(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、共通する参照符号を付す。
【0008】
[1]第1実施形態
第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、ウェル線CPWELLから供給されたキャリアによって書き込み禁止のビット線BLの充電を行い、フルページで選択トランジスタST1の書き込みを行う。
【0009】
[1−1]構成
[1−1−1]全体構成
図1を用いて、半導体記憶装置1の全体構成について説明する。
半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ10、ロウデコーダ(R/D)11、センスアンプモジュール12、ドライバ13、シーケンサ(コントローラ)14、レジスタ15、及び入出力回路(I/O)16を備えている。
【0010】
メモリセルアレイ10は、それぞれがワード線及びビット線に関連付けられた複数の不揮発性メモリセルの集合である複数のブロックBLK(BLK0、BLK1、BLK2、・・・)を備えている。ブロックBLKは、例えばデータの消去単位となり、同一ブロックBLK内のデータは一括して消去される。この場合に限定されることなく、他の消去動作は、“不揮発性半導体記憶装置”という2011年9月18日に出願された米国特許出願13/235,389号、“不揮発性半導体記憶装置”という2010年1月27日に出願された米国特許出願12/694,690号に記載されている。これらの特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0011】
ブロックBLKの各々は、メモリセルが直列接続されたNANDストリングNSの集合である複数のストリングユニットSU(SU0、SU1、SU2、・・・)を備えている。メモリセルアレイ10内のブロック数、及び1ブロックBLK内のストリングユニットSU数は任意の数に設定できる。
【0012】
ロウデコーダ11は、ブロックアドレスやページアドレスをデコードして、対応するブロックBLKのいずれかのワード線WLを選択し、選択ワード線及び非選択ワード線に適切な電圧を印加する。
【0013】
センスアンプモジュール12は、データの読み出し時には、メモリセルからビット線BLに読み出されたデータをセンスし、データの書き込み時には、書き込みデータをビット線BLに転送する。
【0014】
ドライバ13は、データの書き込み、読み出し、及び消去に必要な電圧を生成し、ロウデコーダ11、及びセンスアンプモジュール12に供給する。この電圧が、メモリセルアレイ10内の各種配線に印加される。
【0015】
シーケンサ14は、半導体記憶装置1全体の動作を制御する。
【0016】
レジスタ15は、種々の信号を保持する。例えば、データの書き込みや消去動作のステータスを保持し、これによって外部のコントローラ(図示せず)に動作が正常に完了したか否かを通知する。レジスタ15は、外部のコントローラから受信したコマンドやアドレス等を保持し、また種々のテーブルを保持することも可能である。
【0017】
入出力回路16は、外部のコントローラ又はホスト機器(図示せず)とデータの授受を行う。入出力回路16は、データの読み出し時には、センスアンプモジュール12でセンスされた読み出しデータを外部へ出力し、データ書き込み時には、外部から受信した書き込みデータをセンスアンプモジュール12に転送する。
【0018】
[1−1−2]メモリセルアレイ10
図2を用いて、半導体記憶装置1の備えるメモリセルアレイ10の回路構成について説明する。
【0019】
まず、メモリセルアレイ10の備えるブロックBLKの構成について説明する。
図2は、メモリセルアレイ10の備える1つのブロックBLKを示しており、他のブロックBLKも同様の構成を有している。
【0020】
ブロックBLKは、例えば4個のストリングユニットSU(SU0〜SU3)を含んでいる。ストリングユニットSUの各々は、複数のNANDストリングNSを含んでいる。NANDストリングNSの各々は、例えば8個のメモリセルトランジスタMT(MT0〜MT7)、及び選択トランジスタST1、ST2を含んでいる。メモリセルトランジスタMT及び選択トランジスタST1、ST2の各々は、制御ゲートと、電荷蓄積層を含む積層ゲートとを備えている。メモリセルトランジスタMT及び選択トランジスタST1は、閾値電圧を変化させることができる。
【0021】
メモリセルトランジスタMTは、データを不揮発に保持する。メモリセルトランジスタMT0〜MT7は、選択トランジスタST1、ST2間に直列に接続されている。選択トランジスタST1、ST2は、データの書き込み、読み出し、及び消去を行うNANDストリングNAの選択に用いる。選択トランジスタST1は、一端がメモリセルトランジスタMT7の一端に接続されている。選択トランジスタST2は、一端がメモリセルトランジスタMT0の一端に接続されている。
【0022】
次に、メモリセルアレイ10に接続されている配線の構成について説明する。半導体記憶装置1は、ビット線BL、ワード線WL、セレクトゲート線SGD、SGS、ソース線CELSRCを備えている。
【0023】
ビット線BLは、センスアンプモジュール12(図示せず)に接続され、例えばL個(Lは1以上の自然数)設けられる。ビット線BLは、対応するNANDストリングNSの選択トランジスタST1の他端に接続されている。ビット線BLには、複数のブロックBLK間で、同一行にあるNANDストリングNSが接続されている。
【0024】
ワード線WLは、ロウデコーダ11(図示せず)に接続され、ブロックBLK毎に例えば8個(ワード線WL0〜WL7)ずつ設けられる。ワード線WL0〜WL7はそれぞれ、各ストリングユニット内のメモリセルトランジスタMT0〜MT7のゲートに接続されている。
【0025】
セレクトゲート線SGDは、ロウデコーダ11(図示せず)に接続され、ブロックBLK毎に例えば4個(セレクトゲート線SGD0〜SGD3)ずつ設けられる。セレクトゲート線SGDの個数は、ストリングユニットSUの個数に対応している。セレクトゲート線SGDは、対応するストリングユニットSU内の選択トランジスタST1のゲートに接続されている。
【0026】
セレクトゲート線SGSは、ロウデコーダ11(図示せず)に接続され、ブロック毎に例えば1個ずつ設けられる。セレクトゲート線SGSは、各ストリングユニットSU内の選択トランジスタST2のゲートに接続されている。
【0027】
ソース線CELSRCは、ドライバ13(図示せず)に接続され、例えば複数のブロック間で共通に設けられる。ソース線CELSRCは、各ストリングユニットSU内の選択トランジスタST2の他端に接続されている。
【0028】
尚、データの読み出し及び書き込みは、いずれかのブロックBLKの、いずれかのストリングユニットSUにおける、いずれかのワード線WLに共通に接続された複数のメモリセルトランジスタMTにつき、一括して行われる。このデータの読み出し及び書き込みに使われる単位は、ページと定義されている。データの読み出し及び書き込みは、選択トランジスタST1に対しても行うことができる。
【0029】
また、ストリングユニットSUの個数は、任意の数に設定できる。NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMTの個数は、例えば16個、32個、64個、又は128個でも良く、これに限定されない。
【0030】
図3を用いて、半導体記憶装置1の備えるメモリセルアレイ10の断面構造について説明する。
【0031】
半導体記憶装置1のp型ウェル領域20上には、複数のNANDストリングNSが形成されている。具体的には、p型ウェル領域20上には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層21と、ワード線WLとして機能する複数の配線層22と、セレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層23とが形成されている。
【0032】
配線層21は、例えば4層で形成され、複数のNANDストリングNSで共通のセレクトゲート線SGSに電気的に接続され、2つの選択トランジスタST2のゲート電極として機能する。
【0033】
配線層22は、例えば8層で形成され、層ごとに共通のワード線WLに電気的に接続されている。
【0034】
配線層23は、例えば4層で形成され、NANDストリングNSごとに対応するセレクトゲート線SGDに接続され、1つの選択トランジスタST1のゲート電極として機能する。
【0035】
メモリホールMHは、配線層21、22、23を貫通し、p型ウェル領域20に達するように形成されている。メモリホールMHの側面には、ブロック絶縁膜24、電荷蓄積層25(絶縁膜)、及びトンネル酸化膜26が順に形成されている。メモリホールMH内には、導電膜(半導体ピラー)27が埋め込まれている。半導体ピラー27は、例えばノンドープのポリシリコンであり、NANDストリングNSの電流経路として機能する。半導体ピラー27の上端には、ビット線BLとして機能する配線層28が形成されている。
【0036】
以上のように、p型ウェル領域20上には、選択トランジスタST2、複数のメモリセルトランジスタMT、及び選択トランジスタST1が順に積層されており、1つのメモリホールMHが、1つのNANDストリングNSに対応している。
【0037】
p型ウェル領域20の表面内には、n
+型不純物拡散層29及びp
+型不純物拡散層30が形成されている。
【0038】
n
+型不純物拡散層29上には、コンタクトプラグ31が形成され、コンタクトプラグ31上には、ソース線CELSRCとして機能する配線層32が形成されている。ソース線SLは、ドライバ13に電気的に接続されている。
【0039】
p
+型不純物拡散層30上には、コンタクトプラグ33が形成され、コンタクトプラグ33上には、ウェル線CPWELLとして機能する配線層34が形成されている。ウェル線CPWELLは、ドライバ13に電気的に接続されている。
