(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
端部に転造ダイスが取り付けられ、該転造ダイスの主孔に連通する中心孔を有するダイス回転軸と、前記ダイス回転軸を軸線まわりに回転可能に支持するダイス台と、前記ダイス回転軸を駆動する駆動力を発生する回転モータと、該ダイス台を前記ダイス回転軸の軸線方向に移動させる送り機構とを備えたねじ転造装置であって、
前記ダイス回転軸は、前記ダイス回転軸の回転速度を可変とする変速機構を介して前記回転モータによって駆動され、
前記変速機構は、前記回転モータに連結された複数の入力側ギア、及び前記ダイス回転軸に取り付けられた複数の出力側ギアを有し、互いに噛み合う前記入力側ギアと前記出力側ギアの組みによって回転速度を可変とし、
前記ダイス台を前記ダイス回転軸の軸線方向に移動可能に支持するベース板を備え、
前記回転モータは、前記ベース板に固定されており、
前記変速機構は、前記回転モータに連結されたスプライン軸を有し、
前記入力側ギアは、前記スプライン軸に摺動可能に支持されたスリーブに取り付けられており、前記ダイス台によって前記スプライン軸の軸線まわりに回転可能に支持されていることを特徴とするねじ転造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のねじ転造装置は、回転モータのトルク性能によって転造ダイスの回転速度の範囲が限られるため、転造できるねじサイズが限られるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1に記載のねじ転造装置は、回転モータがダイス回転軸とともに軸方向へ送られるため、回転モータの信号供給線を固定することができない。移動する回転モータに追従して信号供給線の配線経路が変化し、回転モータの動きに伴って信号供給線に振れが生じる可能性がある。信号供給線の配線経路の変化や振れに起因して、モータ制御のための信号にリップルが重畳すると、転造ダイスの回転むらが生じ、素材に転造されるねじの精度が劣化する蓋然性があるという問題点もあった。
【0007】
また、特許文献1に記載のねじ転造装置は、転造ダイスの下方に送り機構を設けているため、転造時に線材から剥がれた屑や、転造ダイスに吹き付ける潤滑液が落下し、送り機構に付着してダイス台の送り駆動の精度を低下させてしまうという問題点もあった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転造ダイスの回転速度の範囲を広げ、転造可能なねじサイズの範囲を広くすることができるねじ転造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るねじ転造装置は、
端部に転造ダイスが取り付けられ、該転造ダイスの主孔に連通する中心孔を有するダイス回転軸と、前記ダイス回転軸を軸線まわりに回転可能に支持するダイス台と、前記ダイス回転軸を駆動する駆動力を発生する回転モータと、該ダイス台を前記ダイス回転軸の軸線方向に移動させる送り機構とを備えたねじ転造装置であって、前記ダイス回転軸は、前記ダイス回転軸の回転速度を可変とする変速機構を介して前記回転モータによって駆動され、前記変速機構は、前記回転モータに連結された複数の入力側ギア、及び前記ダイス回転軸に取り付けられた複数の出力側ギアを有し、互いに噛み合う前記入力側ギアと前記出力側ギアの組みによって回転速度を可変とし、前記ダイス台を前記ダイス回転軸の軸線方向に移動可能に支持するベース板を備え、前記回転モータは、前記ベース板に固定されており、前記変速機構は、前記回転モータに連結されたスプライン軸を有し、前記入力側ギアは、前記スプライン軸に摺動可能に支持されたスリーブに取り付けられており、前記ダイス台によって前記スプライン軸の軸線まわりに回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、
ダイス回転軸に取り付けた転造ダイスの回転速度の範囲が変速機構によって広くなって転造可能なねじサイズの範囲が広がり、回転モータをベース板に固定して配置することができるので、回転モータの信号供給線を固定し得る。
【0015】
