【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る劣化モニタリング方法は、
検査対象物と同質材料に対するAE計測により得られる信号の第1単位期間における計数値である参照信号数を全観測期間にわたって取得する参照値取得ステップと、
前記全観測期間の初期における前記参照信号数に基づいて設定される参照ノイズ信号数を、前記第1単位期間毎の前記参照信号数のそれぞれから減算した参照AE数を求め、前記参照AE数の前記全観測期間わたる推移を示す評価曲線を生成する評価曲線生成ステップと、
前記検査対象物に対するAE計測により得られる信号の第2単位期間における計数値である対象信号数を取得する対象値取得ステップと、
前記対象値取得ステップにより得られる前記対象信号数のうち、時系列で初期に取得される前記対象信号数に基づいて設定される対象ノイズ信号数を、前記対象信号数から減算した対象AE数を求める対象AE数算出ステップと、
前記評価曲線と前記対象AE数とに基づいて、前記検査対象物の劣化度合いを評価する劣化評価ステップと、を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、検査対象物と同質材料(試験対象)に対するAE計測により得られる評価曲線を劣化評価の評価基準とすることで、運転時の検査対象物に対するAE計測結果から得られる対象AE数に基づいて、検査対象物の劣化度合いのモニタリングを行うことができる。また、対象AE数Ntは、検査対象物の運転時のものであり、運転時において検査対象物のモニタリングを行うことができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記劣化評価ステップは、
前記評価曲線の変化量が増加する少なくとも1つの変化領域を抽出する変化領域抽出ステップと、
前記評価曲線の前記変化領域に基づいて、前記評価曲線の前記全観測期間を複数の劣化ステージに区分する劣化ステージ分類ステップと、
前記対象AE数に基づいて、前記検査対象物が属する前記劣化ステージを識別する劣化ステージ識別ステップと、を含む。
上記(2)の構成によれば、対象AE数と劣化ステージに基づいて検査対象物の劣化モニタリングを行うことで、検査対象物の寿命を予測することができる。また、検査対象物の属する劣化ステージによって対応策を決めることで、適切な保守管理を効率的に行うことができる。
【0010】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係る劣化モニタリング方法は、
検査対象物に対するAE計測により得られる信号の第2単位期間における計数値である対象信号数を取得する対象値取得ステップと、
時系列で初期に取得される前記対象信号数に基づいて設定される対象ノイズ信号数を、前記対象信号数から減算した対象AE数を求める対象AE数算出ステップと、
前記時系列に伴って増加する前記対象AE数の増加量に基づいて、前記検査対象物の劣化度合いを評価する劣化相対評価ステップと、を備え、
前記対象値取得ステップは、前記検査対象物の異なる位置に設置された複数のAEセンサの各々で計測された前記対象信号数を取得しており、
前記劣化相対評価ステップは、前記複数のAEセンサ毎に求めた前記増加量をそれぞれ比較する増加量比較ステップを含む。
上記(3)の構成によれば、検査対象物の複数の異なる位置にそれぞれ設置されるAEセンサからの信号に基づいて、それぞれ対応する対象AE数が計測され、同時期の対象AE数の増加量同士が比較される。一般に、損傷の進行により発生するAE信号の数は劣化の進行に伴って増加するため、対象AE数の増加量に基づいて、検査対象物の各位置における劣化度合いを相対的にモニタリングできる。また、この相対評価の結果に基づいて定期検査における優先順位付けが可能となり、効果的な保守管理を行うことができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記AEセンサの少なくとも2つによって前記検査対象物が有する溶接部が挟まれる。
上記(4)の構成によれば、クリープ損傷は溶接部で発生する可能性が高く、クリープ損傷による劣化度合いを精度良くモニタリングすることができる。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)〜(4)の構成において、
前記AEセンサ12は、棒状の物体である導波棒の一端の側に設置されており、
前記導波棒の他端は、前記検査対象物にスタッド溶接されるスタッドボルトに固定される。
上記(5)の構成によれば、スタッド溶接により溶接後の熱処理が不要となり、センサ敷設に必要な時間とコストを削減できる。また、スタッドボルトを介してAEセンサと検査対象物が接続されるので、センサの設置環境温度を下げることができる。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記対象信号数は、前記検査対象物の前記溶接部からの距離が所定範囲外となる位置からの信号を前記AE計測により得られる信号から除外して得られる信号の計数値である。
上記(6)の構成によれば、対象信号数の計数時においてノイズによる影響を低減することができる。
【0014】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記対象信号数は、前記AE計測により得られる信号の計測値のうちの所定の閾値以上の前記信号の計数値である。
上記(7)の構成によれば、対象信号数の計数時においてノイズによる影響を低減することができる。
【0015】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の構成において、
前記対象信号数は、前記AE計測により得られる信号から信号波形の特徴量に基づいて識別される周期的ノイズ信号を除外した信号の計数値である。
上記(8)の構成によれば、対象信号数の計数時においてノイズによる影響を低減することができる。
【0016】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の構成において、
前記検査対象物は、発電設備のボイラ、蒸気管、管寄せ、管台の少なくとも1つを含む。