【0040】
コンタクトプラグ31、33は、奥行き方向に平面状に形成されている。
【0041】
配線層32、34が形成されている層は、配線層23(セレクトゲート線SGD)よりも上に形成されている。
【0042】
以上の構成は、
図3を記載した紙面の奥行き方向に複数配列されている。1つのストリングユニットSUは、奥行き方向に一列に並ぶ複数のNANDストリングNSの集合によって構成されている。
【0043】
さらに、配線層21は、同一のブロックBLK内において、共通のセレクトゲート線SGSとして機能し、互いに電気的に接続されている。最下層の配線層21とp型ウェル領域20との間には、トンネル酸化膜26が形成されている。n
+型不純物拡散層29に隣接している最下層の配線層21と、トンネル酸化膜26とは、n
+型不純物拡散層29近傍まで形成されている。
【0044】
これにより、選択トランジスタST2がオン状態とされた場合、形成されたチャネルは、メモリセルトランジスタMT0及びn
+型不純物拡散層29を、電気的に接続する。ドライバ13は、ウェル線CPWELLに電圧を印加することで、半導体ピラー27に電位を与えることができる。
【0045】
尚、メモリセルアレイ10の構成については、その他の構成であってもよい。メモリセルアレイ10の構成については、例えば“三次元積層不揮発性半導体メモリ”という2009年3月19日に出願された米国特許出願12/407,403号に記載されている。また、“三次元積層不揮発性半導体メモリ”という2009年3月18日に出願された米国特許出願12/406,524号、“不揮発性半導体記憶装置及びその製造方法”という2010年3月25日に出願された米国特許出願12/679,991号、“半導体メモリ及びその製造方法”という2009年3月23日に出願された米国特許出願12/532,030号に記載されている。これらの特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0046】
[1−1−3]センスアンプモジュール12
図4を用いて、半導体記憶装置1の備えるセンスアンプモジュール12の回路構成について説明する。
【0047】
センスアンプモジュール12は、センスアンプ部SA及びラッチ回路SDLを備えている。センスアンプ部SAは、ラッチ回路SDLの保持するデータに応じてビット線BLに電圧を印加する。ラッチ回路SDLは、入出力回路16から受信した書き込みデータを保持する。個々のメモリセルトランジスタMTが2ビット以上のデータを保持する際には、ラッチ回路は2つ以上設けられる。
【0048】
センスアンプ部SAは、高耐圧nチャネルMOSトランジスタ40、低耐圧nチャネルMOSトランジスタ41〜48、低耐圧pチャネルMOSトランジスタ49、及びキャパシタ素子50を備えている。
【0049】
トランジスタ40は、ゲートに制御信号BLSが供給され、一端が対応するビット線BLに接続されている。トランジスタ41は、ゲートに制御信号BLCが供給され、一端がトランジスタ40の他端に接続され、他端がノードSCOMに接続されている。トランジスタ41は、対応するビット線BLを、制御信号BLCに応じた電位にクランプするために用いられる。トランジスタ42は、ゲートに制御信号BLXが供給され、一端がノードSCOMに接続され、他端がノードSSRCに接続されている。
【0050】
トランジスタ43は、ゲートに制御信号XXLが供給され、一端がノードSCOMに接続され、他端がノードSENに接続されている。トランジスタ44は、ゲートに制御信号HLLが供給され、一端がノードSSRCに接続され、他端がノードSENに接続されている。トランジスタ45は、ゲートがノードINVに接続され、一端がノードSCOMに接続され、他端がノードSRCGNDに接続されている。
【0051】
トランジスタ46は、ゲートに制御信号BLQが供給され、一端がノードSENに接続され、他端がバスLBUSに接続されている。トランジスタ47は、ゲートがノードSENに接続され、一端がクロックCLKが入力される。トランジスタ48は、ゲートに制御信号STBが供給され、一端がトランジスタ47の他端に接続され、他端がバスLBUSに接続されている。トランジスタ49は、ゲートがノードINVに接続され、一端がノードSSRCに接続され、他端が電源端子に接続されている。キャパシタ素子50は、一端がノードSENに接続され、他端にクロックCLKが入力される。
【0052】
ラッチ回路SDLは、低耐圧nチャネルMOSトランジスタ51〜54、低耐圧pチャネルMOSトランジスタ55〜58を備えている。
【0053】
トランジスタ51は、ゲートに制御信号STLが供給され、一端がバスLBUSに接続され、他端がノードLATに接続されている。トランジスタ52は、ゲートに制御信号STIが供給され、一端がバスLBUSに接続され、他端がノードINVに接続されている。トランジスタ53は、ゲートがノードINVに接続され、一端が接地端子に接続され、他端がノードLATに接続されている。
【0054】
トランジスタ54は、ゲートがノードLATに接続され、一端が接地端子に接続され、他端がノードINVに接続されている。トランジスタ55は、ゲートがノードINVに接続され、一端がノードLATに接続されている。トランジスタ56は、ゲートがノードLATに接続され、一端がノードINVに接続されている。トランジスタ57は、ゲートに制御信号SLLが供給され、一端がトランジスタ55の他端に接続され、他端が電源端子に接続されている。トランジスタ58は、ゲートに制御信号SLIが供給され、一端がトランジスタ56の他端に接続され、他端が電源端子に接続されている。
【0055】
ラッチ回路SDLにおいて、トランジスタ53、55は第1インバータを構成し、トランジスタ54、56は第2インバータを構成している。第1インバータの出力及び第2インバータの入力(ノードLAT)は、トランジスタ51を介してバスLBUSに接続されている。第1インバータの入力及び第2インバータの出力(ノードINV)は、データ転送用のトランジスタ52を介してバスLBUSに接続されている。ラッチ回路SDLは、データをノードLATで保持し、その反転データをノードINVで保持する。
【0056】
また、センスアンプモジュール12は、プリチャージに用いる低耐圧pチャネルトランジスタ59を備えている。トランジスタ59は、ゲートに制御信号PCnが供給され、一端がバスLBUSに接続され、他端が電源端子に接続されている。
【0057】
尚、トランジスタ49、57、58、59に接続されている電源端子に印加される電圧はVddである。Vddは、例えば2.5Vである。トランジスタ53、54に接続されている接地端子に印加される電圧はVssである。Vssは、例えば0Vである。ノードSRCGNDに印加される電圧は、例えばVssである。電圧値Vdd、Vssは、これに限定されず、種々変更が可能である。
【0058】
[1−2]動作
[1−2−1]選択トランジスタST1
図5〜7を用いて、選択トランジスタST1の動作について説明する。
図5〜7は、1つの選択トランジスタST1におけるキャリアの挙動を示している。以下の説明において、選択トランジスタST1のゲートには電圧Vgが印加され、ビット線BLにはビット線電圧Vblが印加され、ウェル線CPWELLにはウェル電圧Vcwが印加されている。尚、以下の説明は、メモリセルトランジスタMT及び選択トランジスタST2についても同様である。
【0059】
半導体ピラー27は、例えばノンドープのポリシリコンであり、ソース−ドレイン拡散層を有さない。これにより、半導体ピラー27内には、電子をキャリアとして電流が流れる場合と、正孔をキャリアとして電流が流れる場合がある。電子をキャリアとして電流が流れる場合は、例えば読み出し動作であり、正孔をキャリアとして電流が流れる場合は、例えば消去動作である。
【0060】
選択トランジスタST1の閾値電圧Vthn、Vthpは、電荷蓄積層25に保持されている電子の数が多いほど高くなる。Vthnは、電子をキャリアとして電流が流れる場合における選択トランジスタST1の閾値電圧であり、Vthpは、正孔をキャリアとして電流が流れる場合における選択トランジスタST1の閾値電圧である。
【0061】
書き込み状態の選択トランジスタST1の閾値電圧Vthn、Vthpはそれぞれ、消去状態の選択トランジスタST1の閾値電圧Vthn、Vthpよりも高い。書き込み状態の選択トランジスタST1とは、消去状態の選択トランジスタST1に対して書き込み動作を行い、電荷蓄積層25に電子を注入した選択トランジスタST1のことである。
【0062】
図5は、1つの選択トランジスタST1における電子の挙動を示している。選択トランジスタST1は、NチャネルMOSトランジスタのように動作し、書き込み状態の選択トランジスタST1では電流が流れ難く、消去状態の選択トランジスタST1では電流が流れ易い。ここで、以下の説明は、Vbl<Vcwと仮定して行う。
【0063】
図5(a)に示すように、例えば選択トランジスタST1が消去状態であり、Vg−Vbl≧Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオンする。電子をオンするとは、電子をキャリアとした電流経路を形成することを示し、電子をオフするとは、電子をキャリアとした電流経路を遮断することを示している。このとき、選択トランジスタST1には、ソース線CELSRCから供給された電子をキャリアとした電流が流れる。これにより、半導体ピラー27内に電流経路が形成され、ウェル電圧Vcwが、ビット線BLに転送される。
【0064】
図5(b)に示すように、例えば選択トランジスタST1が書き込み状態であり、Vg−Vbl<Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオフする。このとき、選択トランジスタST1は、ビット線BLから供給された電子の電流経路を遮断する。
【0065】
