特許第6470149号(P6470149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470149
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/13 20060101AFI20190204BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   E03D11/13
   E03D9/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-171093(P2015-171093)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-48544(P2017-48544A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 昭哉
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】横井 龍一
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−081377(JP,U)
【文献】 特開2001−231715(JP,A)
【文献】 特開2010−024780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−13/00
A47K 13/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、前記便鉢に対応する開口部を有する上面部と、を有する便器本体と、
前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備え、
前記上面部には、前方側が前記開口部に臨む、底面が水平面と略平行な凹部が形成されており、
前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置する進入位置と、その全体が前記凹部外に位置する退避位置とを移動可能であることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
便鉢と、凹部が形成された上面部と、を有する便器本体と、
前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備え、
前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置する進入位置と、その全体が前記凹部外に位置する退避位置とを移動可能であり、
前記凹部は、下側となるほど互いに近づくように傾斜する2つの側面を有し、
前記2つの側面はそれぞれ、水平面とのなす角度が45°以下であることを特徴とする水洗大便器。
【請求項3】
便鉢と、凹部が形成された上面部と、を有する便器本体と、
前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備え、
前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置する進入位置と、その全体が前記凹部外に位置する退避位置とを移動可能であり、
前記凹部は、前後が開口した切欠状の凹部であることを特徴とする水洗大便器。
【請求項4】
便鉢と、凹部が形成された上面部と、を有する便器本体と、
前記便鉢の後方に設けられ、前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備え、
前記機能ユニットは、少なくとも一部が前記凹部内に位置する進入位置と、その全体が前記凹部外に位置する退避位置とを移動可能であり、
前記上面部は、その内部に空洞部を含み、
前記空洞部は、前記凹部と前記便鉢との間には存在しないことを特徴とする水洗大便器。
【請求項5】
前記機能ユニットは、
前記便鉢を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する第1装置および第2装置を含み、
前記第1装置および前記第2装置それぞれの少なくとも一部が前記凹部内に位置する進入位置と、その全体が前記凹部外に位置する退避位置とを移動可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記第1装置と前記第2装置は左右方向に並んでいることを特徴とする請求項に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記凹部は、平坦な底面を有することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項8】
前記底面は、左右方向の長さが奥行き方向の長さよりも長い平面であることを特徴とする請求項に記載の水洗大便器。
【請求項9】
前記凹部は、水平面とのなす角が45°以上である背面を有することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の水洗大便器。
【請求項10】
