特許第6469974号(P6469974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ショット アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6469974工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品
<>
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000002
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000003
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000004
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000005
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000006
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000007
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000008
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000009
  • 特許6469974-工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469974
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】工具クラウンおよびこの工具クラウンを用いて製造可能なガラス製品又はガラスセラミック製品
(51)【国際特許分類】
   B24D 7/18 20060101AFI20190204BHJP
   C03B 33/12 20060101ALI20190204BHJP
   B24B 41/053 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B24D7/18 Z
   C03B33/12
   B24B41/053
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-130262(P2014-130262)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-6725(P2015-6725A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】10 2013 106 612.7
(32)【優先日】2013年6月25日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ミシュケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ヴァイゼンブルガー
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−199619(JP,A)
【文献】 特開昭62−039805(JP,A)
【文献】 特開平05−245827(JP,A)
【文献】 米国特許第5252009(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 7/18
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス又はガラスセラミックに凹部(3)を穿孔およびフライス加工するための工具クラウン(1)であって、
前記工具クラウン(1)が、軸又は中空である軸(7)に結合する中空円筒状の研磨体(10)を備えており、
前記中空円筒状の研磨体(10)の端面(12)には、前記研磨体(10)の円筒軸(13)の位置に、中央研磨面(15)が配置されており、前記中央研磨面(15)が、少なくとも1つのブリッジ(17、18、19)を用いて前記中空円筒状の研磨体(10)の内壁(20)と接続されており、
前記研磨体(10)の前記端面(12)と、前記中央研磨面(15)を備えた前記ブリッジ(17、18、19)と、前記研磨体(10)の外壁(22)の少なくとも一部とが研磨手段(25)で覆われており、
前記少なくとも1つのブリッジ(17、18、19)と前記研磨体(10)の前記内壁との間には、前記研磨体(10)の内部への少なくとも1つの開口部(27)が残されており
前記ブリッジ(17、18、19)および前記中央研磨面(15)の面積の合計が、研磨面を貫通する1つ又は複数の開口部(27)の総面積よりも小さい工具クラウン(1)。
【請求項2】
