(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
時間情報を表示するための装置を補正するための機構(3’)であって、前記表示装置が、第1の時間情報を表示するための第1の表示部材(M)と、記憶された第1の情報を表示するための第2の表示部材(M’)と、を備え、前記機構が、前記第1及び第2の表示部材を隔離させるための隔離装置(LI)を備え、
前記隔離装置(LI)が、隔離レバー(LI1)を備え、前記隔離レバー(LI1)は、前記第2の表示部材(M’)に運動学的にリンクされているレバー(L1)と、第2の弾性部材(RL)の効果のもとで前記表示部材(M)に結合されたカム(C)を押圧する従動子(L2)と、前記レバー(L1)と前記従動子(L2)の相対位置を特定の相対位置に戻す第1の弾性部材(R)と、を含む枢動レバー装置(L)に作用する、機構。
前記隔離装置が、前記第1及び第2の表示部材の位置がリンクされる第1の構成と、前記第1及び第2の表示部材の位置が独立している第2の構成と、を有する、請求項1に記載の機構。
前記隔離装置(LI)が、前記隔離装置(LI)の前記第1の構成及び前記隔離装置(LI)の前記第2の構成に選択的に前記隔離装置(LI)を位置付けるために、補正要素(TR、T)によって作動される、請求項2に記載の機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術を考慮すると、同一の表示部材を用いて現在の情報及び記憶された情報を選択的に指示することができる切り換え機構は存在しないようである。実際、既知の切り換え機構は、現在の情報又は調整することができない所定の情報の選択的な指示のみが可能であることがわかっている。このために、表示装置に関連付けられた装置を用いて、計時器のフレームに搭載された表示装置のレバーを所定位置に駆動する。
【0009】
従来技術を考慮すると、いかなる時点でも作動させることができるレトログラード装置のための補正機構は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、時間情報を指示し記憶するための計時器機構、及び時間情報を表示するための装置を補正するための機構を提供することである。特に、本発明は、同一の表示部材によって現在の情報及び記憶された情報を選択的に指示することを可能とする時間情報を指示し記憶するための計時器機構、並びに、計時器、特に記憶された時間情報を指示する計時器の補正をいかなる時点でも可能とする時間情報を表示するための装置を補正するための機構を提案する。
【0011】
本発明の第1の態様に従った機構は以下のように規定される。機構は、時間情報を支持し記憶することを意図するものである。機構は、時間情報計数システムと、現在の時間情報及び記憶された時間情報を選択的に表示するように適合された時間情報を表示するための部材と、を結合する伝達装置を含む。機構、特に伝達装置は、
カムと、
レバー、従動子、並びに前記レバー及び前記従動子を特定の相対位置に付勢する第1の弾性部材、を含むレバー装置と
を含み、前記レバーが前記時間情報を表示するための表示部材に運動学的に結合され、前記従動子が第2の弾性部材によって前記カムに対して付勢される。
【0012】
前記レバー装置は前記機構のフレーム上で枢動可能である。
【0013】
前記機構は前記レバーの固定化部を含み、前記固定化部が、駆動部材、特にプッシュ部によって作動されて、前記レバーを解放する第1の位置又は前記レバーを固定化もしくはロックする第2の位置に選択的に位置付け可能である。
【0014】
前記駆動部材は、カム、特にコラム・ホイール等の記憶駆動部材を介して前記固定化部を作動させることができる。
【0015】
前記固定化部は、摩擦によって前記レバーの一端に作用する及び/又は前記レバーに作用することができる。
【0016】
前記機構は、前記従動子が前記時間情報計数システムに運動学的に結合された第1の位置と、前記従動子が前記時間情報計数システムから離脱した第2の位置と、を有する隔離装置を含むことができる。
【0017】
前記機構は、前記従動子が前記カムに突き当たる第1の位置と、前記従動子が前記カムから離脱するか又は前記カムからある距離にある第2の位置と、を有する隔離装置を含むことができる。
【0018】
前記隔離装置は、前記従動子の端部に作用する、特に接触によって作用するように適合されることができる。
【0019】
