特許第6470170号(P6470170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470170
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】改変抗体領域およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20190204BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20190204BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   C07K16/00
   A61K39/395 Z
   !C12N15/13
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-509206(P2015-509206)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公表番号】特表2015-515497(P2015-515497A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】US2013038538
(87)【国際公開番号】WO2013163630
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/639,729
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518067179
【氏名又は名称】バイオアトラ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ショート、ジェイ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ファイ、ウェン
(72)【発明者】
【氏名】フレイ、ガーハード
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/053301(WO,A1)
【文献】 特表2006−512087(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018790(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/109279(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/046722(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/122011(WO,A1)
【文献】 Dall' Acqua W. et al,J. Immunol.,169(2002),p.5171-5180
【文献】 DALL'Acqua W. et al.,J. Biol. Chem. ,vol.281, no.33(2006),p.23514-23524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
C12N 15/13
A61K 39/395
UniProt/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変Fc領域を有する抗体であって、前記改変Fc領域は、親IgG Fc領域と比較して、アミノ酸置換V427Tを有し、前記Fc領域における位置のナンバリングは、前記Fc領域におけるKabatと同様のEUインデックスのナンバリングであり、
前記改変Fc領域を有する抗体のFcRnに対するpH6.0での結合活性は、前記親IgG Fc領域を有する抗体のFcRnに対するpH6.0での結合活性の2〜80倍であり、
前記結合活性は表面プラズモン共鳴によって測定される抗体。
【請求項2】
請求項1記載の抗体において、前記抗体は、前記親Fc領域を有する対応する抗体と比較して、増強された抗体依存的な細胞障害活性を有する抗体。
【請求項3】
請求項1記載の抗体において、前記親Fc領域はヒトIgG Fc領域を有する抗体。
【請求項4】
請求項1記載の抗体と薬理学的に許容される担体とを有する組成物。
【請求項5】
増強された抗体依存的な細胞障害活性をもつ抗体を提供する方法であって、
a)請求項1記載の抗体を発現する少なくとも1つの宿主細胞を提供する工程と、
b)親Fc領域を有する対応する抗体と比較して、増強された抗体依存的な細胞障害活性を有する改変Fc領域を有する抗体を発現する宿主細胞を前記少なくとも1つの宿主細胞から選択する工程と、
c)前記選択した宿主細胞から抗体を単離する工程と、
を有する方法。
【請求項6】
増強された抗体依存的な細胞障害活性をもつ抗体を提供する方法であって、
a)前記改変Fc領域を有する抗体を産生するために請求項1記載のアミノ酸置換V427Tを、抗体の親IgG Fc領域に導入する工程と、
b)増強された抗体依存的な細胞障害活性を有する前記改変Fc領域を有する抗体を同定する工程と
を有する方法。
【請求項7】