前記中央研磨面(15)と前記少なくとも1つのブリッジ(17、18、19)とが前記端面(12)と同じ高さに位置しており、前記端面(12)によって画定された平面上おいて、前記端面(12)と前記少なくとも1つのブリッジ(17、18、19)と前記中央研磨面(15)とが、研磨面を形成し、前記研磨面は、前記少なくとも1つの開口部(27)によって貫通されていることを特徴とする、請求項1に記載の工具クラウン(1)。
【請求項3】
前記研磨手段(25)が、マトリクスに埋め込まれた砥粒、又はダイヤモンド砥粒を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の工具クラウン(1)。
【請求項4】
前記砥粒が、金属マトリクス内に焼結されている、請求項3に記載の工具クラウン(1)。
【請求項5】
半径方向に沿った前記少なくとも1つのブリッジは、連続的に前記研磨手段25に、特に砥粒に覆われていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工具クラウン(1)。
【請求項6】
前記研磨体(10)の前記円筒軸(13)に対して回転対称に配置され、前記中央研磨面(15)を前記中空円筒状の研磨体(10)の前記内壁(20)と接続する、複数のブリッジ(17、18、19)を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の工具クラウン(1)。
【請求項7】
前記研磨体(10)の直径が最小5ミリメートル、又は、直径が5から60ミリメートルの間である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工具クラウン(1)。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の工具クラウン(1)を用いた加工によって、特に製造可能なガラス要素又はガラスセラミック要素(30)であって、
前記ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)が、少なくとも1つの研磨された凹部(33)を備えており、前記凹部(33)が、前記ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の表面(31)上の開口部(36)から底部(331)まで直線的に延びており、前記凹部の側壁(332)の最小半径が少なくとも6ミリメートルであり、
前記凹部(33)の深さの最小半径に対する比が10:1よりも大き
前記凹部が平らな底面(331)を備えていることを特徴とする、ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)。
【請求項9】
前記凹部(33)の前記側壁(332)の平均粗さの値がR<6μmであることを特徴とする、請求項に記載のガラス要素又はガラスセラミック要素(30)。
【請求項10】
前記凹部の長さ方向に沿って、断面積が一定であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のガラス要素又はガラスセラミック要素(30)。
【請求項11】
以下の特徴
− 前記凹部(33)の前記壁(332)から前記ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の表面までの最小距離が、最大15ミリメートル、又は最大10ミリメートルであること、
− 前記凹部(33)が円形形状の断面を備え、前記凹部(33)の深さが、その直径の少なくとも5倍、又は10倍であること、
のうち、少なくとも1つの特徴を有する、請求項乃至1のいずれか1項に記載のガラス要素又はガラスセラミック要素(30)。
【請求項12】
2つの隣接する凹部の前記壁(332)間の最小距離が、最大15ミリメートル、好ましくは最大10ミリメートルである、隣接して延びる複数の研磨された凹部(33)を特徴とする、請求項1に記載のガラス要素又はガラスセラミック要素(30)。
【請求項13】
請求項乃至1のいずれか1項に記載のガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の製造方法であって、
− ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)を準備すること、
− 請求項1乃至のいずれか1項の工具クラウン(1)であって、前記工具クラウン(1)は、少なくとも6ミリメートルの半径を有している、工具クラウン(1)を使用すること、
− 凹部(33)を研削することであって、前記凹部は、ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の表面(31)の開口部(36)から直線的に、ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の内部へ伸びており、
