(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る開口部の防水装置(以下、防水装置)1を開口部に設置した状態を示す断面図である。
図1に示す実施形態の防水装置1は、開口部Oから構造物Sの内部に水が浸入することを防止するものである。開口部Oは、構造物Sの壁部などに形成され、構造物Sの一方の空間側(例えば、屋外空間側)と他方の空間側(例えば、屋内空間側)とを連通するように形成される。ここで、構造物Sは、例えば、工場、倉庫、車庫、店舗、家屋等の建築構造物であり、開口部Oを有している。
【0013】
なお、以下の説明では、水平方向に沿った方向を「幅方向」という場合がある。また、下流側(屋内空間側)とは、水の浸入を阻止や抑制したい側であり、上流側(屋外空間側)とは、浸入可能性のある水が流れてくる側のことである。屋内側、屋外側とは説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、屋外側とは、水が浸入する場合の上流側のことであり、屋内側とは、上流側から水が浸入する可能性がある下流側であり、本発明においては水が浸入してくるのを阻止や抑制したい側のことである。開閉扉や壁等とともに防水装置1を、例えば単なる道路の防水用仕切りとして使用したり、外部空間における門等の箇所に取り付けたり、家屋や部屋等の概念がない箇所に配設してもよい。また、開口部Oは、前述の屋外側と屋内側とを連通するものとすることができる。
【0014】
実施形態1の開口部Oは、構造物Sの外殻をなす壁部3に形成されており、壁部3を貫通して構造物Sの屋外と屋内とを連通している。壁部3には、開口部Oを形成する一対の壁面3aを有する。一対の壁面3aは、開口部Oの幅方向において互いに対向している。なお、これに限らず、開口部Oは、構造物Sの内部を仕切る壁部に形成されたものであってもよい。
【0015】
開口部O、例えば、地下駐車場の入口には、開閉体としてのシャッター4が設置されていることが多い。シャッター4は隙間が多い構造であるため、ゲリラ豪雨や洪水時のように想定以上の降水量となると、シャッター4の隙間を介して浸水し、施設が被害に遭う可能性がある。そこで、浸水対策として、シャッター4の下部を防水板(パネル)に変更する方法も考えられるが、一般的に高額となりやすいため、ユーザーにとって受け入れにくい場合がある。
【0016】
シャッター4は、開口部Oを開閉する開閉体である。シャッター4は、開閉方向、実施形態1では鉛直上下方向に移動する。シャッター4は、
図1および
図2に示すように、金属で構成された複数のスラット4aを開閉方向すなわち鉛直方向に連接して形成されたスラット連接体である。実施形態1では、開方向が上方向、閉方向が下方向となる。
【0017】
シャッター4は、
図1および
図2に示すように、幅方向の両端がガイドレール5により保持されて、鉛直方向の移動が案内される。ガイドレール5は、壁面3aの屋内側の縁にそれぞれ配設されており、幅方向において互いに対向している。シャッター4の幅方向の両端は、それぞれ、ガイドレール5の溝部5aに挿入されている。溝部5aは、鉛直方向に延在しており、シャッター4を鉛直方向に移動自在に案内する。シャッター4は、開口部Oの上端部に配設されたホイルかご(図示省略)に巻き取り可能である。シャッター4は、ホイルかごに巻き取られることで、開口部Oを開放し、ホイルかごから繰り出されることで開口部Oを閉鎖する。
【0018】
防水装置1は、シャッター4の屋外側にシート10を設置して、簡易的にかつ安価に止水することを可能とする。防水装置1は、開口部Oを閉塞し、屋外側から屋内側への水の浸入を抑制するものである。防水装置1は、主として、シート10、保持部材20、押圧部材30、補強部材50を備える。
【0019】
シート10は、シャッター4とその周囲の構造物Sとを一体に覆うことで、シャッター4と構造物Sとの隙間を閉塞し、適切に止水する。シート10は、開口部Oに設置されるものであり、開口部Oの鉛直方向下端側の領域を閉塞することが可能な幅および高さを有している。シート10の形状は矩形で、遮水性、可撓性を有している。シート10の素材は、例えば、樹脂、ゴム、表面を樹脂などでコーティングした布で構成されている。シート10は、水圧によるシャッター4の変形に追従できる素材で構成されることが好ましい。
【0020】
シート10の幅は、開口部Oの幅、すなわち、一対の壁面3a間の距離よりも大に設定されている。シート10の鉛直方向の高さは、対応すべき水深に基づいて定められている。すなわち、シャッター4の下端から鉛直方向上側に向けてどの範囲をシート10によって覆い防水するかに基づいてシート10の鉛直方向の高さが定められている。以下の説明では、シャッター4においてシート10によって覆われるべき部分を「所定部」(
図1の符号A参照)と称する。所定部Aは、シャッター4の鉛直方向下端部である。
【0021】
