特許第6470003号(P6470003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6470003無停電電源装置及び無停電電源装置システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470003
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】無停電電源装置及び無停電電源装置システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20190204BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190204BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20190204BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H02J9/06 120
   H02J7/00 302C
   H02J7/34 J
   H02J7/34 B
   H01M10/44 P
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-197219(P2014-197219)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-73020(P2016-73020A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史一
(72)【発明者】
【氏名】田見 佳晴
(72)【発明者】
【氏名】望月 和
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼荻 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝三彰
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔介
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−146575(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/046638(WO,A1)
【文献】 特開2010−124549(JP,A)
【文献】 特開2011−160639(JP,A)
【文献】 特開平10−097354(JP,A)
【文献】 特開2011−147211(JP,A)
【文献】 特開2014−093808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J9/00−11/00
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H02J1/00−1/16
H01M10/42−10/48
G06F1/26−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源と当該商用交流電源により電力が供給される負荷装置との間に介在接続される常時商用タイプの無停電電源装置であって、
前記商用交流電源から前記負荷装置に対し電力が供給される通常時において充電され、前記商用交流電源からの電力供給の停止時に前記負荷装置に対して放電する蓄電池を複数個直並列接続して構成された電池パックを複数並列接続して構成される蓄電池部と、
前記商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換して当該蓄電池部へ供給することで充電を行うと共に、当該蓄電池部からの直流電力を交流電力に変換して当該負荷装置へ供給することで放電を行う電力変換部と、
前記蓄電池部及び前記電力変換部に係る充放電の動作を制御する制御部と、を備え、
前記電力変換部は、前記蓄電池部での直流電圧よりも高い電圧に昇圧して内部の高圧直流路へ出力すると共に、当該高圧直流路に供給される高圧な直流電圧を当該蓄電池部での当該直流電圧に降圧して当該蓄電池部へ出力する双方向型のDC−DCコンバータと、前記高圧直流路と前記商用交流電源との間に接続されると共に、前記蓄電池部への充電時には当該商用交流電源からの前記交流電力を当該高圧直流路へ向けて電力変換して前記直流電力とした上で前記DC−DCコンバータへ出力し、当該蓄電池部からの放電時には当該高圧直流路での前記直流電力を前記交流電力へと変換して前記負荷装置へ供給する双方向型のインバータと、から構成され、
前記DC−DCコンバータには、前記高圧直流路側と前記蓄電池部側とを電気的に絶縁する機能を有する高周波トランスが用いられ、
