特許第6470639号(P6470639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470639
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20190204BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20190204BHJP
   H01M 8/247 20160101ALI20190204BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20190204BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20190204BHJP
   C01B 3/38 20060101ALN20190204BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/0606
   H01M8/247
   H01M8/04 N
   H01M8/24
   !H01M8/12
   !C01B3/38
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-117348(P2015-117348)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-4751(P2017-4751A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 信
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−232678(JP,A)
【文献】 特表2002−505510(JP,A)
【文献】 特開2009−099437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/0606
H01M 8/24
H01M 8/247
C01B 3/38
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に積層された複数の積層部材を有し、酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池セルスタックと、
原燃料が気化されて原燃料ガスが生成される気化部と、前記原燃料ガスから前記燃料ガスが生成される改質部とを有すると共に、前記燃料電池セルスタックの上側に設けられ、前記燃料電池セルスタックに荷重を加え、鉛直方向を軸方向とする金属製の多重管構造体によって形成される燃料処理部と、
を備える燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記多重管構造体は、円筒状に形成され、
前記燃料電池セルスタックの中心部は、前記多重管構造体の中心軸上に位置する、
請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記燃料処理部の下側には、前記燃料電池セルスタックを収容すると共に、前記多重管構造体の下部によって形成された多重の収容壁を有する収容部が設けられ、
前記多重の収容壁には、前記収容壁の他の部位よりも前記収容部の軸方向への変形が容易である易変形部が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記易変形部は、前記収容壁に形成されたビードである、
請求項3に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記ビードは、前記収容壁の全周に亘って形成されている、
請求項4に記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記多重の収容壁の間には、前記酸化剤ガス又は前記燃料ガスが流れるガス流路が形成されている、
請求項4又は請求項5に記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記ガス流路は、前記ビードが前記収容壁の周方向に沿って螺旋状に形成されることにより、螺旋状に形成されている、
請求項6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
前記多重の収容壁のうち一の収容壁に形成された前記ビードと、前記多重の収容壁のうち他の収容壁に形成された前記ビードとは、前記収容壁の軸方向の同じ位置に形成されると共に、前記収容壁の径方向における同じ側に凸を成している、
請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池モジュール。
【請求項9】
前記収容部の内側には、前記改質部から前記燃料電池セルスタックに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給管が設けられ、
前記燃料ガス供給管には、コルゲート管が用いられている、
請求項8に記載の燃料電池モジュール。
【請求項10】
前記多重の収容壁は、前記収容壁の軸方向に延びる側壁部と、前記側壁部の上端部から前記側壁部の径方向内側に延びると共に前記ビードが形成された上壁部とを有し、
前記多重の収容壁の一の上壁部に形成された前記ビードと、前記多重の収容壁の他の上壁部に形成された前記ビードとは、前記上壁部の径方向の同じ位置に形成されると共に、前記上壁部の厚さ方向の同じ側に凸を成している、
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池モジュール。
【請求項11】
前記燃料処理部は、前記燃料電池セルスタックから排出されたスタック排ガスが燃焼されて燃焼排ガスが生成される燃焼部を有する、
請求項3〜請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池モジュール。
【請求項12】
前記気化部は、前記多重管構造体によって形成された多重の筒状壁を有すると共に、該多重の筒状壁の間に、前記燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路、及び、前記燃焼排ガスとの熱交換により前記原燃料が気化されて前記原燃料ガスが生成される気化流路を有し、
前記改質部は、前記気化部の下側に設けられると共に、前記多重管構造体によって形成された多重の筒状壁を有し、かつ、該多重の筒状壁の間に、前記燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路、及び、前記気化流路と連通し前記燃焼排ガスの熱を利用して前記原燃料ガスが改質されて前記燃料ガスが生成される改質流路を有し、
前記燃焼部は、前記多重管構造体における前記改質部と前記収容部との間の部分によって形成された周壁部を有すると共に、該周壁部の内側に、前記燃料電池セルスタックから排出された前記スタック排ガスが燃焼されて前記燃焼排ガスが生成される燃焼室を有する、
請求項11に記載の燃料電池モジュール。
【請求項13】
前記燃焼部は、前記燃料電池セルスタックの上面と対向して設けられると共に、前記周壁部と結合され、かつ、前記燃焼室を、前記スタック排ガスが供給される下側空間と、前記燃焼排ガスが生成される上側空間とに区画する隔壁部を有し、
前記隔壁部は、前記燃料電池セルスタックの上にスペーサを介して積み重ねられている、
請求項12に記載の燃料電池モジュール。
【請求項14】
前記周壁部は、前記改質部を構成する筒状壁と前記収容部を構成する収容壁とを接続する多重の接続壁を有し、
前記隔壁部は、前記多重の接続壁のうち内側の接続壁と結合され残余の接続壁とは結合されていない、
請求項13に記載の燃料電池モジュール。
【請求項15】
前記隔壁部には、前記下側空間と前記上側空間とを連通するオリフィスが設けられ、
前記スペーサは、前記隔壁部の下面に設けられ、前記オリフィスを中心に渦巻き放射状に配置された複数の旋回誘導板と、
前記複数の旋回誘導板と前記燃料電池セルスタックとの間に介在されると共に、前記燃料電池セルスタックの上面を覆うクッション材とを有する、
請求項13又は請求項14に記載の燃料電池モジュール。
【請求項16】
前記燃焼部は、前記周壁部の内側に設けられると共に、前記燃料電池セルスタックから排出された燃料極排ガス及び空気極排ガスを混合して前記スタック排ガスを生成し、該スタック排ガスを燃焼させる混合燃焼器を有し、
前記混合燃焼器は、前記周壁部と結合されると共に、前記燃料電池セルスタックの上に積み重ねられている、
請求項12に記載の燃料電池モジュール。
【請求項17】
前記周壁部は、前記改質部を構成する筒状壁と前記収容部を構成する収容壁とを接続する多重の接続壁を有し、
前記混合燃焼器は、前記多重の接続壁のうち内側の接続壁と結合され残余の接続壁とは結合されていない、
請求項16に記載の燃料電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池セルスタックは、複数のセルやマニホールドや集電板等の複数の積層部材を有する積層構造となっている。このような積層構造である燃料電池セルスタックでは、複数の積層部材の気密性を保つためや、複数の積層部材の熱変形を防ぐためや、複数の積層部材間の密着を強固にするために、複数の積層部材を接着したり締結したりする構造が採用されることがある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、複数の積層部材を接着したり締結したりしても、燃料電池セルスタックの起動及び停止等による温度変化により、複数の積層部材が変形して複数の積層部材の密着性が損なわれることがある。
【0004】
また、複数の積層部材を締結する締結構造を採用した場合でも、締結部材と複数の積層部材との熱膨張が完全に一致しないため、温度によって締結部材が緩んだり締まったりするなど、締結力が変化することがある。さらに、締結部材に金属を使用すると、燃料電池セルスタックの長時間の運転で締結部材がクリープして締結部材の締結力が緩むことがある。その一方で、締結部材に金属以外の材料、例えばセラミックを使用すると、とても高価になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−76762号公報
