特許第6470183号(P6470183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470183
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20190204BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20190204BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302T
   C09D5/24
【請求項の数】8
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2015-552490(P2015-552490)
(86)(22)【出願日】2014年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2014082740
(87)【国際公開番号】WO2015087932
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-255844(P2013-255844)
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 智
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−023303(JP,A)
【文献】 特開2005−330339(JP,A)
【文献】 特開2012−213692(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/125705(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/096480(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して未硬化の第1着色塗膜を形成する工程、
(2) 工程(1)で得られた未硬化の第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装して未硬化の第2着色塗膜を形成する工程、
(3) 工程(2)で得られた未硬化の第2着色塗膜上にクリヤ塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤ塗膜を形成する工程、ならびに
(4) 工程(1)〜(3)で形成された未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤ塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、
を順次行なう複層塗膜形成方法であって、
上記水性第1着色塗料(X)が、 非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)、酸価が1〜30mgKOH/g、20℃の温度で造膜するまでの時間が5〜20分間である水性ポリウレタン樹脂(B)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)、及び導電性顔料(D)を含有し、
水性第1着色塗料(X)を塗装し、硬化させて得られる厚さが5μmの硬化塗膜の波長360〜420nmにおける平均光線透過率が1%未満
であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
上記クリヤ塗料(Z)が、
水酸基価140〜210mgKOH/g、重量平均分子量5000〜18000、及びガラス転移温度−25〜20℃の水酸基含有アクリル樹脂(K)
を含有する請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
上記クリヤ塗料(Z)が、
数平均分子量500〜2500の水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、数平均分子量500〜2500の水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び数平均分子量500〜2500の水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する請求項2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
上記クリヤ塗料(Z)が、
クリヤ塗料の樹脂固形分質量総量を基準として30〜70質量%の水酸基含有アクリル樹脂(K)と、
水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して100質量%以下の水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、200質量%以下のポリイソシアネート化合物(PI)と
を含有する請求項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)が、
下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【化1】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を
表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【化2】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【化3】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である請求項1ないし4に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
上記クリヤ塗料(Z)が、
亜鉛化合物及びアミジン化合物からなる有機金属触媒(M)、ならびに
β−ジケトン類、β−ケト酸エステル類、マロン酸エステル類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれる少なくとも1種のブロック剤(N)をさらに含有し、
有機金属触媒(M)の量が(K)成分;(L1)成分、(L2)成分、及び(L3)成分から選ばれる少なくとも1種;(PI)成分の総量に対して、0.05〜5質量%、
であることを特徴とする請求項3に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
ブロック剤(N)の量が(K)成分;(L1)成分、(L2)成分、及び(L3)成分から選ばれる少なくとも1種;(PI)成分の固形分総量に対して0.7〜25質量%
であることを特徴とする請求項6に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物が、金属材料とプラスチック材料とを組み付けてなる被塗物である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連分野の相互参照)
本願は、2013年12月11日に出願した特願2013-255844号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、自動車車体は、ボディを形成する金属部材とバンパーなどのプラスチック部材とを有する。
【0004】
かかる自動車車体の塗装においては、従来、金属部材とプラスチック部材、それぞれの部材に適した別々の塗料及び別々の塗装工程で塗装し、その後、プラスチック部材を金属部材に装着するという工程が広く採用されている。
【0005】
しかし近年、自動車車体の製造工程における設備コストの低減や、金属部材とプラスチック部材との色調を一致させるために、プラスチック部材を金属部材に装着した状態で塗装する方法が求められている。
【0006】
例えば特許文献1には、金属鋼板にポリプロピレン樹脂部材を組み付けた自動車ボデーの塗装方法が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1で開示されている中塗り塗料には導電性がないために、ポリプロピレン部材に対して導電性プライマー塗料を塗布せねばならない。つまり、特許文献1では、ポリプロピレン部材に対しては、順に導電性プライマー塗料→中塗り塗料→上塗り塗料が塗装され、金属部材に対しては、順に中塗り塗料→上塗り塗料が塗装されている。すなわちプラスチック部材と金属部材とをすべて同じ塗料及び同じ塗装工程で塗装しているのではないため、コスト低減や色調一致の点において十分ではない。
【0008】
特許文献2には特定のアニオン性ウレタン樹脂エマルション及び特定のウレタン樹脂を含有する水性塗料組成物が開示されている。しかし当該塗料を金属部材及びプラスチック部材に塗装した場合、耐チッピング性や光線透過率は問題なくても、水性導電プライマーと比べてプラスチック部材に対する付着性が十分であるとは言い難い。
【0009】
特許文献3には水性ポリオレフィン系樹脂(A)、水性ポリウレタン樹脂及び水性アクリル樹脂より選ばれる少なくとも1種の水性樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)、ならびに架橋剤(D)を特定の割合で含んでなる水性プライマー塗料組成物が開示されている。しかし当該塗料を金属部材及びプラスチック部材に塗装した場合、プラスチック部材に対する付着性は問題なくても、水性中塗り塗料と比べて耐チッピング性や光線透過率が十分であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−213692号公報
【特許文献2】特開2005−330339号公報
【特許文献3】WO2007/66827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこれらの点を考慮してなされたものであり、金属部材及びプラスチック部材に対して優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成できる複層塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、被塗物上に水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装する3コート1ベーク方式の複層塗膜形成方法において、水性第1着色塗料(X)として、非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)、特定の水性ポリウレタン樹脂(B)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)及び、導電性顔料(D)を含有する塗料を用い、該水性第1着色塗料(X)を塗装し、硬化させて得られる厚さが5μmの硬化塗膜の波長360〜420nmにおける平均光線透過率が1%未満であることを特徴とする複層塗膜形成方法により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の複層塗膜形成方法を提供するものである。
項1.
(1) 金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して未硬化の第1着色塗膜を形成する工程、
(2) 工程(1)で得られた未硬化の第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装して未硬化の第2着色塗膜を形成する工程、
(3) 工程(2)で得られた未硬化の第2着色塗膜上にクリヤ塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤ塗膜を形成する工程、ならびに
(4) 工程(1)〜(3)で形成された未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤ塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程、
を順次行なう複層塗膜形成方法であって、
上記水性第1着色塗料(X)が、非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)、酸価が1〜30mgKOH/g、20℃の温度で造膜するまでの時間が5〜20分間である水性ポリウレタン樹脂(B)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)、及び導電性顔料(D)を含有し、
水性第1着色塗料(X)を塗装し、硬化させて得られる厚さが5μmの硬化塗膜の波長360〜420nmにおける平均光線透過率が1%未満
であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、プライマーを使用せずとも金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、単数形(a, an, the)は、本明細書で別途明示がある場合又は文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数と複数を含むものとする。
【0017】
工程(1)
本発明の工程(1)においては、金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物上に、水性第1着色塗料(X)が塗装される。水性第1着色塗料(X)は特には金属材料及びプラスチック材料に塗装される。被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電化製品の外板部等を挙げることができる。
【0018】
金属部材としては、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼及び亜鉛合金(例えば、Zn−Al、Zn−Ni及びZn−Fe等)メッキ鋼等が挙げられる。
【0019】
上記金属部材はその表面に、リン酸塩処理、クロメート処理及び複合酸化物処理等の表面処理を施したものであってもよく、さらにその上に下塗り塗料による下塗り塗膜を形成したものであってもよい。下塗り塗料としては例えば電着塗料が挙げられ、そのなかでもカチオン性電着塗料が好ましい。
【0020】
プラスチック部材の材質としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数2〜10のオレフィン類の1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなるポリオレフィンが特に好適であるが、それ以外に、ポリカーボネート、ABS樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドなども挙げられる。これらプラスチック部材としては、例えば、バンパー、スポイラー、グリル、フェンダーなどの自動車外板部;家庭電化製品の外板部などが挙げられる。これらのプラスチック部材には、本発明の水性第1着色塗料(X)の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行なっておくことができる。
【0021】
上記金属部材とプラスチック部材とは既知の方法により組み付けることができる。
【0022】
水性第1着色塗料(X)
上記金属材料及びプラスチック材料を含有する被塗物上に塗装される水性第1着色塗料(X)としては、非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)、特定の水性ポリウレタン樹脂(B)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)、及び導電性顔料(D)を含有するものである。
【0023】
また、水性第1着色塗料(X)を塗装し、硬化させて得られる厚さが5μmの硬化塗膜の波長360〜420nmにおける平均光線透過率は1%未満である。
【0024】
非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)
非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィン分子を主骨格とし、その分子中にカルボキシル基などの親水性基を導入してなるものであり、通常、不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)が好適である。
【0025】
不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、通常、ポリオレフィンに、不飽和カルボン酸もしくは酸無水物を、それ自体既知の方法でグラフト共重合することにより得ることができる。変性に使用し得る不飽和カルボン酸もしくは酸無水物としては、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1個の重合性二重結合を含有し且つ塩素を含まない炭素数が3〜10の脂肪族カルボン酸又はその無水物が包含され、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられ、中でも、特に、マレイン酸及び無水マレイン酸が好適である。ポリオレフィンに対する該不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物によるグラフト共重合量は、変性ポリオレフィンに望まれる物性などに応じて変えることができるが、一般には、ポリオレフィンの固形分重量を基準にして0.5〜4重量%、好ましくは1〜3重量%、さらに好ましくは1.2〜2.8重量%の範囲内が好適である。
【0026】
一方、変性に供されるポリオレフィンには、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10のオレフィンの1種もしくは2種以上を(共)重合せしめてなる塩素化されていないポリオレフィンが包含され、特に、プロピレンを重合単位として含有するものが特に好適である。変性ポリオレフィン中におけるプロピレン単位の重量分率は、他の成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの観点から、一般に0.5〜1、特に0.7〜0.99、さらに特に0.8〜0.99の範囲内にあるものが好適である。
【0027】
上記ポリオレフィンとしては、塩素化されていないそれ自体既知のものを特に制限なく使用することができるが、得られるポリオレフィンの分子量分布が狭く且つランダム共重合性等にも優れている等の点から、重合触媒としてシングルサイト触媒を用いてオレフィンを(共)重合することにより製造されるものが好適である。シングルサイト触媒は、活性点構造が均一(シングルサイト)な重合触媒であり、該シングルサイト触媒の中でも特にメタロセン系触媒が好ましい。該メタロセン系触媒は、共役五員環配位子を少なくとも1個有する周期律表の4〜6族又は8族の遷移金属化合物や3族の希土類遷移金属化合物であるメタロセン(ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体及びその誘導体)と、これを活性化するアルミノキサンやボロン系等の助触媒、さらにトリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とを組合せることにより調製することができる。オレフィンの(共)重合は、それ自体既知の方法に従い、例えば、プロピレンやエチレン等のオレフィンと水素を反応容器に供給しながら連続的にアルキルアルミニウムとメタロセン系触媒を添加することにより行うことができる。
【0028】
上記の不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、さらにアクリル変性されていてもよい。該アクリル変性に使用し得るアクリル系不飽和モノマーとしては、塩素を含まないもの、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C20アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのなどの(メタ)アクリル酸のC1〜C21ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのその他のアクリル系モノマーやさらにスチレンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0029】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0030】
