(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは半導体集積回路装置に作り込まれており、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの少なくともいずれか一方の容量値の調整は前記半導体集積回路装置の配線工程及び集束イオンビームの少なくともいずれか一方で行われることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のブートストラップ回路。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本発明にかかる第1の実施形態を示す。ブートストラップ回路100は、ブーストパルス入力端STARTに印加される単一のパルスP1に基づき、ブースト出力電圧Vbo1をブースト出力端BOOTに出力し、ブーストすなわち昇圧されたブースト出力電圧Vbo1は負荷LOADに供給される。負荷LOADは、たとえばフラッシュメモリ、DRAM等に用いられるワードラインドライバである。ブートストラップ回路100は、2つのブースト手段を備えている。
【0023】
第1のブースト手段はトランジスタQ10、キャパシタC10、及びインバータINV1〜INV4で構成されている。第2のブースト手段はトランジスタQ20、キャパシタC20、及びインバータINV1,INV2、及びインバータINV5で構成される。トランジスタQ10とトランジスタQ20は一般的に良く知られたフリップフロップを構成している。すなわち、トランジスタQ10のドレインDはトランジスタQ20のゲートGに、トランジスタQ20のドレインDはトランジスタQ10のゲートGにそれぞれ接続されている。第1の実施形態ではトランジスタQ10,Q20はNMOSトランジスタで構成したがPMOSトランジスタで構成してもかまわない。また、バイポーラ型のNPNトランジスタ、PNPトランジスタで構成することもできる。
【0024】
すなわちフリップフロップを構成するにあたっては、MOSトランジスタを用いてもよいし、バイポーラトランジスタを用いてもよい。本書では、MOSトランジスタのソースS、ドレインD、及びゲートGは、それぞれ第1主電極、第2主電極、及び制御電極と称される。フリップフロップに、バイポーラトランジスタを採用する場合には、エミッタ、コレクタ、及びベースをそれぞれ第1主電極、第2主電極、及び制御電極と呼称することができる。
【0025】
インバータINV1〜INV5は、消費電力が少なく、スイッチング特性に優れたCMOSインバータを用いることが好ましい。
【0026】
トランジスタQ10のドレインDとトランジスタQ20のゲートGとの共通接続点は、ノードN10で、トランジスタQ20のドレインDとトランジスタQ10のゲートGとの共通接続点はノードN20でそれぞれ示されている。
【0027】
ブートストラップ回路100が半導体基板上に作り込まれている場合には、構造上、ノードN10と接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs10が、ノードN20と接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs20がそれぞれ介在されることになる。なお、トランジスタQ10,Q20の各ゲートGと各ドレインDとの間、及び各ゲートGと各ソースSとの間にも寄生キャパシタが介在されるがこれらの寄生キャパシタは説明の便宜上図示していない。
【0028】
ノードN10にはキャパシタC10の第1端が、その第2端にはインバータINV4の出力がそれぞれ接続されている。インバータINV4の入力にはインバータINV3の出力が、インバータINV3の入力にはインバータINV2の出力が、インバータINV2の入力にはインバータINV1の出力が、インバータINV1の入力にはパルス入力端STARTがそれぞれ接続されている。したがって、ブーストパルス入力端STARTとノードN10とはインバータINV1〜INV4及びキャパシタC10とが直列に接続されている。ブースト信号入力端STARTに印加されるパルスP1とインバータINV4の出力から取り出されるパルスP2の振幅値はほぼ等しく、また両者は同極性である。したがって、パルスP1がハイレベルのときにパルスP2もハイレベルであり、パルスP1がローレベルのときパルスP2もローレベルとなる。パルスP2の波形はパルスP1のそれがインバータINV1〜INV4によって整形されたものとなる。すなわち、インバータINV1〜INV4はパルスP1を波形整形するために適宜段数が選ばれている。
【0029】
ノードN10の電位vn10の初期値は不定である。ここで初期値とは電源端子VPP1に電源電圧vpp1が、電源端子VPP2に電源電圧vpp2がそれぞれ供給されてはいるが、ブーストパルス入力端STARTにパルスP1が印加されていないときの電圧を指す。パルスP1がブーストパルス入力端STARTに印加され、そのレベルがローレベルのときトランジスタQ10はオンし、ノードN10の電圧レベルvn10は電源電圧vpp1とほぼ等しくなる。
【0030】
ノードN20にはキャパシタC20の第1端が、その第2端はインバータINV5の出力にそれぞれ接続されている。インバータINV5の入力にはインバータINV2の出力とインバータINV3の入力が接続されている。したがって、ブーストパルス入力端STARTとノードN20との間にはインバータINV1,INV2,INV5、及びキャパシタC20が直列に接続されている。ブーストパルス入力端STARTに印加されるパルスP1とインバータINV5の出力から取り出されるパルスP3とは極性は逆ではあるが、振幅値はほぼ同じである。したがって、パルスP1がハイレベルのときにパルスP3はローレベルであり、パルスP1がローレベルのときにパルスP3はハイレベルになる。
【0031】
パルスP3の信号波形はパルスP1のそれがインバータINV1,INV2及びINV5によって波形成形されたものとなる。すなわち、インバータINV1,INV2及びINV5はパルスP1を波形整形するために設けられている。
【0032】
ノードN20の電圧vn20の初期値はノードN10の電位と同様に不定である。ここで初期値とは電源端子VPP1に電源電圧vpp1が、電源端子VPP2に電源電圧vpp2がそれぞれ供給されてはいるが、ブーストパルス入力端STARTにパルスP1が印加されていないときの電位を指す。パルスP1がブーストパルス入力端STARTに印加され、そのレベルがハイレベルのときトランジスタQ20はオンし、ノードN20の電位vn20は電源電圧vpp1とほぼ等しくなる。