前記隔離装置は、前記固定化部が第1の位置にある場合は第1の位置にあり、前記固定化部が第2の位置にある場合は第2の位置にあることができる。
【0020】
前記隔離装置は、駆動部材、特にプッシュボタンに結合され、前記駆動部材が前記固定化部に結合されることができる。
【0021】
前記駆動部材は、前記固定化部を作動させる記憶駆動部材、特に前記コラム・ホイールを介して前記隔離装置を作動させるための部材を含むことができる。
【0022】
前記表示部材の動きはレトログラードの動きであることができる。
【0023】
前記機構は、レトログラード又は非レトログラード表示部材を含むことができる。
【0024】
本発明の第1の態様において、ここで定義した機構を含む計時器ムーブメントであり、特に先に定義した機構を含み、前記レバー装置が前記ムーブメントのフレーム上で枢動する、計時器ムーブメントである。
【0025】
本発明の第1の態様において、先に定義したムーブメント又は先に定義した機構を含む計時器、特に時計、具体的には腕時計である。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、時間情報を表示するための装置を補正するための機構は、第1の時間情報を表示するための第1の表示部材と、第1の記憶された情報を表示するための第2の表示部材、特にレトログラード式の第2の表示部材と、を含む。この機構は、第1及び第2の表示部材を隔離させるための装置を含む。
【0027】
隔離装置は、第1及び第2の表示部材の位置がリンクされる第1の構成と、第1及び第2の表示部材の位置が独立している第2の構成と、を有する。
【0028】
隔離装置は、隔離装置の第1の構成及び隔離装置の第2の構成に選択的に隔離装置を位置付けるために、補正部材、特にオシドリによって作動させることができる。
【0029】
隔離装置及び補正部材は、補正部材が隔離装置を作動させることで第2の表示部材を既定の位置に、特に末端又は当接位置に位置付けることが可能となっている。
【0030】
駆動部材及び隔離装置は、駆動部材が隔離装置を、例えばコラム・ホイール等の記憶駆動部材を介して作動させるようにすることができる。
【0031】
駆動部材又は補正部材が隔離装置の第2の構成の条件を満たす状態にない限り、隔離装置は第1の構成に存在することができる。
【0032】
隔離装置の第1の構成において、従動子は、第2の弾性部材によって表示部材に結合されたカムに押圧させることができ、隔離装置の第2の構成において、従動子は、カムから離脱させる、すなわちカムからある距離に維持することができる。
【0033】
隔離装置は、隔離装置の第1の構成によって規定される第1の位置及び隔離装置の第2の構成によって規定される第2の位置に選択的に従動子を位置付けるために、補正部材、特にオシドリによって作動させることができる。
【0034】
補正部材による隔離装置の作動によって、レバーを回転させることができる。
【0035】
この機構はレバーの固定化部を含むことができ、これは記憶駆動部材、特にコラム・ホイールと共働して、レバーを解放する第1の位置又はレバーを固定化する第2の位置に選択的に固定化部を位置付ける。
【0036】
隔離装置、補正部材、及び従動子は、固定化部がレバーを解放する第1の位置にある場合に従動子が補正部材によって第
1の位置に位置付けられるようにすることができ、及び/又は、隔離装置、補正部材、及び従動子は、固定化部がレバーを固定化する第2の位置にある場合に従動子が隔離装置によって第2の位置に位置付けられるようにすることができる。
【0037】
隔離装置は、従動子の一端に作用する及び/又は従動子に作用する障害物を構成するように適合することができる。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、計時器ムーブメントは先に規定したような機構を含む。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、計時器、特に時計、具体的には腕時計は、先に規定したようなムーブメント又は先に規定したような機構を含む。
【0040】
何らかの技術的又は論理的な不一致がない限り、本発明の第1の態様のいずれかの特性又は複数の特性の組み合わせを、本発明の第1の態様のいずれかの特性又は複数の特性の組み合わせと組み合わせることができる。
【0041】
添付図面は、本発明による計時器機構の実施形態を一例として図示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これより、本発明の第1の態様に従った計時器1の第1の実施形態について、