本発明に係るねじ転造装置は、前記ベース板が鉛直に立設されており、前記スプライン軸が前記ダイス回転軸の上方に配設されていることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、ベース板が鉛直に立設されているので、変速機構のスプライン軸を転造ダイスの上方に、送り機構を転造ダイスの側方に設けることができ、転造時に素材から剥がれた屑や、転造ダイスに吹き付ける潤滑液の落下による機構部分への汚れが防止される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば
、ダイス回転軸に取り付けた転造ダイスの回転速度の範囲が変速機構によって広くな
って転造可能なねじサイズの範囲を広くすることができ
、回転モータをベース板に固定して配置することができるので、回転モータの信号供給線を固定し得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るねじ転造装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るねじ転造装置100の外観を示す斜視図である。本発明に係るねじ転造装置100は、転造ダイスが軸線まわりに回転してねじを加工対象の素材に形成するため、回転に不向きな加工対象、例えば折り曲げ加工を施した線材などに対するねじの転造に好適である。以下の説明では、加工対象の素材として線材を例にして説明するが、加工対象の素材は、これに限られない。
【0021】
ねじ転造装置100は、架台1、ベース板2、送り機構3、ダイス台4、回転モータ5、変速機構6、ダイス回転軸7、及び転造ダイス8を備える。架台1は、矩形状に角パイプ等を溶接して組んだ底部11、底部11の対向する2辺の中途部から立設した2本の支柱12a、支柱12aの上部どうし及び下部どうしを結合する梁13a及び13b、梁13a及び13bの中途部に立設した支柱12bを有する。
【0022】
また、架台1は、支柱12a及び12bの高さ方向の中途部にテーブル15を載置すべく底部11に対向して設けた上部14を有する。枠16でテーブル15の周囲を囲む、又はテーブル15上にトレイを載せることで、転造時に線材から剥がれた屑や、転造ダイス8に吹き付ける潤滑液の受け皿となる。架台1は、加工対象の線材を保持するためのクランプ台17を有する。クランプ台17は、転造ダイス8と対向する位置に、架台1から延びるアーム部材によって固定配置されている。クランプ台17には、折り曲げ加工された線材を嵌め込む溝を形成したブロックや、線材の位置決めのため線材に当接する接触面を形成したブロックを固定する。尚、ねじ転造装置100は、適宜に装置全体を覆う箱状のカバーが取り付けられ、該カバーの一部を取り外し可能とすることで、ねじ転造作業の効率性を向上する。
【0023】
ベース板2は、長方形の板状をなし、鉛直に立てて支柱12a及び12bに固定され、テーブル15の上側に配置されている。ベース板2は、例えば、4本の角パイプ材で長方形の各辺を構成し、剛性を上げるために適宜対向する2辺の中途部をつなぐ補強部材を角パイプ材で設け、両面に平板を溶接等で貼り付けて形成することができる。ベース板2の長辺は水平、短辺は鉛直であり、ベース板2の主面2aは水平方向を向いている。ベース板2の主面2a上に、送り機構3、ダイス台4、回転モータ5、変速機構6、ダイス回転軸7、及び転造ダイス8が配置される。
【0024】
図2は転造ダイス8部分の外観を示す斜視図である。転造ダイス8は、先端部に線材の端部を挿入する主孔8a、及び、主孔8aの中心軸方向と平行に離間して軸配置され、円周上に等間隔に並設された3つの円筒状のロール81を有する。ロール81は、側面にねじが設けられている。転造ダイス8の主孔8aから挿入された線材は、ロール81の側面に接触する。転造ダイス8が軸線まわりに回転することで、ロール81の側面に設けたねじが線材に食いつき、線材の表面に塑性変形によるねじを成形する。
【0025】
図3はねじ転造装置100の平面図であり、
図4はねじ転造装置100の正面図であり、
図5はねじ転造装置100の左側面図である。送り機構3は、ガイドレール31及びブロック32からなる2組のリニアガイド、ねじ軸33及びナット34からなるボールねじ、並びに送りモータ35を有する。2本のガイドレール31は、ベース板2に固定された水平方向に延びる2条の支持部材21上にそれぞれ設けられており、互い平行に上下に離間し、ベース板2の主面2aに沿って水平方向に延びるように配置される。ブロック32は、各ガイドレール31にそれぞれ2つずつ設け、各ブロック32はガイドレール31に嵌合し、ガイドレール31によって摺動可能に支持されている。ダイス台4は、2本のガイドレール31に設けた計4つのブロック32に取り付けられている。
