(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動部において、前記外管の内壁面側の面には、挿入された前記膨張式管と干渉する少なくとも1つの突部が形成されている、請求項1または2に記載のロックボルト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の施工方法では、次のように問題が生じうるおそれがある。すなわち、外管は削孔には固定されていないため、
図17に示すように、膨張式管900が膨張すると、外管800は径方向外方に押圧されつつ、削孔から抜け出すおそれがある。これにより、ワッシャ700が外管800に押され、ロックボルトの打設面Xから離れた状態で定着される。ワッシャ700は地山の応力をロックボルトに伝達する為に、地山の表面に密着していることが望ましいところ、上記のように地山から離れていればその分地山の変位を許容してしまう。そして、外管800が、一旦、地山に摩擦定着してしまうと、外管800を押し込んでワッシャ700を地山に密着させることはできない。
【0006】
また、この種のロックボルトは定着材を用いないため、その効き目(引抜耐力)が対象地山の性状にある程度左右される。ところが、既設トンネルの覆工表面からその背面地山を補強する場合等には、掘り進めている地山ではないので、覆工背面にどのような性状の地山があるかという予測が難しく、安定的な定着力、つまりロックボルト効果を得るのが難しい。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、外管の抜け出しを防止すると共に、地山性状にかかわらず、また覆工の有無にかかわらず、安定的な定着力を得ることができる膨張式ロックボルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1のロックボルトは、地山に形成された削孔に定着されるロックボルトであって、筒状に形成され、軸方向に延びる内部空間を有するとともに、前記内部空間に加圧流体を注入することで、塑性変形して膨張する膨張式管と、前記削孔の内径と対応する外径を有するとともに、前記膨張式管が挿入可能となっており、径方向に拡径可能な中空の外管と、を備え、前記外管には、径方向外方へ移動可能な少なくとも1つの移動部が設けられており、前記移動部が、径方向外方へ移動して前記削孔内壁面に係合することで、当該外管の基端部側への移動を規制するように構成され、前記移動部は、挿入された前記膨張式管によって押圧されることで、径方向外方に移動するように構成されている。
【0009】
この構成によれば、削孔に挿入される外管に、径方向外方へ移動可能な少なくとも1つの移動部が設けられており、挿入された前記膨張式管によって押圧されることで、径方向外方に移動するように構成されている。そして、径方向外方へ移動した移動部は、削孔内壁面に係合することで、当該外管の基端部側への移動を規制するように構成されている。そのため、外管の内部で膨張式管が膨張拡径して外管が径方向に拡径しても、移動部が削孔内壁面に係合しているため、外管が削孔内において、基端側に移動するのを防止することができる。
【0010】
これにより、外管が削孔から抜け出ないため、膨張式管を削孔形成面に固定するためのワッシャが、削孔形成面から離れるのを防止することができる。その結果、ワッシャを削孔形成面に確実に当接させることができるため、地山の変位を防止でき、ロックボルトを安定的に地山に定着させることができる。
【0011】
上記ロックボルトにおいて、移動部の構成は特には限定されないが、例えば、前記移動部は、前記拡径領域に形成されたスリットで囲まれた領域により画定され、前記移動部における前記外管の先端側の端部が中心となり、当該移動部が拡開可能に構成することができる。
【0012】
また、上記ロックボルトでは、前記移動部において、前記外管の内壁面側の面には、挿入された前記膨張式管と干渉する少なくとも1つの突部を形成することができる。これにより、膨張式管を外管に挿入したときに、膨張式管が突部に干渉するため、突部は干渉を避けるように径方向外方に移動する。その結果、移動部が径方向外方に移動する。
【0013】
また、本発明に係る第2のロックボルトは、地山に形成された削孔に定着されるロックボルトであって、筒状に形成され、軸方向に延びる内部空間を有するとともに、前記内部空間に加圧流体を注入することで、塑性変形して膨張する膨張式管と、前記削孔の内径と対応する外径を有するとともに、前記膨張式管が挿入可能となっており、径方向に拡径可能な中空の外管と、前記外管の基端部に分離可能に取り付けられ、径方向に拡径しない延長管と、を備えている。