前記第1装置および前記第2装置は、局部洗浄装置、乾燥装置、脱臭装置、便座暖房装置および室内暖房装置のうちのいずれか2つの装置であることを特徴とする請求項またはに記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に関し、特に機能ユニットを備える水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
局部洗浄装置などの機器をユニット化した機能ユニットを備える水洗大便器が知られている。この機能ユニットは、通常、便器本体の上面部に取り付けられる。したがって、機能ユニットを備える水洗大便器は、背が高くなるという問題がある。
【0003】
特許文献1には、便器本体の上面部に凹部を設け、その凹部に機能ユニットの一部を納めた水洗大便器が提案されている。この水洗大便器では、背の高さを比較的抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−196375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の水洗大便器は、背の高さを比較的抑えられるが、凹部を掃除しにくいという問題があった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の水洗大便器は、便鉢と、凹部が形成された上面部と、を有する便器本体と、便鉢の後方に設けられ、便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備える。機能ユニットは、少なくとも一部が凹部内に位置する進入位置と、その全体が凹部外に位置する退避位置とを移動可能である。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)、(b)は、第1の実施の形態に係る水洗大便器の斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る水洗大便器の断面図である。
図3図1の便器本体の斜視図である。
図4図1の便器本体の上面図である。
図5図5(a)、(b)は、図1の機能ユニットを下方前方から見た斜視図である。
図6図6(a)、(b)は、凹部とその周辺を示す正面図である。
図7図7(a)、(b)は、凹部とその周辺を示す断面図である。
図8】第2の実施の形態に係る水洗大便器の斜視図である。
図9図8の便器本体の斜視図である。
図10】変形例に係る水洗大便器の便器本体の凹部とその周辺を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1(a)、(b)は、第1の実施形態に係る水洗大便器100の斜視図である。図1(a)は機能ユニット12およびカバー13が浮上していない状態を示し、図1(b)は機能ユニット12およびカバー13が浮上している状態を示す。図2は、水洗大便器100の断面図である。図2は、機能ユニット12が浮上していない状態を示す。また、図1(a)、(b)および図2では、便座、便座カバー、機能ユニット12を覆うカバーなどが取り外された状態を示す。また、図2では、カバー13の表示を省略する。
【0013】
水洗大便器100は、洋式の水洗式大便器であり、便器本体10と、機能ユニット12と、カバー13と、を備える。以下では、前後左右は、ユーザが通常の姿勢で水洗大便器100に着座した状態における前後左右をいうものとする。
【0014】
便器本体10は、セラミック材料から形成される。なお、便器本体10は、樹脂材料やその他の材料から形成されてもよい。便器本体10は、便鉢14と、上面部16と、便器排水路18と、外周壁部20と、を含む。便鉢14は、略漏斗状の部材であり、汚物を受ける。便鉢14の上部の内周縁は、上面部16の下面16aとともに、旋回流を生成するための通水路15を構成する。
【0015】
便器排水路18は、一端は便鉢14の流出口14aに通じ、他端は排水管(不図示)に通じている。便鉢14に洗浄水が供給されると、汚物は洗浄水とともに便器排水路18内に流れ、そこから排水管に排出される。外周壁部20は、便鉢14の外周側や便器排水路18を隠すよう、それらを囲む。
【0016】
上面部16は、便鉢14の上端周縁に接続されている。上面部16は、便鉢14の上端周縁の形状よりも僅かに小さい略楕円形状の開口部40を有する。この開口部40は、便鉢14の上方に位置する、上面部16の上面16bは平坦に形成され、便座(不図示)が閉じているときに便座が当接する当接面として機能する。また、上面部16の上面16bは、機能ユニット12が載置される載置面として機能する。また、上面部16は、その内部に空洞部46を含む。
【0017】
機能ユニット12は、その一部が上面部16に載置された状態で、便鉢14の後方側の上部に設けられる。機能ユニット12は、便器本体10に付随して用いられる電装品であり、便鉢14を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する複数の装置をひとまとまりにしたものである。本実施の形態では、機能ユニット12は、局部を洗浄するための局部洗浄装置34と、臀部を乾燥するための乾燥装置36と、便鉢14内で発生する臭気を脱臭するための脱臭装置38とを含む。乾燥装置36、局部洗浄装置34、脱臭装置38は、この順に右側から左右方向に並んでいる。
