特許第6470153号(P6470153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6470153インプリント方法およびインプリント装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470153
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】インプリント方法およびインプリント装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20190204BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20190204BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20190204BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C59/02 Z
   G11B5/84 Z
   B81C1/00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-180178(P2015-180178)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-55090(P2017-55090A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理人
(72)【発明者】
【氏名】河村 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】米田 郁男
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−221374(JP,A)
【文献】 特開2007−137051(JP,A)
【文献】 特開2013−162045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンプレートのおもて面側に形成されたテンプレートパターンと、基板に配置されたレジストとを、接触させる接触ステップと、
前記テンプレートパターンを前記レジストに接触させつつ前記テンプレートパターンと前記基板との間の位置合わせを行う位置合わせステップと、
前記位置合わせの完了後に前記テンプレートパターン内に前記レジストを充填させる充填ステップと、
を含み、
前記位置合わせステップでは、第1の力で前記テンプレートを前記レジストに押し当て、
前記充填ステップでは、前記第1の力よりも強い第2の力で前記テンプレートを前記レジストに押し当てる、
前記テンプレートパターンと前記レジストとを接触させる際には、前記第2の力よりも強い第3の力で前記接触を開始する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記第1および第2の力は、前記テンプレートの裏面側の圧力が調整されることによって調整される、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記接触ステップは、
前記テンプレートを反らせる第1のステップと、
前記テンプレートパターンの中心領域を前記レジストに接触させる第2のステップと、
前記テンプレートと前記基板とが平行になるよう前記テンプレートを前記レジストに押し当てる第3のステップと、
を有し、
前記第3のステップでは、
前記第2の力よりも強く前記第3の力よりも弱い第4の力で前記テンプレートを前記レジストに押し当て、
前記位置合わせステップでは、前記第4の力を前記第1の力まで弱めて前記位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記位置合わせステップでは、前記テンプレートパターン内に前記レジストを充填させながら位置合わせを行う、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載のインプリント方法。
【請求項5】
テンプレートのおもて面側に形成されたテンプレートパターンと、基板に配置されたレジストとを、接触させる接触処理と、前記テンプレートパターンを前記レジストに接触させつつ前記テンプレートパターンと前記基板との間の位置合わせを行う位置合わせ処理と、前記位置合わせの完了後に前記テンプレートパターン内に前記レジストを充填させる充填処理と、を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記位置合わせ処理の際に、第1の力で前記テンプレートを前記レジストに押し当てさせ、
前記充填処理の際に、前記第1の力よりも強い第2の力で前記テンプレートを前記レジストに押し当てさせ、
前記テンプレートパターンと前記レジストとを接触させる際に、前記第2の力よりも強い第3の力で前記接触を開始する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント方法およびインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際の工程の1つとして、インプリント法を用いた工程がある。このインプリント法では、原版の型(テンプレート)が基板上のレジストに押し当てられることによって、テンプレートパターンがレジストに転写される。
【0003】