図6は、1つの選択トランジスタST1における正孔の挙動を示している。選択トランジスタST1は、PチャネルMOSトランジスタのように動作し、書き込み状態の選択トランジスタST1では電流が流れ易く、消去状態の選択トランジスタST1では電流が流れ難い。
【0066】
図6(a)に示すように、例えば選択トランジスタST1が消去状態であり、Vg−Vcw>Vthpとなっている場合、選択トランジスタST1は正孔をオフする。正孔をオンするとは、正孔をキャリアとした電流経路を形成することを示し、正孔をオフするとは、正孔をキャリアとした電流経路を遮断することを示している。このとき、選択トランジスタST1は、ウェル線CPWELLから供給された正孔の電流経路を遮断する。しかし、電圧に何も条件を付けない場合、選択トランジスタST1は、ウェル線CPWELLから供給された正孔は遮断できるが、ビット線BLから供給された電子を遮断できないことがある。この動作の詳細については後述する。
【0067】
図6(b)に示すように、例えば選択トランジスタST1が書き込み状態であり、Vg−Vcw≦Vthpとなっている場合、選択トランジスタST1は正孔をオンする。このとき、選択トランジスタST1には、ウェル線CPWELLから供給された正孔をキャリアとした電流が流れる。これにより、半導体ピラー27内に電流経路が形成され、ウェル電圧Vcwが、ビット線BLに転送される。
【0068】
尚、Vbl>Vcwと仮定すると、Vg−Vcw≧Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオンする。一方、Vg−Vcw<Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオフする。また、Vg−Vbl>Vthpとなっている場合、選択トランジスタST1は正孔をオフする。一方、Vg−Vbl≦Vthpとなっている場合、選択トランジスタST1は正孔をオンする。
図7は、1つの選択トランジスタST1における電子及び正孔の挙動を示し、
図6(a)に示す電圧の条件に対して、さらに条件を追加したものである。
図6(a)に示す電圧の条件は、Vg−Vcw>Vthpであり、選択トランジスタST1は正孔をオフしている。
【0069】
図7(a)に示すように、Vg−Vbl≧Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオンする。このとき、選択トランジスタST1には、ビット線BLから供給された電子をキャリアとした電流が流れる。選択トランジスタST1を通過した電子は、ウェル線CPWELLから供給された正孔と再結合する。これにより、半導体ピラー27内に電流経路が形成され、ビット線BL及びウェル線CPWELL間で電圧が転送される。
【0070】
図7(b)に示すように、Vg−Vbl<Vthnとなっている場合、選択トランジスタST1は電子をオフする。このとき、選択トランジスタST1は、ビット線BLから供給された電子、及びウェル線CPWELLから供給された正孔を遮断する。このように、選択トランジスタST1に電子及び正孔をオフさせる場合、Vthn、Vthp、Vg、Vbl、及びVcwの関係は、以下の通りになる。
Vg−Vbl<Vthn
Vg−Vcw>Vthp
Vthp+Vcw<Vg<Vthn+Vbl
また、選択トランジスタST1において、電子の閾値電圧Vthnと正孔の閾値電圧Vthpとの差を、Δnp=Vthn−Vthp>0Vとする。第1実施形態に係る書き込み動作において、Vblは例えば0Vに設定され、VcwはΔnp−Vcw>0を満たすように設定される。このとき、VthnとVgの関係は、以下の通りになる。
Vthn−Δnp+Vcw<Vg<Vthn
この数式は、以下の通りに変形することができる。
Vg<Vthn<Vg+Δnp−Vcw
つまり、選択トランジスタST1は、VthnがVg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwの範囲内にあるとき電子及び正孔をオフする。
【0071】
尚、ゲート電圧により正孔電流を制御する特許としては、“不揮発性半導体記憶装置”という2010年1月27日に出願された米国特許出願12/694,690号に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。この特許出願には、Vthn及びVthpが相関を有し、Vthn及びVthpの差が概略一定であることが示されている。
【0072】
図8を用いて、第1実施形態に係る書き込み動作における、選択トランジスタST1の閾値電圧Vthnの変化について説明する。
【0073】
選択トランジスタST1は、書き込みを行うことによって閾値分布を狭くすることができる。以下、選択トランジスタST1への書き込みをSGD書き込みと称する。SGD書き込みにおいて、書き込み禁止のビット線BLには、高い電圧が転送され、書き込み対象のビット線BLは、例えばVss等の低い電圧に維持される。そして、セレクトゲート線SGDに書き込み電圧Vpgmが印加された際には、書き込み禁止のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1は、書き込み禁止のビット線BLの電圧が十分に高ければ書き込みが行われ、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1は、トンネル酸化膜26にVpgm−Vssの高電圧が印加されて書き込みが行われる。このSGD書き込みの一例は、例えば“不揮発性半導体記憶装置”という2012年6月18日に出願された日本特許出願2012/136739号に記載されている。この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0074】
第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作では、書き込み禁止のビット線BLに高い電圧を転送する際に、Vg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwの領域、及びVg+Δnp−Vcw≦Vthnの領域における上述の選択トランジスタST1の特性が利用される。つまり、選択トランジスタST1は、電子をオフした状態で、正孔電流を制御する。
【0075】
具体的には、Vg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwのとき、選択トランジスタST1が電子及び正孔をオフする特性を利用して、書き込み対象のビット線BLは低い電圧に維持される。一方、Vg+Δnp−Vcw≦Vthnのとき、選択トランジスタST1が電子をオフ、正孔をオンする特性を利用して、書き込み禁止のビット線BLにはウェル線CPWELLから高い電圧が転送される。
【0076】
以上のように、選択トランジスタST1のVthnの値に応じて、ビット線BLに高い電圧が転送されるか否かが決定される。これにより、選択トランジスタST1の書き込み及び書き込み禁止を決定することができる。この書き込み動作によって、選択トランジスタST1の閾値分布は、Vg+Δnp−Vcw以上になるまで上昇する。
【0077】
尚、Vthn≦Vgのとき、選択トランジスタST1は電子をオン、正孔をオフする。このとき、ビット線BLにはソース線CELSRCから高い電圧が転送されるため、対応する選択トランジスタST1は書き込み禁止となる。この領域は、選択トランジスタST1の書き込み目標レベルよりも低いが、本実施形態に係る書き込み動作では書き込みを行うことが不可能であり、選択トランジスタST1の書き込み不良の原因となる。そのため、書き込み動作におけるVgの値は、選択トランジスタST1の書き込み前の閾値分布の下端未満に設定することが望ましい。
【0078】
[1−2−2]書き込み動作
図9を用いて、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作の全体の流れについて説明する。
【0079】
まず、シーケンサ14は、プログラム電圧Vpgm及び電圧Vgの初期値を設定する(ステップS10)。Vpgmの初期値は、例えば15Vであり、半導体ピラー27内に流れる電子を電荷蓄積層25に注入できる高電圧に設定される。Vgの初期値は、閾値分布の下端辺りに対応する値に設定される。この値は、測定・評価等によって予め決定される。
【0080】
次に、シーケンサ14は、書き込みループ数をリセットする(ステップS11)。書き込みループ数は、ステップS12を繰り返した回数を示している。
【0081】
次に、シーケンサ14は、選択されたページに対して書き込みを行う(ステップS12)。選択されたページには、複数の選択トランジスタST1が含まれている。書き込み動作において、電圧を印加するタイミング条件については後述する。
【0082】
次に、シーケンサ14は、書き込みループ数がN回(Nは0以上の整数)以上であるかどうかを判定する(ステップS13)。ステップS12を繰り返す回数Nは、任意の数に設定することができる。
【0083】
書き込みループ数がN回未満の場合(ステップS13、NO)、シーケンサ14は、Vpgm及び書き込みループ数をインクリメントする(ステップS14)。そして、シーケンサ14は、ステップ12に戻り、ステップS12〜S14の書き込みループを繰り返す。Vpgmをインクリメントする値であるΔVpgmは、任意の値に設定することができる。
【0084】
書き込みループ数がN回以上の場合(ステップS13、YES)、シーケンサ14は、Vg=VL−Δnp+Vcwを満たしているかどうかを判定する(ステップS15)。VLは、選択トランジスタST1の書き込み目標レベルである。Vcwは、後述するBL充電動作において、セレクトゲート線SGDにVgが印加されている時に、ウェル線CPWELLに印加されている電圧の値に対応している。 Vg=VL−Δnp+Vcwを満たしていない場合(ステップS15、NO)、シーケンサ14は、VgをΔnp−Vcwだけインクリメントし、VpgmをΔVpgmだけデクリメントする(ステップS16)。Vgをインクリメントする値Δnp−Vcwは、前述した書き込みループの繰り返しによって上昇する見込みの閾値電圧の幅に対応している。Vgをインクリメントする値は、これに限定されず、例えばΔnp−Vcwより少し低い値に設定してもよい。尚、シーケンサ14は、Vpgmをデクリメントしなくても良く、デクリメントする値もΔVpgmに限定されない。