【0018】
カバー13は、便器本体10の後方に設置される。カバー13は、便器本体10の後方側を覆い隠し、水洗大便器100の意匠性を確保する。
【0019】
機能ユニット12およびカバー13は、不図示の昇降機構により、浮上する。具体的には、機能ユニット12およびカバー13は、機能ユニット12の少なくとも一部が上面部16に載置している下降位置(図1(a)の位置)と、機能ユニット12が上面部16に載置していない上昇位置(図1(b)の位置)との間を昇降する。機能ユニット12を上昇位置に上昇させることによって機能ユニット12と上面部16との間に手が入るスペースができる。ユーザは、このスペースから手を入れ、上面部16の後方側を拭き掃除できる。なお、機能ユニット12およびカバー13は、ユーザが手で持ち上げることによって昇降されてもよい。
【0020】
図3は、便器本体10の斜視図である。図4は、便器本体10の上面図である。上面部16の後方側には、下向きに凹んだ凹部22が形成されている。凹部22は特に、水道管などの給水源や洗浄水タンク(いずれも不図示)から便鉢14に洗浄水を供給するための通水路44を避けた位置に形成されている。また、凹部22は、空洞部46の上方を避けた位置に形成される。逆にいうと、空洞部46は、凹部22の下方を避けた位置に形成される。本実施の形態では、凹部22は便鉢14の後端部の上方に設けられ、凹部22の下方すなわち凹部22と便鉢14との間には空洞部46は存在しない。より具体的には、凹部22の平坦な底面28(後述)と便鉢14との間には空洞部46は存在しない。
【0021】
凹部22は、便鉢14の前方や側方の上面部16の部分よりも下に凹んでいる。凹部22は、後述の突出部12aが収容されるべく、突出部12aよりも大きく形成される。凹部22は、本実施の形態では、開口部40に沿うように延在している。すなわち、凹部22は、平面視において、開口部40に沿って僅かに湾曲している。また凹部22は、本実施の形態では、その前方側が開口部40に臨むように形成されている。すなわち、凹部22は、開口部40に連通している。凹部22の周面のうちの前面全体が開口しているともいえる。また凹部22は、本実施の形態では、正面視において、逆台形状を有する。
【0022】
凹部22は、第1側面(右側面)24と、第2側面(左側面)26と、底面28と、背面30と、を有する。底面28は、平坦で、前後方向(すなわち奥行き方向)よりも左右方向に長い形状を有する。底面28は、例えば左右方向の長さが奥行き方向の長さの2倍以上になるよう形成される。また底面28は、例えばその左右方向の長さが、便器排水路18の左右方向の幅よりも長くなるよう形成されてもよい。また底面28は、例えばその左右方向の長さが、開口部40の左右方向の最大幅の1/2倍より長くなるよう形成されてもよい。
【0023】
第1側面24および第2側面26は、左右方向に互いに離間して設けられ、後述の突出部12aと左右方向で対向する。第1側面24および第2側面26は、下側となるほど互いに近づくように傾斜し、それらの上端は上面部16の上面に接続され、それらの下端は底面28に接続される。第1側面24および第2側面26は、平坦で、比較的緩やかな傾斜面となるよう形成される。好ましくは、第1側面24および第2側面26は、底面28とのなす角が45°以下になるよう形成される。本実施の形態では、底面28は水平面と略平行であるため、第1側面24および第2側面26は、水平面とのなす角が45°以下になるよう形成される。
【0024】
背面30は、底面28とのなす角が45°以上90°以下になるよう形成される。本実施の形態では、上述のように底面28は水平面と略平行であるため、背面30は、水平面とのなす角が45°以上90°以下になるよう形成される。本実施の形態では、背面30は、底面28と実質的に直交するよう形成される。
【0025】
また、背面30は、開口部40の後端部をオフセットさせた形状を有する。具体的には、背面30は、後方側に凸形状となるよう湾曲している。ここで、セラミック材料から便器本体10を形成する場合、上面部16等に空洞部46を作るために余剰のセラミック材料を排泥する。本実施の形態では、便器本体10の後ろ側を持ち上げて前側から余剰のセラミック材料を排泥する。このとき、上述のように背面30は後ろ側に凸形状となるよう湾曲しているため、背面30の後方にセラミック材料が残らない。
【0026】
図5(a)、(b)は、機能ユニット12を下方から見た斜視図である。水洗大便器100は、細長い弾性部材32をさらに備える。図5(a)は弾性部材32が機能ユニット12に固着された状態を示し、図5(b)は弾性部材32が取り外された状態を示す。機能ユニット12は、ベースプレート42をさらに含む。ベースプレート42は、上面部16に載置され、局部洗浄装置34、乾燥装置36、および脱臭装置38を支持する。
【0027】