【0033】
パルスP1がローレベルのときパルスP3はハイレベルとなり、キャパシタC20の第2端の電位は突き上げられキャパシタC20の第1端すなわちノードN20の電圧は初期値よりも電位Vc20だけ大きくなる。電位Vc20の最大値はパルスP3のピーク値VHに等しい。したがって、パルスP3のピーク値VHと電源端子VPP1の電源電圧vpp1を等しく設定すると、ノードN20の電位Vc20の最大値は2・vpp1となる。しかし、ノードN20と接地電位GNDとの間には寄生容量Cs20が存在するために、電位Vc20=2・vpp1とはならず、Vc20=1.7・vpp1〜1.9・vpp1となる。なお、ノードN20の電位Vc20を高くするためにはキャパシタC20の容量値をできるだけ大きくすることが好ましいが、半導体集積回路の集積度を考慮すると、この大きさはできるだけ小さく抑えることが望ましい。本発明では4pF〜16pFの範囲に設定されている。
【0034】
なお、
図1示のブートストラップ回路100を構成する各トランジスタ、各キャパシタ、各電源端子、各ノードについて本書では次のように称される。すなわち、トランジスタQ10は第1トランジスタ、トランジスタQ20は第2トランジスタ、キャパシタC10は第1キャパシタ、キャパシタC20は第2キャパシタ、電源端子VPP1は第1電源端子、電源端子VPP2は第2電源端子、ノードN10は第1ノード、ノードN20は第2ノードである。また、パルスP2は第1ブーストパルス、パルスP3は第2ブーストパルスとしてそれぞれ称される。
【0035】
ノードN20はブースト出力端BOOTに結合されている。
図1にはノードN20とブースト出力端BOOTとを直結したものを示したが、両者間には他のブースト手段やトランジスタからなるバッファ等を結合させても良い。
【0036】
トランジスタQ10,Q20の各ソースSは共通接続され、その共通接続点は電源端子VPP1に接続されている。電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1はたとえば1.5Vである。
【0037】
電源端子VPP2とブースト出力端BOOTとの間にはダイオードDRと抵抗RCとの直列接続体が接続されている。電源端子VPP2に供給される電源電圧vpp2はブースト出力端BOOTに結合される負荷LOADの回路構成や使用状態に応じて適宜設定される。たとえば、負荷LOADを半導体記憶回路装置のメモリセルへデータを書き込むときの電源電圧vpp2はたとえば5Vに設定され、メモリセルからデータを読み出しするときには電源電圧vpp2はたとえば電源電圧vpp1と同じたとえば1.5Vに設定される。
【0038】
負荷LOADはトランジスタQ30,Q40で構成されている。第1の実施形態では、トランジスタQ30はPMOSトランジスタであり、トランジスタQ40はNMOSトランジスタで構成されている。トランジスタQ30,Q40の各ゲートGは共通接続され、たとえば図示しないアドレスデコーダに接続されている。
【0039】
ダイオードDRは負荷LOADを構成するメモリセルからデータを読み出しするときにブースト出力端BOOTに出力されるブースト出力電圧Vbo1が電源電圧vpp2の1.5Vを超えるため、ブースト出力端BOOTから電源端子VPP2に向かって流れる逆電流を阻止するために設けられている。抵抗RCはブートストラップ回路100の外部から電源端子VPP2に到来するサージ電圧を抑制するために設けられている。その抵抗値は数オームから十数オームの範囲である。
【0040】
(第2の実施形態)
図2は本発明にかかる第2の実施形態を示す。ブートストラップ回路100Aと、
図1に示した第1の実施形態のブートストラップ回路100との違いは次の4点である。第1に電源端子VPP1とノードN10との間に抵抗R10が接続されていることである。第2にキャパシタC10を複数の単位キャパシタC11〜C14で構成していることである。第3に電源端子VPP1とノードN20との間に抵抗R20を接続していることである。第4にキャパシタC20を複数の単位キャパシタC21〜C25で構成していることである。
【0041】
ブートストラップ回路100Aは、
図1示のブートストラップ回路100と同様に2つのブースト手段を備える。第1のブースト手段はトランジスタQ10、キャパシタC10及び抵抗R10を備える。トランジスタQ10、キャパシタC10及び抵抗R10は第1の実施形態と同様にそれぞれ、第1トランジスタ、第1キャパシタ、及び第1抵抗として称される。キャパシタC10は、第1の実施形態と同様に、電圧をブースト(昇圧)するために用意され、複数のたとえばキャパシタC11,C12,C13及びC14で構成され、これらの容量値はいずれもがたとえば0.5pFに選ばれている。これらの容量値はすべて等しいので単位キャパシタと称することができる。キャパシタC10全体の容量値は、キャパシタC11〜C14を、半導体集積回路装置の配線工程及び集束イオンビームの少なくともいずれか一方で結線または断線させ所定の大きさに選ばれている。キャパシタC10としてキャパシタC11のみが選択された場合にはその容量値は0.5pFとなり、キャパシタC11〜C14のすべてが選択された場合にはその容量値は2.0pFとなる。
【0042】
抵抗R10はたとえば抵抗R11,R12の複数の抵抗で形成されている。抵抗R11,R12の接続はキャパシタC10の接続と同様に、半導体集積回路装置の配線工程及び集束イオンビームの少なくともいずれか一方で結線または短絡させ所定の大きさに選ばれる。抵抗R11,R12の抵抗値はいずれもがたとえば50kΩである。これらの抵抗の抵抗値は等しいので単位抵抗として称することができる。抵抗R10として抵抗R11のみが選択された場合にはその抵抗値は50kΩとなり、抵抗R11,R12のすべてが選択された場合にはその抵抗値は100kΩとなる。なお、
図2には抵抗R11とR12とを直列に接続したものを示したが並列に並べて抵抗値を調整するようにしてもよい。
【0043】