− 前記工具クラウン(1)の円筒軸周りに回転している前記工具クラウン(1)を移動することによって、
− 軸方向における回転中に、部分的又は連続的に、前記工具クラウン(1)が、ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)内に移動され、ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の材料が工具クラウン(1)の研磨体(10)によって研削される、
ガラス要素又はガラスセラミック要素(30)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して回転する削剥工具に関する。具体的には、本発明は、特にガラス又はガラスセラミックに凹部を設けるための、回転削剥用の工具クラウンに関する。
【背景技術】
【0002】
DE3534426C1より、特にガラス板のような破断し易い板に穿孔するための穿孔装置が知られている。穿孔対象の板は、支持台と押さえ部とによって固定される。ガラス板を固定する際に曲げ応力を回避するために、支持台および押さえ部は、玉継手軸受の内輪によって形成されている。逆方向に互いに向かって移動可能な2つの中空ドリルによって穴が開けられる。
【0003】
さらに、EP2489488A1には、センター・ドリルとストッパとを備えたダイヤモンド穴鋸が記載されている。
このダイヤモンド穴鋸は、冠状又はカップ状のフライス工具を含んでおり、作業面上に延びるフライス工具の縁部に切粉除去手段が設けられている。フライス工具の回転軸にはドリルが配置されており、ドリルの先端は、センター穴を穿孔するために作業面から突出し、ドリルの軸はホルダと接続されている。ドリルの軸にはストッパが割り当てられており、このストッパがフライス工具の縁部からある距離分だけ突出し、パイロット円のフライス加工後に、縁部の切粉除去手段と共にワークピースに打ち当たるので、ホルダからドリルを取り外さなければパイロット円を深めることができない。
【0004】
上述の2つの装置は、ガラス板に深さの浅い貫通孔を設けるのに適している。
【0005】
EP06417A1より、金属、ガラス、セラミック、コンクリートといった非常に多様な材料の穿孔に適している、超硬合金チップを備えたドリルが知られている。このドリルは、先端角が120°〜125°、逃げ角が10°〜15°である超硬合金刃を備えている。しかし、切削を行う動作形態に基づくこの種のドリルでは、ガラス又はガラスセラミックのような脆弱材料の場合に亀裂が生じる恐れがある。ワークピース中に肉眼で見える亀裂が残されない場合でさえ、材料強度を大幅に低下させる微細亀裂が形成される可能性がある。加えて、このドリルは穴の形成にしか適しておらず、フライス加工には適していない。
【0006】
US3343308Aに記載された建築用の切断兼研磨装置では、間隔を置いた研磨体が、工具上で互いに延性のある針金で固定されている。一実施形態によれば、1つ又は複数の研磨体がコア・ドリルの開口部に張り渡された、非コア穿孔ドリルが設けられている。
【0007】
さらに、US5137098Aより、穿孔およびフライス加工用のダイヤモンド工具が知られている。一実施形態によれば、軸方向に突出して回転軸周りに延在する、研磨手段で覆われた半円形の突出部が設けられている。このような突出部を複数設けることも可能である。
【0008】
工具軸が不安定であるため、工具軸の直径の工具長さに対する比が1:10より小さい工具を用いてその直径および深さを研磨しなければならない止まり穴を、ガラスセラミックにおいて材料強度の低下を許容可能な程度に抑えて作成することがこれまでできていない。その上、工具軸の直径が、工具クラウンの直径によって決定的に左右される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE3534426C1
【特許文献2】EP2489488A1
【特許文献3】EP06417A1
【特許文献4】US3343308A
【特許文献5】US5137098A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の基礎となる課題は、脆弱材料、特にガラスおよびガラスセラミックに、深い穴および皿穴であっても破断の危険を伴わずに設けることが可能な工具を提供することである。この課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の有利な構成および発展形態は、従属請求項に挙げられている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、脆弱材料に凹部を穿孔およびフライス加工するための工具クラウンを提供する。工具クラウンは、好適には中空である軸に結合している中空円筒状の研磨体を備えており、この中空円筒状の研磨体の端面には、研磨体の円筒軸の位置に、少なくとも1つのブリッジを用いて中空円筒状の研磨体の内壁と接続された中央研磨面が配置されている。