請求項1記載の抗体において、前記改変Fc領域は、さらに、親IgG Fc領域と比較して、M252I、P257C、P257I、P257T、E258D、E258F、E258G、E258I、E258L、E258Q、E258V、E258W、V259E、V259G、V259I、V259R、T260A、T260C、T260F、T260L、T260N、T260S、T260W、S426C、S426N、M428Y、E430I、E430L、E430Q、A431F、A431H、A431P、H433A、H433E、N434G、N434I、N434M、N434R、N434V、N434W、H435Kから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有する抗体。
【請求項8】
哺乳類を治療するための薬剤を製造するための請求項1記載の抗体の有効量の使用。
【請求項9】
請求項6記載の方法において、前記抗体は前記親IgG Fc領域を有する抗体の半減期と比較して増加した半減期を有するものである方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非常に多くの情報が既に報告されており、研究、診断、およびがんを含む複数の病気の治療におけるモノクローナル抗体およびそれらの有用性についてはよく知られている。1ダース以上のモノクローナル抗体は、患者における治療的使用に関する政府の規制承認を有する。
【0002】
異なる特性(例えば改良された親和性、結合力および薬物動態)および完全ヒト抗体、ヒトおよび非ヒト因子から成るキメラ抗体、Fab抗体、および他の抗体構造を含む構造をもつ抗体は、クローニング、ファージ提示法、トランスジェニックマウスおよび突然変異誘発のような分子生物学技術を使用している研究室において構築されてきた。治療用抗体改良の目的は宿主抗抗体反応を克服すること、治療用抗体の半減期を延長することを含み、改良された抗体には継続的な必要性がある。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2005/0037000号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2011/0081347号明細書
(特許文献3) 米国特許第7,790,655号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2009/0041770号明細書
(特許文献5) 国際公開第2007/021841号
(特許文献6) 米国特許出願公開第2005/0014934号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2012/0003210号明細書
(特許文献8) 米国特許出願公開第2010/0104564号明細書
(特許文献9) 中国特許出願公開第101189028号明細書
(非特許文献)
(非特許文献1) MOORE,GREGORY L.et al.,Engineered Fc variant antibodies with enhanced ability to recruit complement and mediate effector functions,Landes Bioscience,March−April 2010,Vol.2,No.2,pp.181−189
(非特許文献2) LAZAR,GREG A.et al.,Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function PNAS,14 March 2006,Vol.103,No.11,pp.4005−4010
(非特許文献3) Chinese Office Action; Mailed 2016−07−11 for CN Application No.CN201380022401.0 along with an English abstract.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、Fc領域を含む抗体(例えば完全長IgGl、IgG2、IgG3またはIgG4、キメラ抗体、またはヒト化抗体を含む完全長IgG抗体)、または本発明のFc領域、またはFc領域の一部を含む(「免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質」、「Fc融合タンパク質」、または「Fc融合ポリペプチド」と呼ばれる)融合タンパク質のような抗体の改変Fc領域、およびその使用に関するものである。抗体の改変Fc領域は当技術分野で報告されており、米国特許第US2006/104989号明細書に含まれる。本発明の改変Fc領域は、対応する非改変(野生型または親)Fc領域の配列と比較して本明細書において開示される位置で単一アミノ酸置換(また、本明細書においてFcバリアントと呼ばれる)を有し、1若しくはそれ以上のFcレセプターへの増加した結合および/または異なるpH条件下の改変結合のような当技術分野で報告された他の改変Fc領域のみならず、対応する非改変Fc領域と異なる1若しくはそれ以上の特性を有する。本発明の改変Fc領域は、標準的な分子生物学技術を使用している任意の抗体またはFc融合ポリペプチドに取り込まれることが可能であり、全てのそのような改変抗体およびFc融合ポリペプチドは本発明に包含されることが意図される。Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常Ig領域、およびIgEおよびIgMの最後の3つの定常Ig領域、およびこれらの領域に対する可変ヒンジN末端を指す。IgAおよびIgMの場合、FcはJ鎖を含む可能性がある。Fcは特定の細胞に存在するレセプター、FcRs、により結合される。特定の細胞に存在するFcと特定のFcRsのと間の相互作用の親和性はターゲットとした細胞障害性と相関し、ヒトの臨床有効性は、特定のFcRsの高親和性または低親和性の多形性形態のアロタイプと相関するため、抗体または1若しくはそれ以上のFcRsと結合するために最適化されたFc領域をもつ融合ポリペプチドはがん細胞のより効果的な破壊に終わる可能性がある。
