【文献】
WHEATLEY, K. et al.,Abstract 1664: "Maternal embryonic leucine zipper kinase (MELK) is a critical regulator of proliferation and is independently prognostic in estrogen receptor-negative breast cancer",Cancer Res.,2011年 4月,Vol.71,No.8, Suppl.,p.1664,[online],[検索日 2017年10月3日],<URL,http://cancerres.aacrjournals.org/content/71/8_Supplement/1664>
【文献】
CHUNG, S. et al.,"Development of an orally-administrative MELK-targeting inhibitor that suppresses the growth of various types of human cancer",Oncotarget,2012年12月21日,Vol.3,No.12,p.1629-1640
【文献】
WANG, M. et al.,"The suppression of FOXM1 and its targets in breast cancer xenograft tumors by siRNA",Oncotarget,2011年12月25日,Vol.2,No.12,p.1218-1226,ISSN:1949-2553
【文献】
WANG, M. et al.,"Micelle-Encapsulated Thiostrepton as an Effective Nanomedicine for Inhibiting Tumor Growth and for Suppressing FOXM1 in Human Xenografts",Mol. Cancer Ther.,2011年12月,Vol.10,No.12,p.2287-2297,ISSN:1535-7163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乳癌細胞の成長又は増殖を阻害するための有効量のMELK阻害剤を含んでなる医薬であって、MELK阻害剤が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及びこれらの組合せからなる群より選択されるMELK標的ヌクレオチド配列を有するshRNAを含み;
乳癌細胞の成長又は増殖を阻害することの必要な被験者においてそれを阻害するために使用され、ここで該乳癌細胞は、エストロゲン受容体(ER)陰性である、前記医薬。
乳癌を有する被験者を治療するための請求項1に記載の医薬であって、該被験者の乳癌細胞中のエストロゲン受容体発現状況を判定することにより、エストロゲン受容体陰性である乳癌細胞を有すると同定された被験者を治療するための、前記医薬。
被験者の乳癌細胞中のプロゲステロン受容体発現状況を判定することにより、エストロゲン受容体陰性であってプロゲステロン受容体陰性である乳癌細胞を有すると同定された被験者を治療するための、請求項9に記載の医薬。
被験者の乳癌細胞中のヒト表皮成長因子受容体2発現状況を判定することにより、ヒト表皮成長因子受容体2陰性である乳癌細胞を有すると同定された被験者を治療するための、請求項9又は10に記載の医薬。
被験者の乳癌細胞中のプロゲステロン受容体発現状況を判定することにより、エストロゲン受容体陰性であってプロゲステロン受容体陰性である乳癌細胞を有すると同定された被験者を治療するための、請求項13に記載の医薬。
被験者の乳癌細胞中のヒト表皮成長因子受容体2発現状況を判定することにより、ヒト表皮成長因子受容体2陰性である乳癌細胞を有すると同定された被験者を治療するための、請求項13又は14に記載の医薬。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008] 図面1は、MELKを潜在的な癌遺伝子として同定する生体内(in vivo)遺伝子スクリーニングを図解する。 [0009] (A)生体内腫瘍生成モデルの開発。生成した腫瘍の数と注射の回数を左表に記載した。ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)においては、細胞が生体内での腫瘍生成を達成するのに2種の癌遺伝子が必要とされたことに注目されたい。マウスの右画像は、PIK3CA(H1047R)で形質導入されたHMEC−DD−NeuT細胞において生成された腫瘍を示す。(B)腫瘍生成を促進する遺伝子の遺伝子スクリーニングの概略図。レトロウイルスのミリストイル化キナーゼのプール(全部で37個のプール、それぞれ10〜12個のユニークなオープンリーディングフレームからなる)をHMED−DD−ErbB2細胞へ形質導入した。次いで、ヌードマウスの乳腺脂肪体へ細胞を移植した。12の細胞プールより産生した腫瘍を採取し、ゲノムDNAの抽出を続けた。移植前の細胞由来のゲノムDNAと腫瘍由来のゲノムDNAをqPCRへ処した。Ct数の差より相対的な濃縮を導いた。同定した26種の遺伝子の中では、発生した腫瘍において、MELKが高度に濃縮されている。
【
図2】[0010] 図面2は、腫瘍の発生の間に特異的に濃縮された26種のキナーゼを図解する。(A)スクリーニングヒットのリストと生体内腫瘍におけるそれらの相対的濃縮倍率。濃縮倍率の閾値は、10に設定する。(B)スクリーニングヒットのリストとそれらの遺伝子記述。
【
図3】[0011] 図面3は、MELKが乳癌において最上位に過剰発現される遺伝子であって、注目すべき予後的価値を有することを図解する。 [0012] (A)乳癌では、MELKが過剰発現されている。TCGA乳癌コホートにおいて、正常乳腺(n=61)と浸潤性乳管癌(n=392)の間でMELK発現について解析した(Koboldt et al., 2012)。各円が個々の標本を表す。各群中の実線は、四分位範囲付きのメジアンを示す。スチューデントの両側t検定よりp値を入手した。正常乳腺と比べた悪性乳腺におけるMELK過剰発現についてのp値が測定した全20,423種の遺伝子の中で29位にあることに注目されたい。(B)MELK発現は、乳癌の組織学的悪性度(histologic grade)と相関する。MELKの発現を異なる組織学的悪性度の乳腺腫瘍の間で比較した。各群中の実線は、四分位範囲付きのメジアンを示す。p値を一元配置分散分析(ANOVA)で計算した。MELK発現と疾患悪性度の間の相関性についてのp値が、測定した全12,624種の遺伝子の中で3位(Hatzis コホート)と8位(Desmedt コホート)にあって、測定した全19,574種の遺伝子の中で7位(Bittner コホート)にあることに注目されたい。(C)3つの独立した乳癌患者コホートにおける全生存率のカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)分析。標本を2つの群、MELKの発現が高い群(上位60%)と低い群(下位40%)へ分けた。ログランク検定よりp値を入手し、GraphPad Prism バージョンを使用してハザード比(HR)を計算した。(D)3つの独立した乳癌患者コホートにおける無転移生存率のカプラン・マイヤー分析。標本を(C)と同様に分けた。ログランクp値とハザード比(HR)を示す。(E)基底細胞様乳癌における最高のMELK発現。PAM50(Parker et al., 2009)を使用して、各コホート中の標本を5種の別個の分子サブタイプへ分類した。各群中の実線は、四分位範囲付きのメジアンを示す。
***p<0.0001。
*p<0.05。(F)MELKの発現とエストロゲン受容体(ER、又はESR1)のそれの間の逆相関性。各円は、1つの個別のヒト乳腺腫瘍標本を表す(n=295)。GraphPad Prism によって相関分析を実施した。遺伝子発現の全データをOncomine(Rhodes et al., 2004)よりダウンロードして解析した。引用したデータセットの原著は、下記の表S1に収載する。
【
図4】[0013] 図面4は、MELKが乳癌において最上位で過剰発現される遺伝子であって、高い予後的価値を有することを例解する。 [0014] (A)MELKは、乳腺腫瘍において正常乳腺組織におけるより高いレベルで発現される。(B)MELK発現は、疾患の組織学的悪性度と正に相関する。示したp値は、7位(測定した全19,574種の遺伝子の中で、Bittner コホート)と3位(測定した全12,624種の遺伝子の中で、Hatzis コホート)にある。(C)MELK発現は、転移の予測となる。指定コホートの標本を高MELK群と低MELK群へ分けたが、これらは、MELK発現の降順において上位60%と下位40%を表す。カプラン・マイヤー曲線をログランクp値とハザード比(HR)とともに示す。(D)高MELK発現では、乳癌患者の低い全生存率が予測される。標本を(C)と同様にMELKの高い群と低い群へ群分けした。ログランク検定よりp値を入手して、GraphPad Prism を使用してハザード比(HR)を計算した。(E)遺伝子発現プロファイリングによって定義される乳癌のサブタイプにおけるMELK発現。PAM50遺伝子サイン(Parker et al., 2009)に基づいて、標本をサブタイプへ分けた。「ns」は、「有意でない」を示す。
「****」p<0.0001。(F)MELKの発現とエストロゲン受容体(ER、又はESR1)のそれとの間の逆相関性。(G)トリプルネガティブ乳癌は、他のサブタイプより高いMELKの発現を明示する。エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、又はヒト表皮成長因子2(HER2)の発現に基づいて、患者を疾患のサブタイプで数群へ分類した。全データを Oncomine(Rhodes et al., 2004)よりダウンロードして、再解析した。各パネル(A、B、E、F)中の実線は、四分位範囲付きのメジアンを示す。
【
図5-1】[0015] 図面5は、MELK過剰発現が腫瘍生成能を付与することを例解する。 [0016] (A)野生型MELKは、過剰発現される場合、発癌性である。HMEC−DD−NeuT細胞を、空(empty)ベクター、ミリストイル化又は野生型MELKで形質導入した。ヌードマウスの乳腺脂肪体へ細胞を移植した。生成した腫瘍の数と注射の回数を表に記載した。(B)Rat1−DD−TP53細胞におけるMELKの過剰発現。この細胞にGFP(陰性対照として)、又は野生型ヒトMELK、又はp110αの発癌性対立遺伝子(H1047R)を安定的に導入した。これら遺伝子の異所性発現は、モロニー(Moloney)マウス白血病ウイルスの長い末端反復配列によって推進される。p110α(H1047R)の発現によりAktリン酸化が高まることに注目されたい。β−チューブリンは、ローディング対照として役立つ。(C)軟寒天中でのコロニー形成アッセイ。指定の細胞を4000個/ウェルの細胞密度で12ウェルプレートに播種した。このプレートを3週後に採取した。上のパネルは、このコロニーの代表的な明視野像を示す。下のパネルは、ウェル当たりのコロニーの全数として示される、コロニー形成の定量分析を示す。EVは、空ベクターを意味する。
***p<0.001。(D)MELK過剰発現は、腫瘍生成を推進する。指定の細胞を免疫不全マウスへ移植して、3週後に皮下腫瘍を採取した。上のパネルと下のパネルは、腫瘍の画像と腫瘍重量の定量値をそれぞれ示す。
***p<0.001。
【
図5-2】(E)Rat1−DD−TP53細胞における野生型及びキナーゼ不活性MELKの過剰発現。細胞にpWzl空ベクター(EV)又はFlagタグ付きMELK収容pWzl(これは、モロニーマウス白血病ウイルスの長い末端反復配列によって推進されるヒトMELKを発現する)を安定的に導入した。(F)キナーゼ不活性MELKの過剰発現は、足場非依存性の細胞増殖を付与しない。コロニー形成アッセイを(C)のように行った。左パネルと右パネルは、コロニーの代表的な明視野像と定量分析をそれぞれ示す。
***p<0.001。(G)触媒能のないMELKの過剰発現は、腫瘍成長を誘導しない。皮下異種移植を(E)のように実施した。左パネルと右パネルは、腫瘍画像と腫瘍重量の定量をそれぞれ示す。
***p<0.001。
【
図6-1】[0017] 図面6は、基底細胞様乳癌細胞の増殖にMELKが必要であることを実証する。 [0018] (A)基底乳癌細胞系は、ルミナル癌細胞より高い発現レベルのMELKを有する。16種の確立された基底乳癌細胞系と20種のルミナル乳癌細胞系の間でのMELK mRNAデータは、Neve データセット(Neve et al., 2006)に由来した。各群の実線は、平均±SEMを表す。p値をスチューデントのt検定によって計算した。(B)MELKのタンパク質存在量は、ルミナル乳癌細胞より基底乳癌細胞においてより高い。指定の細胞からの溶解液をイムノブロッティングへ処した。ローディング対照としてα−チューブリンを使用した。(C)2つの基底乳癌細胞系(MDA−MB−468、BT−549)におけるMELKの条件付きノックダウンは、MELK発現を抑制して、細胞増殖を阻害する。イムノブロッティングの左パネルは、未処理であるか又はドキシサイクリン(Dox,100ng/ml)で3日間処理した細胞におけるMELK発現を示す。中央パネルと右パネルは、プレートのクリスタルバイオレット染色とその染色の定量をそれぞれ示す。エラーバーは、標準偏差を示す。「
*」は、0.001未満のp値を示す。
【
図6-2】(D)2つのルミナル乳癌細胞系(MCF−7、T47D)におけるMELKの条件付きノックダウンは、MELK発現を阻害するが、細胞増殖に対してはほとんど効果を発揮しない。このパネルは、(C)と同様に配置されている。
*p<0.001。(E)shMELK抵抗性MELKの発現は、MELKサイレンシングによって誘導される表現型をレスキューする。tet−on−shMELKが安定したMDA−MB−468細胞に、GFPをコードするテトラサイクリン誘導遺伝子発現ベクター、又は野生型shMELK抵抗性MELK、又はキナーゼ不活性shMELK抵抗性MELKを安定的に導入した。外因性のMELKにFlagのタグを付けると、タンパク質ゲル上でのMELKのわずかなシフトを引き起こすことに留意されたい。左パネル、中央パネル、及び右パネルは、イムノブロッティング、クリスタルバイオレット染色、及び細胞増殖の定量分析をそれぞれ示す。
【
図7-1】[0019] 図面7は、基底細胞様乳癌細胞の増殖にMELKが必要であることを実証する。 [0020] (A)トリプルネガティブ乳癌細胞系は、ER/PR+乳癌細胞より高いレベルのMELKを有する。21種の確立されたトリプルネガティブ乳癌細胞系と14種のER/PR+乳癌細胞系の間でのMELK mRNAデータは、Neve データセット(Neve et al., 2006)より入手した。各群の実線は、平均±SEMを表す。p値をスチューデントのt検定によって計算した。(B)2つの追加BBC細胞系におけるMELKの条件付きノックダウンは、細胞増殖を抑制する。イムノブロッティングの左パネルは、ドキシサイクリン(100ng/ml)へ3日間曝露した細胞におけるMELK発現を示す。右パネルは、細胞増殖の定量を表し、エラーバーは、標準偏差を示す。
*p<0.05、
**p<0.01。
【
図7-2】(C)shMELK抵抗性MELK cDNA(MELK−R)の産生。上パネル、shMELK2によって標的指向される21マー配列を太字でマークする。サイレント突然変異は、矢印によって示す。下パネル、指定のshRNA(スクランブル又はshMELK)を、GFPをコードするプラスミド、又は親のMELK、又はMELK−Rと同時トランスフェクトした。イムノブロッティングのために細胞溶解液を採取した。親の野生型MELKでなくて、MELK−RがshMELKへ抵抗することに注目されたい。
【
