特許第6470156号(P6470156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470156
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】通信ノード
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20190204BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   H04L25/02 F
   H03K17/16 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-186797(P2015-186797)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-63272(P2017-63272A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】本田 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】磯村 博文
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−038546(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038448(WO,A1)
【文献】 特開2012−257205(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/033708(WO,A1)
【文献】 特開2005−176310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の高電位側信号線(3H),低電位側信号線(3L)によりハイ,ローの2値レベルに変化する差動信号を伝送する伝送線路(3)に接続され、
前記一対の信号線間の中間電位を検出する線間電位検出部(6)と、
自ノードに供給される動作用電源電圧の中間電位を検出する自ノード電位検出部(7)と、
前記線間電位検出部及び前記自ノード電位検出部によりそれぞれ検出された2つの中間電位の差を検出し、前記差が小さくなるように前記動作用電源電圧を調整する電圧調整部(8)と
前記動作用電源を供給する定電圧回路(7)とを備え、
前記電圧調整部は、前記中間電位の差に応じて前記定電圧回路の基準電位を調整する通信ノード。
【請求項2】
一対の高電位側信号線(3H),低電位側信号線(3L)によりハイ,ローの2値レベルに変化する差動信号を伝送する伝送線路(3)に接続され、
前記一対の信号線間の中間電位を検出する線間電位検出部(6)と、
自ノードに供給される動作用電源電圧の中間電位を検出する自ノード電位検出部(7)と、
前記線間電位検出部及び前記自ノード電位検出部によりそれぞれ検出された2つの中間電位の差を検出し、前記差が小さくなるように前記動作用電源電圧を調整する電圧調整部(8)と、
定電圧回路(7)と、
この定電圧回路の出力電圧を昇圧又は降圧して前記動作用電源を供給する昇降圧回路(12)とを備え、
前記電圧調整部は、前記中間電位の差に応じて前記昇降圧回路の昇圧比又は降圧比を調整する通信ノード。
【請求項3】
前記一対の信号線間に接続される線間スイッチング素子(23)と、
前記差動信号のレベルが変化したことを検出すると、前記線間スイッチング素子をオンさせて前記信号線間のインピーダンスを低下させる制御部(25〜27)とを備える請求項1又は2記載の通信ノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する伝送線路に接続される通信ノードに関する。
【背景技術】
【0002】
伝送線路を介してデジタル信号を伝送する場合、受信側においては、信号レベルが変化するタイミングで信号エネルギーの一部が反射することで、オーバーシュートやアンダーシュートのような波形の歪み,すなわちリンギングが生じる問題がある。そして、従来、波形歪みを抑制する技術については様々な提案がされている。例えば特許文献1では、伝送路の電圧レベルがロー,ハイ間で遷移する際に、通信に影響しない一定期間のみインピーダンスを整合させてリンギングを抑制する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の第5実施例には、リンギング抑制用の素子として、高電位側信号線と低電位側信号線との間にNチャネルMOSFET,PチャネルMOSFETを並列に接続した構成が開示されている。