(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体と、前記支持体の片面又は両面に設けられた樹脂層とを備えた光学フィルターであって、前記樹脂層は、請求項1〜6のいずれか1項に記載された樹脂組成物から形成されることを特徴とする光学フィルター。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の樹脂組成物は、特定のオキソカーボン系化合物と樹脂成分とを含むことを特徴とする。この樹脂組成物は、オキソカーボン系化合物の光吸収特性が優れている為、400〜450nmの平均透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、選択透過性が優れる。本発明の樹脂組成物から、樹脂フィルムやフィルターなどに設けられる樹脂層などを形成することができる。以下では、樹脂層は、樹脂フィルムを包含することがある。
【0034】
1.オキソカーボン系化合物
本発明で用いられるオキソカーボン系化合物は、化学構造中にオキソカーボン骨格を有する化合物であり、具体的にはスクアリリウム骨格を有する下記式(1)又はクロコニウム骨格を有する下記式(2)で表される。ここで、式(1)及び式(2)中のR
a1〜R
a4はそれぞれ独立して、下記式(3)で示される特定の構造単位である。
【0037】
式(3)中、*は式(1)で示されるスクアリリウム骨格又は式(2)で示されるクロコニウム骨格との結合部位を表しており、本発明で用いられるオキソカーボン系化合物では、スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格に結合する炭素原子(上記式(3)中、矢印で示す炭素原子)が炭化水素環(環A)を形成している点に特徴を有する。かかる構造上の特徴によって、本発明で用いられるオキソカーボン系化合物(スクアリリウム化合物又はクロコニウム化合物)は、400〜450nmにおける光の平均透過率が優れたものとなる。また、かかる構造上の特徴によって、本発明で用いられるオキソカーボン系化合物(スクアリリウム化合物又はクロコニウム化合物)は、可視・近赤外領域の吸収スペクトルにおいて吸収極大波長より低波長側のショルダーピークを無くす(もしくは大幅に低減する)ことが可能であるため、吸収極大波長領域の光を色純度良く効率的に吸収可能となる。
【0038】
式(3)中、環Aは、構成員数が4〜9員である不飽和炭化水素環である。環Aは、スクアリリウム骨格又はクロコニウム骨格に結合する炭素原子(上記式(3)中、矢印で示す炭素原子)とピロール環を構成する炭素原子との間に少なくとも1個の二重結合を有する不飽和炭化水素環であればよく、当該二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有するものであってよいが、好ましくは環Aが有する二重結合は1個である。環Aは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。
【0039】
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
【0040】
式(3)中、nは、0〜6の整数であり、かつm以下(ただし、mは環Aの構成員数から3を引いた値である)である。nは、好ましくは0〜5の整数であり、より好ましくは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜2の整数である。nが1以上である場合、環Aを構成する炭素原子に結合する水素原子はYで置換されることになる。
【0041】
式(3)中、X及びYは有機基又は極性官能基である。
X及びYの例である有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、アミド基(−NHCOR)、スルホンアミド基(−NHSO
2R)、カルボキシ基(カルボン酸基)、ベンゾチアゾール基、ハロゲノアルキル基、シアノ基等が挙げられる。また極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
【0042】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の脂環式アルキル基;等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6であり、特に脂環式アルキル基の場合には3以上が好ましい。前記アルキル基は置換基を有していてもよく、アルキル基が有する置換基としては、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。
【0043】
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。前記アルコキシ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
【0044】
前記アルキルチオ基(アルキルチオオキシ基)としては、例えば、メチルチオオキシ基(メチルチオ基)、エチルチオオキシ基(エチルチオ基)、プロピルチオオキシ基(プロピルチオ基)、ブチルチオオキシ基(ブチルチオ基)、ペンチルチオオキシ基(ペンチルチオ基)、ヘキシルチオオキシ基(ヘキシルチオ基)、ヘプチルチオオキシ基(ヘプチルチオ基)、オクチルチオオキシ基(オクチルチオ基)、ノニルチオオキシ基(ノニルチオ基)、デシルチオオキシ基(デシルチオ基)、ウンデシルチオオキシ基(ウンデシルチオ基)、ドデシルチオオキシ基(ドデシルチオ基)、トリデシルチオオキシ基(トリデシルチオ基)、テトラデシルチオオキシ基(テトラデシルチオ基)、ペンタデシルチオオキシ基(ペンタデシルチオ基)、ヘキサデシルチオオキシ基(ヘキサデシルチオ基)、ヘプタデシルチオオキシ基(ヘプタデシルチオ基)、オクタデシルチオオキシ基(オクタデシルチオ基)、ノナデシルチオオキシ基(ノナデシルチオ基)、イコシルチオオキシ基(イコシルチオ基)等が挙げられる。アルキルチオ基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。前記アルキルチオ基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
【0045】
前記アルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基等の無置換アルキルオキシカルボニル基のほか、トリフルオロメチルオキシカルボニル基等の置換アルキルオキシカルボニル基が挙げられる。ここで置換基としては、ハロゲノ基等が挙げられる。アルキルオキシカルボニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、より好ましくは2〜10であり、特に好ましくは2〜5である。前記アルキルオキシカルボニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
【0046】
前記アルキルスルホニル基としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、メトキシメチルスルホニル基、シアノメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基の置換又は無置換のアルキルスルホニル基等が挙げられる。アルキルスルホニル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。前記アルキルスルホニル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。
【0047】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ペンタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、より好ましくは6〜15である。前記アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
【0048】
前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。前記アラルキル基は置換基を有していてもよく、アラルキル基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0049】
前記アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、ピレニルオキシ基、インデニルオキシ基、アズレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、クオーターフェニルオキシ基、ペンタレニルオキシ基、ヘプタレニルオキシ基、ビフェニレニルオキシ基、インダセニルオキシ基、アセナフチレニルオキシ基、フェナレニルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0050】
前記アリールチオオキシ基(アリールチオ基)としては、例えば、フェニルチオオキシ基、ビフェニルチオオキシ基、ナフチルチオオキシ基、アントリルチオオキシ基、フェナントリルチオオキシ基、ピレニルチオオキシ基、インデニルチオオキシ基、アズレニルチオオキシ基、フルオレニルチオオキシ基、ターフェニルチオオキシ基、クオーターフェニルチオオキシ基、ペンタレニルチオオキシ基、ヘプタレニルチオオキシ基、ビフェニレニルチオオキシ基、インダセニルチオオキシ基、アセナフチレニルチオオキシ基、フェナレニルチオオキシ基等が挙げられる。アリールチオオキシ基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0051】
前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基等の置換又は無置換のフェニルオキシカルボニル基;1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基等の置換又は無置換のナフチルオキシカルボニル基;等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0052】
前記アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基、2−クロロフェニルスルホニル基、2−メチルフェニルスルホニル基、2−メトキシフェニルスルホニル基、2−ブトキシフェニルスルホニル基、2−フルオロフェニルスルホニル基、3−メチルフェニルスルホニル基、3−クロロフェニルスルホニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルホニル基、3−シアノフェニルスルホニル基、3−ニトロフェニルスルホニル基、3−フルオロフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、4−フルオロフェニルスルホニル基、4−シアノフェニルスルホニル基、4−メトキシフェニルスルホニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルホニル基等の置換又は無置換のフェニルスルホニル基;1−ナフチルスルホニル基、2−ナフチルスルホニル基等の置換又は無置換のナフチルスルホニル基;等が挙げられる。アリールスルホニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0053】
前記アリールスルフィニル基としては、例えば、フェニルスルフィニル基、2−クロロフェニルスルフィニル基、2−メチルフェニルスルフィニル基、2−メトキシフェニルスルフィニル基、2−ブトキシフェニルスルフィニル基、2−フルオロフェニルスルフィニル基、3−メチルフェニルスルフィニル基、3−クロロフェニルスルフィニル基、3−トリフルオロメチルフェニルスルフィニル基、3−シアノフェニルスルフィニル基、3−ニトロフェニルスルフィニル基、4−メチルフェニルスルフィニル基、4−フルオロフェニルスルフィニル基、4−シアノフェニルスルフィニル基、4−メトキシフェニルスルフィニル基、4−ジメチルアミノフェニルスルフィニル基等の置換又は無置換のフェニルスルフィニル基;1−ナフチルスルフィニル基、2−ナフチルスルフィニル基等の置換又は無置換のナフチルスルフィニル基;等が挙げられる。アリールスルフィニル基の炭素数は、6〜25が好ましく、より好ましくは6〜15である。
【0054】
前記アミド基(−NHCOR)としては、Rが炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルアリール基、ハロゲン化炭化水素基であるもの等が挙げられる。
【0055】
前記スルホンアミド基(−NHSO
2R)としては、Rが炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルアリール基、ハロゲン化炭化水素基であるもの等が挙げられる。
【0056】
前記ハロゲノアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、3−フルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、6−フルオロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基等のモノハロゲノアルキル基;ジクロロメチル基等のジハロゲノアルキル基;1,1−ジヒドロ−パーフルオロエチル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−プロピル基、1,1−ジヒドロ−パーフルオロ−n−ブチル基、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基等のトリハロメチル単位を有するアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基、パーフルオロ−n−ヘキシル基等のパーハロゲノアルキル基;等が挙げられる。ハロゲノアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、より好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。ハロゲノアルキル基のハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0057】
前記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
【0058】
Xの例である有機基又は極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基又はアリール基である。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。具体的には、Xの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
【0059】
Yの例である有機基又は極性官能基としては、上記の中でも、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、より好ましくはアルキル基又は水酸基である。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。具体的には、Yの例である有機基又は極性官能基としては、メチル基、エチル基、水酸基等が好ましく挙げられる。
前記nが2以上であり、Yが複数存在する場合には、各Yは同じであってもよいし異なっていてもよい。また前記nが2以上である場合、複数のYは各々別の炭素原子に結合していてもよいし、2個のYが1個の炭素原子に結合していてもよい。
【0060】