上記ポリオレフィンのアクリル変性は、例えば、まず、前述の如くして製造される不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する塩素を含まないアクリル系不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなどを反応させてポリオレフィンに重合性不飽和基を導入し、次いで、該重合性不飽和基が導入されたポリオレフィンに上記アクリル系不飽和モノマーを単独でもしくは2種以上組合せて(共)重合させることにより行うことができる。ポリオレフィンのアクリル変性における上記アクリル系不飽和モノマーの使用量は、変性ポリオレフィンに望まれる物性などに応じて変えることができるが、他の成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの点から、一般には、得られる不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の固形分重量を基準にして30重量%以下、特に0.1〜20重量%、さらに特に0.15〜15重量%の範囲内とすることが望ましい。
【0031】
上記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、さらに、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物で変性されていてもよい。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0032】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、通常400〜3,000、好ましくは500〜2,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。該数平均分子量が400より小さいと、親水基としての効果を十分発揮することができず、耐水性に悪影響を及ぼす可能性があり、一方、3,000より大きいと、室温において固形化し溶解性が悪くなり、取り扱いにくくなる可能性がある。
【0033】
前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、他の成分との相溶性、形成塗膜のプラスチック部材との付着性や上塗り塗膜層との層間付着性などの点から、融点が120℃以下、好ましくは60〜110℃、さらに好ましくは70〜100℃の範囲内にあり、そして重量平均分子量(Mw)が10,000〜230,000、好ましくは50,000〜200,000、さらに好ましくは60,000〜150,000の範囲内にあることが望ましい。
【0034】
また、前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、形成塗膜のプラスチック部材に対する付着性や上塗り塗膜層との層間付着性などの点から、一般に、融解熱量が1〜50mJ/mg、特に2〜50mJ/mgの範囲内にあることが望ましい。
【0035】
ここで、前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の融点及び融解熱量は、示査走査熱量測定装置「DSC−5200」(セイコー電子工業社製、商品名)により、変性ポリオレフィン20mgを用い、−100℃から150℃まで昇温速度10℃/分にて熱量を測定することにより得られたものである。前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の融点の調整は、ポリオレフィンのモノマー組成、特にα−オレフィンモノマーの量を変化させることにより行なうことができる。また、融解熱量が求め難い場合には、測定試料を一旦120℃まで加熱した後、10℃/分で室温まで冷却してから、2日以上静置し、上記の方法で熱量を測定することができる。
【0036】
また、前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値であり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ装置として「HLC/GPC150C」(Waters社製、60cm×1)及び溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、カラム温度135℃、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対しポリオレフィン5mgの溶液濃度となるようにして140℃で1〜3時間溶解することにより調製した。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィのためのカラムとしては「GMHHR−H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を使用することができる。
【0037】
さらに、前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)は、他の成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの点から、一般に、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.5〜7.0、好ましくは1.8〜6.0、さらに好ましくは2.0〜4.0の範囲内にあることが望ましい。
【0038】
前記非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)は、以上に述べた不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散することによって水分散化できるものであり、通常、不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)中のカルボキシル基の一部もしくは全部をアミン化合物で中和するか及び/又は乳化剤で水分散化することができる。水分散性向上の点からは、中和と乳化剤での水分散化とを併用することが望ましい。
【0039】
中和に使用するアミン化合物として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミン等が挙げられる。これらのアミン化合物を使用する場合のその使用量は、不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜1.0モル当量の範囲内であることが好ましい。
【0040】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤等が挙げられ、さらに1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤などを使用することもできる。これらの乳化剤はそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0041】
上記の乳化剤は、通常、前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の固形分100重量部に対して1〜20重量部の範囲内で使用することができる。
【0042】
前記不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の乳化方法は特に制限されず、例えば転相乳化、D相乳化、強制乳化、ゲル乳化、自己乳化、反転乳化、高圧乳化等の既知の方法を採用できる。なかでも、得られる塗膜の外観及び耐水性の観点から、自己乳化による方法が好適である。
【0043】
また、上記の如くして得られる不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の水性分散物は、水分散された不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィン(a)の存在下に、アクリル変性の説明で列記したようなアクリル系不飽和モノマーを乳化重合することにより、さらにアクリル変性された不飽和カルボン酸もしくは酸無水物変性ポリオレフィンを含有する非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)とすることもできる。
【0044】
上記非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%、さらに好ましくは25〜50質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0045】
水性ポリウレタン樹脂(B)
水性ポリウレタン樹脂(B)は、水を主たる溶媒もしくは分散媒とする水性媒体中に分散することができるポリウレタン樹脂を意味し、水性媒体中における形態としては、水溶性タイプ、コロイダルディスパーションタイプ、エマルションタイプ及びスラリータイプのいずれであってもよいが、コロイダルディスパーションタイプもしくはエマルションタイプであることが望ましい。
【0046】
上記水性ポリウレタン樹脂(B)としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等のポリオールや低分子量の水酸基含有化合物とポリイソシアネートとを反応させることにより得られるポリウレタンを、さらに任意選択でジオール、ジアミン等の1分子中に少なくとも2個の活性水素をもつ低分子量化合物である鎖伸長剤の存在下で鎖伸長することにより得られるものが好適であり、それは水性媒体中に安定に分散もしくは溶解させて使用することができる。
【0047】
上記ポリオール成分としては、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点からポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが特に好ましい。
【0048】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)の製造に使用される上記ポリエステルポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオールとアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸とを反応させることにより得られるポリエステルポリオール;該脂肪族ジオールとテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とを反応させることにより得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどのジオールとジメチルカーボネートなどのカーボネート類を反応させることにより得られるポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどのような、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを開環重合させることにより得られるポリアルキレングリコールなどが挙げられる。また、上記ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族及び脂環族のジイソシアネート、並びにこれらのイソシアヌレート環付加物などが挙げられる。上記ポリイソシアネート成分としては、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から、なかでもイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0049】
さらに、鎖伸長剤としてのジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジオールなどが挙げられ、ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミンなどが挙げられる。
【0050】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)を水中に安定に分散もしくは溶解させる方法としては、例えば以下の方法を利用することができる。
(1)ポリウレタンの製造原料としてジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ジオールを使用することにより、ポリウレタンにカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基の一部又は全部を中和することによりポリウレタンに親水性を付与し、自己乳化により水中に分散又は溶解する方法。
(2)ポリウレタンの製造原料であるポリオールとしてポリエチレングリコールのごとき親水性ポリオールを使用して水に可溶なポリウレタンを製造し、それを水中に分散又は溶解する方法。
(3)反応の完結したポリウレタン又は末端イソシアネート基をオキシム、アルコール、フェノール、メルカプタン、アミン、重亜硫酸ソーダ等のブロック剤でブロックしたポリウレタンをノニオン性及び/又はカチオン性乳化剤と機械的せん断力を用いて強制的に水中に分散する方法。
(4)末端イソシアネート基をもつウレタンプレポリマーを水/乳化剤/鎖伸長剤と混合し、機械的せん断力を用いて分散化と高分子量化を同時に行なう方法。
【0051】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)としては、単一の製造方法で得られたものに限定されず、各々の方法によって得られたポリウレタンの混合物も使用することができる。
【0052】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から酸価が1〜30mgKOH/g、好ましくは3〜25mgKOH/g、さらに好ましくは5〜20mgKOH/gの範囲内である。
【0053】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)は、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から20℃の温度で造膜するまでの時間が5〜20分間、好ましくは10〜20分間、さらに好ましくは12〜18分間である。
【0054】
ここで、造膜するまでの時間とは、水性ポリウレタン樹脂が連続膜を作るのに要する時間をいう。水性ポリウレタン樹脂が造膜するまでの時間は以下のようにして測定したものである。
【0055】
室温20℃、湿度60%雰囲気下で、固形分が28%となるように調整した水性ポリウレタン樹脂溶液を、ウエット膜厚が40μmとなるようにバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布した。塗布した直後を時間測定の起点とし、一定時間ごとに塗膜上1cmの高さからイオン交換水をスポイトを用いて0.3mL滴下し、滴下直後から1秒間における水滴の直径の変化が1mm以下となった時を終点としたときの起点から終点までの時間を「水性ポリウレタン樹脂が造膜するまでの時間」とする。
【0056】
前記水性ポリウレタン樹脂(B)は、水性媒体中における平均粒子径が70〜250nm、好ましくは80〜230nm、さらに好ましくは100〜200nmであることが得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0057】
本明細書において、平均粒子径は、動的光散乱法粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「サブミクロン粒子アナライザー N5」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0058】
水性第1着色塗料(X)において前記水性ポリウレタン樹脂(B)の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0059】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基がノニオン性親水基で修飾され、残りの一部又は全部のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されている化合物である。
【0060】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)は、既知の方法で得ることができる。例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基に、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)及びブロック剤(c3)を反応させることによってノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物を得ることができる(以下、このようにして得られたノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物を「(C1)」と称す)。
【0061】
上記ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基と、上記ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)及びブロック剤(c3)とを反応させる場合、該ポリイソシアネート化合物(c1)、親水基を有する活性水素含有化合物(c2)及びブロック剤(c3)の反応の順序は、特に限定されない。具体的には、ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基の一部に親水基を有する活性水素含有化合物(c2)を反応させた後、残りのイソシアネート基をブロック剤(c3)でブロックする方法、ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基の一部をブロック剤(c3)でブロックした後、残りのイソシアネート基に親水基を有する活性水素含有化合物(c2)を反応させる方法ならびにポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基に親水基を有する活性水素含有化合物(c2)及びブロック剤(c3)を同時に反応させる方法等が挙げられる。
【0062】
ポリイソシアネート化合物(c1)
ポリイソシアネート化合物(c1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0063】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0064】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0065】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0066】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0068】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、前記ポリイソシアネート化合物(c1)としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の加熱時の黄変が発生しにくいことから、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。なかでも形成される塗膜の柔軟性向上の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がさらに好ましい。
【0069】
また、前記ポリイソシアネート化合物(c1)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
【0070】