前記蓄電池部は、前記複数の並列接続された電池パックが装置入出力に対してそれぞれ前記DC−DCコンバータによって電気的に絶縁されており、前記制御部による当該電池パックの使用状態を監視した結果に応じて実施する活線保守時の当該電池パックの何れかに対する交換時の挿抜が可能であり、
前記制御部は、前記DC−DCコンバータ及び前記インバータにおける双方向伝送の動作を制御し、前記電池パックの何れかを放電終止状態のものから満充電状態のものへ交換した後、装置の入力電圧が消失した状態での当該交換した満充電状態の電池パックからの直流電力、又は外部の電力変換機能を持つ電源供給手段から供給される直流電力を用いて装置を起動した後、強制的に放電してバックアップを行う強制放電機能を持つ
ことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の無停電電源装置において、
前記蓄電池には、リチウムイオン電池セルが用いられたことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無停電電源装置の複数台をカスケード接続して構成されると共に、前記商用交流電源側の装置における入力側に停電状態での当該商用交流電源への逆潮流を防止するリレー機能のブレーカが設けられた無停電電源装置システムであって、
前記複数台の無停電電源装置は、装置同士を前記カスケード接続するためのインターフェース回路を備え、
前記制御部は、前記インターフェース回路の入力回路及び出力回路における信号レベルを制御することにより、自装置の前記蓄電池部での充電時に充電動作を排他的に行わせると共に、自装置の当該蓄電池部からの放電時のバックアップ動作中ではバックアップ非動作状態の他装置における充電抑止を指示して実行させる排他充電制御機能を持つことを特徴とする無停電電源装置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電源及びこれより電力供給される負荷装置の間に介在接続され、商用交流電源の負荷装置に対する通常時の電力供給時に内蔵する蓄電池部での充電を行い、電力供給停止時に蓄電池部から負荷装置に対して放電して電力供給を長時間バックアップする機能を持つ常時商用タイプの無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply/以下、UPSと呼ぶ)及びUPSシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、東日本大震災の教訓として、大規模災害発生等により広域で停電となれば電気装置、電子情報処理装置、通信装置等の負荷装置(特に基地局機能の装置)への商用交流電源による電力供給が停止してしまい、これに伴って産業界の様々な分野でトラブルが発生して甚大な被害をもたらした事態を鑑み、商用交流電源による電力供給停止時にも二次電池である蓄電池から負荷装置に対して電力供給をバックアップする機能を持ったUPSの適用が注目されている。
【0003】
このUPSでは、商用交流電源による電力供給停止時にも負荷装置へ安定した電力供給を継続させるものであるが、電力供給をバックアップする時間(バックアップ時間)は搭載する蓄電池の容量によって決定される。一般的なUPSでは対応可能な停電時間が数分〜30分程度と短時間になっているが、蓄電池の総数を増設して大容量化することで数時間単位のバックアップ時間を可能にした装置構成も開発されている。
【0004】
このようなバックアップ時間を長くしたUPSに係る周知技術としては、例えばUPSを多重接続することにより強制シャットダウンを起動する前にアプリケーション等の実行状態の退避を開始する契機を与えることにより、その退避時間を確保する「無停電電源接続方法」(特許文献1参照)、電池の交換作業を容易に行えるとともに直接接続された蓄電池の内の数個の電池の劣化に対しても電池の直流電力バックアップ機能が喪失しない「無停電電源装置」(特許文献2参照)、直流電力によって動作する負荷装置に電源トラブルが発生したとき直流バックアップ電力を供給する「直流無停電電源装置」(特許文献3参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−97354号公報
【特許文献2】特開平5−260682号公報
【特許文献3】特開2005−176461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に係る技術では、電池パックからの直流(DC)電力をインバータ(電力変換器)で交流(AC)電力に変換する機能を持つUPSを複数カスケード接続してUPS台数を増設することにより、バックアップ時間を所望に延長できる手法を提案している。
【0007】