【特許文献2】特開2010−251015号公報
【特許文献3】特開2004−253320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、コストアップを抑えつつ、燃料電池セルスタックに設けられた複数の積層部材の密着性を維持できる燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の燃料電池モジュールは、鉛直方向に積層された複数の積層部材を有し、酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池セルスタックと、原燃料が気化されて原燃料ガスが生成される気化部と、前記原燃料ガスから前記燃料ガスが生成される改質部とを有すると共に、前記燃料電池セルスタックの上側に設けられ、前記燃料電池セルスタックに荷重を加える燃料処理部と、を備える。
【0008】
この燃料電池モジュールによれば、燃料電池セルスタックの上側には、気化部及び改質部を有する燃料処理部が設けられており、この燃料処理部の荷重は、燃料電池セルスタックに加えられる。したがって、一定の重量である燃料処理部の荷重が燃料電池セルスタックに加わるので、燃料電池セルスタックに設けられた複数の積層部材の密着性を維持することができる。
【0009】
しかも、複数の積層部材を密着させるための荷重を得るために、締結部材等を用いた専用の締結構造ではなく、気化部及び改質部を有する燃料処理部を利用しているので、コストアップを抑えることができる。
【0010】
なお、請求項1に記載の燃料電池モジュールは、鉛直方向を軸方向とする金属製の多重管構造体を備え、前記燃料処理部は、前記多重管構造体によって形成されている
【0011】
この燃料電池モジュールによれば、燃料処理部は、鉛直方向を軸方向とする多重管構造体によって形成されている。したがって、燃料処理部の構造を簡素化することができるので、コストダウンできる。
【0012】
しかも、燃料処理部が金属製の多重管構造体によって形成されることにより、燃料処理部の重量の設定が容易になるので、多重管構造体の設計時に燃料電池セルスタックに加わる荷重を適切に設定することができる。
【0013】
また、請求項2に記載のように、請求項1に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記多重管構造体は、円筒状に形成され、前記燃料電池セルスタックの中心部は、前記多重管構造体の中心軸上に位置していても良い。
【0014】
この燃料電池モジュールによれば、多重管構造体は、円筒状に形成されており、燃料電池セルスタックの中心部は、多重管構造体の中心軸上に位置する。したがって、多重管構造体によって形成された燃料処理部から燃料電池セルスタックにバランス良く荷重を伝達することができる。これにより、燃料電池セルスタックに設けられた複数の積層部材をバランスよく密着させることができる。
【0015】
また、請求項3に記載のように、請求項1又は請求項2に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃料処理部の下側には、前記燃料電池セルスタックを収容すると共に、前記多重管構造体の下部によって形成された多重の収容壁を有する収容部が設けられ、前記多重の収容壁には、前記収容壁の他の部位よりも前記収容部の軸方向への変形が容易である易変形部が形成されていても良い。
【0016】
この燃料電池モジュールによれば、燃料処理部の下側には、燃料電池セルスタックを収容する収容部が設けられており、この収容部を構成する多重の収容壁には、収容壁の他の部位よりも収容部の軸方向への変形が容易である易変形部が形成されている。したがって、高温運転時には、燃料電池セルスタックの排熱で加熱されることにより軟化された多重の収容壁が燃料処理部の重量を支えることができず、各収容壁が易変形部を起点にして変形される。これにより、燃料処理部の全ての荷重が燃料電池セルスタックに加わるので、燃料電池セルスタックに設けられた複数の積層部材をより密着させることができる。
【0017】
また、請求項4に記載のように、請求項3に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記易変形部は、前記収容壁に形成されたビードであっても良い。
【0018】
この燃料電池モジュールによれば、収容壁に形成されたビードによって易変形部が構成されているので、このビードを起点にして収容壁を容易に変形させることができる。
【0019】
しかも、多重の収容壁に形成されたビードは、多重の収容壁の熱膨張差を吸収するベローズの機能も兼ねるので、多重の収容壁の熱膨張差による熱応力も緩和することができる。
【0020】
また、収容壁を湾曲又は屈曲させて形成したビードを用いるので、収容壁の一部を薄肉とするベローズと比べて、製造が容易であり、コストダウンすることができる。
【0021】
また、請求項5に記載のように、請求項4に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記ビードは、前記収容壁の全周に亘って形成されていても良い。
【0022】
この燃料電池モジュールによれば、ビードは、収容壁の全周に亘って形成されている。したがって、高温運転時には、ビードを起点にして収容壁が全周に亘って変形されるので、燃料処理部の荷重を燃料電池セルスタックに均等に加えることができる。
【0023】
また、請求項6に記載のように、請求項4又は請求項5に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記多重の収容壁の間には、前記酸化剤ガス又は前記燃料ガスが流れるガス流路が形成されていても良い。
【0024】
この燃料電池モジュールによれば、多重の収容壁の間の隙間は、酸化剤ガス又は燃料ガスが流れるガス流路として利用されているので、収容部の構成を簡素化することができる。
【0025】
また、請求項7に記載のように、請求項6に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記ガス流路は、前記ビードが前記収容壁の周方向に沿って螺旋状に形成されることにより、螺旋状に形成されていても良い。
【0026】
この燃料電池モジュールによれば、ガス流路は、ビードが収容壁の周方向に沿って螺旋状に形成されることにより、螺旋状に形成されている。したがって、このガス流路を酸化剤ガス又は燃料ガスが螺旋状に流れるので、このガス流路を形成する多重の収容壁の温度分布を均一化することができる。これにより、燃料電池セルスタックが均一に保温されるので燃料電池セルスタックの性能を向上させることができると共に、多重の収容壁の熱膨張差を減少させることができる。
【0027】
また、請求項8に記載のように、請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記多重の収容壁のうち一の収容壁に形成された前記ビードと、前記多重の収容壁のうち他の収容壁に形成された前記ビードとは、前記収容壁の軸方向の同じ位置に形成されると共に、前記収容壁の径方向における同じ側に凸を成していても良い。
【0028】
この燃料電池モジュールによれば、一の収容壁に形成されたビードと、他の収容壁に形成されたビードとは、収容壁の軸方向の同じ位置に形成されると共に、収容壁の径方向における同じ側に凸を成している。したがって、燃料処理部の荷重を受けて各ビードが圧縮変形される場合でも、ビードと収容壁とが干渉したり、ビード同士が干渉したりすることを抑制することができる。これにより、多重の収容壁の間に形成されたガス流路が閉塞されることを抑制することができると共に、収容壁の圧縮変形が阻害されることも抑制することができる。
【0029】
また、請求項9に記載のように、請求項8に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記収容部の内側には、前記改質部から前記燃料電池セルスタックに前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給管が設けられ、前記燃料ガス供給管には、コルゲート管が用いられていても良い。
【0030】
この燃料電池モジュールによれば、収容部の内側に設けられた燃料ガス供給管には、コルゲート管が用いられている。したがって、ビードを起点にして多重の収容壁が変形され、燃料ガス供給管が曲げ変形される場合でも、燃料ガス供給管の潰れを抑制することができる。これにより、改質部から燃料電池セルスタックへの燃料ガスの供給を確保することができる。
【0031】
また、請求項10に記載のように、請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記多重の収容壁は、前記収容壁の軸方向に延びる側壁部と、前記側壁部の上端部から前記側壁部の径方向内側に延びると共に前記ビードが形成された上壁部とを有し、前記多重の収容壁の一の上壁部に形成された前記ビードと、前記多重の収容壁の他の上壁部に形成された前記ビードとは、前記上壁部の径方向の同じ位置に形成されると共に、前記上壁部の厚さ方向の同じ側に凸を成していても良い。
【0032】
この燃料電池モジュールによれば、一の上壁部に形成されたビードと、他の上壁部に形成されたビードとは、上壁部の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部の厚さ方向の同じ側に凸を成している。したがって、燃料処理部の荷重を受けて各ビードが曲げ変形される場合でも、ビードと上壁部とが干渉したり、ビード同士が干渉したりすることを抑制することができる。これにより、多重の収容壁の上壁部の間に形成されたガス流路が閉塞されることを抑制することができると共に、上壁部の変形が阻害されることも抑制することができる。
【0033】
また、請求項11に記載のように、請求項3〜請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃料処理部は、前記燃料電池セルスタックから排出されたスタック排ガスが燃焼されて燃焼排ガスが生成される燃焼部を有していても良い。
【0034】