図8-1】[0021] 図面8は、基底細胞様乳癌細胞の悪性腫瘍成長にMELKが必要であることを図解する。 [0022] (A)MELKノックダウンは、足場依存性の細胞成長を抑制する。指定の細胞を0.3%寒天に播種して、100ng/mlドキシサイクリンの有り無しで処理した。左パネルと中央パネルは、コロニーのクリスタルバイオレット染色とコロニーの明視野像をそれぞれ示す。右パネルは、12ウェルプレートのウェルあたりのコロニー数を示す。エラーバーは、標準偏差を表す。
*p<0.001。
【
図8-2】(B,C)MELKの条件付きノックダウンは、腫瘍成長を損なう。安定したtet−on−shMELKを有するMDA−MB−468細胞(B)又はMDA−MB−231細胞(C)をヌードマウスの乳腺脂肪体へ同所性移植した。このマウスの半数に注射の二日目よりドキシサイクリン補充飲料水を与えた。このヒストグラムは、処理後7週で測定した腫瘍の体積又は重量を示す。エラーバーは、標準誤差を表す。(D〜G)定着した腫瘍におけるMELKのノックダウンは、基底細胞腫瘍(MDA−MB−468,MDA−MB−231)において腫瘍成長を損ねて退縮の引き金になるが、ルミナル腫瘍(T47D,MCF−7)においてはそうならない。指定の細胞をマウスの乳腺脂肪体へ移植した。腫瘍が200mm
3の平均サイズへ成長したとき、マウスを2つの群へ無作為に分けて、1つの群にドキシサイクリンを投与した。処理後の指定日に腫瘍サイズを測定した。
*は、p<0.001を意味する。エラーバーは、標準誤差を表す。
【
図9】[0023] 図面9は、基底細胞様乳癌細胞の悪性腫瘍成長にMELKが必要であることを図解する。 [0024] 安定したtet−shMELKを有する指定の細胞に由来する乳腺腫瘍を担うマウスを未処理とするか又はドキシサイクリン補充水で4日間処理した。腫瘍溶解液をイムノブロッティングに使用して、α又はβ−チューブリンをローディング対照として役立てた。
【
図10】[0025] 図面10は、MELK阻害が細胞死と有糸分裂妨害を引き起こすことを図解する。 [0026] (A)イムノブロッティングアッセイにより、MELK阻害によって誘導されるアポトーシスマーカーが明らかになる。指定の細胞を未処理のままにするか又は100ng/mlのドキシサイクリンで4日間処理した。細胞溶解液を調製して、指定の抗体を使用するイムノブロッティングへ処した。(B)MELK阻害は、DNA断片化を誘導する。指定の安定shRNAを有するMDA−MB−468細胞を(A)のように処理して、固定とDAPIでの染色を続けた。明るくて粒子状の染色がDNA断片化を示すことに注目されたい。(C)MELK阻害は、カスパーゼ依存性の細胞死を引き起こす。shMELK含有MDA−MB−468細胞を未処理とするか又は100ng/mlのドキシサイクリンで4日間処理し、最後の2日間は、40μM zVad−fmk又は担体で処理した。イムノブロッティングのために溶解液を調製し、β−チューブリンをローディング対照とした。(D)MELK阻害は、基底乳癌細胞において選択的に細胞死を誘導する。指定の細胞を未処理にするか又はドキシサイクリンで4日間処理した後で、イムノブロッティングのために細胞溶解液を調製した。BT549では、MELKサイレンシングによりアポトーシスマーカー(切断PARP)の出現が誘導されるが、MCF7細胞においてはそれが誘導されないことに注目されたい。(E)MELK阻害は、4n DNAを有する細胞の蓄積を誘導する。shMELK含有MDA−MB−468細胞を未処理にするか又はドキシサイクリンで5日間処理した。細胞周期分析とイムノブロッティングのために試料を調製した。左パネルは、代表的な細胞周期分布を示し;中央のヒストグラムは、4n DNA含有細胞(%)の定量を示し;そして右パネルは、イムノブロッティングを示す。MELKノックダウンが4n DNA含有細胞の蓄積、並びに有糸分裂マーカーの発現を誘導することに注目されたい。(F)MELK阻害によって誘導される欠損性のサイトキネシス。指定の細胞を未処理のままにするか又はドキシサイクリンで4日間処理して、固定とDAPI染色を続けた。20倍の対物レンズで画像を獲得した。各円は、無作為に選択された単一視野を表す(計数した全細胞数は、各群につき>500)。このデータは、2個以上の核を有する細胞の百分率を示す。実線は、メジアン±SEMを示す。(G)MELK阻害は、有糸分裂における多面性欠損を誘導する。抗β−チューブリン(緑色)とDAPI(DNA)で染色した細胞より蛍光画像を入手した。(H)時間経過微視分析。安定したshMELKとヒストン2B−GFPを有するMDA−MB−468細胞を未処理のままにするか又はドキシサイクリンで3日間処理してから、時間経過イメージングへ処した。時間は、時間:分で示す。上パネルは、対照の有糸分裂細胞を示し;中央パネルは、2つの核が細胞死を受けている細胞を示し;下のフレームでは、細胞が後期へ進行し得ず、細胞死で終わっている。
【
図11】[0027] 図面11は、MELK阻害が細胞死と有糸分裂妨害を引き起こすことを図解する。 [0028] (A)未処理であるか又はMELKサイレンシングの誘導のためにドキシサイクリンで処理した指定細胞の明視野像。(B)tet−shMELK含有MDA−MB−468細胞のDAPI染色と明視野像。細胞を未処理とするか又はドキシサイクリンで4日間処理して、最後の2日間にzVad−fmk又は担体でさらに処理した。(C)BT549細胞におけるMELKの条件付きノックダウンは、4n DNA含有細胞の蓄積とG2/M停止を誘導する。tet−shMELK含有BT549細胞をドキシサイクリン無しで、又はドキシサイクリンで5日間処理した。細胞をFACSによる細胞周期分析とイムノブロッティングへ処した。左パネル、中央パネル、及び右パネルは、イムノブロッティング、代表的な細胞周期分布ヒストグラム、及び4n DNA含有細胞(%)の定量をそれぞれ示す。実線は、メジアン±SDを示す。(D)DAPI染色により、多核の細胞が明らかになる。tet−shMELK含有MDA−MB−468細胞を未処理とするか又はドキシサイクリン(100ng/ml)で処理した。矢印は、2個以上の核がある細胞を示す。
【
図12-1】[0029] 図面12は、FoxM1が基底細胞様乳癌において過剰発現されて、MELKの発現を調節することを図解する。 [0030] (A)MELKの細胞周期依存性の発現。MDA−MB−231細胞を未処理のままとする(非同期化、As)か又は100ng/mlのノコダゾールで18時間処理した。有糸分裂細胞(M)を振り落とし操作(shake-off)によって採取すると、付着した細胞では、G2期(G2)が豊富であった。有糸分裂細胞のサブセットを洗浄してノコダゾールを除去して、付着した細胞(M+4h)を4時間のインキュベーション後に採取した。左パネルと右パネルは、細胞周期のFACS分析とイムノブロッティングを示す。(B)基底細胞様乳癌におけるFoxM1の高発現。指定のデータセット中の標本をPAM50遺伝子サイン(Parker et al., 2009)に基づいてサブタイプへ群分けした。
***p<0.0001。
*p<0.05。
【
図12-2】(C)FoxM1の発現とMELKの発現は、密接に相関している。MELKの発現をFoxM1のそれに対してプロットした。各円は、1つの個別のヒト乳腺腫瘍標本を表し(TCGAデータセットでは、n=349;Bittner データセットでは、n=338)、赤色と緑色は、基底細胞様乳癌と他のサブタイプをそれぞれ示す。GraphPad Prism によって相関分析を実施した。(D)FoxM1のノックダウンは、MELK発現を抑制する。対照siRNA又はFoxM1に標的指向するsiRNAのいずれかで細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションから3日後に溶解液を採取して、イムノブロッティングへ処した。FoxM1の転写標的として知られるオーロラ(aurora)キナーゼA(AURKA)(Lefebvre et al., 2010)を陽性対照として使用した。
【
図12-3】(E)FoxM1阻害は、MELKの発現を下方調節する。MDA−MB−231細胞を指定時間の間、担体(0.1% DMSO)又は10μMチオストレプトン(FoxM1の阻害剤)(Hegde et al., 2011)で処理した。イムノブロッティングのためにタンパク質溶解液を調製した。(F)上パネル:MELKプロモーター中の推定FoxM1結合部位。示したヌクレオチド配列は、MELKプロモーター中の推定FoxM1結合部位(上)とFoxM1コンセンサス結合部位(下)である。ヌクレオチドの番号は、MELKの転写開始部位(+1)に対する。下パネル:MDA−MB−468細胞におけるMELKプロモーターのクロマチン免疫沈降アッセイ。対照のウサギIgGとFoxM1に対する抗体を使用した。CDC25Bのプロモーター領域用のプライマーを陽性対照として使用した。
【
図13】[0031] 図面13は、FoxM1が基底細胞様乳癌において過剰発現されて、MELKの発現を調節することを図解する。 [0032] (A)MELKの細胞周期依存性の発現。MDA−MB−468細胞を未処理のままとする(非同期化、As)か又は100ng/mlのノコダゾールで18時間処理した。有糸分裂細胞(M)を振り落とし操作によって採取し、付着した細胞をG2期(G2)が豊富な細胞として採取した。有糸分裂細胞の一部を洗浄してノコダゾールを除去して、4時間インキュベーションした後で、付着した細胞(M+4h)を採取した。この調製した細胞より溶解液を調製して、指定の抗体を使用するイムノブロッティングへ処した。(B)遺伝子発現プロファイリングによって定義される乳癌のサブタイプにおけるFoxM1発現。2つの指定コホート中の標本をPAM50遺伝子サイン(Parker et al., 2009)に基づいてサブタイプへ群分けした。「
****」は、p値<0.0001を意味する。(C)FoxM1の発現は、他のサブタイプよりトリプルネガティブ乳癌において有意に高い。エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、又はヒト表皮成長因子2(HER2)のタンパク質発現に基づいて、標本をサブタイプへ分類した。指定のp値は、トリプルネガティブ乳癌中のMELK発現をER/PR+乳癌中のそれと比較することから得た。(D)FoxM1の発現とMELKの発現は、密接に相関している。MELKの発現をFoxM1のそれに対してプロットした。各円は、個別のヒト乳腺腫瘍標本を表す(van der Vijver データセットでは、n=295;Hatzis データセットでは、n=508)。GraphPad Prism によって相関分析を実施した。(E)チオストレプトンによるFoxM1阻害は、MELKの転写を減少させる。細胞を担体又はチオストレプトンで16時間処理して、全RNAを抽出して、cDNA合成を続けた。指定遺伝子用のプライマーを使用して、定量PCRを実施した。エラーバーは、標準偏差を示す。「
*」は、p値<0.01を意味する。
【
図14】[0033] 図面14は、基底乳癌サブタイプにおいてMELKが高度に発現されていることを図解する。
【
図15】[0034] 図面15は、ER陰性乳癌細胞におけるMELKの高い発現レベルを示す。(A)モデル細胞系におけるMELK遺伝子発現。(B)ER−細胞系における増加したMELK発現を示す定量PCR。
【
図16】[0035] 図面16は、BT549(ER−,高MELK)乳癌細胞がMELKに依存することを示す。
【
図17】[0036] 図面17は、MDA−MB−468(ER−,高MELK)乳癌細胞がMELKに依存することを示す。
【
図18】[0037] 図面18は、MDA−MB−231(ER−,高MELK)乳癌細胞がMELKに依存することを示す。
【
図19】[0038] 図面19は、MCF7(ER+,低MELK)乳癌細胞がMELKに依存しないことを示す。
【
図20】[0039] 図面20は、正常乳腺上皮細胞(HMEC)と不死化MCF10A細胞がMELKに依存しないことを示す。
【
図21】[0040] 図面21は、MELK依存性TNBC系の増殖にキナーゼ活性が必要とされ得ることが部分レスキューによって示唆されることを図解する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0041] 本発明は、母性胚性ロイシンジッパーキナーゼ(MELK)が、持続性の腫瘍生成能のために、ER陰性乳癌細胞、基底細胞様(ER/PR陰性)乳癌細胞、及びトリプルネガティブ乳癌細胞において必須であるが、ルミナル乳癌細胞においては必須でない発癌遺伝子キナーゼとして同定されたという発見に関連する。加えて、MELKは、細胞の有糸分裂進行に不可欠なものとして同定されて、FoxM1転写因子によって直接調節されている。本発明はまた、乳癌細胞の成長又は増殖を阻害する方法と、乳癌を有する被験者を治療するための方法に関する。さらに本発明は、MELK阻害剤又はFoxM1阻害剤での治療から利益を得る可能性がある、乳癌を有する被験者を同定する方法に関する。
【0010】
[0042] MELK
[0043] 母性胚性ロイシンジッパーキナーゼ(MELK)は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)セリン/スレオニンキナーゼファミリーの非典型的なメンバーである。MELKは、幹細胞再生、細胞周期進行、及びプレmRNAスプライシングに関連すると示唆されてきた(遺伝子ID 9833)。
【0011】
[0044] FoxM1
[0045] 哺乳動物の転写因子のフォークヘッド(Forkhead)ボックス(Fox)ファミリーには、ウィングド(winged)ヘリックスDNA結合ドメインにおいて相同性を共有する、50種より多い哺乳動物タンパク質が含まれる。FoxM1転写因子の発現は、細胞周期のG1期に誘導されて、その発現は、S期と有糸分裂の間も継続する。FoxM1は、すべての増殖中の哺乳動物細胞と腫瘍由来細胞系において発現されて、その発現は、細胞周期を脱した最終分化細胞において消失する。FoxM1タンパク質の転写活性は、Ras−MAPKシグナル伝達に依存している(Wang et al. 2005)。FoxM1は、多くのG2期特異的遺伝子の発現を調節して、染色体安定性に必須である。FoxM1の損失は、G2期の遅延、染色体の誤分離、及び度重なるサイトキネシスの失敗が含まれる、多面的な細胞周期障害をもたらす。適時の有糸分裂エントリーには、FoxM1によるサイクリンBの転写活性化が必須である(Laoukili et al. 2005)。
【0012】
[0046] 乳癌
[0047] 乳癌は、組織学、治療応答、及び患者の治療転帰において高度の多様性がある、異質性疾患である。転写プロファイリング解析により、乳癌の少なくとも5種の「固有」サブタイプ:正常乳腺様、ルミナルA、ルミナルB、HER2/Neu高濃度、及び基底細胞様乳癌(BBC)が再現性よく同定されてきた(Perou et al., 2000; Sorlie et al., 2001)。そのルミナル対照物とは異なって、BBC細胞では、エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)の発現が欠落しているので、臨床的に定義される「トリプルネガティブ」乳癌(TNBC)(これも、ER/PR発現の欠損によって特性決定される)と重なる部分が多い(Foulkes et al. 2010; Perou 2011)。ルミナル乳癌の治療にきわめて有効である標的指向療法に対してBBC又はTNBC細胞が相対的に無反応であるのは、これらの分子標的が欠損しているためである。本発明の1つの側面は、エストロゲン受容体陰性(ER
−)である癌細胞を有する乳癌被験者を同定する。本発明の別の側面は、プロゲステロン受容体陰性(PR
−)である癌細胞を有する乳癌被験者を同定する。本発明のなお別の側面は、HER2陰性(HER2
−)である癌細胞を有する乳癌被験者を同定する。いくつかの態様では、ER
−でPR
−である被験者を同定する。いくつかの態様では、ER
−、PR
−、及びHER2
−である被験者を同定する。