ところが、こうした機能構成であれば、UPSを増設するための設置床面積が大きくなって占有スペースを要してしまうばかりでなく、コスト高を招くことにもなる上、UPS同士を接続するケーブルのインピーダンスによる電圧降下の影響を回避できないことにより、負荷装置に対して安定した電力供給が行われ難くなる危険性がある他、基本動作上においても、例えば商用交流電源側のUPSがバックアップ動作中にその他のUPSが蓄電のための充電に移行すると充電エネルギー分も商用交流電源側のUPSが負担することになるため、これによってバックアップ時間が減少してしまう事態を回避できないという問題や、或いは既設システムへのUPS増設を想定した場合、全部のUPSが一斉に充電を行うと商用交流電源側のUPSの入力側に設けられたブレーカ(UPSが常時商用方式の双方向型であれば停電時に商用交流電源への逆潮流を防止するためのリレー機能として必要になる)がその他のUPS分の電力供給の超過によってトリップ(遮断)されてしまう場合があり、こうした状況下では充電を安定して行うことができなくなってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に係る技術では、所定数の蓄電池を直列接続した構成の電池パックを複数直列接続して電池パック毎にn群に分割し、分割したn群の電池パック毎にダイオードを並列接続し、n群毎の電池パックを交換可能とすることにより、UPSを通電状態で活線保守でき、システムの無停止による高信頼化、電池交換作業の容易化を実現できる手法を提案している。
【0009】
しかしながら、特許文献2に係る複数の電池パックを直列接続したUPSの場合、バックアップ動作中に満充電された電池パックを補充することでバックアップ時間を延長させることが期待されるものの、実際には電池パックの挿抜時に電池電圧が大きく変動するために交換のタイミングがシステム動作上で制限されてしまうという問題がある他、正極端子側に近い電池パック程、高電圧になるために電池パックの交換作業には危険を伴うものとなるため、活線保守に際して安全対策が十分に図られていないという問題もある。
【0010】
更に、特許文献3に係る技術では、電池パックを複数並列接続して電池パック毎の充電線路に充電スイッチを設け、電源管理部で寿命判定された電池パックのみを取り外して交換するとき、充電制御部で該当する充電スイッチをオフにすることにより、劣化が生じた電池パックを任意なタイミングで簡単且つ安全に交換可能とすることにより、通電状態での保守作業を容易化させた手法を提案している。
【0011】
ところが、特許文献3に係る複数の電池パックを並列接続したUPSの場合、特許文献2の場合よりも安全に電池パックの交換作業を安全に行うことができてバックアップ動作中に満充電された電池パックを補充することでバックアップ時間を延長させることが期待されるものの、実際には回路構成が複雑化されてしまう上、交換直後には満充電された電池パックから他の電池パックに向かって突入電流(所謂横流)が流れてしまうため、状況によっては過電流によりシステム動作がダウンされる懸念もあり、活線保守に際して安定性良くパック電池を交換することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その主たる技術的課題は、占有スペースを要さず、商用交流電源の電力供給停止時に負荷装置に電力供給を長時間安定して信頼性高くバックアップできるUPS及びUPSシステムを提供することにある。
【0013】
また、本願発明のその他の技術的課題は、活線保守に際して充放電機能に支障を来すことなく安全に蓄電池部におけるパック電池を安定性良く交換できるUPS及びUPSシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、商用交流電源と当該商用交流電源により電力が供給される負荷装置との間に介在接続される常時商用タイプの無停電電源装置であって、前記商用交流電源から前記負荷装置に対し電力が供給される通常時において充電され、前記商用交流電源からの電力供給の停止時に前記負荷装置に対して放電する蓄電池を複数個直並列接続して構成された電池パックを複数並列接続して構成される蓄電池部と、前記商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換して当該蓄電池部へ供給することで充電を行うと共に、当該蓄電池部からの直流電力を交流電力に変換して当該負荷装置へ供給することで放電を行う電力変換部と、前記蓄電池部及び前記電力変換部に係る充放電の動作を制御する制御部と、を備え、前記電力変換部は、前記蓄電池部での直流電圧よりも高い電圧に昇圧して内部の高圧直流路へ出力すると共に、当該高圧直流路に供給される高圧な直流電圧を当該蓄電池部での当該直流電圧に降圧して当該蓄電池部へ出力する双方向型のDC−DCコンバータと、前記高圧直流路と前記商用交流電源との間に接続されると共に、前記蓄電池部への充電時には当該商用交流電源からの前記交流電力を当該高圧直流路へ向けて電力変換して前記直流電力とした上で前記DC−DCコンバータへ出力し、当該蓄電池部からの放電時には当該高圧直流路での前記直流電力を前記交流電力へと変換して前記負荷装置へ供給する双方向型のインバータと、から構成され、前記DC−DCコンバータには、前記高圧直流