【0012】
研磨体の端面と、中央研磨面を備えたブリッジと、研磨体の外壁の少なくとも一部とが、研磨手段で覆われている。少なくとも1つのブリッジと研磨体の内壁との間には、中空円筒状の研磨体の内部への、好適にはさらに軸の内部への、少なくとも1つの開口部が残されている。このブリッジを、スポークとも呼ぶことができる。
【0013】
したがって、工具クラウンを用いた材料削剥が研磨によって行われるが、これを、(研磨体の配置および形状のため)幾何学的に定義されない刃を用いた切断又は研削と呼ぶことができる。
【0014】
この構造では、形成される凹部の断面積に対する工具クラウンの直径を最大化することができる。凹部のフライス加工の際は、凹部の断面内の材料を完全に削剥するために、自身の円筒軸周りを回転する工具クラウンの横方向の移動を、加工の中心軸を越えるまで行う必要が無くなる。むしろ、工具クラウンの横方向の移動がごく僅かな場合にも、ブリッジおよび中央研磨面によって、工具クラウンの外周から張り出した材料の表面全体が研磨される。
【0015】
工具中心又は円筒軸における研磨面の円周速度がゼロに等しいにもかかわらず、工具クラウンを、意外にも、それどころか非常に良好に、凹部の穿孔に使用することができる。つまり、工具クラウンを横方向に移動させずに、穿孔に使用することができる。ここで、本発明による工具クラウンの構成によって、クラウンの打撃および振動が減少するので、非常に平滑な壁が作成されるようにもなる。
【0016】
本発明の工具を用いて製造可能な凹部の断面は、回転する円筒形の基本形状に基づいて、研磨体の有限な直径のため下回ることができない最小半径を有している。
【0017】
凹部が穿孔されるかフライス加工されるかに関わらず、側壁の最小半径と比較して、それとともに間接的に断面寸法と比較しても非常に深い凹部を、特にガラスおよびガラスセラミックのような脆弱材料に設けることが今や可能である。したがって、本発明は、本発明による工具クラウンを用いた加工によって製造可能なガラス要素又はガラスセラミック要素にも関する。その際、ガラス要素又はガラスセラミック要素は、少なくとも1つの研磨された凹部を備えており、この凹部は、そのガラス要素又はガラスセラミック要素の表面上の開口部からその底部まで直線的に延びている。凹部の側壁の最小半径は、少なくとも6ミリメートルであり、凹部の深さの最小半径に対する比が10:1よりも大きい。その際、凹部とは、片側が閉鎖された空洞であり、つまり、貫通孔ではないものと理解される。言い換えれば、凹部は脆弱材料の底部によって閉鎖されている。
【0018】
凹部の断面が円形である特別な場合では、凹部の深さはその直径の少なくとも5倍、好適には少なくとも10倍である。
【0019】
本発明を用いれば、例えばガラスセラミックから軽量構造物を製作することができる。その上、本発明による工具クラウンの特に滑らかな動作によって、非常に薄肉の構造もまた可能になる。特に、凹部の壁からガラス要素又はガラスセラミック要素の表面までの最小距離を、最大15ミリメートル、好ましくは最大10ミリメートルとすることができる。その際、この表面は、隣接する凹部の壁であってもよい。そこで、本発明の一発展形態によれば、隣接して延びる複数の研磨された凹部を備えたガラス要素又はガラスセラミック要素が提供され、2つの隣接する凹部の壁間の最小距離が、最大15ミリメートル、好ましくは最大10ミリメートルである。
【0020】
適用可能な用途は、例えば、ガラスセラミック製の軽量化された望遠鏡用のミラー支持体である。
【0021】
以下では本発明をより詳細に、実施例に基づいて添付図面を参照しながら説明する。図面では、同一の符号が同一の又は対応する要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】工具クラウンの概略図。
図2】工具クラウンの端面の上面図。
図3】工具クラウンの端面の上面図。
図4】工具クラウンの端面の上面図。
図5】工具クラウンを用いた凹部の作成時の凹部の上面図。
図6】工具クラウンを用いた凹部の作成時の凹部の上面図。
図7】ガラス要素又はガラスセラミック要素の断面図。
図8】凹部の断面形状の図。
図9】凹部を有するガラスセラミック・ブロックを撮影した写真。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明による工具クラウン1の実施例の斜視図である。
【0024】