【0085】
次に、シーケンサ14は、Vg+Δnp−VcwがVLを超えているかどうかを判定する(ステップS17)。
【0086】
Vg+Δnp−Vcwの値がVL以下の場合(ステップS17、NO)、シーケンサ14は、ステップ11に戻って書き込みループ数をリセットし、再度ステップS12〜S14の書き込みループを繰り返す。
【0087】
以上の動作を繰り返し行い、Vg+Δnp−Vcwの値がVLを超えた場合(ステップS17、YES)、シーケンサ14は、Vgの値をVg=VL−Δnp+Vcwとする(ステップS18)。そして、シーケンサ14は、ステップ11に戻って書き込みループ数をリセットし、再度ステップS12〜S14の書き込みループを繰り返す。そして、シーケンサ14は、Vg=VL−Δnp+Vcwとなっているため(ステップS15、YES)、書き込み動作を終了する。
【0088】
以上のように、シーケンサ14は、書き込みループの後に、Vgをインクリメントして、再度書き込みループを実行している。Vgのインクリメントは、複数回行われる。
図10を用いて、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作による、選択トランジスタST1の閾値分布の変化について説明する。
図10には、ステップS16におけるVgのインクリメント処理を3回行い、選択トランジスタST1の閾値分布がVLを以上になるまで上昇する例を示している。
【0089】
図10(a)は、Vgの初期値をVg0とし、ステップS12〜S14の書き込みループをN回繰り返す前後の選択トランジスタST1の閾値分布を示している。Vg0を用いて書き込みループを繰り返すと、選択トランジスタST1の閾値分布は、Vg0+Δnp−Vcw以上になるまで上昇する。このVg0+Δnp−Vcwの値をVg1とする。
【0090】
図10(b)は、
図10(a)に続けてVgの値をVg1とし、ステップS12〜S14の書き込みループをN回繰り返す前後の選択トランジスタST1の閾値分布を示している。Vg1を用いて書き込みループを繰り返すと、選択トランジスタST1の閾値分布は、Vg1+Δnp−Vcw以上になるまで上昇する。このVg1+Δnp−Vcwの値をVg2とする。
【0091】
図10(c)は、
図10(b)に続けてVgの値をVg2とし、ステップS12〜S14の書き込みループをN回繰り返す前後の選択トランジスタST1の閾値分布を示している。Vg2を用いて書き込みループを繰り返すと、選択トランジスタST1の閾値分布は、Vg2+Δnp−Vcw以上になるまで上昇する。このVg2+Δnp−Vcwの値をVg3とする。
【0092】
図10(d)に示すように、Vg設定値がVg3のとき、Vg3+Δnp−VcwがVLよりも高い。このとき、シーケンサ14は、Vgの値をVg=VL−Δnp+Vcwとして、ステップS12〜S14の書き込みループを繰り返す。これにより、選択トランジスタST1の閾値分布は、VL以上になるまで上昇する。
【0093】
以上のように、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作は、VgをインクリメントしてステップS12〜S14の書き込みループを繰り返すことにより、選択トランジスタST1の閾値分布がVL以上になるまで押し上げていく。
【0094】
尚、Vgをインクリメントする回数は、これに限定されず、Vgの初期値、VL、及びΔnp−Vcwの数値に応じて変化する。Vgをインクリメントする回数は、例えば1回の場合もある。また、Vgをインクリメントして書き込みループを行った場合、閾値電圧がVgである選択トランジスタST1は書き込み不可の領域に含まれてしまうため、インクリメントする数値はΔnp−Vcwに対して少し下げた値に設定してもよい。
【0095】
図11を用いて、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作において、電圧を印加するタイミング条件について説明する。書き込み動作の間、選択ブロック及び非選択ブロックにおける非選択のセレクトゲート線SGD(USGD)の電圧は、Vssに維持され、非選択ブロックにおける非選択のセレクトゲート線SGS(USGS)の電圧は、Vssに維持されている。また、ノードSRCGNDの電圧は、Vssに維持されている。
【0096】
まず、シーケンサ14は、BL放電動作を行う。BL放電動作において、ビット線BLの電圧はVssにされる。
【0097】
時刻t0において、シーケンサ14は、制御信号BLSの電圧をVHHに、制御信号BLCの電圧をVddにして、トランジスタ40、41をオン状態にする。VHH、Vddは、トランジスタ40、41がオンする電圧であり、種々変更が可能である。このとき、ノードINVは、“L”レベルに設定されているため、トランジスタ45がオン状態であり、ビット線BL及びノードSRCGND間が接続される。これにより、ビット線BLの電圧はVssになる。
【0098】
時刻t1において、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVssにする。これにより、センスアンプモジュール12及びビット線BL間は電気的に接続されず、ビット線BLはフローティング状態になる。フローティング状態とは、電気的に遮断された状態のことを示している。
【0099】
次に、シーケンサ14は、BL充電動作を行う。BL充電動作は、書き込み動作において、セレクトゲート線SGDに書き込み電圧Vpgmが印加される前に行われる。BL充電動作において、書き込み禁止のビット線BLには、高い電圧が転送される。
【0100】
時刻t2において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGS及びワード線WLの電圧をVuselにして、選択トランジスタST2及びメモリセルトランジスタMTをオンする。Vuselは、メモリセルトランジスタMT及び選択トランジスタST1、ST2において、正孔をキャリアとした電流が流れる電圧であり、例えばVss又は0V以下の値に設定される。Vuselは、Vusel−Vblh<Vthpを満たしている。Vblhは、ウェル線CPWELLから書き込み禁止のビット線BLに転送する電圧であり、例えば4Vである。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧VcwをVblh−Vgにする。Vblhは、Vblh−Vg>0を満たしている。尚、Vblh−Vg>0を満たさない場合もあり、これに限定されない。
【0101】
時刻t3において、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧VcwをVblhにする。また、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVgにする。このとき、閾値電圧VthnがVg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwを満たす選択トランジスタST1はオンし、閾値電圧VthnがVg+Δnp−Vcw≦Vthnを満たす選択トランジスタST1はオフする。これにより、書き込み禁止のビット線BLには、ウェル線CPWELLからVblhが転送され、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、Vblhまで上昇する。一方で、書き込み対象のビット線BLの電圧は、対応する選択トランジスタST1がオフしているため、Vssを維持する。尚、Vgの初期値は、Vuselより高く設定される。
【0102】
時刻t4において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVssに、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0103】
時刻t5において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGS、ワード線WL、ソース線CELSRC、及びウェル線CPWELLの電圧をVssにする。
【0104】
図12を用いて、BL充電動作時における、メモリセルアレイ10の動作の一例について説明する。
図12は、ビット線BL1に接続されている選択トランジスタST1の書き込みが終了し、その他のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1は書き込み対象である例を示している。
【0105】
BL充電動作の開始時、全てのビット線BLはフローティング状態になっている。セレクトゲート線SGDにVgが印加されると、ビット線BL1に接続されている選択トランジスタST1はオンし、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1はオフする。このとき、ソース線CELSRCの電圧をVblhにすると、ビット線BL1には、ソース線CELSRCからビット線BLに向かって正孔電流が流れ、ビット線BL1の電圧はVssからVblhまで上昇する。これにより、ビット線BL1は、書き込み禁止状態になる。書き込み対象のビット線BLは、接続されている選択トランジスタST1がオフしているため、Vssを維持する。尚、ソース線CELSRCの電圧は、ウェル線CPWELLへの影響をキャンセルするため、ウェル線CPWELLの電圧と等しくしている。
【0106】
図11に戻り、SGD書き込み動作について説明する。SGD書き込み動作において、閾値電圧がVg+Δnp−Vcwを超えていない選択トランジスタST1に対して、書き込みが行われる。
【0107】