【0013】
[0048] 被験者のER、PR、及びHER2状況を判定するために免疫組織化学法又はイムノブロッティング法を使用してよい。他の方法も使用してよい。使用し得る例示のER抗体は、1D5抗体であり、使用し得る例示のPR抗体は、Clone Pgr636であり、そして使用し得る例示のHER2検定法は、HercepTest
TM(DAKO North America,カリフォルニア州カーピンテリア)である。
【0014】
[0049] 阻害剤
[0050] 本明細書に使用するように、乳癌細胞を「阻害する」、「阻害すること」、又は「その成長又は増殖を阻害する」という用語は、乳癌細胞の成長を遅らせること、妨げること、阻むこと、又は止めることを意味して、必ずしも乳癌細胞成長の完全な消失を含意しない。「阻害する」、「阻害すること」、等の用語は、2つの状態間の定量的な差異を示して、2つの状態間の少なくとも統計学的に有意な差を意味する。例えば、「乳癌細胞の成長を阻害するのに有効な量」は、その細胞の成長の速度が未処理細胞のそれより少なくとも統計学的に有意に異なるようになることを意味する。そのような用語は、本明細書において、例えば、細胞増殖の速度へ適用される。
【0015】
[0051] 「MELK阻害剤」又は「FoxM1阻害剤」という用語は、それぞれMELK又はFoxM1の発現又は活性を阻害することが可能なあらゆる化合物、即ち、特に、その遺伝子の転写、RNAの成熟化、mRNAの翻訳、そのタンパク質の翻訳後修飾、そのタンパク質の酵素活性、それの基質との相互作用、等を阻害するあらゆる化合物を意味する。
【0016】
[0052] 阻害剤の非限定的な例には、RNAi、リボザイム、アンチセンス分子、アプタマー、抗体、又はあらゆる種類のアゴニストが含まれる。いくつかの態様では、MELK又はFoxM1、又はMELKとFoxM1の両方の発現又は活性を阻害するために、RNA干渉を使用してよい。RNA干渉に媒介することが可能な分子には、限定されないが、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及びショートヘアピンRNA(shRNA)が含まれる。本明細書に使用するように、RNAiに媒介することが可能な分子は、RNAだけを含有する分子に限定される必要はなくて、「siNA」分子、「低分子干渉核酸」と呼ばれる、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドがさらに含まれる。しかしながら、RNAiを支援するのにsiNA分子内にリボヌクレオチドの存在を必要としない、このようなsiNA分子は、単数又は複数の付着リンカー、又は2’−OH基の有る1以上のヌクレオチドを含有する、他の付着又は結合基、部分、又は鎖を有する可能性がある。siNA分子には、ヌクレオチド位置の約5、10、20、30、40、又は50%にリボヌクレオチドが含まれてもよい。
【0017】
[0053] 「RNA干渉(RNAi)」という用語は、上記に記載のRNAiに媒介することが可能な分子によって始動される配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスに言及する(Fire et al., 1998, Nature, 391, 806-11)。細胞中の長い二本鎖RNA(dsRNA)によって、ダイサー(dicer)と呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性が刺激される。ダイサーは、長いdsRNAのsiRNAの短片へのプロセシングに関与する(Bernstein et al., 2001, Nature, 409, 363-6)。ダイサー活性に由来するsiRNAは、典型的には、長さが約21〜23個のヌクレオチドであって、約19個の塩基対の二重鎖が含まれる。
【0018】
[0054] RNAi応答はまた、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)とよく言及される、siRNAを含有するエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とするが、これは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断に媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる(Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494-498)。siRNA媒介性RNAiは、多様な系で研究されてきた。ショウジョウバエの胚溶解液における最新の研究は、siRNAの長さ、構造、化学組成、及び配列について、効率的なRNAi活性に媒介するのに必須である特定の必要条件を明らかにした(Elbashir et al., 2001, EMBO J., 20, 6877-88)。RNAiの間、標的mRNAの分解は、遺伝子発現の必然的な配列特異的阻害とともに誘導される。「低分子干渉性」又は「低分子干渉RNA」又は「siRNA」という用語は、二本鎖RNAを形成する核酸に言及し、この二本鎖RNAは、同じ細胞において、そのsiRNAが遺伝子又は標的遺伝子として発現されるとき、その遺伝子又は標的遺伝子の発現を抑制するか又は阻害する能力を有する。このように、「siRNA」は、相補的な鎖によって形成される二本鎖RNAに言及する。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成するsiRNAの相補的な部分は、典型的には、実質的又は完全な同一性を有する。1つの態様において、siRNAは、標的遺伝子に対して実質的又は完全な同一性を有して二本鎖siRNAを形成する核酸に言及する。siRNAの配列は、標的遺伝子の全長、又はそのサブ配列に一致する可能性がある。siRNAは、siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列が標的指向される遺伝子のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるという意味で、その遺伝子へ「標的指向」される。siRNA配列の二重鎖は、siRNAと標的RNAを相補的な塩基対合相互作用により一緒にするのに十分な長さである必要がある。本発明のsiRNAは、多様な長さのものであってよい。siRNAの長さは、好ましくは、10個以上のヌクレオチドであって、標的RNAと安定的に相互作用するのに十分な長さであり;具体的には、10〜30個のヌクレオチド;より具体的には、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、及び30個のように、10と30の間の任意の整数個のヌクレオチドである。「十分な長さ」は、期待条件下で企図される機能をもたらすのに十分大きな長さである、10個以上のヌクレオチドのヌクレオチドを意味する。「安定的に相互作用する」という用語は、低分子干渉RNAの標的核酸との相互作用(例えば、生理学的条件下で標的中の相補的なヌクレオチドと水素結合を形成することによって)に言及する。
【0019】
[0055] siRNAは、核酸配列によってコードされる場合があって、その核酸配列には、プロモーターが含まれる可能性もある。その核酸配列には、ポリアデニル化シグナルも含まれ得る。いくつかの態様において、ポリアデニル化シグナルは、合成の最小ポリアデニル化シグナルである。siRNAのRNA二重鎖は、合成オリゴヌクレオチドを使用して、試験管内で構築してよい。
【0020】
[0056] いくつかの態様において、阻害剤は、ショートヘアピンRNA(shRNA)配列であってよい。「ショートヘアピンRNA」又は「shRNA」という用語は、RNA干渉を介して遺伝子発現を静止させるのに使用し得る強固な(tight)ヘアピンターンになるRNA配列を有するRNA分子に言及する。このshRNAヘアピン構造は、細胞機構によってsiRNAへ切断されてから、これがRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)へ結合する。この複合体は、それへ結合しているsiRNAに適合するmRNAへ結合してそれを切断する。siRNAの配列は、標的遺伝子の全長又はそのサブ配列に一致する可能性がある。siRNAは、siRNAの二重鎖部分のヌクレオチド配列が上記に記載されるような標的指向される遺伝子のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるという意味で、その遺伝子へ「標的指向」される。shRNAは、組換えDNA技術を使用して、ベクター中へクローン化することができる。
【0021】
[0057] siRNAは、合成オリゴヌクレオチド又は適正な転写酵素を使用して試験管内で構築しても、適正な転写酵素又は発現ベクターを使用して生体内で構築してもよい。siRNAには、センスRNA鎖と相補的なアンチセンスRNA鎖が含まれ、これらは、標準的なワトソン・クリック型塩基対合相互作用によって一緒にアニールされて塩基対を形成する。本発明のsiRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖は、相補的な一本鎖RNA分子であり得て、この相補的な塩基対を連結してsiRNAを形成させるヘアピン構造が含まれ得る、2つの相補的な部分をコードする二本鎖(ds)siRNA又はDNAポリヌクレオチドを形成する。好ましくは、dsRNA又はDNAポリヌクレオチドによって形成されるsiRNAの二重鎖領域には、約15〜30個の塩基対、より好ましくは、約19〜25個の塩基対が含まれる。このsiRNA二重鎖領域の長さは、15と30の間の任意の正の整数個のヌクレオチドであってよい。
【0022】
[0058] dsRNAに由来する本発明のsiRNAには、部分精製RNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、又は組換え産生RNA、並びに、1以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、及び/又は改変によって天然に存在するRNAとは異なる、改変されたRNAを含めてよい。このような改変には、siRNAをヌクレアーゼ消化に対して抵抗性にする修飾を含めて、siRNAの端(複数)への付加、又はsiRNAの1以上の内部ヌクレオチドへの付加といった、非ヌクレオチド物質の付加が含まれる可能性がある。
【0023】
[0059] 本発明のsiRNAの一方又は両方の鎖には、3’オーバーハングが含まれる場合がある。本明細書に使用するように、「3’オーバーハング」は、RNA鎖の3’端から延びる少なくとも1つの非対合ヌクレオチドに言及する。従って、ある態様において、siRNAには、1〜約6個の長さのヌクレオチド(これには、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドが含まれる)、好ましくは1〜約5個の長さのヌクレオチド、より好ましくは1〜約4個の長さのヌクレオチド、そして特に好ましくは約2〜約4個の長さのヌクレオチドである、少なくとも1つの3’オーバーハングが含まれる場合がある。
【0024】
[0060] siRNA分子の両鎖に3’オーバーハングが含まれてよく、オーバーハングの長さは、それぞれの鎖で同じでも異なってもよい。好ましくは、3’オーバーハングは、siRNAの両鎖に存在し得て、2個の長さのヌクレオチドである。3’オーバーハングはまた、分解に対して安定化される場合がある。例えば、オーバーハングは、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドのようなプリンヌクレオチドを含めることによって、ピリミジンヌクレオチドの修飾類似体による置換によって安定化され得る(例えば、3’オーバーハング中のウリジンヌクレオチドの2’−デオキシチミジンでの置換は、寛容されて、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2’−デオキシチミジン中の2’ヒドロキシルの非存在は、組織培養基において、3’オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を有意に高める。
【0025】
[0061] 上記に記載したように、siRNAのRNA二重鎖部分は、ヘアピン構造の一部であってよい。このヘアピン構造は、二重鎖を形成する2つの配列の間に位置するループ部分をさらに含有してよい。このループは、長さが変動する可能性がある。いくつかの態様において、ループは、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13個の長さのヌクレオチドであり得る。ヘアピン構造はまた、3’オーバーハング部分又は5’オーバーハング部分を含有してよい。いくつかの態様において、オーバーハングは、0、1、2、3、4、又は5個の長さのヌクレオチドを含有する、3’又は5’オーバーハングである。
【0026】
[0062] 本発明のsiRNAは、当業者に知られたいくつかの技術を使用して入手し得る。例えば、siRNAは、適正に保護されたリボヌクレオシドホスホロアミダイトと慣用のDNA/RNA合成機を使用して、化学的に合成し得る。siRNAは、2つの別個の相補的なRNA分子として合成しても、2つの相補的な領域がある単一のRNA分子として合成してもよい。合成RNA分子又は合成試薬の市販供給業者には、Dharmacon Research(コロラド州ラファイエット、アメリカ)、Pierce Chemical(イリノイ州ロックフォード、アメリカ)、Glen Research(バージニア州スターリング、アメリカ)、ChemGenes(マサチューセッツ州アッシュランド、アメリカ)、及び Cruachem(グラスゴー、イギリス)が含まれる。
【0027】
[0063] 送達系
[0064] いくつかの態様において、MELK阻害剤及び/又はFoxM1阻害剤は、ベクターのような核酸送達系を使用して、細胞へ送達され得る。「ベクター」という用語は、ヘルパーウイルスのような適切な制御要素と結合するときに複製が可能であって、遺伝子配列を細胞間で移すことができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン、等のような、どの遺伝要素にも言及する。従って、この用語には、クローニングと発現の担体、並びに複製欠損ウイルスベクターが含まれる。当該技術分野では、多種類のベクターが存在して、公知である。
【0028】
[0065] 「組換え」という用語は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、又はベクターへの言及とともに使用される場合、その細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種の核酸又はタンパク質の導入、又はネイティブな核酸又はタンパク質の改変によって修飾されたこと、又は該細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、該細胞のネイティブ(非組換え)型の内部では見出されない遺伝子を発現するか、又は他のやり方では、異常に発現される、十分に発現されない、又は全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0029】
[0066] 「異種の」という用語は、核酸の諸部分への言及とともに使用される場合、該核酸が、互いに対する同じ関係では天然に見出されない、2以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、その核酸は、典型的には、組換え的に産生され、関連の無い遺伝子由来の2以上の配列(例えば、ある供給源由来のプロモーターと別の供給源由来のコーディング領域)が新たな機能性核酸となるように配置される。同様に、異種タンパク質は、互いに対する同じ関係では天然に見出されない2以上のサブ配列を該タンパク質が含むことを示す(例、融合タンパク質)。
