(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状の側壁体と、前記側壁体の底部を構成する底版及び前記側壁体の上面開口を覆う頂版とから成る本体と、前記頂版に形成された取水口と、前記底版に形成された凹状のピットと、前記本体へ上水道から供給される水を導入する給水管と、前記本体に貯留された水を外部へ送出する送水管と、前記本体内の水を外部へ汲み上げるための揚水管を有し、
前記送水管から前記本体内の水が送出され、これに伴って前記給水管から前記本体へ水が供給されることで本体内の水を入れ替えるものであり、
災害時等において前記本体に貯留された水を飲料水とする場合には前記揚水管にポンプを連結して前記本体内の水を外部へ汲み上げ、
前記本体に貯留された水を防火用水とする場合には前記取水口にホースを挿入し、前記凹状のピットにホースの先端部を入り込ませて水を汲み上げる貯水槽において、
前記給水管と送水管の前記本体へ挿入された部分には、前記頂版側から前記底版に向かって真っすぐに延びる真直管と、前記真直管に連通し側方へ突出し前記底版近傍に位置する下部突出管と、前記真直菅に連通し、前記下部突出管と同じ方向を向いて高さ方向の中間部に位置する中間部突出管とが設けられ、
前記下部突出管と前記中間部突出管は前記側壁体の内壁面近傍に備えられており、しかも前記給水管の下部突出管と中間部突出管と前記送水管の下部突出管と中間部突出管は互いに近接し、且つ線対称となるように配置され、
前記下部突出管は前記側壁体の内壁面に沿って水平方向に延びる延出部を有することを特徴とする貯水槽。
請求項3に記載した貯水槽において、補助穴は複数個設けられ、上方に位置する補助穴の開口面積が下方に位置する補助穴の開口面積より小さいことを特徴とする貯水槽。
請求項1から4のいずれかに記載した貯水槽において、下部突出管と中間部突出管の少なくとも一方は先端部にいくに従って拡径するラッパ状に形成されていることを特徴とする貯水槽。
請求項1から4のいずれかに記載した貯水槽において、下部突出管と中間部突出管の少なくとも一方は先端部にいくに従って縮径するノズル状に形成されていることを特徴とする貯水槽。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の貯水槽では底版に凹状のピットが設けられているので、ピット内に水が滞留するおそれがあり、飲料水として使用する場合に衛生面での問題が生じるおそれがある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、貯留する水を防火と飲料水の両方に使用することができ、しかも飲料水として使用する場合に衛生面での問題が生じるおそれのない衛生的な貯水槽の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、円筒状の側壁体と、前記側壁体の底部を構成する底版及び前記側壁体の上面開口を覆う頂版とから成る本体と、前記頂版に形成された取水口と、前記底版に形成された凹状のピットと、前記本体へ上水道から供給される水を導入する給水管と、前記本体に貯留された水を外部へ送出する送水管と、前記本体内の水を外部へ汲み上げるための揚水管を有し、
前記送水管から前記本体内の水が送出され、これに伴って前記給水管から前記本体へ水が供給されることで本体内の水を入れ替えるものであり、
災害時等において前記本体に貯留された水を飲料水とする場合には前記揚水管にポンプを連結して前記本体内の水を外部へ汲み上げ、
前記本体に貯留された水を防火用水とする場合には前記取水口にホースを挿入し、前記凹状のピットにホースの先端部を入り込ませて水を汲み上げる貯水槽において、
前記給水管と送水管の前記本体へ挿入された部分には、前記頂版側から前記底版に向かって真っすぐに延びる真直管と、前記真直管に連通し側方へ突出し前記底版近傍に位置する下部突出管と、前記真直菅に連通し、前記下部突出管と同じ方向を向いて高さ方向の中間部に位置する中間部突出管とが設けられ、
前記下部突出管と前記中間部突出管は前記側壁体の内壁面近傍に備えられており、しかも前記給水管の下部突出管と中間部突出管と前記送水管の下部突出管と中間部突出管は互いに近接し、且つ線対称となるように配置され、