式(3)中、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はこれら環構造を含む縮合環である。環Bとしては、例えば、下記式(A−1)〜(A−14)の構造を有する環、及びこれら環の水素原子の1つ以上が任意の置換基で置換された環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環(A−1)、ナフタレン環(A−2、A−3)、キノリン環(A−8、A−13、A−14)又はこれらに上記置換基が置換した環が好ましい。ここで置換基としては、X及びYの例である有機基又は極性官能基として上述した基が挙げられるが、それらの中でも特に、アルキル基(特に好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(特に好ましくは炭素数1〜2)、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、芳香族複素環基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基などの電子供与性基、ハロゲノ基(特に好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基(カルボン酸基)、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホ基(スルホン酸基)、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましく、特にハロゲノ基が好ましい。環Bの置換基の数は1つでもよいし2つ以上(例えば、2又は3)でもよい。また置換基を有さなくてもよい。置換基を有する場合、その数は、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、特に好ましくは1である。
【0062】
なお、上記式(A−1)〜(A−14)は、環Bをピロール環の一部を含んで表したものであり、例えば式(A−1)は、下図中aの矢印で示されるピロール環のβ位の炭素原子と、下図中bの矢印で示されるピロール環のα位の炭素原子とを含んで表記されている。
【0064】
なお、スクアリリウム骨格を有する化合物(1)中の特定の構造単位であるR
a1とR
a2は、同一構造であっても異なっていてもよい。製造が容易なことから、R
a1とR
a2は、同一構造であることが好ましい。同様にクロコニウム骨格を有する化合物(2)中の特定の構造単位であるR
a3とR
a4は同一構造であっても異なっていてもよく、同一構造であることがより好ましい態様である。
【0065】
特に好ましいオキソカーボン系化合物は、式(1)のスクアリリウム骨格を有すると共に、前記式(3)の構造単位において、環Aがシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、又はシクロオクテン(最も好ましくはシクロヘキセン)であり、Xが炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基であり、環Bがベンゼン環(A−1)、ナフタレン環(A−2、A−3)、キノリン環(A−8、A−13、A−14)である化合物である。この特に好ましいオキソカーボン系化合物において、環Bが置換基を有する場合、置換基としては、アリール基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルチオ基、ニトロ基、炭素数1〜4のハロゲノアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)、カルボキシ基、ハロゲノ基、シアノ基、ベンゾチアゾール基が好ましい。この置換基がハロゲノ基である場合、1〜3個のハロゲノ基が環Bに置換しているのが好ましい。置換基のうち少なくとも一つは、環Bであるベンゼン環において、ピロール環のNH基が結合する部位に対して、パラ位となる炭素原子に結合していることが好ましい。特にこのパラ位にニトロ基、炭素数1〜4のハロゲノアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)、カルボキシ基、ハロゲノ基、シアノ基等の電子吸引性基が結合していると、吸収極大領域の光をより選択的に吸収可能となる。
また、可視光領域に高い透過性を有する樹脂組成物を得たい場合には、環Bにおける上記置換基は電子供与性基以外であることが好ましく、より好ましくは、アルキル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、ハロゲノ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種である。これらの置換基はさらに別の置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
一方、樹脂組成物の最大吸収波長を大きくしたい場合には、環Bにおける上記置換基は電子供与性基であることが好ましく、より好ましくは、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフトキシ基、芳香族複素環基、アミノ基、水酸基、チオール基から選ばれる少なくとも1種である。これらの置換基はさらに別の置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
【0066】
以上のような式(3)で示される特定の構造単位が、式(1)で示されるスクアリリウム骨格又は式(2)で示されるクロコニウム骨格に結合してなる本発明で用いられるオキソカーボン系化合物は、互変異体が存在する。詳しくは、式(1)で示されるスクアリリウム骨格に結合した場合には、下記(1)で示される化合物のほか、(1a)又は(1b)で示される互変異体が存在する。一方、式(2)で示されるクロコニウム骨格に結合した場合には、下記(2)で示される化合物のほか、(2a)、(2b)又は(2c)で示される互変異体が存在する。本発明で用いられるオキソカーボン系化合物は、(1)又は(2)で示される化合物のみならず、それぞれに対応する互変異体をも包含するものとする。
【0069】
2.オキソカーボン系化合物の製造方法
本発明で用いられるオキソカーボン系化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記式(4):
【0071】
(式(4)中、環A、環B、X、Y及びnは式(3)に同じ)で表されるピロール環含有化合物を中間原料とし、これをスクアリン酸又はクロコン酸と反応させることにより製造することができる。
【0072】
中間原料として用いるピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
SAJJADIFAR ET AL: 'New 3H-Indole Synthesis by Fischer’s Method. Part I.' Molecules 2010, no. 15, April 2010, pages 2491-2498
【0073】
また、スクアリリウム系化合物は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、以下の論文に記載の合成法によってピロール環含有化合物を合成することができる。
SergueiMiltsov ET AL; 'New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines ', Tetrahedron Letters, Volume 40, Issue 21, May 1999, pages 4067-4068
【0074】
得られたスクアリリウム系化合物は、必要に応じて、濾過、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶、晶析など公知の精製手段によって適宜精製することができる。
【0075】
上記クロコニウム系化合物の合成方法は、特に限定されないが、ピロール環含有化合物とクロコン酸とを反応させる公知の合成手法を適宜採用することによって合成できる。例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法で合成することができる。
【0076】
3.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、本発明で用いられる上記オキソカーボン系化合物と、樹脂成分とを含む。さらに本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、溶媒、各種添加剤等を含有させることができる。
【0077】
3.1.オキソカーボン系化合物
本発明の樹脂組成物に含まれる上記オキソカーボン系化合物は、スクアリリウム系化合物であってもよいし、クロコニウム系化合物であってもよいし、両者の混合物であってもよい。またオキソカーボン系化合物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0078】
上記オキソカーボン系化合物は色素として機能するものであるが、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記オキソカーボン系化合物とともに公知の他の色素を含有させることができる。本発明の樹脂組成物に含まれていてもよい色素としては、例えば、上記オキソカーボン系化合物以外のスクアリリウム系色素やクロコニウム系色素、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン類、クロリン類、フタロシアニン類、コリン類等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。これら他の色素は、本発明の効果を損なわないよう、400〜1100nmの波長域に吸収極大波長を有していることが望ましい。これら他の色素は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0079】
本発明の樹脂組成物が他の色素をも含有する場合、他の色素の含有量は、上記オキソカーボン系化合物と他の色素の合計100質量%に対し、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは、他の色素を実質的に含まないことである。
【0080】
樹脂組成物中に占める上記オキソカーボン系化合物の含有量は、上記他の色素との合計量(全色素量)が所定の範囲になるようにすることが好ましい。具体的には、本発明で用いられるオキソカーボン系化合物と他の色素との合計量が、樹脂組成物の固形分100質量%中、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また本発明で用いられるオキソカーボン系化合物と他の色素との合計量の上限は、均一な成膜を容易にする上で、樹脂組成物の固形分100質量%中、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0081】
本発明の樹脂組成物は、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥時・熱硬化時に酸素が存在すると、オキソカーボン系化合物の構造変化、分解物の発生による吸光特性の変化、可視光透過率の低下などの理由により、樹脂組成物の耐久性が低下するおそれがある。そのため、樹脂溶液の保管時や塗布膜の乾燥工程・熱硬化工程時には酸素濃度が低い方が好ましい。酸素濃度は、10体積%以下が好ましく、より好ましくは1体積%以下であり、さらに好ましくは0.1体積%以下であり、最も好ましくは0.05体積%以下である。
【0082】
3.2.樹脂成分
本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、上記オキソカーボン系化合物を十分に溶解又は分散できるものであれば、特に制限されず、公知の樹脂を用いることができる。また樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体や該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体などを含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれることとなるものを用いることもできる。ただし、上記オキソカーボン系化合物の構造または他の色素を用いる場合には他の色素の構造によっては、重合反応で得られた反応液中に存在する、未反応物、反応性末端官能基、イオン性基、触媒、酸・塩基性基等により、その構造の一部又は全部が分解してしまうこともあり得るので、そのような場合には、重合が完結し、単離(必要に応じて精製)された樹脂を用いることが望ましい。
【0083】
樹脂成分として用いることのできる樹脂としては、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、ポリシクロオレフィン樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂;フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN))等のフッ素系樹脂;等が挙げられる。これら樹脂成分は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0084】
樹脂成分として用いることのできる樹脂としては、上記の中でも、溶剤可溶性樹脂が好ましい。樹脂成分が溶剤可溶性樹脂であれば、得られた樹脂組成物を塗料化でき、例えばスピンコート法や溶媒キャスト法等により成膜することで、面状成形体(フィルム等を含む)を容易に作製することが可能になる。なお、本明細書において溶剤可溶性樹脂とは、有機溶剤に可溶な樹脂を意味し、例えば用いる有機溶媒100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂が好ましい。
【0085】
溶剤可溶性樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いてもよく、硬化性樹脂を用いてもよい。樹脂の貯蔵安定性、乾燥工程での透過率変化の抑制の観点からは、熱可塑性樹脂が好ましく、塗膜の耐熱性、硬度、耐溶剤性の観点からは、硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂と硬化性樹脂の長所を活かすため、混合して使用する形態も好ましい。また、後述の反射防止層、紫外線反射層、近赤外線反射層などを備えた光学フィルターとする場合、樹脂層を高温で製造することが好ましい。そうすることによって、樹脂層に、反射防止層、紫外線反射層、近赤外線反射層などを蒸着やスパッタリング等の方法により積層した場合に、より緻密で高強度、高耐久性、優れた光学特性を有する光学フィルターとすることができる。樹脂層を高温で製造するためには、本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂の耐熱性が高い、すなわち、本発明の樹脂組成物に用いられる樹脂のTgが高いことが好ましい。具体的には、上記樹脂のTgは、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは170℃以上、最も好ましくは250℃以上である。
【0086】
溶剤可溶性樹脂として用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などが挙げられ、溶剤可溶性樹脂として用いられる硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられる。溶剤可溶性樹脂は、ポリ(アミド)イミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、ポリ(アミド)イミド樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、(メタ)アクリル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれる少なくとも1種である。以下、これらの樹脂について詳述する。