【0026】
ねじ軸33は、2本のガイドレール31の中央部にガイドレール31と平行に配置されており、ベース板2に固定された軸受部によって軸線まわりに回転可能に支持されている。ナット34は、ダイス台4に取り付けられており、ねじ軸33に螺合している。送りモータ35は、ベース板2にブラケットを介して固定され、回転軸がねじ軸33の一端に連結されている。ナット34は、送りモータ35によってねじ軸33を軸まわりに回転させることで、ダイス台4とともにねじ軸34の軸方向に移動する。
【0027】
ダイス台4は、長方形の板状をなし、鉛直に立ててテーブル15の上側に配置されている。ダイス台4の主面4aは、ベース板2の主面2aと平行であり、水平方向を向いている。ダイス台4は、送り機構3の4つのブロック32に取り付けられており、送り機構3の送り動作によってガイドレール31に沿う水平方向に移動することができる。ダイス台4は、ダイス台4の主面4a上に配置された変速機構6、ダイス回転軸7及び転造ダイス8を支持する。
【0028】
回転モータ5は、ブラケット22を介してベース板2に固定されている。回転モータ5の回転軸は、カップリング51により、後述する変速機構6のスプライン軸61の一端に連結されている。回転モータ5への信号供給線は、ベース板2に固定されているブラケット22、ベース板2及び架台1の上に配線経路を設けることができる。配線経路となるブラケット22、ベース板2及び架台1、並びに回転モータ5は、ねじの転造時に可動しない。したがって、回転モータ5への信号供給線は、配線経路上に固定して設けることにより、ねじの転造時に配線経路が変化せず、振れが抑制される。
【0029】
変速機構6は、スプライン軸61、入力側ギア62及び63、並びに出力側ギア65及び66を有する。スプライン軸61は、一端部を回転モータ5の回転軸に取り付けたカップリング51に連結し、他端部をベース板2に立設した支持部23により軸線まわりに回転可能に支持されている。スプライン軸61の軸線方向は、送り機構3のガイドレール31及びねじ軸33の軸線方向と平行である。入力側ギア62及び63は、ギアのピッチ円直径が互いに異なる平歯車であり、スプライン軸61に挿通されている。
【0030】
図6は回転モータ5及び変速機構6の要部を示す正面図である。スプライン軸61には2つのスリーブ64が挿通されており、スリーブ64それぞれの本体部に入力側ギア62及び63を取り付ける。スリーブ64それぞれのハウジング部は、ダイス台42に配置する支持部42及び43に取り付けられる。スリーブ64それぞれの本体部に取り付けられた入力側ギア62及び63は、スプライン軸61とともに回転する。また、入力側ギア62及び63は、送り機構3の送り動作によって移動するダイス台4とともにスプライン軸61上を軸方向に移動する。尚、スリーブ64の本体部は、スリーブ64のハウジング部内に軸受を介して収容されており、スプライン軸41に対して摺動可能であるとともに回転が拘束され、ハウジング部に対しては回転可能である。
【0031】
支持部42及び支持部43は、ダイス台4に取り付けられる底板部分の上下左右の4箇所において、長手方向をスプライン軸61の軸方向とする長孔42a及び43aを有する。支持部42及び支持部43は、ねじ等の締結具を長孔42a及び長孔43aに通し、ダイス台4に設けたねじ穴に螺合させて、ダイス台4に取り付けられる。支持部42及び支持部43は、長孔42a及び長孔43aの長手方向寸法の分、スプライン軸61の軸方向に移動させてダイス台4への取付位置を変えることができる。
【0032】
変速機構6の出力側ギア65及び66はピッチ円直径が互いに異なる平歯車であり、ダイス回転軸7の転造ダイス8を装着する端部と反対側の端部に取り付けられている(
図4参照)。出力側ギア65は入力側ギア62と組みをなし、出力側ギア66は入力側ギア63と組みをなす。図に示す入力側ギア62及び出力側ギア65のピッチ円直径は同一であり、回転モータ5及びダイス回転軸7の回転速度は同一となる。一方、入力側ギア63及び出力側ギア66のピッチ円直径の比は2対1であり、回転モータ5の2倍の回転速度でダイス回転軸7を回転させることができる。