上記(9)の構成によれば、発電設備の劣化評価を行うことができる。
【0017】
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係る劣化モニタリング装置は、
検査対象物と同質材料に対するAE計測により得られる信号の第1単位期間における計数値である参照信号数を全観測期間にわたって取得する参照値取得部と、
前記全観測期間の初期における前記参照信号数に基づいて設定される参照ノイズ信号数を、前記第1単位期間毎の前記参照信号数のそれぞれから減算した参照AE数を求め、前記参照AE数の前記全観測期間わたる推移を示す評価曲線を生成する評価曲線生成部と、
前記検査対象物に対するAE計測により得られる信号の第2単位期間における計数値である対象信号数を取得する対象値取得部と、
前記対象値取得部により得られる前記対象信号数のうち、時系列で初期に取得される前記対象信号数に基づいて設定される対象ノイズ信号数を、前記対象信号数から減算した対象AE数を求める対象AE数算出部と、
前記評価曲線と前記対象AE数とに基づいて、前記検査対象物の劣化度合いを評価する劣化評価部と、を備える。
【0018】
上記(10)の構成によれば、検査対象物と同質材料(試験対象)に対するAE計測により得られる評価曲線を劣化評価の評価基準とすることで、運転時の検査対象物に対するAE計測結果から得られる対象AE数に基づいて、検査対象物の劣化度合いのモニタリングを行うことができる。また、対象AE数Ntは、検査対象物の運転時のものであり、運転時において検査対象物のモニタリングを行うことができる。
【0019】
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の構成において、
前記劣化評価部は、
前記評価曲線の変化量が増加する少なくとも1つの変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
前記評価曲線の前記変化領域に基づいて、前記評価曲線の前記全観測期間を複数の劣化ステージに区分する劣化ステージ分類部と、
前記対象AE数に基づいて、前記検査対象物が属する前記劣化ステージを識別する劣化ステージ識別部と、を含む。
上記(11)の構成によれば、対象AE数と劣化ステージに基づいて検査対象物の劣化モニタリングを行うことで、検査対象物の寿命を予測することができる。また、検査対象物の属する劣化ステージによって対応策を決めることで、適切な保守管理を効率的に行うことができる。
【0020】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係る劣化モニタリング装置は、
検査対象物に対するAE計測により得られる信号の第2単位期間における計数値である対象信号数を取得する対象値取得部と、
時系列で初期に取得される前記対象信号数に基づいて設定される対象ノイズ信号数を、前記対象信号数から減算した対象AE数を求める対象AE数算出部と、
前記時系列に伴って増加する前記対象AE数の増加量に基づいて、前記検査対象物の劣化度合いを評価する劣化相対評価部と、を備え、
前記対象値取得部は、前記検査対象物の異なる位置に設置された複数のAEセンサの各々で計測された前記対象信号数を取得しており、
前記劣化相対評価部は、前記複数のAEセンサ毎に求めた前記増加量をそれぞれ比較する増加量比較部を含む。
上記(12)の構成によれば、検査対象物の複数の異なる位置にそれぞれ設置されるAEセンサからの信号に基づいて、それぞれ対応する対象AE数が計測され、同時期の対象AE数の増加量同士が比較される。一般に、損傷の進行により発生するAE信号の数は劣化の進行に伴って増加するため、対象AE数の増加量に基づいて、検査対象物の各位置における劣化度合いを相対的にモニタリングできる。また、この相対評価の結果に基づいて定期検査における優先順位付けが可能となり、効果的な保守管理を行うことができる。
【0021】
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の構成において、
前記AEセンサの少なくとも2つによって前記検査対象物が有する溶接部が挟まれる。
上記(13)の構成によれば、クリープ損傷は溶接部で発生する可能性が高く、クリープ損傷による劣化度合いを精度良くモニタリングすることができる。
【0022】
(14)幾つかの実施形態では、上記(12)〜(13)の構成において、
前記AEセンサ12は、棒状の物体である導波棒の一端の側に設置されており、
前記導波棒の他端は、前記検査対象物にスタッド溶接されるスタッドボルトに固定される。
上記(14)の構成によれば、スタッド溶接により溶接後の熱処理が不要となり、センサ敷設に必要な時間とコストを削減できる。また、スタッドボルトを介してAEセンサと検査対象物が接続されるので、センサの設置環境温度を下げることができる。
【0023】
(15)幾つかの実施形態では、上記(14)の構成において、
前記対象信号数は、前記検査対象物の前記溶接部からの距離が所定範囲外となる位置からの信号を前記AE計測により得られる信号から除外して得られる信号の計数値である。
上記(15)の構成によれば、クリープ損傷は溶接部で発生する可能性が高く、クリープ損傷による劣化を精度良くモニタリングすることができる。
【0024】
(16)幾つかの実施形態では、上記(10)〜(15)の構成において、
前記対象信号数は、前記AE計測により得られる前記信号の計測値のうちの所定の閾値以上の前記信号の計数値である。
上記(16)の構成によれば、対象信号数の計数時においてノイズによる影響を低減することができる。
【0025】
(17)幾つかの実施形態では、上記(10)〜(16)の構成において、
前記対象信号数は、前記AE計測により得られる信号から、信号波形の特徴量に基づいて識別される周期的ノイズ信号を除外した信号の計数値である。
上記(17)の構成によれば、対象信号数の計数時においてノイズによる影響を低減することができる。
【0026】
(18)幾つかの実施形態では、上記(10)〜(17)の構成において、
前記検査対象物は、発電設備のボイラ、蒸気管、管寄せ、管台の少なくとも1つを含む。
上記(18)の構成によれば、発電設備の劣化評価を行うことができる。