【実施例1】
【0013】
本発明に係る乾式二重床1は、
図1に示すように、スラブ2上に載置される弾性台座3と、該弾性台座3の上に載置される支持脚4と、該支持脚4と支持板4aとにて支持される床下地パネル5と、該床下地パネル5の上に敷設されるとともに、壁8側の幅木7と縁切りされて敷設される床材(床仕上げ材)6と、前記スラブ2と前記床下地パネル5との間に形成される床下空気層Aとで構成されてなる。
【0014】
前記スラブ2は、鉄筋コンクリート(RC)造であって、そのスラブ厚は、例えば、200mmであり、若しくは、
図4に示す現場実験では、一例としてボイド2aを有する厚さ300mmのスラブ2bである。
【0015】
前記弾性台座3は、反発弾性率R(=(h2/h1)×100%、規格:JISK6255)が30%以下であって、圧縮永久歪(ENISO1856)が5%以下であるとともに、高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンである特殊ポリウレタン防振材で形成したものである。本発明に係る乾式二重床1の要部をなすものである。更に詳細については後述する。
【0016】
前記支持脚4は、金属製若しくは合成樹脂製であり、ねじ溝を有して軸回りに回転させることで、高さ調節ができるようになっている。尚、この支持脚4の下で、際根太9の支持部においては、ゴム(SBR、硬度が約70°)等の弾性台座3aが設置されている。符号4aは、共通支持脚方式における支持脚4と床下地パネル5との間に介装される矩形状の支持板を示している。
【0017】
前記床下地パネル5は、その厚さがt=20mmのパーティクルボードである。
図2乃至
図3(A)に示すように、床下地パネル5の長手方向の大きさにおいて、床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚4へと伝播させるべく、長手方向の寸法を標準サイズの約半分とし、短くしている。具体的には、前記床下地パネル5の大きさを908×600mmとした。従来では、
図3(B)に示すように、床下地パネル5aの寸法は、1820×600mmであった。
【0018】
このように、前記床下地パネル5の長手方向の大きさが、908mmと従来の約半分になったので、床の衝撃入力が前記床下地パネル5によって周囲に拡散されずに、支持脚4を通して前記弾性台座3へと伝搬される。それにより、弾性台座3を形成する特殊ポリウレタン防振材のエネルギー吸収性能が発揮されて、振動エネルギーが効率的に吸収される。
【0019】
前記床材(床仕上げ材)6は、その厚さt=12mmのフローリングである。これにより、
図1に示す乾式二重床1の床高さは、120mmである。また、床下空気層Aの厚さ(上下方向)は、約88mmとなっている。
【0020】
図1に示す前記際根太9と壁8との隙間a1の寸法を、床衝撃入力によって床下空気層Aの空気が床上へ空気抜きされるのを促進すべく、既存の設定値よりも大きくしている。具体的は、隙間a1=20mmと設定されており、
図9に示す従来例の乾式二重床10における設定値である、隙間a2=10mmに対して、2倍の広い隙間となっている。尚、前記隙間a1,a2において、図示するように、立方体の緩衝材(ウレタンなど)が、間隔を置いて適宜に嵌装されている。
【0021】
前記隙間a1による大きなクリアランンスが際根太9と壁8との間に確保されて、厚さ(上下方向)が約88mmと、層厚が薄い床下空気層Aの空気抜きがスムーズに行われるようになって、この床下空気層Aがバネとして作用しないようにされて、床衝撃音の低減性能の低下が防止される。
【0022】
このような構造の乾式二重床1における、要部である弾性台座3について説明する。この弾性台座3は、上記した通り、反発弾性率が30%以下であって圧縮永久歪が5%以下であるとともに、圧縮強さが10%圧縮で0.03〜0.30N/mm
2、引張強(最低値)が0.3〜1.0N/mm
2、伸び(最低値)が200%、燃焼性のグレードがHBF(遅燃性、規格:UL94)、高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンの特殊ポリウレタン防振材であって、この実施例において、その厚さが一例として18mmで、耐候性、耐水性、耐久性(50年以上)に優れたものである。
【0023】
このような弾性台座3を使用した本発明に係る乾式二重床1と、従来の乾式二重床10を比較すると、
図5に示すように、公的試験機関によるΔL等級は、ΔLH(II)−3となっており、従来のΔLH−2のレベルから1ランク向上している。重量床衝撃音レベルの決定周波数である63Hzにおいて、ΔLH−3の値を上回る良い結果となっており、他の周波数における値も全てΔLH−3の値を上回る良い結果となっている。
【0024】
また、
図6に示す床衝撃音レベル低減量相対値は、スラブを
図4に示すボイド2a(大きさの一例として、400×130mm、ピッチ550mm)有りのスラブ2bとして、本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを施工した場合の現場実験において、床衝撃音レベル低減量を比較した値である。床衝撃音レベルの決定周波数である63Hz帯域で、本発明に係る乾式二重床1は、従来の乾式二重床10よりも床衝撃音が3〜4dB程度小さいという、良い結果が得られた。
【0025】
なお、図中の洋室データは、洋室の床にタイヤ衝撃源(JISA1418-2規定、以下同じ)で衝撃を加え、下の洋室の中央で衝撃音を測定したものである。また、図中の廊下データは、廊下の床面にタイヤ衝撃源で衝撃を加え、下の洋室で衝撃音を測定したものである。
【0026】
更に、
図7に示す床衝撃音レベル低減量相対値は、スラブ厚さ200mmとして、本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを施工した場合の現場実験において、床衝撃音低減レベル低減量を比較した値である。床衝撃音レベルの決定周波数である63Hz帯域で、本発明に係る乾式二重床1は、従来の乾式二重床10よりも床衝撃音が約4dB程度小さく、上記と同様の良い結果であった。このように、本発明に係る乾式二重床1では、スラブ2の厚さによる影響が少ないものである。
【0027】
図8に示すように、衝撃加振時の床面の振動応答特性(加振点から、振動の反応が良く現れる1m離れた距離の地点で測定)は、乾式二重床1の床面の変位量が従来床よりも小さく、減衰に係る時間も早いものである。