【0004】
特定の実施形態において、本発明の改変Fc領域は、ポリペプチドまたはFc領域が取り込まれたポリペプチドを含む複合体、例えば改変Fc領域を有するIg重鎖を含む完全長抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体のような複合体に、対応する非改変(野生型または親)Fc領域、または異なる改変Fc領域を取り込んでいる抗体のような、対応するポリペプチドまたは複合体と比較して、1若しくはそれ以上のFcRsに増加または改変した結合、および/または、増加または改変した抗体依存的な細胞障害活性(ADCC)のような、改良された特性を与える。このように、本明細書において開示されるFc領域改変の1若しくはそれ以上が欠如し、本発明のFc領域を取り込んでいるポリペプチドまたは抗体と比較しFcR結合において異なる、対応するポリペプチドまたは抗体は、天然の(野生型)Fc領域配列を有する可能性があるか、少なくとも1つのFcRへの結合を増加または改変し結合する結果となる、本明細書において開示したもの以外の(付加、欠失および/または置換のような)アミノ酸配列の改変をもつFc領域配列を有する可能性がある。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の改変Fc領域は、分子に増加または減少した半減期を与える。
【0005】
本発明の1実施形態において、本発明の改変Fc領域は、本明細書において記述される置換の1つを含む。他の実施形態において、本発明の改変Fc領域は組合せで本明細書において記述される2、3、4、5若しくはそれ以上の置換を含み、それは本発明の改変Fc領域の特性を加算的または相乗的に増強する可能性がある。別の実施形態において、本発明は本発明の改変Fc領域を有するポリペプチドを含み、すなわちそれは本明細書において記述される置換の1つを含むFc融合ポリペプチドである。1実施態様において、融合ポリペプチドの非Fc領域は、ターゲットの結合分子を含む。他の実施形態において、本発明は、組合せで本明細書において記述される2、3、4、5、6、10、12、若しくはそれ以上の置換を含む本発明の改変Fc領域を有するポリペプチドを含む。1実施態様において、本発明は、本明細書において記述される置換の1つを含む本発明の改変Fc領域を有する抗体または抗原結合性抗体断片を含む。他の実施形態において、本発明は、組合せで本明細書において記述される2、3、4、5、6、10、12若しくはそれ以上の置換を含む本発明の改変Fc領域を有する抗体または抗原結合性抗体断片を含む。
【0006】
別の実施形態において、本発明はポリペプチド、例えば抗体またはFc融合ポリペプチド、または別の分子(Fc融合複合体)が結合したFc領域複合体を含む複合体のようなポリペプチドの複合体における1つを含み、本明細書において記述される置換の1つを含む本発明の改変Fc領域を有する。他の実施形態において、本発明はポリペプチド、例えば抗体またはFc融合ポリペプチド、または別の分子(Fc融合複合体)が結合したFc領域複合体を含む複合体のようなポリペプチドの複合体における1つを含み、1若しくはそれ以上の他の置換のみならず、組み合わせで本明細書において記述される2、3、4、5若しくはそれ以上の置換を含む本発明の改変Fc領域を有し、それは他の置換が本発明の改変Fc領域において置換の位置および/または置換と関連したそれら以外の特性を与える可能性、または本発明の改変Fc領域の特性を加算的または相乗的に増強する可能性がある。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の改変Fc領域をもつポリペプチドは、本明細書において記述される機能的な特性の1若しくはそれ以上を有する。また非FcRターゲット結合分子領域を含む、本発明の改変Fc領域をもつポリペプチドの場合、それは選択的に他のポリペプチドと共に抗体を形成する可能性があり、抗体のターゲットの結合分子領域または可変領域は、実質的に任意のターゲット分子または抗原に特異的に結合する可能性がある。