時刻t6において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、及びワード線WLの電圧をVpassにして、ソース線CELSRCの電圧をVddにする。Vpassは、選択トランジスタST1、ST2及びメモリセルトランジスタMTがチャネル電圧をブーストするための電圧であり、例えば10Vである。ソース線CELSRCに印加される電圧は、NANDストリングNSからソース線CELSRCへの電流の流れ込みを防止しており、Vddに限定されず、種々変更が可能である。
【0108】
時刻t7において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVpgmにする。これにより、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1は、トンネル酸化膜26にVpgm−Vssの高電圧が印加され、書き込みが行われる。一方、書き込み禁止のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1には、トンネル酸化膜26にVpgm−Vblhの電圧が印加される。このとき、Vblhが十分に高ければ、選択トランジスタST1は、書き込みが行われない。
【0109】
時刻t8において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、ワード線WL、及びソース線CELSRCの電圧をVssに、制御信号BLSの電圧をVHHに、制御信号BLCの電圧をVddにする。これにより、ビット線BLはVssまで放電される。
【0110】
時刻t9において、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVssにして、ステップS12の動作を終了する。
【0111】
以上のように、第1実施形態に係る半導体記憶装置1における書き込み動作では、選択トランジスタST1の閾値電圧を確認するベリファイ動作を行うことなく、書き込み禁止のビット線BLを充電することができる。
【0112】
[1−3]第1実施形態の効果
半導体記憶装置1において、選択トランジスタST1は、メモリセルトランジスタMTと同様の構造となっている場合、書き込み及び消去によって閾値電圧を変化させることができる。このとき、半導体記憶装置1は、選択トランジスタST1に対して書き込み及びベリファイを行うことで、閾値分布を狭くすることができる。選択トランジスタST1の閾値分布が狭くなると、書き込みを行ったメモリセルトランジスタMTの閾値分布も狭くなるため、半導体記憶装置1の信頼性が向上する。
【0113】
選択トランジスタST1に書き込みを行う場合、書き込み禁止のビット線BLに対して高い電圧を転送する必要がある。選択トランジスタST1に書き込みを行う方法としては、次の2つの方法が知られている。
【0114】
一方は、電源電圧を高くするBurn-in modeを使用した方法である。この方法は、電源電圧を高くすることで、センスアンプモジュール12から高い電圧を印加し、書き込み禁止のビット線BLを充電する。しかし、この方法は、通常の動作電圧では実現できないため、テストのみでの利用や、出荷前に予め書き込んでおくなど、限られた利用方法しかできない。また、ビット線BLを充電する電圧は、センスアンプモジュール12から転送されるため、耐圧を超えるような電圧が必要になった場合、センスアンプモジュール12に備えられた低耐圧トランジスタでは対応できない。
【0115】
他方は、1ページを偶奇に分けて、ハーフページごとに選択トランジスタST1の書き込みを行う方法である。この方法は、通常の電源電圧を使用し、センスアンプモジュール12全体を高耐圧トランジスタで構成すること無く対応することが可能である。しかし、書き込み禁止のビット線BLに高い電圧を転送するため、センスアンプモジュール12に高い電圧を通すための高耐圧トランジスタが1つ必要になる。また、ハーフページごとにしか書き込みを行えないため、書き込み速度が遅い。さらに、1ページを2回に分けて書き込みを行うことにより、後半のハーフページに書き込みを行う際に、すでに書き込み済みの前半のハーフページの選択トランジスタに余計なディスターブがかかる。
【0116】
そこで、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、選択トランジスタST1の書き込みの際に、ウェル線CPWELLから書き込み禁止のビット線BLに高い電圧を転送する。書き込み禁止のビット線BLの判別には、Vg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwの領域、及びVg+Δnp−Vcw≦Vthnの領域における選択トランジスタST1の特性を利用し、ベリファイ動作は省略されている。
【0117】
これにより、第1実施形態に係る半導体記憶装置1は、フルページで選択トランジスタST1の書き込みを行うことができ、ハーフページで選択トランジスタST1の書き込む場合と比べて、余計なディスターブを軽減することができる。
【0118】
また、センスアンプモジュール12は、高電圧の転送を必要としないため、全体を高耐圧トランジスタで構成する必要が無い。さらに、ウェル線CPWELLは、消去用に高い電圧を印加できるように設計されるため、ウェル線CPWELLに対して高い電圧Vblhを印加するための追加回路が少ない。これにより、半導体記憶装置1の面積の増大を抑制することができる。
【0119】
[2]第2実施形態
第2実施形態に係る半導体記憶装置1は、書き込み動作時に、Vgを最適値に設定するVgサーチ動作を行う。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0120】
図13を用いて、第2実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作の全体の流れについて説明する。
【0121】
Vg=VL−Δnp+Vcwを満たしていない場合(ステップS15、NO)、シーケンサ14は、Vgサーチ動作を行う(ステップS20)。Vgサーチ動作において、シーケンサ14は、選択トランジスタST1の閾値分布の下端を探し、Vgを最適値に設定する。Vgの最適値とは、選択されたセレクトゲート線SGDにVgを印加した場合に、オンする選択トランジスタST1の個数が、M個(Mは任意の数)未満になる値のことを示している。Vgサーチ動作の詳細については後述する。
【0122】
次に、シーケンサ14は、VpgmをΔVpgmだけデクリメントする(ステップS21)。第1実施形態と同様に、シーケンサ14は、Vpgmをデクリメントしなくても良く、デクリメントする値もΔVpgmに限定されない。
【0123】
次に、シーケンサ14は、ステップ17の処理を行う。その他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0124】
図14を用いて、Vgサーチ動作の詳細について説明する。
図14には、Vgサーチ動作の流れの一例を示している。
【0125】
図14(a)は、Vgの初期値をVg0とし、ステップS12〜S14の書き込みループをN回繰り返す前後の選択トランジスタST1の閾値分布を示している。
図14(a)に示すように、選択トランジスタST1の閾値分布は、ステップS12〜S13の書き込みループをN回繰り返した後においても、一部がVg0+Δnp−Vcw未満である場合がある。
【0126】
図14(b)は、
図14(a)の書き込み後の選択トランジスタST1に対して、ステップS20のVgサーチ動作を行っている様子を示している。
【0127】
まず、シーケンサ14は、選択トランジスタST1に対して読み出し動作を行う。選択されたセレクトゲート線SGDに対して印加する読み出し電圧値は、Vg0+Δnp−Vcwである。これにより、閾値電圧がVg0+Δnp−Vcw以下である選択トランジスタST1の個数を検知する。
【0128】
オンした選択トランジスタST1の個数がM個以上の場合、読み出し電圧をδだけ下げて、再度読み出し動作を行う。この動作は、オンした選択トランジスタST1の個数がM個未満になるまで繰り返される。尚、δは、任意の数値に設定することができる。
【0129】
オンした選択トランジスタST1の個数がM個未満になった場合、Vgは、このとき読み出し動作に用いられた電圧Vg1を、次の書き込みループに用いるVgの設定値とし、ステップS21に移行する。
【0130】
図14(c)は、Vgの設定値をVg1とし、ステップS12〜S14の書き込みループをN回繰り返す前後の選択トランジスタST1の閾値分布を示している。
【0131】
図14(d)は、
図14(c)の書き込み後の選択トランジスタST1に対して、ステップ20のVgサーチ動作を行っている様子を示している。
図14(d)に示すように、Vgサーチ動作における読み出し回数は、1回の場合もあり、選択トランジスタST1の閾値電圧に応じて変化する。尚、ステップ20において、Vgサーチ動作における読み出し回数が最大値に達したときは、読み出し動作に用いられたいずれかの電圧をVg設定値としてもよいし、書き込み動作が失敗であるとして書き込み動作を終了してもよい。
【0132】
以上のように、第2実施形態に係る半導体記憶装置1における書き込み動作では、Vgサーチ動作を行うことで、Vgを最適値に設定することができる。これにより、選択トランジスタST1の書き込み不良を減らすことができ、第1実施形態と比べて半導体記憶装置1の信頼性を向上することができる。
【0133】
[3]第3実施形態
第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、第1実施形態の書き込み動作に対して、ベリファイ動作を追加する。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0134】
[3−1]書き込み動作
図15を用いて、第3実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作の全体の流れについて説明する。