また、前記ポリイソシアネート化合物(c1)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
【0071】
上記ポリイソシアネート化合物(c1)は、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物を含有する組成物と他の塗料成分との相溶性の観点から、数平均分子量が300〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜8,000の範囲内であることがより好ましく、500〜2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0072】
また、上記ポリイソシアネート化合物(c1)は、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の反応性及び該ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子中の平均イソシアネート官能基数が2〜100の範囲内であることが好ましい。下限としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の反応性を高める観点から3がより好ましい。上限としては、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の製造時にゲル化を防ぐ観点から20がより好ましい。
【0073】
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性の観点から、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物が好ましい。
【0074】
上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、3個以上、好ましくは5〜100個、より好ましくは8〜45個の連続したオキシエチレン基を有することが好適である。
【0075】
また、上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、連続したオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。該オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、得られるブロックポリイソシアネート化合物含有組成物の水分散後の貯蔵安定性の観点から、20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0076】
また、前記ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物は、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、数平均分子量が200〜2,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量の下限としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性の観点から、300がより好ましく、400がさらに好ましい。上限としては、本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の耐水性の観点から、1,500がより好ましく、1,200がさらに好ましい。
【0077】
前記ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)などのω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
【0078】
なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
【0079】
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、前記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
【0080】
ポリイソシアネート化合物(c1)中の一部のイソシアネート基と、上記ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)を反応させる場合、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の付着性、平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、ポリイソシアネート化合物(c1)とノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の硬化性及び本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性ならびに本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の付着性、平滑性、鮮映性及び耐水性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
【0081】
ブロック剤(c3)
ブロック剤としては例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、カルバミン酸系、アミン系、イミン系等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。より具体的なブロック剤を下記に示す。
(1)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等、
(2)アルコール系;エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等、
(3)活性メチレン系;マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸エステル等、
(4)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等
(5)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(6)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(7)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(8)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(9)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(10)カルバミン酸系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等、
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
【0082】
ブロック剤(c3)によるイソシアネート基のブロック化反応は、任意選択で反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、例えば金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が良い。これらのうち、オニウム塩としてはアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が好適である。該反応触媒の使用量は、通常、ポリイソシアネート化合物(c1)及びブロック剤(c3)の合計固形分質量を基準として、10〜10,000ppmの範囲内であることが好ましく、20〜5,000ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0083】
また、上記ブロック剤(c3)によるイソシアネート基のブロック化反応は、0〜150℃で行うことができ、溶媒を用いても良い。この場合、溶媒としては非プロトン性溶剤が好ましく、特に、エステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等が好ましい。反応が目的どおり進行したならば酸成分を添加することで、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
【0084】
ブロック剤(c3)によるイソシアネート基のブロック化反応において、ブロック剤(c3)の使用量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基1モルに対して0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2モル用いることが好適である。また、ポリイソシアネート化合物(c1)中のイソシアネート基と反応しなかったブロック剤は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
【0085】
なかでも、本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の低温硬化性の観点から、ブロック剤(c3)が、活性メチレン系であることが好ましい。
【0086】
本発明の水性第1着色塗料(X)の安定性の観点からノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の、特に好ましい形態としては、下記一般式(IV)
【0087】
【化1】
【0088】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)と、下記一般式(V)
【0089】
【化2】
【0090】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)とを挙げることができる。
【0091】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)は、前記一般式(IV)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0092】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記ブロック剤(c3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系のブロック剤化合物を使用できる点から、Rが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、Rは炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性、ならびに本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点からRはイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0093】
上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(c1)及びノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)と、ブロック剤(c3)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得ることができる。
【0094】
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
【0095】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)は、前記一般式(V)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0096】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記ブロック剤(c3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系のブロック剤化合物を使用できる点から、R及びRが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、R及びRは炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の貯蔵安定性、本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、R及びRはイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0097】
上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(c1)及びノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(c2)と、ブロック剤(c3)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステル又は炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させることによって得ることができる。なかでも、ブロック剤(c3)として炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルを用いて反応させて得ることが好ましい。
【0098】
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
【0099】
上記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
【0100】
本発明では特に水中での安定性の点から、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)として、上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)にさらに2級アルコール(c4)を反応させることによって得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(以下、このようにして得られたノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物を「(C2)」と称す)を使用することが好ましい。
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)は、例えば、上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)と、下記一般式(VI)で示される2級アルコール(c4)
【0101】
【化3】
【0102】
〔式(VI)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
とを反応させることによって、得ることができる。
【0103】
2級アルコール(c4)
2級アルコール(c4)は、前記一般式(VI)で示される化合物である。なかでも、前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)と上記2級アルコール(c4)との反応性を高める観点から、Rはメチル基であることが好ましい。また、R、R及びRは、それぞれ炭素数が多いと、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、R及びRはメチル基であることが好ましい。
【0104】
上記2級アルコール(c4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)及び上記2級アルコール(c4)の反応後に、未反応の2級アルコール(c4)の一部又は全部を蒸留除去する際に、該2級アルコール(c4)の除去が比較的容易であることから、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールがより好ましい。
【0105】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)は、本発明の水性第1着色塗料(X)の安定性の観点から特に好ましい形態としては下記化合物(C2−1)及び(C2−2)を挙げることができる。
【0106】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2−1)
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2−1)は、具体的には、例えば、前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の説明において記載した下記一般式(IV)
【0107】
【化4】
【0108】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)と、上記2級アルコール(c4)とを反応させることによって得ることができる。
【0109】
この場合、上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方が、下記一般式(VII)
【0110】
【化5】
【0111】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0112】
また、この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0113】
【化6】
【0114】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
又は下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0115】
【化7】
【0116】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
を有する。
【0117】
上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)及び2級アルコール(c4)の反応は、例えば、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)中のRの少なくとも一方に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物を得る方法が好ましい。
【0118】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、任意選択で減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎるとノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−1)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の分解劣化が激しくなり、硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0119】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2−2)
また、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2−2)は、具体的には、例えば、前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の説明において記載した下記一般式(V)
【0120】
【化8】
【0121】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有する、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)と、前記2級アルコール(c4)とを反応させることによって得ることができる。
【0122】
この場合、上記親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)中のブロックイソシアネート基におけるRは、下記一般式(VII)
