特許第6470923号(P6470923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6470923
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】乾式二重床
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   E04F15/18 601H
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-143978(P2014-143978)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-20572(P2016-20572A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591173833
【氏名又は名称】淡路技建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇
(72)【発明者】
【氏名】梯 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊男
(72)【発明者】
【氏名】大蘆 健一郎
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001915(JP,A)
【文献】 特開2004−169456(JP,A)
【文献】 特開平06−322954(JP,A)
【文献】 特開昭62−290713(JP,A)
【文献】 特開平07−025974(JP,A)
【文献】 特開平05−039344(JP,A)
【文献】 特開平05−033470(JP,A)
【文献】 特開2014−023689(JP,A)
【文献】 特開2007−107209(JP,A)
【文献】 特開2000−145114(JP,A)
【文献】 再公表特許第2003/054047(JP,A1)
【文献】 特開2002−285700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/18
E04F 15/00
E04F 15/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ上に載置される弾性台座と、該弾性台座の上に載置される支持脚と、該支持脚にて支持される床下地パネルのサイズ(厚さ×長さ×幅)を20×908×600mmとして床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚へと伝搬させるようにし、該床下地パネルの上に敷設されるとともに幅木と縁切りし床下空気層に直接つながる隙間が形成されて敷設される床材と、前記スラブと前記床下地パネルとの間に形成される床下空気層とで、構成されてなる乾式二重床において、
前記弾性台座を、反発弾性率が30%以下であって圧縮永久歪が5%以下であるとともに、圧縮強さが10%圧縮で0.03〜0.30N/mm2、引張強さが0.3〜1.0N/mm2、伸びが200%、燃焼性のグレードがHBF(遅燃性、規格:UL94)である高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンである特殊ポリウレタン防振材で、その厚さを18mmに形成したこと、
を特徴とする乾式二重床。
【請求項2】
際根太と壁との隙間の寸法を、床衝撃入力によって床下空気層の空気が床上へ空気抜きされるのを促進すべく、20mmに設定したこと、
を特徴とする請求項1に記載の乾式二重床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の建物における、床仕上げ構造としての乾式二重床に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の床仕上げ構造として、近年、乾式二重床にすることが多くなっている。この乾式二重床の従来の構造において、支持脚方式としては、隣接する下地パネルを共通の支持脚で支持する共通支持脚方式と、独立したテーブル状の下地パネルが複数の支持脚に支持される独立支持脚方式とがある。また、乾式二重床における床衝撃音に関しては、床衝撃音遮断性能を決定する周波数が、軽量床衝撃音(堅くて軽い衝撃によって発生する音)では多くの場合125Hz、または、250Hz帯域となり、重量床衝撃音(柔らかくて重い衝撃によって発生する音)では多くの場合63Hz帯域となり、性能決定周波数が異なっている。
本願は、支持脚方式として共通支持脚方式であって、床衝撃音として重量床衝撃音に係る乾式二重床の遮音性能改良に係る発明である。
【0003】
従来の乾式二重床構造10は、図9乃至図10に示すように、コンクリートスラブ等の基礎床(スラブ2は、一例として厚さ200mm)の床面に、ゴム等の弾性台座3a,3bを有して、支持脚同士の間隔を@450×600mmまたは@600×600mm程度とした支持脚4により、床下地パネル5aを所定の高さレベルに支持して二重床の床下地を形成し、敷設された各床下地パネルの下に、ポリエステル不織布やグラスウールなどの吸音材を配設すると共に、形成された床下地の上に、ゴムアスファルトからなる制振遮音性シートを敷設し、その上に、床材(床仕上げ材)6としてフローリングを敷設してなるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−259658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の乾式二重床10においては、重量床衝撃音レベルがスラブ素面に対して1ランク(5dB)程度悪化するとともに、床衝撃音遮断性能を確保するために、スラブを厚くするか、二重床の面材の制振遮音性シートを敷設して質量、剛性を増す必要がある。更に、歩行時の振動により、家具や食器などのがたつき音が生じるという課題がある。