更しても、共重合体(I)の微分散効果は維持され、長期断熱性を有することがわかる。
【0118】
実施例10は実施例1に対してイソブタンの配合量を減らし、HFOの配合量を増やした例である。得られた発泡断熱板は実施例1と比較すると、HFO残存率は同じでも、HFO残存量が多くなり、長期断熱性が向上していることがわかる。
【0119】
比較例1は、エタノールを用いないで、表4の条件で発泡断熱板を製造した例である。実施例に対して、発泡状況が悪化し、熱伝導率を測定可能な発泡断熱板を得ることが出来なかった。
【0120】
比較例2は、エタノールを用いないで、表4の条件で発泡断熱板を製造した例である。なお、物理発泡剤として、エタノール及び水を添加せず、代りに二酸化炭素を用い、見かけ密度を38kg/m
3とした。発泡断熱板は得られたものの、HFOの残存率が低く、該脂肪族アルコールによる共重合体(I)の分散性向上効果が見られず、長期断熱性が低下していることが分かる。
【0121】
比較例3は、共重合体(I)を配合しない例である。共重合体(I)を添加していないことから、ガスバリア性の向上効果が見られず、HFOの残存率が低く、長期断熱性能にも劣る発泡断熱板であった。なお、特許文献1に示されるような、炭素数1〜5の脂肪族アルコールを用いないで、ポリスチレン系樹脂と共重合体(I)を基材樹脂として製造した発泡断熱板においては、共重合体(I)を用いない比較例3に対してはHFO残存比率が優れている。しかし、炭素数1〜5の脂肪族アルコールを用いて製造された本願発明の実施例におけるHFO残存比率を達成できるものではない。この相違は、共重合体(I)の分散状態によるものであると推察される。
【0122】
実施例1〜10は、物理発泡剤として、炭素数3〜5の飽和炭化水素とハイドロフルオロオレフィンと炭素数3〜5の脂肪族アルコールを少なくとも用いた例であり、アルコールを用いていない比較例1、2に対して、HFOの残存率が高く、長期の熱伝導率が向上していることが分かる。これは、
図1、2、3に示されているとおり、共重合体(I)がスチレン系樹脂中に微分散しているためと考えられる。
【0123】
表中の各物性は次のように測定した。
【0124】
(溶融粘度)
溶融粘度の測定は、温度200℃、剪断速度100sec
−1の条件下において測定するものとし、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定される。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃にし、熱風循環式乾燥機によりガラス転移温度より10℃低い温度で十分に乾燥させた樹脂を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから測定し、そこで得られた溶融粘度(Pa・s)を採用する。なお、測定の際にオリフィスから押出されるストランドには気泡ができるだけ混入しないようにして測定した。
なお、共重合体(I)の場合は、測定前に、80℃の真空オーブンで12時間乾燥を行った。
【0125】
(見かけ密度)
見かけ密度の測定はJIS K7222:1999に準拠して行った。
【0126】
(独立気泡率)
押出発泡板の幅方向中央部及び両端部付近から、それぞれ25mm×25mm×20mmのサイズの成形表皮を持たないサンプルを切り出し、前記ASTM−D2856−70の手順Cにより各サンプルの独立気泡率を測定し、それらの測定値を算術平均した値(5点以上)を押出発泡板の独立気泡率とした。
【0127】
(厚み方向の平均気泡径)
厚み方向の平均気泡径(D
Tav)については、前記方法により測定した。厚み方向の平均気泡径(D
Tav)は、押出発泡体の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計三箇所の拡大倍率50倍の拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K−proを用いて個々の気泡の厚み方向の気泡径及び幅方向の気泡径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めた。
【0128】
(熱伝導率)
熱伝導率は、押出発泡断熱板から縦200mm×横200mm×厚み25mmの押出発泡断熱板表皮が存在しない試験片を切り出し、該試験片についてJIS A1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定した。
【0129】
(HFO残存量)
発泡断熱板中のHFO残存量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定した。具体的には、発泡断熱板から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し発泡断熱板中のHFOをトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って発泡断熱板中のHFO残存量を求めた。
【0130】
(HFO残存率)
100日経過後のHFO残存量と、製造直後のHFO残存量とから、HFO残存量のHFO配合量に対する割合を算出した。なお、製造直後とは、概ね、押出発泡後24時間後の押出発泡板における測定値である。
【0131】
(発泡状況の評価)
発泡状況の評価は、次のように行った。
◎:発泡状態が良好である。
○:発泡状態は良好であるが、外観にスポット孔が極わずか形成されている。
×:発泡断熱板の内部に空洞が見られる。
【0132】
(燃焼性試験)
得られた発泡断熱板について、JIS A9511(2006年)5・13・1に準拠して、5・13・1の測定方法Aの燃焼性試験を行った。測定は一つの押出発泡板に対して試験片を5個切り出し、下記評価基準により評価した。
◎:全ての試験片において3秒以内で炎が消え、残塵がなく、かつ燃焼限界線を超えて燃焼しない。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を超える。
【0133】
(発泡断熱板の気泡膜の断面写真)
発泡断熱板から超薄切片を作製し、染色後、透過型電子顕微鏡で気泡膜の断面を撮影した。
[撮影条件]
透過型電子顕微鏡:日本電子株式会社製透過電子顕微鏡「JEM−1010」
加速電圧:100kV
染色:四酸化ルテニウム
倍率:5000倍
なお、撮影した電子顕微鏡写真において共重合体(I)の部分が黒く、スチレン系樹脂の部分が白く観察された。