【0123】
【化9】
【0124】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0125】
この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)は、下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0126】
【化10】
【0127】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
を有する。
【0128】
前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)及び2級アルコール(c4)の反応は、例えば、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)中のブロックイソシアネート基におけるRを、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)中のRに由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基を有するノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2−2)を得る方法が好ましい。
【0129】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、任意選択で減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが好適である。上記温度が低すぎるとノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1−2)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の分解劣化が激しくなり硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0130】
また、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の製造における、前記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)及び2級アルコール(c4)の配合割合は、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)の反応性及び製造効率の観点から、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(c4)が5〜500質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。5質量部未満では、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)及び2級アルコール(c4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、500質量部を超えると生成するノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の濃度が低くなりすぎ製造効率が低下する場合がある。
【0131】
また、上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)及び2級アルコール(c4)の反応においては、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C2)の分子量を調整するために、該ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C1)及び2級アルコール(c4)に、ポリオール化合物を加えてから前記除去操作を行ってもよい。
【0132】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)の中でも化合物(C2−1)や化合物(C2−2)が特に水中での安定性に優れる理由としては、ノニオン性親水基を有するため、水中で比較的安定に存在し、さらに、分岐構造を有する炭化水素基を有するためにブロックイソシアネート基が低極性化し加水分解しにくくなるためと推察される。
【0133】
一実施形態において、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0134】
【化11】
【0135】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を
表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0136】
【化12】
【0137】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0138】
【化13】
【0139】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0140】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)の数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性、本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の平滑性、鮮映性、付着性、耐水性及び耐チッピング性等の観点から、600〜30,000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量の上限は、他の塗料成分との相溶性ならびに本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、10,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。また、下限は、本発明の水性第1着色塗料(X)によって形成される塗膜の付着性、耐水性及び耐チッピング性の観点から、900がより好ましく、1,000がさらに好ましい。
【0141】
また、上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)は、界面活性剤と予め混合してもよい。この場合、本発明の水性第1着色塗料(X)の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0142】
本発明の水性第1着色塗料(X)において上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)の含有量は、第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として5〜40質量%、好ましくは7〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0143】
導電性顔料(D)
導電性顔料(D)としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫などを被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫などの導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電性カーボンを好適に使用することができる。
【0144】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)において上記導電性顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として0.5〜40質量%、好ましくは1〜35質量%、さらに好ましくは3〜30質量%であることが、得られる塗膜の導電性及び光線透過率の点から好適である。
【0145】
一実施形態において、本発明において使用される水性第1着色塗料(X)は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として10〜60質量%の非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)と、10〜50質量%の水性ポリウレタン樹脂(B)と、5〜40質量%のノニオン性親水基を有するブロックイソシアネート化合物(C)と、0.5〜40質量%の導電性顔料(D)とを含有する。
【0146】
その他の成分
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)は、前記非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)、特定の水性ポリウレタン樹脂(B)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)、導電性顔料(D)を必須成分とするものであり、さらに適宜、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、成分(C)以外のブロックポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂及びエポキシ樹脂等の樹脂成分を含有することができる。
【0147】
水酸基含有アクリル樹脂は、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の水酸基含有アクリル樹脂を使用することができる。水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、溶液重合などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0148】
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;上記多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物などが挙げられる。
【0149】
水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーは、水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマーの具体例を以下に列挙する。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート: 例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー: 例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物: 例えば、N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) リン酸基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等。
(xi) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xii) 含窒素重合性不飽和モノマー: 例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xiii) 重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー: 例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’ −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’ −ヒドロキシ−5’ −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー: 例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xx) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー: 例えば、無水マレイン酸等、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0150】
水酸基含有アクリル樹脂は通常、水酸基価が10〜150、特に50〜100、酸価は60以下、特に50以下、重量平均分子量は1000〜100000、特に2000〜60000の範囲内が適している。
【0151】
なお、本明細書において、前記水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量ならびに後述の水酸基含有ポリエステル樹脂及び後述のメラミン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0152】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)において、水酸基含有アクリル樹脂を使用する場合のその使用量は、第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として5〜35質量%、好ましくは10〜25質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0153】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、従来から水性塗料に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性の水酸基含有ポリエステル樹脂を使用することができ、例えば、多塩基酸と多価アルコールとをそれ自体既知の方法で、水酸基過剰でエステル化反応せしめることによって得ることができる。多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ピロメリット酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、ハイミック酸、コハク酸、ヘット酸及びこれらの無水物などが挙げられる。多価アルコールは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。水酸基の導入は、例えば、1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールを併用することによって行なうことができる。また、ポリエステル樹脂として、大豆油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの脂肪酸などで変性された脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用できる。また、ポリエステル樹脂は、ブチルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、ネオデカン酸グリシジルエステルなどのエポキシ化合物で変性されていてもよい。
【0154】
水酸基含有ポリエテル樹脂は、通常、水酸基価が10〜160mgKOH/g、特に50〜85mgKOH/gの範囲内、酸価が50mgKOH/g以下、特に1〜30mgKOH/gの範囲内、数平均分子量が1,000〜20,000、特に1,300〜10,000の範囲内が好適である。
【0155】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)において、水酸基含有ポリエステル樹脂を使用する場合のその使用量は、第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分量を基準として2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であることが、得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好適である。
【0156】
成分(C)以外のブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加させたものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、フェノール系、ラクタム系、アルコール系、エーテル系、オキシム系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、ピラゾール系等のブロック剤が挙げられる。
【0157】
メラミン樹脂としては、特に、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルなどのアルキル基でエーテル化されたアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。これらのメラミン樹脂はさらにメチロール基、イミノ基などを有していてもよい。メラミン樹脂は、通常、500〜5,000、特に800〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することが望ましい。
【0158】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)は、さらに、着色顔料、体質顔料、有機溶剤、シランカップリング剤、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、造膜助剤などの塗料用添加剤などを含有することができる。
【0159】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーン、アルミペーストなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0160】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として、1〜180質量%、好ましくは2〜140質量%、さらに好ましくは4〜130質量%の範囲内であることが、得られる塗膜の光線透過率及び仕上がり性の観点から好適である。
【0161】
体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0162】
本発明に使用される水性第1着色塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の樹脂固形分質量総量を基準として、1〜150質量%、好ましくは5〜130質量%、さらに好ましくは10〜110質量%の範囲内であることが、得られる塗膜の光線透過率及び耐チッピング性の観点から好適である。
【0163】
有機溶剤としては、例えば、前述の樹脂成分を混合して溶解乃至分散できるものであれば特に制限されず、例えば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系
溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の溶剤が挙げられる。
【0164】
シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0165】
水性第1着色塗料(X)の固形分濃度は、通常20〜70質量%であるのが好ましく、30〜60質量%であるのがより好ましく、35〜60質量%であるのが更に好ましい。
【0166】
本発明において使用される水性第1着色塗料(X)の塗装は、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、任意選択で、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。水性第1着色塗料(X)の塗布量は、硬化塗膜に基づく膜厚が一般に1〜20μm、特に3〜15μmになる量とすることが好ましい。水性第1着色塗料(X)をかくの如く塗装し、第1着色塗膜を形成することができる。
【0167】
