(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動力伝達部材は、前記動力伝達部材が回動する過程において、前記第1斜面が前記第2斜面に摺接すると前記開口形成部材から前記回転軸部の軸方向に離れる方向に移動可能であり、
更に、前記動力伝達部材のうち前記開口形成部材側とは反対側の外周部が磁石で形成された胴体部を取り囲むように配置されたヨークと、前記ヨークの一部に巻回されるコイルとを有する駆動手段を備え、
前記動力伝達部材は、前記駆動手段との間で磁気的な作用を受けて前記開口形成部材側に付勢されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の羽根駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなカメラ用羽根駆動装置では、主地板に設けられた長孔の端部に出力ピンを当接させる構造であるため、その当接時の衝撃がシャッタ羽根に伝達されてシャッタ羽根の動作が安定しない、いわゆるバウンド動作が発生してしまう。なお、バウンド動作は、上述した出力ピンの当接に限らず、例えば、シャッタ羽根自体をストッパ等に当接させてシャッタ羽根の動作を停止させる場合にも生じる。
【0005】
本発明は、バウンド動作を低減して、高精度な羽根駆動を実現できる羽根駆動装置及びシャッタ装置並びに撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の羽根駆動装置は、光が通過する開口部を形成する開口形成部材と、前記開口部に出入りする羽根と、前記羽根に係合して動力を伝達する動力伝達部材と、を備え、前記動力伝達部材は、前記開口形成部材に対して回動可能に保持され、前記開口形成部材には、前記動力伝達部材に設けられた第1斜面を有する摺動部が係合し且つ前記動力伝達部材の回動に伴って前記第1斜面に摺接する第2斜面を有する被摺動部が設けられ、前記動力伝達部材が回動する過程において、前記開口形成部材に設けられた当接部に対する前記羽根の当接によって前記羽根の動作が停止する前、又は、前記開口形成部材に設けられた当接部に対する前記羽根及び前記動力伝達部材の係合部の当接によって前記動力伝達部材の動作が停止する前のいずれかのタイミングで、前記第1斜面と前記第2斜面とを摺接させることを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、羽根が当接部に当接する衝撃、又は羽根及び動力伝達部材の係合部が当接部に当接する衝撃を、第1斜面及び第2斜面の摺接による物理的抵抗(摩擦)によって低減できるため、高精度な羽根駆動を実現できる。
【0007】
また、上記本発明では、前記開口形成部材は、その厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、前記動力伝達部材は、前記羽根が配置される前記開口形成部材の一方面側とは反対の他方面側に配置され、前記羽根が有する係合孔に前記貫通孔を通じて係合する係合ピンを有し、前記係合ピンは、前記羽根及び前記動力伝達部材の係合部を構成し、前記貫通孔の端部は、前記動力伝達部材の回動に伴って前記係合ピンが当接する、前記開口形成部材に設けられた当接部を構成することを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、係合ピンが貫通孔の端部に当接したときに生じるバウンド動作を低減できる。
【0008】
また、上記本発明では、前記摺動部は、前記動力伝達部材のうち前記開口形成部材側の上端部に突出して設けられ、前記被摺動部は、前記開口形成部材のうち前記動力伝達部材が装着される部分に前記摺動部に対応して設けられたことを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、動力伝達部材に突出して設けられた摺動部が、開口形成部材が有する被摺動部に摺接することにより、動力伝達部材の回動に適度なブレーキをかけることができる。
【0009】
また、上記本発明では、前記動力伝達部材は、前記動力伝達部材が回動する過程において、前記第1斜面が前記第2斜面に摺接すると前記開口形成部材から前記回転軸部の軸方向に離れる方向に移動可能であり、更に、前記動力伝達部材のうち前記開口形成部材側とは反対側の外周部が磁石で形成された胴体部を取り囲むように配置されたヨークと、前記ヨークの一部に巻回されるコイルとを有する駆動手段を備え、前記動力伝達部材は、前記駆動手段との間で磁気的な作用を受けて前記開口形成部材側に付勢されることを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、動力伝達部材(摺動部)と開口形成部材(被摺動部)との係合安定性を磁気的な作用によって実現できる。