【0135】
ステップS11において、シーケンサ14は、書き込みループ数をリセットする。第3実施形態において、書き込みループ数は、ステップS30の書き込み及びベリファイを繰り返した回数に対応している。
【0136】
次に、シーケンサ14は、書き込み及びベリファイを行う(ステップS30)。ステップS30では、書き込み動作を行った後に、選択トランジスタST1の閾値電圧を確認するベリファイ動作が行われる。このベリファイ動作において、シーケンサ14は、書き込み対象の選択トランジスタST1の閾値電圧がVg+Δnp−Vcwを超えているかどうかを判断する。
【0137】
次に、シーケンサ14は、ベリファイをパスしたかどうかを判定する(ステップS31)。例えば、ベリファイ動作において、閾値電圧がVg+Δnp−Vcw以下であると判定された選択トランジスタST1の個数が所定の数未満であるとき、ベリファイパスとなる。
【0138】
ベリファイをフェイルした場合(ステップS31、NO)、シーケンサ14は、書き込みループ数をインクリメントする(ステップS14)。シーケンサ14は、ステップS30に戻り、書き込みループ(書き込み動作及びベリファイ動作のセット)を繰り返す。書き込みループ数が1以上のとき、シーケンサ14は、ベリファイ結果に応じて選択トランジスタST1の書き込みを行う。なお、シーケンサ14は、書き込みループ数が最大値に達したときは、書き込み動作が失敗であるとして書き込み動作を終了するようにしてもよい。
【0139】
ベリファイをパスした場合(ステップS31、YES)、シーケンサ14は、ステップS15に移行する。その他の動作は、第1実施形態と同様である。
【0140】
図16を用いて、第3実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作において、電圧を印加するタイミング条件について説明する。
図16は、説明の便宜上、ベリファイ動作を書き込み動作の前に示している。
【0141】
まず、ベリファイ動作について説明する。
【0142】
時刻t0において、シーケンサ14は、制御信号BLSの電圧をVHHにして、トランジスタ40をオンする。
【0143】
時刻t1において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGSの電圧をVsgにして、選択トランジスタST2をオンする。Vsgは、選択トランジスタST1、ST2がオンする電圧であり、例えば4Vである。
【0144】
時刻t2において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVsenseにして、ワード線WLの電圧をVreadにする。Vsenseは、各書き込みループにおいて選択トランジスタST1が書き込まれる閾値電圧であり、Vsense=Vg+Δnp−Vcwである。Vreadは、読み出し動作時に非選択のワード線WLに印加される電圧であり、例えば4.5Vである。
【0145】
時刻t3において、シーケンサ14は、制御信号BLCの電圧をVblcにして、ノードSRCGND及びソース線CELSRCの電圧をVcelsrcにする。Vblcの電圧値は、Vblc=Vbl+Vthnである。これにより、トランジスタ41はオンして、ビット線BLの電圧は、Vblまで上昇する。時刻t3及びt4の間で、センスアンプモジュール12は、センス結果の判定を行い、この結果をラッチ回路SDLに保持する。ベリファイをパスした場合、ノードINVは“L”レベルに、ベリファイをフェイルした場合、ノードINVは“H”レベルになる。“L”レベルは、制御信号が入力されるnチャネルMOSトランジスタがオフする電圧であり、制御信号が入力されるpチャネルMOSトランジスタがオンする電圧である。“H”レベルは、制御信号が入力されるnチャネルMOSトランジスタがオンする電圧であり、制御信号が入力されるpチャネルMOSトランジスタがオフする電圧である。
【0146】
時刻t4において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVssにして、ワード線WL、ソース線CELSRC、ノードSRCGNDの電圧をVssにする。このとき、ビット線BLの電圧はVssまで下降する。
【0147】
時刻t5において、シーケンサ14は、制御信号BLCの電圧をVssにして、トランジスタ41をオフする。
【0148】
時刻t6において、シーケンサ14は、制御信号BLSの電圧をVssにして、トランジスタ40をオフする。
【0149】
次に、ベリファイ結果に基づいて行われる書き込み動作について説明する。
【0150】
まず、BLプレ充放電動作について説明する。
【0151】
時刻t7において、シーケンサ14は、制御信号BLSの電圧をVHHに、制御信号BLCの電圧をVddhにして、トランジスタ40、41をオンする。Vddhは、Vddより高い電圧であり、例えばVddh=Vdd+Vthnである。
【0152】
ベリファイをパスした場合、ノードINVは“L”レベルのため、トランジスタ49がオン、トランジスタ45がオフしている。これにより、書き込み禁止のビット線BLには、電源端子からVddが印加される。
【0153】
ベリファイをフェイルした場合、ノードINVは“H”レベルのため、トランジスタ49がオフ、トランジスタ45がオンしている。これにより、書き込み対象のビット線BLには、ノードSRCGNDからVssが印加される。
【0154】
時刻t8において、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVssにして、トランジスタ40、41をオフする。このとき、書き込み禁止のビット線BLは、センスアンプモジュール12及びビット線BL間が電気的に接続されていないため、フローティング状態になり、Vddを維持する。
【0155】
次に、BL充電動作について説明する。
【0156】
時刻t9において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGS及びワード線WLの電圧をVuselにして、選択トランジスタST2及びメモリセルトランジスタMTをオンする。さらに、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVddにする。これにより、書き込み禁止のビット線BLに接続されているトランジスタ40はカットオフされ、書き込み対象のビット線BLに接続されているトランジスタ40はオンする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0157】
時刻t10において、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblhにする。また、セレクトゲート線SGDの電圧をVgにする。このとき、ベリファイをパスした選択トランジスタST1はオンして、ベリファイをフェイルした選択トランジスタST1はオフする。これにより、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、トランジスタ40がオフして、選択トランジスタST1がオンしているため、Vblhまで上昇する。一方、書き込み対象のビット線BLの電圧は、ノードSRCGNDからVssが印加され、選択トランジスタST1がオフしているため、Vssを維持する。
【0158】
時刻t11において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVssにする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0159】
時刻t12において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGS、ワード線WLの電圧をVssにして、選択トランジスタST1、ST2、及びメモリセルトランジスタMTをオフする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVssにする。このとき、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、フローティング状態になるため、Vblhを維持する。一方、書き込み対象のビット線BLの電圧は、ノードSRCGNDからVssが印加されているため、Vssを維持する。
【0160】
SGD書き込み動作は、第1実施形態と同様であり、
図16における時刻t13〜t16はそれぞれ、
図11における時刻t6〜t9に対応している。
【0161】
図17を用いて、BL充電動作時における、メモリセルアレイ10の動作の一例について説明する。
図17は、ビット線BL1に接続されている選択トランジスタST1のベリファイがパスし、その他のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1のベリファイはフェイルしている例を示している。
【0162】
BL充電動作時、ベリファイをパスしたビット線BL1には、Vddが印加され、フローティング状態になっている。一方、ベリファイをフェイルした書き込み対象のビット線BLには、Vssが印加されている。
【0163】
セレクトゲート線SGDにVgが印加されると、ビット線BL1に接続されている選択トランジスタST1はオンし、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST1はオフする。ソース線CELSRCの電圧がVblhにされると、ビット線BL1には、ソース線CELSRCからビット線BLに向かって正孔電流が流れる。これにより、ビット線BL1は、VddからVblに充電され、書き込み禁止状態になる。書き込み対象のビット線BLは、接続されている選択トランジスタST1がオフしているため、Vssを維持する。
【0164】
[3−2]第3実施形態の効果
半導体記憶装置1は、全てのビット線BLをフローティング状態にして、書き込み禁止のビット線BLだけに高い電圧を転送する場合、ビット線BL間のカップリングや、ビット線BL−ソース線CELSRC間のカップリングの影響により、書き込み対象のビット線BLがVssを維持できない場合がある。