形成される塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性及び耐候性の観点から、水性第1着色塗料(X)を塗装し、硬化させて得られる硬化塗膜は、厚さが5μmの場合の波長360〜420nmにおける平均光線透過率が、1%未満、特に0.5%未満であることが好適である。平均光線透過率は、硬化塗膜の厚さ及び平均光線透過率に含有される顔料の量等を調節することにより設定可能である。
【0168】
ここで、上記厚さが5μmの硬化塗膜の波長360〜420nmにおける平均光線透過率は以下の方法により測定することができる。
【0169】
まず、ポリテトラフルオロエチレン板上に、硬化したときの塗膜の厚さが5μmとなるように、水性第1着色塗料(X)を塗装し硬化させる。次に、硬化させて得られた塗膜を剥離して回収し、分光光度計を用いて、波長360〜420nmの範囲における平均光線透過率を測定する。上記分光光度計としては、例えば、「SolidSpec−3700」(商品名、島津製作所製)などを使用することができる。
【0170】
工程(2)
上記第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
【0171】
上記第1着色塗膜の固形分含有率は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、例えば、予備加熱(プレヒート)、エアブロー等を行なうことにより調整することができるが、本発明では、水性第1着色塗料(X)の塗装後に予備加熱しなくても、耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性に優れた複層塗膜を得ることができる。予備加熱をしない場合、水性第1着色塗料(X)の塗装後に室温(約20〜約35℃)で30秒〜5分間程度静置(セッティング)することが好ましい。これによって第1着色塗膜と第2着色塗膜との混層を防止することができる。
【0172】
予備加熱をする場合には該予備加熱は、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で約50〜約110℃、好ましくは約60〜約80℃の温度で1〜30分間程度直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。
【0173】
また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0174】
水性第2着色塗料(Y)
本発明に使用される水性第2着色塗料(Y)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。
【0175】
水性第2着色塗料(Y)は、一般に、基体樹脂、架橋剤及び顔料等を水性媒体中に混合分散することにより調製することができる。
【0176】
基体樹脂としては、例えば、カルボキシル基及び水酸基を含有する樹脂を使用することが好ましい。基体樹脂の種類としてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
【0177】
カルボキシル基及び水酸基含有樹脂中のカルボキシル基は中和されていることが好ましい。該中和は、架橋剤等と混合する前に、塩基性物質を用いて行うことが好ましい。
【0178】
中和に用いられる塩基性物質としては、例えば、アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−又はジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;N,N−ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0179】
中和に用いられる塩基性物質の使用量は、カルボキシル基及び水酸基含有樹脂中のカルボキシル基を基準にして、通常0.1〜1.5当量、特に0.3〜1.2当量の範囲内であることが好ましい。
【0180】
基体樹脂は、水分散性等の観点から、通常10〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。また、基体樹脂は、硬化性等の観点から、通常10〜150mgKOH/g、特に30〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
【0181】
基体樹脂は、さらに、耐侯性等の観点から、アクリル樹脂においては、通常3000〜100000、特に5000〜50000、そして、ポリエステル樹脂においては、通常500〜50000、特に3000〜30000の範囲内の数平均分子量を有することが好ましい。
【0182】
基体樹脂としてカルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂を用いる場合、分散安定剤の存在下で乳化重合によって製造されるカルボキシル基及び水酸基含有アクリル樹脂も使用することができる。
【0183】
上記乳化重合により製造されるアクリル樹脂の場合、通常100000以上、特に200000〜2000000の範囲内の数平均分子量を有するものが好ましい。
【0184】
乳化重合で用いる分散安定剤としては、ノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤のほか、酸価が10〜150mgKOH/g程度で且つ数平均分子量が5000〜30000程度のアクリル樹脂等の水性樹脂を好適に使用することができる。
【0185】
乳化重合はそれ自体既知の方法で行うことができる。
【0186】
基体樹脂としては、なかでも、カルボキシル基含有不飽和モノマーを共重合成分とする多段重合法により製造されるアクリルエマルションが、塗装作業性に優れた水性第2着色塗料(Y)を得ることができるので好ましい。すなわち、最初にカルボキシル基含有不飽和モノマーを全くもしくは殆ど含まない(通常、全モノマー中3質量%以下)組成のモノマー混合物を用いて重合反応を行い、次いでカルボキシル基含有不飽和モノマーを含有する(通常、全モノマー中5〜30質量%)組成のモノマー混合物を用いて重合反応を行なうことにより得られるアクリルエマルションは、塩基性物質を用いた中和により、粘性発現効果を有しており、耐タレ性等の塗装作業性に優れた水性第2着色塗料(Y)を得ることができるので好ましい。
【0187】
架橋剤としては、例えばメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物、水分散性ブロックポリイソシアネート化合物等の、水酸基と反応し得る架橋剤から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0188】
水性第2着色塗料(Y)における基体樹脂及び架橋剤の配合割合は、両成分の合計固形分量を基準にして、基体樹脂は一般に60〜100質量%、特に65〜95質量%、さらに特に70〜90質量%、架橋剤は一般に0〜40質量%、特に5〜35質量%、さらに特に10〜30質量%の範囲内であるのが好ましい。
【0189】
顔料としては特に制限されるものではなく、例えば、無機系及び有機系顔料の着色顔料、体質顔料及び光輝性顔料等を好適に使用することができる。上記着色顔料としては例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等を挙げることができる。上記体質顔料としては、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等を挙げることができる。上記光輝性顔料としてはアルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等を挙げることができる。
【0190】
顔料の配合量は、基体樹脂及び架橋剤の固形分合計を基準にして、一般に0.1〜200質量%、特に1〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0191】
水性第2着色塗料(Y)には、さらに任意選択で、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、酸化防止剤等を適宜、使用することができる。
【0192】
水性第2着色塗料(Y)の塗装時における不揮発分濃度は、通常15〜65質量%が好ましく、その単独塗膜は不透明又は透明のソリッド調もしくはメタリック調の塗膜であることができる。本明細書において、不透明塗膜とは、塗料単独塗膜の20μmの硬化塗膜における光線透過率が5%未満の塗膜を意味し、透明塗膜とは、20μmの上記硬化塗膜における光線透過率が5%以上の塗膜を意味する。
【0193】
水性第2着色塗料(Y)は、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装等により、任意選択で静電印加を行なって、硬化塗膜に基づく膜厚が一般に5〜30μm、特に10〜25μmになるように塗装することができる。
【0194】
本発明では、第1着色塗膜上に水性第2着色塗料(Y)を塗装し、次いでクリヤ塗料(Z)が塗装されるが、クリヤ塗料(Z)の塗装に先立ち、任意選択で、水性第2着色塗料(Y)を塗装して得られる第2着色塗膜を50〜100℃程度の温度で予備乾燥を行なってもよい。
【0195】
この予備乾燥により、第2着色塗膜中の揮発性成分をある程度揮散させることができる。
【0196】
上記予備乾燥により、塗膜がある程度乾燥固化するので、該第2着色塗膜上にクリヤ塗料(Z)を塗装したときに該塗膜中に含まれる溶媒や低分子樹脂成分等が、第2着色塗膜中に浸透拡散しても、該第2着色塗膜の粘度低下を抑制することができ、光輝性顔料を使用した場合等の光輝性顔料等の再流動を抑制することができ、メタルムラ等の発生を防止することができる。
【0197】
特に、本発明の複層塗膜形成方法が高白色パール調複層塗膜を形成する場合には、第2着色塗料(Y)として、白色顔料を含有する白色ベース塗料と、雲母粉末を含有する干渉パール色ベース塗料とを順次塗装することにより行うことができる。該白色ベース塗料の塗装後は、予備乾燥せず又は50〜100℃程度の温度で予備乾燥を行なってもよく、100〜140℃程度の温度で焼き付けを行なってもよい。
【0198】
工程(3)
上記の如くして水性第2着色塗料(Y)によって形成される水性第2着色塗膜上に、クリヤ塗料(Z)が塗装される。
【0199】
クリヤ塗料(Z)
クリヤ塗料としては、例えば、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分と、有機溶剤や水などとを含有し、さらに、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系或いは水系の熱硬化性塗料であって、形成されるクリヤ塗膜を通して下層塗膜を視認することができる程度の透明性を有するものを用いることができる。
【0200】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の反応性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などの樹脂が挙げられ、特に、水酸基含有アクリル樹脂(K)が好適である。
【0201】
水酸基含有アクリル樹脂(K)
水酸基含有アクリル樹脂(K)は、(k1)水酸基含有重合性不飽和モノマー及び(k2)その他の重合性不飽和モノマーからなるモノマー成分を常法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0202】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)は、1分子中に水酸基と重合性不飽和結合とを各々1個有する化合物である。
【0203】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)としては、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)及び水酸基(2級水酸基を除く)含有重合性不飽和モノマー(k1−2)を挙げることができる。
【0204】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)としては、例えば、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部のアルキル基の炭素数が2〜8、特に3〜6、さらに特に3又は4の2級水酸基を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、カージュラE10、商品名、ヘキシオン・スペシャリティー・ケミカル社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物等を挙げることができる。これらの中でも特に、得られる複層塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の観点から、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0205】
上記モノマー(k1−1)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0206】
水酸基(2級水酸基を除く)含有重合性不飽和モノマー(k1−2)は、1分子中に水酸基(2級水酸基を除く)と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。
【0207】
該モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物(2級水酸基を有するものを除く);ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマー(2級水酸基を有するものを除く)等を挙げることができる。
【0208】
ε−カプロラクトンを開環重合反応させることにより変性した水酸基含有モノマーとしては、市販品を使用することができ、市販品としては、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学(株)製、商品名)等を挙げることができる。
【0209】
上記モノマー(k1−2)は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0210】
その他の重合性不飽和モノマー(k2)は、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)以外のモノマーであり、具体的には、1分子中に1個の重合性不飽和結合を有する化合物である。不飽和モノマー(k2)の具体例を、下記(1)〜(7)に列挙する。
【0211】
(1)酸基含有重合性不飽和モノマー
酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に酸基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物である。該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を使用することができる。
【0212】
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート,tert−ブチル(メタ)アクリレート,2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0213】
上記アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのエステル化物のうち、仕上り外観の向上及び塗膜硬度の両立の観点から、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマー(k2−1)を好適に使用することができる。
【0214】
炭素数6〜20の脂環式炭化水素基の代表例としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基及びトリシクロデカニル基等を挙げることができる。
【0215】
不飽和モノマー(k2−1)の具体例としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等の有橋脂環式炭化水素基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。なかでも特に得られる複層塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の観点から、イソボルニル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0216】
不飽和モノマー(k2−1)を使用する場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して、20〜45質量%、特に30〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0217】
(3)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等をあげることができる。これらのうち好ましいアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとして、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0218】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、水酸基とイソシアネート基との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから硬化性を向上させることができる。
【0219】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して1〜20質量%、特に、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0220】
(4)芳香族系ビニルモノマー
具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0221】
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とすることにより、得られる樹脂のガラス転移温度が上昇し、また、高屈折率で疎水性の塗膜を得ることができることから、塗膜の光沢向上による仕上り外観の向上効果を得ることができる。
【0222】
芳香族系重合性不飽和モノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して5〜30質量%、特に、10〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0223】
(5)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー
グリシジル基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であり、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0224】
(6)重合性不飽和結合含有窒素原子含有化合物
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0225】
(7)その他のビニル化合物
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステル等を挙げることができる。バーサティック酸ビニルエステルとしては、市販品である「ベオバ9」、「ベオバ10」(以上、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を挙げることができる。
【0226】
その他の重合性不飽和モノマー(k2)としては、前記(1)〜(7)で示されるモノマーを1種で、又は2種以上を用いることができる。
【0227】
水酸基含有アクリル樹脂(K)の重量平均分子量は、塗膜の仕上り外観及び硬化性の観点から、5000〜18000、特に、8000〜15000であることが好ましい。
【0228】
水酸基含有アクリル樹脂(K)のガラス転移温度は、塗膜の硬化性及び仕上り外観の観点から、−25〜20℃、特に、−15〜10℃であることが好ましい。