【0014】
この構成によれば、例えば、覆工コンクリートが打設された地山に対しても外管の抜け出しを防止した状態でロックボルトの打設が可能となる。すなわち、本発明に係る第2のロックボルトは、外管が径方向外方に拡径することで、削孔内壁面に密着するが、覆工コンクリートに形成された削孔に対しても外管が密着すると、覆工コンクリートに大きい負荷が作用するおそれがある。そこで、外管の基端部に拡径しない延長管を取り付けておくと、この延長管を覆工コンクリート内に配置することができる。そして、外管が拡径したときには、延長管と外管とを分離させることができるため、膨張式管が膨張拡径したときに、延長管は非拡径のまま覆工に負荷を生じさせない。また、この延長管より孔奥側の外管のみ膨張拡径するため、膨張式管の膨張拡径動作に伴う外管の削孔からの抜け出しが防止される。
【0015】
上記各ロックボルトにおいて、前記外管は、前記削孔を形成するために、当該外管に打撃力を付与する打設手段と連結可能に構成され、前記打設手段により、前記外管が地山に打設されながら、前記削孔を形成しつつ当該削孔内に配置されるように構成することができる。
【0016】
上記各ロックボルトにおいて、前記外管の先端に取り付けられる削孔ビットをさらに備えることができる。
【0017】
本発明に係るロックボルトの施工方法は、上記第1のロックボルトの前記外管の先端に削孔ビットを取り付けるとともに、当該外管を、前記削孔ビットにより前記地山を掘削することで、当該地山に打設するステップと、前記膨張式管を、前記外管の基端側から挿入することで、前記移動部を前記削孔内壁面に係合させるステップと、前記膨張式管の内部空間に加圧流体を注入することで、当該膨張式管を膨張させるステップと、前記膨張した膨張式管により、前記外管の内壁面が押圧されることで、当該外管を径方向に拡径させ、これによって外管の外周面を前記削孔の内壁面に密着させるステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外管の抜け出しを防止すると共に、地山性状にかかわらず、また覆工の有無にかかわらず、安定的な定着力を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るロックボルトの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係るロックボルトの断面図である。なお、以下では、説明の便宜のため、ロックボルトが挿入される削孔の奥端部側を「先端側」または「先頭側」、その反対側を「基端部側」または「後端側」と称することがある。また、削孔の延びる方向及びそれに対応するロックボルトの延びる方向を軸方向と称することがある。また、この軸方向を中心に、径方向または周方向という文言により、方向を示すこともある。以下では、新設のトンネルの内壁面にロックボルトを施工する例について説明するル
【0021】
<1.ロックボルトの構造>
図1に示すように、本実施形態に係るロックボルトは、鋼管(管部材)によって長尺状に形成された膨張式管1と、この膨張式管1が挿入される外管2と、を備えている。また、外管2の先端には、削孔ビット3が装着されるとともに、削孔ビット3の後端側には、外管2に収容されるビットアダプタ4が取り付けられている。さらに、膨張式管の後端部には、板状のワッシャ5が取り付けられている。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0022】
<1−1 膨張式管>
図2は膨張式管の側面図である。同図に示すように、膨張式管1は、管本体11、この管本体11の先端に取り付けられる先端スリーブ12、及び管本体11の後端に取り付けられる注入用アダプタ13、を備えている。はじめに、管本体11の作製方法について説明する。
【0023】
図3は管本体の作製手順を説明する斜視図である。まず、
図3(a)に示すように、内部空間101を有する中空の円筒状の鋼管100を準備し、これを押圧して板状にした後、