図1から
図13を参照して説明する。計時器は例えば時計であり、具体的には腕時計である。これはムーブメント2を含む。このムーブメント自体が、これより一実施形態を説明する時間情報を指示し記憶するための機構3を含む。
【0044】
後述するように、計時器、特にムーブメント、更に具体的には機構は、同一の表示部材を用いて現在の時間情報及び記憶された時間情報、特に現在の時間情報の記憶された値を選択的に指示する固有の特性を有する。選択は単一の駆動部材4の作動によって駆動される。例えば、かかる指示及び記憶機構3は、対象の現在情報を表示するために通常設けられている従来の表示部材を用いて、要求に応じて、時間、時間情報、又は時間から派生したいずれかの情報を標示するのに有用であり得る。
【0045】
記載する実施形態において、記憶された情報はレトログラード・システムによって表現又は指示される。このため、
図1が示す実施形態では、計時器の従来の秒針Sに秒記憶レトログラード針S’が追加されている。従って、ここでは記憶針から成る表示部材S’の動きは、レトログラードの動きとすることができる。
【0046】
通常動作においては、
図1に示すように、秒針Sと同様の針S’は現在の秒を指示する。第1のアクション、特に
図2に示すように駆動部材4を押すことによって、針S’は停止するが、秒針Sは作用を受けず動き続ける。この状態において、計時器では、現在の時間情報及び記憶された時間情報の同時指示又は表示が行われる。第2のアクション、特に同一の駆動部材を押すことによって、針S’は再び位置付けられて、
図3に示すように再び現在の秒を表示する。このため2本の針S及びS’は再び同期する。従って各針は現在の秒を表示する。
【0047】
時間情報を指示及び記憶するための機構3は、時間情報を供給することができる計数システム5と、現在の時間情報及び記憶された時間情報を選択的に表示するように適合された時間情報を表示するための部材S’と、を結合する伝達装置7を含む。伝達装置は以下を含む。
カムC、
レバーL1と、従動子L2と、これらのレバー及び従動子を特定の相対位置に付勢する第1の弾性部材Rと、を含むレバー装置L。
【0048】
レバーL1は、時間情報を表示するための表示部材S’に運動学的に結合され、従動子L2は、第2の弾性部材RLによってカムCに対して付勢される。
【0049】
この実施形態においては、時間情報は秒に関する。同様に、時、分、更には別の時間の大きさの単位に関することもできる。
【0050】
表示部材は、指示及び/又は目盛りを有する標示と共働する針を含むか又はこの針で構成することができる。計数システムとは、少なくとも表示部材を駆動するためのいずれかの装置を意味する。表示部材は、計数システムの一部ではないことが好ましい。例えば計数システムは、特にてん輪/ひげぜんまい/脱進機システムによって規制される香箱や歯車列等の動力源(accumulator)を含む。
【0051】
「現在の時間情報及び記憶された時間情報を選択的に表示する」とは、遷移フェーズを除いていかなる時点でも、表示部材が現在の時間情報及び記憶された時間情報のいずれかを表示することを意味する。遷移フェーズは瞬間的又はほぼ瞬間的である。これは例えば0.3秒未満等、秒の小数部分だけ継続する。従って表示部材は、時間に無関係な既定の位置に達しない。表示部材は時間情報表示機能を連続的に実行することになる。
【0052】
好ましくは、レバー装置Lは、特にムーブメント又は計時器のフレームである機構のフレーム6上で枢動する。
【0053】
図4に示すように、カムCは例えば渦形カムである。これは、時間情報を表示するための秒表示部材Sに運動学的に結合された秒可動部MSによって直接支持することができる。秒表示部材Sは、特に秒可動部上に配置することができる。カムCの形状は、第1の表示部材S’が例えば瞬間的な戻りでレトログラード移動を行うようになっている。秒表示部材Sはレトログラードである場合もあるし、そうでない場合もある。
【0054】
レバー装置Lは枢軸Pを中心に枢動する。すでに述べたように、レバー装置は2つの部分を有する。すなわちレバーL1及び従動子L2である。これらの部分の各々が枢軸Pを中心に枢動する。2つの部分は、戻りばねR等の第1の弾性部材によって相互に結合されている。この第1の戻り部材を用いて、レバー及び従動子を
図4に示すような特定の相対位置に付勢する。
【0055】