機能ユニット12は、その前方中央部に、下向きに突出した突出部12aを有する。この突出部は、下向きに凹んだベースプレート42のベース凹部42aと、そのベース凹部42aに収容された局部洗浄装置34のノズル34aの先端部と、乾燥装置36の温風吹出口36aと、脱臭装置38の脱臭吸込口38aおよび脱臭吐出口38bと、それらの後方に位置する脱臭カートリッジ38cとによって構成される。
【0028】
ベースプレート42の下面42bには、概ね左右方向に延びる溝42cが形成されている。溝42cには、弾性部材32が例えば両面テープにより着脱可能に固着される。弾性部材32は、例えばゴムにより形成される。溝42cは、機能ユニット12の前縁よりも奥側(すなわち後方側)に形成される。したがって、そこに固着される弾性部材32も、機能ユニット12の前縁よりも奥側に設けられる。つまり、弾性部材32は、機能ユニット12の前縁よりも前側に突出しないように設けられる。
【0029】
図6(a)、(b)は、凹部22とその周辺を示す正面図である。図7(a)、(b)は、凹部22とその周辺を示す断面図である。図6(a)、図7(a)は、機能ユニット12が下降位置にあるときを示し、図6(b)、図7(b)は、機能ユニット12が上昇位置にあるときを示す。
【0030】
機能ユニット12が下降位置にあるとき、その突出部12aは凹部22内に位置する。具体的には本実施の形態では、機能ユニット12が下降位置にあるとき、乾燥装置36の温風吹出口36aと、脱臭装置38の脱臭吸込口38aおよび脱臭吐出口38bと、脱臭カートリッジ38cとが凹部22内に位置する。したがって、下降位置は、機能ユニット12の少なくとも一部が凹部22内に位置する進入位置ともいえる。
【0031】
一方、機能ユニット12が上昇位置にあるとき、突出部12aひいては機能ユニット12全体は、凹部22外に位置する。言い換えると、機能ユニット12の全体が凹部22内に位置しない。したがって、上昇位置は、機能ユニット12全体が凹部22外に位置する退避位置ともいえる。
【0032】
図6(a)、図7(a)に示すように、機能ユニット12が下降位置にあるとき、弾性部材32は、凹部22の第1側面24と、第1側面24と左右方向で対向する突出部12aの第1側面(右側面)12bとに当接する。同様に、弾性部材32は、凹部22の第2側面26と、第2側面26と左右方向で対向する突出部12aの第2側面(左側面)12cとに当接する。
【0033】
本実施の形態ではさらに、凹部22第1側面24と突出部12aの第1側面12bとの間の弾性部材32と、凹部22の第2側面26と突出部12aの第2側面12cとの間の弾性部材32とは、凹部22の底面28と、底面28と上下方向で対向する突出部12aの下面12dとの間の隙間を通って連なっている。弾性部材32は特に、凹部22の底面28と、突出部12aの下面12dとに当接する。つまり、弾性部材32は、正面視において、突出部12aと凹部22との隙間を埋めるように設けられる。また、本実施の形態では、弾性部材32は、凹部22の左右方向外側の上面部16の部分まで延びている。
【0034】
また、弾性部材32は、機能ユニット12が下降位置にあるとき、凹部22(特に底面28)の前縁よりも奥側(すなわち後方側)に設けられる。つまり、弾性部材32は、底面28の前縁よりも前側に突出しないように設けられる。
【0035】
以上説明した本実施の形態に係る水洗大便器100によると、上面部16の後方側には下向きに凹んだ凹部22が形成される。この凹部22は、便鉢14の前方や側方の上面部16の部分よりも下側に凹み、機能ユニット12の一部を収容する。これにより、水洗大便器100の背の高さは抑えられる。また、機能ユニット12は、その全体が凹部22外に位置する退避位置にも移動可能であり、機能ユニット12を退避位置に移動させることによって機能ユニット12と上面部16との間に手を入れるスペースができる。ユーザは、このスペースから手を入れ、上面部16の後方側を拭き掃除できる。つまり、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を実現できる。
【0036】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、凹部22は、乾燥装置36および脱臭装置38それぞれの一部を収容する。凹部22は特に、局部洗浄装置34を挟んで左右方向に並んだ乾燥装置36および脱臭装置38それぞれの一部を収容する。すなわち、凹部22は、左右方向(すなわち水平方向)に比較的大きく形成される。このため、ユーザは、例えば布等の掃除具を持った指を凹部22に差し入れて凹部22を掃除できる。つまり、比較的容易に凹部22を掃除できる。また、比較的大きく形成された凹部22に機能ユニット12の一部が収容されるため、水洗大便器100の背の高さは抑えられる。したがって、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を実現できる。
【0037】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、第1側面24および第2側面26は、下側となるほど互いに近づくように傾斜する。好ましくは、第1側面24および第2側面26は、底面28とのなす角が45°以下になるよう形成される。したがって、ユーザは、凹部22内で布やペーパーやブラシなどの掃除具を、例えば左右方向に滑らせることによって、比較的容易に凹部22内を掃除できる。具体的には、例えば、第1側面24、底面28、第2側面26の順に、あるいは第2側面26、底面28、第1側面24の順に布等を滑らせながら拭くことで、容易に凹部22内を掃除できる。