第2のブースト手段は、トランジスタQ20、キャパシタC20及び抵抗R20を備える。トランジスタQ20、キャパシタC20及び抵抗R20はそれぞれ、第2トランジスタ、第2キャパシタ及び第2抵抗として称される。キャパシタC20は複数のたとえばキャパシタC21,C22,C23,C24及びC25で形成されている。キャパシタC21〜C25は、半導体集積回路装置の配線工程及び集束イオンビームの少なくともいずれか一方で結線または断線させ所定の大きさに選ばれる。キャパシタC21〜C25のすべては、たとえば0.5pFの同一容量としてもよく、また、キャパシタC21だけはたとえば4.0pFとし、キャパシタC22〜C25はそれぞれ0.5pFとしてもよい。いずれにしても容量値が等しい単位キャパシタが複数用意されている。キャパシタC20の全体の容量値はキャパシタC10と同様にキャパシタC21〜C25の中の組み合わせで適宜設定される。第2のブースト手段に用意されるキャパシタC21〜C25の数は、第1のブースト手段に用意されるキャパシタC11〜C14のそれよりも多く、かつ、調整範囲は広い。ここで調整範囲が広いという意味合いは、単位キャパシタの容量値に対して設定できる最大容量値の割合が大きいことを指している。ここでキャパシタC10の調整範囲をみてみると、単位容量は0.5pFであり、最大容量値は2.0pFであるから、その調整範囲は4倍となる。これに対してキャパシタC20の調整範囲は、単位容量は0.5pFであり、最大容量値は6.0pFであるから、その調整範囲は12倍となる。したがって、第2のブースト手段を構成するキャパシタC20の調整範囲が広いことになる。
【0044】
第2のブースト手段を構成する抵抗R20は、たとえば抵抗R21〜R24の複数の抵抗で構成されている。抵抗R21〜R24の抵抗値はいずれもがたとえば50kΩであるので、これらの抵抗は単位抵抗と称することができる。したがって、抵抗R20は単位抵抗の集合体から構成されている。抵抗R20の全体の抵抗値は抵抗R10と同様に、半導体集積回路装置の配線工程及び集束イオンビームの少なくともいずれか一方で結線させ所定の大きさに選ばれる。抵抗R20として抵抗R21のみが選択された場合にはその抵抗値は50kΩとなり、抵抗R21〜R24のすべてが選択された場合にはその抵抗値は200kΩとなる。なお、
図2には抵抗R21〜R24は直列に接続されるものを示したが単位抵抗を並列に接続させておき、全体の抵抗値を所定の大きさに調整するようにしてもよい。
【0045】
第2のブースト手段を構成する抵抗R20の調整範囲は、第1のブースト手段を構成する抵抗R10の調整範囲よりも広い。ここで調整範囲が広いという意味合いは、単位抵抗の抵抗値に対して設定できる最大抵抗値の割合が大きいことを指している。ここで抵抗R10の調整範囲をみてみると、単位抵抗は50kΩであり、最大抵抗値は100kΩであるから、その調整範囲は2倍となる。これに対して抵抗R20の調整範囲は、単位抵抗は50kΩであり、調整できる最大抵抗値は200kΩであるから、その調整範囲は4倍となる。したがって、第2のブースト手段を構成する抵抗R20の調整範囲は第1のブースト手段のそれよりも広いことになる。
【0046】
これまでの説明から明らかになるように本発明の第2の実施形態の特徴の1つとして、第2ブースト手段と第1ブースト手段とを比較すると、第2ブースト手段を構成するキャパシタC20及び抵抗R20の調整範囲が第1ブースト手段を構成するキャパシタC10及び抵抗R10のそれよりも広くなるように構成されていることである。これは、ブートストラップ回路100Aでブーストされるブースト出力電圧Vbo2はブースト出力端BOOTから出力されるが、ブースト出力端BOOTは、抵抗R20の第1端に接続されかつキャパシタC20の第1端にも接続されているからであり、ブースト電圧Vbo2の大きさやその変動に大きく関わってくるからである。このために第2ブースト手段の調整範囲を広くしているのである。いずれにしても、第2の実施形態は、抵抗R10,R20、及びキャパシタC10,C20の大きさを調整出来るようにしているので、ブースト出力電圧Vbo2の大きさを細かく調整することが出来る。
【0047】
図3は、
図1及び
図2のおもなノードの信号波形を示す。以下、
図1、
図2を参照しながら説明する。
【0048】
図3(a)はパルス入力端STARTに印加されるパルスP1を示す。パルスP1にはパルスが発生する順にパルスP11、パルスP12及びパルスP13を付与している。パルスP1の周期T0はたとえば10nS〜20nSに設定される。すなわち、パルスP1の周波数fはf=100MHz〜50MHzに設定されている。パルスP1のハイレベルVHのパルス幅とローレベルVLのパルス幅は共に周期T0の1/2であるT0/2である。すなわち、パルスP1のデューティ比は50%である。したがって、たとえば周期T0=20nSのときのハイレベルVH及びローレベルVLのパルス幅はそれぞれ10nSずつとなる。ハイレベルVHの大きさはたとえば1.5Vであり、ローレベルVLの大きさはたとえば0Vである。
【0049】
パルスP1は、時刻t0ではローレベルVLである。時刻t0では電源端子VPP1及び電源端子VPP2にはたとえば1.5Vの電圧が供給されているが、パルスP1は印加されていない状態である。
【0050】
時刻t1になると、パルスP1が印加され、さらにそのレベルがローレベルVLからハイレベルVHに遷移する。パルスP1は、時刻t2〜時刻t6までの間、ローレベルVLとハイレベルVHを周期的に繰り返し、時刻t6以降はローレベルVLを維持したままである。
【0051】
図3(b)はインバータINV4から出力されるパルスP2を示す。パルスP2はパルスP1に重畳されるノイズや波形の歪がインバータINV1〜INV4で波形整形除去及び整形される。パルスP2とパルスP1の極性は同じになるようにインバータINV1〜INV4の段数が選ばれている。
【0052】
図3(c)はインバータINV5から出力されるパルスP3を示す。パルスP3はパルスP1に重畳されるノイズや波形の歪がインバータINV1,INV2、及びINV5で波形整形されたパルスである。また、パルスP3とパルスP2の極性が反転するようにインバータINV1,INV2、及びINV4の段数が選ばれている。
【0053】
図3(d)はノードN10に生じるブースト電圧vn10を示す。ブースト電圧vn10は、ノードN10の初期値にパルスP2で突き上げられた電位が加わった大きさとなる。キャパシタC10はパルスP2がハイレベルVHのときに突き上げられ、そのときの電位がブーストすなわち昇圧される。パルスP2がローレベルVLのときにキャパシタC10の電位は突き上げられないので、ノードN10の電圧は初期値に維持されるままである。ここで初期値は、電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1にほぼ等しい。ノードN10の電位vn10はパルスP2がハイレベルの期間すなわち、時刻t1−t2、t3−t4、t5−t6では初期値に加えて、キャパシタC20が突き上げられた電位vc20だけ増加する。電位vc20の大きさは、理想的にはパルスP2のハイレベルVHの大きさに等しくなる。したがって、ここで電源電圧vpp1とパルスP2のハイレベルVHの大きさを共に1.5Vとすると、ノードN10の最大電圧は(vpp1+vc10≒3V)となる。しかし、ノードN10と接地電位GNDとの間に存在する寄生キャパシタCs10などにより最大電圧は低下し、実際のシミュレーション結果では2.7V〜2.9Vに低下することが分かった。