したがって、1態様において、本発明は、Fc領域において以下のアミノ酸残基(位置)で以下のアミノ酸置換をもつFc領域(例えばIgGl Fc領域のようなIgG Fc領域)を有するポリペプチドに関連するものである:M252I、P257C、P257I、P257T、E258D、E258F、E258G、E258I、E258K、E258L、E258Q、E258S、E258V、E258W、V259E、V259G、V259I、V259R、T260A、T260C、T260F、T260L、T260N、T260S、T260W、S426C、S426N、V427S、V427T、M428F、M428Y、E430I、E430L、E430Q、A431F、A431H、A431P、H433A、H433E、H433R、N434A、N434D、N434F、N434G、N434H、N434I、N434M、N434R、N434V、N434W、N434Y、H435Kまたはそれらの位置の任意の組合せのこれらの置換。本明細書において説明されるすべての位置のためのナンバリングはKabat(Kabat et al.,1991)と同様に、EUインデックスに準じる。抗体の当業者はこの慣用がIg配列の特定の領域で非連続のナンバリングから成るものと正しく理解し、Ig族の保存された位置への標準化した参照を可能にするであろう。このように、EUインデックスによって定義される任意の所定のIgの位置は、その連続した配列と必ずしも一致するというわけではない。
【0007】
ポリペプチド、タンパク質または他の複合体、例えば本明細書において記述される本発明の改変Fc領域を取り込む複合体に加え、例えば、宿主細胞が改変Fc領域、宿主細胞のライブラリー、および宿主細胞または宿主細胞のライブラリーを作成する工程、培養する工程または操作する工程の方法を有するポリペプチドを生産できるように、本発明はまた、改変Fc領域または改変Fc領域を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび発現ベクターを包含し、それらのポリヌクレオチドおよび発現ベクターのライブラリー、そのようなポリヌクレオチドまたは発現ベクターが導入される宿主細胞を含む。例えば本発明は、改変Fc領域をもつポリペプチドが、例えば宿主細胞から分泌されるまたはさもなければ放出され生産されるように、そのような宿主細胞を培養する工程を含む。本発明の改変Fc領域をもつポリペプチド、タンパク質または他の複合体を含む医薬組成物およびキット、および/またはそのような改変Fc領域を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、発現ベクターまたは宿主細胞はまた包含される。さらに、Fcレセプター結合実験または試験管内または生体内でADCC活性を誘導するためのような場合における、本発明の改変Fc領域をもつポリペプチド、タンパク質または複合体の使用はまた本発明により包含される。本発明はまた、例えば試験管内または生体内においてADCC活性を誘導するのに有用である薬剤の製造のための、本発明のポリペプチド、タンパク質または他複合体、ポリヌクレオチド、発現ベクター、および/または宿主細胞の使用のポリペプチド、タンパク質、複合体、ポリヌクレオチド、発現ベクターおよび/または宿主細胞の使用のみならず、内科的治療における使用を提供する。
【0008】
本明細書において用いられる抗体は、哺乳類の免疫グロブリン遺伝子の全てまたは一部をコードする1若しくはそれ以上のポリペプチドを有するタンパク質であり、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含み、それは特異的に1若しくはそれ以上のFcレセプター(FcRs)と結合し、そして、1若しくはそれ以上の可変領域が存在する場合、タンパク質は抗原と結合し、そこでタンパク質は選択的にグリコシル化される。完全長抗体は、可変および定常領域を含む天然において認められる抗体の天然の生物学的形態と一致する構造を有する。例えば完全長抗体は、2つのIg鎖の2つの相同対で、各対は1つの軽鎖および1つの重鎖を有し、四量体である可能性がある。各々の軽鎖は免疫グロブリン領域VLおよびCLを含み、IgGの場合は、各々の重鎖は免疫グロブリン領域VHおよびCHを含み、そこでのCHはCγ1、Cγ2およびCγ3を含む。ヒトにおいて、Ig遺伝子は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖遺伝子領域および重鎖遺伝子領域を含み、それぞれIgM、IgD、IgG、IgEおよびIgAアイソタイプのための定常部遺伝子ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、シグマ(σ)、およびアルファ(α)を含む。
【0009】
本明細書において用いられる抗体はさらに、特に指定されない限り、完全長抗体およびその断片を含み、天然に存在する抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体を含む組み換え型抗体、または別の試験管内の改変を受ける抗体、およびその断片を結合する抗原を含む。
【0010】
本明細書において用いられる「親Fc」は、抗体のIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMクラスの天然に生じるFc領域でありうる。あるいは、親Fcの起原は、IgGl、IgGl、IgG3、IgG4、IgAl、またはIgA2を含む、天然に存在する抗体由来のFc領域である。改変される親Fc領域は、そのFcR結合親和性および/またはFcR結合パターンのために選択される可能性があり、本発明の改変Fc領域は少なくとも少なくとも1つのFcRのために少なくとも1つの増強された親和性を有するが、さもなければ、親Fc領域のような、同じパターンのFcR結合を有する可能性がある。