テンプレートは、概略板状をなしており、おもて面にテンプレートパターンが形成されている。そして、テンプレートをレジストに押し当てる際には、テンプレートの裏面側が所定の力(押印力)で押される。
【0004】
このときの押印力が大きい場合には、テンプレートパターンの基板への位置合わせ精度が悪くなる。一方、押印力が弱い場合には、レジストの充填不良が発生する。従来、レジストの充填不良を抑制しつつ、良好な位置合わせ精度でテンプレートパターンをレジストに転写することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−26436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、レジストの充填不良を抑制しつつ、良好な位置合わせ精度で容易にテンプレートパターンをレジストに転写することができるインプリント方法およびインプリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、インプリント方法が提供される。前記インプリント方法は、接触ステップと、位置合わせステップと、充填ステップと、を含んでいる。前記接触ステップでは、テンプレートのおもて面側に形成されたテンプレートパターンと、基板に配置されたレジストとが、接触させられる。また、前記位置合わせステップでは、前記テンプレートパターンを前記レジストに接触させつつ前記テンプレートパターンと前記基板との間の位置合わせが行なわれる。また、前記充填ステップでは、前記位置合わせの完了後に、前記テンプレートパターン内に前記レジストの充填が行われる。そして、前記位置合わせステップでは、第1の力で前記テンプレートが前記レジストに押し当てられる。また、前記充填ステップでは、前記第1の力よりも強い第2の力で前記テンプレートが前記レジストに押し当てられる。また、テンプレートパターンとレジストとを接触させる際には、第2の力よりも強い第3の力で接触を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るインプリント工程の処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、位置合わせの際の押印力の調整処理を説明するための図である。
図4図4は、位置合わせが完了した後の押印力の調整処理を説明するための図である。
図5図5は、テンプレート10の裏面側圧力の変化を示す図である。
図6図6は、ウエハ面内の転写パターンの位置ずれ量を示す図である。
図7図7は、レジストの充填不良を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るインプリント装置およびインプリント方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図である。インプリント装置1は、ウエハWaなどの被転写基板に、モールド基板であるテンプレート10のテンプレートパターンを等倍転写する装置である。インプリント装置1は、光ナノインプリントリソグラフィ法などのインプリント法を用いてウエハWa上にパターンを形成する。
【0011】
本実施形態のインプリント装置1は、テンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせを行う際には、第1の力でテンプレート10の裏面を押す。また、インプリント装置1は、テンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせが完了した後は、第1の力よりも大きな第2の力でテンプレート10の裏面を押す。これにより、インプリント装置1は、位置合わせ時には、弱い力でテンプレート10の裏面を押し、位置合わせが完了した後の充填処理時には、強い力でテンプレート10の裏面を押す。インプリント装置1は、例えば、テンプレート10の裏面側圧力(背面側の雰囲気)を調整することによって、テンプレート10の裏面を押す力を調整する。
【0012】
テンプレート10は、原版の型である。テンプレートパターンは、ウエハWaに転写される回路パターンなどの転写パターンであり、テンプレート10のおもて面側に形成されている。テンプレート10は、概略平板状の石英ガラス基板などを掘り込むことによって形成されている。
【0013】
テンプレート10は、裏面が薄く削られることによって、裏面側にざぐり(キャビティ)が形成されている。テンプレート10では、おもて面に配置された台座部(メサ30)にテンプレートパターンが形成されている。
【0014】
メサ30は、テンプレート10のおもて面側の中央領域に形成されている。そして、メサ30は、テンプレート10のおもて面側の外周領域よりも所定の厚さだけ高くなっている。
【0015】
本実施形態のテンプレート10は、凹凸パターンであるテンプレートパターンの裏面に段差が設けられている(コア・アウトされている)。なお、テンプレート10は、テンプレートパターンの裏面に段差が設けられていない(コア・アウトされていない)、Rigidテンプレートであってもよい。
【0016】
インプリント装置1は、インプリントショットごとにレジスト40Xの滴下処理と、テンプレート10のレジスト40Xへの押印処理と、テンプレート10のレジスト40Xからの離型処理とを繰り返す。
【0017】
インプリント装置1は、加工機構20Aと、制御装置21とを備えている。加工機構20Aは、制御装置21からの指示に従って、ウエハWaにテンプレートパターンを転写する。
【0018】