路側と前記蓄電池部側とを電気的に絶縁する機能を有する高周波トランスが用いられ、前記蓄電池部は、前記複数の並列接続された電池パックが装置入出力に対してそれぞれ前記DC−DCコンバータによって電気的に絶縁されており、前記制御部による当該電池パックの使用状態を監視した結果に応じて実施する活線保守時の当該電池パックの何れかに対する交換時の挿抜が可能であり、前記制御部は、前記DC−DCコンバータ及び前記インバータにおける双方向伝送の動作を制御し、前記電池パックの何れかを放電終止状態のものから満充電状態のものへ交換した後、装置の入力電圧が消失した状態での当該交換した満充電状態の電池パックからの直流電力、又は外部の電力変換機能を持つ電源供給手段から供給される直流電力を用いて装置を起動した後、強制的に放電してバックアップを行う強制放電機能を持つ、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のUPSによれば、上記構成により、占有スペースを要さず、商用交流電源の電力供給停止時に負荷装置に電力供給を長時間安定して信頼性高くバックアップできるようになる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係るUPSを2台カスケード接続したUPSシステムの基本構成を示した機能ブロック図である。
図2図1に示すUPSシステムの運用の様子を各UPSの動作状態に応じて段階別に例示した概略図である。
図3】本発明の実施例2に係るUPSを3台カスケード接続したUPSシステムの概略構成を示した外観斜視図である。
図4図3に示すUPSシステムの各UPSにおけるインターフェース回路間における入出力の接続関係を例示した概略図である。
図5図4に示すインターフェース回路間における入出力の接続関係で商用交流電源側のUPSの制御部による排他的充電制御を行う場合の信号レベルの制御を説明するための図であり、(a)は商用交流電源側のUPSの蓄電池部が充電中の場合に関する図、(b)は商用交流電源側のUPSの蓄電池部が放電中の場合に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明のUPS及びUPSシステムについて、幾つかの実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係るUPSを2台カスケード接続したUPSシステムの基本構成を示した機能ブロック図である。
【0019】
図1を参照すれば、実施例1に係るUPSシステムは、2台のUPS100、200をカスケード接続して図示されない商用交流電源(商用系統側として表記している)とこれより電力供給される図示されない負荷装置(負荷側として表記している)との間に介在接続して構成され、各UPS100、200において、入出力端子間に設けられたリレー(RY)101、201での切換え接続動作を利用して商用交流電源の負荷装置に対する通常時の電力供給時に内蔵する蓄電池部102、202での充電を行い、商用交流電源の電力供給停止時に蓄電池部102、202から負荷装置に対して放電して電力供給をバックアップする機能を持つ常時商用タイプである他、商用系統側のUPS100における入力側に停電状態での商用交流電源への逆潮流を防止するリレー機能のブレーカ(BRK)11が設けられている。
【0020】
ここでの各UPS100、200は、蓄電池部102、202における並列接続された電池パック103、203と商用交流電源及び負荷装置との正極側、負極側にそれぞれ接続されて商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池部102、202へ供給することで充電を行うと共に、蓄電池部102、202からの直流電力を交流電力に変換して負荷装置へ供給することで放電を行う電力変換部104、204と、蓄電池部102、202及び電力変換部104、204に係る充放電の動作を制御する制御部107、207と、装置同士をカスケード接続するためのインターフェース回路108、208と、を備えている。
【0021】
また、各UPS100、200における電力変換部104、204は、蓄電池部102、202での直流電圧よりも高い電圧に昇圧して内部の高圧直流路へ出力すると共に、高圧直流路に供給される高圧な直流電圧を蓄電池部102、202での直流電圧に降圧して蓄電池部102、202へ出力する双方向型のDC−DCコンバータ105、205と、高圧直流路と商用交流電源との間に接続されると共に、蓄電池部102、202への充電時には商用交流電源からの交流電力を高圧直流路へ向けて電力変換して直流電力とした上でDC−DCコンバータ105、205へ出力し、蓄電池部102、202からの放電時には高圧直流路での直流電力を交流電力へと変換して負荷装置へ供給する双方向型のインバータ106、206と、を備えて構成される。各UPS100、200における制御部107、207は、DC−DCコンバータ105、205及びインバータ106、206における双方向伝送の動作を制御する。因みに、上述したDC−DCコンバータ105、205には、高圧直流路側と蓄電池部102、202側とを電気的に絶縁する機能を有する高周波トランスを用いることが好ましい。係る構成で総合変換効率90%以上を実現でき、UPS100、200の装置構成の小型化に寄与できる。