工具クラウン1は、中空円筒の基本形状を有する研磨体10を含んでいる。研磨体10は軸7と結合(uebergehen)しているが、それは、研磨体10が軸に固定されていてもよく、又は軸および研磨体10が、例えば適した直径の管を旋削することによって、一体に形成されていてもよい。軸7は、同様に中空円筒状である。図1に示された特別な実施例に限定するものではないが、その深さが研磨体10の軸方向長さよりも大きい凹部のフライス加工および/又は穿孔を容易にするため、軸7は好ましくは研磨体10よりも直径が小さい。一般的には、図1に示された特別な実施例に限定するものではないが、研磨体10は、実施形状に応じてワンピース形態であり、特に、成型体として形づくられる。それに加えて、1つのブリッジ部分又は複数のブリッジ部分を有する研磨体10は、例えば、金属体からフライス加工もしくは鋳造による方法で製造される。さらに、ブリッジ部分もまた研磨体の中空円筒のボディに溶接により固定されることが可能である。
【0025】
工具クラウンは、その軸が穿孔装置および/又はフライス装置のチャック内に固定される。そして、凹部の形成が、工具クラウン1のその円筒軸13周りの回転、ならびに軸方向および/又は径方向の工具クラウン1の前進によって行われる。
【0026】
研磨体10は、脆弱材料に凹部を形成する際に材料を削剥するための研磨手段25で覆われている。研磨手段25が設けられた研磨体の表面が、点網掛けで示されている。
【0027】
図1から分かるように、工具中心にも、又は円筒軸13の位置にも、研磨手段25が設けられている。これに加えて、本実施形態では対向して配置されて研磨体10の内壁20から延出し、研磨手段25で覆われた2つのブリッジ17、18が設けられており、これらのブリッジが円筒軸13の位置で出会っている。それにより、研磨体の端面12の、円筒軸13の領域およびその周囲に、中央研磨面15が形成されている。図示の例の特別な構造を、工具中心、又は仮想の円筒軸が端面12の平面を通る貫通点の位置を通過して延びる、単一のブリッジ17として解釈してもよい。したがって、研磨体10の円筒軸13の位置には中央研磨面15が配置されており、この中央研磨面15が少なくとも1つのブリッジ17、18を用いて、中空円筒状の研磨体10の内壁20と接続されている。その際、研磨体10の端面12と、中央研磨面15を備えた1つ又は複数のブリッジ17、18と、研磨体10の外壁22の少なくとも一部とが、研磨手段25によって覆われている。
【0028】
特別に図示の実施例に限定するものではないが、半径方向に沿った少なくとも1つのブリッジは、好ましくは連続的に研磨手段25覆われており、特に、砥粒に覆われている。好ましくは、単に単一ではなく、径方向に隔てられた研磨工具もしくは研磨要素がブリッジの上にも付けられている。図1に示されているような、また一般的に好まれるような、ブリッジ17、18の上に研磨要素を連続的に覆うことにより、第一に高い削剥性能、第二に同時に工具クラウンの滑らかな動作がもたらされる。特に好適には、中空円筒体の中央研磨面と端面とは、従って、すべての端面を連続して研磨手段によって覆われる。
【0029】
非常に長い工具を使用することにより、工具クラウン1の幾何学的形状による滑らかな動作が可能になる。そこで、本発明の1つの実施形態によれば、シャフト7の直径と、研磨体10の端面12からシャフト7の端部まで測定された工具クラウンの長さとは、最大1:10、好適には最大1:15の値となる。工具クラウン1の上記長さは、本発明の1つの実施形態によれば、60mm以上、好ましくは120mm以上である。ある長い工具クラウン1により、より深い凹部の穴又はフライス加工穴とするために、場合によっては、接合された軸方向のシャフト部分から成る、複合の部品シャフト7が提供される。
【0030】
外壁22上の研磨手段25によって、工具の径方向の前進の際の材料の削剥が可能となり、端面上および中央研磨面15をも形成するブリッジ17、18上の研磨手段25によって、工具クラウンの軸方向の前進の際の材料の削剥が可能となる。
【0031】
図示の実施例に限定するものではないが、概して、ブリッジ17、18と研磨体10の内壁20との間には、研磨体10の内側への、および中空軸7への少なくとも1つの開口部27が残されている。図1に示された実施例では、互いに接続されたブリッジ17、18によって、又は連続するブリッジによって、ここでは2つの開口部27が生じている。
【0032】
つまり、少なくとも1つの開口部があることにより、閉鎖された端面が存在しなくなる。開口部27は、特に、削剥された材料を収容し、場合によっては冷却手段および/又は潤滑手段を供給するのに役立つ。
【0033】
図1の特別な構成に限定するものではないが、好ましくは、研磨体の中空円筒の端面12およびその他の研磨要素が、端面において1つの平面上に配置されている。それにより、平らな底部を備えた凹部を作ることがとりわけ可能になる。加えて、このような平らな構成は、工具クラウン1の揺動を回避するのに都合がよいことが分かっている。したがって、本発明の発展形態では、図1の実施例に限定するものではないが、中央研磨面15と少なくとも1つのブリッジ17、18とが端面12と同じ高さに位置することにより、端面12と少なくとも1つのブリッジ17、18、19と中央研磨面15とが、端面12によって画定された平面上に位置して少なくとも1つの開口部27によって貫通された研磨面を形成している。