加工機構20Aは、原版ステージ2、ステージ定盤3、基板チャック4、試料ステージ5、基準マーク6、アライメントセンサ7、光源8、ステージベース9、液滴下装置11を備えている。また、加工機構20Aは、押当力調整機構14、背面カバー18を備えている。
【0019】
ステージ定盤3は、水平方向の主面を有しており、この主面の上を試料ステージ5が移動する。試料ステージ5は、ウエハWaを載置するとともに、載置したウエハWaと平行な平面内(水平面内)を移動する。また、試料ステージ5は、ウエハWaに転写材としてのレジスト40Xを滴下する際には、ウエハWaを液滴下装置11の下方側に移動させる。また、試料ステージ5は、ウエハWaへの押印処理を行う際には、ウエハWaをテンプレート10の下方側に移動させる。
【0020】
また、試料ステージ5上には、基板チャック4が設けられている。基板チャック4は、ウエハWaを試料ステージ5上の所定位置に固定する。また、試料ステージ5上には、基準マーク6が設けられている。基準マーク6は、試料ステージ5の位置を検出するためのマークであり、ウエハWaを試料ステージ5上にロードする際の位置合わせに用いられる。
【0021】
ステージベース9の底面側であるウエハWa側には、原版ステージ2が設けられている。原版ステージ2は、テンプレート10の裏面側(テンプレートパターンの形成されていない側の面)からテンプレート10を真空吸着などによって所定位置に固定する。
【0022】
ステージベース9は、原版ステージ2によってテンプレート10を支持するとともに、テンプレート10のテンプレートパターンをウエハWa上のレジスト40Xに押し当てる。ステージベース9は、鉛直方向に移動することにより、テンプレート10のレジスト40Xへの押し当てと、テンプレート10のレジスト40Xからの引き剥がし(離型)と、を行う。
【0023】
また、ステージベース9の上方側には、アライメントセンサ7が設けられている。アライメントセンサ7は、ウエハWaの位置検出やテンプレート10の位置検出を行うセンサである。インプリント装置1は、アライメントセンサ7を用いて、テンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせを行う。テンプレート10には、予め第1の位置合わせマークを形成しておく。また、ウエハWaには、予め第2の位置合わせマークを形成しておく。そして、アライメントセンサ7が、第1および第2の位置合わせマークを検出し、これらの検出位置に基づいて、位置合わせが行われる。
【0024】
液滴下装置11は、インクジェット法によってウエハWa上にレジスト40Xを滴下する装置である。液滴下装置11が備えるインクジェットヘッド(図示せず)は、レジスト40Xの液滴を噴出する複数の微細孔を有している。レジスト40Xは、光硬化性樹脂材料などのインプリント材料である。レジスト40Xには、low-k(低誘電率)膜や有機材料などが用いられる。
【0025】
光源8は、レジスト40Xを硬化させることができる波長(例えば、300〜380nm)の光を含んだ光(UV光など)を照射する光源である。光源8は、ステージベース9の上方に設けられている。光源8は、テンプレートパターン内にレジスト40Xが充填された後、テンプレート10がレジスト40Xに押し当てられた状態で、テンプレート10上からUV光を照射する。
【0026】
押当力調整機構14は、テンプレート10の裏面側への押当力を調整する装置である。本実施形態では、押当力調整機構14が、テンプレート10の裏面側の雰囲気圧力である裏面側圧力を調整する場合について説明する。したがって、本実施形態の押当力調整機構14は、裏面側圧力調整機構(圧力調整部)として動作する。押当力調整機構14は、背面カバー18とテンプレート10の裏面と原版ステージ2の側面とで囲まれた空間19の圧力を調整する。押当力調整機構14は、空間19を減圧する機能と加圧する機能とを有している。
【0027】
押当力調整機構14は、テンプレート10をウエハWa上のレジスト40Xに接触させた後、テンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせ(アライメント)を行う間は、空間19の圧力を所定値よりも小さい圧力(後述する、低圧力P2)に調整する。換言すると、位置合わせの際には、第1の力でテンプレート10がレジスト40Xに押し当てられる。
【0028】
また、押当力調整機構14は、テンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせが完了した後は、空間19の圧力を所定値以上の圧力(後述する、高圧力P3)に調整する。換言すると、位置合わせの完了後は、第1の力よりも強い第2の力でテンプレート10がレジスト40Xに押し当てられる。
【0029】
背面カバー18は、原版ステージ2の上部側に設けられた板状部材のカバーである。背面カバー18は、原版ステージ2の上部側およびテンプレート10の裏面側を板状部材でカバーしている。背面カバー18とテンプレート10の裏面側との間には、所定の空間19が設けられており、この空間19内の圧力(テンプレート10の裏面側圧力)が、押当力調整機構14によって調整される。押当力調整機構14は、空間19内に送り込むCDA(Clean Dry Air)の量を調整することによって、空間19内の圧力を調整する。
【0030】
制御装置21は、加工機構20Aの各構成要素に接続され、各構成要素を制御する。本実施形態の制御装置21は、テンプレートパターン内にレジスト40Xを充填させる際に、空間19の圧力を調整する指示を押当力調整機構14に送る。
【0031】