【0087】
(I)熱可塑性樹脂
3.2.1.ポリ(アミド)イミド樹脂
まず、本明細書で言うポリ(アミド)イミド樹脂は、狭義のポリイミド樹脂(イミド結合を含み、アミド結合を含まない樹脂を意味し、ここでいうアミド結合とは、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合を意味する)、及び、ポリアミドイミド樹脂(アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含む樹脂を意味する)の両方を包含する。
【0088】
ポリイミド樹脂におけるイミド結合は、通常、アミド結合とそれに隣接するカルボキシル基とを有する結合鎖(本発明では、該結合鎖をアミック酸ともいう。通常は、アミド結合が結合した炭素原子に隣接する炭素原子にカルボキシル基が結合した構造である)におけるアミド結合とカルボキシル基との脱水反応により形成される。ポリアミック酸から脱水反応によりポリイミド樹脂を生成させる際、分子内に若干量のアミック酸は残存し得る。したがって、本発明で「ポリイミド樹脂」という場合は、イミド結合を含み、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合は含まないが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合は含まないか若干量含んでいてもよい。ポリイミド樹脂におけるイミド結合含有率(イミド化反応によりイミド化し得るアミド結合数とイミド結合数の合計量100モル%に対するイミド結合数の割合)が80モル%以上であるポリイミド樹脂が好ましい。より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。
【0089】
ポリ(アミド)イミド樹脂は、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合とイミド結合とを含むものであるが、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合については、含まないか若干量含んでいてもよい。アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合を含む場合、アミド結合数(脱水反応によりイミド結合を形成し得ないアミド結合数と脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合数との和)とイミド結合数との合計量100モル%に対する、アミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成し得るアミド結合の含有率は、20モル%未満が好ましい。より好ましくは10モル%未満、さらに好ましくは5モル%未満、特に好ましくは2モル%未満である。
【0090】
ポリ(アミド)イミド樹脂は、芳香環が少ないことが、高い透明性を得られる点で好ましく、例えば、ポリ(アミド)イミド樹脂の全質量100%中の芳香環の質量は、65%以下であることが好ましく、より好ましくは45%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0091】
ポリ(アミド)イミド樹脂としては、例えば、下記式(10):
【0093】
(式中、R
p1は、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される繰り返し単位を有する化合物が好適である。
上記式(10)におけるR
p1としては、2価の有機基が好ましく、中でも、炭素数2〜39の2価の有機基が好ましい。また、当該有機基は1種又は2種以上の炭化水素骨格を含むものが好ましい。炭化水素骨格としては、脂肪族鎖状炭化水素、脂肪族環状炭化水素、芳香族炭化水素であることが好ましい。また当該有機基は複素環骨格を有するものであってもよい。
【0094】
上記式(10)におけるR
p1としてはまた、上記の炭化水素骨格及び/又は複素環骨格から選ばれる、同一又は異なる2種以上を有し、それらが炭素−炭素結合を介して、又は、炭素−炭素結合とは異なる結合基を介して、結合した骨格を含むものが好ましい。結合基としては、例えば、−O−、−SO
2−、−CO−、−Si(CH
3)
2−、−C
2H
4O−、−S−等が挙げられる。なお、上記式(10)で表される繰り返し単位におけるそれぞれのR
p1は、同一であっても異なるものであってもよい。
【0095】
上記R
p1で表される有機基は窒素原子に直接結合していてもよいし、結合基として、−O−、−SO
2−、−CO−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−Si(CH
3)
2−、−C
2H
4O−、−S−等を有していてもよい。なお、式(10)におけるシクロヘキシル環における水素原子の一部又は全部が置換されていてもよいが、無置換(全て水素原子である形態)であるものが好ましい。上記式(10)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
【0096】
上記ポリ(アミド)イミド樹脂の中で好ましいものとしては、例えば、下記式(10−1):
【0098】
で表される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0099】
ポリ(アミド)イミド樹脂は、多価カルボン酸化合物と、多価アミン化合物及び/又は多価イソシアネート化合物との反応により得られるポリ(アミド)イミド樹脂の原料(「ポリ(アミド)イミド前駆体」と称すこともある)を、イミド化反応して得ることができる。
【0100】
3.2.2.フッ素化芳香族ポリマー
フッ素化芳香族ポリマーとしては、少なくとも1以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合及びエステル結合の群より選ばれた少なくとも1つの結合とを含む繰り返し単位により構成された重合体等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子を有する芳香族環を持つポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドエーテル、ポリアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエステル等が挙げられる。これらの中でも、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する芳香族環と、エーテル結合とを含む繰り返し単位を必須単位として有する重合体であることが好ましく、下記式(11−1)又は(11−2)で表される繰り返し単位を含む、フッ素原子を有するポリエーテルケトンがより好ましい。中でも特に、フッ素化ポリエーテルケトン(FPEK)が好適である。なお、式(11−1)又は(11−2)で表される繰り返し単位は、同一でも異なっていてもよく、ブロック状、ランダム状等の何れの形態であってもよい。
【0102】
上記式(11−1)中、R
q1は炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。Zは2価の鎖又は直接結合を表す。x及びyは0以上の整数であり、x+y=1〜8を満たし、同一又は異なって芳香族環に結合しているフッ素原子の数を表す。n
1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
【0103】
上記式(11−2)中、R
q2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数6〜20のアリールアミノ基又は炭素数6〜20のアリールチオ基を表す。R
q3は、炭素数1〜150の芳香族環を有する2価の有機鎖を表す。zは、芳香族環に結合しているフッ素原子の数であり、1又は2である。n
1は、重合度を表し、2〜5000の範囲内が好ましく、5〜500の範囲内がより好ましい。
【0104】
上記式(11−1)において、x+yは2〜8の範囲内が好ましく、4〜8の範囲内がより好ましい。また、エーテル構造部分(−O−R
q1−O−)が芳香族環に結合する位置としては、Zに対してパラ位であることが好ましい。
【0105】
上記式(11−1)及び(11−2)において、R
q1及びR
q3は2価の有機鎖であるが、例えば、下記の構造式群(11−3)で表されるいずれか一つ、又は、その組み合わせの有機鎖であることが好ましい。
【0107】
上記構造式群(11−3)中、Y
1〜Y
4は、同一若しくは異なって、水素原子又は置換基を表し、該置換基は、ハロゲン原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアミノ基若しくはアリールチオ基を表す。
【0108】
上記R
q1及びR
q3のより好ましい具体例としては、下記の構造式群(11−4)で表される有機鎖が挙げられる。
【0110】
上記式(11−1)において、Zは、2価の鎖又は直接結合していることを表す。当該2価の鎖としては、例えば、下記構造式群(11−5)で表される鎖であることが好ましい。
【0112】
上記構造式群(11−5)中、Xは、炭素数1〜50の2価の有機鎖であるが、例えば、上述した構造式群(11−4)で表される有機鎖が挙げられ、その中でもジフェニルエーテル鎖、ビスフェノールA鎖、ビスフェノールF鎖、フルオレン鎖が好ましい。
【0113】
上記式(11−2)中のR
q2において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が好適である。
【0114】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、フルフリルオキシ基、アリルオキシ基等が好適である。
【0115】
上記アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等が好適である。
【0116】
上記アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、iso−プロピルチオ基等が好適である。
【0117】
上記アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−、m−又はp−トリル基、2,3−又は2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、ピレニル基等が好適である。
【0118】
上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ安息香酸及びそのエステル類(例えば、メチルエステル、エチルエステル、メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、フルフリルエステル及びフェニルエステル等)由来の基、ナフトキシ基、o−、m−又はp−メチルフェノキシ基、o−、m−又はp−フェニルフェノキシ基、フェニルエチニルフェノキシ基、クレソチン酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
【0119】
上記アリールアミノ基としては、アニリノ基、o−、m−又はp−トルイジノ基、1,2−又は1,3−キシリジノ基、o−、m−又はp−メトキシアニリノ基、アントラニル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
【0120】
上記アリールチオ基としては、フェニルチオ基、フェニルメタンチオ基、o−、m−又はp−トリルチオ基、チオサリチル酸及びそのエステル類由来の基等が好適である。
【0121】
上記R
q2としては、これらのうち、置換基を有していてもよい、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアミノ基が好ましい。但し、R
q2には、二重結合又は三重結合が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0122】
上記式(11−2)中のR
q2における置換基としては、上述のような炭素数1〜12のアルキル基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;シアノ基、ニトロ基、カルボキシエステル基等が好適である。また、これら置換基の水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよい。これらの中でも、好ましくは、ハロゲン原子、水素がハロゲン化されていてもよいし、されていなくてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びカルボキシエステル基である。
【0123】
3.2.3.(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸由来の単位を必須の構成単位として有し、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有していてもよい。なお「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
【0124】
(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸とヒドロキシ炭化水素とのエステル類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸アラルキル等)、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル等のエーテル結合導入誘導体;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル等のハロゲン導入誘導体;ヒドロキシ基導入誘導体;アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ビニル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0125】
前記(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類;メタクリル酸メチル、クロトン酸等のアルキル化(メタ)アクリル酸類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸等のヒドロキシアルキル化(メタ)アクリル酸類等が挙げられる。これらの中でも特に、耐熱性及び透明性の観点からは、メタクリル酸メチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(単位)、(メタ)アクリル酸(単位)およびこれらの誘導体(単位)は、それぞれ1種のみ有していてもよいし2種以上有していてもよい。
【0126】
前記ヒドロキシ基導入誘導体には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチル等)、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等)の2−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルが含まれる。
【0127】