この燃料電池モジュールによれば、燃料処理部は、気化部及び改質部に加えて燃焼部を有するので、この燃焼部が追加された分、燃料処理部の重量を増加させることができる。これにより、燃料電池セルスタックに対してより大きな荷重を加えることができる。
【0035】
また、請求項12に記載のように、請求項11に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記気化部は、前記多重管構造体によって形成された多重の筒状壁を有すると共に、該多重の筒状壁の間に、前記燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路、及び、前記燃焼排ガスとの熱交換により前記原燃料が気化されて前記原燃料ガスが生成される気化流路を有し、前記改質部は、前記気化部の下側に設けられると共に、前記多重管構造体によって形成された多重の筒状壁を有し、かつ、該多重の筒状壁の間に、前記燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路、及び、前記気化流路と連通し前記燃焼排ガスの熱を利用して前記原燃料ガスが改質されて前記燃料ガスが生成される改質流路を有し、前記燃焼部は、前記多重管構造体における前記改質部と前記収容部との間の部分によって形成された周壁部を有すると共に、該周壁部の内側に、前記燃料電池セルスタックから排出された前記スタック排ガスが燃焼されて前記燃焼排ガスが生成される燃焼室を有していても良い。
【0036】
この燃料電池モジュールによれば、気化部及び改質部は、多重管構造体によって形成されることにより同軸上に設けられているので、燃料処理部を径方向に小型化することができる。また、気化部及び改質部は、多重の筒状壁を有する構成とされているので、気化部及び改質部の構造を簡素化できると共に、気化部及び改質部の組立が容易になる。これにより、コストダウンすることができる。
【0037】
さらに、燃焼部の周壁部も、多重管構造体における改質部と収容部との間の部分によって形成されているので、燃焼部の構造を簡素化でき、コストダウンすることができる。
【0038】
また、請求項13に記載のように、請求項12に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃焼部は、前記燃料電池セルスタックの上面と対向して設けられると共に、前記周壁部と結合され、かつ、前記燃焼室を、前記スタック排ガスが供給される下側空間と、前記燃焼排ガスが生成される上側空間とに区画する隔壁部を有し、前記隔壁部は、前記燃料電池セルスタックの上にスペーサを介して積み重ねられていても良い。
【0039】
この燃料電池モジュールによれば、燃焼部には、燃焼室を、スタック排ガスが供給される下側空間と、燃焼排ガスが生成される上側空間とに区画する隔壁部が設けられている。したがって、この隔壁部により、スタック排ガスと燃焼排ガスが混合されることを抑制することができるので、スタック排ガスを安定して燃焼させることができる。
【0040】
また、この燃焼部に設けられた隔壁部は、周壁部と結合されると共に、燃料電池セルスタックの上にスペーサを介して積み重ねられている。したがって、多重管構造体によって形成された燃料処理部の荷重を、隔壁部及びスペーサを介して燃料電池セルスタックに加えることができるので、燃料処理部の荷重を燃料電池セルスタックへ効率良く伝達することができる。
【0041】
また、請求項14に記載のように、請求項13に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記周壁部は、前記改質部を構成する筒状壁と前記収容部を構成する収容壁とを接続する多重の接続壁を有し、前記隔壁部は、前記多重の接続壁のうち内側の接続壁と結合され残余の接続壁とは結合されていなくても良い。
【0042】
この燃料電池モジュールによれば、隔壁部は、多重の接続壁のうち、内側の接続壁とは結合されているが、残余の接続壁とは結合されていない。したがって、多重の接続壁と接続された多重の収容壁に熱膨張差が生ずる場合でも、隔壁部を介して多重の収容壁の間で応力が伝達されることを抑制することができる。
【0043】
また、請求項15に記載のように、請求項13又は請求項14に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記隔壁部には、前記下側空間と前記上側空間とを連通するオリフィスが設けられ、前記スペーサは、前記隔壁部の下面に設けられ、前記オリフィスを中心に渦巻き放射状に配置された複数の旋回誘導板と、前記複数の旋回誘導板と前記燃料電池セルスタックとの間に介在されると共に、前記燃料電池セルスタックの上面を覆うクッション材とを有していても良い。
【0044】
この燃料電池モジュールによれば、オリフィスの入口の周囲には、オリフィスを中心に渦巻き放射状に配置された複数の旋回誘導板が設けられている。したがって、複数の旋回誘導板によりスタック排ガスのショートパスを抑制してスタック排ガスをオリフィスに誘導することができると共に、スタック排ガスに渦流を作り出すことができる。これにより、スタック排ガスに含まれる燃料極排ガス及び空気極排ガスの混合を促進することができるので、スタック排ガスの燃焼を安定させることができる。
【0045】
また、複数の旋回誘導板と燃料電池セルスタックとの間には、燃料電池セルスタックの上面を覆うクッション材が介在されている。したがって、このクッション材により複数の旋回誘導板からの荷重を分散させることができるので、燃料電池セルスタックの上面に局所的な荷重が加わることを抑制することができる。これにより、燃料電池セルスタックの破損を抑制することができる。
【0046】
また、請求項16に記載のように、請求項12に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記燃焼部は、前記周壁部の内側に設けられると共に、前記燃料電池セルスタックから排出された燃料極排ガス及び空気極排ガスを混合して前記スタック排ガスを生成し、該スタック排ガスを燃焼させる混合燃焼器を有し、前記混合燃焼器は、前記周壁部と結合されると共に、前記燃料電池セルスタックの上に積み重ねられていても良い。
【0047】
この燃料電池モジュールによれば、燃焼部の周壁部の内側には、混合燃焼器が設けられている。したがって、この混合燃焼器により、燃料電池セルスタックから排出された燃料極排ガス及び空気極排ガスの混合を促進することができるので、この燃料極排ガス及び空気極排ガスが混合されて生成されたスタック排ガスの燃焼を安定させることができる。
【0048】
また、この混合燃焼器は、周壁部と結合されると共に、燃料電池セルスタックの上に積み重ねられている。したがって、多重管構造体によって形成された燃料処理部の荷重を、混合燃焼器を介して燃料電池セルスタックに加えることができるので、燃料処理部の荷重を燃料電池セルスタックへ効率良く伝達することができる。
【0049】
また、請求項17に記載のように、請求項16に記載の燃料電池モジュールにおいて、前記周壁部は、前記改質部を構成する筒状壁と前記収容部を構成する収容壁とを接続する多重の接続壁を有し、前記混合燃焼器は、前記多重の接続壁のうち内側の接続壁と結合され残余の接続壁とは結合されていなくても良い。
【0050】
この燃料電池モジュールによれば、混合燃焼器は、多重の接続壁のうち、内側の接続壁とは結合されているが、残余の接続壁とは結合されていない。したがって、多重の接続壁と接続された多重の収容壁に熱膨張差が生ずる場合でも、混合燃焼器を介して多重の収容壁の間で応力が伝達されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0051】
以上詳述したように、本発明の燃料電池モジュールによれば、コストアップを抑えつつ、燃料電池セルスタックに設けられた複数の積層部材の密着性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】第一実施形態に係る燃料電池モジュールの縦断面図である。
図2図1の燃料電池モジュールの上部拡大図である。
図3図1の燃料電池モジュールの下部拡大図である。
図4図1の隔壁部及びガス整流部材を上側から見た分解斜視図である。
図5図1のガス整流部材の断面を含む斜視図である。
図6図1の隔壁部及びガス整流部材を下側から見た分解斜視図である。
図7図1の燃料電池モジュールの第一変形例を示す縦断面図である。
図8図1の燃料電池モジュールの第二変形例を示す縦断面図である。
図9図1の燃料電池モジュールの第三変形例を示す縦断面図である。
図10】第二実施形態に係る燃料電池モジュールの縦断面図である。
図11図10の燃料電池モジュールの下部拡大図である。
図12】燃料電池セルスタックの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0054】
<燃料電池モジュールM1>
図1に示されるように、第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1は、燃料電池セルスタック10と、ベース部材20と、多重管構造体30と、断熱材150とを備える。
【0055】
<燃料電池セルスタック10>
燃料電池セルスタック10には、一例として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が適用されている。この燃料電池セルスタック10は、複数の平板形のセル11を有している。この複数のセル11は、本発明における「複数の積層部材」に相当し、鉛直方向に積層されている。
【0056】
各セル11は、燃料極(アノード極)、電解質層、空気極(カソード極)を有する。各セル11の燃料極には、燃料ガスが供給され、各セル11の空気極には、酸化剤ガスが供給される。各セル11は、酸化剤ガスと燃料ガスとの電気化学反応により発電すると共に、発電に伴い発熱する。
【0057】
この燃料電池セルスタック10は、ベース部材20の上に載置されている。ベース部材20には、鉛直方向に貫通する導線挿通孔21が形成されており、燃料電池セルスタック10から延びる電力導線12は、導線挿通孔21に挿通されている。燃料電池セルスタック10の中心部Cは、後述する多重管構造体30の中心軸上に位置する。
【0058】
<多重管構造体30>