【0034】
概して特に好ましくは、研磨手段25は、砥粒、好適にはダイヤモンド砥粒によって形成されており、このダイヤモンド砥粒がマトリクスに埋め込まれている。ダイヤモンドの他には、例えば、コランダム、炭化ケイ素、又は別の硬質材料も研磨手段として考えられる。
【0035】
さらに、金属マトリクス内に焼結された砥粒が特に好ましい。ガルバニック分離を用いても、砥粒が埋め込まれた金属マトリクスを作成することができる。金属マトリクスは、研磨体10の内部への熱伝導に優れているので好ましい。しかし、場合によっては、プラスチック・マトリクス、又は研磨手段を含有するセラミックも考えられる。
【0036】
図2から図4は、ブリッジの配置および形成のその他の様々な実施形態を示す、研磨体10の端面の上面図である。
【0037】
図2に示された実施例では、単一のブリッジ17の片側が研磨体10の内壁20と接続されている。ブリッジ17の端部によって、円筒軸13の位置において円筒軸13の領域を包囲するように中央研磨面15が形成されている。これに応じて、単一の開口部27のみが設けられている。
【0038】
図3の実施形態が特に好ましい。ここでは、内壁20から延出して工具中心で出会う3つのブリッジ17、18、19が設けられている。ブリッジ17、18、19が出会う領域によって、円筒軸13の位置において円筒軸13を包囲するように中央研磨面15が形成されている。これに応じて、この実施形態では、3つの開口部27が、ブリッジ17、18、19と内壁20との間に生じている。3つのブリッジ17、18、19を備えた構造は、機械的安定性の観点から特に好ましい。3つより多くのブリッジ、例えば4つ、5つ、又は6つのブリッジ又はスポークを設けてもよい。その反面、製造コストが増加し、開口部27の総面積が減少することになる。
【0039】
図4は、2つのブリッジ17、18を備えた図1に示された構成の変型を示している。図1に示された実施形態とは異なり、図4に示された例では、両方のスポーク又はブリッジ17、18が曲げられている。
【0040】
研磨体10の円筒軸13に対して回転対称に配置され、中央研磨面15を中空円筒状の研磨体10の内壁20と接続する、複数のブリッジ17、18、19を設けることが、機械的安定性のために概して都合がよい。このことは、図1図3、および図4の実施例に該当する。
【0041】
ブリッジ17、18、19および中央研磨面15の面積の合計が、研磨面を突破する開口部又は開口部27の総面積よりも小さいことが、概して好ましい。このことは、動作の円滑性、および工具クラウン1における揺動回避のために有利であることが分かっている。上述の条件は、図1から図4の全ての実施例において満たされている。
【0042】
本発明による工具クラウン1を用いれば、特にガラス又はガラスセラミックのような脆弱材料内に、断面積と比較して特に深い凹部を、非常に平滑な壁を有するように形成することができる理由を、図5および図6に基づいて説明する。
【0043】
図5は、工具クラウン1を用いた凹部の仕上げ加工時の、脆弱材料5内の凹部33の上面図である。図5に示された工具クラウンは、リース状(Kranz)のクラウンを備えた従来の工具である。図示の例のように、直径40ミリメートルの断面が丸い凹部を設けるために、工具クラウン1の直径は22ミリメートルである。凹部33の中心330に材料が残留することになるので、直径をこれより大きく選定することができない。この残留する材料は、十分に長ければ折れる可能性があり、又は工具クラウン1の軸方向の前進を止めてしまう。この例から、工具クラウンの直径が、凹部の直径又は概して断面寸法より常に大幅に小さくなければならないということが分かる。しかし、これにより、凹部がより深い場合に工具がすぐに不安定となるので、もはや平滑な壁を形成することができなくなる。
【0044】
図6は、比較のために、同じ寸法の凹部33を形成する際の、本発明による工具クラウン1を示している。工具クラウン1の構成は、例として、図3に示された回転対称に配置された3つのブリッジ17、18、19を備えた構成である。外側のリース、又は中空円筒状の研磨体の端面12が常に中心330の外側にある時にも、ブリッジおよび中央研磨面15に設けられた研磨手段によって、凹部33の中心330が加工される。そのため、凹部33の断面積と比較して研磨体10のより大きい直径を用いることができる。図示の例では、研磨体10の直径が34ミリメートルである。つまり、凹部33の断面寸法が同じであれば、図4に示されたような工具と比べて、より大きい研磨体10を使用することができるので、工具クラウン1の動作の円滑性が著しく改善される。凹部が深く形成される程、動作の円滑性がより重要になる。
【0045】