【0165】
そこで、第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、ベリファイ動作を追加し、ベリファイ結果に応じて書き込み対象のビット線BLにVssを印加する。具体的には、半導体記憶装置1は、BL充電動作及びSGD書き込み動作中に、ノードSRCGNDからVssを印加し続けることによって、書き込み対象のビット線BLの電圧をVssに固定することができる。
【0166】
これにより、第3実施形態に係る半導体記憶装置1は、第1実施形態に対して、書き込み不良を抑制することができる。
【0167】
[4]第4実施形態
第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、第3実施形態の書き込み動作において、BL充電動作後に制御信号BLS、BLCの電圧をVssにする。
【0168】
図18を用いて、第4実施形態に係る半導体記憶装置1の動作ついて説明する。
図18に示す動作タイミングチャートは、
図16に示す動作タイミングチャートに対して、BL充電動作から先の制御信号BLS、BLCの動作のみ異なっている。以下、第3実施形態と異なる点のみ説明する。
【0169】
時刻t9において、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVddにして、トランジスタ40、41をオンする。
【0170】
時刻t12において、シーケンサ14は、制御信号BLS、BLCの電圧をVssにして、トランジスタ40、41をオフする。このとき、全てのビット線BLは、選択トランジスタST1がオフしているため、フローティング状態になっている。これにより、書き込み禁止のビット線BLの電圧はVblを維持し、書き込み対象のビット線の電圧はVssを維持するため、SGD書き込み動作を行うことができる。その他の動作は、第3実施形態と同様である。
【0171】
半導体記憶装置1は、SGD書き込み動作時において、ビット線BLに対するノイズが少ない。そこで、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、BL充電動作後に制御信号BLS、BLCの電圧をVssに下げ、全てのビット線BLをフローティング状態にしている。これにより、第4実施形態に係る半導体記憶装置1は、第3実施形態と比べて書き込み動作時の消費電力を削減することができる。
【0172】
尚、シーケンサ14が、BL充電動作で制御信号BLS、BLCの電圧をVddからVssに下げるタイミングは、この時刻に限定されず、時刻t12から時刻t15までの間に行えばよい。
【0173】
[5]第5実施形態
第5実施形態に係る半導体記憶装置1は、第3実施形態の書き込み動作において、BLプレ充放電動作からSGD書き込み動作にかけて、制御信号BLCの電圧をVblc_inhに維持する。
【0174】
図19を用いて、第5実施形態に係る半導体記憶装置1の動作ついて説明する。
図19に示す動作タイミングチャートは、
図16に示す動作タイミングチャートに対して、BLプレ充放電動作から先の制御信号BLCの動作が異なる。以下、第3実施形態と異なる点のみ説明する。
【0175】
時刻t7において、シーケンサ14は、制御信号BLCの電圧をVblc_inhにする。Vblc_inhは、Vblc_inh=Vinh+Vthnであり、ビット線BLの電圧をVinhにクランプする電圧である。Vinhは、Vddより低く設定される。このとき、書き込み禁止のビット線BLの電圧がVinhまで充電されると、トランジスタ41はカットオフする。
【0176】
時刻t10において、シーケンサ14がソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblhにすると、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、Vblまで上昇する。これにより、書き込み禁止のビット線BLの電圧はVblとなり、書き込み対象のビット線の電圧はVssを維持するため、SGD書き込み動作を行うことができる。
【0177】
シーケンサ14は、BLプレ充放電動作からSGD書き込み動作にかけて、制御信号BLCの電圧をVblc_inhとし、時刻t16に、制御信号BLCの電圧をVssにする。その他の動作は、第3実施形態と同様である。
【0178】
以上のように、第5実施形態に係る半導体記憶装置1は、BLプレ充放電時のビット線BLの電圧を制御信号BLCでクランプして決めることにより、第3実施形態と比べて消費電力を削減することができる。
【0179】
[6]第6実施形態
第6実施形態は、第1〜第5実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作を、メモリセルトランジスタMTに対して適用する。以下、第1実施形態の書き込み動作をメモリセルトランジスタMTに適用した場合を例に説明する。
【0180】
図20を用いて、第6実施形態に係る半導体記憶装置1における書き込み動作ついて説明する。
図20に示す動作タイミングチャートは、
図11に示す動作タイミングチャートに対して、セレクトゲート線SGD及びワード線WLに印加される電圧条件が異なる。以下に、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0181】
時刻t2において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD及び非選択のワード線WLの電圧をVuselにして、選択トランジスタST1及び非選択のワード線WLが接続されているメモリセルトランジスタMTをオンする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0182】
時刻t3において、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblhにする。また、選択されたワード線WLの電圧をVgにする。このとき、選択されたワード線WLが接続されているメモリセルトランジスタMTにおいて、閾値電圧VthnがVg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwを満たすメモリセルトランジスタMTはオンし、閾値電圧VthnがVg+Δnp−Vcw≦Vthnを満たす選択メモリセルトランジスタMTはオフする。これにより、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、ウェル線CPWELLからVblhが転送され、Vblhまで上昇する。一方、選択されたワード線WL、及び書き込み対象のビット線BLに接続されているメモリセルトランジスタMTはオフしているため、書き込み対象のビット線BLの電圧は、Vssを維持する。
【0183】
時刻t4において、シーケンサ14は、選択されたワード線WLの電圧をVssする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0184】
時刻t5において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、SGS、非選択のワード線WL、ソース線CELSRC、及びウェル線CPWELLの電圧をVssにする。
【0185】
時刻t6において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、非選択のワード線WL、及び選択されたワード線WLの電圧をVpassにする。
【0186】
時刻t7において、シーケンサ14は、選択されたワード線WLの電圧をVpgmにする。これにより、書き込み対象のビット線BL、及び選択されたワード線WLに接続されているメモリセルトランジスタMTは、トンネル酸化膜26にVpgm−Vssの高電圧が印加され、書き込みが行われる。一方、書き込み禁止のビット線BL、及び選択されたワード線WLに接続されているメモリセルトランジスタMTは、トンネル酸化膜26にVpgm−Vblhの電圧が印加される。このとき、Vblhが十分に高ければ、選択されたワード線WLが接続されているメモリセルトランジスタMTは、書き込みが行われない。
【0187】
時刻t8において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、非選択のワード線WL、及び選択されたワード線WLの電圧をVssにする。その他の動作は第1実施形態と同様である。
【0188】
つまり、セレクトゲート線SGD及び非選択のワード線WLは、
図11に示すワード線WLと同様の動作をする。選択されたワード線WLは、
図11に示すセレクトゲート線SGDと同様の動作をする。
【0189】
以上ように、半導体記憶装置1は、第1実施形態の書き込み動作をメモリセルトランジスタMTに適用することができる。また、第2〜第5実施形態の書き込み動作についても同様に、メモリセルトランジスタMTに対して適用することができる。
【0190】
[7]第7実施形態
第7実施形態に係る半導体記憶装置1は、セレクトゲート線SGSをストリングユニットSU毎に設け、さらに共通セレクトゲート線SGSBを備えている。この場合、第1〜第5実施形態に係る半導体記憶装置1における書き込み動作を、選択トランジスタST2に対しても行うことができる。以下、第7実施形態として、第1実施形態の書き込み動作を選択トランジスタST2に適用した場合を例に説明する。
【0191】
図21を用いて、メモリセルアレイ10の備えるブロックBLKの構成について、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0192】