多重管構造体30は、複数(一例として六個)の管材31〜36によって構成されている。この複数の管材31〜36は、いずれも横断面が真円形状である円筒状であり、伝熱性の高い金属で形成されている。この複数の管材31〜36は、鉛直方向を軸方向として配置されている。
【0059】
第一乃至第三の管材31〜33は、同心状に配置されている。この第一乃至第三の管材31〜33は、多重管構造体30の内側から外側に順に配置されている。第一及び第二の管材31,32は、燃料電池セルスタック10の上方から多重管構造体30の上端部に亘って設けられており、第三の管材33は、第二の管材32の上部に対応する長さで形成されている。
【0060】
第四の管材34は、第二の管材32の下方に設けられている。第五及び第六の管材35,36は、多重管構造体30の高さ方向の中央部から下端部に亘って設けられている。第五の管材35は、第二及び第四の管材32,34の外側に配置され、第六の管材36は、第五の管材35の外側に配置されている。
【0061】
多重管構造体30の上壁部41は、円板状に形成されており、第一及び第二の管材31,32の上端部は、上壁部41の外周部に結合されている。第二の管材32の下端部は、後述する隔壁部103を介して第四の管材34の上端部に結合されており、第三の管材33の上端部は、環状の連結壁部42を介して第二の管材32の上端部に結合されている。また、第五及び第六の管材35,36の上端部は、環状の連結壁部43を介して第三の管材33の下端部に結合されており、第四乃至第六の管材34〜36の下端部は、ベース部材20の外周部に結合されている。
【0062】
この多重の管材31〜36によって構成された多重管構造体30は、機能別には、燃料処理部50及び収容部120を有する。燃料処理部50は、燃料電池セルスタック10の上側に設けられており、気化部60と、改質部80と、燃焼部100とを有する。
【0063】
<気化部60>
図2に示されるように、気化部60は、本発明における「多重の筒状壁」に相当する三重の筒状壁61〜63を有する。この三重の筒状壁61〜63は、第一乃至第三の管材31〜33によって形成されており、多重管構造体30の内側から外側に順に配置されている。
【0064】
この気化部60を構成する三重の筒状壁61〜63は、互いの間に隙間を有している。内側の筒状壁61の内側には、断熱空間65が形成されており、三重の筒状壁61〜63の間には、内側から外側に順に燃焼排ガス流路66及び気化流路67が形成されている。燃焼排ガス流路66には、多重管構造体30の軸周りに螺旋状に延びる螺旋部材69の上部が設けられている。内側から二番目の筒状壁62には、多重管構造体30の軸周りに螺旋状に延びる突条部70が形成されており、気化流路67は、この突条部70により螺旋状に形成されている。
【0065】
燃焼排ガス流路66の上端部には、ガス排出管166が接続されており、気化流路67の上端部には、原燃料ガス供給管161が接続されている。ガス排出管166及び原燃料ガス供給管161は、多重管構造体30の径方向外側に延びている。
【0066】
<改質部80>
改質部80は、上述の気化部60の下側に設けられている。この改質部80は、本発明における「多重の筒状壁」に相当する四重の筒状壁81〜84を有する。この四重の筒状壁81〜84は、第一の管材31、第二の管材32、第五の管材35、及び、第六の管材36によって形成されており、多重管構造体30の内側から外側に順に配置されている。
【0067】
この改質部80を構成する四重の筒状壁81〜84は、互いの間に隙間を有している。内側の筒状壁81の内側には、断熱空間85が形成されている。この断熱空間85は、上述の気化部60の断熱空間65と連通されている。また、四重の筒状壁81〜84の間には、内側から外側に順に、燃焼排ガス流路86、改質流路87、及び、酸化剤ガス流路88が形成されている。燃焼排ガス流路86は、上述の気化部60の燃焼排ガス流路66と連通し、改質流路87は、上述の気化部60の気化流路67と連通している。
【0068】
燃焼排ガス流路86には、上述の螺旋部材69の下部が設けられており、酸化剤ガス流路88には、螺旋部材69と同様の螺旋部材89が設けられている。酸化剤ガス流路88の上端部には、多重管構造体30の径方向外側に延びる酸化剤ガス供給管164が接続されている。
【0069】
図2図3に示されるように、改質流路87には、この改質流路87の全周に亘って改質触媒層90が設けられている。この改質触媒層90には、例えば、活性金属としてニッケル、ルテニウム、白金、ロジウム等の金属を担持した粒状触媒又はハニカム触媒等が用いられる。
【0070】
<燃焼部100>
図3に示されるように、燃焼部100は、上述の改質部80の下方に設けられている。この燃焼部100は、周壁部101と、テーパ部102と、隔壁部103とを有する。周壁部101は、多重管構造体30における改質部80と収容部120との間の部分によって形成されている。
【0071】
この周壁部101は、改質部80を構成する四重の筒状壁81〜84のうち内側の筒状壁81を除く残りの三重の筒状壁82〜84と、後述する収容部120を構成する三重の収容壁121〜123とを接続する三重の接続壁111〜113によって構成されている。この三重の接続壁111〜113は、本発明における「多重の接続壁」に相当する。内側の接続壁111は、第二及び第四の管材32,34によって形成され、中央の接続壁112は、第五の管材35によって形成され、外側の接続壁113は、第六の管材36によって形成されている。
【0072】
この周壁部101を構成する三重の接続壁111〜113において、内側の接続壁111と中央の接続壁112との間には、改質部80の改質流路87が延長して形成されており、中央の接続壁112と外側の接続壁113との間には、改質部80の酸化剤ガス流路88が延長して形成されている。この三重の接続壁111〜113によって構成された周壁部101の内側は、燃焼室116として形成されており、この燃焼室116は、後述する収容部120の内側に形成された収容室126と、上述の改質部80の燃焼排ガス流路86とに連通されている。
【0073】
テーパ部102は、上述の改質部80を構成する四重の筒状壁81〜84のうち内側の筒状壁81の下端部に形成されている。このテーパ部102は、改質部80側から隔壁部103側に向けて突出すると共に、隔壁部103側から改質部80側に向かうに従って拡径するテーパ状に形成されている。
【0074】
このテーパ部102の先端部には、点火電極104が設けられている。点火電極104は、テーパ部102の先端部(下端部)から燃焼室116内に突出されており、燃焼室116の中心部に配置されている。この点火電極104は、燃料電池セルスタック10の上方に燃料電池セルスタック10と離間して設けられている。上述の気化部60及び改質部80を構成する第一の管材31の内側には、パイプ105が収容されており、このパイプ105の内側には、点火電極104と接続され碍子で絶縁された導電部106が挿入されている。
【0075】
隔壁部103は、周壁部101の内周面に沿って環状に形成されている。この隔壁部103は、燃焼室116を、スタック排ガスが供給される下側空間116Aと、燃焼排ガスが生成される上側空間116Bとに区画している。この下側空間116Aと上側空間116Bとは、後述するオリフィス部材142のオリフィス146を通じて連通されている。
【0076】
この隔壁部103は、三重の接続壁111〜113のうち内側の接続壁111(第二及び第四の管材32,34)と結合されているが、残余の接続壁112,113(第五及び第六の管材35,36)とは結合されていない。この隔壁部103は、点火電極104と燃料電池セルスタック10との間に配置されると共に、燃料電池セルスタック10の上面10Aと対向して設けられている。この隔壁部103には、ガス整流部材140が設けられている。
【0077】
ガス整流部材140は、円環板141と、オリフィス部材142と、パンチングメタル143とを有する(図4図6も参照)。円環板141は、鉛直方向を板厚方向として配置されており、オリフィス部材142は、逆さ円錐台状に形成され、円環板141の下面に一体に設けられている。オリフィス部材142は、底壁部を構成する対向壁部144と、周壁部を構成するテーパ部145とを有する。対向壁部144の中央部には、鉛直方向に貫通する一つのオリフィス146が形成されている。
【0078】
円環板141は、鉛直方向上側から隔壁部103に重ね合わされて接合されており、オリフィス部材142は、環状に形成された隔壁部103の内側を通じて隔壁部103よりも鉛直方向下側に突出している。対向壁部144は、燃料電池セルスタック10の上面10Aと隙間を有して対向しており、この対向壁部144の周囲に形成されたテーパ部145は、燃料電池セルスタック10の上面10Aから遠ざかるに従って拡径するテーパ状とされている。
【0079】
パンチングメタル143は、円形平板状に形成されており、鉛直方向下側から円環板141の中央部に重ね合わされて接合され、この円環板141の内孔を塞いでいる。パンチングメタル143は、パンチング加工されることにより形成された多数の噴出孔147を有している。
【0080】
また、隔壁部103の下面には、複数の旋回誘導板148が設けられている。複数の旋回誘導板148は、それぞれ湾曲して形成されており、オリフィス146の入口の周囲に設けられている。この複数の旋回誘導板148は、オリフィス146を中心に渦巻き放射状に配置されており、燃料電池セルスタック10から排出されたスタック排ガスをオリフィス146に誘導する機能を有する。
【0081】
この燃焼部100において、オリフィス146に流入したスタック排ガスは、パンチングメタル143に形成された多数の噴出孔147を通じて隔壁部103の上側に噴出され、隔壁部103の上側に噴出されたスタック排ガスは、点火電極104とパイプ105等との間に形成されるスパークによって点火される。
【0082】
また、この隔壁部103は、複数の旋回誘導板148及びクッション材13を介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられている。クッション材13は、燃料電池セルスタック10の上面10Aを覆っており、複数の旋回誘導板148と燃料電池セルスタック10との間に介在されている。このクッション材13には、セラミック、アルミナ、ジルコニアなどの耐熱性の高い絶縁材料で形成されたものが用いられる。複数の旋回誘導板148及びクッション材13は、本発明における「スペーサ」の一例である。