【0229】
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、下記式によって算出することができる。
1/Tg(°K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・
Tg(℃)=Tg(°K)−273
各式中、W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの重量%、T1、T2、・・はそれぞれ単量体のホモポリマーのTg(°K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Second Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値である。
また、モノマーのホモポリマーのTgが明確でない場合のガラス転移温度(℃)は、静的ガラス転移温度とし、例えば示差走査熱量計「DSC−50Q型」(島津製作所製、商品名)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して完全に溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、ガラス転移温度とした。
【0230】
塗膜の仕上り外観向上及びポットライフの観点から、水酸基含有アクリル樹脂(K)中の水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)を50〜100質量%含むことが好ましく、80〜100質量%含むことがより好ましい。
【0231】
また、水酸基含有アクリル樹脂(K)の水酸基価は、硬化性及び仕上り外観の観点から、140〜210mgKOH/gであり、160〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
【0232】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)及びその他の重合性不飽和モノマー(k2)の配合割合は、硬化性及び硬化塗膜の仕上り外観の観点から、全モノマー量に対して、水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1)が好ましくは20〜50質量%程度、さらに好ましくは30〜45質量%程度であり、その他の不飽和モノマー(k2)が、好ましくは50〜80質量%程度、さらに好ましくは55〜70質量%程度である。
【0233】
2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(k1−1)は、塗膜の仕上り外観向上及びポットライフの観点から、水酸基含有アクリル樹脂(K)中のモノマー全量のうち、10〜50質量%含まれることが好ましく、20〜45質量%含まれることがより好ましい。
【0234】
また、水酸基含有アクリル樹脂(K)の酸価は、塗料組成物の硬化性の観点から、0.5〜30mgKOH/g程度、特に1〜20mgKOH/g程度であることが好ましい。
【0235】
上記重合性不飽和モノマー(k1)及び(k2)からなるモノマー混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂(K)を得ることができる。
【0236】
水酸基含有アクリル樹脂(K)は、クリヤ塗料(Z)中の樹脂固形分質量総量を基準として、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%の範囲内である。
【0237】
上記モノマー混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂(K)を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
【0238】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール1000(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。
【0239】
これらの有機溶剤は、1種で又は2種以上を組合せて使用することができるが、アクリル樹脂の溶解性の点から高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが好ましい。また、さらに高沸点の芳香族系溶剤を好適に組合せて使用することもできる。
【0240】
水酸基含有アクリル樹脂(K)の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0241】
水酸基含有アクリル樹脂(K)は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0242】
本発明において使用されるクリヤ塗料(Z)には、水酸基含有アクリル樹脂(K)以外の樹脂も任意選択で併用することができる。具体的には、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(K)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等をあげることができる。なかでも特に得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好ましいものとして、水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)を挙げることができる。
【0243】
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコ−ルとのエステル化反応によって製造することができる。該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などが挙げられ、また、該多価アルコ−ルは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類、及びトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の三価以上のポリオール成分、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0244】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステ)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0245】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0246】
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)は得られる塗膜の耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から直鎖状であることが好ましい。その点から上記多塩基酸としては、アジピン酸が好ましく、上記多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0247】
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)の水酸基価は、好ましくは85〜250mgKOH/g、さらに好ましくは100〜220mgKOH/gの範囲内である。水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)の数平均分子量は、好ましくは500〜2500、さらに好ましくは800〜2000の範囲内である。
【0248】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)は、カーボネート基及び水酸基を分子中にそれぞれ2個以上含むポリカーボネート樹脂である。
【0249】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)は、常法により、公知のポリオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物である。
【0250】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)の原料となるポリオールとしては、ジオール及び3価以上のアルコールを挙げることができる。
【0251】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)の原料となるポリオールのうち、ジオールとしては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等の直鎖状脂肪族系ジオール;2−メチル1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール等の分岐鎖状脂肪族系ジオール;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系ジオール;p−キシレンジオール、p−テトラクロロキシレンジオール等の芳香族系ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系ジオール等を挙げることができる。これらのジオールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0252】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)の原料となるポリオールのうち、3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンの2量体、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの3価以上のアルコールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0253】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)の原料となるカルボニル化剤としては、公知のカルボニル化剤を使用できる。具体的には、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、ホスゲン等を挙げることができ、これらの1種を又は2種以上を組合せて使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0254】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)は、水酸基が2個である水酸基含有ポリカーボネート樹脂(以下、「ポリカーボネートジオール(L2−1)」と呼ぶことがある)を含有することが耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性の点から好ましい。
【0255】
上記ポリカーボネートジオール(L2−1)は、上記カルボニル化剤と反応させるポリオールとして、3価以上のアルコール等の多価アルコールを使用せず、ジオールのみを使用することにより合成することができる。
【0256】
ポリカーボネートジオール(L2−1)のジオール成分としては、通常、炭素数6以上、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜15、さらに好ましくは炭素数6〜12のジオールを用いることができる。
【0257】
炭素数6以上のジオールとしては、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族系ジオール及び炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族系ジオールを挙げることができる。
【0258】
炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環族系ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の、ジオール全体としての炭素数6以上、好ましくは炭素数6〜12の脂環族ジオールを挙げることができる。
【0259】
上記のうち、耐チッピング性の観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0260】
炭素数6以上のアルキレン基を有する脂肪族系ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール等の直鎖状脂肪族系ジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3− プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の分岐鎖状脂肪族系ジオール等の炭素数6以上、好ましくは炭素数6〜10の直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族系ジオールを挙げることができる。
【0261】
上記直鎖状脂肪族系ジオール及び分枝鎖状の脂肪族系ジオールは、これらの一方を用いても、両方を合わせて用いてもよい。
【0262】
上記のうち、耐チッピング性の観点から、直鎖状脂肪族系ジオールが好ましく、特に、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
【0263】
上記水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)は、数平均分子量が好ましくは500〜2500、さらに好ましくは800〜2000であることが耐チッピング性、低温での耐衝撃性等の観点から好適である。
【0264】
(L2)の市販品としては、UM−90、UH−100、UH−200、UC−100(商品名、宇部興産社製)等が挙げられる。
【0265】
水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)
低温での耐衝撃性の観点から、水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)を使用することがより好ましい。
【0266】
水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)は、例えば上記ポリカーボネートポリオール(L2)と環状エステル化合物とを既知の方法で反応させることによって製造される。
【0267】
環状エステル化合物としては、例えばδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−エナラクトン、ξ−カプリロラクトン、β−メチル−γ−バレロラクトンが挙げられ、特に好ましくはε−カプロラクトンである。
上記水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)は、数平均分子量が好ましくは500〜2500、さらに好ましくは800〜2000であることが耐チッピング性、低温での耐衝撃性等の観点から好適である。
【0268】
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)の合計量は、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、好ましくは100質量%以下、より好ましくは10〜50質量%の範囲内である。
【0269】
クリヤ塗料の前記架橋剤としては、基体樹脂の上記の官能基と反応しうる反応性官能基を有する、メラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特に、ポリイソシアネート化合物(PI)が好適である。
【0270】
ポリイソシアネート化合物(PI)
ポリイソシアネート化合物(PI)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物(PI)としては、ポリウレタン製造用として公知のもの、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0271】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、具体的には例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0272】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0273】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0274】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0275】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、アダクト、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等をあげることができる。
【0276】
上記のうち、工業的入手の容易さから、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HMDIということがある)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIということがある)及びこれらの誘導体を特に好適に使用することができる。
【0277】
上記ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0278】
ポリイソシアネート化合物(PI)の含有量は、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、好ましくは200質量%以下、より好ましくは50〜150質量%の範囲内である。
【0279】
クリヤ塗料の硬化触媒としては、公知の硬化触媒、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、ジブチル錫ビス脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどの有機金属化合物;第三級アミン等をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0280】
その中でも、有機金属触媒(M)が好ましい。有機金属触媒(M)は、亜鉛化合物(M−I)及びアミジン化合物(M−II)からなる触媒である。亜鉛化合物(M−I)とアミジン化合物(M−II)とを併用することにより、低温短時間での硬化性に優れ、かつ、形成する塗膜の仕上り外観が良好であり、しかも2液型塗料としてのポットライフをある程度まで維持することが可能となる。
【0281】
これは、亜鉛化合物(M−I)とアミジン化合物(M−II)とからなる触媒が、錯体構造を形成し、アミジン化合物がブロック剤となっており、このブロック剤であるアミジン化合物が低温で解離し、アミジン化合物の解離後は亜鉛化合物本来の低温硬化性に優れる触媒能が活性となることにより、塗料組成物の低温短時間での硬化性とある程度までポットライフを維持することとを両立することが可能となることによるものであると考えている。
【0282】
亜鉛化合物(M−I)としては、例えば、カルボン酸亜鉛塩化合物、アセチルアセトン亜鉛錯体等を挙げることができる。特に、カルボン酸亜鉛塩化合物を好適に使用することができる。
【0283】
カルボン酸亜鉛塩化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0284】
(RCO)Zn (1)
(式中、Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアラルキル基又はアルキルアリール基を表し、nは1以上4以下の値を有する整数である)
より具体的には、例えば、2−エチルヘキサン酸亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0285】
触媒活性に優れ工業的に入手が容易なことからオクチル酸亜鉛を特に好適に使用することができる。