【0030】
[0067] 「機能的に連結している」という用語は、選択された核酸配列(例えば、siRNA構築体をコードする)がプロモーターと近接して、該プロモーターがその選択された核酸配列の発現を調節することを可能にすることを意味する。一般に、プロモーターは、転写と翻訳の方向に関して、選択される核酸配列の上流に位置する。
【0031】
[0068] 分子の「変異体」という用語は、ネイティブ分子の配列に実質的に類似している配列である。ヌクレオチド配列についての変異体には、遺伝暗号の縮重性のために、ネイティブタンパク質と同一のアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。上記のような天然に存在する対立遺伝子変異体は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)やハイブリダイゼーション技術を用いるような、分子生物学技術の使用で同定することができる。変異体ヌクレオチド配列には、ネイティブタンパク質、並びにアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードする、(例えば、部位特異的変異導入法を使用することによって産生されるような)合成的に誘導されるヌクレオチド配列も含まれる。一般に、本発明のヌクレオチド配列変異体は、ネイティブ(内因性)ヌクレオチド配列に対して少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%までの配列同一性を有するものである。
【0032】
[0069] 特別な核酸配列の「保守的に修飾される変異」という用語は、同一であるか又は本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列に言及する。遺伝暗号の縮重性の故に、どの所与のポリペプチドも、多数の機能的に同一の核酸によってコードされる。例えば、CGT、CGC、CGA、CGG、AGA、及びAGGのコドンは、いずれもアミノ酸のアルギニンをコードする。従って、コドンによってアルギニンが特定されるどの位置でも、そのコドンは、コードされるタンパク質を変えることなく、記載の対応コドンのいずれへも変えることができる。このような核酸変異は、「保守的に修飾される変異」の1種である、「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書に記載されるどの核酸配列も、他に特記する場合を除けば、あらゆる可能なサイレント変異を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンである、ATGを除く)を標準技術によって修飾して、機能的に同一の分子を産生することが可能であることを認められよう。従って、それぞれの記載配列においては、ポリペプチドをコードする核酸のそれぞれの「サイレント変異」が暗黙裡に了解されている。
【0033】
[0070] 2以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「実質的に同一な」又は「実質的な同一性」という用語は、ある比較枠又は指定領域にわたって以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用するか又はマニュアル並置と目視検査によって測定されるように、最大の対応について比較して並置する場合に、同一であるか又は同一である特定百分率(即ち、特定の領域にわたって、少なくとも約60%、好ましくは65%、70%、75%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性)のアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する、2以上の配列又はサブ配列に言及する。この定義は、その文脈が示す場合、DNAヌクレオチドへ相補的なRNAヌクレオチドといった、配列の相補体(complement)へも類似して言及する。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約6〜7個のアミノ酸又は25個のヌクレオチドの長さである領域の範囲で存在する。
【0034】
[0071] パーセント配列同一性や配列類似性を判定するのに適しているアルゴリズムの例は、Altschul et al., 1977, Nuc. Acids Res. 25: 3389-3402 に記載されている、BLASTアルゴリズムである。BLASTは、本明細書に記載される諸変数とともに使用されて、本発明の核酸及びタンパク質についてのパーセント配列同一性を判定する。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、米国国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して一般に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さの文字列(word)と並置させるときに、ある正値の閾値スコアTに合致するか又はこれを満足させる、検索(query)配列中の長さWの短い文字列を同定することによって高スコア配列対(HSP)を最初に同定することを含む。Tは、近傍文字列スコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschul et al., 上記)と呼ばれる。これらの初期の近傍文字列ヒットは、これらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシード(seeds)として機能する。この文字列ヒットは、累積アラインメント・スコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に延長される。ヌクレオチド配列では、変数M(合致残基対へのリワードスコア;いつでも>0)と変数N(非合致残基へのペナルティスコア;いつでも<0)を使用して計算される。アミノ酸配列では、累積スコアを計算するのに、スコアリングマトリックスを使用する。文字列ヒットの各方向への延長を停止するのは、累積アラインメント・スコアがその最大到達値から数量Xだけ低下する場合、この累積スコアが1つ以上の陰性スコアリング(negative-scoring)残基アラインメントの蓄積によりゼロ以下になる場合、又はどちらかの配列の末端に達する場合である。BLASTアルゴリズムの変数、W、T、及びXによって、上記アラインメントの感度及び速度が決定される。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列についての)は、デフォルトとして11の文字列長さ(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列についてのBLASTPプログラムは、デフォルトとして3の文字列長さ(W)、及び10の期待値(E)、50のBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 10919 (1989) を参照のこと)、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、及び両鎖の比較を使用する。
【0035】
[0072] BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析を実施する(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787 (1993) を参照のこと)。BLASTアルゴニズムによって提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸の配列間の合致が偶然生じる確率の指標を提供する、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))である。例えば、ある核酸の参照核酸への比較において、最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、そして最も好ましくは約0.001未満であれば、このテスト核酸は、参照配列に類似しているとみなされる。
【0036】
[0073] 組換えDNAは、特別な細胞中への導入に有用な任意の手順(例えば、物理学的又は生物学的な方法)によって、siRNAをコードするDNAより構成される発現ベクターでのトランスフェクションによって宿主細胞(例、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫の細胞)の中へ容易に導入して、本発明のDNA分子又は配列が宿主細胞によって発現されるように、その組換えDNAがそのゲノム中へ安定的に組み込まれているか又はエピソーム性因子として存在している細胞を産生することが可能である。好ましくは、このDNAは、宿主細胞中へベクターを介して導入される。宿主細胞は、好ましくは、真核生物起源(例、植物、哺乳動物、昆虫、酵母、又は真菌起源)であるが、非真核生物起源の宿主細胞も利用してよい。
【0037】
[0074] 予め選択されたDNA又はRNA二重鎖を宿主細胞中へ導入するための物理学的な方法には、限定されないが、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、DEAE−デキストラン、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、イムノリポソーム、脂質、カチオン性脂質、リン脂質、又はリポソーム、等が含まれる。当業者には、DNA又はRNA二重鎖を細胞中へ送達するのに、どの方法も使用し得ることがわかっている。
【0038】
[0075] siRNAベクター
[0076] 本発明のsiRNAはまた、2つの別々な相補的なRNA分子として、又は2つの相補的な領域がある単一のRNA分子として、組換えプラスミドより発現されてよい。
【0039】
[0077] 本発明のsiRNAを発現させるのに適したベクターの選択、このsiRNAを発現させるための核酸配列をプラスミドの中へ挿入するための方法、及びこの組換えプラスミドを目的の細胞へ送達するための方法は、当該技術分野の技術範囲内にある。例えば、Sambrook et al. には、組換えDNAベクターを構築する方法とDNAの産生の方法を見出すことができる。
【0040】
[0078] 本発明のsiRNAは、プラスミドベクター中へクローン化されて、どの好適なプロモーターを使用しても発現される、ポリヌクレオチド配列であってよい。本発明のsiRNAをプラスミドより発現させるのに適したプロモーターには、限定されないが、H1及びU6 RNA polIIIプロモーター配列とウイルスプロモーター(ウイルスLTR、アデノウイルス、SV40、及びCMVプロモーターが含まれる)が含まれる。特別な組織又は特別な細胞内環境におけるsiRNAの発現のための組織特異的な誘導可能又は制御可能なプロモーターを含めて、当業者に知られた追加のプロモーターも使用してよい。ベクターには、限定されないが、イントロン、エンハンサー、及びポリアデニル化配列を含めて、追加の調節又は構造因子も含めてよい。これらの因子は、細胞中のsiRNAの最適な性能を得るために所望されるようにDNAに含めてよくて、そのDNAの機能に必要であってもなくてもよい。siRNAをコードするポリヌクレオチドと一緒に、又は標的細胞への送達用の別のプラスミドとして、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子を含めてもよい。当業者に知られた追加の因子も含めてよい。
【0041】
[0079] siRNAは、上記に記載した諸因子が含まれ得るウイルスベクター中へクローン化されるポリヌクレオチド配列からも発現されてよい。細胞への遺伝子送達に適したウイルスベクターには、限定されないが、すべてのビリオンタンパク質の合成を指令することは可能であるが、感染粒子を作ることは不可能である、複製欠損ウイルスが含まれる。例示のウイルスには、限定されないが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、及びアルファウイルスが含まれる。
【0042】
[0080] いくつかの態様において、本発明の実施では、他に示さなければ、当該技術分野の技量内にある、分子生物学、免疫学、微生物学、細胞生物学、及び組換えDNAの慣用技術が利用されよう。例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis,「分子クローニング:実験マニュアル(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL)」(現行版);「分子生物学の最新プロトコール(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)(F. M. Ausubel et al. 監修(現行版)); 「酵素学の方法(METHODS IN ENZYMOLOGY)」シリーズ(アカデミックプレス社);「PCR2:実践アプローチ(PCR 2: A PRACTICAL APPROACH)」現行版);「抗体:実験マニュアルと動物細胞培養(ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL and ANIMAL CELL CULTURE)」(R. I. Freshney, 監修(現行版);「DNAクローニング:実践アプローチ(DNA Cloning: A Practical Approach)」第I巻と第II巻(D. Glover, 監修);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(N. Gait, 監修、現行版);「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」(B. Hames & S. Higgins, 監修、現行版);「転写と翻訳(Transcription and Translation)(B. Hames & S. Higgins, 監修、現行版);「基礎ウイルス学(Fundamental Virology)」第2版、第I巻と第II巻(B. N. Fields and D. M. Knipe, 監修)を参照のこと。
【0043】
[0081] 診断/予後マーカー
[0082] いくつかの側面において、本発明は、1以上の診断又は予後マーカーの試料(例、癌患者からの生体試料)中の存在を検出する方法に関する。当業者に知られている多様なスクリーニング方法を使用して、DNA、RNA、及びタンパク質の検出を含めて、試料中のマーカーの存在を検出することができる。下記に記載する技術を使用して、非癌被験者より入手される試料と比べた、患者より入手される試料中のMELK及び/又はFoxM1の存在又は非存在、又は量を決定することができる。いくつかの態様では、患者について、ER、PR、及び/又はHER2受容体の状況を検査することができる。ER
−、ER
−/PR
−、又はER
−/PR
−/HER2
−状況を有する患者における、MELK及び/又はFoxM1の同定、又はMELK及び/又はFoxM1の発現レベルは、医師が患者への治療プロトコールを決定するのに役立つ。
【0044】
[0083] いくつかの態様において、マーカーは、MELK及び/又はFoxM1についての、対照と比べた遺伝子コピー数の増加、タンパク質発現の増加、mRNA発現の変化、等であり得る。
【0045】
[0084] 非限定的な例を挙げると、ER
−、ER
−/PR
−、又はER
−/PR
−/HER2
−状況を有する患者では、MELK阻害剤、FoxM1阻害剤、又はMELK阻害剤とFoxM1阻害剤の両方で患者を治療することの必要性を示す場合がある。いくつかの態様では、MELK、FoxM1、又はMELKとFoxM1の両方の発現が増加した患者では、MELK阻害剤、FoxM1阻害剤、又はMELK阻害剤とFoxM1阻害剤の両方で患者を治療することの必要性を示す場合がある。