本発明に係る乾式二重床は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乾式二重床の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、スラブ上に載置される弾性台座と、該弾性台座の上に載置される支持脚と、該支持脚にて支持される床下地パネルのサイズ(厚さ×長さ×幅)を20×908×600mmとして床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚へと伝搬させるようにし、該床下地パネルの上に敷設されるとともに幅木と縁切りし床下空気層に直接つながる隙間が形成されて敷設される床材と、前記スラブと前記床下地パネルとの間に形成される床下空気層とで、構成されてなる乾式二重床において、前記弾性台座を、反発弾性率が30%以下であって圧縮永久歪が5%以下であるとともに、圧縮強さが10%圧縮で0.03〜0.30N/mm2、引張強さが0.3〜1.0N/mm2、伸びが200%、燃焼性のグレードがHBF(遅燃性、規格:UL94)である高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンである特殊ポリウレタン防振材で、その厚さを18mmに形成したことである。
【0007】
前記床下地パネルの長手方向の大きさにおいて、床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚へと伝播させるべく、長手方向の寸法を標準サイズの約半分としたことである。
【0008】
更に、前記乾式二重床における際根太と壁との隙間の寸法を、床衝撃入力によって床下空気層の空気が床上へ空気抜きされるのを促進すべく、既存の設定値よりも大きくしたことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乾式二重床によれば、支持脚の弾性台座の防振材として、圧縮強さや引張強さ及び伸び等の最低値を限定した衝撃吸収性に優れた特殊ポリウレタン防振材を用い、耐候性、耐水性、耐久性を向上させ、床下地材を短くして、衝撃入力の拡散を抑制するとともに、衝撃入力が直下の支持脚に伝達しやすくし、更に、壁との間のクリアランス、つまり床下地パネルの上に敷設される床材と幅木とを縁切りして敷設し、床下空気層に直接つながる隙間を大きくして床下空気層の空気抜けを良くすること、及び床下地パネルのサイズを従来技術よりも小さくすることで、床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚へと伝搬させ、床衝撃音を一層低減させることができる。これにより、重量床衝撃音レベルを従来の乾式二重床に対して1ランク改善することができる。また、この本発明に係る乾式二重床を用いれば、従来よりもスラブ厚を薄くしたり、二重床の面材を軽減することができる。それにより、施工性の改善、材料費の削減を図ることができる。











































【0010】
また、弾性台座を特殊ポリウレタン防振材にしたので、衝撃吸収性が良く、歩行時の床振動を最小限に抑えるとともに、家具等のがたつきを抑え、軽快な歩行感を得ることができると言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る乾式二重床1の一部拡大縦断面図である。
図2】同本発明の乾式二重床1において、従来の長手方向の長さを約半分の長さにした床下地パネル5を支持脚4で支持している部分の短手方向の一部拡大縦断面図である。
図3】同本発明に係る乾式二重床1における、床下地パネル5の敷設状態を示す平面図(A)と、従来の床下地パネル5aの敷設状態を示す平面図(B)である。
図4】スラブ2bが、ボイド2aを有する構造であることを示す断面図である。
図5】同本発明に係る乾式二重床1において、公的試験機関での床衝撃音低減量の試験結果を示す特性曲線図である。
図6】同本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを、図4に示すスラブ厚300mm、ボイド2a有りのスラブ2b上に施工して現場実験し、比較した床衝撃音レベル低減量の相対値を示す特性曲線図である。
図7】同本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを、スラブ厚200mmのスラブ2の上に施工して現場実験し、比較した床衝撃音レベル低減量の相対値を示す特性曲線図である。
図8】同本発明に係る乾式二重床1の、床面の振動応答特性における変位量を示す特性曲線図である。
図9】従来例に係る乾式二重床10の一部縦断面図である。
図10】同従来例の乾式二重床10において、床下地パネル5aを支持脚4で支持している部分の短手方向の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る乾式二重床1は、図1に示すように、スラブ2の素面に載置する弾性台座3を、特殊ポリウレタン防振材により形成して、重量床衝撃音レベルを従来の乾式二重床10(図9参照)に対して1ランク改善させるものである。
【実施例1】
【0013】
本発明に係る乾式二重床1は、図1に示すように、スラブ2上に載置される弾性台座3と、該弾性台座3の上に載置される支持脚4と、該支持脚4と支持板4aとにて支持される床下地パネル5と、該床下地パネル5の上に敷設されるとともに、壁8側の幅木7と縁切りされて敷設される床材(床仕上げ材)6と、前記スラブ2と前記床下地パネル5との間に形成される床下空気層Aとで構成されてなる。
【0014】
前記スラブ2は、鉄筋コンクリート(RC)造であって、そのスラブ厚は、例えば、200mmであり、若しくは、図4に示す現場実験では、一例としてボイド2aを有する厚さ300mmのスラブ2bである。
【0015】
前記弾性台座3は、反発弾性率R(=(h2/h1)×100%、規格:JISK6255)が30%以下であって、圧縮永久歪(ENISO1856)が5%以下であるとともに、高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンである特殊ポリウレタン防振材で形成したものである。本発明に係る乾式二重床1の要部をなすものである。更に詳細については後述する。