【0286】
アミジン化合物(M−II)は、R−C(=NR)−NRで表される構造を有する有機化合物である。該構造において、炭素(C)原子に、二重結合で窒素原子が1つ、単結合で窒素原子が1つ付いている構造を有している。
【0287】
構造式R−C(=NR)−NR・・・(1)において、
は水素原子、置換されていても良い、炭素原子に結合した有機基、アミン基であり、具体的には、置換されていてもよいヒドロカルビル基又はエーテル化されていてもよいヒドロキシル基を挙げることができる。
【0288】
とRは互いに独立して、水素原子又は炭素原子に結合した有機基、又は互いに結合した構造を有する複素環(1又は2以上のヘテロ原子を持つ、又は、1又は2以上のヘテロ原子を有する結合した2重環を有する)である。
【0289】
は水素原子、置換されていても良い、炭素原子に結合した有機基、エーテル化されていてもよいヒドロキシル基、好ましくは、置換されていてもよい炭素原子数8以上のヒドロカルビル基を挙げることができる。
【0290】
又はRが有機基の場合、それらは例えば1乃至40の炭素原子を有するもの、あるいは、例えば、500〜50000の分子量を有するポリマー基であってよい。
【0291】
、R、R、Rで表される基は、各々互いに独立して、置換基として、アルコール性水酸基を含有することができる。
【0292】
構造式R−C(=NR)−NR・・・(1)で表され、RとRとが結合していないアミジン化合物としては、具体的には、
N’−シクロヘキシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−メチル−N,N−ジ−n−ブチルアセトアミジン、N’−オクタデシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−シクロヘキシル−N,N−ジメチルバレロアミジン、1−メチル−2−シクロヘキシルイミノピロリジン、3−ブチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、N−(ヘキシルイミノメチル)モルホリン、N−(α−(デシルイミノエチル)エチル)ピロリジン、N’−デシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−ドデシル−N,N−ジメチルホルムアミジン、N’−シクロヘキシル−N,N−アセトアミジン等を挙げることができる。
【0293】
また、該アミジン化合物として、R-Rが、アミジン構造中の2つの窒素原子を含む5乃至7員環を形成し、R-R又はR-Rのうちの1つが、アミジン構造中の1つの窒素原子と複数の炭素原子により5乃至9員環を形成した構造を有するアミジン化合物もアミジン化合物(M−II)に包含される。
【0294】
このような構造を有するアミジン化合物としては、具体的には、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ(3.3.0)オクテ−4−エン、2−メチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、2,7,8−トリメチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、2−ブチル−1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)オン−5−エン、1,9−ジアザビシクロ(6.5.0)トリデセ−8−エン等を挙げることができる。
【0295】
また、アミジン化合物として、構造式R−C(=NR)−NR・・・(1)中のRとRが結合した構造を有する複素環化合物、例えば、イミダゾリン、イミダゾール、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリミジン、ピリミジンを挙げることができる。
【0296】
イミダゾール誘導体は一般に下記構造式で表される。
【0297】
【化14】
【0298】
上記において、R、R、R及びRとしては、各々互いに独立して、水素原子、アルキル基又は置換アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基、アラルキル基、シクロアルキル基、複素環、エーテル基、チオエーテル基、ハロゲン、-N(R) 、ポリエチレンポリアミン、ニトロ基、ケト基、エステル基、カルボンアミド基、及びこれら官能基のアルキル置換基を挙げることができる。
【0299】
イミダゾール化合物としては、具体的には、N-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール、4-(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-(tert-ブトキシカルボニル)イミダゾール、イミダゾール-4-プロピオン酸、4−カルボキシイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2-メチル-4-イミダゾールカルボン酸、4−ホルミルイミダゾール、1-(エトキシカルボニル)イミダゾール、プロピレンオキサイドとイミダゾール及び2-メチルイミダゾールとの反応物、1-トリメチルシリルイミダゾール、4-(ヒドロキシメチル)イミダゾール塩酸塩、1-クロロ-2,3-エポキシプロパンとイミダゾールの共重合物、1(p-トルエンスルホニル)イミダゾール、1,1-カルボニルビスイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-2-イミダゾリンピロメリテート、4-(ヒドロキシメチル)イミダゾールピクリン酸塩、2-プロペン酸と4,5-ジヒドロ-2-ノニル-1H-イミダゾール-1-エタノールと2-ヘプチル-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-1-エタノールのジナトリウム塩、1-(シアノエチル)-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾールのギ酸エステル、ナトリウムイミダゾール塩、銀イミダゾール塩等を挙げることができる。
【0300】
上記アミジン化合物は、単独で、又、2種以上併用して使用することができる。
【0301】
具体的には、本発明において、有機金属触媒(M)とは亜鉛錯体であり、該錯体は、例えば、1モルのカルボン酸亜鉛と2モルのアミジン化合物をメタノール等の溶媒中で加熱することにより製造することができる。
【0302】
上記製造において、透明な溶液状態となるまで約50℃で約2時間保持することによって亜鉛錯体を作成することができる。該透明溶液をろ過し乾燥する。
【0303】
アミジン化合物(M−II)と亜鉛化合物(M−I)とのモル比((M−II)のモル数/(M−I)のモル数、の値)は、1.3〜8.0、特に、1.6〜5.0、さらに特に、1.8〜4.0の範囲とすることが好ましい。
【0304】
上記モル比が1.3〜8.0の範囲外であると、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観のいずれかが不十分となる場合がある。
【0305】
(M)成分の量は、低温短時間硬化性、ポットライフ及び仕上り外観の観点から、(K)成分;(L1)成分、(L2)成分、及び(L3)成分から選ばれる少なくとも1種;(PI)成分の総量に対して、0.05〜5質量%、特に0.1〜4質量%、さらに特に0.3〜3質量%の範囲内であることが好ましい。0.05質量%より少ないと低温短時間硬化性が不十分となる場合がある。また、5質量%を超えると、得られる塗膜の仕上り外観が不十分となる場合がある。
【0306】
有機金属触媒(M)は、溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のアルコール類、トルエン、キシレン、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒等の溶媒を挙げることができる。
【0307】
本発明の塗料組成物において、触媒として、有機金属触媒(M)に加えて、必要に応じて、有機金属触媒(M)以外の触媒を使用することができる。
【0308】
上記有機金属触媒(M)以外の触媒としては、ポリウレタン製造用触媒として従来公知の有機金属であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒等を挙げることができる。これらのうちスタナスジオクトエート、ジブチル錫ジラウレートが好ましい。
【0309】
ブロック剤(N)
クリヤ塗料に使用されるブロック剤(N)は、β−ジケトン類、β−ケト酸エステル類、マロン酸エステル類、β位に水酸基を持つケトン類、β位に水酸基を持つアルデヒド類及びβ位に水酸基を持つエステル類から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0310】
具体的には、例えば、β−ジケトン類:アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、β−ケト酸エステル類:アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、マロン酸エステル類:マロン酸エチル、β位に水酸基を持つケトン類:ダイアセトンアルコール、β位に水酸基を持つアルデヒド類:サリチルアルデヒド、β位に水酸基を持つエステル類:サリチル酸メチルなどが挙げられる。
【0311】
上記した中でも、特にポットライフ延長効果が高いことから、β−ジケトン類が好ましく、なかでもアセチルアセトンが好ましい。
【0312】
ブロック剤(N)の量は、K)成分;(L1)成分、(L2)成分、及び(L3)成分から選ばれる少なくとも1種;(PI)成分の固形分総量に対して0.7〜25質量%、好ましくは1.0〜20質量%、さらに好ましくは2.0〜15質量%である。
【0313】
ブロック剤(N)の量が、K)成分;(L1)成分、(L2)成分、及び(L3)成分から選ばれる少なくとも1種;(PI)成分の固形分総量に対して、0.7質量%未満であるとポットライフ延長効果が不十分となる場合があり、25質量%を超えるとポットライフ延長効果は頭打ちになる上、得られる塗膜の硬化性が不十分となる場合がある。
【0314】
前記紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤をあげることができる。
【0315】
紫外線吸収剤のクリヤ塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であることが耐侯性、耐黄変性の観点から好ましい。
【0316】
前記光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤をあげることができる。
【0317】
光安定剤のクリヤ塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総量に対して、0〜10質量%、特に0.2〜5質量%、さらに特に0.3〜2質量%の範囲内であることが耐侯性、耐黄変性の観点から好ましい。
【0318】
一つの実施形態において、クリヤ塗料(Z)は、クリヤ塗料の樹脂固形分質量総量を基準として30〜70質量%の水酸基含有アクリル樹脂(K)と、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して100質量%以下の水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、好ましくは200質量%以下のポリイソシアネート化合物(PI)とを含有する。
【0319】
別の実施形態において、クリヤ塗料(Z)は、クリヤ塗料の樹脂固形分質量総量を基準として30〜70質量%の水酸基含有アクリル樹脂(K)と、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して100質量%以下の水酸基含有ポリエステル樹脂(L1)、水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2)及び水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、水酸基含有アクリル樹脂(K)の固形分総量に対して、好ましくは200質量%以下のポリイソシアネート化合物(PI)と、(K)成分、(L1)成分、(L2)成分、並びに(L3)成分から選ばれる少なくとも1種、及び(PI)成分の総量に対して、0.05〜5質量%の有機金属触媒(M)と、(K)成分、(L1)成分、(L2)成分、並びに(L3)成分から選ばれる少なくとも1種、及び(PI)成分の固形分総量に対して0.7〜25質量%のブロック剤(N)とを含有する。
【0320】
本発明に使用されるクリヤ塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型塗料等の多液型塗料であってもよい。該クリヤ塗料(Z)において、前記架橋剤として、ポリイソシアネート化合物(PI)を使用する場合には、貯蔵安定性の観点から、前記基体樹脂を含有する主剤と、上記ポリイソシアネート化合物(PI)を含有する架橋剤からなる二液型塗料とし、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
【0321】
クリヤ塗料(Z)の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、任意選択で、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装が特に好ましい。クリヤ塗料(Z)の膜厚は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm、好ましくは20〜45μmとすることが好ましい。
【0322】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行なう場合には、クリヤ塗料(Z)の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0323】
工程(4)
以上に述べた如くして形成される第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により加熱を行うことができる。
【0324】
加熱保持温度(キープ温度)は、低温での硬化性に優れることから、60〜140℃、特に70〜120℃の範囲内であることが適している。加熱保持時間(キープ時間)は、10〜50分間、特に、20〜40分間の範囲内であることが適している。
【0325】
上記焼付け硬化を行う前に任意選択で、室温で1〜60分間程度セッティングし、及び/又は40〜80℃の温度で1〜60分間程度予備加熱を行なっても良い。
【0326】
本発明の複層塗膜形成方法は、金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成することができる。
【0327】
本発明は、金属材料及びプラスチック材料を含有する工業製品全般の複層塗膜形成方法として好適に使用することができる。なかでも特に、自動車の複層塗膜形成方法として特に好適に使用することができる。
【0328】
本発明の複層塗膜形成方法によれば、金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成することができる理由は定かではないが、以下のように推測することができる。本発明の複層塗膜形成方法において水性第1着色塗料が、特定の水性ポリウレタン樹脂を含有するものであることから金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた付着性を持つ。このことによって優れた耐チッピング性及び耐ガソホール性を示すものと推測される。また水性第1着色塗料がブロックポリイソシアネートを含有するものであることから低温かつ短時間での硬化性に優れる。またかかる優れた硬化性によって塗膜の架橋密度が高くなるために耐水性、付着性に優れる。さらにかかる優れた硬化性によって第1着色塗膜の粘性発現効果がもたらされ、塗装時における第2着色塗膜との混層が抑制され、混層による複層塗膜の仕上がり外観の低下を抑制することができる。またさらに得られた複層塗膜の光線透過率が低いことによって、光による塗膜の劣化が抑制されるため、優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する塗膜を形成することができるものと推測される。
【0329】
これらの相乗効果により、本発明の複層塗膜形成方法によれば、金属部材に対してもプラスチック部材に対しても優れた耐チッピング性、付着性、仕上がり性、耐候性及び耐ガソホール性を有する複層塗膜を形成することができると考えられる。さらに、本発明の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜では、クリヤ塗料のポットライフが適切な長さに維持することができる。
【実施例】
【0330】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0331】
水性第1着色塗料(X)の製造
非塩素系ポリオレフィン系樹脂(A)の製造
製造例1
重量平均分子量80000のマレイン化ポリプロピレン樹脂(塩素化率22%、マレイン酸変性量2.0%、酸価30mgKOH/g)500部、n−ヘプタン150部及びN−メチルピロリドン50部からなる混合物を50℃に加温し、ジメチルエタノールアミン12部及び「ノイゲンEA−140」(ノニオン系界面活性剤、第1工業製薬(株)製、商品名)5部を仕込み、同温度で1時間攪拌した後、脱イオン水2000部を徐々に仕込み、さらに1時間攪拌を行なった。
つぎに、70℃の温度で減圧してn−ヘプタン及び水を合計で600部留去して、固形分含有率23.6%の非塩素系ポリオレフィン樹脂分散液(A−1)を得た。
【0332】
製造例2
攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4質量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)100gを140℃で加熱溶融し、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(「ニューコール1820」、片末端水酸基含有ポリオキシエチレン化合物、日本乳化剤社製)15gを添加し、攪拌しながら140℃で4時間反応を行った。反応後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の非塩素系ポリオレフィン樹脂分散液(A−2)を得た。
【0333】
水性ポリウレタン樹脂(B)の製造
製造例3
温度計、撹拌機、還流コンデンサーを備えた反応槽にポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)211.9部、α、α-ジメチロールプロピオン酸11.5部、トリメチロールプロパン6.9部、イソホロンジイソシアネート112.2部及びメチルエチルケトン298.5部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、撹拌下80℃で反応させ遊離イソシアネート基含有量3.2%のNCO末端ウレタンプレポリマーを得た。得られた該メチルエチルケトン溶液を40℃に冷却しトリエチルアミン5.2部を含む脱イオン水493.2gを加え乳化後、これに5%エチレンジアミン水溶液159.2部を添加し、60分間撹拌後、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分35%、20℃の温度での造膜に要する時間15分間、酸価14mgKOH/g、平均粒子径120nmの水性ポリウレタン樹脂分散液(B−1)を得た。
【0334】
製造例4〜13
製造例3において、配合組成を表1に示すとおりとする以外は製造例3と同様に操作して、各水性ポリウレタン樹脂分散液(B−2)〜(B−11)を得た。
【0335】
尚、表1の配合は固形分表示であり、表1中の(注1)は下記のとおりである。
(注1)ポリエステルポリオールAの製造