レバーL1は、例えば端部の一方に歯L10又はラックを担持する。これらの歯は、表示部材S’が運動学的に結合された歯車PS’と噛み合う。秒記憶針S’は、特に歯車PS’上に配置することができる。レバー装置の第2の部分は、第2の戻り弾性部材RLによってカムCのプロファイルに対して押圧される従動子ヘッドL20を含む従動子L2を含む。
【0056】
通常動作において、すなわち表示部材S及びS’が同期されている場合、レバー装置は剛性部材として機能する。従ってこれは、枢軸Pを中心に枢動する剛性の構成要素にたとえられる。実際、第1の弾性部材Rはレバー及び従動子を相互に対して所定の位置に保持することに寄与する。この所定の位置は、所定の位置で相互に障害物となるように共働するレバー及び従動子上の停止部によって規定される。例えばピンGL2は、
図4及び
図5に示すように従動子L2上に配置され、レバーL1のフランクFL1に当接するように適合されている。あるいは、ピンはレバーL1上に配置され、レバーL2のフランク又は従動子の他の何らかの要素と共働する場合もある。
【0057】
従って、カムCが時計回りに回転するとレバー装置Lは反時計回りに回転するので、歯L10によって表示部材S’を秒表示部材と同期するように駆動することができる。これを
図6から
図9に示す。ここで、「同期」とは、2つの表示部材が同じ時間値を示すことを意味する。しかしながら、それらの動きが同一である必要はない。特に、それらの角度移動速度値は異なる場合がある。
【0058】
機構3は、レバーL1を固定化するための固定化部LBを含むという利点がある。固定化部は、駆動部材O、特にプッシュ部4によって作動されることで、レバーL1を解放する第1の位置又はレバーL1を固定化もしくはロックする第2の位置に選択的に位置付けることができる。
【0059】
このために駆動部材Oは、特にコラム・ホイールであるカム等の記憶駆動部材RCを介して固定化部LBを作動させることができる。
【0060】
固定化部は、摩擦によって、レバーL1の一端L100及び/又はレバーL1に作用することができる。
【0061】
表示部材S及びS’が同期されている場合、
図10に示すように、固定化レバー又は固定化部LBはレバーL1に作用することができない位置となる。
【0062】
この固定化部LBは、例えばジャンパばねRSによって角度が割り出される(index)コラム・ホイールRCの形態をとるカム等の記憶駆動部材によって駆動される。このコラム・ホイールは、コラム及びくぼみから成る二部分のプロファイルRCaを有することができる。
図10に示した前述の構成では、固定化部LBの一端LB1がカムRCのコラムの1つに突き当たるので、固定化部LBのアームLB10はレバーL1の端部L100に届かない。
【0063】
また、コラム・ホイールRCは、駆動部材O、特にプッシュ部4によって駆動レバーLCを介して1つの角度刻みだけ作動され駆動されるように適合されたラチェット歯RCbを有する。プッシュ部を押すとコラム・ホイールRCが回転するので、固定化部LBの端部LB1が戻りばねRLBによってコラム・ホイールのくぼみ内に動く。この構成では、
図11に示すように、固定化部LBのアームLB10が、特にアームLB10及びレバーL1の端部の界面における摩擦係数fの関数として、方向付けられた端部L100に対して力Fを加えるので、レバーL1は枢軸Pを中心とする回転に対して固定化されロックされる。しかしながら従動子L2については、カムCの回転によって枢軸Pを中心に回ることができる。この回転は第1の弾性部材Rに対して発生し、これを変形させる。この状況の結果として、秒表示部材Sがその動きを継続している一方で表示部材S’は固定化される。
【0064】
駆動部材Oを再び押すと、コラム・ホイールRCは
図10と同様の構成に再び位置付けられる。次いで固定化部LBのアームLB10は、ばねRLBの作用に反してレバーL1の端部L100から遠ざかる。従ってレバーL1は解放され、第1の弾性部材Rの効果によって、そのフランクFL1が従動子L2のピンGL2に当接するように再び位置付けられる。このように、レバー装置Lは再び
図8から
図10に示すような構成となる。従って表示部材S及びS’は再び同期する。
【0065】
記憶フェーズにおいて、すなわち表示部材S’が記憶された時間情報を指示する場合は、
図11に示すように、カムCを介して計時器の動きを駆動する部材は、第1の弾性部材Rによって生成されたトルクに抵抗し、このトルクは第2の弾性部材RLによって生成されたものに加えられる。この状況は計時器の時間測定法に関して最適ではない。