【0083】
<収容部120>
収容部120は、燃料処理部50の下側に設けられており、多重管構造体30の下部によって形成された三重の収容壁121〜123を有する。三重の収容壁121〜123は、本発明における「多重の収容壁」に相当し、多重管構造体30の内側から外側に順に配置されている。この三重の収容壁121〜123は、第四乃至第六の管材34〜36によって構成されている。
【0084】
この収容部120の内側には、燃料電池セルスタック10が収容された収容室126が形成されている。この収容部120を構成する三重の収容壁121〜123は、互いの間に隙間を有しており、この三重の収容壁121〜123の間には、本発明における「ガス流路」に相当する燃料ガス流路127及び予熱流路128が形成されている。
【0085】
燃料ガス流路127は、上述の改質流路87と連通されており、予熱流路128は、上述の酸化剤ガス流路88と連通されている。予熱流路128は、ベース部材20に形成された流路22を通じて燃料電池セルスタック10の酸化剤ガス導入口と連通されており、同様に、燃料ガス流路127は、ベース部材20に形成された流路(不図示)を通じて燃料電池セルスタック10の燃料ガス導入口と連通されている。
【0086】
また、三重の収容壁121〜123には、本発明における「易変形部」に相当するビード131が形成されている。ビード131は、収容壁121〜123の軸方向の一部が湾曲されることにより形成されたものであり、より具体的には、収容壁121〜123の径方向内側に凸を成す断面湾曲状(断面円弧状)の突条部によって構成されている。
【0087】
第一実施形態において、ビード131は、突条部によって構成されることにより、収容壁121〜123の他の部位よりも収容部120の軸方向への圧縮変形が容易とされている。このビード131は、収容壁121〜123の周方向に沿って環状に延びることで、収容壁121〜123の全周に亘って形成されている。
【0088】
また、三重の収容壁121〜123のうち、一の収容壁に形成されたビード131と、他の収容壁に形成されたビード131とは、収容壁121〜123の軸方向の同じ位置に形成されると共に、収容壁121〜123の径方向における同じ側に凸を成している。
【0089】
つまり、各収容壁121〜123には、収容壁121〜123の軸方向に離間して一対のビード131が形成されている。そして、各収容壁121〜123の上側に形成された三つのビード131は、互いに収容壁121〜123の軸方向の同じ位置(同じ高さ)に形成されると共に、いずれも収容壁121〜123の径方向内側(収容部120の内側)に凸を成している。
【0090】
同様に、各収容壁121〜123の下側に形成された三つのビード131も、互いに収容壁121〜123の軸方向の同じ位置に形成されると共に、いずれも収容壁121〜123の径方向内側に凸を成している。
【0091】
このように、第一実施形態では、燃料電池セルスタック10を収容する三重の収容壁121〜123にビード131が形成されている。そして、この燃料電池モジュールM1では、高温運転時に、燃料電池セルスタック10の排熱で加熱されることにより軟化された三重の収容壁121〜123が燃料処理部50の重量を支えることができず、収容壁121〜123がビード131を起点にして圧縮変形され、燃料処理部50の全ての荷重が燃料電池セルスタック10に加わるように各部の形状や材料等が設定されている。
【0092】
<断熱材150>
図1に示されるように、断熱材150は、円筒状の本体部151と、円盤状の上部152及び下部153とを有している。本体部151は、多重管構造体30を外側から覆っており、上部152及び下部153は、多重管構造体30を上側及び下側から覆っている。断熱材150の表面は、被覆シート154によって覆われている。
【0093】
次に、第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1の動作について説明する。
【0094】
図2に示されるように、気化流路67には、原燃料ガス供給管161を通じて原燃料171が供給される。この原燃料171としては、炭化水素燃料に改質用水が混合されたものが使用される。炭化水素燃料としては、例えば、都市ガスが好適に用いられるが、プロパンなどの炭化水素を主成分とするガスが用いられても良く、また、炭化水素系液体が用いられても良い。
【0095】
気化流路67に原燃料171が供給されると、この原燃料171は、螺旋状に形成された気化流路67を鉛直方向上側から下側へ流れる。このとき、気化部60では、燃焼部100(図3参照)から排出された燃焼排ガス176が燃焼排ガス流路66を鉛直方向下側から上側に流れる。気化流路67に隣接する燃焼排ガス流路66に燃焼排ガス176が流れると、気化流路67を流れる原燃料171と燃焼排ガス176との間で熱交換される。そして、気化流路67では、原燃料171が気化されて原燃料ガス172が生成される。
【0096】
気化流路67で気化された原燃料ガス172は、改質流路87に流入する。改質部80では、燃焼部100(図3参照)から排出された燃焼排ガス176が燃焼排ガス流路86を鉛直方向下側から上側に流れるので、改質流路87を流れる原燃料ガス172と燃焼排ガス176との間で熱交換される。そして、改質流路87では、燃焼排ガス176の熱を利用して改質触媒層90により原燃料ガス172から燃料ガス173(改質ガス)が生成される。
【0097】
図3に示されるように、この改質流路87にて生成された燃料ガス173は、収容部120に形成された燃料ガス流路127に流入する。そして、この燃料ガス173は、燃料ガス流路127を流れた後、ベース部材20に形成された流路(不図示)を通じて燃料電池セルスタック10の燃料ガス導入口に供給される。
【0098】
一方、このとき、図2に示される改質部80では、酸化剤ガス供給管164を通じて酸化剤ガス流路88に酸化剤ガス174が供給され、この酸化剤ガス174は、酸化剤ガス流路88を鉛直方向上側から下側に流れる。図3に示されるように、酸化剤ガス流路88を流れた酸化剤ガス174は、予熱流路128に流入し、この予熱流路128を鉛直方向上側から下側に流れる。
【0099】
この予熱流路128を流れる酸化剤ガス174は、燃料電池セルスタック10の熱によって予熱される。そして、この予熱流路128にて予熱された酸化剤ガス174は、ベース部材20に形成された流路22を通じて燃料電池セルスタック10の酸化剤ガス導入口に供給される。
【0100】
以上のようにして、燃料電池セルスタック10の燃料ガス導入口に燃料ガス173が供給されると共に、燃料電池セルスタック10の酸化剤ガス導入口に酸化剤ガス174が供給されると、燃料電池セルスタック10では、各セル11において、酸化剤ガス174と燃料ガス173との電気化学反応により発電する。また、各セル11は、発電に伴い発熱する。
【0101】
燃料電池セルスタック10の発電時に、燃料電池セルスタック10からは、燃料極排ガス及び空気極排ガスを含むスタック排ガス175が燃焼室116のうちの下側空間116Aに排出される。このスタック排ガス175は、複数の旋回誘導板148によってオリフィス146に誘導される。そして、スタック排ガス175は、オリフィス146に流入し混合される。
【0102】
オリフィス146にて混合されたスタック排ガス175は、パンチングメタル143に形成された多数の噴出孔147から噴出され、燃焼室116の上側空間116Bに供給される。この上側空間116Bに供給されたスタック排ガス175には、燃料電池セルスタック10にて発電に供されなかった燃料ガス(改質ガス)及び酸化剤ガスが含まれており、この上側空間116Bに供給されたスタック排ガス175は、点火電極104とパイプ105等との間に形成されるスパークによって点火され燃焼される。
【0103】
そして、上側空間116Bにおいてスタック排ガス175が燃焼されると、上側空間116Bにて燃焼排ガス176が生成される。この上側空間116Bにて生成された燃焼排ガス176は、上側空間116Bから上方に排出され、テーパ部102に沿って改質部80の燃焼排ガス流路86に流入する。図2に示されるように、改質部80の燃焼排ガス流路86に流入した燃焼排ガス176は、改質部80の燃焼排ガス流路86、及び、気化部60の燃焼排ガス流路66を流れた後、ガス排出管166を通じて燃料電池モジュールM1の外部に排出される。
【0104】
また、図3に示されるように、このような高温運転時には、燃料電池セルスタック10の排熱で三重の収容壁121〜123が加熱され、この三重の収容壁121〜123が軟化される。この軟化された三重の収容壁121〜123は、燃料処理部50の重量を支えることができず、ビード131を起点にして圧縮変形される。そして、三重の収容壁121〜123がビード131を起点にして圧縮変形されることにより、燃料処理部50の全ての荷重が燃料電池セルスタック10に加わり、燃料電池セルスタック10に設けられた複数のセル11が密着される。
【0105】
次に、第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0106】
以上詳述したように、第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1によれば、燃料電池セルスタック10の上側には、気化部60及び改質部80を有する燃料処理部50が設けられており、この燃料処理部50の荷重は、燃料電池セルスタック10に加えられる。したがって、一定の重量である燃料処理部50の荷重が燃料電池セルスタック10に加わるので、燃料電池セルスタック10に設けられた複数のセル11の密着性を維持することができる。これにより、例えば、セル11の反りや、複数のセル11間におけるガスのリークを抑制することができると共に、複数のセル11の間の電気抵抗も低減することができる。
【0107】
しかも、複数のセル11を密着させるための荷重を得るために、締結部材等を用いた専用の締結構造ではなく、気化部60及び改質部80を有する燃料処理部50を利用しているので、コストアップを抑えることができる。