【0046】
[0085] 治療の方法
[0086] 様々な態様において、本発明は、癌を有する患者の治療の方法を提供する。この方法は、概して、阻害剤の投与を含む。1つの阻害剤は、MELK阻害剤であり得る。1つの阻害剤は、FoxM1阻害剤であり得る。この方法には、MELK阻害剤とFoxM1阻害剤の投与が含まれる場合がある。
【0047】
[0087] 「〜を治療すること」、「〜を治療する」、又は「治療」は、本発明の文脈では、障害又は疾患に関連した症状の軽減、又はこれらの症状のさらなる進行又は悪化の停止、又は疾患又は障害の予防又は防止を意味する。例えば、本発明の文脈内では、成功裡の治療に、乳癌に関連した症状の軽減、又は乳癌のような疾患の進行の停止を含めてよい。
【0048】
[0088] いくつかの態様において、阻害剤は、MELK又はFoxM1を阻害することが可能な、化学化合物、天然又は合成の化合物、特に、植物、細菌、ウイルス、動物、真核生物、合成、又は半合成の起源の有機又は無機分子である。FoxM1を阻害する化学化合物の非限定的な例には、チオストレプトンが含まれる。
【0049】
[0089] 本明細書に使用するように、「医薬的に許容される塩」という用語には、例えば、塩基性窒素原子のある化合物より、好ましくは有機酸又は無機酸との酸付加塩として生成される塩、特に、医薬的に許容される塩が含まれる。好適な無機酸は、例えば、塩酸のようなハロゲン酸、硫酸、又はリン酸である。好適な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸又はスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸類(グルタミン酸又はアスパラギン酸のような)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、桂皮酸、メタン又はエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、2又は3−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−、又はN−プロピル−スルファミン酸、又は他の有機プロトン酸(アスコルビン酸のような)である。
【0050】
[0090] 本発明の化合物は、単独で使用しても、医薬的に許容される担体又は賦形剤と一緒の組成物において使用してもよい。本発明の医薬組成物は、1以上の医薬的に許容される担体と一緒に製剤化される、治療有効量の化合物を含む。本明細書に使用するように、「医薬的に許容される担体」という用語は、無害で不活性の固体、半固体、又は液体のあらゆる種類の充填剤、希釈剤、被包化材料、又は製剤化助剤を意味する。医薬的に許容される担体として役立つ可能性がある材料のいくつかの例は、乳糖、ブドウ糖、及びショ糖のような糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンのようなデンプン類;セルロースと、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースのようなその誘導体;トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;ココア脂及び坐剤ワックスのような賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油のような油剤;プロピレングリコールのようなグリコール類;オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルのようなエステル類;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝化剤;アルギン酸;発熱物質除去蒸留水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液剤、並びに、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような他の無害で適合可能な滑沢剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤である。保存剤と抗酸化剤も、製剤開発者の判断に従って組成物中に存在し得る。他の好適な医薬的に許容される賦形剤については、参照により本明細書に組み込まれる、「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」マック・パブリッシング社、ニュージャージー州(1991)に記載されている。
【0051】
[0091] 本発明の化合物は、慣用の無害な医薬的に許容される担体、アジュバント、及び媒体(vehicles)を所望により含有する投与単位製剤において、ヒトや他の動物へ経口的、非経口的に、舌下より、エアゾール化又は吸入スプレー剤によって、直腸より、嚢内、膣内、腹腔内、頬内、又は局所的に投与し得る。局所投与は、経皮パッチ剤又はイオントフォレーシスデバイスのような経皮投与の使用を含んでもよい。本明細書に使用する「非経口」という用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射、又は注入技術が含まれる。
【0052】
[0092] 製剤化の方法は、当該技術分野で公知であって、例えば、「レミントン:調剤の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」マックパブリッシングカンパニー、ペンシルヴェニア州イーストン、第19版(1995)に開示されている。本発明における使用のための医薬組成物は、無菌で非発熱原性の液体溶液剤又は懸濁液剤、被覆カプセル剤、坐剤、凍結乾燥散剤、経皮パッチ剤の形態、又は当該技術分野で知られた他の形態であり得る。
【0053】
[0093] 好適な分散剤又は湿潤剤と懸濁剤を使用して、既知の技術に従って、注射可能な調製品、例えば、無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液剤を製剤化し得る。この無菌の注射可能な調製品はまた、無害な非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液剤、懸濁液剤、又は乳液剤(例えば、1,3−プロパンジオール又は1,3−ブタンジオール中の溶液剤として)であってよい。利用し得る、許容される媒体及び溶媒には、水、リンゲル液(U.S.P.)、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油剤も、溶媒又は懸濁媒体として慣用的に利用される。この目的のためには、合成のモノ若しくはジグリセリドを含めて、どの無刺激性固定油剤も利用してよい。加えて、注射可能製剤の調製には、オレイン酸のような脂肪酸が使用を見出す。注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、又は使用に先立って無菌水又は他の無菌の注射可能媒体に溶かすか又は分散させることが可能である無菌の固体組成物の形態で滅菌剤を取り込むことによって、滅菌することができる。
【0054】
[0094] 薬物の効果を延長させるために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることがしばしば望まれる。このことは、水にほとんど溶けない結晶性又は非結晶性素材の液体懸濁液剤の使用によって達成され得る。このとき、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存するが、これは、結晶の大きさや結晶型に依存する場合がある。あるいは、非経口投与される医薬剤形の遅延吸収は、該薬物を油性媒体に溶かすか又は懸濁させることによって達成され得る。注射可能なデポー剤形は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中の薬物の微小被包マトリックス剤を生成することによって作製される。薬物の高分子に対する比と利用する特別なポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。身体組織と適合可能である、リポソーム剤又はミクロ乳液剤に薬物を捕捉させることによっても、注射可能なデポー製剤を調製し得る。
【0055】
[0095] 直腸又は膣投与用の組成物は、好ましくは、(周囲温度で固体であるが、体温では液体であるので、直腸又は膣腔で融けて、活性化合物を放出する)ココア脂、ポリエチレングリコール、又は坐剤ワックスのような、好適な非刺激性の賦形剤又は担体と本発明の化合物を混合することによって調製することができる、坐剤である。
【0056】
[0096] 経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性化合物は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容される賦形剤又は担体、及び/又はa)デンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び珪酸のような充填剤又は増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及びアカシアのような結合剤、c)グリセロールのような保潤剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の珪酸塩、及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、e)パラフィンのような溶解遅延剤、f)四級アンモニウム化合物のような吸収加速剤、g)例えば、アセチルアルコール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトクレイのような吸収剤、及びi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は、緩衝化剤も含んでよい。
【0057】
[0097] 乳糖(lactose)又は乳糖(milk sugar)、並びに高分子量ポリエチレングリコール類、等のような賦形剤を使用する軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤では、充填剤として、似たタイプの固体組成物も利用してよい。
【0058】
[0098] 錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング剤のようなコーティング剤及びシェル剤や医薬製剤化技術分野で公知の他のコーティング剤とともに調製することができる。それらは、不透明化剤を含有してもよくて、有効成分(複数)だけを、又は選好的に腸管の特定部分において、任意選択的に遅延されるやり方で放出する組成物でもあり得る。使用し得る埋込型組成物の例には、高分子物質とワックス類が含まれる。
【0059】
[0099] 活性化合物は、上記に述べたような1以上の賦形剤と一緒の微小被包型でもあり得る。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティング剤のようなコーティング剤及びシェル剤、放出制御コーティング剤、及び医薬製剤化技術分野で公知の他のコーティング剤とともに調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、ショ糖、乳糖、又はデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合され得る。そのような剤形はまた、通例のように、不活性希釈剤以外の追加物質、例えば、打錠用滑沢剤やステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースのような他の打錠補助剤も含んでよい。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、その剤形は、緩衝化剤も含んでよい。それらは、不透明化剤を含有してもよくて、有効成分(複数)だけを、又は選好的に腸管の特定部分において、任意選択的に遅延されるやり方で放出する組成物でもあり得る。使用し得る埋込型組成物の例には、高分子物質とワックス類が含まれる。
【0060】
[00100] 経口投与用の液体剤形には、医薬的に許容される乳液剤、ミクロ乳液剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水又は他の溶媒のような、当該技術分野でよく使用される不活性希釈剤、可溶化剤及び乳化剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、EtOAc、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油剤(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、ソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物のような)を含有してよい。不活性希釈剤以外に、この経口組成物には、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤のようなアジュバントも含めることができる。
【0061】
[00101] 本発明の化合物の局所又は経皮投与用の剤形には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、又はパッチ剤が含まれる。有効成分は、無菌条件の下で、医薬的に許容される担体と、必要とされる保存剤又は必要とされ得る緩衝液と一緒に混合される。本発明の範囲内にあるものとして、眼科用製剤、点耳薬剤、等も考慮される。
【0062】
[00102] 軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、及びゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動物性脂肪及び植物性脂肪、油剤、ワックス剤、パラフィン類、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール類、シリコーン剤、ベントナイト、珪酸、タルク、及び二酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有してよい。
【0063】
[00103] 本発明の組成物はまた、液体エアゾール剤又は吸入可能な乾燥粉末剤としての送達用に製剤化され得る。液体エアゾール製剤は、終末細気管支及び呼吸細気管支へ送達し得る粒径が優勢になるように噴霧化され得る。
【0064】
[00104] 本発明のエアゾール化製剤は、好ましくは主に1μm〜5μmの間の質量中間平均直径を有するエアゾール粒子の形成を可能にするように選択される、ジェット、振動多孔板、又は超音波ネブライザーのようなエアゾール形成デバイスを使用して送達され得る。さらに、この製剤は、好ましくは、平衡化したモル浸透圧イオン強度及び塩化物濃度と、本発明の化合物の有効量を感染の部位へ送達することが可能な最小エアゾール化量を有する。追加的に、エアゾール化製剤は、好ましくは、気道の機能性を不都合に損害せず、望まれない副作用を引き起こさない。
【0065】