【0010】
また、上記本発明では、上述した羽根駆動装置を備えたシャッタ装置、あるいは上述した羽根駆動装置を備えたカメラ等の撮像装置についても広く対象とする。
かかる本発明の態様によれば、バウンド動作を低減した高精度な羽根駆動を実現できるシャッタ装置、撮像装置を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バウンド動作を低減して、高精度な羽根駆動を実現できる羽根駆動装置及びシャッタ装置並びに撮像装置を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は、光が通過する開口部を形成する開口形成部材に設けられた当接部に対し、羽根又はその羽根に動力を伝達する動力伝達部材の少なくとも一方を当接させる前のタイミングで、動力伝達部材の一部を開口形成部材の一部に摺接させ、これによって両者の間に物理的な抵抗(摩擦)を生じさせ、当接部に当接したときの衝撃を未然に緩和する点に特徴がある。
【0014】
具体的には、光が通過する開口部に羽根を出入りさせる過程において、羽根の走行を一時的に停止させる前のタイミングで、羽根に動力伝達する動力伝達部材と開口形成部材とを一時的に摺接させてブレーキ力を生じさせることにより、羽根の走行停止に伴うバウンド動作を有効に低減できる。
【0015】
例えば、本発明の羽根駆動装置は、光が通過する開口部を形成する開口形成部材と、開口部に出入りする羽根と、羽根に係合して動力を伝達する動力伝達部材と、を備える。動力伝達部材は、開口形成部材に対して回動可能に保持される。この開口形成部材には、動力伝達部材に設けられた第1斜面を有する摺動部に対応して被摺動部が設けられ、被摺動部には第1斜面が摺接する第2斜面が設けられている。そして、動力伝達部材が回動する過程において、羽根の走行停止前における所定のタイミングで、第1斜面と第2斜面とを摺接させる。これにより、羽根の走行停止時において発生する衝撃が、第1斜面と第2斜面との間の摩擦によるブレーキ作用によって低減される。
【0016】
ここで、上記「所定のタイミング」とは、例えば、開口形成部材に設けられた当接部に羽根を当接させる前のタイミング、あるいは、開口形成部材に設けられた当接部に動力伝達部材の一部を当接させる前のタイミング等が挙げられる。なお、上記当接部は、開口形成部材と一体的に設けてもよいし、開口形成部材に別の部材を接合して設けてもよい。
【0017】
より詳細には、開口形成部材には、羽根が走行する側の面上に羽根の端部を当接させるストッパを設け、そのストッパを当接部としてもよい。あるいは、動力伝達部材が有する係合ピンを開口形成部材の貫通孔を通じて羽根に係合させるような場合、係合ピンを貫通孔の端部に当接させることになるため、その貫通孔の端部が当接部となる。
【0018】
いずれにしても、本発明は、羽根の走行過程において、物理的な当接作用を通じて羽根の走行を停止させる場合に生じる衝撃を、物理的な摺接作用を使って緩和(低減)するものである。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施形態1)
【0020】
なお、以下の実施形態では、同じ駆動手段によって同時に相反する方向へ往復作動させられる2枚のシャッタ羽根が、開き作動を行う場合には露光開口の中央部から開き始め、閉じ作動を行う場合には露光開口の中央部を最後にして閉じるように構成したシャッタ装置を例に挙げて説明する。なお、この種のシャッタ装置は、銀塩フィルムを使用するカメラにも、各種情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラにも採用することが可能であるが、本実施形態の作動は、主にデジタルカメラに採用された場合で説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態1に係る羽根駆動装置の一例であるシャッタ装置の構成を示す分解斜視図であり、
図2は
図1の要部拡大平面図である。また、
図3は
図1の羽根全開状態の概略平面図であり、
図4は
図3の要部拡大断面図である。さらに、
図5は
図1の羽根閉じ動作時の概略平面図であり、
図6は
図5の要部拡大断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のシャッタ装置は、光が通過する開口部1bが形成された地板(開口形成部材の一例)1と、この地板1の一方面側に配置されて地板1との間で羽根2,3の走行空間を形成するカバー板4と、地板1の他方面側に配置されて羽根2,3を駆動する駆動手段とを備える。