【0066】
この問題を解決するため、機構3は、従動子L2が時間情報計数システムに運動学的に結合された第1の位置と、従動子L2が時間情報計数システムから離脱した第2の位置と、を有する隔離装置LIを含むことができる。このため、第1の位置において従動子L2はカムCに突き当たり、第2の位置において従動子L2はカムCから離脱するか又はカムCからある距離に保持される。
【0067】
隔離装置は、従動子L2の端部L200に対して、特にそれとの接触によって作用するように適合されているという利点がある。
【0068】
好ましくは、隔離装置及び固定化部は、相互に運動学的に結合されるか、又は締結されるかもしくは固定される。このため隔離装置は、固定化部がその第1の位置にある場合は第1の位置にあることができ、固定化部がその第2の位置にある場合は第2の位置にある。
【0069】
従って隔離装置LIは、固定化部LBがレバーL1を固定化している場合にカムCの経路から従動子L2を外すように固定化部LBに追加されると好ましい。このために、隔離装置LIはコラム・ホイールRCを介して固定化部LBと同期して動作する。
図12及び
図13はそのような1つの隔離装置を示す。
【0070】
図12に示すように表示部材S及びS’が同期される場合、隔離レバーLI1及びばね等の弾性部材RLIを含む隔離装置LIは、固定化部LBと同様に、レバー装置Lの従動子に作用することができないように位置付けられる。更に具体的には、隔離装置LIの端部LI10は、ばねRLIの効果によってカムRCのプロファイルRCaのくぼみに位置するので、隔離装置LIのフランクLI100は従動子L2のフランクL200に届かない。
【0071】
記憶フェーズでは、
図13に示すように、隔離装置LIのフランクLI100は、ばねR及びRLに対して従動子L2のフランクL200に突き当たり、一方でレバーL1の端部L100は固定化部LBのアームLB10によって予め固定化される。従って、全ての状況において、特に
図12及び
図13に示す状況では、カムCを介して計時器の動きを駆動する部材は、ばねRLが生成するトルクに対して最大の抵抗を与える。この最大の抵抗は表示部材が同期される状況で生じる。
【0072】
当然ながら、複数の記憶装置を関連付けて2つ以上の時間情報項目を記憶することができる。これは特に運動学的にリンクされた項目であり、例えば分及び秒の指示、時及び分の指示、又は時、分、及び秒の指示である。これらの装置は、これらの時間情報項目の各々のレバーを同期して駆動するための単一のカムRCを介して単一の駆動部材によって駆動することができるという利点がある。従って、以下の記憶を可能とする機構、ムーブメント、又は計時器を生成することができる。
時及び分、又は
分及び秒、又は
時、分、及び秒。
【0073】
隔離装置は、駆動部材O、特にプッシュボタン4に結合されているという利点があり、駆動部材は固定化部LBに結合されている。従って駆動部材は、固定化部及び隔離装置の位置を同時に変更することを可能とする。
【0074】
また、駆動部材は、固定化部LBを作動させる記憶駆動部材RC、特にコラム・ホイールを介して隔離装置を作動させるための部材を備えることができる。
【0075】
これより、
図14から
図22を参照して、本発明の第2の態様に従った計時器1’の第2の実施形態について説明する。この計時器は例えば時計であり、具体的には腕時計である。これはムーブメント2’を含む。このムーブメント自体が、上述のような時間情報を表示するための装置を補正するための機構3’を含む。
【0076】
補正機構は、時間情報もしくは時間派生情報を表示するための装置についての双方向補正、又は時間情報もしくは時間派生情報を表示するための装置の双方向補正を可能とする。かかる機構は特に、本発明の第1の態様に従った表示及び記憶装置によって記憶することができる時間又は時間派生指示を双方の補正方向で補正するように適合されている。
【0077】
記載する実施形態において、補正対象の情報は、レトログラードによって、特に瞬間的な戻りのレトログラードによって指示される。「レトログラード表示」とは、2つの回転方向に枢動することができる表示部材を使用可能ないずれかの表示を意味する。表示部材は、完全な回転を行うのではなく、例えば時間関連の大きさを表す目盛りの前で、出発点Aから到着点Bまでの経路をたどる。いったんAからBまでの経路が完了したら、指示部材は特に瞬間的に点Aに戻る。以降の説明では表示部材M及びM’は分表示部材である。しかしながら、それらは同様に、時もしくは秒表示部材、又は他の何らかの大きさを表示する部材とすることができる。前述の実施形態においてと同様に、表示部材は針を備えるか又は針から成ることができる。