[00105] 本発明のエアゾール製剤の投与に適したエアゾール化デバイスには、本発明の製剤を1〜5μmの粒径範囲が優勢なエアゾール粒径へ噴霧化することが可能である、例えば、ジェット、振動多孔板、超音波ネブライザーと、活力式(energized)乾燥粉末吸入器が含まれる。本出願において、「優勢な」は、すべての発生したエアゾール粒子の少なくとも70%、しかし好ましくは90%より多くが1〜5μm範囲内にあることを意味する。ジェットネブライザーは、空気圧によって作動して、液体溶液剤をエアゾール小滴へ粉砕する。振動多孔板ネブライザーは、迅速に振動する多孔板によって発生する音波真空を使用して溶媒小滴を多孔板より押し出すことによって作動する。超音波ネブライザーは、液体を小さなエアゾール小滴へ剪断する圧電結晶によって作動する。多様の好適なデバイスが利用可能であり、例えば、AERONEB 及び AERODOSE 振動多孔板ネブライザー(AeroGen 社、カリフォルニア州サニーヴェール)、SIDESTREAM ネブライザー(Medic-Aid 社、ウェストサセックス州、イギリス)、PARI LC 及び PARI LC STAR ジェットネブライザー(Pari Respiratory Equipment 社、バージニア州リッチモンド)、及び AEROSONIC(DeVilbiss Medizinische Produkte(ドイツ)GmbH、ハイデン、ドイツ)及び ULTRAAIRE(Omron Healthcare 社、イリノイ州ヴァーノンヒルズ)超音波ネブライザーが含まれる。
【0066】
[00106] 本発明の化合物はまた、本発明の化合物に加えて、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有し得る、局所粉末剤及びスプレー剤としての使用のために製剤化され得る。スプレー剤は、クロロフルオロヒドロカーボン類のような通例の推進剤を追加的に含有することができる。
【0067】
[00107] 経皮パッチ剤には、化合物の身体への制御送達をもたらすという追加の利点がある。そのような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解するか又は調合することによって作製することができる。皮膚を通過する化合物の流れを高めるために、吸収エンハンサーも使用することができる。その速度は、速度制御膜を提供すること、又は化合物をポリマーマトリックス又はゲルに分散させることのいずれかによって制御することができる。本発明の化合物はまた、リポソーム剤の形態で投与することができる。当該技術分野で知られているように、リポソームは、一般に、リン脂質又は他の脂質物質から誘導される。リポソーム剤は、水性媒体に分散した単層膜又は多層膜の水和液晶によって生成される。リポソームを生成することが可能な、どの無害な生理学的に許容されて代謝可能な脂質も使用することができる。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、保存剤、賦形剤、等を含有することができる。好ましい脂質は、天然と合成の両方のリン脂質及びホスファチジルコリン類(レシチン類)である。当該技術分野では、リポソームを生成する方法が知られている。例えば、Prescott(監修)、「細胞生物学の方法(Methods in Cell Biology)」XIV 巻、アカデミックプレス、ニューヨーク(1976)、33頁(及び、以下参照)を参照のこと。
【0068】
[00108] 化合物は、単独で投与しても、別の阻害剤と組み合わせて投与してもよく、可能な組合せ療法は、一定の組合せの形態をとるか、又はある化合物と別の阻害剤との投与は、重複するか又は互いに独立してなされる。上記に記載したように、他の治療戦略の文脈でのアジュバント療法が可能であるように、長期療法も、同じく可能である。他の可能な治療法は、腫瘍退縮後に患者の状況を維持するための療法、又は、例えばリスク状態の患者における化学予防療法でさえある。
【0069】
[00109] 本発明の化合物の有効量には、一般に、乳癌細胞の成長又は増殖を検出可能なほどに阻害する、又は乳癌の症状の阻害又は軽減を検出するのに十分なあらゆる量が含まれる。担体材料と組み合わせて単一の剤形をもたらし得る有効成分の量は、治療される宿主と特別な投与形式に依って変動するものである。しかしながら、特別な患者への特定の用量レベルは、利用される特定化合物の活性、患者の年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排出の速度、薬物の組合せ、及び治療を受ける特別な疾患の重症度が含まれる、多様な因子に依存するものであると理解されたい。所与の状況への治療有効量は、定型的な実験によって容易に決定し得て、通常の臨床医の技量と判断の範囲内にある。
【0070】
[00110] 本発明の治療の方法に従えば、ヒト又は下等哺乳動物のような患者において、所望の結果を達成するのに必要であるような量と時間において、ある阻害剤の量を該患者へ投与することによって、乳癌細胞の成長が抑制又は予防される。阻害剤の化合物の「乳癌細胞の成長又は増殖を阻害するのに有効である量」とは、どの医学的治療にも適用可能な妥当な利益/リスク比で、乳癌細胞成長を治療するのに十分な阻害剤の量に言及する。
【0071】
[00111] しかしながら、本発明の化合物及び組成物の全日使用量は、担当医によって、健全な医学的判断の範囲内で決定されるものであると理解されたい。どの特別な患者の特定の治療有効量レベルも、治療される障害とその障害の重症度;利用される特定化合物の活性;利用される特定の組成物;患者の年齢、体重、健康状態、性別、及び食事;利用される特定化合物の投与の時間、投与の経路、及び排出の速度;治療の期間;利用される特定化合物と組み合わせて、又は同時に使用される薬物;並びに医療技術分野で公知の類似因子が含まれる、多様な因子に依存するものである。
【0072】
[00112] 単独で、又は組合せ療法において温血動物(例えば、ヒト)へ投与されるMELK阻害剤又はFoxM1阻害剤の用量は、1日につき、好ましくは、ほぼ0.01mg/kg〜ほぼ1000mg/kg、より好ましくはほぼ1mg/kg〜ほぼ100mg/kgであり、好ましくは、例えば、同じサイズであり得る、1〜3回の単一用量へ分割される。通常、小児は、成人用量の半分を服用するので、小児における阻害剤の選好的な用量範囲は、1日につき、0.5mg/kg〜ほぼ500mg/kgであり、好ましくは、同じサイズであり得る、1〜3回の単一用量へ分割される。
【0073】
[00113] 本明細書の上記及び下記に使用する一般用語は、好ましくは、本開示の文脈内で、他に指定しなければ、以下の意味を有する。
【実施例】
【0074】
[00114] 以下の実施例は、本発明をその範囲に限定することなく本発明を例解するのに役立つ。
【0075】
[00115] 実施例1:HMECの生体内腫瘍生成に寄与する発癌キナーゼの同定
[00116] ヒト初代細胞を明確な遺伝要素で形質転換することは、発癌性の形質転換に関与する特定の遺伝子又は経路を同定するための強力な方法である(Hahn et al.,1999; Zhao et al., 2004)。この目的のために、ヒト乳癌の病理発生に類似する生体内腫瘍生成モデルを開発した。発癌遺伝子キナーゼの研究に適したヒト乳腺上皮細胞(HMEC)ベースの形質転換系が以前に確立された(Zhao et al., 2003)。この系をさらに最適化するために、p53の優性ネガティブ型(p53DD)、NeuT、及びPI3KCA H1047Rを発現するようにHMECを工学処理した。生じる細胞(HMECs−DD−NeuT−PI3KCAと命名)は、マウスにおいて正所性の腫瘍を生成するその能力によって判定されるように、完全に形質転換されていた(図面1A)。このモデルは、乳癌において優勢である、ErbB2とPI3KCAの同時活性化に似ている(Stephens et al., 2012)。
【0076】
[00117] 次に、レトロウイルスベースのキナーゼライブラリー(Boehm et al., 2007)を利用して、マウスにおいて発癌遺伝子のPIK3CAに置き換わってNeuTと協同して腫瘍生成を促進することができるキナーゼについてのスクリーニングを実施した。354ミリストイル化ヒトキナーゼとキナーゼ関連タンパク質をコードする、キノーム(kinome)全体のレトロウイルスライブラリー(Boehm 2007)のサブプールをHMEC−DD−NeuT細胞に感染させた。10〜12のユニークキナーゼORFの37個のサブプールをHMEC−DD−NeuT細胞へ導入した。次いで、この被感染細胞をヌードマウスの鼠径(inguinal)乳腺脂肪体へ注射して、レシピエントマウスについて腫瘍生成を追跡した。37個のプールのうち12個のキナーゼが2〜4ヶ月の潜伏期で腫瘍生成を誘導した。収穫した腫瘍標本と注射前の被感染細胞よりゲノムDNAを抽出した。定量PCRを使用して、この腫瘍中の候補プールにおける各キナーゼの比存在度を決定した。腫瘍の発生の間に特異的に濃縮される、全部で26種のキナーゼを見出した(図面2A、2B)。ヒットとして現れたいくつかのキナーゼは、核内因子κ−Bキナーゼサブユニットεの阻害剤(IKBKE)(Boehm, 2007)、トランスフェクション中の再構成(RET)(Takahashi, 1985)、カゼインキナーゼ1ε(CSNK1E)(Kim 2010)、NIMA関連セリン/スレオニンキナーゼ6(NEK6)(Nassirpour et al., 2010)、及びポロ(polo)様キナーゼ1(Plk1)(Liuetal., 2006)のように、癌原遺伝子又は癌関連遺伝子としてこれまでに示唆されたことがある。
【0077】
[00118] 実施例2:MELKは、乳癌において高度に過剰発現されていて、転帰不良を強く予測する。
【0078】
[00119] 実施例1において記載した遺伝子スクリーニングからの上位得点ヒットの1つは、AMPKセリン/スレオニンキナーゼファミリーの非典型的なメンバーである(Lizcano et al., 2004)、母性胚性ロイシンジッパーキナーゼ(MELK)(図面2A)であった。MELKの正確な生物学的機能についてはほとんど知られていないが、このキナーゼは、多様な腫瘍において頻繁に過剰発現されている(Gray et al., 005)。注目すべきことに、浸潤性乳管癌の392標本と正常乳腺の61標本からなる大きなコホートである「癌ゲノムアトラス(Cancer Genome Atlas)(TCGA)(Koboldt et al., 2012)の乳癌データセットにおいてMELK発現について解析すると、MELK転写産物のレベルは、その正常対照物と比較して、乳癌においてほぼ8倍高かった(図面2A)。この差示的な発現のp値(4.6x10
−54)により、MELKは、乳癌において上位1%の過剰発現遺伝子として位置付けられる(図面2A)。正常乳腺と比べた、乳癌におけるMELKの過剰発現は、他の2つの独立したデータセットについて解析することによってさらに確認された(図面4A;Richardson et al., 2006;Maetal., 2009)。
【0079】
[00120] MELK過剰発現の乳癌に対する潜在的な関連性への洞察を深めるために、MELK発現について、疾患の状況との相関性を解析した。全部で1500名より多い患者からなる、5種の独立した大きなコホート(Desmedt et al., 2007; Hatzis et al., 2011; Schmidt et al., 2008; Wang et al., 2005;表S1)全体で遺伝子発現データを解析することによって、より高いMELK発現の発現が乳癌のより高い組織学的悪性度と強く関連していることが見出された(図面2B,4B);この相関性のp値は、測定した全12,624種以上の遺伝子の中で、いずれも上位1%に位する。図面14、15も参照のこと。
【0080】
[00121] MELK発現について、MELKの発現が転移性再発と相関するかどうかを判定するためにも検証した。早期乳癌患者について転移無しの生存を追跡して、術後にアジュバント全身治療を受けなかった、3種の独立したコホート(van't Veer コホート、Wang コホート、及び Schmidt コホート;表S1)について解析した。この3種のコホートのすべてにおいて、リンパ節陰性腫瘍と当初診断された女性では、より早期の転移と高いMELK発現が強く関連していた(すべてのp値<0.001,ハザード比>2;図面3C,4C)。大多数の患者が高い悪性度とリンパ節陽性乳癌を有して、ほとんどすべての患者がネオアジュバント化学療法及び/又はホルモン療法を受けた、2種のコホート(Hatzis コホート、Loi コホート;下記の表S1)についてさらに解析した。ここでも、MELKの高い発現は、転移再発を確実に予測した(両方のp値<0.001,ハザード比>2;図面2C)。従って、MELK過剰発現は、化学療法やホルモン療法にかかわりなく、乳癌転移の強力な予測マーカーである。この解析はまた、MELKの発現が高い乳癌が高い悪性度に関連して、慣用の乳癌療法へさほど応答しないことを示す。
【0081】
[00122] MELK発現について、乳癌患者の生存の予測値を解析した。全部で1100名以上の患者について全生存率を追跡した、5種の独立した大きなコホート(Desmedt et al., 2007; Esserman et al., 2012; Kao et al., 2011; Pawitan et al., 2005; van de Vijver et al., 2002;表S1)において、MELKの高い発現は、死亡率の増加と強く相関していた(すべてのp値<0.05,ハザード比>2)(図面2D,4D)。まとめると、上記のデータは、MELKが、疾患の組織学的悪性度がより高く、転移の可能性が増加して、生存率がより低い乳癌患者を同定する、確実な予後指標となることを示唆する。
【0082】
[00123] 表S1
【0083】
【表1】
【0084】
[00124] 実施例3:異なるサブタイプの乳癌におけるMELKの過剰発現
[00125] 乳癌の異質性を考慮して、遺伝子発現プロファイリング(Perou et al., 2000; Sorlie et al., 2001)によって定義されるような異なるサブタイプの乳癌においてMELK発現を解析した。多数の乳癌データセット中の標本をPAM50遺伝子サインによって特性決定した(Parker et al., 2009)。全部で1200名を超える患者からなる4つの独立したコホートでは、これらの異なるサブタイプの間で、衝撃的に類似したMELK発現のパターンが観測された(図面3E、4E)。ルミナルAと正常細胞様サブタイプは、MELKの最低の発現を示した。ルミナル特異的遺伝子のより低い発現を有するルミナルB腫瘍(Solie et al., 2001)とHER2濃縮腫瘍は、ルミナルA又は正常細胞様腫瘍より高いMELK発現を有した(p<0.0001)。最後に、基底細胞様乳癌(BBC)は、すべてのサブタイプの中で最高のMELK発現を示した(p<0.0001)。これらの観測事実は、MELK発現がルミナルマーカーの発現と負に相関するというパターンを示す。実に、MELKの発現とエストロゲン受容体(ER又はESR1)の発現との間には、有意な逆相関性が見出された(図面3F、4F、14A)。
【0085】
[00126] 乳癌の代わりの類型化では、ER/PRとHER2の発現を使用する。ER/PRとHER2の発現が欠失したサブタイプである、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、基底細胞様乳癌と概ね重なる(Foulkes et al., 2010; Rakha et al, 2008)。臨床では、診断と治療戦略の選択のために、TNBCのようなサブタイプ類型化が定型的に使用されてきたので、この代わりのサブタイプ類型化とMELK発現の相関性について検証した。2つの独立したコホートにおいて(表S1)、標本をER/PRとHER2の発現に基づいてサブタイプへ群分けした。実に、MELKの発現レベルは、TNBCにおいて最高であり、HER2+において中位であって、ER/PR+乳癌において最低である(図面4G)。まとめると、上記のデータは、TNBC又はBBCにおいてMELKが差示的に過剰発現されていることを示す。
【0086】
[00127] 実施例4:MELK過剰発現は、確実な発癌活性を示す