前記アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類には、α位にアリル基含有置換基が結合したアクリル酸エステル類が含まれ、例えば、アリルオキシメチルアクリル酸エステル類、2−(N−アリルアミノメチル)アクリル酸エステル類が好適である。具体的には、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル等のアリルオキシメチルアクリル酸エステル類;2−(N−アリル N−メチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−アリル N−エチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−アリル N−t−ブチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−アリル N−シクロヘキシルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−アリル N−フェニルアミノメチル)アクリル酸メチル等の2−(N−アリルアミノメチル)アクリル酸エステル類が好適である。これらの中でも、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ベンジルが好ましく、中でも特にα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AMA)が好ましい。
【0128】
前記ビニル基含有(メタ)アクリル酸エステル類には、α位にビニル基含有置換基が結合したアクリル酸エステル類が含まれ、例えば、ビニルオキシメチルアクリル酸エステル類、2−(N−ビニルアミノメチル)アクリル酸エステル類が好適である。具体的には、α−ビニルオキシメチルアクリル酸メチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸エチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸ブチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸シクロへキシル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタジエニル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸ベンジル等のビニルオキシメチルアクリル酸エステル類;N−メチル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン、N−エチル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン、N−t−ブチル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン、N−シクロへキシル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン、N−フェニル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン等のN−メチル−N−ビニル−2−(メトキシカルボニル)アリルアミン類;2−(N−ビニル N−メチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−ビニル N−エチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−ビニル N−t−ブチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−ビニル N−シクロヘキシルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(N−ビニル N−フェニルアミノメチル)アクリル酸メチル等の2−(N−ビニルアミノメチル)アクリル酸エステル類が好適である。これらの中でも、α−ビニルオキシメチルアクリル酸メチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸エチル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、α−ビニルオキシメチルアクリル酸ベンジルが好ましく、特に、α−ビニルオキシメチルアクリル酸メチルが好ましい。
【0129】
(メタ)アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸系モノマーを他のモノマーと共重合することによって導入される他の構成単位を有していてもよい。(メタ)アクリル酸系モノマーを他のモノマーと共重合することによって、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めることができる。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等の重合性二重結合を有する単量体が挙げられる。これら他のモノマー(単位)は1種のみを有していてもよいし2種以上有していてもよい。
【0130】
(メタ)アクリル系樹脂の全構成単位における、(メタ)アクリル酸系モノマーに由来する構成単位(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位およびこれら誘導体に由来する構成単位)の合計割合は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。上限は特になく、最も好ましくは100質量%である。
【0131】
(メタ)アクリル系樹脂を構成する主鎖には、環構造が含まれていることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂における主鎖環構造は、特に限定されず、−(C=O)N−結合、(C=O)−O−結合などのカルボニル基含有結合を利用した環構造であってもよく、カルボニル基を含まない環構造であってもよい。カルボニル基を含む環構造としては、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、無水マレイン酸構造、N−置換マレイミド構造等が挙げられる。より好ましくは、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造のいずれかであり、特に好ましくはラクトン環構造である。
【0132】
前記ラクトン環構造は、特に限定されず、例えば、4員環から8員環のいずれであってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造としては、例えば、特開2004−168882号公報に開示されている構造が挙げられるが、ラクトン環構造の導入が容易であること、具体的には、前駆体(ラクトン環化前の重合体)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応におけるラクトン環含有率を高めることができること、メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、等の理由から下記式(12−1)に示される構造が特に好ましい。
【0134】
上記式(12−1)において、R
s1、R
s2およびR
s3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の有機基であり、当該有機基は酸素原子を含んでいてもよい。
式(12−1)における有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1から20の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基等の炭素数2から20の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6から20の芳香族炭化水素基(アリール基等)のほか、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種類の基により置換された基等が挙げられる。
【0135】
前記ラクトン環構造は、例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAと、(メタ)アクリル酸系モノマーBとを重合(好ましくは共重合)して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基とエステル基またはカルボキシル基との間で脱アルコールまたは脱水環化縮合を生じさせることにより形成できる。重合成分として、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸系モノマーAは必須であり、(メタ)アクリル酸系モノマーBは前記モノマーAを包含する。モノマーBはモノマーAと一致していてもよいし、一致しなくてもよい。モノマーBがモノマーAと一致する時には、モノマーAの単独重合となる。
詳しくは、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、例えば、特開2006−96960号公報、特開2006−171464号公報、特開2007−63541号公報に記載の方法により製造できる。
【0136】
前記無水グルタル酸構造または前記グルタルイミド構造としては、例えば、下記式(12−2)に示される構造(下記式(12−2)において、X
s1が酸素原子である場合には無水グルタル酸構造となり、X
s1が窒素原子である場合にはグルタルイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
【0138】
上記式(12−2)におけるR
s4、R
s5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X
s1は酸素原子または窒素原子である。X
s1が酸素原子であるとき、R
s6は存在せず、X
s1が窒素原子のとき、R
s6は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0139】
上記式(12−2)におけるX
s1が酸素原子である無水グルタル酸構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を分子内で脱アルコール環化縮合させることにより形成できる。
上記式(12−2)におけるX
s1が窒素原子であるグルタルイミド構造は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミン等のイミド化剤によりイミド化することにより形成できる。
詳しくは、主鎖に無水グルタル酸構造あるいはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報に記載の方法により製造できる。
【0140】
前記無水マレイン酸構造または前記N−置換マレイミド構造としては、例えば、下記式(12−3)に示される構造(下記式(12−3)において、X
s2が酸素原子である場合には無水マレイン酸構造となり、X
s2が窒素原子である場合にはN−置換マレイミド構造となる)が好ましく挙げられる。
【0142】
上記式(12−3)におけるR
s7、R
s8は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X
s2は酸素原子または窒素原子である。X
s2が酸素原子であるとき、R
s9は存在せず、X
s2が窒素原子のとき、R
s9は、水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基またはフェニル基である。
【0143】
上記式(12−3)におけるX
s2が酸素原子である無水マレイン酸構造は、例えば、無水マレイン酸を(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
上記式(12−3)におけるX
s2が窒素原子であるN−置換マレイミド構造は、例えば、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミドを(メタ)アクリル酸エステル等とともに重合に供することにより形成できる。
詳しくは、主鎖に無水マレイン酸構造あるいはN−置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開昭57−153008号公報、特開2007−31537号公報に記載の方法により製造できる。
【0144】
また(メタ)アクリル系樹脂における主鎖環構造のうち、カルボニル基を含まない環構造としては、オキセタン環、アゼチジン環などの含酸素又は含窒素四員環、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環などの含酸素又は含窒素五員環、テトラヒドロピラン環、ピペリジン環などの含酸素又は含窒素六員環などが挙げられる。
五員環又は六員環構造を有する例としては、例えば、下記式(12−4)に示される構造や下記式(12−5)に示される構造が好ましく挙げられ、四員環又は五員環構造を有する例としては、例えば、下記式(12−6)や下記式(12−7)に示される構造が好ましく挙げられる。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、これら各構造の一つ以上を有していればよいが、通常、式(12−4)の構造と式(12−5)の構造を組み合わせて有することが多く、また式(12−6)の構造と式(12−7)の構造を組み合わせて有することが多い。
【0146】
(式中、R
s10及びR
s11は、同一若しくは異なって、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。X
1、Y
1及びZ
1は、同一若しくは
異なって、メチレン基、酸素原子、又は、イミノ基である。ただし、X
1、Y
1及びZ
1の
うち少なくとも1つは酸素原子又はイミノ基である。)
【0147】
上記式(12−4)及び上記式(12−5)に示される構造において、X
1及びZ
1がメチレン基、Y
1が酸素原子であることが好ましい。すなわち、上記式(12−4)及び上記式(12−5)において、テトラヒドロフラン環構造又はテトラヒドロピラン環構造であることが好ましい。また、R
s10及びR
s11は、炭素数1〜5の炭化水素基、特にメチル基であることが好ましい。
【0148】
前記式(12−4)の環構造及び/又は式(12−5)の環構造を有する樹脂は、例えば、前記アリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を、単独で又は他の単量体と共に重合することで製造できる。
【0150】
(式中、R
s12及びR
s13は、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。X
2及びY
2は、同一若しくは異なって、メチレン基、酸素原子、又は、イミノ基である。ただし、X
2及びY
2のうち少なくとも1つは酸素原子又はイミノ基である。)
【0151】
上記式(12−6)及び上記式(12−7)に示される構造において、X
2がメチレン基、Y
2が酸素原子であるオキセタン環構造又はテトラヒドロフラン環構造であることが好ましい。また、R
s12及びR
s13は、炭素数1〜5の炭化水素基、特にメチル基であることが好ましい。
【0152】
前記式(12−6)の環構造及び/又は式(12−7)の環構造を有する樹脂は、例えば、前記ビニル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を、単独で又は他の単量体と共に重合することで製造できる。
【0153】
3.2.4.ポリスルホン樹脂
ポリスルホン樹脂は、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(−SO
2−)と酸素原子とを