【0038】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、凹部22は、平坦な底面28を有する。一般に、平坦な底面28を有する凹部22は、水平方向に比較的大きくなる。したがって、上述したように、ユーザは、例えば布等の掃除具を持った指を凹部22に差し入れて凹部22を掃除できる。つまり、比較的容易に凹部22を掃除できる。また、上述したように、比較的大きく形成された凹部22に機能ユニット12の一部が収容されるため、水洗大便器100の背の高さは抑えられる。したがって、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を実現できる。
【0039】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、空洞部46は凹部22と便鉢14との間には存在しない。したがって、空洞部46がない分、凹部22を深く形成でき、水洗大便器100の背の高さをより抑えることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、便器本体10の上面部16に形成された凹部22に機能ユニット12の一部が収容され、弾性部材32を介して機能ユニット12の一部と凹部22とが当接する。これにより、便器本体10に対する機能ユニット12の左右方向の位置を合わせることができ、水洗大便器100の良好な見栄えを確保できる。特に、便器本体10(特に凹部22)と機能ユニット12に製造誤差があっても、弾性部材32によりその製造誤差を吸収しつつ、便器本体10に対する機能ユニット12の左右方向の位置を合わせることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、第1側面24と第2側面26とは、下側となるほど互いに近づくように傾斜する。機能ユニット12を水洗大便器100に組み付けるとき、または、掃除のために上昇させた機能ユニット12を下ろすときに、第1側面24と第2側面26とによってガイドされ、機能ユニット12は比較的スムーズに便器本体10に対して所望の位置に載置される。
【0042】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、弾性部材32は機能ユニット12と凹部22とが上下方向で対向する隙間を通って連なる。つまり、弾性部材32は、正面視において、突出部12aと凹部22との隙間を埋めるように設けられる。これにより、弾性部材32がシールとして機能し、便鉢14から凹部22に入り込んだ汚水等が弾性部材32を越えて後方に流れ込むのを抑止できる。その結果、弾性部材32よりも奥側の凹部22の部分や、凹部22より後方の上面部16などが汚れるのを抑止できる。
【0043】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、第1側面24および第2側面26は底面28に対して傾斜する。ここで、仮に第1側面24や第2側面26が底面28に対して直立する場合、第1側面24と底面28との連結部分や、第2側面26と底面28との連結部分で弾性部材32が凹部22から離れて浮き、正面視において突出部12aと凹部22との間に隙間が生じうる。これに対し、本実施の形態に係る水洗大便器100では、上述のように第1側面24および第2側面26は底面28に対して傾斜しているため、連結部分で弾性部材32が浮かないよう弾性部材32を凹部22に沿わせることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、凹部22の背面30は、水平面とのなす角が45°以上90°以下になるよう形成される。これにより、便鉢14から凹部22に入り込んだ汚水等が背面30を越えて後方に流れ込むのを抑止できる。その結果、凹部22の後方の上面部16などが汚れるのを抑止できる。
【0045】
また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、弾性部材32は、機能ユニット12の前縁よりも奥側に設けられる。これにより、弾性部材32がユーザに視認されにくくなり、水洗大便器100の良好な美観を確保できる。また、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、弾性部材32は凹部22の底面28の前縁よりも奥側に設けられる。これにより、便鉢14から跳ねた汚水等で弾性部材32が汚れるのが抑止される。
【0046】
(第2の実施の形態)
図8は、第2の実施の形態に係る水洗大便器100を示す斜視図である。図8は、図1(a)に対応する。水洗大便器100は、便器本体10と、機能ユニット12と、を備える。便器本体10は、便鉢14と、上面部16と、便器排水路(不図示)と、外周壁部20と、を含む。本実施の形態では、水洗大便器100は、カバー13を有しない。代わりに、外周壁部20が水洗大便器100の意匠性を確保するよう前後左右を覆い隠す。