【0011】
親Fc領域は、望ましくは、1若しくはそれ以上のFcRsと相互作用するものであり、これに限定されるものではないが、FcγRs,FcαRs,FcμRs,FcδRs,FcRn,およびウイルスFcγRを含む。そのような親Fc領域に由来する本発明の改変Fc領域は、親Fc領域と比較して、1若しくはそれ以上のFcRsと増強された相互作用および増強されたADCCを有するものである。ADCCは、Fc領域が結合領域(例えば抗体可変領域)と結合されることを必要とする。FcR結合およびADCCを検出する方法は、当技術分野で周知である。
【0012】
FcRsは免疫グロブリンアイソタイプのそれらの特異性によって定義され、当技術分野で周知である。
【0013】
融合を含むFcは、ポリペプチドを含み、そこで好ましいFcR結合をもつFc領域、および選択的に好ましい薬物動態をもつFc領域は1若しくはそれ以上の分子に架橋する。架橋は自然に、例えば化学的結合を通し、または組み換え型の発現を通し、合成である可能性があり、すなわち、融合ポリペプチドが形成される。このように、Fc領域に架橋される分子は、Fc領域、例えばFlag−tag、Strep−tag、グルタチオンS転移酵素、マルトース結合タンパク質(MBP)またはHis−tagのようなtag、または他の異種ポリペプチドを単離または精製するのに有用な分子、例えば、レセプターのためのリガンド、レセプターの細胞外領域、またはIg重鎖の可変領域、および/または別の分子である可能性がある。
【0014】
ベクターが本発明の改変Fc領域または改変Fc領域または他のFc融合ポリペプチドをもつIg重鎖のようなポリペプチドを含むFc領域をコードする場合、ベクターは、選択的に他のベクター、例えばIg軽鎖をコードするベクターと共に宿主細胞に、またはIg軽鎖のような別のポリペプチドを発現するよう改変した宿主細胞に、またはコードされたポリペプチドを発現するように、試験管内の転写/転写反応に、導入される可能性がある。改変Fc領域、Ig重鎖およびIg軽鎖はまた、同じベクターで発現される可能性があり、宿主細胞に導入される可能性がある。いくつかの発現システムにおいて、宿主細胞は、プロモーターを導入する工程、形質転換体を選択する工程、または望ましい順序で増殖する工程に適するように改変した従来の栄養培地で培養される可能性がある。改変Fc領域をもつ、結果として生じるポリペプチドは、例えば宿主細胞上清から選択的に単離され、1若しくはそれ以上の活性のスクリーンがなされる。
【0015】
1実施態様において、Fc領域は、膜貫通領域をもつ融合を通し、宿主細胞のような細胞の表面に固定されるものである可能性がある。
【0016】
ベクターでポリヌクレオチドを発現するための適当な宿主細胞は、原核細胞、酵母、または高等真核細胞である。この目的のための適当な原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性微生物のような真正細菌、例えば、枯草菌のようなバシラス属、緑膿菌のようなシュードモナス、およびストレプトマイセス属のみならず、エシェリキア属、例えば大腸菌のような腸内細菌科、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア菌、および赤痢菌を含む。糸状菌または酵母のような真核微生物はまた、ポリペプチドバリアントエンコードベクターのための適当なクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセスセレヴィシエ、シゾサッカロミセスポンベ、例えばクリベロミセスラクチス、クリベロミセスフラギリス、クリベロミセスブルガリクス、クリベロミセスウィケラミイ、クリベロミセスワルチイ、クリベロミセスドロソフィラルム、クリベロミセスサーモトレランス、およびクリベロミセスマルキアヌスのようなクリベロミセス属ホスト;ピキアパストリス、カンディダ、トリコデルマリーシア、シュワニオミセスオキシデンタリスのようなシュワニオミセス;およびアカパンカビ属、アオカビ属、トリポクラジウム属、およびアスペルギルス属ホストのような糸状菌が使用される可能性がある。グリコシル化ポリペプチドの発現のための適当な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。グリコシル化ポリペプチドの発現のための無脊椎動物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。真核生物細胞の生成、スクリーニングおよび生産宿主の例は、3T3マウス線維芽細胞、BHK21シリアンハムスター線維芽細胞、MDCK、イヌ上皮細胞、Helaヒト上皮細胞、PtK1ラットカンガルー上皮細胞、SP2/0マウス形質細胞、およびNSOマウス形質細胞、HEK293ヒト胚性腎臓細胞、COSサル腎臓細胞、CHO、CHO−Sチャイニーズハムスター卵巣細胞、未発達のR1マウス胚性幹細胞、E14.1マウス胚性幹細胞、H1ヒト胚性幹細胞、H9ヒト胚性幹細胞、PER C.6、およびヒト胚性幹細胞を含む。多数のバキュロウイルスの株およびバリアントおよび対応するヨトウガ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、キイロショウジョウバエ、およびカイコガのような宿主由来の許容昆虫宿主細胞が、用いられる可能性がある。