ウエハWaへのインプリントを行う際には、試料ステージ5に載せられたウエハWaが液滴下装置11の直下まで移動させられる。そして、ウエハWaの所定ショット領域内にレジスト40Xが滴下される。
【0032】
ウエハWa上にレジスト40Xが滴下された後、試料ステージ5上のウエハWaがテンプレート10の直下に移動させられる。そして、テンプレート10がウエハWa上のレジスト40Xに押し当てられる。
【0033】
テンプレート10とレジスト40Xとを所定時間だけ接触させた後、この状態でUV光がレジスト40Xに照射されるとレジスト40Xが硬化する。これにより、テンプレートパターンに対応する転写パターンがウエハWa上のレジスト40Xにパターニングされる。この後、次のショットへのインプリント処理が行われる。
【0034】
なお、インプリント装置1は、テンプレートパターンをレジスト40Xに押し当てる代わりに、レジスト40Xをテンプレートパターンに押し当ててもよい。この場合、試料ステージ5がウエハWa上のレジスト40Xをテンプレートパターンに押し当てる。このように、テンプレートパターンと、レジスト40Xの配置されたウエハWaとの間の距離を所定の距離に近づける処理は、試料ステージ5またはステージベース9によって行われる。
【0035】
図2は、実施形態に係るインプリント工程の処理手順を示すフローチャートである。また、図3は、位置合わせの際の押印力の調整処理を説明するための図である。また、図4は、位置合わせが完了した後の押印力の調整処理を説明するための図である。図3および図4では、インプリント工程におけるウエハWaやテンプレート10などの断面図を示している。
【0036】
実施形態に係るインプリント工程では、テンプレート10がインプリント装置1に搬入される。そして、テンプレート10が加工機構20A内の所定位置に配置される(ステップS10)。具体的には、テンプレート10が原版ステージ2によって固定される。このとき、原版ステージ2は、テンプレート10の裏面のうちの一部の領域(外周領域)を、静電チャックまたは真空チャックを用いて吸着する。
【0037】
また、ウエハWaがインプリント装置1に搬入される。そして、ウエハWaが加工機構20A内の所定位置に配置される(ステップS20)。具体的には、ウエハWaが基板チャック4によって固定される。
【0038】
この後、ウエハWaは、試料ステージ5によって液滴下装置11の下方側に移動させられる(ステップS30)。そして、図3の(a)に示すように、ウエハWa上にレジスト40Xが滴下される(ステップS40)。その後、ウエハWaは、試料ステージ5によってテンプレート10の下方側に移動させられる。
【0039】
そして、図3の(b)に示すように、テンプレート10の裏面側圧力(空間19内の圧力)が圧力P0に加圧されると、テンプレート10が歪む(反り返る)。この状態で、テンプレート10がレジスト40X側に下降させられる。そして、テンプレート10とウエハWaとの間の距離が所定の距離に近づけられると、テンプレートパターンがレジスト40Xに接触する(ステップS50)。このとき、メサ30の中心(テンプレートパターンの中心領域)がレジスト40Xに接触させられる。
【0040】
そして、テンプレート10の外周方向に向けてメサ30とウエハWaとが平行になるよう、テンプレート10がレジスト40Xに押し当てられる。これにより、押印中にテンプレートパターン内に空気が挟み込まれることを防止する。
【0041】
テンプレート10がレジスト40Xに接触すると、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が開始される(ステップS60)。具体的には、毛細管現象によるテンプレートパターン内へのレジスト40Xの流入が始まる。
【0042】
テンプレート10がレジスト40Xに接触した後、図3の(c)に示すように、メサ30とウエハWaが完全に平行になってから、低圧力P2に調整される(ステップS70)。そして、低圧力P2でテンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせが行われる(ステップS75)。
【0043】
具体的には、制御装置21は、テンプレート10の裏面側圧力を低圧力P2に調整する指示を押当力調整機構14に送る。これにより、押当力調整機構14は、空間19を低圧力P2に調整する。インプリント装置1では、この状態で、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が行われるとともに、テンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせが行われる。位置合わせは、例えば、試料ステージ5をテンプレート10に対し動かすこと、およびテンプレート10の側面をアクチュエーターで押してテンプレート10を変形させることで行なわれる。
【0044】
テンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせが完了した後、図4の(a)に示すように、テンプレート10の裏面側は、高圧力P3に調整される(ステップS80)。
【0045】
具体的には、制御装置21は、テンプレート10の裏面側圧力を高圧力P3に調整する指示を押当力調整機構14に送る。これにより、押当力調整機構14は、空間19を高圧力P3に調整する。インプリント装置1では、この状態で、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が継続される。この後、所定時間が経過すると、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が完了する(ステップS90)。