【0022】
更に、各UPS100、200における蓄電池部102、202は、蓄電池(二次電池)としてリチウムイオン電池セルを複数個直並列接続した構成の電池パック103、203を複数並列接続して構成され、電池パック103、203の何れかが故障又は寿命劣化状態になっても、係る構成の電池パックを直並列接続した構成と比べ、最小限の容量低下で済むように配慮することによってバックアップ機能の高信頼性を確保している。また、蓄電池部102、202では、電池パック103、203が装置入出力に対してそれぞれDC−DCコンバータ105、205によって電気的に絶縁されており、制御部107、207による電池パック103、203の使用状態を監視した結果に応じて実施する活線保守時の電池パック103、203の何れかに対する交換時の挿抜を危険電圧(60Vdc)以下にして安全に行うことが可能となっている。蓄電池部102、202での電池パック103、203を並列接続する数は、適用するシステムに合わせて拡張させれば良いもので、例えば、最大7.4kWhまで0.62kWh単位で増設することができる。因みに、制御部107、207では、電池パック103、203の何れかが故障や寿命劣化状態等の支障を来している場合、その結果を表示部に表示させたり、或いは特定色の点灯部を点灯させる等の手法により保守管理者へ警告させることが可能になっている。
【0023】
加えて、各UPS100、200における制御部107、207は、蓄電池部102、202における電池パック103、203の何れかを放電終止状態のものから満充電状態のものへ交換した後、装置の入力電圧が消失した状態での交換した満充電状態の電池パック103、203からの直流電力、又は外部の電力変換機能を持つ電源供給手段(各UPS100、200に専用に設けたコンセントに接続された電力変換機能を持つ電源装置)から供給される直流電力を用いて装置を起動した後、強制的に放電してバックアップを行う強制放電機能を持つ他、インターフェース回路108、208の入力回路及び出力回路における信号レベルを制御することにより、自装置の蓄電池部102、202での充電時に充電動作を排他的に行わせると共に、自装置の蓄電池部102、202からの放電時のバックアップ動作中ではバックアップ非動作状態の他装置における充電抑止を指示して実行させる排他充電制御機能を持つ。
【0024】
このUPSシステムでは、2台のUPS100、200のインターフェース回路108、208における接続をI/Oケーブル13を用いて実現しているが、ノイズ耐性向上のためには、同軸ケーブルやシールドケーブルの使用が望ましい。本ケーブルを複数本使用し、インターフェース回路108の出力回路に対してインターフェース回路208の入力回路を接続し、インターフェース回路208の出力回路に対してインターフェース回路108の入力回路を接続した構成となっている。因みに、インターフェース回路108、208の入力回路及び出力回路の具体的構成については、周知技術を適用できるために詳述しないが、フォトカプラ等を用いた絶縁回路によって構成される信号伝送系回路が適用され、制御部107、207からの信号レベルをHigh又はLowに維持するように処理する機能を有するものである。
【0025】
即ち、UPS100、200のインターフェース回路108、208は、制御部107、207の上述した排他充電制御機能により入力回路及び出力回路がHigh又はLowに維持される。例えばUPS100における蓄電池部102が充電中であれば、インターフェース回路108の出力回路は充電又は放電中を示すLowに維持され、入力回路は充電可を示すHighに維持される。このとき、商用バイパス運転で待機状態(バックアップ非動作状態)にあるUPS200におけるインターフェース回路208の出力回路は待機中を示すHighに維持され、入力回路は充電禁止を示すLowに維持される。これに対し、UPS100における蓄電池部102が放電中である場合も同様な制御が行われ、インターフェース回路108の出力回路は充電又は放電中を示すLowに維持され、入力回路は充電可を示すHighに維持される。このとき、商用バイパス運転で待機状態にあるUPS200におけるインターフェース回路208の出力回路は待機中を示すHighに維持され、入力回路は充電禁止を示すLowに維持される。
【0026】
但し、実施例1に係るUPSシステムでは、バックアップ動作上で上述したような制御部107、207による排他充電制御機能が働くことになるが、実際にはUPS100による商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS200よりも早い場合と遅い場合とに分けられる。