【0078】
本発明の第2の態様に従った実施形態の要素及び本発明の第1の態様に従った実施形態の要素が同一であるか又は同じ機能を有する場合は、同一の参照符号を有する。
【0079】
第1の実施形態においてと同様に、渦形のカムを用いて、情報を表示すると共に、レバー装置L及び戻りばねRLによって表示部材M’を所定の位置へ瞬間的に戻すことを保証する。このカムは現在の時間表示システムに運動学的に結合され、従ってこの現在の表示の順方向及び逆方向の補正の間に回転駆動される。ここで、このカムの幾何学的形状は、レバー装置及び表示部材M’の瞬間的な戻りを可能とするための急傾斜のフランクの存在によって特徴付けられるが、これによって逆方向の補正の間に問題が生じる。実際、反時計回りの補正は、レバー装置の従動子がカムの急傾斜のフランクの上部に到達した場合は不可能である。従ってこの構成は、構成要素の損傷、更には破損のリスクが高い。
【0080】
また、
図12及び
図13に示す機構3の変形と同様に、機構3’は、従動子がカムから離脱することを可能とするレトログラード・システムに関連付けられたクラッチを含む。機構3’において、このシステムは更に、時間情報を調整する動作の間にカムの双方向の回転を可能とする。このクラッチは、特に隔離装置の回転運動を介してレトログラード・レバー装置Lに直接作用する固有の特性を有する。実際、かかる構成は時間情報の補正及び記憶機能の相互作用を可能とするという利点がある。別の利点は、補正機構を増加させることが重要である場合に必要となる構成要素数を最小限に抑えるということである。
【0081】
従来技術の解決策では、時間情報を記憶するフェーズの間に時間情報の表示を決定するレバーを固定化させると、前記レバーの解放を可能とする戻りレバーが固定化するようである。このため、この構成では巻真を引っ張ることができず、補正位置に達することができない。
【0082】
本発明の第2の実施形態に従った補正機構の実施形態によって、前述の欠点を克服することができる。実際、それらはいかなる時点でも、すなわち時間情報を記憶した場合でも作動させることができる。
【0083】
図18に示すように、時間情報を表示するための装置を補正するための機構3’は、第1の時間情報を表示するための第1の部材Mと、第1の記憶された情報を表示するための第2の部材M’と、を含む。機構は第1及び第2の表示部材を隔離させるための装置を含む。
【0084】
隔離レバーが存在することによって、後述するような機構の機能を有することができる。通常動作においては、
図14に示すように、第2の表示部材M’は第1の表示部材Mと同様に、例えば現在の分を指示する。補正フェーズでは
図15に示すように、すなわち調整竜頭が引っ張られた場合は、第2の表示部材M’は所定の位置に位置付けられるが、調整竜頭を双方向に回転させると第1の表示部材Mは双方の方向に駆動される。所定の位置は時間に対して不変であると好ましい。
【0085】
記憶フェーズでは、
図16に示すように、駆動部材Oの作動によって第2の表示部材は停止するが第1の表示部材は動き続ける。この構成では
図17に示すように、調整竜頭CRは第2の表示部材M’に何も影響を与えず、第2の表示部材M‘は駆動部材Oによって規定された位置に留まる。調整竜頭CRを双方向に回転させると、第1の表示部材は双方の回転方向に駆動される。
【0086】
従って隔離装置は、第1及び第2の部材の位置がリンクされる第1の構成と、第1及び第2の部材の位置が独立している第2の構成と、を有する。
【0087】
第1の実施形態においてと同様、機構3’は、第1の表示部材が固定された、特に皿頭型(countersink)である筒カナCHによって直接担持される渦形カムCを含むことができる。第2の表示部材M’は、第1の実施形態で記載したものと同様のレトログラード・システムによって動かされる。
【0088】
隔離装置は、補正機構のオシドリTによって及び記憶機構のカムRCによって作動させることができるように適合することができる。
【0089】
通常動作においては、