含む繰返し単位を有する樹脂である。ポリスルホン樹脂は、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(D)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(D)」という)又は下記式(E)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(E)」という)を有することが好ましく、さらに、下記式(F)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(F)」という)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
(D)−Ph
1−SO
2−Ph
2−O−
(Ph
1及びPh
2は、それぞれ独立に、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
(E)−Ph
3−SO
2−Ph
4−O−Ph
5−R’−Ph
6−O−
(Ph
3、Ph
4、Ph
5及びPh
6は、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R’は、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
(F)−(Ph
7)
n−O−
(Ph
7は、フェニレン基を表す。前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。nは、1〜3の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するPh
7は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0154】
Ph
1〜Ph
7のいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、得られる樹脂の耐熱性、強度が高くなるため、p−フェニレン基であることが好ましい。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは1個または2個であり、より好ましくは1個である。Rで表されるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、1〜5であることが好ましい。
【0155】
芳香族ポリスルホン樹脂の市販品としては、例えば、住友化学社製スミカエクセルPES3600Pや住友化学社製スミカエクセルPES4100P(繰返し単位(D)を有する芳香族ポリスルホン樹脂)、SOLVAY SPECIALTY POLYMERS社製UDEL(登録商標) P−1700(繰返し単位(E)を有する芳香族ポリスルホン樹脂)等が挙げられる。なお、芳香族ポリスルホン樹脂の末端基は、その製法により適宜選択することができ、その例としては、−Cl、−OH、−OR(R:アルキル基)が挙げられる。
【0156】
3.2.5.ポリシクロオレフィン樹脂
ポリシクロオレフィン樹脂とは、重合体を構成するモノマー成分としてポリシクロオレフィンを含む重合体又は共重合体(以下、(共)重合体という)をいい、モノマー成分が1種又は2種以上のポリシクロオレフィンのみからなる(共)重合体であってもよいし、モノマー成分としてポリシクロオレフィンおよび他のモノマーを含む(共)重合体であってもよい。上記他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなど炭素数2以上のα−オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0157】
ポリシクロオレフィン樹脂は、主鎖に環状オレフィン骨格を有するポリマーであることが好ましく、その中でも、ホモポリマー又はコポリマーであるポリシクロオレフィン樹脂がより好ましい。好ましいポリシクロオレフィン樹脂としては、下記構造式(13)・(14)で示されるポリシクロオレフィン樹脂(以下、ノルボルネン系樹脂という)、下記構造式(15)で示されるポリシクロオレフィン樹脂(以下、変性ノルボルネン系樹脂という)、下記構造式(16)で示されるポリシクロオレフィン樹脂(以下、環状オレフィン系共重合樹脂という)が挙げられる。
【0159】
(式(13)中、m
1は1以上の整数であり、R
b1およびR
b2は水素原子またはアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
b1およびR
b2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
【0161】
(式(14)中、m
2およびn
2はいずれかが、あるいはいずれも1以上の整数である。R
c1およびR
c2は水素原子又はアルキル基を示し、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
c1およびR
c2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
【0163】
(式(15)中、m
3は1以上の整数であり、R
d1〜R
d4は水素原子又はアルキル基を示
し、R
d5はアルコキシカルボニル基(好ましくはメトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基)を示し、R
d1〜R
d4はそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
d1およびR
d2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
【0165】
(式(16)中、m
4およびn
4は1以上の整数であり、R
e1〜R
e4は水素原子又はアルキル基を示し、R
e5は水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基(好ましくはメトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基)、R
e1〜R
e4はそれぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。R
e1およびR
e2は、それらが結合して環を形成していてもよい。)
【0166】
ポリシクロオレフィン樹脂の中でも、ノルボルネン系樹脂、変性ノルボルネン系樹脂、及び環状オレフィン系共重合樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂が好ましい。これらのポリシクロオレフィン樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0167】
ポリシクロオレフィン樹脂としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ZEONEX(登録商標)(日本ゼオン社製,ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体水素化ポリマー;ノルボルネン系樹脂)、ZEONOR(登録商標)(日本ゼオン社製,ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー;ノルボルネン系樹脂)、ARTON(登録商標)(JSR社製,ジシクロペンタジエンおよびメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂;変性ノルボルネン系樹脂)、TOPAS(登録商標)(ポリプラスチックス社製,ノルボルネンとエチレンとのコポリマー;環状オレフィン系共重合樹脂)、アペル(登録商標)(三井化学社製,テトラシクロドデセンとエチレンとのコポリマー;環状オレフィン系共重合樹脂)などが挙げられる。
【0168】
樹脂層用組成物に可溶ポリシクロオレフィン樹脂が含有されている場合、可溶ポリシクロオレフィン樹脂そのものが樹脂層を構成してもよく、可溶ポリシクロオレフィン樹脂が架橋反応等により変化したものが樹脂層を構成してもよい。
【0169】
樹脂層用組成物における可溶ポリシクロオレフィン樹脂の含有量は、樹脂層用組成物(溶媒を含む全量)100質量%に対して、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2〜20質量%であり、さらに好ましくは3〜10質量%である。
【0170】
(II)硬化性樹脂
硬化性樹脂は、熱によって硬化(重合)する樹脂であってもよく、光によって硬化(重合)する樹脂であってもよい。得られる樹脂層(硬化膜)は、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)や耐薬品性に優れたものとなる。
硬化性樹脂は、硬化性の官能基を有する有機化合物を1種又は2種以上含んでいる樹脂であり、上記硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(すなわち樹脂組成物を硬化反応させる基を意味する)であり、例えば、オキシラン基(オキシラン環)やエポキシ基の他、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、ビニル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。従って、上記硬化性樹脂は、カチオン硬化性基を有する化合物及び/又はラジカル硬化性基を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、硬化性樹脂の硬化までの時間が短時間となって生産性がより高まり、得られる硬化物も耐熱性(耐熱分解性、耐熱着色性)により優れたものとなる。中でも、樹脂の硬化収縮率が低いために樹脂層の剥離が起きにくく、金型等での形状付与がし易くなるという点で、カチオン硬化性基を有する化合物を含む樹脂であることがより好適である。
【0171】
上記硬化性樹脂を用いる場合、硬化剤を添加することが好ましい。硬化剤は1種又は2種以上併せて用いることができる。硬化剤は、硬化反応や硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択すればよい。硬化剤としては、通常使用されるものでよく、例えば、熱潜在性カチオン硬化触媒、熱潜在性ラジカル硬化触媒、酸無水物系触媒、フェノール系触媒、アミン系触媒等を挙げることができる。中でも、生産性の面で硬化速度が速い熱潜在性カチオン硬化触媒又は熱潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好ましく、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることがより好ましい。また、活性エネルギー線照射による硬化を行う場合は、硬化剤として光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、光潜在性カチオン硬化触媒、光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好ましく、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に光潜在性カチオン硬化触媒を用いることがより好ましい。
上記カチオン硬化触媒として特に好ましくは、下記一般式(17):
【0173】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる形態である。
カチオン硬化触媒又はラジカル硬化触媒を添加する場合、その添加量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算)として、硬化性樹脂100質量部に対し、0.01〜25質量部とすることが好適である。なお、一般式(17)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を添加する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量を添加量とする。
【0174】
カチオン硬化触媒を用いた硬化方法では、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化方法の場合と比較して、得られる硬化物は、耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性がより優れたものとなる。また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、硬化時、成膜時、製品使用時における熱の影響による樹脂組成物の着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。
【0175】
上記樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されず、例えば、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては、30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cm
2で硬化することが好ましい。硬化温度は、樹脂の硬化性を上げるという観点から、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。一方、色素の劣化を抑えるという観点から、硬化温度は、300℃未満であることが好ましく、より好ましくは250℃未満であり、さらに好ましくは230℃未満である。また、硬化時間は、樹脂の硬化性を上げるという観点から、1分以上であることが好ましく、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上であること。一方、色素の劣化を抑えるという観点から、硬化時間は、10時間未満であることが好ましく、より好ましくは5時間未満であり、さらに好ましくは2時間未満である。
【0176】
3.2.6.エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0177】
エポキシ系樹脂としては、中でも脂環式エポキシ化合物骨格を有するエポキシ系樹脂が好ましく、より好ましくはエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ系樹脂、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ系樹脂である。エポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ系樹脂や環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素基を介してエポキシ基が付加したエポキシ系樹脂としては、下記のものを挙げることができる。
ダイセル社製セロキサイド(登録商標)2021P(3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート)
ダイセル社製EHPE3150(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物)
ダイセル社製EHPE3150CE(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物と3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート)
ダイセル社製セロキサイド(登録商標)3000(1,2,8,9−ジエポキシリモネン)ダイセル社製セロキサイド(登録商標)2000(1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン)