前者は電源Vcc−低電位側信号線間の電圧で動作させ、後者は高電位側信号線−グランド間の電圧で動作させることで、通信ノードのグランド電位にオフセットが生じている場合でも、何れか一方の素子によりリンギングが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5498527号公報(図8図11参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通信ノードのグランド電位にオフセットが生じていなければ、双方の素子が同時に動作するのに比較すると、オフセットが生じていることで何れか一方の素子だけが動作した場合はリンギング抑制効果が低減する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各ノードにおけるグランド電位の差を解消できる通信ノードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の通信ノードは、線間電位検出部により一対の信号線間の中間電位を検出し、自ノード電位検出部により自ノードに供給される動作用電源電圧の中間電位を検出する。そして、電圧調整部は、線間電位検出部及び自ノード電位検出部によりそれぞれ検出された2つの中間電位の差を検出し、その差が小さくなるように動作用電源電圧を調整する。具体的には、動作用電源を供給する定電圧回路を備え、電圧調整部は、前記中間電位の差に応じて定電圧回路の基準電位を調整する。このように構成すれば、初期状態において、伝送線路に接続されている各通信ノードのグランド電位に差が生じているとしても、電位差がなくなるように自動的に調整が行われる。したがって、伝送線路を介して伝送される差動信号のレベルが何れの通信ノードにおいても等しくなり、通信を確実に行うことが可能になる。
請求項2記載の通信ノードは、定電圧回路と、この定電圧回路の出力電圧を昇圧又は降圧して動作用電源を供給する昇降圧回路とを備え、電圧調整部は、前記中間電位の差に応じて昇降圧回路の昇圧比又は降圧比を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態であり、通信ノードの構成を示す機能ブロック図
図2】第2実施形態であり、通信ノードの構成を示す機能ブロック図
図3】第3実施形態であり、通信ノードの構成を示す機能ブロック図
図4】第4実施形態であり、通信ノードの構成を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1に示すように、通信ノード1が備える送受信回路2には、高電位側信号線3P,低電位側信号線3Nよりなる伝送線路3が接続されている。尚、送受信回路2に替えて送信回路又は受信回路でも良い。定電圧回路4には、外部の電源5より例えば電圧12Vの電源VBが供給されている。定電圧回路4は、例えばバンドギャップリファレンス回路等で構成され、電源電圧VBより例えば電圧5Vの動作用電源電圧VDDを生成し、送受信回路2等に供給する。送受信回路2は、伝送線路3をドライブして差動信号を他の通信ノードに送信し、また、他の通信ノードにより送信された差動信号を伝送線路3を介して受信する。
【0009】
高電位側信号線3P,低電位側信号線3N間には、バス中間電位検出回路6が接続されている。バス中間電位検出回路6は線間電位検出部に相当し、例えば2つの抵抗素子を直列接続した分圧回路で構成され、信号線3P,3N間の中間電位VMBを検出する。中間電位VMBは、例えば標準値で2.5Vであり、伝送線路3が非ドライブ状態であれば信号線3P,3Nの電位がそれぞれ中間電位VMBを示している。この中間電位VMBは、差動信号を送信する送信ノードが基準とするグランド電位に応じて、受信ノード側では変動する。
【0010】
電源VDDと通信ノード1のグランドGNDとの間には、自ノード中間電位検出回路7が接続されている。自ノード中間電位検出回路7も同様に、2つの抵抗素子を直列接続した分圧回路で構成され、通信ノードの動作用電源電圧VDDの中間電位VMNを検出する。中間電位VMNは、グランドGNDを基準電位として2.5Vである。自ノード中間電位検出回路7は、自ノード電位検出部に相当する。
【0011】
差動増幅回路8には、中間電位VMB及びVMNが入力されており、差動増幅回路8の出力端子はグランドGNDに接続されている。差動増幅回路8は電圧調整部に相当し、これら2つの中間電位VMB,VMNの差に応じた電圧を出力することで、自ノードのグランドGNDの電位を調整する。
【0012】
次に、本実施形態の作用について説明する。例えば、図示しない他の通信ノードより送信された差動信号を、通信ノード1が受信する場合を想定する。この時、他の通信ノードのグランド電位と、通信ノード1のグランドGNDの電位とに電位差が無ければ、差動増幅回路8に入力されるグランドGNDを基準電位とする中間電位VMBは、中間電位VMNに等しくなる。したがって、差動増幅回路8の出力電圧もゼロレベルとなる。
【0013】
これに対して、他の通信ノードのグランド電位と、通信ノード1のグランドGNDの電位とに電位差があれば(VMB≠VMN)となるから、差動増幅回路8の出力電圧が前記電位差に応じたレベルとなり、グランドGNDの電位が調整される。したがって、定電圧回路4が出力する動作用電源電圧VDDは常にグランド電位差に追従するようになり、結果として、常に(VMB=VMN)となるようにグランドGNDの電位が調整されることになる。
【0014】