【0033】
図7はダイス回転軸7の要部を示す断面図である。ダイス回転軸7は、円筒状をなし、ダイス台4に配置する支持部44の貫通孔に軸受を介して支持されており、軸線まわりに回転可能である。ダイス回転軸7の軸線は、送り機構3のガイドレール31及びねじ軸33、並びに変速機構6のスプライン軸61の軸線と平行である。ダイス回転軸7は、スプライン軸61の下方、送り機構3のガイドレール31及びねじ軸33の水平方向の側方に配置されている。上述のとおり、ダイス回転軸7の転造ダイス8を装着する端部と反対側の端部には、変速機構6の出力側ギア65及び66が取り付けられている。ダイス回転軸7は、出力側ギア65及び66の回転に伴って、軸線まわりに回転する。
【0034】
ダイス回転軸7は、転造ダイス8を装着する端部に円錐台状の装着穴71、該端部から他端部に貫通する中心孔72を有する。転造ダイス8は、端部に向けて縮径し、ダイス回転軸7の装着穴71に嵌まる円錐台状の装着部82、及び、ダイス回転軸7の端部外周面に嵌合する円筒チャック83を有する。転造ダイス8は、円筒チャック83によってダイス回転軸7に同軸に装着され、軸線まわりの回転がダイス回転軸7に拘束される。転造ダイス8の主孔8aは、先端部側から装着部82側の端面にかけて貫通しており、ダイス回転軸7の中心孔72に連通する。線材の端部は、長尺のねじ部を成形する場合には、転造ダイス8の主孔8aから装着部82の端面を通過し、ダイス回転軸7の中心孔72内に挿入される。
【0035】
次に、ねじ転造装置100の動作について説明する。ねじを軸端に成形する線材の線径に応じて、変速機構6で噛み合わせる入力側ギアと出力側ギアを設定する。ダイス回転軸7の回転速度が一定であると、線材の線径が小さい場合に、線材表面に接触する転造ダイス8のロール81の接触部分が線材表面を移動する移動速度が落ち、線材表面を塑性変形させるために必要な該接触部分の線材表面における移動速度を確保することができない。このため、線材の線径が小さい場合には、ダイス回転軸7の回転速度を上げる必要があり、本実施形態では、回転モータ5の回転速度に対してダイス回転軸7の回転速度が2倍となる入力側ギア63と出力側ギア66を噛み合わせるようにしている。
【0036】
図8及び
図9は変速機構6による回転速度の可変を説明するための模式図である。
図8は、線材の線径が小さい場合に、ダイス回転軸7の回転速度を上げるために、入力側ギア63と出力側ギア66を噛み合わせる設定状態を示す。入力側ギア63は、支持部43のダイス台4への取付位置を長孔43aによってスプライン軸61の軸方向に移動させ、出力側ギア66と噛み合う位置に配置する。一方、入力側ギア62は、支持部42のダイス台4への取付位置を長孔42aによってスプライン軸61の軸方向に移動させ、出力側ギア65との噛み合いが外れる位置に配置する。
【0037】
本実施形態では、入力側ギア63及び出力側ギア66のピッチ円直径の比は2対1であり、回転モータ5の2倍の回転速度でダイス回転軸7を回転させることができる。例えば、回転モータ5の最大定格回転速度が2000RPM(回転数/分)である場合に、ダイス回転軸7の回転速度を最大4000RPMまで上げることができ、線材の線径が小さい場合にも、ねじを転造する際に必要となるロール81の線材表面との接触部分の線材表面における移動速度を確保することができる。
【0038】
図9は、線材の線径が大きい場合に、ダイス回転軸7の回転速度を回転モータ5の回転速度と同等とするために、入力側ギア62と出力側ギア65を噛み合わせる設定状態を示す。入力側ギア62は、支持部42のダイス台4への取付位置を長孔42aによってスプライン軸61の軸方向に移動させ、出力側ギア65と噛み合う位置に配置する。一方、入力側ギア63は、支持部43のダイス台4への取付位置を長孔43aによってスプライン軸61の軸方向に移動させ、出力側ギア66との噛み合いが外れる位置に配置する。
【0039】
本実施形態では、入力側ギア62及び出力側ギア65のピッチ円直径は同一であり、回転モータ5の回転速度でダイス回転軸7を回転させることができる。例えば、回転モータ5の最大定格回転速度が2000RPMである場合に、ダイス回転軸7の回転速度を最大2000RPMで回転させることができる。線材の線径が大きい場合には、ロール81の線材表面との接触部分の線材表面における移動速度は、線材の線径が小さい場合に比較して高くなり、ねじ転造に必要な該接触部分の移動速度を確保できる。