前記下部突出管は前記側壁体の内壁面に沿って水平方向に延びる延出部を有することを特徴とする貯水槽である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した貯水槽において、中間部突出管の開口面積は下部突出管の開口面積より小さいことを特徴とする貯水槽である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した貯水槽において、真直管の下部突出管と中間部突出管との間には補助穴が形成されていることを特徴とする貯水槽である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載した貯水槽において、補助穴は複数個設けられ、上方に位置する補助穴の開口面積が下方に位置する補助穴の開口面積より小さいことを特徴とする貯水槽である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した貯水槽において、下部突出管と中間部突出管の少なくとも一方は先端部にいくに従って拡径するラッパ状に形成されていることを特徴とする貯水槽である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した貯水槽において、下部突出管と中間部突出管の少なくとも一方は先端部にいくに従って縮径するノズル状に形成されていることを特徴とする貯水槽である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した貯水槽において、下部突出管と中間部突出管の少なくとも一方は側壁体の内壁面に沿って湾曲していることを特徴とする貯水槽である。
【0012】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載した貯水槽において、凹状のピットは上方へいくに従って拡径するすり鉢状に形成されていることを特徴とする貯水槽である。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれかに記載した貯水槽において、本体を地中に埋設する地下埋設型であることを特徴とする貯水槽である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貯水槽では、貯留する水を防火と飲料水の両方に使用することが可能であり、飲料水として使用する場合に衛生面での問題が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態1に係る貯水槽1を
図1から
図8によって説明する。この貯水槽1は後述する本体3を地中に埋設する地下埋設型のものである。
本体3は円筒状の側壁体5、この側壁体5の底部を構成する底版7及び側壁体5の上面開口を覆う頂版9とから成る。
頂版9には取水口11が設けられ、この取水口11には頂版9上に備えられた筒体13が接続され、筒体13の上面開口が地面に露出してマンホールを構成する。筒体13の上面開口は開閉可能な蓋14によって閉鎖されている(
図3参照)。
底版7の取水口11に対向する部分には凹状のピット15が設けられている。ピット15は円形の底面15aから円形の上面開口15b側、すなわち上方へいくに従って拡径するすり鉢状に形成されている。
【0017】
符号17は給水管を示し、この給水管17の一端部は図示しない配管を介して上水道に連結されており、他端部は頂版9を貫通して本体3へ挿入されている。
符号19は送水管を示し、この送水管19の一端部は上水道からの水の送給先に連なる図示しない配管に連結されており、他端部は頂版9を貫通して本体3へ挿入されている。
給水管17と送水管19の本体3へ挿入された部分には、頂版9から底版7に向かって真っすぐに延びる真直管17a、19aがそれぞれ設けられている。真直管17a、19aの下端部には、下部突出管17b、19bがそれぞれ設けられている。下部突出管17b、19bは真直管17a、19aに連通し、底版7の近傍に位置している。下部突出管17b、19bは底版7の上面から30cm〜50cmの位置に備えられている。
【0018】
また、真直管17a、19aには中間部突出管17c、19cが設けられている。中間部突出管17c、19cは真直管17a、19aに連通し、下部突出管17b、19bより上方の高さ方向の中間部に位置している。中間部突出管17cは突出管17bと同じ方向を向き、中間部突出管19cは下部突出管19bと同じ方向を向いている。
【0019】
下部突出管17b、19bと中間部突出管17c、19cは側壁体5の内壁面5aの近傍に備えられている。給水管17の下部突出管17bと中間部突出管17cと送水管19の下部突出管19bと中間部突出管19cは互いに近接し、且つ線対称となるように配置されている。すなわち、下部突出管17bの開口と下部突出管19bの開口は互いに反対方向を向き、中間部突出管17cの開口と中間部突出管19cの開口も互いに反対方向を向いている。
下部突出管17bは側壁体5の内壁面5aに沿って水平方向に延びる延出部17dを有している。また、下部突出管19bは側壁体5の内壁面5aに沿って水平方向に延びる延出部19dを有している。
【0020】
給水管17、送水管19には緊急遮断弁21が取付けられ、更に複数のバルブ23が取付けられている。
緊急遮断弁21が設けられている箇所の周囲はケース20によって囲まれており、このケース20に形成された上面開口は地面Gから露出している。ケース20の上面開口は開閉可能な蓋22によって閉鎖されている(
図2参照)。