ポリエチレングリコール(数平均分子量300)67部と5−スルホイソフタル酸ジメチルエステルのナトリウム塩49部及びジブチル錫オキサイド0.2部を反応容器に仕込み、5mmHgの減圧下で190℃まで昇温し、メタノールを留去しながら6時間エステル交換反応を行い、一分子内にスルホン酸ナトリウム基を平均5個有し、水酸基価29.6mgKOH/g、数平均分子量3700のポリエステルポリオールAを得た。
【0336】
【表1】
【0337】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(C)の製造
製造例14
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)275部及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は約0.1モル/kgであった。これに、4−メチル−2−ペンタノール3110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−1)4920部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが585部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−1)の固形分濃度は約60%であった。
【0338】
製造例15
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)275部及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は約0.1モル/kgであった。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−2)の固形分濃度は約60%であった。
【0339】
製造例16
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」1610部及びヒドロキシピバリン酸236部を仕込み、攪拌しながらよく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル930部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は約0.1モル/kgであった。これに、4−メチル−2−ペンタノール2530部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−3)4450部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが475部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−3)の固形分濃度は約60%であった。
【0340】
製造例17
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル365部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに4−メチル−2−ペンタノール870部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチル−2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−4)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−4)の固形分濃度は約60%であった。
【0341】
なお、(C−1)及び(C−2)は後述する実施例に使用されるブロックポリイソシアネート化合物溶液であり、(C−3)及び(C−4)は後述する比較例に使用されるノニオン性親水基を有しないブロックポリイソシアネート化合物溶液である。
【0342】
水酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(E−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0343】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
製造例19
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、アジピン酸192部、ヘキサヒドロ無水フタル酸307部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール439部、1,6−ヘキサンジオール88.7部及びトリメチロールプロパン36.0部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、所望の酸価となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸20.2部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールで中和を行い、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%の水酸基含有ポリエステル樹脂水分散液(F−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂の酸価は20mgKOH/g、水酸基価は60mgKOH/g、数平均分子量は1,700であった。
【0344】
第1着色塗料(X)の作製
製造例20
非塩素系ポリオレフィン樹脂分散液(A−1)を35部(固形分)、水性ポリウレタン樹脂分散液(B−1)を20部(固形分)、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物溶液(C−1)20部(固形分)、水酸基含有アクリル樹脂溶液(E−1)を10部(固形分)、水酸基含有ポリエステル樹脂(F−1)を15部(固形分)、導電性顔料(D−1)(「ケッチェンブラックEC600J」、ライオンアクゾ株式会社製、商品名、導電性カーボンブラック顔料)5部、「JR−806」(テイカ社製、商品名、チタン白)100部を常法に従って配合し混合分散して、固形分20%となるように脱イオン水で希釈して水性第1着色塗料(X−1)を得た。
【0345】
製造例21〜42
製造例20において、配合組成を表2に示すとおりとする以外は製造例20と同様に操作して、各水性第1着色塗料(X−2)〜(X−23)を得た。
【0346】
尚、表2の配合は固形分表示であり、表2中の(注2)は下記のとおりである。
(注2)水性塩素化ポリオレフィン(A−3)(マレイン酸変性による酸価が35mgKOH/gで且つ塩素含有率が22%であるマレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの水分散体)
【0347】
【表2】
【0348】
【0349】
クリヤ塗料(Z)の製造
水酸基含有アクリル樹脂(K)の製造
製造例43〜50
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記表3に示すモノマーと重合開始剤からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。ついで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル32.5部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(K−1)〜(K−8)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂の質量固形分濃度(%)及び樹脂の特数値を下記表3に示す。
【0350】
【表3】
【0351】
水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3)の製造
製造例51
温度計、サーモスタット、攪拌機及び加熱装置を具備した反応装置に、UM−90(商品名、宇部興産社製、ポリカーボネートエステル) 270部、ε-カプロラクトン 136.8部、ジブチル錫オキサイド 適量(得られる水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂の数平均分子量が1700程度になる量)を仕込み、攪拌しながら170℃まで昇温した。170℃で反応を続け、加熱残分が98.5%以上になったことを確認して、冷却、排出を行い、水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−1)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−1)の数平均分子量は1650であった。
【0352】
製造例52
温度計、サーモスタット、攪拌機及び加熱装置を具備した反応装置に、UM−90(商品名、宇部興産社製、ポリカーボネートエステル) 270部、ε-カプロラクトン 136.8部、ジブチル錫オキサイド 適量(得られる水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂の数平均分子量が2200程度になる量)を仕込み、攪拌しながら170℃まで昇温した。170℃で反応を続け、加熱残分が98.5%以上になったことを確認して、冷却、排出を行い、水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−2)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−2)の数平均分子量は2200であった。
【0353】
製造例53
温度計、サーモスタット、攪拌機及び加熱装置を具備した反応装置に、UM−90(商品名、宇部興産社製、ポリカーボネートエステル) 270部、ε-カプロラクトン 136.8部、ジブチル錫オキサイド 適量(得られる水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂の数平均分子量が3000程度になる量)を仕込み、攪拌しながら170℃まで昇温した。170℃で反応を続け、加熱残分が98.5%以上になったことを確認して、冷却、排出を行い、水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−3)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリカーボネートポリエステル樹脂(L3−3)の数平均分子量は2900であった。
【0354】
クリヤ塗料(Z)の作成
製造例54〜79
表5に記載の原材料を用いて、後記表5に示す配合にて羽根型撹拌機を用いて攪拌して混合した。次いで該混合物に酢酸ブチルを添加してフォードカップ#No.4を用いて20℃で25秒の粘度に調整し、各クリヤ塗料(Z−1)〜(Z−14)を得た。なお、表5に示すクリヤ塗料(Z)の配合は各成分の固形分質量比である。
【0355】
表5における水酸基含有ポリエステル樹脂(L1−1)及び水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2−1)は、下記の意味を有する。
【0356】
水酸基含有ポリエステル樹脂(L1−1):「プラクセル305」商品名、ダイセル化学工業社製。数平均分子量550。
【0357】
水酸基含有ポリカーボネート樹脂(L2−1):「UM−90」商品名、宇部興産社製、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオールであり、1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量/1,6−ヘキサンジオールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール。数平均分子量900。
【0358】
表5における有機金属触媒(M)の詳細は、下記の表4に示された通りである。
【0359】
【表4】
【0360】
*1 ニッカオクチックス亜鉛 日本化学産業社製、亜鉛含有量8%
*2 ナフテン酸亜鉛 東京化成工業社製、亜鉛含有量10.1%
*3 アセチルアセトン亜鉛 昭和化学社製、亜鉛含有量25%
*4 二安息香酸亜鉛 和光純薬工業製、亜鉛含有量21.3%
*5 ラウリン酸亜鉛 和光純薬工業製、亜鉛含有量14.1%
*6 ニッカオクチックス錫 日本化学産業社製、錫含有量28%
*7 K-KAT348 キング・インダストリーズ社製、ビスマス含有量25%
*8 DBU ジアザビシクロウンデセン
表5におけるポリイソシアネート化合物(PI)は、下記の意味を有する。
【0361】
ポリイソシアネート化合物(PI):「スミジュールN3300」商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100%、イソシアネート基含有率21.8%
【0362】
【表5】
【0363】
【0364】
I−1.試験塗板の作製
金属部材として、リン酸亜鉛処理された冷延鋼板(450mm×300mm×0.8mm)に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。
【0365】
プラスチック部材として、「TSOP−1(TC−6)」(商品名、日本ポリケム社製、350mm×10mm×2mm)を用意した。
【0366】
そして、金属部材及びプラスチック部材の表面を、石油ベンジンを含ませたガーゼで拭いて脱脂処理した。上記のようにして得られた鋼板とポリプロピレン板とを隣接配置して、試験板とした。
【0367】
上記試験板に、上記で作製した第1着色塗料(X−1)〜(X−23)を乾燥膜厚10μmになるようにスプレー塗装し、室温で6分間セッティングしてから、着色ベース塗料として、「WBC−713T#1F7」(商品名、関西ペイント社製、アクリル・メラミン樹脂系水性上塗ベースコート塗料、シルバー塗色、表6,7においては「(Y−1)」と記す)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。次に、上記で作製したクリヤ塗料(Z−1)〜(Z−26)を乾燥膜厚30μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、95℃のオーブンで30分間加熱して複層塗膜が形成された試験塗板を得た。その複層塗膜にて、以下に記す各種塗膜性能試験を行った(表6,7)。
【0368】
I−2.塗膜性能試験
仕上がり性:仕上がり性は以下の平滑性及び鮮映性で評価した。
【0369】
平滑性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるW1値を用いて評価した。W1値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
S:W1値が10.0未満
A:W1値が10.0〜20.0
C:W1値が20.0を超える値。
【0370】
鮮映性:「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるW4値を用いて評価した。W4値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
S:W4値が10.0未満
A:W4値が10.0〜20.0
C:W4値が20.0を超える値。
【0371】
耐チッピング性:飛石試験機(商品名「Q−G−Rグラベロメーター」(Qパネル社製)の試片保持台に試験塗板を設置し、−20℃において、試験塗板から30cm離れた所から480〜520kPaの圧縮空気により、粒度6号の花崗岩砕石100gを90度の角度で試験塗板に衝突させた。その後、得られた試験塗板を水洗して乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼着した。そして、上記テープを剥離し、電着面及び素地の部材が露出している面積(剥離面積と略記する)をもとに評価した。
S:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が5%未満
A:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が5〜10%未満
C:試験塗板面積に対する剥離面積の割合が10%以上。
【0372】
耐水付着性:試験塗板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験塗板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で耐水性を評価した。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
B:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
C:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である。
【0373】
耐ガソホール性:部材別に説明する。
プラスチック部材の場合:各試験塗板を、ガソリン/メタノール=90/10重量比の試験液中に20℃で浸し、30分経過時のふくれ、剥がれの塗面状態を観察し、下記の基準で評価した。
S:全く異常がない、
A:3mm未満のふくれ、剥がれ、
B:3〜5mm以下のふくれ、剥がれ、
C:5mmを超えるふくれ、剥がれ。
金属部材の場合:各試験塗板を、ガソリン/メタノール=90/10重量比の試験液中に40℃で浸し、60分経過時のふくれ、剥がれの塗面状態を観察し、プラスチックの場合と同様の基準で評価した。
【0374】
耐候性:金属部材に塗装された各試験塗板について、JIS K 5600−7−7に準じ、「スーパーキセノンウエザーメーター」(スガ試験機社製、耐候性試験機)を用いて、試験片ぬれサイクル:18分/2時間、ブラックパネル温度:61〜65℃の条件で、促進耐候性試験を行った。次に、ランプの照射時間が1,000時間、2,000時間及び3,000時間に達した時点で、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作った。次いで、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、そのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
C:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下である。
【0375】
可使時間(ポットライフ):各クリヤ塗料の6時間後の20℃における粘度をフォードカップ#No.4を用いて測定した。塗料組成物の作製後の可使時間を以下の基準で測定し、評価した。
S:35秒以下
A:36〜40秒
C:ゲル化
−:測定せず
【0376】
【表6】
【0377】
【0378】
【0379】
【表7】
【0380】
II−1.試験塗板の作製
金属部材として、リン酸亜鉛処理された冷延鋼板(450mm×300mm×0.8mm)に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT−10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。
【0381】
プラスチック部材として、「TSOP−1(TC−6)」(商品名、日本ポリケム社製、350mm×10mm×2mm)を用意した。
【0382】
そして、金属部材及びプラスチック部材の表面を、石油ベンジンを含ませたガーゼで拭いて脱脂処理した。上記のようにして得られた鋼板とポリプロピレン板とを隣接配置して、試験板とした。
【0383】
上記試験板に、上記で作製した第1着色塗料(X−1)を乾燥膜厚10μmになるようにスプレー塗装し、室温で6分間セッティングしてから、着色ベース塗料として、第2着色塗料(Y−1)を乾燥膜厚15μmになるように静電塗装した。次に、上記で作製したクリヤ塗料(Z−15)、(Z−17)、(Z−19)、(Z−24)、(Z−25)又は(Z−26)を乾燥膜厚30μmになるように静電塗装し、室温で5分間放置してから、75℃のオーブンで30分間加熱して複層塗膜が形成された試験塗板を得た。その複層塗膜にて、以下に記す各種塗膜性能試験を行った(表8)。
【0384】
II−2.塗膜性能試験
上記「I−2.塗膜性能試験」の項目に記載と同様の操作、同様の評価を行った。
【0385】
【表8】