【0046】
この後、図4の(b)に示すように、光源8が、透明なテンプレート10を介してレジスト40XにUV光を照射する(ステップS100)。これにより、レジスト40Xが露光されて硬化する。
【0047】
レジスト40Xが硬化した後、図4の(c)に示すように、テンプレート10が、硬化したレジスト40X(レジストパターン)から離型されることにより、テンプレートパターンを反転させたレジストパターンがウエハWa上に形成される。
【0048】
この後、制御装置21は、ウエハWa上の指定エリア(所望領域)へのインプリントが全て完了したかを確認する(ステップS110)。換言すると、ウエハWa上の全てのインプリントショットに対して、ステップS30〜S100の処理が実行されたか否かが確認される。
【0049】
ウエハWa上の指定エリアへのインプリントが完了していなければ(ステップS110、No)、インプリント装置1は、次のショットにウエハWaを移動させて、ステップS30〜S110までの処理を繰り返す。インプリント装置1は、ウエハWa上の指定エリア(例えば、全面)へのインプリントが全て完了するまで、ステップS30〜S110までの処理を繰り返す。
【0050】
ウエハWa上の指定エリアへのインプリントが全て完了すると(ステップS110、Yes)、ウエハWaがインプリント装置1の外部に搬出される(ステップS120)。
【0051】
ここで、テンプレート10の裏面側圧力(空間19内の圧力)の変化について説明する。図5は、テンプレート10の裏面側圧力の変化を示す図である。図5に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は圧力(テンプレート10の裏面側圧力)である。
【0052】
テンプレート10の裏面側圧力が圧力P0に加圧された状態で、テンプレート10とウエハWaとの間の距離が所定の距離に近づけられる。そして、所定のタイミング(時間T1)で、テンプレートパターンがレジスト40Xに接触する。
【0053】
この後、テンプレート10がさらにレジスト40Xに押し当てられて、予め設定しておいた距離までテンプレート10がウエハWaに近づけられる。テンプレート10がレジスト40Xに接触してから、予め設定しておいた距離までテンプレート10がウエハWaに近づけられるまでの間、テンプレート10の裏面側圧力は、圧力P0から少しずつ下がる。
【0054】
そして、予め設定しておいた距離までテンプレート10がウエハWaに近づけられると(時間T2)、テンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせが開始される。このとき、テンプレート10の裏面側圧力は、圧力P1(P1<P0)から低圧力P2に調整される。低圧力P2は、例えば0.5N〜3.5Nである。低圧力P2の値は、例えば、許容される位置ずれ量に基づいて決定される。許容される位置ずれ量が少ないほど、小さな低圧力P2が設定される。
【0055】
テンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせが完了した後(時間T3)、テンプレート10の裏面側圧力は、高圧力P3(P2<P3<P1)に調整される。高圧力P3は、例えば4.5Nである。高圧力P3の値は、例えば、RLT(Resist Layer Thickness)に基づいて決定される。RLTは、テンプレートパターンの凸部とウエハWaとの間のレジスト40Xの厚みである。なお、図3図4では、RLTが0である場合を図示している。
【0056】
インプリント装置1では、高圧力P3に調整された状態で、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が継続される。この後、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填が完了すると(時間T4)、レジスト40Xの硬化処理が行われる。
【0057】
このように、本実施形態では、位置合わせ中には、所定値よりも弱い力でテンプレート10がレジスト40Xに押し付けられ、位置合わせが完了した後、所定値以上の力でテンプレート10がレジスト40Xに押し付けられる。換言すると、アライメント中は、テンプレートパターンの全面にレジスト40Xが充填される際よりも弱い力で押印処理が行われる。そして、アライメント完了後には、アライメント中よりも強い力でテンプレートパターンの全面にレジスト40Xが充填される。
【0058】
図6は、ウエハ面内の転写パターンの位置ずれ量を示す図である。図6では、ウエハWaを上面から見た場合の転写パターンの位置ずれ量を示している。図6の(a)は、位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が低圧力P2である場合の、転写パターンの位置ずれ量を示している。また、図6の(b)は、位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が低圧力P2よりも大きい場合の、転写パターンの位置ずれ量を示している。ここでの、転写パターンの位置ずれ量は、レジストパターンの所望位置からのずれ量であり、テンプレート10とウエハWaとの間の位置ずれ量に対応している。
【0059】
転写パターンの位置ずれ量は、レジストパターンの転写位置が、重ね合わせ検査装置で検査されることによって検出される。図6に示す矢印の長さは、転写パターンの位置ずれ量を示している。具体的には、転写パターンは、矢印の長さに応じた距離だけ位置ずれが発生していることを示している。