【0108】
また、燃料処理部50は、鉛直方向を軸方向とする多重管構造体30によって形成されている。したがって、燃料処理部50の構造を簡素化することができるので、コストダウンできる。
【0109】
しかも、燃料処理部50が金属製の多重管構造体30によって形成されることにより、燃料処理部50の重量の設定が容易になるので、多重管構造体30の設計時に燃料電池セルスタック10に加わる荷重を適切に設定することができる。
【0110】
また、多重管構造体30は、円筒状に形成されており、燃料電池セルスタック10の中心部Cは、多重管構造体30の中心軸上に位置する。したがって、多重管構造体30によって形成された燃料処理部50から燃料電池セルスタック10にバランス良く荷重を伝達することができる。これにより、複数のセル11をバランスよく密着させることができる。
【0111】
また、燃料処理部50の下側には、燃料電池セルスタック10を収容する収容部120が設けられており、この収容部120を構成する三重の収容壁121〜123には、収容壁121〜123の他の部位よりも収容部120の軸方向への変形が容易であるビード131が形成されている。したがって、高温運転時には、燃料電池セルスタック10の排熱で加熱されることにより軟化された三重の収容壁121〜123が燃料処理部50の重量を支えることができず、各収容壁121〜123がビード131を起点にして圧縮変形される。これにより、燃料処理部50の全ての荷重が燃料電池セルスタック10に加わるので、複数のセル11をより密着させることができる。
【0112】
また、収容壁121〜123を圧縮変形させるために、収容壁121〜123の軸方向の一部を湾曲させて形成したビード131を用いているので、このビード131を起点にして収容壁121〜123を容易に圧縮変形させることができる。
【0113】
しかも、三重の収容壁121〜123に形成されたビード131は、三重の収容壁121〜123の熱膨張差を吸収するベローズの機能も兼ねるので、三重の収容壁121〜123の熱膨張差による熱応力も緩和することができる。
【0114】
また、収容壁121〜123の軸方向の一部を湾曲させて形成したビード131を用いるので、収容壁121〜123の一部を薄肉とするベローズと比べて、製造が容易であり、コストダウンすることができる。
【0115】
また、ビード131は、収容壁121〜123の周方向に沿って環状に延びることで、収容壁121〜123の全周に亘って形成されている。したがって、高温運転時には、ビード131を起点にして収容壁121〜123が全周に亘って変形されるので、燃料処理部50の荷重を燃料電池セルスタック10に均等に加えることができる。
【0116】
また、三重の収容壁121〜123の間の隙間は、燃料ガスが流れる燃料ガス流路127、及び、酸化剤ガスが流れる予熱流路128として利用されているので、収容部120の構成を簡素化することができる。
【0117】
また、三重の収容壁121〜123のうち、一の収容壁に形成されたビード131と、他の収容壁に形成されたビード131とは、収容壁121〜123の軸方向の同じ位置に形成されると共に、収容壁121〜123の径方向における同じ側に凸を成している。したがって、燃料処理部50の荷重を受けて各ビード131が圧縮変形される場合でも、ビード131と収容壁とが干渉したり、ビード131同士が干渉したりすることを抑制することができる。これにより、三重の収容壁121〜123の間に形成された燃料ガス流路127や予熱流路128が閉塞されることを抑制することができると共に、収容壁121〜123の圧縮変形が阻害されることも抑制することができる。
【0118】
また、ビード131は、収容部120の内側(径方向内側)に凸を成しているので、ビード131が収容部120の外側へ出っ張ることを抑制することができる。これにより、ビード131と他の部材との干渉を抑制することができると共に、燃料電池モジュールM1を径方向に小型化することができる。
【0119】
また、燃料処理部50は、気化部60及び改質部80に加えて燃焼部100を有するので、この燃焼部100が追加された分、燃料処理部50の重量を増加させることができる。これにより、燃料電池セルスタック10に対してより大きな荷重を加えることができる。
【0120】
また、気化部60及び改質部80は、多重管構造体30によって形成されることにより同軸上に設けられているので、燃料処理部50を径方向に小型化することができる。また、気化部60及び改質部80は、多重の筒状壁を有する構成とされているので、気化部60及び改質部80の構造を簡素化できると共に、気化部60及び改質部80の組立が容易になる。これにより、コストダウンすることができる。
【0121】
さらに、燃焼部100の周壁部101も、多重管構造体30における改質部80と収容部120との間の部分によって形成されているので、燃焼部100の構造を簡素化でき、コストダウンすることができる。
【0122】
また、燃焼部100には、燃焼室116を、スタック排ガスが供給される下側空間116Aと、燃焼排ガスが生成される上側空間116Bとに区画する隔壁部103が設けられている。したがって、この隔壁部103により、スタック排ガスと燃焼排ガスが混合されることを抑制することができるので、スタック排ガスを安定して燃焼させることができる。
【0123】
また、この燃焼部100に設けられた隔壁部103は、周壁部101と結合されると共に、複数の旋回誘導板148及びクッション材13を介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられている。したがって、多重管構造体30によって形成された燃料処理部50の荷重を、隔壁部103、複数の旋回誘導板148、及び、クッション材13を介して燃料電池セルスタック10に加えることができるので、燃料処理部50の荷重を燃料電池セルスタック10へ効率良く伝達することができる。
【0124】
また、この燃焼部100に設けられた隔壁部103は、三重の接続壁111〜113のうち、内側の接続壁111とは結合されているが、残余の接続壁112,113とは結合されていない。したがって、三重の接続壁111〜113と接続された三重の収容壁121〜123に熱膨張差が生ずる場合でも、隔壁部103を介して三重の収容壁121〜123の間で応力が伝達されることを抑制することができる。
【0125】
また、オリフィス146の入口の周囲には、オリフィス146を中心に渦巻き放射状に配置された複数の旋回誘導板148が設けられている。したがって、複数の旋回誘導板148によりスタック排ガス175のショートパスを抑制してスタック排ガスをオリフィス146に誘導することができると共に、スタック排ガスに渦流を作り出すことができる。これにより、スタック排ガスに含まれる燃料極排ガス及び空気極排ガスの混合を促進することができるので、スタック排ガスの燃焼を安定させることができる。
【0126】
また、複数の旋回誘導板148と燃料電池セルスタック10との間には、燃料電池セルスタック10の上面10Aを覆うクッション材13が介在されている。したがって、このクッション材13により複数の旋回誘導板148からの荷重を分散させることができるので、燃料電池セルスタック10の上面10Aに局所的な荷重が加わることを抑制することができる。これにより、燃料電池セルスタック10の破損を抑制することができる。
【0127】
また、クッション材13は、絶縁材料で形成されている。したがって、燃料電池セルスタック10に対して金属製の多重管構造体30を絶縁することができるので、燃料電池セルスタック10の電圧が低下することを抑制することができる。
【0128】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
【0129】
上述の第一実施形態において、ビード131は、収容壁121〜123の周方向に沿って環状に形成されているが、図7に示されるように、ビード131は、収容壁121〜123の周方向に沿って螺旋状に延びていても良い。なお、ビード131の先端部は、収容壁121〜123と接するだけで結合されない。
【0130】
このように、ビード131が螺旋状に形成されていても、ビード131が収容壁121〜123の全周に亘って形成されるので、高温運転時には、ビード131を起点にして収容壁121〜123が全周に亘って変形される。これにより、燃料処理部50の荷重を燃料電池セルスタック10に均等に加えることができる。
【0131】
また、図7に示されるように、中央及び外側の収容壁122,123のビード131が螺旋状に形成されていると、内側及び中央の収容壁121,122の間に形成された燃料ガス流路127、及び、中央及び外側の収容壁122,123の間に形成された予熱流路128が螺旋状に形成される。
【0132】
したがって、この燃料ガス流路127及び予熱流路128を燃料ガス及び酸化剤ガスがそれぞれ螺旋状に流れるので、この燃料ガス流路127及び予熱流路128を形成する三重の収容壁121〜123の温度分布を均一化することができる。これにより、燃料電池セルスタック10が均一に保温されるので燃料電池セルスタック10の性能を向上させることができると共に、三重の収容壁121〜123の熱膨張差を減少させることができる。
【0133】
また、上述の第一実施形態において、内側の収容壁121〜123に形成されたビード131は、収容壁121〜123の内側(径方向内側)に凸を成しているが、図8に示されるように、内側の収容壁121に形成されたビード131は、収容壁121の外側(径方向外側)に凸を成していても良い。そして、この内側の収容壁121に形成されたビード131と、中央の収容壁122に形成されたビード131とで燃料ガス流路127が螺旋状に形成されても良い。
【0134】
また、上述の第一実施形態において、収容部120は、三重の収容壁121〜123によって構成されているが、図9に示されるように、収容部120は、二重の収容壁121,122によって構成されていても良い。この二重の収容壁121,122は、本発明における「多重の収容壁」に相当する。
【0135】