【0021】
符号25、27は揚水管を示し、揚水管25、27は頂版9を貫通して本体3へ入り込み、その下端部が底版7の近傍にまで延びている。また、揚水管25、27の上端部は頂版9から突出している。揚水管25、27の近傍には本体3内に連通する急速排気弁29が備えられている。
揚水管25、27の上端部と急速排気弁29は頂版9の上面に備えられた筒体31に収容され、筒体31の上面開口は地面Gから露出しており、この上面開口は開閉可能な蓋33によって閉鎖されている(
図2参照)。
【0022】
符号35、37は採水口導入管を示し、採水口導入管35、37は頂版9を貫通して本体3へ入り込んで、その下端部が底版7の近傍にまで延びている。また、採水口導入管35、37の上端部は頂版9から突出している。採水口導入管35、37の近傍には本体5内に連通する急速排気弁39が備えられている。
採水口導入管35、37の上端部と急速排気弁39は頂版9の上面に備えられた筒体41に収容されており、この筒体41の上面開口は地面Gから露出しており、この上面開口は開閉可能な蓋43によって閉鎖されている。
【0023】
次にこの貯水槽1の使用方法を説明する。
平生においては上水道から供給される水が給水管17を通って本体3へ導入される。水は
図1、
図7において矢印で示すように真直管17aを通り、中間部突出管17cから流出し、更に下部突出管17bから流出する。
また、送水管19を通って本体3内の水が外部へ送出される。水は
図1において矢印で示すように中間部突出管19c、下部突出管19bから流入し、真直管19aを通り外部へ送出される。
【0024】
前述のように、下部突出管17b、19bと中間部突出管17c、19cは側壁体5の内壁面5a近傍に備えられ、しかも給水管17の下部突出管17bと中間部突出管17cと送水管19の下部突出管19bと中間部突出管19cは互いに近接し、且つ線対称となるように配置されており、更に、下部突出管17bは側壁体5の内壁面5aに沿って水平方向に延びる延出部17dを有し、下部突出管19bは側壁体5の内壁面5aに沿って水平方向に延びる延出部19dを有しているので、
図7、
図8において矢印で示す水の流れが生じる。この水の流れは本体3内の下層から上層の全体に渡って発生することになる。
【0025】
特に、延出部17d、19dが設けられているので、水はほぼ水平方向へ勢いよく放出される。これにより、上記したような水流は本体3内の水全体を巻き込む。この結果、
図7に示すようにピット15内の水も確実に入れ替ることになる。更に、ピット15はすり鉢状に形成されているので、ピット15へ流れ込んだ水は内周面に沿って流れて上面開口15bから流出する。従って、ピット15内の水をより確実に入れ替えることができる。
【0026】
災害時等において本体3内の水を飲料水として使用する方法を説明する。
蓋33を開けて揚水管25にホース45の一端部を連結し、他端部に手動ポンプ47を連結して、手動ポンプ47を操作する。これにより、本体3内の水を揚水管25、ホース45を介して手動ポンプ47から流出させる。
また、揚水管27にホース49の一端部を連結し、他端部を自動式ポンプ51の吸引口に連結する。更に、自動式ポンプ51の吐出口に臨時給水栓53を連結する。自動式ポンプ51を作動させ、臨時給水栓53から給水を行う。
【0027】
災害時等において上水道から供給される水の送水圧が低下したときには、緊急遮断弁21が作動して、給水管17、送水管19と外部との連通を遮断する。
なお、採水口導入管35、37から本体3内の水を採取して水質検査を行う。
【0028】
本体3に貯留された水を防火用水とする場合には蓋14を開けて取水口11を開放して、ホース55を取水口11から挿入し、ホース55の先端部を凹状のピット15に入り込ませる。そして、ホース55の後端部に連結されたポンプ(図示せず)によって本体3内の水を吸引して放水する。ホース55の先端部を凹状のピット15に入り込ませることで、本体3内の水の殆どを吸引することができる。
また、給水管17の下部突出管17bと中間部突出管17cと送水管19の下部突出管19bと中間部突出管19cは線対称となるように配置されているので、給水管17を送水管とし、送水管19を給水管として使用することも可能である。すなわち、取水する河川の状況等によって浄水場が変更され、送水する上水道が切り替えられて送水方向が変更された場合にも対応することが可能である。
【0029】
図9、
図10に本発明の実施の形態2に係る貯水槽61を示す。
この貯水槽61は実施の形態1に係る貯水槽1と次に説明する点を除き同様の構成部分を有しているので、同様の構成部分については実施の形態1で用いた符号を付してその説明を省略し、貯水槽61については貯水槽1と異なる点についてのみ説明する。このことは実施の形態3から実施の形態7についても適用する。