凹部33の最小直径は、当然ながら工具クラウン1の直径に左右される。図面に示された実施例に限定するものではないが、直径が最小5ミリメートルである研磨体10が好ましい。5から60ミリメートルの間の研磨体10の直径が特に適切である。
【0046】
このように、本発明を用いれば、新種のガラス製品およびガラスセラミック製品を製造することができる。ガラス要素又はガラスセラミック要素の加工をする、この発明による方法は、以下の方法に基づく。
− ガラス要素又はガラスセラミック要素を準備することと、
− この発明の工具クラウンの手段により、工具クラウンは、好適には少なくとも6ミリメートルの半径を有し、凹部が研磨され、その凹部は、ガラス要素又はガラスセラミック要素の表面上の開口部から、好適には直線的にガラス要素又はガラスセラミック要素の内部へ伸びており、
− 工具クラウン1の円筒軸周りに回転している工具クラウン1を移動することによって、
− 軸方向における回転中に、工具クラウン1が、部分的又は連続的にガラス要素又はガラスセラミック要素内に導入され、その際に、ガラス要素又はガラスセラミック要素の材料が工具クラウンの研磨体によって削剥される。その良質な研磨は、中空の研磨体10によって、特に中空のシャフトによって、供給された冷却液を排出することができる。
【0047】
特に好適には、低い熱膨張特性を有するガラス材料又はガラスセラミック材料からなる要素が加工される。低伸縮性のガラスセラミックとして、特にリチウム−アルミノシリケート系−ガラスセラミックが用いられる。例えば、ガラスセラミックで適するものは、ショット社のゼロデュア(登録商標)の名称のもの又は株式会社オハラ社のクリアセラム(登録商標)の名称のものが提供されている。本発明の1つの実施形態である、好適な低伸縮性のガラスセラミック要素の構成は、その成分がLiO、AlそしてSiOである。以下に示す量は重量パーセントである(酸化物ベース)。
LiO:2−5.5重量%
Al:17−32重量%
SiO:50−70重量%、好ましくは、多くても62重量%、
:3−12重量%
ZrO:0−5重量%、好ましくは、少なくとも1重量%、
TiO:1−5重量%
【0048】
別の低伸縮性の材料は、チタン−ドープ石英ガラスである。そのようなガラスは、例えば、コーニング社のULE(登録商標)の名称で提供されている。
【0049】
特にある材料が、低い熱膨張特性を有するガラス要素又はガラスセラミック要素として知られているが、その材料の中間の熱膨張係数は、例えば、温度区間が0℃から50℃(“Coefficient of Thermal Expansion” CTE(0;50))に対しては、高くても0±100ppb/K、好適には、高くても0±50ppb/K、特に好適には、高くても0±20ppb/K、特に好適には、高くても0±10ppb/Kである。
【0050】
図7は、このような本発明による工具クラウン1を用いた加工によって製造可能な、ガラス要素又はガラスセラミック要素30の概略断面図である。ガラス要素又はガラスセラミック要素30は、少なくとも1つの研磨された凹部33を備えている。図7に示された例では、互いに平行に延びる、複数の、ここでは具体的に3つの凹部33が設けられている。また、凹部33は、ガラス要素又はガラスセラミック要素30の表面31上の開口部36から各凹部33の底部331まで直線的に延びている。
【0051】
凹部33の深さ又は凹部33の長さの最小半径に対する比は、10:1より大きい。そのため、凹部33の断面が円形である場合、図示の実施例に限定するものではないが、概して、凹部33の深さ、つまり開口部36から底部331までを測定した長さ寸法の、凹部33の直径に対する比が、少なくとも10:1である。図7に示された例では、この比が約15:1に相当することが、凹部33の長さおよび高さから読み取ることができる。
【0052】
別の実施例によれば、工具クラウンの直径が34ミリメートルの場合に、深さが320ミリメートルの凹部がガラスセラミック内に形成された。したがって、深さの断面積18の最小半径に対する比が、8:1である。円形の断面の場合は、深さの直径9に対する比が4:1である。この種の凹部は、本発明による工具クラウン1を用いて容易に形成することができる。
【0053】
既に上記で説明したように、工具クラウン1は動作の高い円滑性をも特徴としているが、それにより、他方では非常に平滑な壁がもたらされる。その際、この実施例に限定するものではないが、本発明の発展形態では、凹部33の側壁332の平均粗さの値がR<6μmとなる。もし、ガラス材料又はガラスセラミック材料において、例えば、工具クラウン及び高い領域にあるフライス加工が徐々に進む際、凹部内に段が存在している場合、上記の値はこの段の外側の表面領域について有効である。0.1μmから5μmまでの平均粗さでさえ達成することができる。典型的な値は、0.5から3.5μmまでの範囲内にある。好適には、その粗さは最大5μm、特に好適には、最大3.5μmの値である。