また、収容部120が二重の収容壁121,122によって構成される場合に、収容部120の内側には、改質流路87と燃料電池セルスタック10の燃料ガス導入口とを連通し、改質部80から燃料電池セルスタック10に燃料ガスを供給する燃料ガス供給管129が設けられていても良い。この燃料ガス供給管129は、L字状に折り曲げられている。
【0136】
また、燃料ガス供給管129が用いられる場合に、この燃料ガス供給管129には、コルゲート加工(周方向に延びる凹凸を付加する加工)が施されたコルゲート管が用いられても良い。
【0137】
このように、収容部120の内側に設けられた燃料ガス供給管129にコルゲート管が用いられていると、ビード131を起点にして二重の収容壁121,122が圧縮変形され、燃料ガス供給管129が曲げ変形される場合でも、燃料ガス供給管129の潰れを抑制することができる。これにより、改質部80から燃料電池セルスタック10への燃料ガスの供給を確保することができる
【0138】
また、燃料ガス供給管129にコルゲート管が用いられることにより、燃料ガス供給管129が柔軟になるので、燃料ガス供給管129と燃料電池セルスタック10との接続部に応力が集中することを抑制することができ、接続部の耐久性を確保することができる。
【0139】
また、上述の第一実施形態において、三重の収容壁121〜123には、それぞれ上下一対のビード131が形成されているが、三重の収容壁121〜123の各々に形成されるビード131の数は、いくつでも良い。
【0140】
また、上述の第一実施形態において、隔壁部103は、複数の旋回誘導板148及びクッション材13を介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられているが、複数の旋回誘導板148及びクッション材13以外のスペーサを介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられていても良い。
【0141】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0142】
図10に示される第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2は、上述の第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1(図1図3参照)に対し、次のように構造が変更されている。
【0143】
すなわち、図11に示されるように、第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2において、収容部120を構成する多重の収容壁121,122は、二重の側壁部201,202と、三重の上壁部211〜213とを有している。二重の側壁部201,202は、燃料処理部50よりも大径とされており、収容壁121,122の軸方向に延びている。三重の上壁部211〜213は、二重の側壁部201,202の上端部から側壁部201,202の径方向内側に延びており、燃料処理部50の下端部と接続されている。
【0144】
下側の上壁部211と中央の上壁部212との間には、燃料ガス流路127が形成されている。この燃料ガス流路127は、改質流路87と連通されている。収容部120の内側には、燃料ガス供給管224が設けられており、燃料ガス流路127は、燃料ガス供給管224を通じて燃料電池セルスタック10の燃料ガス導入口と連通されている。
【0145】
中央の上壁部212と上側の上壁部213との間、及び、内側の側壁部201と外側の側壁部202との間には、酸化剤ガスが流れる予熱流路128が形成されている。外側の側壁部202には、改質部80に設けられた第一の酸化剤ガス供給管164(図10参照)とは別に、第二の酸化剤ガス供給管184が接続されている。多重管構造体30の底部は、二重の底壁部221,222によって構成されており、予熱流路128は、二重の底壁部221,222の間に形成された酸化剤ガス供給流路223を通じて燃料電池セルスタック10の酸化剤ガス導入口と連通されている。
【0146】
各ビード131は、上壁部211〜213の径方向の一部が湾曲されることにより、上壁部211〜213に形成されている。各ビード131は、第一ビード131A及び第二ビード131Bをそれぞれ有する断面波形状に形成されている。各第一ビード131A及び第二ビード131Bは、三重の上壁部211〜213の周方向に沿って環状に延びている。三つの第一ビード131Aは、上壁部211〜213の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部211〜213の厚さ方向の同じ側(下側)に凸を成している。
【0147】
一方、各第二ビード131Bは、上側に凸を成している。上側の上壁部213において、第二ビード131Bは、第一ビード131Aよりも上壁部213の径方向外側に形成されており、下側及び中央の上壁部211,212において、第二ビード131Bは、第一ビード131Aよりも上壁部211,212の径方向内側に形成されている。
【0148】
下側及び中央の上壁部211,212に形成された二つの第二ビード131Bは、上壁部211,212の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部211,212の厚さ方向の同じ側(上側)に凸を成している。三重の上壁部211〜213に形成された三つの第一ビード131A同士、及び、下側及び中央の上壁部211,212に形成された二つのビード131同士は、本発明における「上壁部の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部の厚さ方向の同じ側に凸を成すビード」にそれぞれ相当する。
【0149】
また、第二実施形態において、各ビード131は、突条部によって構成された第一ビード131A及び第二ビード131Bを有することにより波形に形成されており、上壁部211〜213の他の部位よりも収容部120の軸方向への曲げ変形が容易とされている。各ビード131は、収容壁121〜123の周方向に沿って環状に延びることで、収容壁121〜123の全周に亘って形成されている。
【0150】
燃焼部100は、混合燃焼器230を有する。混合燃焼器230は、フランジ部231と、円筒部232と、脚部233とを有する。フランジ部231は、円筒部232の上端部に形成されている。このフランジ部231は、三重の接続壁111〜113のうち内側の接続壁111と結合されているが、残余の接続壁112,113とは結合されていない。脚部233は、円筒部232の下端部に形成されている。このフランジ部231及び脚部233を有する混合燃焼器230の全体は、クッション材13を介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられている。
【0151】
燃料電池セルスタック10には、燃料極排ガスを排出するガス排出部14と、空気極排ガスを排出するガス排出部(不図示)とが設けられている。燃料極排ガスを排出するガス排出部14の出口は、円筒部232の内側に位置し、空気極排ガスを排出するガス排出部(不図示)の出口は、円筒部232の外側に位置する。
【0152】
混合燃焼器230の円筒部232には、多数の噴出孔234が形成されており、燃料電池セルスタック10から排出された空気極排ガスは、多数の噴出孔234を通じて円筒部232の内側に噴出される。そして、円筒部232の内側では、多数の噴出孔234から噴出された空気極排ガスと、ガス排出部14から排出された燃料極排ガスとが混合され、スタック排ガスが生成される。このスタック排ガスは、点火電極104とパイプ105等との間に形成されるスパークによって点火され、円筒部232の内側で燃焼される。
【0153】
この第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2は、上記以外の構造については、第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1(図1図3参照)と同様であり、第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1と同様に動作する。
【0154】
なお、第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2において、混合燃焼器230の代わりに、上述の第一実施形態に係る隔壁部103、ガス整流部材140、及び、複数の旋回誘導板148(図3参照)が適用されても良い。
【0155】
次に、第二実施形態の作用及び効果について説明する。
【0156】
以上詳述したように、第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2によっても、第一実施形態と同様に、燃料電池セルスタック10の上側には、気化部60及び改質部80を有する燃料処理部50が設けられており、この燃料処理部50の荷重は、燃料電池セルスタック10に加えられる。したがって、一定の重量である燃料処理部50の荷重が燃料電池セルスタック10に加わるので、燃料電池セルスタック10に設けられた複数のセル11の密着性を維持することができる。
【0157】
しかも、複数のセル11を密着させるための荷重を得るために、締結部材等を用いた専用の締結構造ではなく、気化部60及び改質部80を有する燃料処理部50を利用しているので、コストアップを抑えることができる。
【0158】
また、収容部120を構成する多重の収容壁121,122の上壁部211〜213には、上壁部211〜213の他の部位よりも収容部120の軸方向への曲げ変形が容易であるビード131が形成されている。したがって、高温運転時には、燃料電池セルスタック10の排熱で加熱されることにより軟化された三重の上壁部211〜213が燃料処理部50の重量を支えることができず、各上壁部211〜213がビード131を起点にして曲げ変形される。これにより、燃料処理部50の全ての荷重が燃料電池セルスタック10に加わるので、複数のセル11をより密着させることができる。
【0159】
また、上壁部211〜213を曲げ変形させるために、上壁部211〜213の径方向の一部を湾曲させて形成したビード131を用いているので、このビード131を起点にして上壁部211〜213を容易に曲げ変形させることができる。
【0160】