以上のように本実施形態によれば、バス中間電位検出回路6に信号線3H,3L間の中間電位VMBを検出し、自ノード中間電位検出回路7により自ノードに供給される動作用電源電圧の中間電位VMNを検出する。そして、差動増幅回路8は、2つの中間電位VMB,VMNの差を検出し、その差に応じて動作用電源電圧を調整する。
【0015】
より具体的には、差動増幅回路8は、中間電位VMB,VMNの差に応じて定電圧回路7のグランド電位を調整する。このように構成すれば、初期状態において、伝送線路3に接続されている各通信ノードのグランド電位に差が生じているとしても、電位差がなくなるように自動的に調整が行われる。したがって、伝送線路3を介して伝送される差動信号のレベルが何れの通信ノードにおいても等しくなり、通信を確実に行うことが可能になる。
【0016】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図2に示すように、第2実施形態の通信ノード11は、定電圧回路4の出力側に配置される昇圧降圧回路12を備えている。昇圧降圧回路12は、例えばチャージポンプ回路で構成されており、定電圧回路4の出力電圧を昇圧若しくは降圧するか、又は昇圧若しくは降圧することなく動作用電源電圧VDDを生成し、送受信回路2等に供給する。差動増幅回路8の出力電圧は昇圧降圧回路12に入力されており、昇圧降圧回路12の昇圧率又は降圧率は、前記出力電圧に応じて制御される。
【0017】
以上のように構成される第2実施形態によれば、差動増幅回路8は、中間電位VMB,VMNの差に応じて昇圧降圧回路12の昇圧率又は降圧率を調整するので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0018】
(第3実施形態)
図3に示すように、第3実施形態の通信ノード21は、第1実施形態の通信ノード1に、例えば特許文献1と同様に伝送線路3に発生するリンギングを抑制する機能を有する歪抑制回路22を加えて構成されている。高電位側信号線3P,低電位側信号線3Nの間には、線間スイッチング素子であるNチャネルMOSFET23が接続されている。FET23のゲートは、抵抗素子24を介して電源VDDにプルアップされている。
【0019】
立下り/立上り検知部25は、高電位側信号線3P,低電位側信号線3Nの間に接続されており、伝送線路3を介して伝送される差動信号の立下り及び/又は立上りを検知すると、検知信号をスイッチ制御部26に出力する。FET23のゲートと低電位側信号線3Nとの間には常閉型のスイッチ回路27が接続されており、スイッチ回路27のオンオフは、スイッチ制御部26により制御される。スイッチ回路27は、特許文献1と同様に例えばMOSFET等で構成される。立下り/立上り検知部25,スイッチ制御部26及びスイッチ回路27は、制御部に相当する。
【0020】
次に、第3実施形態の作用について説明する。例えば歪抑制回路22が特許文献1と同様に動作する場合、立下り/立上り検知部25は、差動信号レベルがハイからローに変化する立下りを検知して、検知信号を出力する。すると、スイッチ制御部26は、スイッチ回路27をその時点から一定時間だけオフにすることでFET23をオン状態にして、信号線3P,3N間のインピーダンスを低下させる。これにより、差動信号レベルがハイからローに変化する際に発生しようとするリンギングを抑制する。
【0021】
以上のように第3実施形態によれば、FET23のゲートと低電位側信号線3Nとの間には常閉型のスイッチ回路27を接続し、スイッチ制御部26によりスイッチ回路27のオンオフを制御することで、信号線3H,3L間のインピーダンスを低下させるようにした。これにより、特許文献1と同様にリンギングを抑制できる共に、通信ノード間のグランド電位差を調整することでリンギング抑制効果をより高めることができる。
【0022】
(第4実施形態)
図4に示すように、第4実施形態の通信ノード31は、第2実施形態の通信ノード11に、第3実施形態の歪抑制回路22を加えて構成されている。このように構成すれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0023】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
昇圧は電圧増幅率を「1」より大きくすることに等しく、降圧は電圧増幅率を「1」より小さくすることに等しい。したがって、昇降圧回路は、増幅率を変更可能な増幅回路で構成しても良い。
線間スイッチング素子をPチャネルMOSFETとして、それに対応して特許文献1と同様の構成を採用しても良い。また、特許文献1の第5実施形態と同様に、線間スイッチング素子としてNチャネルMOSFET,PチャネルMOSFETを並列に備えても良い。
電源電圧等は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。
【符号の説明】
【0024】
1 通信ノード、3 伝送線路、3P 高電位側信号線、3N 低電位側信号線、6 バス中間電位検出回路、7 自ノード中間電位検出回路、8 差動増幅回路。
図1
図2
図3
図4