図18に示すように、すなわち第1及び第2の表示部材が結合又は同期されている場合は、隔離装置は第1の構成にある。更に具体的には、隔離装置はレトログラード・レバー装置Lに届かないように適合される。更に具体的には、隔離装置LIの端部LI10がばねRLIの効果によってカムRCの二部分から成るプロファイルRCaのくぼみ内に位置するので、隔離装置LIのフランクLI100は従動子L2のフランクL200に届かない。
【0090】
隔離装置LIは、補正部材、特に巻真TR又はオシドリTによって作動されて、従動子L2を、隔離装置LIの第1の構成が規定する第1の位置、及び隔離装置の第2の構成が規定する第2の位置に選択的に位置付けることができる。
【0091】
補正部材による隔離装置LIの作動によって、レバー装置L10を回転させることができる。
【0092】
上述のように、隔離装置及び補正部材は、補正部材が隔離装置LIを作動させることで第2の表示部材M’を既定の位置に、特に末端又は当接位置に位置付けることが可能となっている。この位置はユーザに補正状態を指示することができる。記憶フェーズでは、表示も補正することができる。この場合、第2の部材M’は記憶された位置に留まる。これらの機能は、隔離装置LI、補正部材T、TR、記憶駆動部材RC、及び固定化部LBの特定の配置によって与えられる。2つの場合の各々において、隔離装置は第2の構成にある。
図18から
図22に示す配置に加えて、他の配置も明らかに実行可能である。
【0093】
更に、駆動部材O及び隔離装置LIは、駆動部材が隔離装置を作動させることができるという利点がある。特に、この作動は記憶駆動部材RCを介して行われる。
【0094】
従って隔離装置は、駆動部材又は補正部材が隔離装置の第2の構成の条件を満たす状態にない限り、第1の構成にある。前述の「又は」は、「包含的論理和(inclusive or)」である。すなわち、隔離装置が第2の構成にあるためには、駆動部材及び/又は補正部材が隔離装置の第2の構成の条件を満たす状態にあれば充分である。駆動部材及び補正部材の各々が隔離装置の第2の構成の条件を満たす状態にある場合、隔離装置は更に強い理由でこの第2の構成となる。
【0095】
補正機構のオシドリTは、全体的に従来の動作モードを有する。これは、オシドリ・スタッドPTを介して巻真TRと相互係合して、巻真が並進作動された場合に回転駆動されるようになっている。巻真の位置、すなわち
1.ニュートラル位置
2.調整位置
も、オシドリと共働するように設けられたジャンパ(図示せず)のノッチング効果によって、従来通りに規定される。
【0096】
図18の構成において、隔離装置のフランクLI1000はオシドリTのピンGT1に面する。従って、巻真TRを引く(traction)と、ピンGT1が隔離装置のフランクLI1000に接触して、隔離装置を枢動させる。調整フェーズでは、隔離装置LIのフランクLI100がレバー装置LのフランクL200を作動させ、レバー装置Lは戻りばねRLの作用に対して特定の角度位置に位置付けられ、従動子L20がカムCの経路から外れる。このためカムCの双方向の回転が可能となる。従って、第1の表示部材Mによって指示される表示を補正するための運動学的システムCMは、
図19に示すように双方の回転方向に駆動することができる。
【0097】
運動学的システムCMは、オシドリTのピンGT2の効果によって作動させることができる。調整位置では、
図20に示すように、このシステムはレバーBをばねRBに対して位置付けて、つづみ車PCの前歯DFを介して運動学的システムCMに係合させる。
【0098】
隔離装置は、記憶フェーズの間に
図21に示すように適合され、すなわち第2の表示部材M’が固定化レバー又は固定化部LBの効果によって固定化された場合、隔離装置LIを用いて、駆動カムRCの効果によってカムCの経路から従動子L20を外す。更に具体的には、隔離装置LIの端部LI10がカムRCのコラムの1つに突き当たるので、フランクLI100はレバーL2のフランクL200をばねR及びRLの作用に対して持ち上げる。この構成では、オシドリTのピンGT1は隔離装置LIのフランクLI1000に届かない。従って、巻真を引いても、従動子L20がカムCの経路から外れるように予め位置付けられた隔離装置LIに効果を与えない。従ってカムCの双方向の回転が可能となる。このため、
図22に示すように、第1の表示部材Mによって指示される表示を補正するために設けられた運動学的システムCMを、双方の回転方向に駆動することができる。
【0099】