図3(b)に示すように、長手方向を軸方向として筒状に曲げ、軸方向に延びる凹部102を有するように断面C字状の膨張式管10を形成する。なお、鋼管100は、後述するように内部空間101に供給される水の圧力によって変形するように、肉厚が2〜3mm程度のものを用いる。また、鋼管100の内部空間101に流体が流入できるように、鋼管100を完全に押しつぶさない程度に板状にすることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、膨張式管1の先端に取り付けられた先端スリーブ12は、先端が閉じた中空の円筒状に形成されており、管本体11の先端が挿入され、溶接などによって固定される。一方、管本体11の後端部に取り付けられる注水用アダプタ13は、先端側に配置される小径部131と、この小径部131の後端側に連結され、小径部131よりも大径の大径部132とを備え、これらが一体的に連結され円筒状に形成されている。小径部131の先端は開口し、大径部132の後端は閉じている。また、大径部132の外周面には環状に溝1321が形成されており、この溝1321に、注水用アダプタ13の内部と連通する貫通孔(図示省略)が形成されている。注水用アダプタ13の内部空間は、上述した管本体11の内部空間101に連通しており、後述するように、この貫通孔からアダプタ13の内部に水が注入される。そして、このように形成された注水用アダプタ13の先端開口に、管本体11の後端部が挿入され、溶接などによって固定される。
【0025】
<1−2 外管>
次に、外管2について説明する。
図4は外管の側面図である。同図に示すように、外管2は、先端及び後端が開口する中空の円筒状に形成された外管本体21と、この外管本体21の先端に取り付けられた補強用カラー22とを備えている。補強用カラー22は、外管本体21の外周面と概ね同一の外径を有する中空の円筒状に形成されており、わずかに縮径された外管本体21の先端部が嵌め込まれ、溶接などによって固定される。これにより、補強用カラー22の外周面と外管本体21の外周面とは、概ね面一になる。また、後述するように、補強用カラー22の先端には、削孔ビット3が取り付けられる。
【0026】
外管本体21の外周面には、複数の拡径用スリットが形成されている。これら拡径用スリットは、周方向に等間隔に形成され、軸方向に延びている。また、軸方向においては、所定の隙間を介して、複数の拡径用スリットが、軸方向に並ぶように形成されている。これら拡径用スリットは、外管本体21の外壁面と内壁面とを貫通するように形成されている。
【0027】
図4の例では、軸方向に並ぶ4つのスリット群211〜214が形成されている。各スリット群211〜214は、周方向に等間隔に配置された2つの拡径用スリット(例えば、
図13の211a、211b)を有しており、4つのスリット群211〜214は、所定の隙間Sを介して、軸方向に並ぶように配置されている。ここでは、先端側から後端側に向かって並ぶスリット群を、それぞれ、第1スリット群211,第2スリット群212,第3スリット群213,及び第4スリット群214と称することとする。
【0028】
また、第1スリット群211の先端と、外管本体21の先端との間には、軸方向に延びる直線状のスリットは形成されていないが、その代わりに、径方向に移動可能な4つの移動部23が、周方向に等間隔に配置されている。また、第4スリット群214と、外管本体21の後端との間にはスリットが形成されていないが、第4スリット群214は外管本体21の後端部まで延びていてもよい。なお、移動部23の数は、特には限定されず、少なくとも1つ設けられていればよい。また、移動部23の位置も特に限定されるものではなく、各スリット群211、212、213、214の間、或いはスリット群214よりさらに後端側に設けられていても差し支えない。
【0029】
次に、移動部23について、
図5を参照しつつ説明する。
図5は外管の拡大断面図である。同図に示すように、移動部23は、外管本体21に形成されたスリットにより画定されるものである。より詳細には、外管本体21の基端側に凸となるようなU字状のスリットにより画定されており、先端側が外管本体21の外周に一体的に連結され、後端側がスリットにより外管本体21からは切り離されている。これにより、移動部23は、外管本体21に連結された先端部を中心として径方向に拡開可能になっている。
【0030】
また、移動部23において、外管本体21の内壁面側の面には、径方向内方に突出する突部24が形成されている。突部24の形状は特には限定されないが、