【0047】
図9は、図8の便器本体10を示す斜視図である。図9図3に対応する。上面部16の後方側には、下向きに凹んだ横長の凹部22が形成されている。本実施の形態では、凹部22は、開口部40の後端縁から上面部16の後端縁に亘る範囲に連続する溝状に形成される。言い換えると、凹部22は、前後が開口した(すなわち前面および背面を有しない)切欠状に形成される。ベースプレート42は、その全体が上面部16よりも下方に位置するように凹部22に収容される。
【0048】
以上説明した本実施の形態に係る水洗大便器100によると、第1の実施の形態に係る水洗大便器100によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施の形態に係る水洗大便器100によると、ベースプレート42の全体が上面部16よりも下方に位置する、すなわち機能ユニット12が全体的に下方に下がる。これにより、上面部16に対する機能ユニットの高さが、ひいては水洗大便器100の背の高さがより抑えられる。
【0049】
以上、実施の形態に係る水洗大便器について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0050】
(変形例1)
実施の形態では、凹部22第1側面24と突出部12aの第1側面12bとの間の弾性部材32と、凹部22の第2側面26と突出部12aの第2側面12cとの間の弾性部材32とが連なっている場合について説明したが、これに限られない。少なくとも凹部22第1側面24と突出部12aの第1側面12bとの隙間と、凹部22の第2側面26と突出部12aの第2側面12cとの隙間に弾性部材32が設けられればよく、これらが連なっている必要はない。すなわち、凹部22の底面28と突出部12aの下面12dとの間に弾性部材32が存在していなくてもよい。
【0051】
(変形例2)
実施の形態では、機能ユニット12が、局部洗浄装置34と、乾燥装置36と、および脱臭装置38とを含む場合について説明したが、これに限られない。機能ユニット12は、便鉢14を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する少なくとも2つの装置を含み、機能ユニット12が進入位置(下降位置)にあるとき、その2つの装置それぞれの少なくとも一部が凹部22内に位置すればよい。例えば、機能ユニット12は、局部洗浄装置34、乾燥装置36、脱臭装置38、便座を暖めるための便座暖房装置、およびトイレルームを暖めるための室内暖房装置のうちの少なくとも2の装置を含み、その2つの装置それぞれの少なくとも一部が凹部22内に位置すればよい。
【0052】
(変形例3)
実施の形態では、機能ユニット12のベースプレート42の下面42bには弾性部材32が固着されるべき溝42cが形成されている場合について説明したが、これに限られない。弾性部材32が固着されるべき位置が分かればよく、例えば、ベースプレート42の下面42bに弾性部材32が固着されるべき位置を示すシールが貼り付けられても、固着されるべき位置を示すマークが塗装されていてもよい。
【0053】
また、ベースプレート42の代わりにまたはベースプレート42に加えて上面部16に、弾性部材32が固着されるべき溝が形成されても、取り付けられるべき位置を示すシールが貼り付けられていても、取り付けられるべき位置を示すマークが塗装されていてもよい。この場合、弾性部材32は、上面部16に固着されてもよい。
【0054】
また、弾性部材32は、機能ユニット12および上面部16のいずれにも固着されなくてもよい。この場合、弾性部材32は、機能ユニット12と上面部16とに挟まれて保持されてもよい。
【0055】
(変形例4)
実施の形態では、機能ユニット12が上下に昇降することにより、その一部が凹部22内に位置する進入位置と、その全体が凹部22外に位置する退避位置とを移動する場合について説明したが、これに限られない。機能ユニット12が、その一部が凹部22内に位置する進入位置と、その全体が凹部22外に位置する退避位置とを移動可能であればよい。例えば機能ユニット12は、その後方側が、左右方向に延びる支持軸に回動自在に支持されてもよい。この場合、機能ユニット12の前方側が持ち上がるよう機能ユニット12を回動させることにより、機能ユニット12の全体が凹部22外に位置する退避位置に移動されてもよい。
【0056】
(変形例5)
実施の形態では、凹部22の底面28の左右方向の長さが、便器排水路18の左右方向の幅よりも長くてもよいこと、または開口部40の左右方向の最大幅の1/2倍より長くてもよいことについて説明したが、これに限られない。凹部22の左右方向の長さ(すなわち凹部22の上端縁の左右方向の最大幅)が、便器排水路18の左右方向の幅よりも長くてもよい。あるいは、凹部22の左右方向の長さが開口部40の左右方向の最大幅の1/2倍より長くてもよい。
【0057】
(変形例6)