【0054】
図3(e)はノードN20から出力されるブースト電圧vn20を示す。ブースト電圧vn20は、ノードN20の初期値にパルスP3で突き上げられた電位が加わった大きさとなる。キャパシタC20はパルスP3がハイレベルVHのときに突き上げられ、そのときの電位がブーストすなわち昇圧される。パルスP3がローレベルVLのときにキャパシタC20は突き上げられないので、ノードN20の電圧は初期値に維持される。ここで初期値は、電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1にほぼ等しい。ノードN20の電位vn20はパルスP3がハイレベルの期間すなわち、時刻t2−t3、t4−t5では初期値に加えて、キャパシタC20が突き上げられた電位vc20だけ増加する。電位vc20の大きさは、理想的にはパルスP3のハイレベルVHの大きさに等しくなる。したがって、電源電圧vpp1とパルスP3のハイレベルVHの大きさを共に1.5Vとすると、ノードN20の最大電位は(vpp1+vc20≒3V)となる。しかし、ノードN20と接地電位GNDとの間に存在する寄生キャパシタCs20などにより最大電位は低下し、実際のシミュレーション結果では2.7V〜2.9Vに低下することが分かった。なお、ノードN20と接地電位GNDとの間に存在する寄生キャパシタCs20はノードN10と接地電位GNDとの間に存在する寄生キャパシタCs10に比べて大きい。なぜならば、ノードN20に接続される回路素子数がノードN10に接続されるそれに比べて多いからであり、その分、全体の容量値も大きくなるからである。したがって、本発明ではキャパシタC20の容量値はキャパシタC10のそれの2倍〜6倍になるように設定されている。
【0055】
さて、ノードN20のブースト電圧vn20はブースト出力端BOOTに出力されるものであるからノードN10のブースト電圧vn10に比べるとより重要である。しかし、時刻t0では
図1に示したブートストラップ回路100と
図2に示したブートストラップ回路100Aとでは時刻t0の値において少し差が生じることが分かった。すなわち、
図1に示したブートストラップ回路100においては、ノードN20側に出力されるブースト電圧Vbo1は不定となり、シミュレーション結果では
図2に示したブートストラップ回路100AのノードN20の電位vn20よりも低い電位に置かれることが分かった。この理由は、トランジスタQ20がオンするに十分な電圧が印加されていないためである。一方、
図2に示したブートストラップ回路100Aにおいては、抵抗R10によって、トランジスタQ20のゲートGすなわちノードN10には電源電圧vpp1が印加され、また、抵抗R20によってトランジスタQ10のゲートGすなわちノードN20には電源電圧vpp1が印加され、時刻t0での電位すなわち初期値は電源電圧vpp1とほぼ同じ大きさに固定される。
【0056】
ノードN20のブースト電位vn20は、時刻t1−t2の期間すなわちパルスP11の期間では十分なブースト電圧が出力できていないが、時刻t2以降すなわちパルスP12,P13ではブートストラップ回路100A、ブートストラップ回路100はほぼ同じ特性を示すことが分かった。言い換えれば、パルスP1が1つ(パルスP11)だけでは十分にブースト効果は得られないが、パルスP1が2つ(パルスP12)、3つ(パルスP13)と増加するに伴い十分なブースト効果が得られ、ブートストラップ回路として十分な機能を果たすことが確認できた。
【0057】
図3(f)は負荷LOADに印加されるワードライン信号WLを示す。ワードライン信号WLはブースト出力端BOOTすなわちノードN20に出力されたブースト電圧が十分に昇圧されたタイミングである時刻t7以降供給されるようにしている。時刻t7はパルスP1の周期T0とブーストのパルスの数(
図3のP11、P12、P13に相当)に基づき適宜設定される。ワードライン信号WLはローレベルVLWL、ハイレベルVHWLを有する信号である。
【0058】
(第3の実施形態)
図4は本発明にかかる第3の実施形態を示す。ブートストラップ100Bを示す。ブートストラップ回路100Bが、
図2に示したブートストラップ回路100Aとの実質的な違いは1点だけである。すなわち、ブートストラップ100BはノードN10AとノードN20Aとの間にダイオードDSを接続したことである。なお、ブートストラップ回路100Bでは、ノードN10Aと電源端子VPP1との間に単一の抵抗R10Aを、ノードN20と電源端子VPP1との間に単一の抵抗R20Aをそれぞれ接続しているが、これらは
図2示の抵抗R10、抵抗R20と実質的に同じとみることができる。
【0059】
抵抗R10A,R20Aの働きは、
図2に示した第2の実施形態の抵抗R10,R20と同じである。すなわち、ノードN10A,N20Aの初期値を所定の値に固定するためである。ここで初期値とは電源端子VPP1に電源電圧vpp1が、電源端子VPP2に電源電圧vpp2がそれぞれ供給されてはいるが、ブーストパルス入力端STARTにパルスP1が印加されていないときの電位レベルを指している。パルスP1がパルス入力端STARTに印加され、そのレベルがローレベルVLのときにトランジスタQ10Aはオンであり、トランジスタQ20Aはオフとなる。パルスP1のレベルがハイレベルVHのときは、トランジスタQ20Aはオンであり、トランジスタQ10Aはオフとなる。
【0060】
ブートストラップ回路100Bでは、ノード10Aの電位v10aがノードN20Aの電位v20aよりも高い期間すなわち、パルスP2がハイレベルVHでパルスP3がローレベルVLの期間では、ダイオードDSが順方向にバイアスされるため、電位v20aは電位v10aよりもダイオードDSの順方向電圧Vdsだけ低くなる。
【0061】
なお、ノード10Aの電位v10aがノードN20Aの電位v20aよりも低い期間すなわち、パルスP2がローレベルVLでパルスP3がハイレベルVHの期間では、ダイオードDSは逆方向にバイアスされるため、電位v20bは電位v10bとは切り離されて設定される。
【0062】
さて、
図4示のブートスットラップ回路100Bの特徴は、ノードN10AとノードN20Aとの間にダイオードDSを接続したことである。ダイオードDSはノードN10A側がアノードであり、ノードN20A側がカソードのなるように接続されている。この理由は第1ノード側すなわちノードN10Aから第2ノード側すなわちノードN20Aに向かって電荷を補給し、ノードN20の電位を高めるためである。