上記の中でも、ダイセル社製セロキサイド(登録商標)2021P、ダイセル社製EHPE3150がより好ましい。
【0178】
3.3.溶媒
本発明に係る樹脂組成物には、塗工操作を簡便に実施する観点から、溶媒を含有させることができる。
使用できる溶媒としては、樹脂成分の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)(双極子モーメント:2.76D)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)(双極子モーメント:2.56D)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン(双極子モーメント:3.01D)等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(双極子モーメント:2.08D)、エチレングリコールモノエチルエーテル(双極子モーメント:2.08D)、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(例えば、エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド(双極子モーメント:3.72D)等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(より具体的には、1−メチル−2−ピロリドン(双極子モーメント:4.08D))等のピロリドン類;トルエン(双極子モーメント:0.37D)、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン(双極子モーメント:0.0D)等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン(双極子モーメント:1.70D)、ジオキサン、ジエチルエーテル(双極子モーメント:1.12D)、ジブチルエーテル(双極子モーメント:1.22D)等のエーテル類;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン(双極子モーメント:2.27D)等の含ハロゲン芳香族炭化水素類から選ばれる少なくとも1種以上が好ましく挙げられる。オキソカーボン系化合物は双極子モーメントが小さい溶媒に対して高い耐久性を有する。そのため、双極子モーメントが4D以下である溶媒が好ましく、双極子モーメントが3.5D以下である溶媒がより好ましく、3D以下である溶媒が特に好ましい。このような溶媒の具体例として、例えば、o−ジクロロベンゼン、シクロペンタノン、PGMEA、エチルシクロヘキサン、キシレン、トルエン、トリメチルベンゼン、リモネンなどが挙げられる。
【0179】
溶媒の使用量は、通常、樹脂組成物(溶媒を含む全量)100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、97質量%以下であることが好ましい。溶媒使用量が前記範囲内であれば、上記オキソカーボン系化合物濃度が十分に高い樹脂組成物を得ることが可能となる。特に、溶媒としてアミド類を単独又は他の溶媒と併用して用いる場合には、アミド類が上記オキソカーボン系化合物を分解する虞があるため、アミド類の使用量は少ない方が好ましく、特に好ましいのは含まないことである。具体的には、アミド類の使用量は、樹脂組成物(溶媒を含む全量)100質量%中、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である(すなわち、アミド類を含まない)。
【0180】
3.4.各種添加剤
本発明に係る樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、分散剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0181】
4.成形体、面状成形体
前記樹脂組成物は、成形体、成形部品のコーティング、樹脂フィルム、もしくは板状に成形された面状成形体を製造するのに有用である。この成形体は、本発明の樹脂組成物を射出成形、押出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形、溶媒キャスト法などの公知の方法で所定の形状に成形することにより得られる。なお、前記「面状成形体」には、支持体上に形成された膜状の本発明の樹脂組成物成形物と支持体とが一体となったもの(「積層シート」と称することもある)も包含される。
【0182】
本発明に係る成形体または面状成形体の形状は、特に限定されるものではないが、面状成形体であれば、例えば、厚さ200μm未満のフィルム、厚さ200μm以上の板状物が挙げられる。
【0183】
特に好ましい成形体は、面状成形体であり、より好ましくは光学フィルターである。本発明の光学フィルターは本発明の樹脂組成物から形成された樹脂層または樹脂フィルムを有することが好ましい。樹脂層または樹脂フィルムの最大吸収波長における分光光線透過率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、さらに特に好ましくは2.5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。この光学フィルターは、好ましくは、支持体と、支持体の片面または両面に設けられた膜状の樹脂層とを備えており、この樹脂層に上記本発明の樹脂組成物が使用される。この様なフィルターは、例えば、塗料化した樹脂組成物を支持体上にスピンコート法や溶媒キャスト法により塗布し、乾燥又は硬化させることにより形成する方法や、支持体に対して樹脂組成物から形成された樹脂フィルムを熱圧着することにより形成する方法のほか、練込法等により製造できる。樹脂組成物により形成される樹脂層の膜厚は特に限定されないが、例えば0.5μm以上、15μm以下であることが好適であり、より好ましくは1μm以上、10μm以下である。支持体としては、樹脂板、フィルム、ガラス基板等を用いることができるが、好ましくはガラス基板又はフィルムである。支持体フィルムは、例えば、好適な樹脂成分として上述した樹脂で形成されたものが好ましい。また、上記以外の形態として、本発明の樹脂組成物から形成される単層の樹脂フィルム(面状成形体)も好ましい形態である。樹脂組成物により形成される単層の樹脂フィルム(面状成形体)の膜厚は特に限定されないが、例えば30μm以上、200μm以下であることが好適であり、より好ましくは50μm以上、150μm以下である。このようなフィルターは、例えば、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品、電気・電子部品等の様々な用途で好ましく使用できる。
【0184】
5.吸収スペクトルにおける特徴
前記光学フィルターは、その樹脂層に特定のオキソカーボン系化合物を含んでいる為、550〜1200nmの範囲内に最大吸収波長(λmax)を有し、赤色光の吸収特性に優れている。特にオキソカーボン系化合物としてスクアリリウム系化合物を含む場合、好ましくは550〜1000nm、より好ましくは600〜900nm、さらに好ましくは600〜800nm、最も好ましくは650〜750nmに最大吸収波長を有し、オキソカーボン系化合物としてクロコニウム系化合物を含む場合、好ましくは700〜1200nm、より好ましくは750〜1100nmに最大吸収波長を有する。そして前記光学フィルターは、特定のオキソカーボン系化合物を含んでいるため、前記最大吸収波長での光吸収特性が高いことに加えて、400〜450nmにおける光の平均透過率が高いことがその特徴として挙げられる。光学フィルターとして十分な性能を発揮するためには、光学フィルターの最大吸収波長における分光光線透過率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、さらに特に好ましくは2.5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。最大吸収波長において、このような分光光線透過率を示す光学フィルターでは、波長400〜450nmにおける分光光線の平均透過率が、例えば、81%以上(好ましくは82%以上、より好ましくは83%以上)であることが好ましい。このような本発明のフィルターを用いると、400〜450nmの平均透過率が高くなる一方で、赤色波長の光の吸収率は高くなり、高い選択的透過性を有するといえる。一方、波長400〜450nmにおける分光光線の平均透過率が81%未満であると、青系の光の透過が不十分であり、フィルターを透過した光の色味が変わってしまうおそれがある。また、本発明の光学フィルターは、透過光や反射光の角度依存性を低減することができるため、明るさや色合いの変化が少ない視感度補正用途に適した近赤外線カットフィルターを得ることができる。なお、400〜500nmにおける光の平均透過率及び最大吸収波長の求め方については後述する。
【0185】
また、本発明の樹脂組成物及びフィルターは、可視・近赤外領域の吸収スペクトルにおけるショルダーピークが無い(又は大幅に低減された)ものであることが好ましい。それにより吸収極大領域の光をより選択的に吸収することができる。
【0186】
6.その他
本発明のフィルターの一例には、支持体と、支持体の片面または両面に設けられた樹脂層とを備えているが、支持体と樹脂層との間に下地層が設けられていてもよい。下地層は、支持体の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、下地層は、単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
【0187】
下地層は、シランカップリング剤を含有する組成物から形成されたものであることが好ましい。このようなシランカップリング剤を、下地層用組成物に含有させることで、支持体との密着性を向上させる効果や撥水作用により下地層中への水分の浸入を抑制する効果があり、その結果、耐熱性や耐湿熱性に優れるフィルターを得ることができる。具体的には、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能となる。シランカップリング剤は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0188】
下地層用組成物の調製方法は特に限定されず、シランカップリング剤に液媒体及び触媒を加えて、通常の方法で混合することにより得ることができる。液媒体は、水、アルコール等であればよく、1種又は2種以上を使用することができる。また、触媒は、有機酸または無機酸のいずれであってもよい。
【0189】
下地層の形成方法としては、公知の方法を用いることができるが、下地層用組成物(アンダーコート液)を支持体上に塗布して加熱乾燥することにより形成する方法が好適である。
【0190】
支持体がガラス基板である場合、接着性向上の観点から、下地層は、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基を有するシランカップリング剤を含有する下地層用組成物から形成されたものであることが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤を含有する組成物から形成されたものである場合、第一級アミノ基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。第一級アミノ基を有するシランカップリング剤を含む下地層用組成物を用いると、ガラス基板との接着性が第一級アミノ基以外のアミノ基を有するシランカップリング剤を含む場合に比べ非常に良好となる。また、液媒体は、水、エタノール、及びイソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。液媒体を加えることによって、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基含有シランカップリング剤においてアルコキシ基が加水分解してシラノール基が生成し、このシラノール基がガラス基板表面にある水酸基との水素結合を介してガラス基板表面に移行する。そして、シラノール基の脱水縮合反応を経てガラス基板表面と強固な共有結合を生成することによって、ガラス基板と下地層との密着性が向上する。また、触媒は、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基含有シランカップリング剤の加水分解反応時に触媒として作用するものであればよく、有機酸または無機酸のいずれであってもよいが、ギ酸を用いるのが好ましい。
【0191】
シランカップリング剤は、下地層用組成物ではなく樹脂層用組成物に添加することによって、フィルターの接着性を向上させることもできる。この場合、樹脂層は、接着性向上の観点から、アミノ基、エポキシ基、又はメルカプト基を有するシランカップリング剤を添加した樹脂層用組成物から形成されたものであることが好ましい。シランカップリング剤を上記式(1)又は式(2)で表されるオキソカーボン系化合物と混合する場合、アミノ基含有シランカップリング剤は前記オキソカーボン系化合物と反応し、反応物の析出や樹脂層用組成物のスペクトル変化を生じるおそれがあるため、メルカプト基含有シランカップリング剤であることが好ましい。また、前記オキソカーボン系化合物とメルカプト基含有シランカップリング剤とを混合して用いた場合、400〜600nmの透過率を向上可能なときもあることから、メルカプト基含有シランカップリング剤であることが好ましい。
【0192】
本発明の樹脂組成物は製膜後にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じる可能性があるため、必要に応じて、レベリング剤(表面調整剤)や界面活性剤などの添加剤を添加することが好ましい。添加剤としては、シリコーン系添加剤、アクリル系添加剤、フッ素系添加剤などが有効であるが、樹脂層の接着性や樹脂層における添加剤のブリードアウト防止の観点から、シリコーン系添加剤又はアクリル系添加剤が好ましい。添加剤としては、例えば、表面調整剤であるビックケミー社のBYK(登録商標)シリーズを挙げることができ、BYK(登録商標)−306、330、337、354、355、378、392等が好ましい。添加量としては、樹脂100質量部に対して、添加剤が0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部である。添加剤の添加量が過剰であれば、塗布後の樹脂層に濁りが生じる場合があり、添加剤の添加量が過少であれば、外観上の欠陥を十分に解消できない。
【0193】
本発明の光学フィルターは、本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂層または樹脂フィルムの他に、蛍光灯等の映り込みを低減する反射防止性及び/又は防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、上記以外の機能を有する層を積層してもよく、透明基材、ガラス基板、フィルター等を積層してもよい。
【0194】
本発明の光学フィルターは、紫外線を反射する紫外線反射膜及び/又は近赤外線を反射する近赤外線反射膜(以下、まとめて「不可視光反射膜」という)を備えることが好ましい。このような不可視光反射膜としては、アルミニウム蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜等を用いることができる。不可視光反射膜は、樹脂層または支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい紫外線カットフィルターや近赤外線カットフィルターを得ることができる。また、近赤外線反射膜を積層した場合には、より確実に近赤外線をカットすることのできる近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0195】