【0027】
具体的に云えば、前者の場合、或る時刻に商用系統(商用交流電源)に停電が発生すると、その時点よりも幾分遅れてUPS100で停電検出され、その後にリレー(RY)101がオンからオフに切換わり、その直後に蓄電池部102から放電により直流電力を供給することでUPS100でのバックアップ動作が所定の期間で行われる。また、UPS200による商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS100でのバックアップの直前に行われたとすると、UPS100でのバックアップ開始後にリレー(RY)201がオンからオフに短時間切換わるが、その直後にUPS200は次にバックアップを行う旨の信号出力を行うだけで直ちにバックアップには移行せず、UPS100でのバックアップ途中にリレー(RY)201がオフからオンに切換わった状態でのUPS100でのバックアップの放電終了後の所定のタイミング(例えばUPS200での停電検出後のUPS100に係るバックアップ時間分遅延した所定時間後をトリガとし、その直後とする場合を例示できる)によりリレー(RY)201が再度オンからオフに切換わった直後に蓄電池部202から放電により直流電力を供給することでUPS200でのバックアップ動作が行われる。因みに、この動作では信号処理上でUPS100でのバックアップ動作の終了からUPS200でのバックアップ動作の開始へ移行するまでに若干のタイムラグを生じているが、実際の蓄電池部102、202の電池パック103、203から放電を行わせての負荷装置へのバックアップ動作による電力供給の継続性には支障がないものであり、負荷装置への電力供給は継続して行われるとみなして良い。その理由は、UPS100でのバックアップ動作が所定の電圧閾値よりも降下した状態で終了したとみなしても、実際には放電の過渡現象により電圧降下された状態で負荷装置側へ電力供給がパワーダウンした状態で継続されると共に、その時点以前にバックアップ動作により電力供給されていた負荷装置が最大電力を消費し続けて電力供給需要が高い状態となっている確率を極めて低いとみなせることによる。
【0028】
これに対し、後者の場合も商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS200において先に行われるというだけで、その後にUPS100において停電検出されたタイミングでリレー(RY)201がオンからオフに切換わった直後に、UPS200では次にバックアップを行う旨の信号出力をやや長めに行うだけで直ちにバックアップには移行せず、動作上ではUPS100での停電検出後のリレー(RY)101の切換え、UPS100でのリレー(RY)101の切換え直後のバックアップ動作、UPS100に係るバックアップ動作中におけるUPS200でのリレー(RY)201の切換え、UPS100に係るバックアップ動作の放電終了後の所定のタイミングによるUPS200でのリレー(RY)201の再度の切換え、及びUPS200でのリレー(RY)201の再度の切換え直後のバックアップ動作がそれぞれ前者の場合と同様に行われる。即ち、UPS100による商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS200よりも遅い場合には、UPS200での停電検出、UPS200でのUPS100において停電検出されたタイミングでのリレー(RY)201のオンからオフに切換わった状態、並びにUPS200での次にバックアップを行う旨の信号出力状態がやや間延びして行われる点が前者の場合と相違する。
【0029】
このように、実施例1に係るUPSシステムでは、UPS100による商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS200よりも早いか遅いかに拘らず、UPS100における蓄電池部102の電池パック103からの放電によるバックアップ動作が行われた後、継続してUPS200における蓄電池部202の電池パック203からの放電によるバックアップ動作が行われる。
【0030】
図2は、実施例1に係るUPSシステムの運用の様子を各UPS100、200の動作状態に応じて段階A〜D別に例示した概略図である。
【0031】
図2を参照すれば、このUPSシステムでは、段階AにおいてUPS100が蓄電池部102の電池パック103からの放電によるバックアップ動作中にあって蓄電池部102の容量が若干目減りしており、このときにUPS200は待機(スタンバイ)状態となっており、蓄電池部202の電池パック203は満充電状態で蓄電池部202の容量が定格に維持されている様子を示している。
【0032】
次の段階Bでは、UPS100における蓄電池部102の電池パック103が放電終了となって一旦バックアップを停止してから活線保守で満(フル)充電状態のものに交換しており、このときにUPS200が蓄電池部202の電池パック203からの放電によるバックアップ動作中にあって蓄電池部202の容量が若干目減りしている様子を示している。