実施の形態では、凹部22と、凹部22の左右外側の上面部16の部分とに、弾性部材32が設けられる場合について説明したが、これに限られない。図10は、変形例に係る水洗大便器の便器本体の凹部22とその周辺を示す正面図である。図10図6(b)に対応する。本変形例では、弾性部材32は、凹部22の左右外側の上面部16に対応する部分にだけ弾性部材32が設けられる。つまり、弾性部材32は、凹部22に対応する部分には弾性部材32は設けられない。この場合、凹部22では、便鉢14からの汚水等が後方に流れるのを背面30により抑止し、凹部22の左右外側の上面部16の部分では、便鉢14からの汚水等が後方に流れるのを弾性部材32により抑止する。本変形例によれば、凹部22に弾性部材32を設けなくてよいため、弾性部材32を減らすことができる。
【0058】
(変形例7)
実施の形態では、凹部22は、正面視において、逆台形状を有する場合について説明したが、これに限られない。凹部22は、正面視において、U字状、V字状、円弧状、その他の形状を有していてもよい。つまり、第1側面24および第2側面26は曲面状に形成されてもよい。また、凹部22の第1側面24および第2側面26は、連続した1つの面の一部であってもよい。あるいはまた、第1側面24および第2側面26は、連続した1つの面を形成してもよい。また、凹部22は、凹部内に1つまたは複数の凹部を形成された形状であってもよい。つまり、凹部22の第1側面24および第2側面26の少なくとも一方は、1つまたは複数の段部を有していてもよい。
【0059】
以上、本発明をいくつかの実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0060】
以上の記載から、下記の発明が認識される。
本発明のある態様の水洗大便器は、便鉢と、凹部が形成された上面部と、を有する便器本体と、便鉢の後方に設けられ、便鉢を洗浄するための機能とは別の機能を提供する機能ユニットと、を備える。機能ユニットは、少なくとも一部が凹部内に位置する進入位置と、その全体が凹部外に位置する退避位置とを移動可能である。
この態様によると、機能ユニットと上面部との間に手を入れるスペースができる。ユーザは、このスペースから手を入れ、上面部の後方側を拭き掃除できる。つまり、この態様によると、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を実現できる。
【0061】
機能ユニットは、便鉢を洗浄するための機能とは別の機能をそれぞれ提供する第1装置および第2装置を含んでもよい。第1装置および第2装置それぞれの少なくとも一部が凹部内に位置する進入位置と、その全体が凹部外に位置する退避位置とを移動可能であってもよい。
この態様によれば、凹部は、第1装置および第2装置それぞれの少なくとも一部を収容する大きさに形成される。すなわち、凹部22は比較的大きく形成される。このため、ユーザは、比較的容易に凹部22を掃除できる。また、比較的大きく形成された凹部22に機能ユニットの一部が収容されるため、水洗大便器の背の高さは抑えられる。つまり、この態様によれば、背の高さを比較的抑えつつ、掃除しやすい水洗大便器を実現できる。
【0062】
第1装置と第2装置は左右方向に並んでいてもよい。
この態様によれば、凹部22は左右方向(すなわち水平方向)に比較的大きく形成されるため、ユーザは、より容易に凹部22を掃除できる。
【0063】
凹部は、平坦な底面を有してもよい。
一般に、平坦な底面を有する凹部は、水平方向に大きくなる。したがって、この態様によれば、凹部は、水平方向に比較的大きく形成されるため、ユーザはより容易に凹部22を掃除できる。
【0064】
底面は、左右方向の長さが奥行き方向の長さよりも長い平面であってもよい。
【0065】
凹部は、下側となるほど互いに近づくように傾斜する2つの側面を有してもよい。2つの側面はそれぞれ、水平面とのなす角度が45°以下であってもよい。
ここで、「2つの傾斜面」には、平坦な傾斜面、曲面状の傾斜面等が含まれる。また、「2つの傾斜面」はそれぞれ、連続した1つの面の一部であってもよい。あるいはまた、「2つの傾斜面」は、連続した1つの面を形成してもよい。
この態様によれば、凹部22内で掃除具を例えば左右方向に滑らせることによって、比較的容易に凹部22内を掃除できる。
【0066】
凹部は、水平面とのなす角が45°以上である背面を有してもよい。
この態様によれば、便鉢から凹部に入り込んだ汚水等が背面を越えて後方に流れ込むのを抑止できる。その結果、凹部の後方の上面部などが汚れるのを抑止できる。
【0067】
凹部は、前後が開口した切欠状の凹部であってもよい。
【0068】
第1装置および第2装置は、局部洗浄装置、乾燥装置、脱臭装置、便座暖房装置および室内暖房装置のうちのいずれか2つの装置であってもよい。
【0069】
上面部は、その内部に空洞部を含んでもよい。空洞部は、凹部と便鉢との間には存在しない。
この態様によれば、空洞部がない分、凹部を深くでき、水洗大便器の背の高さをより抑えられる。
【符号の説明】
【0070】
10 便器本体、 12 機能ユニット、 14 便鉢、 16 上面部、 16b 上面、 22 凹部、 28 底面、 32 弾性部材、 100 水洗大便器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10