不可視光反射膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を用いるのが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
【0196】
本発明の光学フィルターは、反射防止膜を備えることが好ましい。反射防止膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を用いるのが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5の材料が選択される。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.2〜1.6の材料が選択される。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
【0197】
前記不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜は、空気層(外気側)から樹脂層へと酸素が透過しない(酸素を遮断できる)積層膜であることが好ましい。前述したように酸素濃度が低くなるほど、オキソカーボン系化合物の耐久性が向上するため、酸素遮断能が高い不可視光反射膜や反射防止膜を積層することが好ましい。酸素遮断能を高くするには、積層膜の少なくとも1層を緻密な膜とする(より好ましくは全ての層を緻密な膜とする)ことが好ましく、積層膜の少なくとも1層の厚みを厚くする(より好ましくは全ての層の厚みを厚くする)ことが好ましく、両者を併用することも好ましい。緻密な膜を作製する方法としては、公知の技術を用いればよく、例えば、蒸着時の真空度を高真空にする、蒸着温度を高くする、イオンアシスト法(IAD)による蒸着を行う等が挙げられるが、上記以外の方法を用いて緻密な膜を作製してもよい。具体的には、真空度は5×10
-2Pa以下の数値で蒸着することが好ましく、蒸着温度は80℃以上300℃以下が好ましい。また、IAD法による蒸着では、アシスト加速電圧が500V以上1200V以下、アシスト加速電流が500mA以上1200mA以下であることが好ましい。蒸着温度が高すぎると樹脂層の温度が樹脂層で用いられる樹脂のTg以上となるため、蒸着することによって樹脂層が劣化してしまう恐れがあり、蒸着温度が低すぎると蒸着膜(不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜)が緻密な膜にならないおそれがある。また、IAD法による蒸着を行う場合、蒸着温度と同様、弱すぎるアシスト電圧・アシスト電流だと、蒸着膜(不可視光反射膜及び/又は前記反射防止膜)が緻密な膜(充填密度が高い膜)にならないおそれが有り、強すぎるアシスト電圧・アシスト電流だと、樹脂層を劣化させてしまうおそれが有る。各種条件を最適化することで酸素遮断能が高い緻密な膜を作製し、且つ樹脂層を劣化させない、あるいは劣化を小さくすることが好ましい。
【0198】
本発明の光学フィルターに、酸素遮断能が高い不可視光反射膜、反射防止膜、又はその他の層を積層することで、本発明のオキソカーボン系化合物の耐久性を飛躍的に向上させ、耐久性、光学特性に優れた光学フィルター、近赤外線カットフィルターを得ることができる。
【0199】
本発明の光学フィルターに、不可視光反射膜、反射防止膜、又はその他の層を必要に応じて積層させることで、可視光カットフィルター、赤外線カットフィルター、近赤外線カットフィルター、セキュリティーフィルター、熱線遮断・熱線吸収フィルター、バンドパスフィルター、(デイ&ナイト)監視カメラ用フィルター、暗視カメラ用フィルター、デュアルバンドフィルター、可視光イメージセンサ・赤外線センサ用フィルター、ネオン光・蛍光等のセンサに不具合をきたす光のカットフィルターとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下では、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を示すものとする。
【0201】
(化学構造の解析方法)
得られた試料約1mgをガラス棒に塗布して付着させ、直接イオン化ユニット(DART)(島津製作所社製「DART−OS」、ヒーター温度500℃)にてイオン化し、質量分析計(島津製作所社製「LCMS−2020」、M/Z=50−2000、ポジティブ,ネガティブ同時スキャン)により、得られた化合物のMSスペクトルを測定した。
【0202】
(最大吸収波長及び透過率の測定方法)
分光光度計(島津製作所社製UV−1800)を用いて、樹脂層積層基板の吸収スペクトル(透過スペクトル)を測定ピッチ1nmで測定し、波長200〜1100nmにおける光の透過率を求めた。そして、波長650〜750nmで吸収極大となる波長を最大吸収波長とした。また、波長400〜450nmにおいて測定ピッチ1nm毎に測定した51個の透過率の平均値を、400〜450nmの平均透過率とした。
【0203】
(PCT(Pressure Cooker Test)試験)
供試材(樹脂層積層基板)について、供試材に設けられた樹脂層にカッター(エヌティー社製A−300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で10本のクロスカット線を設けることによって4mm
2の四角を81マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。次に、この評価用サンプル基板を、120℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽(パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−E(平山製作所社製)、動作モード1)に、15時間または50時間入れた。続いて、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、10秒間放置した。その後、基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、下記基準で評価した。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
○:作製した81マスの四角のうち、1マスも剥がれが発生しなかった。
△:作製した81マスの四角のうち、1〜9マスに剥がれが発生した。
×:作製した81マスの四角のうち、10〜81マスに剥がれが発生した。
【0204】
実施例において使用したスクアリリウム化合物01、07〜11、13、15、17〜29、及び比較スクアリリウム化合物3、4の構造式を以下に示す。スクアリリウム化合物01、07〜11、13、15、17〜29は、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法、すなわち明細書中に挙げた論文に記載された合成方法によって作製したものである。また、比較スクアリリウム化合物3としては、米国特許第5,543,086号明細書のFormula 17に開示されていたスクアリリウム化合物を用いた。
なお、スクアリリウム化合物01、07〜11、13、15、17〜29、比較スクアリリウム化合物3、4については上記方法で分析し、以下に示す構造を有することを確認した。
【0205】
【化30】
【化31】
【0206】
(ポリイミド樹脂Aの作製)
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製、純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬製)44部とを、フラスコに仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶媒の還流温度まで昇温し、10分間溶媒を還流させた。その後、攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して目的物(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。続いて、温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えたフラスコに、窒素気流下、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬製)0.89部と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン7.6部を仕込んで溶解させた後、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し、室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い、ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後、冷却しポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を得た。このN−メチル−2−ピロリドン溶液をγ―ブチロラクトンでさらに希釈し、固形分3%のポリイミド樹脂溶液とした。このポリイミド樹脂溶液1部に対して、メタノール50部で再沈し、固液分離した。固液分離したポリイミド樹脂をγ―ブチロラクトンで溶解し、再び固形分3%のポリイミド樹脂溶液とし、前記と同様にメタノール50部で再沈し、固液分離した。再沈して得られた樹脂を乾燥してポリイミド樹脂Aを得た。また、示差走査熱量計によりポリイミド樹脂Aのガラス転移温度(Tg)を測定したところ、297℃であった。
【0207】
(アクリル系樹脂Bの合成方法)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した反応器に、60部のα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AMA)、重合溶媒として140部の4−メチル−2−ペンタノン(メチルイソブチルケトン、MIBK)を仕込み(初期モノマー濃度=30質量%)、これに窒素を通じつつ、100℃まで昇温した後、開始剤として0.12部の1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル(和光純薬製、商品名:V−40))を添加し、重合を開始した。重合反応を6時間行った結果、重合転化率=97%、アリル基転化率=96%、Mw=21000の重合体を得た。この重合体について5%質量減少温度を測定したところ、360℃であった。得られたアクリル系ポリマー溶液5部に対して、メタノール500部で再沈し、固液分離した。固液分離したアクリル系樹脂を再びMIBKで溶解し、固形分10%のアクリル系樹脂溶液とし、前記と同様にメタノール500部で再沈し、固液分離した。再沈して得られた樹脂を乾燥してアクリル系樹脂Bを得た。また、示差走査熱量計によりアクリル系樹脂BのTgを測定したところ、70℃であった。
【0208】
(アクリル系樹脂B’の合成方法)
攪拌翼、温度センサー、冷却管、ガス導入管を付した反応容器に、単量体としてα−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AMA)21.0部およびN−シクロヘキシルマレイミド9.0部、重合溶媒として酢酸エチル45.0部を仕込み、窒素ガスを流しながら攪拌、昇温を開始した。内温が70℃で安定したのを確認した後、アゾ系ラジカル重合開始剤(日本ファインケム社製ABN−V)0.03部を添加し、重合を開始した。内温が69℃〜71℃になるよう調整しながら3.5時間反応をつづけた後、室温まで冷却した。希釈溶媒としてテトラヒドロフラン、貧溶媒としてn−ヘキサンを用いて再沈殿操作を行い、沈殿物を吸引濾過により分離した。減圧乾燥器を用いて沈殿物を減圧下80℃で2時間乾燥し、アクリル系樹脂B’を得た。
得られたアクリル系樹脂B’について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置により重量平均分子量を測定したところ、50400であった。また、示差走査熱量計によりTgを測定したところ、134℃であった。
【0209】
(フッ素化芳香族ポリマーCの合成方法)
温度計、冷却管、ガス導入管、及び、攪拌機を備えた反応器に、BPDE(4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル)16.74部、HF(9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)10.5部、炭酸カリウム4.34部、DMAc(ジメチルアセトアミド)90部を仕込んだ。この混合物を80℃に加温し、8時間反応した。反応終了後、反応溶液をブレンダーで激しく攪拌しながら、1%酢酸水溶液中に注加した。析出した反応物を濾別し、蒸留水及びメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、フッ素化芳香族ポリマーC(フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK))を得た。得られたポリマーのTgは242℃、数平均分子量(Mn)は70770であった。なお、上記合成例における数平均分子量は、以下の方法により測定した。ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 4.6*150を2本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定した。
【0210】
(実施例1)
<樹脂層用組成物溶液の調製・塗布>
シクロペンタノン94部にポリイミド樹脂Aを6部溶解させた樹脂溶液に、スクアリリウム化合物01を0.6部混合、溶解して樹脂層用組成物溶液を作製した。この樹脂層用組成物溶液をろ過して不溶分等を取り除いた後、樹脂層用組成物溶液を作製した。この樹脂層用組成物溶液をガラス基板上に0.6cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)を用い、0.2秒間かけて1000回転にし、10秒間その回転数で保持し、その後0.2秒間かけて0回転(rpm)になるようにして樹脂層を成膜した。樹脂層を成膜したガラス基板を、精密恒温器(ヤマト科学社製DH611)を用いて、100℃で3分間初期乾燥した後に、イナートオーブン(ヤマト科学社製DN610I)を用いて50℃で30分間窒素置換した後、15分程度で200℃に昇温し、200℃で30分間追加乾燥(窒素雰囲気下)し、樹脂層を備えたガラス基板(以下、樹脂層積層基板という)を得た。この樹脂層積層基板の透過率を測定したところ、最大吸収波長(ピークトップ)の透過率が2.5%であった。乾燥後の樹脂層の膜厚は1μmであった。なお、乾燥後の樹脂層の膜厚は、樹脂層積層基板の厚さ及びガラス基板の厚さをマイクロメーターを用いて測定し、両者の差を乾燥後の樹脂層の膜厚とした。樹脂層積層基板の構成、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表1にまとめた。
【0211】
(実施例2〜11、比較例1・2)
実施例1において、樹脂の量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表1に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例2〜11、比較例1・2では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製、塗布した。樹脂層積層基板の構成、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表1にまとめた。
【0212】
【表1】
【0213】
(実施例12〜16、比較例3〜7)