【0063】
(第4の実施形態)
図5は、本発明にかかる第4の実施形態を示す。ブートストラップ回路100Cは、先のブートストラップ回路100,100A、及び100Bと同様にフリップフロップを採用している。すなわち、トランジスタQ10BのドレインDはトランジスタQ20BのゲートGに、トランジスタQ20BのドレインDはトランジスタQ10BのゲートGにそれぞれ接続されている。トランジスタQ10BのドレインDとトランジスタQ20のゲートGとの共通接続点はノードN10Bで、トランジスタQ20BのドレインDとトランジスタQ10のゲートGとの共通接続点はノードN20Bでそれぞれ示され、ノードN10B及びノードN20Bは、それぞれ第1ノード及び第2ノードとして称される。
【0064】
一方、ブートストラップ回路100Cは実質的には
図2に示したブートストラップ回路100Bと比較すると次の2つの点で相違する。第1の相違点は、第1ノードすなわちノードN10Bとブースト出力端BOOTとの間にトランジスタQ11Bを接続したことである。第2の相違点は、第2ノードすなわちノードN20Bとブースト出力端BOOTとの間にトランジスタQ21Bを接続したことである。
【0065】
ブートストラップ回路100Cの特徴は、端的に言えば、第2ノードすなわちノードN20Bの電位はトランジスタQ21Bを介してブースト出力端BOOTに伝達することに加え、第1ノードすなわちノードN10Bの電位もトランジスタQ11Bを介してブースト出力端BOOTに伝達できるということである。すなわち、ブースト出力端BOOTへは第2ブースト手段及び第1ブースト手段から電荷が供給されることになるのでブースト効率を高めることができる。
【0066】
なお、ブートストラップ回路100Cは、ノードN20BまたはノードN10Bに生じたブースト電圧v20bまたはブースト電圧v10bをトランジスタQ21BまたはトランジスタQ11Bを介してブースト出力端BOOTに出力させるためにブースト電圧のロス分が生じ、ブースト出力端BOOTに出力されるブースト出力電圧Vbo4は0.1V〜0.2V程度低下することになるが、こうしたロス分はキャパシタC20Bの大きさの調整によってカバーすることができる。
【0067】
トランジスタQ10BとトランジスタQ20Bの各ソースSは共通接続され、その共通接続点は第1電源端子としての電源端子VPP1に接続され、電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1はたとえば1.5Vに選ばれている。
【0068】
トランジスタQ10B,Q20Bは共にNMOSトランジスタで構成されている。NMOSトランジスタは本書で第1導電型として称される。トランジスタQ10B,Q20BはPMOSトランジスタで構成することもできる。PMOSトランジスタは本書で第2導電型として称される。したがって、第1導電型と第2導電型とは逆導電型の関係に置かれる。
【0069】
トランジスタQ11BのソースS及びドレインDは、それぞれブースト出力端BOOT及びノードN10Bに接続されている。トランジスタQ21BのソースS及びドレインDは、それぞれブースト出力端BOOT及びノードN20Bに接続されている。トランジスタQ11B,Q21Bは共に第2導電型のPMOSトランジスタで構成されている。
【0070】
図6は、
図4及び
図5にそれぞれ示したブートストラップ回路100B及び100Cのおもなノードのタイミングチャートを示す。
図6(a)は、パルス入力端STARTに印加されるパルスP1を示す。パルスP1は時刻t0でハローレベルVLであるが、時刻t1に至ると1つ目のパルスP11が印加され、引き続き2つ目のパルスP12、3つ目のパルスP13が時刻t2までの間に印加される状態を示す。
【0071】
図6(b)は、ブースト出力端BOOTに出力されるブースト出力電位Vbo3及びVbo4の遷移を示す。ブースト出力電位Vbo3及びVbo4は、パルスP1が印加されていない時刻t0では電源電圧vpp1にほぼ等しいが、パルスP1が印加される時刻t1〜t2の期間では徐々に上昇し時刻t2以降は、電源電圧vpp1の約2倍の大きさである、2・vpp1の大きさに維持される。正確にはパルスP1のハイレベルVHが電源電圧vpp1と同じとした場合である。たとえば、電源電圧vpp1=1.5Vとし、ハイレベルVH=1.5Vとすると、ブースト出力電位Vbo3及びVbo4はほぼ3Vとなる。しかし、実際にはキャパシタC20Bの大きさや、寄生キャパシタCs20bにより、ブースト電位に損失分が生じるため実際のブースト出力電位Vbo3及びVbo4の大きさは2.7V〜2.9Vの範囲となる。
【0072】
(第5の実施形態)
図7は本発明にかかる第5の実施形態にかかるブートストラップ回路200Aを示す。ブートストラップ回路200Aはこれまで説明してきた第1〜第4の実施形態と同様に第1のブースト手段及び第2のブースト手段で構成される点では共通する。しかし、ブートストラップ回路200Aはフリップフロップを採用していない点では、これまでの第1〜第4の実施形態とは相違する。また、単一のブーストパルスを用いるのではなく、2つのブーストパルスを用いる点でもこれまでの実施形態とは相違する。ブートストラップ回路200Aは、比較的少ない回路素子で構成しているのが特徴である。
【0073】
ブートストラップ回路200Aでの第1のブースト手段は、抵抗R51及びキャパシタC51を備える。抵抗R51の第1端は電源端子VPP1に、その第2端はノードN10Cにそれぞれ接続されている。キャパシタC51の第1端はノードN10Cに、その第2端はパルス入力端CAPAにそれぞれ接続されている。パルス入力端CAPAにはパルスP4が印加されている。パルスP4がハイレベルVHのときにキャパシタC51の電位は突き上げられ、ノードN10Cの電位v10cはv10c=(vpp1+vc51)に維持される。ここで、電位vc51はパルスP4によってキャパシタC51の電位が突き上げられるいわゆるブースト電位であり、理想的にはパルスP4のハイレベルVHに等しくなる。しかし、ノードN10Cと接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs10cが存在するためにブーストされる電位はブーストパルスP4の最大値の0.8倍〜0.9倍となる。ブーストされる電位の低下量を抑えるにはキャパシタC51の容量値を大きく選ぶと良い。
【0074】