[00128] MELKの有意な予後的価値は、(特に、基底細胞様)乳癌におけるその顕著な過剰発現と相俟って、MELKが発癌において決定的な役割を担う可能性があることを示唆した。ヒト癌では、MELK中の突然変異がほとんど同定されていないので、発癌には、野生型MELKの過剰発現で十分であると仮定した。最初に、初期の腫瘍生成スクリーニングにおいて使用するモデル系であるHMEC−DD−NeuT細胞において、MELKの過剰発現が腫瘍生成を促進することができるという確証について検討した。HMEC−DD−NeuT細胞を再び工学的に処理して、野生型(wt−)又はミリストイル化(myr−)MELKを発現するようにした(註:初期スクリーニングにおけるキナーゼをミリストイル化した(Boehm et al., 2007))。空ベクターを発現するHMEC−DD−NeuT細胞がマウスにおいて腫瘍を形成することができなかったのに対し、これらの細胞におけるWT−又はmyr−MELKの過剰発現は、2ヶ月以内に、100%のぺネトランス(penetrance)で腫瘍生成をもたらした(図面5A)。
【0087】
[00129] MELKがErbB2から独立した「スタンドアロン(stand-alone)」な形質転換能力を有するかどうかを判定するために、p53DDを発現するRat1細胞(Rat1−DD)(Zhao et al., 2004)の悪性形質転換を達成するのに単一の癌遺伝子で十分である、齧歯動物線維芽細胞(Rat1)形質転換系を使用した。Rat1−DDにおける腫瘍生成を誘導するには、NeuTの非存在下での発癌遺伝子PI3KCA H1047Rの発現で十分であることが最近実証された(Ni et al., 2012)。我々は、MELKを発現するRat1−DD細胞(Rat1−DD−MELK)、又は陽性対照としてPI3KCA H1047Rを発現するRat1−DD細胞(Rat1−DD−PI3KCA H1047R)を設計した(図面3B)。空ベクターを発現するRat1−DD細胞は、軟寒天においてコロニーとして成長することも、マウスにおいて腫瘍を形成することもできなかった。衝撃的にも、Rat1−DD−MELK細胞は、試験管内でのコロニー成長と生体内での腫瘍生成の両方によって裏付けられるように、Rat1−DD−PI3KCA H1047R細胞に匹敵し得るほどに確実な形質転換活性を示した(図面2C,2D)。
【0088】
[00130] 最後に、MELKのキナーゼ活性がその形質転換能に必須であるかどうかを判定するために、MELK、D150A、又はT167Aの触媒不能型(Lizcano et al., 2004; Vulsteke et al., 2004)をRat−DD細胞へ導入した。Rat1−DD−MELK細胞と異なり、Rat1−DD−MELK−D150AとRat1−DD−MELK−T157Aの両方の細胞は、軟寒天又はマウスにおいて限られた成長しか示さなかった(図面3E、3F、3G)。まとめると、上記の研究結果は、MELKが異常に過剰発現されるときにきわめて強力な発癌性の推進因子になり得ること、そしてこの発癌能がMELKのキナーゼ活性に依拠することを示す。
【0089】
[00131] 実施例5:MELKは、試験管内と生体内の両方でBBC細胞の発癌能に不可欠である。
【0090】
[00132] MELKの発癌能は、MELKが最高のレベルで発現されていることが見出されている乳癌のサブタイプである、BBCの増殖にMELKが必須であり得るとする仮説をもたらした(図面3E,14)。上記の検討のために、臨床腫瘍において見出される分子サブタイプとよく似ている乳癌細胞系のセット(Neve et al., 2006)を使用した。これらの細胞は、広汎に特性決定されて、サブタイプ特異的な療法を開発するために以前より使用されてきた。BBCに対応する細胞系は、MELKの高い発現レベルを示した(図面15B)。この Neve データセットでは、23のBBC細胞すべてが、24のルミナル細胞と比較して、MELK発現の有意な増加を示した(図面6A)。この細胞系をホルモン受容体(ER/PR)及びHER2の発現によって群分けするとき、21のトリプルネガティブ乳癌細胞系のすべてがER/PR+細胞より高いレベルでMELKを発現した(図面7A)。これらの結果は、ヒト乳癌におけるMELKの発現パターンと一致する(図面3E、4E、4F)。MELKのタンパク質存在量は、イムノブロッティングによって確認されるように、ルミナル細胞(MCF7及びT47D)に比較して、BBC細胞においてずっと高い(図面4B)。このように、これらの細胞系は、MELKの細胞中の機能について評価するための優れたプラットフォームを提供する。
【0091】
[00133] 上記細胞の増殖におけるMELKの役割について検証するために、ドキシサイクリンへの曝露時にのみshRNA転写(そして、結果として標的遺伝子サイレンシング)が誘導される、条件付き遺伝子ノックダウン技術を使用した(Wiederschain et al., 2009)。MELKに標的指向するために産生された多数の誘導可能なshRNAの中で、4種のMELK標的配列を同定して、この標的配列へ指向されるshRNAが、ドキシサイクリンで処理した細胞において、MELK発現を効率的に沈静化して細胞成長を阻害することを見出した(図面6C、6D、7B、16、17、19)。MELK標的配列とshRNAを作製するためのフォワードプライマーとリバースプライマーを下記の表1に示す。
【0092】
[00134] 表1
【0093】
【表2】
【0094】
[00135] shMELK1、shMELK2、MELK sh−413、MELK sh−1591、及びMELK sh−1805を基底乳癌細胞並びに2種のルミナル細胞系へ安定的に導入して、shRNAの導入時の細胞増殖について検証した。示すように、ドキシサイクリンを介したMELKノックダウンの誘導は、BT549、MDA−MB−468、MDA−MB−231、及びMDA−MB−436が含まれるBBC細胞の成長を強く損なった(図面6C、7A、16−18);対照的に、MELKの発現が有意に低い(図面6B、19)2種のルミナル細胞系、MCF7とT47Dは、MELKサイレンシングの誘導より保護された(図面6D、19)。これらの効果がMELKの特異的なノックダウンによることを確かめるために、ドキシサイクリン誘導可能でshMELK抵抗性のMELK(MELK−R)を安定的に導入することによって、MELK発現をレスキューした(図面6E、左パネル;7B)。shMELKを発現するMDA−MB−468細胞では、MELK発現がレスキューされるとき、細胞増殖が正常レベルへ回復した(図面6E、中央パネルと右パネル)。興味深いことに、shRNA抵抗性であるがキナーゼ不活性なMELKのバージョン、MELK−R(T167A)は、細胞増殖を回復することができず(図面6E)、BBC細胞の増殖にMELKのキナーゼ活性が不可欠であることを示唆した。
【0095】
[00136] BBC細胞中のMELKがその発癌性増殖のために必要とされることについても検証した。はじめに、試験管内で、対照MDA−MB−468細胞とMDA−MB−231細胞はともに、軟寒天において巨視的コロニーまで速やかに成長した。対照的に、これらの細胞におけるドキシサイクリンによるMELKノックダウンの誘導は、コロニー形成のほとんど完全な阻害を引き起こした(図面8A、17、18)。次に、BBC細胞の生体内腫瘍生成にMELKが必須であるかどうかを検証した。安定したshMELKを有する乳癌細胞を免疫不全マウスの乳腺脂肪体へ移植して、正所性の腫瘍生成を可能にした。定着した腫瘍を担うマウスにおいて、ドキシサイクリン投与は、効率的なMELK抑制を誘導し(図面9)、生体内で誘導可能なshRNA系の適格性を立証した。移植後すぐにドキシサイクリンでマウスを処理すると、正所性腫瘍の生成を強く阻害し(図面8B、8C)、これらのBBC細胞が生体内で成長するのにMELKが必要とされることを実証した。定着した異種移植片腫瘍の生体内での維持にMELKが必要とされるかどうかをさらに検証するために、基底細胞様乳癌細胞又はルミナル乳癌細胞に由来する異種移植片腫瘍を担うマウスをドキシサイクリンで処理した。注目すべきことに、MELKの下方調節は、BBC細胞に由来する腫瘍を実質的に退縮させたが、ルミナル癌細胞由来の腫瘍に対してはほとんど効果がない(図面8D〜G、図面9)。まとめると、上記のデータは、BBC細胞の試験管内と生体内の両方の増殖にMELKが選択的に必要とされることを示唆する。
【0096】
[00137] 実施例6:MELKの欠失は、BBC細胞において不完全な有糸分裂と細胞死を引き起こす。
【0097】
[00138] BBC細胞におけるMELKの役割の根底にある機序を理解するために、MELK枯渇について、様々な細胞プロセスにおける影響を検証した。ドキシサイクリンで処理した細胞では、切断型カスパーゼ3、切断型PARP、及びDNA断片化が含まれるアポトーシスマーカーが首尾一貫して観測された(図面10A、10B、図面11)。汎カスパーゼ阻害剤であるzVadは、MELKノックダウン誘導性の細胞死を有意に抑制し、MELK枯渇時に細胞死を実行することにおけるカスパーゼの能動的な役割を示唆した(図面10C、図面11B)。注目すべきことに、MELKノックダウンによって誘導される細胞死は、BBC細胞においてだけで起きたが、MCF7のようなルミナル腫瘍細胞においては起こらず(図面10D、図面11C)、ルミナルではない、基底細胞様乳癌細胞におけるMELKの選択要求性についての妥当な説明を提供した。
【0098】
[00139] 同時並行して、細胞周期に対するMELK枯渇の効果について検討した。ドキシサイクリン処理時の細胞におけるMELKのノックダウンは、DNA量が4nである細胞の明瞭な蓄積を誘導し(図面10E、図面11D、左パネルと中央パネル)、G2/M停止の誘導を示した。このことに一致して、ドキシサイクリンへ曝露された細胞では、サイクリンB1、オーロラキナーゼAのような有糸分裂のマーカーが上昇していた(図面10E、図面11D、右パネル)。興味深いことに、ドキシサイクリンは、画像処理細胞において示されるように、核が2個以上の細胞の百分率においてほぼ2倍の増加を誘導し(図面10F、図面11E)、サイトキネシスの失敗を示唆した。さらに、MELK枯渇細胞は、単極紡錘体、中心体の誤った局在化、姉妹染色分体の誤った分離、及び非対称な細胞分裂といった、多様な有糸分裂異常を示した(図面10G)。
【0099】
[00140] MELKノックダウン時に同時に生じる細胞死と不完全な有糸分裂について、機能上の関連性を検証した。時間経過微視分析を使用して、生細胞における染色体動態のマーカーである、GFP−ヒストン2Bを発現している細胞が検証された(Kanda et al., 1998)。MELK発現が下方調節されるときは、単核の近隣細胞よりむしろ二倍核の細胞が細胞死を受けた(図面10H、中央パネル)。ドキシサイクリンの存在下での別のシナリオでは、見かけの中期板を有する細胞が後期へ進行することができず、細胞死で終わった(図面10H、下パネル)。対照的に、対照細胞は、中期から後期へ容易に進行した(図面10H、上パネル)。まとめると、これらのデータは、BBC細胞が適切な有糸分裂をMELKに依存するので、これらの細胞においてMELKを阻害すると、有糸分裂の妨害とその結果としての細胞死が引き起こされるモデルを示唆する。
【0100】
[00141] 実施例7:FoxM1は、BBCにおいて過剰発現されて、MELK発現を調節する。
【0101】
[00142] BBC細胞においてMELKが有糸分裂キナーゼであるかどうかを判定するために、MELKについて検証した。ノコダゾール誘導性の前中期停止を通して濃縮される有糸分裂細胞では、MELKが高度に蓄積された(図面12A、図面13A)。分裂停止された細胞をノコダゾールから解放してG1期へ速やかに進行させると、MELKタンパク質存在量が劇的に減少した(図面12A、図面13A)。この発現パターンは、サイクリンB1やオーロラキナーゼのような模範的な有糸分裂因子に典型的であって(図面12A、図面13A)、MELKが有糸分裂キナーゼであることを示唆する。
【0102】
[00143] 有糸分裂に必須である多様な遺伝子の主要制御因子である、FoxM1によるMELK調節について検証された(Laoukili et al., 2005; Wang et al., 2005)。興味深いことに、MELKと同じように、BBC又はTNBCサブタイプでは、FoxM1がきわめて高く発現されている(図面12B、図面13B,13C)。さらに、多数の大規模コホートでは、FoxM1発現とMELK発現の間にきわめて密接な相関性が観測された(図面12C、図面13D)。siRNA(配列番号31)又は化学阻害剤(チオストレプトン)を使用する遺伝子サイレンシングを介してFoxM1を阻害すると、MELKの存在量が低下した(図面12D、12E、図面13E)。さらに、我々は、MELKのプロモーターが推定FoxM1結合モチーフ(配列番号45、図面12Fに示す)を含有して(Wierstra and Alves, 2007)、抗FoxM1抗体を使用するクロマチン免疫沈降アッセイにより、MELKプロモーター領域がその推定結合部位とともに回収される(図面12E、12F)ことを見出した。まとめると、上記の研究結果は、BBCにおいて濃縮されてMELKを調節する転写因子としてFoxM1を同定し、BBCにおけるMELKの過剰発現の根底にある分子機序を提供する。
【0103】
[00144] 実験手順
[00145] プラスミド
[00146] 記載のキナーゼライブラリーに寄託された鋳型DNAを使用してヒトMELKを増幅して、モロニーマウス白血病ウイルスの長い末端反復配列によって標的遺伝子発現が推進される、pWZLレトロウイルスベクター(Zhao et al., 2003)へクローン化した。MELK突然変異体(D150A、T167A、又はサイレント突然変異のあるshMELK抵抗性MELK)は、Quickchange XL 部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)により産生した。プライマーを下記の表S2に収載する。テトラサイクリン誘導遺伝子発現系を構築するために、表S2に収載するプライマーを使用して、GFP又は突然変異型MELKを増幅した。PCR産物をAgeIとPacIで消化して、消化済みのpLKO−TREX(Wee et al., 2008)と連結した。
【0104】
[00147] pWzl−H2B−GFPを構築するために、HEK293T細胞のゲノムDNAを鋳型として使用して、ヒトヒストン2Bを増幅した。クローニング用のプライマーを表S2に収載する。PCR産物をBamHIとXhoIで消化した後で、消化済みのpWzl−GFPと連結した。ヒトMELKに標的指向するpLKO−tet−on−shRNAを産生するために、オリゴヌクレオチドを設計して合成した(IDT)。アニーリングに続いて、二本鎖オリゴヌクレオチドをpLKOベクターと直接連結して、これをAgeIとEcoRIで消化した。スクランブル、shMELK1、shMELK2の配列を表S2に収載する。HEK293T細胞をpWzlプラスミドとパッケージングDNAでトランスフェクトすることによって、レトロウイルスを産生した。典型的には、1.6μg pWzl DNA、1.2μg pCG−VSVG、及び1.2μg pCG−gap/pol、12μlの Metafectene Pro 脂質(Biontex)を使用し;DNAと脂質を300μl PBSでそれぞれ希釈して混合し;15分のインキュベーションに続いて、300万個のHEK293T細胞を1日前に播種した1つの6cmディッシュへそれらを加えた。トランスフェクションの48時間後と72時間後にウイルス上清を採取した。この上清を0.45μm膜に通して濾過した後で、それを8μg/ml ポリブレン(ミリポア)の存在下に標的細胞へ加えた。2μg pLKO DNA、1.5μg pCMV−dR8.91、及び0.5μg pMD2−VSVGで細胞をトランスフェクトすること以外は類似のアプローチで、レンチウイルスを産生した。最初の感染から72時間後より始めて、細胞を抗生物質で選択した。ピューロマイシンとブラスチシジンをそれぞれ1.5μg/mlと4μg/mlの最終濃度で使用した。
【0105】
[00148] 表S2
【0106】
【表3-1】
【0107】
【表3-2】
【0108】