例えば、ウイルスベクターは、本発明のポリヌクレオチドを導入するのに、特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、用いられる可能性がある。コットン、コーン、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、およびタバコのような植物細胞培養はまた、宿主として利用することが可能である。有用な脊椎動物細胞の例は、哺乳動物細胞、例えばヒト、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、または齧歯動物、例えばウサギ、ラット、ミンクまたはCHO細胞のようなマウス細胞を含む。それらの細胞のグリコシル化パターンはヒトグリコプロテインと異なる可能性があるが、トランスジェニック植物および動物は発現システムとして用いられる可能性がある。1実施態様において、トランスジェニック齧歯動物は、発現システムとして使用される。細菌発現はまた、使用される可能性がある。細菌で発現したタンパク質はグリコシル化が不足するが、他の改変が原核生物の発現に由来する可能性がある低安定性および低可溶性のような任意の減少した活性を補う可能性がある。
【0017】
選択的に、Fc領域またはポリペプチドを含むFcは宿主細胞から、例えば宿主細胞上清、または試験管内の転写/翻訳混合物から単離し、組成物を産生する。組成物中の単離したポリペプチドは、宿主細胞、宿主細胞上清または転写/翻訳混合物において検出される少なくとも1つの他の分子から、例えば、免疫親和性またはイオン交換カラムの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのような陰イオン交換樹脂クロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばSephadex G−75を用いたゲル濾過;またはリガンド親和性クロマトグラフィーにより単離されたものである。いくつかの応用において、組成物中の単離したポリペプチドは、優勢種が存在し(すなわち、モル基準で、それは組成物の中で他のどの個々の種よりも豊富であり)、望ましくは少なくとも(モル基準で)約50パーセント、より望ましくは存在するすべての高分子種の約85%、約90%、約95%、および約99%以上を有する。単離したFc領域またはポリペプチドを含むFcはさらに試験管内において、プロテアーゼのような酵素または化学薬品、グリコシル化を改変するような分子、または、これに限定されるものではないが、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド、蛍光体)、酵素標識(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光標識、ビオチニル基、アビジン基、または二次レポーター(例えばロイシンジッパーペア配列、二次抗体のための結合部位、金属結合領域、エピトープtag)によって認識されるポリペプチドエピトープ、糖、脂質、脂肪、常磁性分子または音波エミッタ、金属、または合成ポリマーを含む標識のような別の分子にポリペプチドを含む単離したFc領域またはFc領域を結合させる(対にさせる)のに有用であるもので処理し、改変を受ける可能性がある。
【0018】
Fc領域を取り込むポリペプチドまたは複合体と関連した活性を検索する方法は、これに限定されるものではないがFcR結合(例えば米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,217,797号明細書、米国特許第8,088,376号明細書を参照。全ては参照することにより本明細書に組み込まれる)を含み、当技術分野で周知である。例えば、ポリペプチドを含むFcのADCC活性を評価すること、試験管内および/または生体内におけるADCC分析は、例えばそれぞれPBMCおよびNK細胞または動物モデルにおいて、様々なエフェクター:ターゲットの比率を用いて行われる可能性がある。1実施態様において、宿主細胞により発現するポリペプチドを含むFcは、試験管内および/または生体内における、増強されたFcRレセプター結合親和性または活性、および/または、試験管内および/または生体内におけるADCC活性のスクリーンがなされる。1実施態様において、本発明の改変Fc領域をもつポリペプチドを含むFcによるFcRの結合は、非改変Fc領域をもつ対応するポリペプチドによるそのレセプターの結合より大きい。このように、野生型または親Fc領域またはポリペプチドを含むFc領域において、本明細書において記述されるアミノ酸配列の改変を、野生型または親Fc領域が望ましくはADCCを誘導し、選択的にヒトFc領域、例えばヒトFc領域ヒトIgG配列の天然の配列となるよう誘導することによって、改変Fc領域は得られ、それはより良い親和性をもつFcRを結合し、野生型または親Fc領域またはポリペプチドを含むFc領域よりもさらに効果的にヒトエフェクター細胞の存在下でADCCを仲介する。組み換え型可溶性ヒトCD16および組み換え型可溶性ヒトCD32のような可溶性FcRsは、同時に1若しくはそれ以上の異なる改変Fc領域と接触することが可能であり、非改変Fc領域と比較して、ヒトCD16との結合を増強するが、ヒトCD32との結合は増強しない1若しくはそれ以上の置換を有する改変Fc領域が同定された。それらの置換は、結合を増強する他の置換と組み合わされる可能性がある。Fc領域またはポリペプチドを含むFc領域における本発明の置換の組合せは、組み合わせて改変したFc領域、または組み合わせて相乗的に増強された特性をもつポリペプチドを含む改変したFc領域を産生する可能性がある。