実施例1において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。ただし、実施例16及び比較例7は、塗布後に100℃3分間の初期乾燥をせずに、加熱を行った。なお、実施例12〜16、比較例3〜7では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。樹脂として、ポリシクロオレフィン樹脂P(JSR社製ARTON(登録商標)(変性ノルボルネン系樹脂))、上記アクリル系樹脂B、ポリスルホン樹脂(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS社製UDEL(登録商標)P−1700)、上記フッ素化芳香族ポリマーC、エポキシ系樹脂(ダイセル社製EHPE3150、ダイセル社製セロキサイド(登録商標)2021P)を用いた。また、溶剤として、シクロペンタノン、o−ジクロロベンゼン、PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)を用いた。なお、実施例16及び比較例7で添加しているカチオン硬化触媒Dについては後述する。樹脂層積層基板の構成、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表2にまとめた。
【0214】
調製例1(TPB含有粉末の合成)
国際公開第1997/031924号公報に記載された合成法にしたがって、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%の安藤パラケミー社製アイソパー(登録商標)E溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下した。滴下途中から白色結晶が析出した。反応液を室温まで冷却した後、得られたスラリーを吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥した後、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末B)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して
19F−NMR分析及びGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。
19F−NMRの測定結果を以下に示す。
19F−NMR(CDCl
3)ppm(標準物質:CFCl
3 0ppm)
δ=−135.6(6F,m)
δ=−156.5(3F,dd)
δ=−163.5(6F,d)
【0215】
調製例2(カチオン硬化触媒Dの調製)
調製例1で得たTPB含有粉末B:2g(TPB純分:1.816g(3.547mmol)、水:0.184g(10.211mmol))に対し、γ−ブチロラクトンを1.1g添加し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.6g添加し、室温で60分間混合し、カチオン硬化触媒D(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Dとした。
【0216】
【表2】
【0217】
(実施例17)
ポリイミド樹脂AをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、溶媒キャスト法を用いて成膜し、乾燥後の厚さが100μmとなるようにフィルムを作製した。なお、乾燥は窒素下250℃で十分に行い、残留溶媒は1.5%であった。このポリイミドフィルムの両面に、実施例1と同じ樹脂組成物を用い、最大吸収波長(ピークトップ)の透過率が2.5%となるように両面塗布した。得られた吸収フィルムは、基材(支持体)となるフィルムに、色素を含有した樹脂組成物を塗布して出来たものである。
【0218】
(比較例8)
実施例17と同様にして、ポリイミドフィルムを得た後、比較例1と同じ樹脂組成物を用いて、実施例17と同様の方法で両面塗布して吸収フィルムを得た。
【0219】
(実施例18)
上記ポリシクロオレフィン樹脂Pをo−ジクロロベンゼンに溶解させ、さらにスクアリリウム化合物01を溶解させた。この樹脂溶液を濾過し、溶媒キャスト法を用いて、乾燥後の厚みが50μm、最大吸収波長(ピークトップ)の透過率が2.5%となるようにガラス基板に塗布し、120℃で30分乾燥した後、ガラス基板より剥離した。剥離したフィルムをさらに追加で150℃30分間窒素下で乾燥した。得られた吸収フィルムは支持体に塗布したものではなく、単層で吸収を持ったフィルムである。
【0220】
(比較例9)
比較スクアリリウム化合物3を使用した以外は実施例18と同様にして吸収フィルムを得た。
【0221】
【表3】
【0222】
(実施例19〜30)
実施例1において、樹脂の量、溶剤の量、色素の種類・量を表4に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例19〜30では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製、塗布した。樹脂層積層基板の構成、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表4にまとめた。
【0223】
【表4】
【0224】
(実施例31)
(下地層用組成物(アンダーコート液))
<アンダーコート液の作製>
シランカップリング剤(信越シリコーン社製KBM−903(3−アミノプロピルトリメトキシシラン))1.52部、エタノール2部、水0.455部、及びギ酸水溶液0.26部を混合、溶解した混合液Sを作製した。次に1部の混合液Sを99部のエタノールで希釈溶解してアンダーコート液No.1を作製した。
【0225】
<アンダーコート液の塗布>
ガラス基板(SCHOTT社製D263Teco、60mm×60mm×0.3mm)上に前記アンダーコート液を1cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ株式会社製1H−D7)を用い、3秒間かけて2200回転(rpm)にし、20秒間その回転数で保持し、その後3秒間かけて0回転(rpm)になるようにして下地層を成膜した。下地層成膜後のガラス基板を精密恒温器(ヤマト科学社製DH611)を用いて、100℃で10分間乾燥し、下地層を備えたガラス基板(以下、下地層積層基板という)を得た。
【0226】
<樹脂層用組成物溶液の調製・塗布>
実施例1において、樹脂層用組成物溶液をガラス基板上に垂らす代わりに、樹脂層用組成物溶液を上記下地層積層基板の下地層の上(下地層に直接接する面)に垂らしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例31では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製、塗布した。樹脂層積層基板の構成、PCT試験の結果、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表5にまとめた。
【0227】
(実施例32〜36)
実施例31において、色素の種類・量を表5に示すとおりに変更したこと以外は、実施例31と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例32〜36では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製、塗布した。樹脂層積層基板の構成、PCT試験の結果、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表5にまとめた。
【0228】
【表5】
【0229】
(実施例37〜39、42、43)
実施例31において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表6に示すとおりに変更したこと以外は、実施例31と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例37〜39、42、43では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。樹脂として、ポリシクロオレフィン樹脂P(JSR社製ARTON(登録商標)(変性ノルボルネン系樹脂))、ポリシクロオレフィン樹脂Q(ポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)(環状オレフィン系共重合樹脂))を用いた。また、溶剤として、o−ジクロロベンゼン、キシレンを用いた。樹脂層積層基板の構成、PCT試験の結果、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表6にまとめた。
【0230】
(実施例40、41)
実施例1において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表6に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例40、41では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。樹脂として、上記ポリシクロオレフィン樹脂P、上記ポリシクロオレフィン樹脂Qを用いた。また、溶剤として、o−ジクロロベンゼン、キシレンを用いた。樹脂層積層基板の構成、PCT試験の結果、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表6にまとめた。
【0231】
【表6】
【0232】
(実施例44〜47)
実施例1において、樹脂の種類・量をアクリル系樹脂B’15部、溶剤の種類・量をシクロペンタノン85部に変更し、色素の種類・量を表7に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。なお、実施例44〜47では、最大吸収波長の透過率が2.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。樹脂層積層基板の構成、400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表7にまとめた。
【0233】
【表7】
【0234】
(実施例48、比較例10)
実施例1において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表8に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層積層基板を得た。実施例48、比較例10では、最大吸収波長の透過率が12%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表8にまとめた。
【0235】
【表8】
【0236】
(実施例49〜54)
実施例31において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、色素の種類・量を表9に示すとおりに変更し、硬化剤及び添加剤を加えたこと以外は、実施例31と同様にして実施例49〜52の樹脂層積層基板を得た。また、実施例16において、樹脂の種類・量、溶剤の種類・量、硬化剤の種類・量、色素の種類・量を表9に示すとおりに変更し、添加剤を加えたこと以外は、実施例16と同様にして実施例53〜54の樹脂層積層基板を得た。実施例49〜54では、最大吸収波長の透過率が0.5%になるように樹脂層用組成物溶液を作製して塗布した。400〜450nmの平均透過率、及び最大吸収波長の結果を以下の表9にまとめた。実施例53〜54では、シランカップリング剤として、東レダウコーニング社製Z−6062(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を用いた。また、実施例49〜54では、添加剤として、ビックケミー社のBYK(登録商標)−306(シリコーン系添加剤)を用い、硬化剤として、前述のカチオン硬化触媒Dまたは以下の調整方法で調製したカチオン硬化触媒Eを用いた。
【0237】
調製例3(カチオン硬化触媒Eの調製)
調製例2において、γ−ブチロラクトンをトルエンに変更したこと以外は調製例2と同様にして、カチオン硬化触媒(TPB触媒)の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒Eとした。
【0238】
【表9】
【0239】
図1は、実施例12の樹脂層及び比較例3の樹脂層における波長と透過率との関係を示した図である。
図1より、比較スクアリリウム化合物3を含む比較例3の樹脂層では、吸収極大波長における透過率は2.5%であるが、400〜450nmの平均透過率は76%程度に過ぎない。しかし、スクアリリウム化合物01を含む実施例12の樹脂層では、吸収極大波長における透過率は2.5%である一方、400〜450nmの平均透過率は84%程度である。よって、スクアリリウム化合物01を含む樹脂組成物は、比較スクアリリウム化合物3を含む樹脂層に比べ、高い選択的透過性を有することが分かる。
また
図1より、比較スクアリリウム化合物3を含む比較例3の樹脂層では、吸収極大波長よりも短波長側に大きなショルダーピークが認められるがスクアリリウム化合物01を含む実施例12の樹脂層では同様のショルダーピークはほぼ消失し、滑らかな吸収波形が得られることが分かる。従って、スクアリリウム化合物01を含む樹脂層は、比較スクアリリウム化合物3を含む樹脂層に比べ、吸収極大領域の光をより選択的に吸収できる。
【0240】
図2は、上記ポリシクロオレフィン樹脂Pにスクアリリウム化合物01を含む樹脂層及び下記式(18)のスクアリリウム化合物(以下、比較スクアリリウム化合物5という)を含む樹脂層における波長と吸光度との関係を示した図である。
図2においても
図1同様に、スクアリリウム化合物01を含む樹脂層は選択的透過性に優れていることが分かる。
また
図2より、
図1同様に、上記ポリシクロオレフィン樹脂Pに比較スクアリリウム化合物5を含む樹脂層では、吸収極大波長よりも短波長側に大きなショルダーピークが認められるが、スクアリリウム化合物01を含む樹脂層では同様のショルダーピークはほぼ消失し、滑らかな吸収波形が得られることが分かる。従って、スクアリリウム化合物01を含む樹脂層は、比較スクアリリウム化合物5を含む樹脂層に比べ、吸収極大領域の光をより選択的に吸収できる。
【0241】
【化32】
【0242】
実施例1〜54で得られた光学フィルターの片面に反射防止膜、もう一方の面に近赤外反射膜を積層して、近赤外線カットフィルターを作製した。IAD法によってシリカ層と酸化チタン層とを交互に蒸着させることにより、近赤外線反射膜及び反射防止膜を作製した。なお、シリカ層及び酸化チタン層を蒸着させる際の蒸着温度は、各樹脂のTg以下になるようにした。
実施例1〜54で得られた光学フィルターを用いて作製された近赤外線カットフィルターはいずれも良好な透過率特性を示し、透過光の角度依存性もほとんどなかった。代表として、実施例12の光学フィルターに反射防止膜及び近赤外線反射膜を蒸着した近赤外線カットフィルターについて、入射角度0°で光を入射したときの各波長における透過率及び入射角度30°で光を入射したときの各波長における透過率の測定結果を表10に示した。また、入射角度0°で光を入射したときの透過率が50%となる波長は631nmであり、入射角度30°で光を入射したときの透過率が50%となる波長は629nmであり、光の入射角度にかかわらず、透過率が50%となる波長はほぼ同じであった。
また、実施例1〜54で得られた光学フィルターを用いて作製された近赤外線カットフィルターに対して、耐紫外線性、耐湿熱性、耐水性、耐候性、耐衝撃性、耐熱性評価を実施したところ、いずれの近赤外線カットフィルターにおいても、色素の劣化がなく、非常に優れた耐久性を示すことが分かった。
【0243】
【表10】