[00149] 細胞培養
[00150] ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)をEGF(10ng/ml)、インスリン(10μg/ml)、及びヒドロコーチゾン(0.5μg/ml)を補充したDMEM/F−12において5% CO
2と37℃下に維持した。Rat1細胞とHEK293T細胞を10% FBS(Invitrogen)を補充したDMEMにおいて維持した。すべての乳癌細胞系(MCF7、T47D、MDA−MB−468、MDA−MB−231、MDA−MB−436、HCC1197、BT549)を10% FBSを補充したRPMI 1640培地において培養した。テトラサイクリン誘導遺伝子/shRNAを安定的に導入した細胞には、Tet承認FBS(Clontech)を使用した。
【0109】
[00151] 細胞増殖アッセイ
[00152] 典型的には、乳癌細胞を12ウェルプレートにおいて1ml培地に1〜2x10
4個で播種した。翌日、ウェルに110μlの培地を1μg/mlのドキシサイクリン無しで、又は有りで(100ng/mlの最終濃度に達する)加えて、これを2日ごとに繰り返した。最初の処理から6日後、細胞をホルムアミドで固定して、クロマチン結合性の細胞化学染料であるクリスタルバイオレット(0.05%、重量/容積)で染色した。このプレートを十分に(extensively)洗浄して、フラットベッドスキャナーで造影した。この染色の定量のために、各ウェルへ1mlの10%酢酸を加えて、色素を抽出した。吸光度は、750nmを基準値として、590nmで測定した。
【0110】
[00153] コロニー形成アッセイ
[00154] このアッセイは、他に述べなければ、典型的には12ウェルプレートにおいて実施した。0.3%寒天を含有する培地に細胞を懸濁させて、0.6%寒天の層の上へ蒔いた(各ウェルについて、800μlの培地、1mlのボトム寒天中4,000個の細胞)。翌日、このウェルに培地(100ng/mlのドキシサイクリン無し、又は有りで)を加えた。細胞播種から3週間後、コロニーをホルムアミドで固定して、造影した。各ウェル中のコロニー数を、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を使用して定量した。
【0111】
[00155] 腫瘍異種移植片試験
[00156] 異種移植片試験は、いずれもアメリカ国立衛生研究所からの動物使用ガイドラインと、Dana-Farber 癌研究所の動物実験委員会によって承認されたプロトコールに従って実施した。使用したレシピエントマウスは、NCR−ヌードマウス(CrTac:NCr-Foxn1nu,Taconic)であった。細胞を40%のマトリゲル−基底膜マトリックス、LDEVフリー(BD Biosciences)に再懸濁させて、注射するまで氷上に置いた。ヒト細胞系を移植するために、注射の同日に、マウスに400ラドの単一線量をγ線照射した。イソフルランの吸入によってマウスを麻酔して、部位につき150μlの細胞(5x10
6個)を注射した。腫瘍をノギスによって2次元で測定した。式:V=0.5x長さx幅x幅を使用して、腫瘍体積を計算した。いずれの異種移植片データも、平均±SEMとして提示する。スチュ−デントの両側t検定を使用して、処置群間の比較を実行した。Openoffice 又は GraphPad Prism バージョン5.0bのいずれかを使用して、計算を実施した。
【0112】
この腫瘍生成試験では、5x10
6個のHMEC細胞を乳腺脂肪体へ注射して、5x10
6個のRat1細胞を皮下注射した。腫瘍成長を週2回モニターした。注射後3週間でRat1異種移植片を採取した。腫瘍成長に対するMELKノックダウンの影響について試験するために、2回目の注射日にマウスを無作為に群へ層別して、試験期間の間、未処理のままであるか、又はドキシサイクリン(5%デキストロース飲料水溶液中2mg/ml、週2回作り直す)で処理した。腫瘍を週2回測定した。腫瘍維持におけるMELKの役割について試験するには、MDA−MB−231、又はMDA−MB−468、又はMCF−7、又はT47D細胞の正所性の注射に由来する腫瘍が定着したマウスを無作為に2群へ層別し、1群に飲料水中のドキシサイクリンを与えた。腫瘍を週2回ノギス測定して、腫瘍成長に対するMELKノックダウンの効果をモニターした。
【0113】
[00157] 時間経過イメージング
[00158] 自動焦点維持装置と湿式インキュベーションチャンバ(37℃,5% CO
2)を装備した Nikon Ti 電動倒立顕微鏡(ニコンイメージングセンター、ハーバード医学校)で時間経過イメージングを実施した。H2B GFPを安定的に発現する細胞を24ウェルのガラス底プレートに予め播種して、未処理のままにするか又はドキシサイクリン(最終濃度:100ng/ml)で処理した。20倍の対物レンズと Hamamatsu ORCA-AG 冷却CCDカメラで画像を5分ごとに捉えた。ImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を使用して、画像を解析した。
【0114】
[00159] 免疫蛍光分析
[00160] 予め24ウェルプレート中へ置いたNo.1.5カバーガラス(12mm,円形)上に細胞を播種した。採取してすぐに、細胞を4%ホルムアミドで10分間固定した。洗浄後、細胞を0.1% Trition X-100 で10分間透過処理した。次いで、細胞を洗浄して、1%ウシ血清で30分間ブロックした後で、1%ウシ血清アルブミンを含有するPBSにおいて調製した一次抗体(抗β−チューブリン、#2128、Cell Signaling Technology)とともにインキュベートした。4℃で一晩インキュベートした後で、この試料を洗浄して、Alexa 488 コンジュゲート化二次抗体(Invitrogen)とともに室温で1時間インキュベートした。十分な洗浄の後で、試料を乾燥させて、ProLong Antifade 試薬(Invitrogen)とともに搭載した。Hamamatsu C8484-03 モノクロームカメラを装備した、ニコンイメージングセンター(ハーバード医学校)の Nikon 80i 直立顕微鏡で画像を獲得した。画像の解析には、異なる色の合流チャンネルとクロッピングが含まれる、Image J を使用した。
【0115】
[00161] イムノブロッティング
[00162] プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ)とホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific)を補充したRIPA緩衝液(25mMトリス(pH7.4)、150mM NaCl、1%ノニデットP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)で細胞を溶解した。澄明化した溶解液について、BCAキット(Thermo Scientific)を使用して、タンパク質濃度を分析した。等量のタンパク質(10〜20μg)を8%若しくは10% SDS−PAGE上で分離させて、引き続き、ニトロセルロース膜又は二フッ化ポリビニリデン膜(アマーシャム)の上へ移した。この膜を5%脱脂乳でブロックしてから、一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、この膜をフルオロフォアコンジュゲート化二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。次いで、この膜を洗浄して、オデッセイ(Odyssey)赤外線スキャナー(Li-Cor Biosciences)で走査した。この試験で使用した一次抗体には、抗MELK(Epitomics,#2916)、抗α−チューブリン(Abcam)、抗サイクリンB1(ミリポア)、抗ビンクリン(シグマ)、抗FoxM1(Santa Cruz)、抗β−チューブリン、抗ホスホ−Akt(S473)、抗ホスホAkt(T308)、抗総Akt、抗Flag、抗切断型PARP(Asp214)、抗切断型カスパーゼ3、抗AURKA、抗AURKB、抗p27(いずれも、Cell Signaling Technology 由来)が含まれる。使用した二次抗体は、IRDye700コンジュゲート化抗ウサギIgGとIRDye800コンジュゲート化抗マウスIgG(Rockland)であった。
【0116】
[00163] 細胞周期分析
[00164] トリプシン処理によって細胞を採取して、繰り返しピペッティングして、単細胞懸濁液とした。遠心分離の後で、ボルテックスしながら70%エタノール(−20℃)を滴下することによって、細胞を固定した。次いで、50μg/mlのDNアーゼフリーRNアーゼA(シグマ)と0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するヨウ化プロピジウム(50μg/ml,シグマ)溶液で細胞を染色した。30分のインキュベーションの後で、試料を洗浄して、0.5% BSAに再懸濁させた。この分析は、DFCIフローサイトメトリーコアファシリティ(Core Facility)での LSRFortessa(BD Biosciences)で実施した。FL3−AをFL3−Hに対してプロットすることにより単細胞にゲートをかけて、細胞残滓とダブレットを排除した。各試料につき少なくとも1万個の単細胞を採取した。
【0117】
[00165] クロマチン免疫沈降
[00166] 既報(Lee et al., 2006)のように、クロマチン免疫沈降を実施した。採取時に、細胞培養皿中の培地に16%ホルムアミド(Electron Microscopy Sciences)を加えて、1%の最終濃度に達せしめて、室温で10分間のインキュベーションの後で、グリシン(最終125mM、5分のインキュベーション)でクエンチした。細胞を冷PBS中へ削り落とすことによって採取して、遠心分離させた。細胞ペレットをLB1(50mM HEPES(pH7.5)、140mM NaCl、1mM EDTA、10%グリセロール、0.5% NP−40、0.25% Triton−X−100)で溶解させてから、遠心分離後に、LB2(10mM Tris−HCl(pH8.0)、200mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA)で溶解させて、再び遠心分離の後で、LB3(10mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM NaCl、1mM EDTA、0.5mM EGTA、0.1%デオキシコール酸Na、0.5% N−ラウロイルサルコシン)に再懸濁させた。Q800R DNA剪断ソニケーター(Shearing Sonicator)(Qsonica)を振幅50%、30秒のオンと30秒のオフのパルスで10分間使用して、試料を音波破砕した。次いで、試料に10% Triton−X100を1%の最終濃度で補充して、20,000xgで10分間、4℃で遠心分離させた。この澄明化した溶解液を以下の免疫沈澱に使用し、50μlの溶解液をインプットとして取っておいた。
【0118】
[00167] プロテインG結合 Dynabeads(Invitrogen)をブロック溶液(PBS中0.5%ウシ血清アルブミン)で洗浄して、ブロック溶液中5μgの抗FoxM1(SC−502,Santa Cruz Biotechnology)又は5μgのウサギIgGと一緒に一晩インキュベートして、翌日、ブロック溶液で3回洗浄した。細胞溶解液を抗体/磁気ビーズと一緒に回転させながら、4℃で一晩インキュベートした。翌日、このビーズを磁気スタンドで回収して、RIPA緩衝液(50mM HEPES(pH7.6)、500mM LiCl、1mM EDTA、1% NP−40、0.7%デオキシコール酸Na)で6回洗浄した。50mM NaClを含有するトリス−EDTA緩衝液で1回洗浄後、65℃で一晩のインキュベーションのために、試料を溶出緩衝液(50mMトリス−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、1% SDS)に再懸濁させた。また、先の50μlインプットを150μlの溶出緩衝液と混合して、逆架橋形成(reverse crosslinking)のために65℃で一晩インキュベートした。翌日、この試料へRNアーゼ(最終0.2μg/ml)を加えて、37℃で1時間のインキュベーションを続けた。次いで、試料をプロテイナーゼK(最終0.2μg/ml)で処理して、56℃で1時間インキュベートした。QIAquick PCR精製キット(Qiagen)でDNAを精製して、30μlの水で溶出させた。表S2に収載したプライマーを使用する、Quick-Load Taq 2X Master Mix(NEB)を使用して、PCRを実施した。
【0119】
[00168] qRT−PCR分析
[00169] 培養細胞より、均質化用の QIAshredder スピンカラムとカラム上でのDNアーゼ消化を使用して、RNeasy Mini キット(Qiagen)で全RNAを抽出した。高性能RNA→cDNA合成キット(High Capacity RNA to-cDNA Kit)(アプライド・バイオシステムズ)を使用して、2マイクログラムのRNAを逆転写した。Power SYBR Green PCR Master Mix(アプライド・バイオシステムズ)を ABI7300 リアルタイムPCRシステムで使用して、cDNAを定量的に分析した。使用するプライマーは、表S2に収載した。サイクリング条件は、95℃で15分間、94℃で15秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒の40サイクルであった。デフォルト分析設定を使用して、Ct値を発生させた。ΔCTをCt(目的の遺伝子)−Ct(βアクチン)として定義した。ΔΔCTをΔCt(処理試料)−Ct(対照試料)として定義した。相対定量(RQ)を2
−ΔΔCTとして計算した。統計解析は、スチューデントの検定によって実施した。
【0120】
[00170] 遺伝子発現の分析
[00171] 遺伝子発現データを Oncomine(Rhodes et al., 2004)よりダウンロードした。臨床データセットの情報を表S1に収載する。解析結果と図面は、GraphPad Prism で作製した。ドットプロットグラフにおいて、各ドットは個々の試料を示し、結果を四分位範囲付きのメジアンとして表す。
【0121】
[00172] 生存率分析
[00173] 全生存率又は無転移生存率のデータが利用可能である乳癌患者の独立したコホートについて検証した。このコホートの情報を表S1に収載する。MELK発現と関連する生存率のデータを Oncomine(Rhodes et al., 2004)よりダウンロードした。それぞれのコホートで、MELKの発現に基づいて、患者を上位60%の「高MELK」群と下位40%の「低MELK」群へ分けた。カプラン・マイヤー曲線、並びにログランク(Mantel-Cox)検定、及びハザード比について、GraphPad Prism によって解析した。
【0122】
[00174] 統計解析
[00175] 2群間と3群間の差分比較のためにスチューデントの両側t検定とANOVA(分散分析)をそれぞれ使用した。生存率との相関性の分析を GraphPad Prism で実施した。
【0123】
[00176] 本明細書に提供する定義と開示は、参照により組み込まれる他のすべての定義と開示を支配して、それに代わるものである。本発明について、本明細書においてその好ましい態様に関連して記載したが、当業者には、付帯の特許請求項において明確化されるような本発明の精神及び範囲より逸脱することなく、具体的に記載しなかった種々の追加、修飾、代用、及び削除をなし得ることが理解されよう。故に、上述の詳しい説明は、限定的ではなくて例示的なものとみなすべきであると企図されて、本発明の精神及び範囲を明確化するように企図されるのは、すべての均等物が含まれる、以下の特許請求項であると理解されたい。