【0060】
位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が低圧力P2である場合、転写パターンの位置ずれ量は少ない。このように、位置合わせの際の押印力が所定値よりも小さい場合には、ウエハWa面内における位置合わせ精度が向上する。
【0061】
一方、位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が低圧力P2よりも大きい場合、転写パターンの位置ずれ量は多い。このように、位置合わせの際の押印力が所定値以上の大きい場合には、ウエハWa面内における位置合わせ精度が悪化する。
【0062】
ところで、位置合わせの際のテンプレートの裏面側圧力が小さすぎると、テンプレートパターンへのレジスト40Xの充填不良が発生する。図7は、レジストの充填不良を説明するための図である。図7では、ウエハWa内のショット50の上面図を示している。
【0063】
位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が低圧力P2よりも小さな圧力である場合、ウエハWa上のショット50内には、レジスト40Xが充填された充填領域51と、レジスト40Xの充填が不十分な未充填領域52とが形成される。充填領域51は、メサ30の中央領域であり、未充填領域52は、メサ30の4隅の領域である。このように、位置合わせの際の押印力が弱すぎると、レジスト40Xの充填不良領域である未充填領域52が発生する。
【0064】
本実施形態では、位置合わせの際のテンプレート10の裏面側圧力が適切な低圧力P2である。これにより、充填不良領域の発生を防止しつつ、ウエハWa面内における位置合わせ精度を向上させることが可能となる。
【0065】
なお、テンプレート10の裏面を押す力の調整は、テンプレート10の裏面側圧力の調整に限らない。例えば、テンプレートパターンとウエハWaとの間の距離に基づいて、テンプレート10の裏面を押す力が調整されてもよい。また、原版ステージ2がテンプレート10を吸着する力に基づいて、テンプレート10の裏面を押す力が調整されてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、テンプレート10がレジスト40Xに接触した後、すぐにテンプレートパターンとウエハWaとの位置合わせを開始したが、所定時間の経過後に位置合わせを開始してもよい。位置合わせは、テンプレートパターン内へのレジスト40Xの充填が完了するまでに終わればよい。
【0067】
半導体装置(半導体集積回路)が製造される際には、本実施形態のインプリント処理が、例えばウエハプロセスのレイヤ毎に行われる。具体的には、ウエハWa上に被加工膜が配置された後、インプリント処理によって被加工膜上にレジストパターンが形成される。そして、レジストパターンをマスクとしてレジストパターンの下層側(被加工膜)がエッチングされる。これにより、レジストパターンに対応する実パターンがウエハWa上に形成される。半導体装置が製造される際には、上述した被加工膜の配置処理、インプリント処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0068】
本実施形態のインプリント処理は、半導体装置が製造される際に限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)装置などの電子デバイス、磁気記録装置、磁気記録媒体などが製造される際に用いてもよい。
【0069】
このように実施形態では、低圧力P2でテンプレート10をレジスト40Xに押し当てながらテンプレートパターンとウエハWaとの間の位置合わせを行っている。また、位置合わせの完了後に、高圧力P3でテンプレート10をレジスト40Xに押し当ててテンプレートパターンへのレジスト40Xの充填を行っている。換言すると、第1の力(低圧力P2)でテンプレート10をレジスト40Xに押し当てながら位置合わせが行われる。そして、位置合わせの完了後は、第1の力よりも強い第2の力(高圧力P3)でテンプレート10をレジスト40Xに押し当ててレジスト40Xの充填が行われる。
【0070】
また、テンプレートパターンとレジストとを接触させる際には、第2の力よりも強い第3の力(圧力P0)で接触を開始している。さらに、メサ30とウエハWaが完全に平行になった状態(第2の力よりも強く第3の力よりも弱い第4の力(圧力P1)でテンプレート10をレジスト40Xに押し当てた状態)で、第4の力を第1の力まで弱めて位置合わせを行っている。
【0071】
このように、実施形態によれば、低圧力P2で位置合わせを行なっているので、位置合わせの際にテンプレート10に加わる力(せん断力、動摩擦力)を低減することができる。また、位置合わせの完了後に、高圧力P3で充填を行っているので、充填不良を防止できる。したがって、良好な位置合わせ精度で容易にテンプレートパターンをレジスト40Xに転写することが可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1…インプリント装置、2…原版ステージ、7…アライメントセンサ、10…テンプレート、14…押当力調整機構、18…背面カバー、19…空間、20A…加工機構、21…制御装置、40X…レジスト、P0,P1…圧力、P2…低圧力、P3…高圧力、Wa…ウエハ。
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