図5(b)に示すように、外管2に挿入される膨張式管1と干渉する程度の突出高さdが必要であり、また、膨張式管1の進入を妨げないように、膨張式管1と干渉したときに、干渉を避けるように径方向外方へ押圧されるような形状であることが必要である。そのため、突部24の形状は、例えば、
図5に示すように、半球状に形成することができる。
【0031】
<1−3 削孔ビット及びビットアダプタ>
次に、削孔ビット3及びビットアダプタ4について、
図6を参照しつつ説明する。
図6は削孔ビット及びビットアダプタの側面図である。削孔ビット3は、外管2の先端部、即ち
図1の例においては補強用カラー22に取り付けられ、地山を掘削しながら、外管2とともに削孔を形成するものである。削孔ビット3は、公知のものを用いることができ、例えば、
図6に示すように、円筒状に形成されたビット本体31を備えており、このビット本体31の先端面には、削孔のための複数の刃体32が設けられるとともに、ビット本体31の後端面には、雌ネジ33が形成されている。そして、ビット本体31の外周面は、
図1に示すように、外管2の補強用カラー22に固定されている。また、削孔ビット3の後端部には、上述したビットアダプタ4が取り付けられており、外管2の内部に配置されている。ビットアダプタ4は、軸方向の先端部に、雌ネジ411が形成された円筒状の本体部41と、この本体部41の先端側の雌ネジ411にねじ込まれた棒状の雄ネジ42と、を備えている。そして、雄ネジ42は、ビット本体31の雌ネジ33にねじ込まれ、これによってビットアダプタ4と削孔ビット3とが連結される。また、本体部41の後端側には軸方向に延びる凹部412が形成されており、この凹部412の内壁面には、軸方向に延びる複数の溝が等間隔に形成されている。そして、この凹部412には、後述する削孔ロッドに取り付けられたロッドアダプタが取り付けられる。
【0032】
<2.ロックボルトの施工方法>
次に、上記のように構成されたロックボルトの施工方法について、
図7〜
図13を参照しつつ説明する。本実施形態においては、
図7に示すように、新設のトンネル500を対象とし、その内壁面Xに沿って複数のロックボルトを所定間隔おきに打設する。まず、
図1に示すように、削孔ビット3とビットアダプタ4とを連結するとともに、削孔ビット3を外管2の先端部、つまり補強用カラー22に固定する。また、
図8に示すような公知の削孔機6を準備する。削孔機6には、削孔ロッド61が取り付けられ、削孔ロッド61の先端にはロッドアダプタ62(
図9参照)が取り付けられている。ロッドアダプタ62の先端にはスプライン軸が取り付けられており、このスプライン軸は、ビットアダプタ4の後端の凹部412に連結される。すなわち、ビットアダプタ4とロッドアダプタ62とはスプライン結合される。
【0033】
次に、
図8に示すように、外管2の後端開口から削孔ロッドを挿入し、ビットアダプタ4の凹部412に、ロッドアダプタ62のスプライン軸を連結する。これにより、削孔ビット3には、削孔ロッド61、ロッドアダプタ62、及びビットアダプタ4を介して、削孔機6からの打撃力、回転力、及び推力が伝達される。そして、削孔ビット3の先端面を地山表面Xに当接させ、削孔機6を駆動して地山を掘削していく。こうして、削孔が形成されていく。また、削孔ビット3は外管2に固定されているため、削孔ビット3とともに外管2も地山に進入していく。このとき、削孔ビット3の外径と外管2の外径とはほぼ同じであるため、外管2は削孔内壁面と接しつつ、前進していく。削孔時に、削孔機6から伝達される打撃力、回転力、推力は、削孔ビット3が補強用カラー22に固定されていることによって、スリット群211〜214や移動部23のスリットにより強度が低下している外管本体21に直接伝達されることが回避され、外管2の破壊が防止されている。こうして、
図9に示すように、外管2の後端が地山の表面まで達すると、削孔機を停止する。これに続いて、ロッドアダプタ62をビットアダプタ4から取り外し、ロッドアダプタ62及び削孔ロッド61を外管2から引き抜く。すなわち、地山には、削孔ビット3、ビットアダプタ4、及び外管2が取り残された状態となる。
【0034】
次に、
図10に示すように、膨張式管1にワッシャ5を取り付ける。ワッシャ5は、中心に貫通孔が形成された板状の部材である。貫通孔の径は、上述した注水用アダプタ13の大径部132よりも小さく、小径部131よりも大きい。そのため、ワッシャ5の貫通孔に対し、膨張式管1を先端側から挿入すると、ワッシャ5の貫通孔の周縁が、注水用アダプタ13の大径部132に係合する。こうして、ワッシャ5が取り付けられた膨張式管1を、先端スリーブ12を先頭にして、外管2の後端開口から挿入する。上述したように、膨張式管1を挿入していくと、膨張式管1は移動部23の内面側にある突部24に接する。そして、膨張式管1をさらに挿入すると、