【0033】
続く段階Cでは、段階Bでの交換作業後にUPS100における装置の入力電圧が消失した状態を判定したときの制御部107の強制放電機能により蓄電池部102の交換した満充電状態の電池パック103からの放電によるバックアップ動作中にあって蓄電池部102の容量が若干目減りしており、このときにUPS200は待機(スタンバイ)状態に移行されるが、段階Bでバックアップ動作を行ったことにより蓄電池部202の容量が若干目減りしたままとなっている様子を示している。
【0034】
更なる段階Dでは、段階CでUPS100が蓄電池部102の電池パック103からの放電によるバックアップ動作を継続したことにより、UPS100における蓄電池部102の容量が空になって放電終止した動作停止状態にあり、このときにUPS200における蓄電池部202の電池パック203からの放電によるバックアップ動作が行われて蓄電池部202の容量が更に目減りした様子を示している。
【0035】
何れにしても、実施例1に係るUPSシステムでは、UPS100における蓄電池部102からの放電によるバックアップ動作が行われた後、継続してUPS200における蓄電池部202からの放電によるバックアップ動作が行われるため、占有スペースを要さず、大災害発生等で電力復旧に長時間を要する商用交流電源の電力供給停止時にも、負荷装置に対して電力供給を長時間安定して信頼性高くバックアップできるようになる。例えば電池パック103、203に用いられる蓄電池がリチウムイオン電池セルでUPSシステムの総重量が100kg程度の規模であれば、バックアップに際して1kW〜2kWの電力供給を3時間超えで継続して行うことが可能になる。
【0036】
また、実施例1に係るUPSシステムでは、各UPS100、200における蓄電池部102、202は、装置入出力に対してそれぞれDC−DCコンバータ105、205によって電気的に絶縁されているため、電池パック103、203の何れかが寿命劣化や故障による放電終了状態に至って交換が必要になっても、活線保守によりシステム動作を停止させることなく電池パック103、203を容易にして安全に満充電状態のものに交換することができる。更に、このときに各UPS100、200における制御部107、207の強制放電機能により、装置の入力電圧が消失した状態を判定すると、交換した満充電状態の電池パック103、203からの直流電力、或いは外部の電力変換機能を持つ電源供給手段から供給される直流電力を用いて強制的に放電してバックアップを行うため、システム動作がダウンされることなく、活線保守に際して安定性良くパック電池103、203を交換することができる。
【0037】
加えて、実施例1に係るUPSシステムでは、各UPS100、200における制御部107、207の排他充電制御機能で装置同士を接続したインターフェース回路108、208の入力回路及び出力回路の信号レベルを制御することにより、自装置における蓄電池部102、202での充電動作を排他的に制御すると共に、自装置での蓄電池部102、202からの放電によるバックアップ動作中では他装置の充電動作を抑止するため、従来技術(特許文献1)のように一斉充電が行われて電力超過によりブレーカ(BRK)11がトリップ(遮断)されて充電が安定して行われなくなるような事態も起こらず、活線保守に際して充放電機能に支障を来すことなく安全に蓄電池部102、202におけるパック電池103、203を安定性良く交換できるようになる。
【0038】
その他、実施例1に係るUPSシステムにおける各UPS100、200の各部構成については、既存の装置環境や設備を根本的に変更することなく、必要とされる機能構成を選択してリニューアルすれば、最小限の導入費用で適用して同等な処理機能を持たせ、同等な作用効果を奏する構成とすることも可能である。
【実施例2】
【0039】
図3は、本発明の実施例2に係るUPSを3台カスケード接続したUPSシステムの概略構成を示した外観斜視図である。
【0040】
図3を参照すれば、実施例2に係るUPSシステムは、3台のUPS100、200、300をカスケード接続して商用交流電源10とこれにより電力供給される負荷装置12との間に介在接続して構成され、各UPS100、200、300において、実施例1で説明した場合と同様に、入出力端子間に設けられたリレーの切換え動作を利用して商用交流電源10の負荷装置12に対する通常時の電力供給時に内蔵する蓄電池部での充電を行い、商用交流電源10の電力供給停止時に蓄電池部から負荷装置12に対して放電して電力供給をバックアップする機能を持つ常時商用タイプである他、ここでも商用系統側のUPS100における入力側にブレーカ(BRK)11が設けられている。
【0041】