【0023】
地板1は、例えば、本実施形態では合成樹脂製の基板であって、
図1に示されているように、その略中央部には円形をした被写体光路用の開口部1bが設けられている。一方、この地板1には、所定の間隔を空けてカバー板4が取り付けられ、両者の間に一つの羽根室を構成している。
【0024】
このカバー板4は、
図1にだけ示してあり、以降の図においては省略してあるが、平面形状は地板1と略同じ形状をしており、その略中央部には円形をした被写体光路用の開口部を形成している。すなわち、上記地板1、カバー板4は、それぞれ光が通過する開口部が形成された開口形成部材の一例となる。
【0025】
ここで、カバー板4の開口部よりも上記地板1の開口部1bの方が、直径が小さいため、本実施形態における露光開口は、開口部1bによって規制されている。
【0026】
なお、このカバー板4は、図示はしていないが複数箇所でビスにより、地板1に取り付けられている。
【0027】
図1に示されているように、地板1の羽根室外側には、羽根の駆動手段となる電磁アクチュエータである回転子6、ヨーク7、コイル8、固定枠9が取り付けられている。例えば、本実施形態の回転子6は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石6dと、その永久磁石に一体化された合成樹脂製の駆動ピン部6aからなっていて、孔6cと地板1の軸1jとが嵌合し、更に軸6eと固定枠9の孔9aとが嵌合することで回転可能に取り付けられている。
【0028】
また、駆動ピン6aは、地板1に円弧状に形成された孔(貫通孔)1aから羽根室内に挿入され、その先端を、カバー板4と同じ形状をした孔に挿入している。なお、本実施形態では、駆動ピン6aが合成樹脂製になっているが、それらを永久磁石製にしてもよい。
【0029】
ここで、地板1は、回転子6と摺接する、所定の傾斜を持つ端部(第2斜面)1i,1hが形成された被摺接部1gが設けられている。一方、回転子6側には、被摺接部1g(端部1i,1h)が摺接する、所定の傾斜を持つ端部(第1斜面)6bを有しており、それらの位置関係は
図2に示すように同一円周上になっている。ヨーク7は、平面形状が示されていないが、略U字形をしており、二つの脚部の一方をコイル8の中空部に挿入しており、固定枠9により地板1に固定されている。
【0030】
地板1の羽根室側の面には、二つの羽根軸1c,1dと、2つのストッパ軸1e,1fが一体成形で立設されている。また、羽根室内には、2枚のシャッタ羽根2,3が配置されている。それらのうち、地板1側に配置されているシャッタ羽根2は、長孔2aを有していて、孔2bと羽根軸1dが嵌合し、回転可能に取り付けられている。一方、カバー板4側に配置されているシャッタ羽根3は、長孔3aを有していて、孔3bと羽根軸1cが嵌合し、回転可能に取り付けられている。そして、それらのシャッタ羽根2,3の長孔2a,3aには、上記の回転子6の駆動ピン6aが嵌合されている。
【0031】
次に、本実施形態の作動を説明する。
図3は、撮影待機状態を示す模式図であって、シャッタ羽根2、3は、開口部1bを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。このとき、電磁アクチュエータのコイル8には通電されていない。ところが、このとき、回転子6は、その永久磁石6dの磁極とヨーク7の二つの磁極部との対向配置関係によって時計方向へ回転するように付勢されており、それによって、駆動ピン6aには、
図2において略下方へ移動し、シャッタ羽根2,3を相反する方向へ回転させる力が与えられている。
【0032】
シャッタ羽根2,3は、ストッパ軸1g,1hに接触し、さらに
図3のように駆動ピン6aが地板1の孔1aに接触し、その回転を阻止されているため、この状態が維持されている。また、このときの地板1の被摺接部1g,端部1i,1hおよび回転子6の端部6bの位置関係を示す断面図が
図4である。回転子6は、永久磁石6dの磁極とヨーク7の二つの磁極部との対向配置関係によって図中略右方向に付勢されているため、地板1の端部1hと回転子6の端部6bにより、斜面を滑り上がった状態を維持している。
【0033】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル8に対して順方向の電流が供給される。そのため、回転子6は、
図3において反時計方向へ回転させられ、駆動ピン6aを略上方へ移動させていくので、シャッタ羽根2は反時計方向へ回転され、シャッタ羽根3は時計方向へ回転される。それによって、2枚のシャッタ羽根2,3は、開口部1bを閉じる方向に回動する。