ブートストラップ回路200Aを構成する第2のブースト手段は、抵抗R52、キャパシタC52、インバータINV51,INV52を備える。抵抗R52の第1端は電源端子VPP1に、その第2端はノードN20Cにそれぞれ接続されている。キャパシタC52の第1端はノードN20Cに、その第2端はインバータINV52の出力に接続され、インバータINV52の入力はインバータINV51の出力に、インバータINV51の入力はブーストパルス入力端STARTにそれぞれ接続されている。ブーストパルス入力端STARTにはブーストパルスP5が印加されている。
【0075】
インバータINV51,INV52はブーストパルスP5を波形整形するために用意されている。インバータINV51,INV52は好ましくはCMOSトランジスタで構成されている。
【0076】
パルスP5がハイレベルVHのとき、キャパシタC52の電位は突き上げられノードN20Cはブーストされる。すなわち、ノードN20Cの電位は電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1以上に昇圧される。パルスP5がローレベルのときにはノードN20Cの電位v20cは電源端子VPP1から抵抗R52を介して与えられる電圧すなわち電源電圧vpp1とほぼ等しい大きさに維持される。
【0077】
トランジスタQ51は第1のブースト手段と第2のブースト手段を結合させる結合手段の役割を有する。トランジスタQ51はNMOSトランジスタで構成されている。トランジスタQ51をオンさせるためにはゲートGの電位をソースSの電位よりも少なくとも閾値電圧Vt以上高めなければならない。トランジスタQ51のソース側はブースト出力端BOOTに結合され、さらにブースト出力端BOOTからは電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1よりも高い電圧を出力するものであるから、ゲートGの電位を(vpp1+Vt)以上にしなければならないことになる。そのための回路手段が第1のブースト手段を構成する抵抗R51及びキャパシタC51ということになる。したがって、トランジスタQ51をオンさせるには閾値電圧Vtが小さなNMOSトランジスタを採用することが好ましい。しかし、閾値電圧Vtの小さなNMOSトランジスタを用意することは困難性が伴うので、好ましくはデプレッション型NMOSトランジスタを採用することが好ましい。
【0078】
ブートストラップ回路200Aにはこれまでのブートストラップ回路と同様にブースト出力端BOOTを介してダイオードDR、抵抗RC及び負荷LOADが結合されている。これらの回路部はこれまで説明してきたものと同じであるので説明は割愛する。
【0079】
図8は
図7に示したブートストラップ回路200Aのおもなノードのタイミングチャートを示す。
図8(a)は、ブーストパルス入力端CAPAに印加されるブーストパルスP4である。時刻t0は電源端子VPP1及びVPP2にそれぞれ電源電圧vpp1及びvpp2が供給されてはいるがパルスP4は印加されていない状態である。
【0080】
時刻t1になるとパルスP4はローレベルVLからハイレベルVHに遷移し、ハイレベルVHの状態は時刻t2まで持続する。パルスP4は、時刻t2以降においてはローレベルVLを維持したままである。
【0081】
図8(b)は、ブーストパルス入力端STARTに印加されるパルスP5を示す。パルスP5は時刻t1〜t3まではローレベルVLを維持し、時刻t3以降はハイレベルVHに維持されている。パルスP5とパルスP4が同時にハイレベルVHになることを避けるために、パルスP5がローレベルVLからハイレベルVHに遷移する時刻t3はパルスP2がハイレベルVHに持続される時刻t2の後になるように設定されている。
【0082】
図8(c)は、ノードN10Cの電位v10cを示す。電位v10cの遷移は、パルスP4のふるまいに追随する。すなわち、時刻t0での電位v10cは電源電圧vpp1にほぼ等しいが、時刻t1〜t2の期間ではキャパシタC51の電位がパルスP4によって突き上げられるので、電位v10cはv10c=(vpp1+vc51)となる。ここで、vc51はキャパシタC51が突き上げられるいわゆるブースト電位の大きさであり、ブースト電位の大きさvc51は理想的にはパルスP4のハイレベルVHに等しくなる。しかし、ノードN10Cと接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs10cが存在しているため、ブースト電位の大きさvc51は、vc51<VHとなる。時刻t2以降の電位vc51は、電源端子VPP1の電源電圧vpp1とほぼ同じになる。
【0083】
図8(d)は、ノードN20Cの電位v20cでもあり、ブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo5でもある。ブースト出力電位Vbo5は時刻t0では電位Vb5Lで示されている。電位Vbo5はトランジスタQ51のドレインDに印加される電圧すなわち電源電圧VPP1に供給される電源電圧vpp1と、ゲートGに印加される電位すなわちノードN10Cのブースト電位v10c及びトランジスタQ51の閾値電圧Vtによって決まる。電位Vb5Lは、本実施の形態ではたとえば、1.1V〜1.2Vである。
【0084】
図8(d)、時刻t1に到達すると、ブースト出力電位Vbo5は徐々に増加し始める。時刻t1でノードN20Cの電位が(vpp1+vc51)になると、トランジスタQ51のオン状態はさらに深くなり、ドレインDからソースSに向かって流れる電流によってキャパシタC52は充電され、ブースト出力端BOOTのブースト電位Vbo5は時刻t2に向かって徐々に増加する。
【0085】
図8(d)、時刻t2でノードN10Cの電位v10cが(vpp1+vc51)からvpp1に遷移してもブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo5はしばらくの時間である時刻t3までの間、電位Vb5Nを維持したままとなる。これはノードN20Cに蓄積された電荷の放電が完了するまでに所定の時間を要するからである。この所定の時間が短い時間であれば、ブースト出力電位Vbo5はそのままの電位に維持されることになる。
【0086】
図8(d)、時刻t3に到達すると、パルスP5がパルス入力端STARTからインバータINV51,INV52を介してキャパシタC52の電位を突き上げる。このため、ノードN20Cの電位vc20は電位Vb5Nから電位Vb5Hまで一気にブーストされる。ここでブーストされる電位(Vb5H−Vb5N)の大きさは、パルスP5のハイレベルVHとほぼ等しくなる。
【0087】