図5(b)に示すように、突部24が膨張式管1との干渉を避けるように径方向外方に移動し、これに伴って移動部23が、その先端部を中心として径方向外方へ拡開する。これにより、
図11に示すように、拡開した移動部23の基端側の端部が削孔内壁面に係合する。その結果、移動部23は、外管2が基端側へ抜けるのを防止する抜け止めとして機能する。なお、膨張式管1の挿入は、ワッシャ5が地山の表面Xに接するまで行う。このとき、地山の表面Xからは、膨張式管1の後端部の注水用アダプタ13が突出した状態となる。
【0035】
こうして、膨張式管1の挿入が完了すると、
図12に示すように、注水用アダプタ13に注水ホース9を接続し、加圧水を注水用アダプタ13内に供給する。供給された加圧水は、膨張式管1の内部空間101に供給される。これにより、注入された加圧水は、膨張式管1内に行き渡り、内部空間101の内圧が上昇する。その結果、膨張式管1は、
図13(a)の状態から
図13(b)の状態へと膨張拡径する。すなわち、膨張式管1の内部空間101に加圧水が注入されることで、膨張式管1が径方向に膨張し、外管2の内壁面を径方向外方に押圧する。
【0036】
これにより、外管2において、拡径用スリット間を軸方向につなぐ隙間Sが破断し、
図13(b)に示すように、外管2は、スリット211a,211bを介して周方向に並ぶ断面円弧状の2つのパーツ201,202に分離する。分離した2つのパーツ201,202は、膨張式管1の膨張拡径によりさらに径方向外方に押圧され、削孔内壁面に密着する。また、膨張式管1の膨張拡径に伴って、ワッシャ5は地山表面Xを締め付ける。こうして、膨張式管1、2つのパーツ201,202を介して削孔内壁面に定着する。その後、注水用アダプタ13を介して膨張式管1から水を排出する。こうして、ロックボルトの施工が完了する。
【0037】
なお、上述した外管2は、外管本体21とその先端に取り付けられた補強用カラー22とを備えているため、
図12に示すように、補強用カラー22は2つのパーツ201,202に分離せずに非拡開で削孔内に残ってしまう。そこで、削孔時の衝撃が低い場合には、
図14に示すように、外管2に補強用カラー22を設けないようにすることもできる。すなわち、外管2が先端の削孔ビット3部分まで2つのパーツ201,202に分離するように、スリット群211〜214を構成しておくこともできる。
図14の例では、補強用カラー22を設けた場合よりも、先端地山まで摩擦定着を確保することが可能となる。
【0038】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、削孔に挿入される外管2に、径方向外方へ拡開可能な複数の移動部23が設けられており、これら移動部23が挿入された膨張式管1によって押圧されることで、径方向外方に拡開するように構成されている。そして、径方向外方へ拡開した移動部23は、削孔内壁面に係合することで、外管2の基端部側への移動を規制するように構成されている。そのため、外管2の内部で膨張式管1が膨張拡径して外管2が径方向に拡径しても、移動部23が削孔内壁面に係合しているため、外管2が削孔内において、基端側に移動するのを防止することができる。
【0039】
これにより、外管2が削孔から抜け出ないため、膨張式管1を地山表面Xに固定するためのワッシャ5が、外管2に押されて地山から離れるのを防止することができる。その結果、ワッシャ5を地山表面Xに確実に当接させることができ、地山の変位を防止できる。また、
図7に示すように、隣接するロックボルトにおいては、外管2の拡径により、摩擦定着力F1が得られ、移動部23が削孔内壁面に係合することにより、引き抜き抗力F2が得られる。そのため、ロックボルトを安定的に地山に定着させることができる。
【0040】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0041】
<4−1>
移動部23の構成は、径方向外方に移動し、削孔内壁面に係合することで、外管2の基端部側への移動を規制することができれば、特には限定されない。例えば、上記実施形態では、移動部23を画定するスリットの形状を平面視でU字状にしているが、V字状、半円状、三角形状、矩形状、多角形状など、種々の形状にすることができる。