しかも、三重の上壁部211〜213に形成されたビード131は、二重の側壁部201,202の熱膨張差を吸収するベローズの機能も兼ねるので、二重の側壁部201,202の熱膨張差による熱応力も緩和することができる。
【0161】
また、多重の収容壁121,122の間の隙間は、燃料ガスが流れる燃料ガス流路127、及び、酸化剤ガスが流れる予熱流路128として利用されているので、収容部120の構成を簡素化することができる。
【0162】
また、三重の上壁部211〜213に形成された三つの第一ビード131Aは、上壁部211〜213の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部211〜213の厚さ方向の同じ側(下側)に凸を成している。したがって、燃料処理部50の荷重を受けて各第一ビード131Aが曲げ変形される場合でも、第一ビード131Aと上壁部とが干渉したり、第一ビード131A同士が干渉したりすることを抑制することができる。
【0163】
同様に、下側及び中央の上壁部211,212に形成された二つの第二ビード131Bも、上壁部211,212の径方向の同じ位置に形成されると共に、上壁部211,212の厚さ方向の同じ側(上側)に凸を成している。したがって、燃料処理部50の荷重を受けて各第二ビード131Bが曲げ変形される場合でも、第二ビード131Bと上壁部とが干渉したり、第二ビード131B同士が干渉したりすることを抑制することができる。以上より、多重の収容壁121,122の上壁部211〜213の間に形成された燃料ガス流路127や予熱流路128が閉塞されることを抑制することができると共に、上壁部211〜213の変形が阻害されることも抑制することができる。
【0164】
また、燃焼部100の周壁部101の内側には、混合燃焼器230が設けられている。したがって、この混合燃焼器230により、燃料電池セルスタック10から排出された燃料極排ガス及び空気極排ガスの混合を促進することができるので、この燃料極排ガス及び空気極排ガスが混合されて生成されたスタック排ガスの燃焼を安定させることができる。
【0165】
また、この混合燃焼器230は、燃焼部100の周壁部101と結合されると共に、クッション材13を介して燃料電池セルスタック10の上に積み重ねられている。したがって、多重管構造体30によって形成された燃料処理部50の荷重を、混合燃焼器230及びクッション材13を介して燃料電池セルスタック10に加えることができるので、燃料処理部50の荷重を燃料電池セルスタック10へ効率良く伝達することができる。
【0166】
また、混合燃焼器230は、三重の接続壁111〜113のうち、内側の接続壁111とは結合されているが、残余の接続壁112,113とは結合されていない。したがって、三重の接続壁111〜113と接続された多重の収容壁121,122(二重の側壁部201,202)に熱膨張差が生ずる場合でも、混合燃焼器230を介して多重の収容壁121,122の間で応力が伝達されることを抑制することができる。
【0167】
なお、第二実施形態に係る燃料電池モジュールM2において、上述の第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1と同様の構造については、上述の第一実施形態に係る燃料電池モジュールM1と同様の作用及び効果を奏する。
【0168】
次に、上記各実施形態に共通の変形例について説明する。
【0169】
上記各実施形態において、気化部60及び改質部80を構成する複数の筒状壁61〜63,81〜84と、燃焼部100の周壁部101を構成する複数の接続壁111〜113と、収容部120を構成する複数の収容壁121〜123とは、いずれも横断面が真円形状である円筒状に形成されているが、いずれも横断面が楕円形状である楕円筒状に形成されていても良い。
【0170】
また、気化部60及び改質部80を構成する複数の筒状壁61〜63,81〜84と、燃焼部100の周壁部101を構成する複数の接続壁111〜113と、収容部120を構成する複数の収容壁121〜123とは、円筒状に形成されたものと、楕円筒状に形成されたものの両方を含んでいても良い。
【0171】
また、上記各実施形態において、気化部60は、内側の筒状壁61と中央の筒状壁62との間に燃焼排ガス流路66を有すると共に、中央の筒状壁62と外側の筒状壁63との間に気化流路67を有するが、内側の筒状壁61と中央の筒状壁62との間に気化流路を有すると共に、中央の筒状壁62と外側の筒状壁63との間に燃焼排ガス流路を有していても良い。
【0172】
また、上記各実施形態において、気化部60は、三重の筒状壁61〜63を有するが、外側の第六の管材36が多重管構造体30の上部にまで延長されることで、四重の筒状壁を有していても良い。また、この場合に、気化部60を構成する四重の筒状壁の内側から外側に順に、断熱空間、燃焼排ガス流路、気化流路、及び、酸化剤ガス流路が形成されても良い。
【0173】
また、上記各実施形態において、燃料処理部50は、気化部60、改質部80、及び、燃焼部100を有するが、気化部60の上方又は気化部60の径方向外側に、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路と、燃焼排ガスが流れる燃焼排ガス流路とを有する熱交換部を有していても良い。
【0174】
また、上記各実施形態において、燃料電池セルスタック10には、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が適用されているが、鉛直方向に積層された複数の積層部材を有するものであれば、その他の形式の燃料電池が適用されても良い。
【0175】
また、上記各実施形態において、複数のセル11は、鉛直方向に積層されているが、図12に示されるように、複数のセル11は、水平方向(X方向)に積層されても良い。
【0176】
また、複数のセル11が水平方向に積層される場合に、複数のセル11によって構成されたセルスタック本体15には、鉛直方向の上側及び下側から一対のマニホールド16が積層されても良い。そして、燃料処理部50(図3参照)の荷重がセルスタック本体15及び一対のマニホールド16の積層方向に作用しても良い。一対のマニホールド16は、複数のセル11に燃料ガス及び酸化剤ガスを分配する機能を有する。図12に示される変形例において、セルスタック本体15と、一対のマニホールド16とは、本発明における「複数の積層部材」に相当する。
【0177】
このように、燃料処理部の荷重がセルスタック本体15及び一対のマニホールド16に作用されると、セルスタック本体15及び一対のマニホールド16の密着性を維持することができる。これにより、セルスタック本体15とマニホールド16との間のガスのリークを抑制することができる。
【0178】
特に、セル11とマニホールド16とは、材料が異なるため熱膨張差が生じやすいが、燃料処理部の荷重がセルスタック本体15及び一対のマニホールド16に作用することで、セルスタック本体15とマニホールド16との間のシール性を確保することができる。
【0179】
また、上記各実施形態において、燃料電池セルスタック10は、本発明における「複数の部材」の一例として、複数のセル11やマニホールド16を有しているが、複数のセル11やマニホールド16以外に、例えば、集電板、エンドプレート、均熱板などの鉛直方向に積層された複数の積層部材を有していても良い。
【0180】
このような複数の積層部材であっても、一定の重量である燃料処理部50の荷重が燃料電池セルスタック10に加わることにより、複数の積層部材のシール性を向上させたり、複数の積層部材間の電気抵抗を低減させたりすることができる。
【0181】
また、上記各実施形態において、燃料処理部50の荷重が複数のセル11以外の積層部材を密着させるために利用される場合には、複数のセル11が、例えば、円筒形や円筒平板形など平板形以外の形状とされても良い。
【0182】
また、上記各実施形態において、収容部120を構成する多重の収容壁には、本発明における「易変形部」の一例として、ビード131が形成されているが、収容壁の他の部位よりも収容部120の軸方向への変形が容易であれば、例えば薄肉部などビード以外の易変形部が形成されても良い。
【0183】
また、ビード131の断面形状は、好ましくは、湾曲状とされるが、屈曲状とされていても良い。
【0184】
また、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜、組み合わされて実施されても良い。
【0185】
以上、本発明の第一及び第二実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0186】
M1,M2…燃料電池モジュール、C…中心部、10…燃料電池セルスタック、11…セル(積層部材の一例)、13…クッション材(スペーサの一例)、15…セルスタック本体、16…マニホールド、20…ベース部材、30…多重管構造体、31〜36…管材、50…燃料処理部、60…気化部、61〜63…筒状壁、66…燃焼排ガス流路、67…気化流路、80…改質部、81〜84…筒状壁、86…燃焼排ガス流路、87…改質流路、88…酸化剤ガス流路、90…改質触媒層、100…燃焼部、101…周壁部、102…テーパ部、103…隔壁部、104…点火電極、111〜113…接続壁、116…燃焼室、116A…下側空間、116B…上側空間、120…収容部、121〜123…収容壁、126…収容室、127…燃料ガス流路(ガス流路の一例)、128…予熱流路(ガス流路の一例)、129…燃料ガス供給管、131…ビード(易変形部の一例)、131A…第一ビード、131B…第二ビード、140…ガス整流部材、142…オリフィス部材、143…パンチングメタル、146…オリフィス、147…噴出孔、148…旋回誘導板(スペーサの一例)、150…断熱材、161…原燃料ガス供給管、164…酸化剤ガス供給管、166…ガス排出管、171…原燃料、172…原燃料ガス、173…燃料ガス、174…酸化剤ガス、175…スタック排ガス、176…燃焼排ガス、184…酸化剤ガス供給管、201,202…側壁部、211〜213…上壁部、230…混合燃焼器
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図12