【0040】
線材の線径に応じて、変速機構6で噛み合わせる入力側ギアと出力側ギアを設定した後、加工対象となる線材に応じた保持用のブロックをクランプ台17に固定し、該ブロックに線材を保持させる。次に、回転モータ5を回転させ、同時に送り機構3でダイス台4を送り込んで、転造ダイス8の主孔8aに加工対象の線材の端部を通し、ロール81に該端部を食いつかせる。線材に転造するねじのピッチに応じて、ダイス回転軸7の回転速度に対応する送り機構3の送り速度を設定し、ダイス台4を送り込んで、線材にねじを転造する。線材に長尺のねじを成形する場合には、線材が転造ダイス8の主孔8aから装着部82の端面を通過し、ダイス回転軸7の中心孔72内に挿入される。
【0041】
線材に転造するねじの長さの分、送り機構3でダイス台4を送り込んだ後、回転モータ5を逆回転させるとともに、送り機構3の送り速度を正負反転してダイス台4を引き戻し、線材を転造ダイス8の主孔8aから引き抜き、ねじ転造が完了する。なお、線材に転造するねじの長さは、送り機構3がダイス台4を送ることができる寸法まで許容される。また、転造ダイス8の軸線からロール81を離すクラッチ機構を有する転造ダイスを用いる場合には、該クラッチ機構を作動させて、ロール81の線材への食いつきを解放し、送り機構3でダイス台4を引き戻して線材を転造ダイス8の主孔8aから引き抜くようにしてもよい。
【0042】
以上のとおり、本実施形態によれば、ねじ転造装置100は、貫通する中心孔72を有するダイス回転軸7の端部に転造ダイス8が装着される。ダイス回転軸7の中心孔72は、転造ダイス8の先端側から装着部82側の端面にかけて貫通する主孔8aに連通する。支持部44は、ダイス台4に配置されており、ダイス回転軸7を軸線まわりに回転可能に支持する。回転モータ5は、ダイス回転軸7を駆動する駆動力を発生する。送り機構3は、ダイス台4をダイス回転軸7の軸線方向に移動させる。ダイス回転軸7は、回転速度を可変とする変速機構6を介して回転モータ5によって駆動される。ねじ転造装置100は、ダイス回転軸7が変速機構6によって回転速度が可変となっているので、ダイス回転軸7とともに回転する転造ダイス8の回転速度の範囲が広くなり、転造可能な線材の線径、即ち転造可能なねじサイズの範囲を広くすることができる。
【0043】
また、ねじ転造装置100は、変速機構6が回転モータ5に連結された複数の入力側ギア62及び63、並びにダイス回転軸7の転造ダイス8を装着する端部と反対側の端部に取り付けられた出力側ギア65及び66を有する。入力側ギア62は出力側ギア65と組みをなし、入力側ギア63は出力側ギア66と組みをなす。ねじ転造装置100は、変速機構6によって入力側ギア62及び出力側ギア65を噛み合わせる設定、並びに入力側ギア63及び出力側ギア66を噛み合わせる設定の2段階に設定できるので、転造ダイス8の回転速度が可変となり、転造ダイス8の回転速度の範囲が広くなる。
【0044】
また、ねじ転造装置100は、ダイス台4をダイス回転軸7の軸線方向に移動可能に支持するベース板2を備える。回転モータ5は、ブラケット22を介してベース板2に固定されている。変速機構6のスプライン軸61は、カップリング51によって回転モータ5の回転軸に連結されている。入力側ギア62及び63は、スプライン軸61に摺動可能に支持されたスリーブ64に取り付けられており、ダイス台4に配置された支持部42及び43によってスプライン軸61の軸線まわりに回転可能に支持されている。ねじ転造装置100は、回転モータ5がベース板2に固定されているので、回転モータ5の信号供給線をブラケット22、ベース板2及び架台1上に配線することによって固定することができる。
【0045】
また、ねじ転造装置100は、ベース板2が鉛直に立設して架台1に固定されており、スプライン軸61がダイス回転軸7の上方に配設されている。ねじ転造装置100は、ベース板2が鉛直に立設されているので、変速機構6のスプライン軸61を転造ダイス8の上方に、送り機構3を転造ダイス8の水平方向の側方に設けることができ、転造時に線材から剥がれた屑や、転造ダイスに吹き付ける潤滑液の落下による機構部分への汚れが防止できる。転造時に線材から剥がれた屑や、転造ダイス8に吹き付ける潤滑液は、架台1上のテーブル15に落下し、例えばテーブル15にトレイを置くことで、転造後に容易に回収することができる。