従って、好ましくは従動子L2は、隔離装置LIの第1の位置において、第2の弾性部材の効果によって、第1の表示部材Mに結合されたカムCに突き当たるように適合されている。従動子L2は、隔離装置LIの第2の位置において、カムCから離脱するすなわちカムからある距離に保持されるように適合することができる。
【0100】
隔離装置LIは、レバーL1と、従動子L2と、レバーL1及び従動子L2を特定の相対位置に付勢する第1の弾性部材Rと、を含む枢動レバー装置Lに作用することができるか又は作用するように適合された隔離レバーLI1を含むことができる。レバーL1は第2の表示部材M’に運動学的に結合されている。
【0101】
隔離装置、補正部材、及び従動子は、固定化部LBがレバーL1を解放する第1の位置にある場合に補正部材TR、Tによって従動子が第
1の位置に位置付けられるように適合されている。
【0102】
固定化部LBは記憶駆動部材RCと共働することで、レバーL1を解放する第1の位置又はレバーL1を固定化する第2の位置に固定化部を選択的に位置付けることができる。
【0103】
隔離装置LIは、従動子L200の端部L200に作用する及び/又は従動子の障害物になるように作用するように適合することができる。
【0104】
換言すると、本発明の第2の態様によれば、隔離装置は好ましくは、
特に接触を介した共働によって補正部材に運動学的に結合するように適合された第1の部材と、
特に接触を介した共働によって記憶駆動部材に運動学的に接続するように適合された第2の部材と、
特に接触を介した共働によって従動子に運動学的に結合するように適合された第3の部材と、
を含む。
【0105】
補正部材の構成、特に位置、及び記憶駆動部材の構成、特に位置が、隔離装置の構成、特に位置を決定する。隔離装置の構成、特に位置、及び記憶駆動部材の構成、特に位置が、従動子の構成、特に位置を決定する。
【0106】
当然ながら、複数の補正装置を関連付けて2つ以上の時間情報項目を補正することができる。これは特に相互に運動学的にリンクされた情報項目であり、例えば時間及び分の指示である。これらの装置は、記憶された時間情報を表示するための部材の各々に固有の隔離レバーを同期して駆動するように単一のオシドリT及び単一の駆動カムRCによって駆動することができるという利点がある。好ましくは、隔離レバーLI及びオシドリTが単一の運動学的システムを形成することができる。
【0107】
様々な実施形態において、固定化部は、コラム・ホイールを用いることなく、プッシュ部等の駆動部材によって直接作動させることができる。この場合、ユーザが駆動部材を作用させた場合に記憶された情報を表示すれば良い。
【0108】
様々な実施形態において、固定化部LBは、「記憶」フェーズにおいてレバーL1がいかなる位置にある場合でもレバーL1を固定化するように適合することも可能である。換言すると、「記憶」フェーズにおいて固定化部LBは、表示部材S’がいかなる位置にある場合でも表示部材S’を停止することができるように適合することも可能である。
【0109】
様々な実施形態において、レバー装置Lは一部品又は一体構造に製造することができ、この場合は第1の弾性部材が弾性変形可能部であり、特にレバーL1及び従動子L2を分離させる弾性変形可能部である。
【0110】
様々な実施形態において、「時間情報の記憶」とは、好ましくは、時間情報を記録する(memorize)行為を意味する。この記録する行為は、ユーザの行為によって引き起こされるのが好ましい。この記録行為は、好ましくは、現在の又はユーザの行為の時点での瞬間的な時間情報を記録することに関する。従って、ユーザが特定の行為を行うたびに新しい時間情報を記憶することができる。この記憶された時間情報の表示を維持することができる。時間情報の記憶とは、現在の又は瞬間的な時間情報を固定することである場合がある。いくつかの部材が記憶された時間情報を指示することに固定又は固定化された場合、他の部材は現在の時間情報を表示し続けることができる。
【0111】
様々な実施形態において、第1の弾性部材及び第2の弾性部材は別個である。
【0112】
様々な実施形態において、従動子L2はレバーL1に連結(articulate)又は枢動させることができる。
【0113】
表示部材を1つ以上の位置に無作為に又は規定して位置付けること、すなわちユーザによって規定可能又は変更可能でない1つ以上の位置に位置付けることは、オンデマンドの表示機構において実行され得るが、本発明の意味における記憶を構成しない。
【0114】
技術的又は論理的な不一致がない場合、明らかに本発明の第1及び第2の態様を組み合わせることができる。