NANDストリングNSの各々は、選択トランジスタST3をさらに備えている。選択トランジスタST3は、データの書き込み、読み出し、及び消去を行うNANDストリングNAの選択に用いる。選択トランジスタST3の各々は、制御ゲートと、電荷蓄積層を含む積層ゲートとを備えている。選択トランジスタST3は、一端が選択トランジスタST2の一端に接続され、他端がソース線CELSRCに接続されている。
【0193】
次に、メモリセルアレイ10に接続されている配線の構成について説明する。半導体記憶装置1は、複数のセレクトゲート線SGSと、共通セレクトゲート線SGSBをさらに備えている。
【0194】
セレクトゲート線SGSは、ロウデコーダ11(図示せず)に接続され、ブロックBLK毎に例えば4個(セレクトゲート線SGS0〜SGS3)ずつ設けられる。セレクトゲート線SGSの個数は、ストリングユニットSUの個数に対応している。セレクトゲート線SGSは、対応するストリングユニットSU内の選択トランジスタST2のゲートに接続されている。
【0195】
共通セレクトゲート線SGSBは、ロウデコーダ11(図示せず)に接続され、ブロック毎に例えば1個ずつ設けられる。共通セレクトゲート線SGSは、各ストリングユニットSU内の選択トランジスタST3のゲートに接続されている。
【0196】
図22を用いて、第7実施形態に係る半導体記憶装置1の備えるメモリセルアレイ10の断面構成について、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0197】
セレクトゲート線SGSは、例えば、3層の配線層21で構成され、共通セレクトゲート線は1層の配線層35で構成されている。セレクトゲート線SGS及び共通セレクトゲート線SGSBを構成する配線層の数は、これに限定されず、種々変更が可能である。配線層35は、
図3において、最下層に設けられている配線層21に対応している。配線層21は、NANDストリングNSごとに分割されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0198】
図23を用いて、第7実施形態に係る半導体記憶装置1における書き込み動作ついて説明する。
図23に示す動作タイミングチャートは、
図11に示す動作タイミングチャートに対して、セレクトゲート線SGD、SGSに印加される電圧条件が異なる。以下に、第1実施形態と異なる点のみ説明する。
【0199】
時刻t2において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGDの電圧をVuselにして、選択トランジスタST1をオンする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0200】
時刻t3において、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblhにする。また、セレクトゲート線SGSの電圧をVgにする。このとき、セレクトゲート線SGSが接続されている選択トランジスタST2において、閾値電圧VthnがVg<Vthn<Vg+Δnp−Vcwを満たす選択トランジスタST2はオンし、閾値電圧VthnがVg+Δnp−Vcw≦Vthnを満たす選択トランジスタST2はオフする。これにより、書き込み禁止のビット線BLの電圧は、ウェル線CPWELLからVblhが転送され、Vblhまで上昇する。一方、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST2はオフしているため、書き込み対象のビット線BLの電圧は、Vssを維持する。
【0201】
時刻t4において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGSの電圧をVssにする。また、シーケンサ14は、ソース線CELSRC及びウェル線CPWELLの電圧をVblh−Vgにする。
【0202】
時刻t5において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、ワード線WL、ソース線CELSRC、及びウェル線CPWELLの電圧をVssにする。
【0203】
時刻t6において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGD、SGSの電圧をVpassにする。
【0204】
時刻t7において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGSの電圧をVpgmにする。これにより、書き込み対象のビット線BLに接続されている選択トランジスタST2は、トンネル酸化膜26にVpgm−Vssの高電圧が印加され、書き込みが行われる。一方、書き込み禁止のビット線BLに接続されている選択トランジスタST2は、トンネル酸化膜26にVpgm−Vblhの電圧が印加される。このとき、Vblが十分に高ければ、書き込み禁止のビット線BLに接続されている選択トランジスタST2は、書き込みが行われない。
【0205】
時刻t8において、シーケンサ14は、セレクトゲート線SGS、SGDの電圧をVssにする。その他の動作は第1実施形態と同様である。
【0206】
つまり、セレクトゲート線SGDは、
図11に示すワード線WLと同様の動作をする。共通セレクトゲート線SGSBは、
図11に示すセレクトゲート線SGSと同様の動作をする。セレクトゲート線SGSは、
図11に示すセレクトゲート線SGDと同様の動作をする。
【0207】
以上のように、第7実施形態に係る半導体記憶装置1は、第1実施形態に係る半導体記憶装置1の書き込み動作を選択トランジスタST2に適用することができる。これにより、選択トランジスタST2の閾値分布を狭くすることができ、半導体記憶装置1の信頼性を向上することができる。また、第2〜第5実施形態に係る書き込み動作についても同様に、選択トランジスタST2に対して適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【0208】
尚、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0209】
尚、上記各実施形態において、
(1)読み出し動作では、Aレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば0V〜0.55Vの間である。これに限定されることなく、0.1V〜0.24、0.21V〜0.31V、0.31V〜0.4V、0.4V〜0.5V、0.5V〜0.55Vのいずれかの間にしてもよい。
【0210】
Bレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば1.5V〜2.3Vの間である。これに限定されることなく、1.65V〜1.8V、1.8V〜1.95V、1.95V〜2.1V、2.1V〜2.3Vいずれかの間にしてもよい。
【0211】
Cレベルの読み出し動作に選択されたワード線に印加される電圧は、例えば3.0V〜4.0Vの間である。これに限定されることなく、3.0V〜3.2V、3.2V〜3.4V、3.4V〜3.5V、3.5V〜3.6V、3.6V〜4.0Vのいずれかの間にしてもよい。
【0212】
読み出し動作の時間(tR)としては、例えば25μs〜38μs、38μs〜70μs、70μs〜80μsの間にしてもよい。
(2)書き込み動作は、上述したとおりプログラム動作とベリファイ動作を含む。書き込み動作では、プログラム動作時に選択されたワード線に最初に印加される電圧は、例えば13.7V〜14.3Vの間である。これに限定されることなく、例えば13.7V〜14.0V、14.0V〜14.6Vのいずれかの間としてもよい。
【0213】
奇数番目のワード線を書き込む際の、選択されたワード線に最初に印加される電圧と、偶数番目のワード線を書き込む際の、選択されたワード線に最初に印加される電圧を変えてもよい。
【0214】
プログラム動作をISPP方式(Incremental Step Pulse Program)としたとき、ステップアップの電圧として、例えば0.5V程度が挙げられる。
【0215】
非選択のワード線に印加される電圧としては、例えば6.0V〜7.3Vの間としてもよい。この場合に限定されることなく、例えば7.3V〜8.4Vの間としてもよく、6.0V以下としてもよい。
【0216】
非選択のワード線が奇数番目のワード線であるか、偶数番目のワード線であるかで、印加するパス電圧を変えてもよい。
【0217】
書き込み動作の時間(tProg)としては、例えば1700μs〜1800μs、1800μs〜1900μs、1900μs〜2000μsの間にしてもよい。
(3)消去動作では、半導体基板上部に形成され、かつ、上記メモリセルが上方に配置されたウェルに最初に印加する電圧は、例えば12V〜13.6Vの間である。この場合に限定されることなく、例えば13.6V〜14.8V、14.8V〜19.0V、19.0V〜19.8V、19.8V〜21Vの間であってもよい。
【0218】
消去動作の時間(tErase)としては、例えば3000μs〜4000μs、4000μs〜5000μs、4000μs〜9000μsの間にしてもよい。
(4)メモリセルの構造は、半導体基板(シリコン基板)上に膜厚が4〜10nmのトンネル絶縁膜を介して配置された電荷蓄積層を有している。この電荷蓄積層は膜厚が2〜3nmのSiN、又はSiON等の絶縁膜と膜厚が3〜8nmのポリシリコンとの積層構造にすることができる。また、ポリシリコンにはRu等の金属が添加されていてもよい。電荷蓄積層の上には絶縁膜を有している。この絶縁膜は、例えば、膜厚が3〜10nmの下層High−k膜と膜厚が3〜10nmの上層High−k膜に挟まれた膜厚が4〜10nmのシリコン酸化膜を有している。High−k膜はHfO等が挙げられる。また、シリコン酸化膜の膜厚はHigh−k膜の膜厚よりも厚くすることができる。絶縁膜上には膜厚が3〜10nmの材料を介して膜厚が30nm〜70nmの制御電極が形成されている。ここで材料はTaO等の金属酸化膜、TaN等の金属窒化膜である。制御電極にはW等を用いることができる。
また、メモリセル間にはエアギャップを形成することができる。