【0016】
前記支持脚4は、金属製若しくは合成樹脂製であり、ねじ溝を有して軸回りに回転させることで、高さ調節ができるようになっている。尚、この支持脚4の下で、際根太9の支持部においては、ゴム(SBR、硬度が約70°)等の弾性台座3aが設置されている。符号4aは、共通支持脚方式における支持脚4と床下地パネル5との間に介装される矩形状の支持板を示している。
【0017】
前記床下地パネル5は、その厚さがt=20mmのパーティクルボードである。図2乃至図3(A)に示すように、床下地パネル5の長手方向の大きさにおいて、床への衝撃入力が拡散されることなく支持脚4へと伝播させるべく、長手方向の寸法を標準サイズの約半分とし、短くしている。具体的には、前記床下地パネル5の大きさを908×600mmとした。従来では、図3(B)に示すように、床下地パネル5aの寸法は、1820×600mmであった。
【0018】
このように、前記床下地パネル5の長手方向の大きさが、908mmと従来の約半分になったので、床の衝撃入力が前記床下地パネル5によって周囲に拡散されずに、支持脚4を通して前記弾性台座3へと伝搬される。それにより、弾性台座3を形成する特殊ポリウレタン防振材のエネルギー吸収性能が発揮されて、振動エネルギーが効率的に吸収される。
【0019】
前記床材(床仕上げ材)6は、その厚さt=12mmのフローリングである。これにより、図1に示す乾式二重床1の床高さは、120mmである。また、床下空気層Aの厚さ(上下方向)は、約88mmとなっている。
【0020】
図1に示す前記際根太9と壁8との隙間a1の寸法を、床衝撃入力によって床下空気層Aの空気が床上へ空気抜きされるのを促進すべく、既存の設定値よりも大きくしている。具体的は、隙間a1=20mmと設定されており、図9に示す従来例の乾式二重床10における設定値である、隙間a2=10mmに対して、2倍の広い隙間となっている。尚、前記隙間a1,a2において、図示するように、立方体の緩衝材(ウレタンなど)が、間隔を置いて適宜に嵌装されている。
【0021】
前記隙間a1による大きなクリアランンスが際根太9と壁8との間に確保されて、厚さ(上下方向)が約88mmと、層厚が薄い床下空気層Aの空気抜きがスムーズに行われるようになって、この床下空気層Aがバネとして作用しないようにされて、床衝撃音の低減性能の低下が防止される。
【0022】
このような構造の乾式二重床1における、要部である弾性台座3について説明する。この弾性台座3は、上記した通り、反発弾性率が30%以下であって圧縮永久歪が5%以下であるとともに、圧縮強さが10%圧縮で0.03〜0.30N/mm、引張強(最低値)が0.3〜1.0N/mm、伸び(最低値)が200%、燃焼性のグレードがHBF(遅燃性、規格:UL94)、高減衰粘弾性のエーテル系混合セルポリウレタンの特殊ポリウレタン防振材であって、この実施例において、その厚さが一例として18mmで、耐候性、耐水性、耐久性(50年以上)に優れたものである。
【0023】
このような弾性台座3を使用した本発明に係る乾式二重床1と、従来の乾式二重床10を比較すると、図5に示すように、公的試験機関によるΔL等級は、ΔLH(II)−3となっており、従来のΔLH−2のレベルから1ランク向上している。重量床衝撃音レベルの決定周波数である63Hzにおいて、ΔLH−3の値を上回る良い結果となっており、他の周波数における値も全てΔLH−3の値を上回る良い結果となっている。
【0024】
また、図6に示す床衝撃音レベル低減量相対値は、スラブを図4に示すボイド2a(大きさの一例として、400×130mm、ピッチ550mm)有りのスラブ2bとして、本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを施工した場合の現場実験において、床衝撃音レベル低減量を比較した値である。床衝撃音レベルの決定周波数である63Hz帯域で、本発明に係る乾式二重床1は、従来の乾式二重床10よりも床衝撃音が3〜4dB程度小さいという、良い結果が得られた。
【0025】
なお、図中の洋室データは、洋室の床にタイヤ衝撃源(JISA1418-2規定、以下同じ)で衝撃を加え、下の洋室の中央で衝撃音を測定したものである。また、図中の廊下データは、廊下の床面にタイヤ衝撃源で衝撃を加え、下の洋室で衝撃音を測定したものである。
【0026】
更に、図7に示す床衝撃音レベル低減量相対値は、スラブ厚さ200mmとして、本発明に係る乾式二重床1と従来の乾式二重床10とを施工した場合の現場実験において、床衝撃音低減レベル低減量を比較した値である。床衝撃音レベルの決定周波数である63Hz帯域で、本発明に係る乾式二重床1は、従来の乾式二重床10よりも床衝撃音が約4dB程度小さく、上記と同様の良い結果であった。このように、本発明に係る乾式二重床1では、スラブ2の厚さによる影響が少ないものである。
【0027】
図8に示すように、衝撃加振時の床面の振動応答特性(加振点から、振動の反応が良く現れる1m離れた距離の地点で測定)は、乾式二重床1の床面の変位量が従来床よりも小さく、減衰に係る時間も早いものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る乾式二重床1によれば、衝撃音吸収に優れた乾式二重床として集合住宅・オフィスビル等に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 乾式二重床、
2 スラブ、 2a ボイド、
2b スラブ(ボイド2a有り)、
3 弾性台座、
3a 従来の弾性台座(ゴム硬度70°)、
3b 従来の弾性台座(ゴム硬度65°)、
4 支持脚、 4a 支持板、
5 床下地パネル、 5a 従来の床下地パネル、
6 床材(床仕上げ材)、
7 幅木、
8 壁、
9 際根太、
10 従来例に係る乾式二重床、
A 床下空気層、
a1,a2 際根太と壁との隙間、
b 幅木と床材との隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10