【0034】
ここで、回転子6が
図3において反時計方向に所定の位相分回転した図が
図5および
図6である。
図6に示すように、回転子6は、端部6bと地板1の端部1hにより、斜面を滑り下りながら回動する。この後も回転子6は回動を続け、
図7のように、2枚のシャッタ羽根2,3が開口部1bの中央部を覆い終わると、回転子6は、
図8のように端部6bと地板1の端部1iとが当接する。その後、回転子6は、回転子6の端部6bと地板1の端部1iとの間で摺接しながら斜面を滑り上がりながら回動することで両者の間に物理的な摩擦が生じ、ブレーキ作用によって回転子6の回転速度が一時的に減速される。
【0035】
そして、
図9のように回転子6の駆動ピン6aが地板1の孔1aに当接して停止させられ、シャッタ羽根2,3も減速されながら地板1のストッパ部1e,1fに当接することにより回転が停止させられる。なお、
図10に示すように、回転子6は、端部6bと地板1の端部1iにより斜面を滑り上がりながら回動する際、ヨーク7と永久磁石6dとの吸引力により、図中略下方向に力を受ける。つまり、回転子6は、ヨーク7と永久磁石6dとの磁気的な作用を受けて、地板1側に付勢される。これにより、回転子6と地板1との係合安定性を磁気的な作用によって実現できる。そして、回転子6の端部6bと地板1の端部1iとの間にはより強い摩擦力が発生することになり、効率的に回転子6を減速させることができる。
【0036】
このようにして、
図9及び
図10に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル8に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給されるため、回転子6は、
図6aにおいて時計方向へ回転させられ、その駆動ピン6aを、
図10において略下方へ移動させていく。
【0037】
そのため、シャッタ羽根2,3は、相反する方向へ回転させられ、開口部1bをその略中央部から開放していく。また、回転子6は
図10に示す端部6bと地板1の端部1iにより、斜面を滑り下りながら回動し、
図8の状態に復帰する。その後、回転子6は回動を続け、
図6に示すように端部6bと地板1の端部1hとが当接し、斜面を滑り上がりながら回動することで回転速度を減速される。その後、回転子6および羽根2,3は減速されながらも回転を続け、それぞれ地板の孔1a、ストッパ部1e,1fに当接することで停止し、
図3及び
図4の状態に復帰することになる。
【0038】
また、本実施形態の作動はデジタルカメラに採用された場合で説明したが、銀塩フィルムカメラに採用された場合には、
図9及び
図10に示された状態が撮影待機状態になって、シャッタ羽根2,3の開閉作動によって撮影が行われる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、シャッタ羽根2,3が地板1の端部1h,1iおよび回転子6の端部6bにより、減速されながら地板1のストッパ1e,1fに当接するため、衝撃力を低減させることができ、シャッタ羽根2,3の耐久性およびバウンドに有利である。なお、羽根2,3が減速されるのは、シャッタ閉じ動作においては、羽根2,3が地板1の開口部1bを遮蔽し終わった後であり、シャッタ開き動作においては、羽根2,3が地板1の開口部1bを全開にした後であるため、シャッタスピードへの影響は無い。
【0040】
(他の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、羽根の往復動作における折り返しタイミングに合わせて回転子と地板との間で斜面同士の摺接を生じさせるようにしたが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、
図11(a)に示すように、羽根の往復動作のうち片側、すなわち、光が通過する開口部を全開するときのみ、あるいは全閉するときのみに対応して、羽根に動力を伝達する動力伝達部材(回転子)の斜面6bと開口形成部材(地板)の斜面1iとの摺接をさせるようにしてもよい。
【0041】
また、上述した各実施形態では、回転子側に凸部となる摺動部を設け、地板側に凹部となる被摺動部を設けた構造について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、
図11(b)に示すように、動力伝達部材(回転子)側において凹部となる摺動部に斜面6bを設け、開口形成部材(地板)側において凸部となる被摺動部に斜面1iを設けて、凹凸の係合関係を逆にしてもよい。