【0042】
また、移動部23は、先端側の端部が外管2と一体となり、径方向外方に拡開するように構成されているが、径方向に移動して削孔内壁面に係合可能であれば、これ以外の構成であってもよい。
【0043】
<4−2>
上記実施形態では、移動部23を径方向外方に移動させるために、移動部23の内面に突部24を設けているが、突部24の形態も上述したものに限定されない。例えば、上記実施形態では、半球状であるが、膨張式管1と干渉して径方向外方に移動できるのであれば、例えば、傾斜面を有する断面三角形状に形成するなど種々の形態にすることができる。また、突部24を設けず、移動部23の肉厚を、外管2の内部空間側に大きくして膨張式管1と干渉するようにすることもできる。
【0044】
<4−3>
外管2の構成は、特には限定されず、膨張式管1の膨張拡径によって径方向外方に拡径されるものであれば特には限定さない。例えば、帯状の鋼板を螺旋状に巻いて筒状に形成し、スポット溶接を施すことで、筒状の形態が維持されるようにすることができる。また、膨張式管1も、内部空間に加圧流体を注入することで塑性変形して径方向に膨張するものであれば、図示例の形状に限定されるものではなく、例えば螺旋ひだ状に折り畳みされた管であっても良い。
【0045】
<4−4>
上記実施形態では、新たに設置されるトンネルに打設されるロックボルトの施工例を示したが、既設のトンネルにも適用可能である。但し、既設のトンネルは、表面に覆工コンクリートが打設されているため、削孔は、覆工コンクリートを貫通し、さらに地山内に延びるように形成されなければならない。このとき、上述したロックボルトを用いると、覆工コンクリートに形成された削孔に対しても拡径した外管が密着するが、このような状態になると、覆工コンクリートに膨張圧が作用し、覆工コンクリートに大きい負荷が作用する可能性がある。そこで、外管2を以下のように構成することができる。
【0046】
まず、
図15に示すように、外管2の後端部に、延長管8を取り付ける。この延長管8は中空の円筒状に形成されており、外管2のようなスリットは形成されていない。また、延長管8は、外管2と同じ径を有するとともに、軸方向の長さが覆工コンクリートの厚みよりもやや長くなっている。そして、延長管8の先端と、外管2の後端とは、複数箇所でスポット溶接81により固定されている。
【0047】
このような外管2を有するロックボルトを施工すると、
図16に示すようになる。すなわち、膨張式管1において、延長管8内にある部分は、延長管8が拡径しないため、延長管8に拘束され、膨張しない。一方、膨張式管1において地山内にある部分は、膨張し、これに伴って外管2が径方向外方に拡径する。これにより、外管2と延長管8の接続部分であるスポット溶接81の部分が破断し、外管2と延長管8とが分離する。上記のように、延長管8は拡径しないため、覆工コンクリート600に負荷が作用するのを防止することができる。そして、拡径しない延長管8より孔奥側の外管2のみ膨張拡径するため、膨張式管1の膨張拡径動作に伴う外管の削孔からの抜け出しが防止される。よって、延長管8を有するロックボルトにおいては、前述した移動部23は必須ではなく、移動部23が設けられてなくても、外管2が削孔内において、基端側に移動せず、削孔から抜け出るのを防止することができる。
【0048】
<4−5>
上記実施形態では、ロックボルトに削孔ロッド61を介して削孔機6を連結し、ロックボルトの先端に取り付けた削孔ビット3によって、削孔を形成しつつ、ロックボルトを地山に打設したが、これに限定されない。例えば、削孔を予め形成し、この削孔内にロックボルトを挿入した後、膨張式管1を膨張させて、ロックボルトを地山に定着させることもできる。この場合、移動部23が削孔内壁面に係合するように、削孔の内径は、ロックボルト、つまり外管2の外径に対応するように、両者をほぼ同じ大きさにすることが好ましい。
【0049】
<4−6>
上記実施形態では、膨張式管1に予めワッシャ5を取り付けているが、例えば、膨張式管1の注水用アダプタ13の後端部に雄ねじを形成しておき、膨張式管1が膨張拡径した後に、地山から突出する雄ねじにワッシャ5の貫通孔を挿通させ、ワッシャを地山に当接させる。その後、雄ねじにナットを螺合し、ワッシャを地山に締め付ける。この方法でも上記実施形態と同様に、ロックボルトを地山に安定的に定着することができる。