図8(d)、時刻t4に到達すると、ブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo5は電位Vb5Hから電位Vb5Mまで低下する。これは時刻t4に到達すると、
図8(e)に示したワードラインWLに信号が印加されるからである。時刻t4〜t5の期間、負荷LOADがオンされると負荷LOADに内蔵される各セルがオンすることによって、有限の出力抵抗成分を有するブースト出力端BOOTから供給されるブースト出力電位Vbo5は低下する。
【0088】
出力電位Vbo5の低下レベルは、負荷LOADに結合されるたとえばメモリセルCELLの段数によって少し差が出る。本発明の実施形態では、負荷LOADであるワードラインドライバが32段と128段を比較してみたところ両者間に約0.1V未満の差が生じることが分かった。たとえばワードラインドライバが32段のときのブースト出力電位Vbo5が2.80Vのときにワードラインドライバを128段と増加させると、ブースト出力電位Vbo5は2.72Vとなり、両者間で80mVの差が生じることが分かった。
【0089】
図8(e)は前に少し述べたが、負荷LOADから出力されるワードライン信号WLを示す。ワードライン信号WLの発生タイミングは、パルスP4,P5の発生タイミング及びノードN20Cのブースト出力電位v20cのふるまいに鑑みて決定される。
【0090】
(第6の実施形態)
図9は本発明にかかる第6の実施形態にかかるブートストラップ回路200Bを示す。ブートストラップ回路200Bはこれまで説明してきた第1〜第5の実施形態と同様に第1のブースト手段及び第2のブースト手段で構成される点では共通する。しかし、ブートストラップ回路200Bはフリップフロップを採用していない点ではこれまでの第1〜第4の実施形態とは相違する。また、単一のブーストパルスや2つのパルスを用いるのではなく、3つのパルスを用いる点でも第1〜第5の実施形態とは相違する。ブートストラップ回路200Bは、第5の実施形態で述べたブートストラップ200Aと極めて類似するが、両者の違いは2点である。第1の相違点は、ブートストラップ回路200Aでは、ブースト電位を生成するのに2つのパルスを採用した。しかし、ブートストラップ回路200Bは3つのパルスを採用することである。第2の相違点は、ブートストラップ回路200Aは1つのトランジスタと2つの抵抗を採用した。しかし、ブートストラップ回路200Bは2つのトランジスタと1つの抵抗を採用することである。
【0091】
図9に示したブートストラップ回路200Bは、第1電源端子としての電源端子VPP1、第1ノードとしてのノードN10D、第2ノードとしてのノードN20D、パルス入力端CAPA、パルス入力端START、及びパルス入力端PCHを備えている。第1のブースト手段は、トランジスタQ61及びキャパシタC61を備える。トランジスタQ61のソースSは電源端子VPP1に、そのドレインDはノードN10Dにそれぞれ接続されている。キャパシタC61の第1端はノードN10Dに、その第2端はパルス入力端CAPAにそれぞれ接続されている。パルス入力端CAPAには外部からパルスP4が印加されている。パルスP4がハイレベルVHのときにキャパシタC61の電位は突き上げられ、ノードN10Dの電位v10dはv10d=(vpp1+vc61)に維持される。ここで、電位vc61はキャパシタC61がパルスP4によって突き上げられるいわゆるブースト電位であり、理想的にはブーストパルスP4のハイレベルVHに等しくなる。しかし、ノードN10Dと接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs10dが存在するためにブーストされる電位はブーストパルスP4の最大値のたとえば0.8倍〜0.9倍となる。ブーストされる電位の低下量を抑えるにはキャパシタC61の容量値を大きく選ぶと良い。
【0092】
ブートストラップ回路200Bを構成する第2のブースト手段は、抵抗R62、キャパシタC62、インバータINV61,INV62を備える。抵抗R62の第1端は電源端子VPP1に、その第2端はノードN20Dにそれぞれ接続されている。キャパシタC62の第1端はノードN20Dに、その第2端はインバータINV62の出力に接続され、インバータINV62の入力はインバータINV61の出力に、インバータINV61の入力はパルス入力端STARTにそれぞれ接続されている。パルス入力端STARTには外部からパルスP5が印加されている。
【0093】
インバータINV61,INV62はパルスP5を波形成形するために用意されている。インバータINV61,62は好ましくはCMOSトランジスタで構成されている。
【0094】
パルスP5がハイレベルのとき、キャパシタC62の電位は突き上げられ、ノードN20Dはブーストされる。すなわち、ノードN20Dの電位は電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1以上に昇圧される。パルスP5がローレベルVLのときにはノードN20Dの電位v20dは電源端子VPP1から抵抗R62を介して与えられる電圧すなわち電源電圧vpp1とほぼ等しく維持される。
【0095】
トランジスタQ62は第1のブースト手段と第2のブースト手段を結合させる結合手段の役割を有する。トランジスタQ62はNMOSトランジスタで構成されている。トランジスタQ62をオンさせるためにはゲートGの電位をソースSの電位よりも少なくとも閾値電圧Vt以上高めなければならない。トランジスタQ62のソースSはブースト出力端BOOTに結合され、さらにブースト出力端BOOTからは電源端子VPP1に供給される電源電圧vpp1よりも高い電圧を出力するために、トランジスタQ62のゲートGの電位を(vpp1+Vt)以上に設定しなければならないことになる。そのための回路手段が第1のブースト手段を構成するトランジスタQ61及びキャパシタC61ということになる。したがって、トランジスタQ62をオンさせるには閾値電圧Vtが小さなNMOSトランジスタを採用することが好ましい。しかし、閾値電圧Vtの小さなNMOSトランジスタを用意することは困難性が伴うので、好ましくはデプレッション型NMOSトランジスタを採用すればよい。
【0096】
抵抗R62は、電源端子VPP1とノードN20Dとの間に接続される。抵抗R62はノードN20Dの初期電位を電源端子VPP1の電源電圧vpp1に維持するために用意されている。抵抗R62の抵抗値はノードN20Dの初期電位を迅速に固定するには小さいほうが好ましい。しかしその大きさを小さく設定するとノードN20Dに蓄積される電荷の放電時間が速くなり、ブーストされた電位が短い時間で低下するという不具合が生じる。そこで本発明の一実施形態では、キャパシタC61=2pF、キャパシタC62=8pF、電源電圧vpp1=vpp2=1.5Vとしたときに抵抗R62=200KΩ程度に設定すると、所望のブースト効果が奏されることが分かった。