【0019】
改変Fc領域をもち、望ましい特性、および上に述べたように対応するポリヌクレオチド配列をもつ抗体を含む、改変Fc領域をもつポリペプチドを同定する他の方法は、望ましくは、特有の特性をもつFc領域を選択するための活性のスクリーンがなされる分子、例えばFc領域をもつ抗体との関連において、単独または、例えば改変Fc領域のモデリング、例えば3次元モデリングを使用する工程を含む、上述の方法と組み合わせて使用される可能性がある。モデリングによってスクリーンがなされる可能性のある特徴は、これに限定されるものではないが、FcR結合部位の近位で特定の角度、ヒンジ構造、分子内および分子間連鎖相互作用、例えば疎水的相互作用を促進または阻害させる、または特定の領域で構造を安定させる置換を含む。このように、1若しくはそれ以上の他の置換と組み合わせて本発明の置換位置の少なくとも1つを有するポリペプチドを含むFc領域の3次元モデルは、宿主細胞における発現のためポリヌクレオチドに導入される置換の組合せを確認するために使用される可能性がある。
【0020】
異種ポリペプチドに取り込まれる、例えば細胞表面レセプター、例えばCTLR−4リガンドまたは抗体の重鎖を有するFc融合に取り込まれるか否かを問わず、またはそれらの変形をコードするポリヌクレオチドおよび宿主細胞のみならず、目的の分子に結合されるか否かを問わず、選択的に1若しくはそれ以上の他の薬剤、例えば治療薬または研究試薬と組み合わせて、本発明のFcバリアントは様々な方法において、例えばスクリーニング方法、予防方法、治療法、獣医学的方法および農業に関する方法において、有用である。1若しくはそれ以上の他の薬剤は、他のFc領域またはポリペプチドを含むFc領域を含み、非改変Fc領域をもつそれらを含む。1実施態様において、Fcバリアントは抗体または他のFc融合ポリペプチドに取り込まれ、その抗体またはFc融合ポリペプチドは、選択的に1若しくはそれ以上の他の有用な組成物と共に、特定の細胞をターゲットとするため用いた。1実施態様において、抗体またはその抗原結合断片を含むFcバリアントはターゲットし、選択的に目標抗原を持つ標的細胞を破壊する。別の実施形態において、抗体またはその抗原結合断片を含むFcバリアントは、目標抗原を持つ細胞をターゲットし、活性化し、例えばそれによってウイルスであるか細胞抗原のような別の抗原の発現を増加する。1実施態様において、Fcバリアントまたは本発明のFcバリアントを取り込むポリペプチドは、ヒトおよびヒト以外の哺乳類を含むヒト以外において、様々な疾患または病気を予防、抑制または治療するために用いられる可能性がある。例えば、本発明の改変Fc領域を含む抗体は、病気の発症前に、例えば病気を発症する傾向がある危険性があるヒトまたはヒト以外の動物に投与される可能性があり、その病気の1若しくはそれ以上の徴候を予防または抑制する。Fc領域またはポリペプチドまたはその複合体を含むFc領域は、病気を抑制または治療するために、ヒトまたはヒト以外の動物において病気の臨床症状の後、投与される可能性がある。1実施態様において、本発明の抗体またはFc融合ポリペプチドを有する医薬組成物は、自己免疫、免疫学的、伝染性、炎症性、神経学的、または腫瘍性疾患、例えばがんであるヒトまたはヒト以外の動物に投与される。Fc領域または本発明のポリペプチドを含むFc領域は、意図された目的のために効果的である量で、単独または、これに限定されるものではないが、細胞障害性薬剤、例えば化学療法剤、サイトカイン、成長抑制薬剤、抗ホルモン剤、キナーゼ抑制剤、血管新生阻害剤、心臓保護剤、または他の治療薬剤を含む1若しくはそれ以上の他の治療剤と組み合わせて投与される可能性がある。熟練した医師は本発明のFc領域またはポリペプチドを含むFc領域を含む治療剤の適切な単回用量または複数回用量を経験的に決定することが可能であり、それ故に1若しくはそれ以上の他の治療法と同時に投与される可能性がある。例えば、本発明の抗体またはFc融合ポリペプチドは、化学療法または他の治療、例えば抗血管新生薬剤、サイトカイン、放射性同位元素治療、または化学療法の両方および他の治療法のような他の薬剤と共に患者に投与される可能性がある。1実施態様において、抗体または本発明のFc融合は1若しくはそれ以上の他の抗体またはFc融合と共に投与される可能性があり、それは本発明のFcバリアントを有する可能性があるまたは可能性がない。1実施態様において、本発明のポリペプチドを含むFcは、化学療法剤、すなわちがんの治療に有用である化学合成物と共に投与される。化学療法剤または他の細胞障害性薬剤はプロドラッグとして、すなわちそれは薬剤と比較して細胞に細胞障害性がより少なく、薬に変換されることが可能である薬学的に活性物質の形態として、投与される可能性がある。
【0021】