【0046】
(変形例)
上述の実施の形態1では、ねじ転造装置100は、ベース板2を鉛直に立設して架台1に固定するが、ベース板2を水平に架台1上に設けるようにしてもよい。
図10は、本発明の変形例に係るねじ転造装置100の外観を示す斜視図である。送り機構3、ベース台4、回転モータ5、変速機構6、ダイス回転軸7、及び転造ダイス8の構成及びベース板2上における配置は、実施の形態1と同様である。変形例における各機構及び部品の構成及び動作は、実施の形態1と同等であり、記載の簡潔化のため、説明を省略する。
【0047】
図10に示すねじ転造装置100は、転造ダイス8の下方に送り機構3が配置されるため、好適には薄板材で形成したカバー部品で送り機構3の上方を覆い、転造時に線材から剥がれた屑や、転造ダイス8に吹き付ける潤滑液の落下による機構部分への汚れを防止するとよい。尚、変速機構6のスプライン軸61は、転造ダイス8の水平方向の側方に位置するので、転造時における汚れの付着は防止されている。
【0048】
転造ダイス台2上の各機構及び部品の構成が実施の形態1と同様であるので、ねじ転造装置100は、ダイス回転軸7が変速機構6によって回転速度が可変となり、ダイス回転軸7とともに回転する転造ダイス8の回転速度の範囲が広くなり、転造可能な線材の線径、即ち転造可能なねじサイズの範囲を広くすることができる。また、ねじ転造装置100は、回転モータ5がベース板2に固定されているので、回転モータ5の信号供給線をブラケット22、ベース板2及び架台1上に配線することによって固定することができる。
【0049】
さらに、ねじ転造装置100は、実施の形態1に示した架台1の支柱12a及び12bを装置上方まで伸ばす必要がないが、装置全体を覆う箱状のカバーを取り付ける場合、装置の高さは、実施の形態1と同程度となる。実施の形態1では、装置の転倒を防止するため、支柱12a及び12bを底部11の対向2辺の中途部に立設し、底部11が支柱12a及び支柱12bの背面側へ張り出していたが、変形例に係るねじ転造装置100では、ベース板2を水平に架台1上に配置するので、装置の転倒に対する安定性が良好になり、底部11を、支柱12a及び支柱12bの背面側へ張り出すように構成する必要はない。
【0050】
また、実施の形態1及び上述の変形例では、ねじ転造装置100は、2段階にダイス回転軸7の回転速度を可変とする変速機構6を有しているが、入力側ギア及び出力側ギアを3組以上の複数組みとする構成にしてもよい。ダイス回転軸7の回転速度を3段階以上に可変とすることにより、さらにダイス回転軸7の回転速度の範囲を広げたり、一定の範囲内できめ細かくダイス回転軸7の回転速度を設定することができる。
【0051】
また、実施の形態1及び上述の変形例では、変速機構6は、入力側ギア及び出力側ギアを平歯車で構成しているが、同様にダイス回転軸7の回転速度を可変とするギア構成に変更することも可能である。
【0052】
また、実施の形態1及び上述の変形例では、ねじ転造装置100は、転造ダイス8として軸線上から離間した3つのロール81で線材にねじを転造する形式のものを用いているが、他の形式の転造ダイスを用いてもよい。また、転造ダイス8をダイス回転軸7に装着する装着部82及び円筒チャック83は、他の方法に基づく形状のもの、及び部品を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、実施の形態1及び上述の変形例では、ねじ転造装置100の加工対象として線材を例に説明したが、加工対象は、軸状のものであればよい。ねじ転造装置100は、転造ダイス8が回転して転造するので、回転に不向きな加工対象に対するねじ転造に好適であるが、回転が良好に行える加工対象に対するねじ転造にも用いることができる。
【0054】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られることなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術範囲及びそれと均等な範囲に及ぶものとする。