【0054】
その際、最も平滑な壁が凹部33の穿孔によって形成され得る。フライス加工の場合とは異なり、穿孔の場合は、工具クラウン1が軸方向の前進のみによってガラス材料又はガラスセラミック材料内に導入される。その際、研磨手段25の円周速度は、円筒軸の位置ではゼロに等しいのであるが、中央研磨面15によってそもそも満足のいく時間内での穿孔が可能になる、ということは概して意外である。
【0055】
図7の例に基づいてさらに概略的に示すように、非常に薄肉の構造をもガラス又はガラスセラミック内に形成することができる。これは、工具クラウン1の動作の円滑性により、凹部33を形成する際の壁332の破損、特に亀裂が回避されるからである。そのため、工具クラウン1のふらつきもまた回避される。したがって、凹部33の壁332からガラス要素又はガラスセラミック要素30の表面までの最小距離が、最大で15ミリメートル、好ましくは最大で10ミリメートルである。この距離は、例えば、ガラス要素又はガラスセラミック要素30の外面までの距離、つまり、例えば、図7の最下部に図示された凹部33の壁332からガラス要素又はガラスセラミック要素30の側面333までの距離であってもよい。
【0056】
同様に図7に例示的および概略的に示されているように、薄い壁を、2つの隣接する凹部33の間に形成してもよい。したがって、この実施例に限定するものではないが、本発明の発展形態では、好適には隣接して延びる複数の研磨された凹部33が設けられ、2つの隣接する凹部の壁332間の最小距離が、最大15ミリメートル、好ましくは最大10ミリメートルである。実際の一実施例では、凹部33の深さが320ミリメートルの場合に、ゼロデュア・ガラスセラミック・ブロックにおいて僅か5ミリメートルの壁厚を確認することができた。
【0057】
中央研磨面15と研磨体の中空円筒部分の端面とブリッジの研磨面とが1つの平面上に位置する、工具クラウン1の端面の好ましい形成を前提として、凹部33は好適には、図示の例でもそうであるように、平らな底面331を備えている。
【0058】
図8は、実施例として、凹部33の典型的な断面形状を示している。この断面形状は、角が丸められた正方形又は長方形である。
【0059】
凹部33の壁332は、円形状に曲げられた壁部分336によって互いに接続された、真っ直ぐに延びる短い壁部分335を備えている。実際の一実施例では、曲げられた壁部分336の半径が19ミリメートルであり、真っ直ぐな壁部分の幅が5ミリメートルである凹部33が作成された。この断面形状は、図8の形状に対応している。凹部33の深さが320ミリメートルである場合、深さの最小半径に対する比が320/19=16.8となる。
【0060】
図9は、本発明によるガラス要素又はガラスセラミック要素30を撮影した写真である。具体的には、ここではゼロデュア・ガラスセラミック製のブロックが示されている。このブロック内には、凹部33が設けられている。ガラスセラミック・ブロック内の凹部33を可視化するために、凹部33の領域内の側面333には油が塗られている。
【0061】
油が塗られた表面の領域が、今でははっきりと透けて見えている。凹部33は図8に示された実施例に対応する断面形状を有している。凹部33の端部の底面331の近くには、2つの横溝38が形成されている。これらの横溝38もまた、本発明による工具クラウンによって、具体的にはフライス加工ではなく穿孔によって形成された。
【0062】
したがって、ガラス要素又はガラスセラミック要素の内部で互いに合流する、互いに連通した凹部を形成することも概して可能である。
【0063】
本発明は、本発明の例示的な実施形態のみに限定されるものではなく、以下の請求項の対象の枠内で様々に変更することができる。特に、個々の実施例の特徴を互いに組み合わせることも可能である。本発明は、中でも、軽量で安定した支持体、特にガラス又はガラスセラミック製の支持体の製造に適用することができる。このような支持体は、半導体製造において半導体ウエハーの露光の際に、又は望遠鏡用のミラー支持体として使用することができる。したがって、本発明は、少なくとも1つの本発明による凹部を備えた支持体、好適には、ガラス又はガラスセラミック製の支持体にも関する。
【符号の説明】
【0064】
1 工具クラウン
3 凹部
5 脆弱材料
7 軸
10 中空円筒状の研磨体
12 端面
13 円筒軸
15 中央研磨面
17、18、19 ブリッジ
20 10の内壁
22 外壁
25 研磨手段
27 開口部
30 ガラス要素又はガラスセラミック要素
31 30の表面
33 凹部
36 33の開口部
38 横溝
331 底面
330 33の中心
332 33の壁
333 30の側面
335 332の真っ直ぐな壁部分
336 332の曲げられた壁部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9