【0097】
なお、ブートストラップ回路200Bは、これまでのブートストラップ回路と同様にブースト出力端BOOTを介してダイオードDR、抵抗RC及び負荷LOADが結合されている。これらの回路部はこれまで説明してきたものと同じであるので説明は割愛する。
【0098】
図10は
図9に示した第6の実施形態にかかるブートストラップ回路200Bのおもなノードのタイミングチャートを示す。
図10に示したタイミンチャートは
図8に示した第5の実施形態のものをそのまま利用することが可能である。
図10は、
図8に示した各種の信号波形に加えてパルス入力端PCHに印加されるパルスP6が新たに加わったものである。
【0099】
図10(a)は、パルス入力端PCHすなわちトランジスタQ61のゲートGに印加されるパルスP6を示す。パルスP6によってトランジスタQ61はオンオフされる。パルスP6は時刻t0ではローレベルVLであるが、時刻t1でハイレベルVHに遷移し、時刻t7までハイレベルVHを持続する。ハイレベルVHの期間トランジスタQ61はオフであり、ローレベルVLの期間はオンとなる。パルスP6はワードラインWLに印加されるパルスが印加される時刻t7までの期間ハイレベルVHを維持したままである。
【0100】
図10(b)は、パルス入力端CAPAに入力されるパルスP4を示す。初期状態すなわち時刻t0ではパルスP4はローレベルVLであるが、パルスP6がローレベルVLからハイレベルVHに遷移する時刻t1から少し遅れた時刻t2では、ローレベルVLからハイレベルVHに遷移し、ハイレベルVHの状態は時刻t3まで持続する。パルスP4は時刻t3以降においてはローレベルVLを維持したままである
【0101】
図10(c)は、パルス入力端STARTに印加されるパルスP5を示す。パルスP5は時刻t1〜t4まではローレベルVLを維持し、時刻t4以降はハイレベルVHに維持されている。パルスP5とパルスP4が同時にハイレベルVHになることを避けるために、パルスP4がハイレベルVHからローレベルVLに遷移する時刻t3ではパルスP5はローレベルVLに維持されており、パルスP5のハイレベルVHは時刻t3の後の時刻t4に設定されている。
【0102】
図10(d)は、ノードN10Dの電位v10dを示す。電位v10dの遷移は、パルスP4のふるまいに追随する。すなわち、時刻t0での電位v10dは電源電圧vpp1にほぼ等しいが、時刻t0〜t2の期間ではキャパシタC61の電位はパルスP4によって突き上げられるので、電位v10dはv10d=(vpp1+vc61)となる。ここで、vc61はキャパシタC61が突き上げられるいわゆるブースト電位の大きさであり、ブースト電位の大きさvc61は理想的にはパルスP4のハイレベルVHに等しくなる。しかし、ノードN10Dと接地電位GNDとの間には寄生キャパシタCs10dが存在しているために、ブースト電位の大きさvc61は、vc61<VHとなる。時刻t3以降の電位v10dは、電源端子VPP1の電源電圧vpp1とほぼ同じになる。
【0103】
図10(e)は、ノードN20Dの電位であり、ブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo5でもある。ブースト出力電位Vbo5は時刻t0、t1では電位Vbo5Lであることを示す。電位Vbo5はトランジスタQ51のドレインDに印加される電圧すなわち電源電圧VPP1に供給される電源電圧vpp1と、ゲートGに印加される電位すなわちノードN10Dのブースト電位v10d及びトランジスタQ62の閾値電圧Vtによって決まる。電位Vb6Lは、本実施の形態ではたとえば、1.1V〜1.2Vである。
【0104】
図10(e)、時刻t2に到達すると、ブースト電位Vbo6は徐々に増加し始める。時刻t2でノードN10Dの電位が(vpp1+vc61)になると、トランジスタQ62のオン状態はさらに深くなり、ドレインDからソースSに向かって流れる電流によってキャパシタC62は充電され、ブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo5は時刻t3に向かって徐々に増加する。
【0105】
図10(e)、時刻t3でノードN10Dの電位v10dが(vpp1+vc61)からvpp1に遷移してもブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo6は短い時刻t4までの間、電位Vb6Nを維持したままとなる。これはノードN20Dに蓄積された電荷の放電が完了するまでに所定の時間を要するからである。この所定の短い時間であれば、ブースト出力電位Vbo6はそのままの電位に維持されることになる。
【0106】
図10(e)、時刻t4に到達すると、パルスP5はパルス入力端STARTからインバータINV61,INV62を介してキャパシタC62の電位を突き上げる。このとき、ノードN20Dの電位v20dは電位Vb6Nから電位Vb6Hまで一気にブーストされる。ここでブーストされる電位(Vb6H−Vb6N)の大きさは、パルスP5のハイレベルVHとほぼ等しくなる。
【0107】
図10(e)、時刻t5に到達すると、ブースト出力端BOOTのブースト出力電位Vbo6は少し低下する。これは時刻t5に到達すると、
図10(f)に示すワードラインWLに信号が印加されるからである。時刻t5〜t6の期間、負荷LOADがオンされると負荷LOADに内蔵される各セルがオンすることによって、無視できない有限の出力抵抗成分を有するブースト出力端BOOTから供給されるブースト出力電位Vb6H電位Vb6Mまで低下する。
【0108】
出力電位Vbo6の低下量は、負荷LOAD接続されるたとえばメモリセルCELLの段数によって少し差が出る。本発明の実施形態では、メモリセルCELLが32段と128段を比較してみたところ両者間に約0.1V未満の差が生じることが分かった。たとえばメモリセルCELLが32段のときのブースト出力電位Vbo6が2.80Vのときに
メモリセルCELLを128段と増加させると、ブースト出力電位Vbo6は2.72Vとなり、両者間で80mVの差が生じていた。
【0109】
図10(f)は前に少し述べたが、負荷LOADから出力されるワードライン信号WLを示す。ワードライン信号WLの発生タイミングは、パルスP4,P5の発生タイミング及びノードN20Dのブースト出力電位v20dのふるまいに鑑みて決定される。