医薬組成物はまた、Fc領域、Fc融合ポリペプチド、Fc領域を有する抗体、またはその複合体を有することが検討され、選択的に1若しくはそれ以上の他の薬剤と共に調合される。本発明の抗体、Fc領域またはポリペプチドまたは複合体を含むFc領域の製剤は、選択的に薬理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980)と共に望ましい純度を有する抗体、Fc領域、またはポリペプチドを含むFc領域、または複合体を混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、保管のため調合される。許容範囲にある担体、賦形剤、または安定剤は、用いる投薬量および濃度では、服用者に非中毒性であり、酸化防止剤;アルキルパラベン;低分子量(約10未満の残基)ポリペプチド;親水性ポリマー;アミノ酸;単糖類;および他の炭水化物;キレート剤;増量剤;結合剤;添加剤;着色剤;塩形成対イオン;金属複合体;および/または非イオン性界面活性剤のような緩衝剤を含む。他の製剤は、当技術分野で周知である方法によって調合される、持続放出性製剤を含む、脂質または界面活性剤ベースの製剤、微粒子またはナノ粒子ベースの製剤を含む。
【0022】
製剤において本発明のポリペプチドを含むFc領域、抗体または他のFc領域の濃度は、約0.1〜100重量%まで変化する可能性がある。好ましい実施形態において、Fc領域、抗体またはFc融合ポリペプチドの濃度は0.001〜2.0Mの範囲である。患者を治療するため、本発明のFc領域、またはポリペプチドを含む抗体または他のFc領域、およびその複合体の有効量が投与される可能性がある。本明細書において「治療的有効量」は、それが投与されるものに効果をもたらす用量を意味する。用量は体重の0.01〜100mg/kgの範囲またはそれ以上である可能性があり、例えば、他の用量が有益な結果を提供する可能性があるが、体重の0.1、1、10、または50mg/kg、好ましくは1〜30mg/kgである。投与される量は、特定の疾患または病気の予防および治療するため選択される。本発明のFc領域、またはポリペプチドを含む抗体または他のFc領域、およびその複合体の投与は、例えば、服用者の生理的状態、投与の目的が治療的または予防的であるかどうか、および熟練した医師に周知である他の要因に依存し、連続的または断続的である可能性がある。本発明のFc領域、またはポリペプチドを含む抗体または他のFc領域、およびその複合体の投与は、事前に選択した期間、原則的に連続的である可能性、または一連の間隔を置いた服用である可能性がある。局所的およ全身投与の両方が考えられる。
【0023】
本発明のFc領域、抗体またはポリペプチドおよび複合体を含む他のFcを有する医薬組成物の投与は、望ましくは滅菌水性溶液の形態で、これに限定されるものではないが、経口的に、皮下に、静脈内に、鼻腔内に、耳内に、経皮的に、局所的に、腹膜内に、筋内に、肺内に、吸入可能な技術で、経膣的に、非経口的に、直腸内に、または眼内を含む様々な方法によりなされる可能性がある。いくつかの例では、外傷、炎症などの治療するために例えば、抗体またはFc融合は、溶液またはスプレーとして直接塗布される可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
クローンのFcRn結合の解析。FcRn結合は、非改変Fcをもつ野生型抗体と比較して結合の倍数変化を決定することによって評価され、報告されている通り、結合を測定することが可能である(例えばDall’Acqua,et al,The Journal of Biological Chemistry,Vol 281,Num33,23515−23524(2006)を参照)。本発明のすべての改変Fesは、非改変コントロールFc領域と同じ結合でpH7.4においてFcRnを結合することが示された。本発明のすべての改変Fesは、非改変コントロールFc領域と比較して2〜80倍の結合でpH6.0においてFcRnを結合することが示された。
【0025】
ヒトFcRnとの結合における変化をともなう改変Fc領域は、改変Fc領域を含む免疫グロブリンの半減期の変化をもたらす可能性がある。改変した半減期をもつエンジニアリング抗体は、治療への応用に有用である可能性があり、放射性同位元素で標識した抗体のような、活性を延長させるため増加した半減期をもつ抗体および好ましくない長時間暴露特性をもつ抗体のクリアランスを増加させる減少した半減期をもつ抗体を含む。
【0026】
参考文献
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Dall’Acqua,et al,The Journal of Biological Chemistry,Vol 281,Num 33,23515−23524(2006)
【0027】
前述の明細書において、本発明は、そのいくつかの好ましい実施形態に関して記述され、多くの詳細は説明する目的のために述べられるが、本発明がさらなる実施形態の影響を受けやすく、本明細書において記述される詳細のいくつかが本発明の基本原理から逸脱しない範囲で大幅に変化する可能性があることは当業者にとって明白であろう。
【0028】
これに限定されるものではないが、出版物、特許および特許出願を含むすべての文書は本明細書において引用され、参照により本明細書に組み込まれる。