給水管17の真直管17aの下部突出管17bと中間部突出管17cとの間、送水管19の真直管19aの下部突出管19bと中間部突出管19cとの間には補助穴63a、63b、63c、63d、63eが形成されている。なお、
図10は図面表示上解りやすくするために短寸法とした真直管17a(19a)を示している。
補助穴63a、63b、63c、63d、63eは上方に位置するものの開口面積が下方に位置するものより小さくなるように形成されている。
【0030】
貯水槽61では、下部突出管17bと中間部突出管17cに加えて、補助穴63a、63b、63c、63d、63eからも水が流出する。従って、本体3内の全体に水流が発生する。これにより、ピット15内の水も含めて本体3内の水をより確実に入れ替えることができる。
真直管17a(19a)内の水は、中間部突出管17c(19c)、補助穴63a、63b、63c、63d、63eから流出することでその下端部へいくに従って流れが弱まるが、前記したように補助穴63a、63b、63c、63d、63eは上方に位置するものの開口面積が下方に位置するものより小さくなるように形成されているので、補助穴63a、63b、63c、63d、63eから流出する水の量、速度をほぼ均等なものとでき、本体3内の水に対し斑のない流れを発生させることが可能である。
【0031】
図11に本発明の実施の形態3に係る貯水槽の給水管17、送水管19を示す。
中間部突出管77c(79c)の開口面積が下部突出管17b(19b)の開口面積より小さくなるように設定されている。
従って、中間部突出管77c(79c)から流出する水の量、速度と下部突出管17b(19b)から流出する水の量、速度とをほぼ均等なものとでき、本体3内の水に対し斑のない流れを発生させることが可能である。
【0032】
図12に本発明の実施の形態4に係る貯水槽の給水管17、送水管19を示す。
中間部突出管87c(89c)、下部突出管87b(89b)が長寸法になるように設定されている。
従って、中間部突出管87c(89c)、下部突出管87b(89b)から流出する水が水平方向へより長い距離に渡ってガイドされ、本体3内の水に対し斑のない流れを発生させる。
【0033】
図13に本発明の実施の形態5に係る貯水槽の給水管17、送水管19を示す。
下部突出管97b(99b)、中間部突出管97c(99c)は先端部にいくに従って拡径するラッパ状に形成されている。
従って、下部突出管97b(99b)、中間部突出管97c(99c)から流出する水が拡がり、本体3内の水を撹拌し斑のない流れを発生させる。
【0034】
図14に本発明の実施の形態6に係る貯水槽の給水管17、送水管19を示す。
下部突出管107b(109b)、中間部突出管107c(109c)は先端部にいくに従って縮径するノズル状に形成されている。
従って、下部突出管107b(109b)、中間部突出管107c(109c)から流出する水の流速が増し、本体3内の水に対し斑のない流れを発生させる。
【0035】
図15に本発明の実施の形態7に係る貯水槽111を示す。
給水管17の下部突出管117b、送水管19の下部突出管119bは側壁体5の内壁面5aに沿って湾曲している。
従って、下部突出管117b、119bから流出する水は内壁面5aに沿ってスムーズに流れ、本体3内の水に対し斑のない流れを発生させる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では地下埋設型の貯水槽を示したが、本発明はこれに限定されず、地上に設置するタイプの貯水槽に適用することができるのは勿論である。
実施の形態7において、下部突出管117b、119bだけを湾曲する構成に限らず、中間部突出管も湾曲させる構成としてもよく、また中間部突出管だけを湾曲させる構成とすることも可能である。
ピットはすり鉢状に限らず、円柱状等他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…貯水槽 3…本体 5…側壁体 5a…側壁体の内壁面
7…底版 9…頂版 11…取水口 13…筒体
14…蓋 15…凹状のピット
15a…ピットの底面 15b…ピットの上面開口
17…給水管 19…送水管
17a、19a…真直管 17b、19b…下部突出管
17c、19c…中間部突出管 19d…延出部
20…ケース 21…緊急遮断弁 22…蓋 23…バルブ
25、27…揚水管 29…急速排気弁 31…筒体 33…蓋
35、37…採水口導入管 39…急速排気弁 41…筒体 43…蓋
45…ホース 47…手動式ポンプ 49…ホース
51…自動式ポンプ 53…臨時給水栓 61…貯水槽
63a、63b、63c、63d、63e…補助穴
77c、79c…中間部突出管
87b、89b…下部突出管 87c、89c…中間部突出管
97b、99b…下部突出管 97c、99c…中間部突出管
107b、109b…下部突出管 107c、109c…中間部突出管
117b、119b…下部突出管
G…地面