実施例2に係るUPSシステムの場合、各UPS100、200、300の基本構成はインターフェース回路の接続関係、並びにそれによる制御部による排他充電制御機能による信号レベルの制御に係る細部を除けば、実施例1の場合と同様であるため、細部構成の参照符号は省略して相違する箇所について説明する。
【0042】
図4は、実施例2に係るUPSシステムの各UPS100、200、300におけるインターフェース回路間における入出力の接続関係を例示した概略図である。
【0043】
図4を参照すれば、UPS100のインターフェース回路の出力回路OUTはI/Oケーブル13を用いてUPS200のインターフェース回路の入力回路の一部IN0とUPS300のインターフェース回路の入力回路の一部IN0とに接続され、UPS200のインターフェース回路の出力回路OUTは同様なI/Oケーブル13を用いてUPS100のインターフェース回路の入力回路の一部IN0とUPS300のインターフェース回路の入力回路の他部IN1とに接続され、UPS300のインターフェース回路の出力回路OUTは同様なI/Oケーブル13を用いてUPS100のインターフェース回路の入力回路の他部IN1とUPS200のインターフェース回路の入力回路の他部IN1とに接続されている。
【0044】
図5は、このようなインターフェース回路間における入出力の接続関係で商用交流電源10側のUPS100の制御部による排他的充電制御を行う場合の信号レベルの制御を説明するための図であり、同図(a)は商用交流電源10側のUPS100の蓄電池部が充電中の場合に関する図、同図(b)は商用交流電源10側のUPS100の蓄電池部が放電中の場合に関する図である。
【0045】
図5(a)を参照すれば、UPS100における蓄電池部が充電中であれば、インターフェース回路の出力回路OUTは充電又は放電中を示すLowに維持され、入力回路の一部IN0及び他部IN1は充電可を示すHighに維持される。このとき、商用バイパス運転で待機状態にあるUPS200、300におけるインターフェース回路の出力回路OUTは待機中を示すHighに維持され、入力回路の一部IN0は充電禁止を示すLowに維持され、入力回路の他部IN1は充電可のHighに維持される。因みに、インターフェース回路の入力回路では、反転処理機能を持つため、他部IN1を充電可のHighとしても結果的には一部IN0又は他部IN1の何れか一方がLowであれば充電禁止を示すLowとして処理される。
【0046】
図5(b)を参照すれば、UPS100における蓄電池部が放電中である場合も同様な制御が行われ、インターフェース回路の出力回路OUTは充電又は放電中を示すLowに維持され、入力回路の一部IN0及び他部IN1は充電可を示すHighに維持される。このとき、商用バイパス運転で待機状態にあるUPS200、300におけるインターフェース回路の出力回路OUTは待機中を示すHighに維持され、入力回路の一部IN0は充電禁止を示すLowに維持され、入力回路の他部IN1は充電可のHighに維持される。ここでもインターフェース回路の入力回路の反転処理機能により、他部IN1を充電可のHighとしても結果的には充電禁止を示すLowとして処理される。
【0047】
実施例2に係るUPSシステムにおいても、UPS100による商用系統(商用交流電源)の停電検出がUPS200、300よりも早い場合や遅い場合に拘らず、UPS100における蓄電池部からの放電によるバックアップが行われた後、継続してUPS200、300における蓄電池部からの放電によるバックアップが順次行われる機能を構築できるため、増設分のUPS300の存在により実施例1に係るUPSシステムよりも長時間(例えば24時間程度)バックアップに際して電力供給を継続して行うことが可能になり、その他の点については同等な作用効果を奏するものとなる。
【0048】
尚、実施例1に係るUPSシステムは2台のUPS100、200をカスケード接続した構成、実施例2に係るUPSシステムは3台のUPS100、200、300をカスケード接続した構成を説明したが、4台以上のUPSをカスケード接続してUPSシステムを構成することも可能である。また、こうした場合の各UPSが備えるインターフェース回路間の通信はI/Oケーブル13を用いて接続して有線式で行う以外、I/Oケーブル13を使用せずに無線式で送受信させる構成にすることも可能である。このように、本発明のUPSは、構成上で種々変更することが可能であるため、各実施例で開示した形態に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
10 商用交流電源
11 ブレーカ(BRK)
12 負荷装置
13 I/Oケーブル
100、200、300 UPS(無停電電源装置)
101、201 リレー(RY)
102、202 蓄電池部
103、203 電池パック
104、204 電力変換部
105、205 DC−DCコンバータ
106、206 インバータ
107、207 制御部
108、208 インターフェース回路
図1
図2
図3
図4
図5