保持部材20は、シート10をシャッター4よりも屋外側に位置付けて構造物Sに対して保持する。より詳しくは、保持部材20は、シャッター4の所定部Aと、構造物Sのうち所定部Aに隣接する部分とを一体に覆うことで開口部Oの鉛直方向下端部を閉塞させるようにシート10を保持する。また、保持部材20は、シート10の鉛直方向下端部が床面Fに沿って屋外側に向けて延在するようにシート10の幅方向の両端を保持する。これにより、シート10は、シャッター4が有する隙間やシャッター4と構造物Sとの隙間を塞ぎ、屋内側への浸水を抑制することができる。なお、本明細書では、シート10の鉛直方向下端部であって、シート10が保持部材20によって保持された状態で床面Fに沿って延在する部分を、以下「シート下部12」と記載する。本発明でいう床面Fとは、説明上分かりやすくするための便宜上の表現であって、通常の床面のみならず、コンクリート面や地面等の開口部Oの下方に位置する面を総称する。
【0022】
保持部材20は、耐水性を有する硬質の材料、例えば、アルミニウム合金等で構成され、一対配設されている。保持部材20は、一対の壁面3aにそれぞれ配設されている。なお、実施形態1では、保持部材20は、ガイドレール5よりも屋外側に配設されている。保持部材20は、壁面3aに取り付けられる平面部21に、シート10の端部を挟持する挟持スリット22が配設されている。保持部材20は、鉛直方向に延在しており、シャッター4の所定部Aに対応する範囲に配設されている。すなわち、保持部材20は、シャッター4の下端から所定部Aの上端までの範囲に対応して配されている。
【0023】
押圧部材30は、シート10のシート下部12上に配設されて、シート10を構造物Sに向けて押圧するウェイトであり、例えばシート10を床面Fに向けて押圧する。押圧部材30は、例えば、金属で構成され、浮力に抗してシート下部12を床面Fに向けて押圧することができる質量や密度を有している。また、押圧部材30は、シート下部12上に開口部Oの幅方向に沿って連続的に配設される。押圧部材30は、棒状あるいは板状であることが好ましい。実施形態1に係る押圧部材30は、板状のフラットバーである。
【0024】
マグネット40は、シート10の上端部(シート上部)11を構造物Sのシャッター4に向けて押圧するものである。マグネット40によって、シート10がシャッター4に向けて吸引されることにより、シート10の垂れ下がりが抑制される。これにより、シート上部11が所定部Aよりも上方に保持される。
【0025】
補強部材50は、
図2に示すように、屋外側の浸水時に、屋外側の水圧に対抗して屋内側からシャッター4を支持するものである。補強部材50は、
図1に示すように、シート10を開口部Oに設置する場合、すなわち、防水装置1を組み立てる場合に、シャッター4よりも屋内側の床面F上に設置されて、シャッター4の内面と当接してシャッター4の厚さ方向の変形を抑制する。補強部材50は、側方からみて三角形に形成され、床面Fから上方に向けて延在して鉛直方向と平行な当接部51が、水圧によって屋内側に凸に湾曲したシャッター4の内面と当接することで、シャッター4がさらに変形することを抑制する。つまり、補強部材50は、屋外側からの水圧による力に抗してシャッター4を支持することで、シャッター4の変形を抑制する。
【0026】
補強部材50は、主として、当接部51と、台座部52および連結部材としてのリンク部53とを備える。なお、固定部は、主として、台座部52とリンク部53とによって構成されている。当接部51の長手方向一端部(組み立て時の鉛直方向下端部)には台座部52の長手方向一端部が後述する回動軸54を介して回動自在に配設され、当接部51の長手方向他端部(組み立て時の鉛直方向上端部)にはリンク部53の長手方向一端部が後述する回動軸55を介して回動自在に配設されている。また、リンク部53の長手方向他端部には後述する係合ピン56が配設されており、台座部52の長手方向他端部に形成されたスリット52aと着脱自在に係合する。
【0027】
当接部51は、シャッター4の鉛直方向下端部と当接するものである。当接部51は、断面形状がコの字型の剛性を有する部材で構成されている。当接部51は、一対の対向するフランジと、フランジ間に形成されたウェブ(本体)と、を有している。当接部51の両フランジの長手方向両端部には、それぞれ対向する位置に連結孔が形成されている。連結孔は、回動軸54、55が挿通可能な大きさに設定されている。本体のシャッター4との当接面(外周面)には、緩衝材51aが配設されている。緩衝材51aは、水圧でシャッター4が当接部51に押圧された際に、シャッター4が損傷することを防止する。当接部51は、補強部材50の組み立て時には、長手方向が鉛直方向と平行に配設される。また、当接部51は、平常時にはシャッター4の内面と離接しており、浸水時にシャッター4が水圧で屋内側に凸に湾曲するとその内面と当接する。
【0028】
台座部52は、床面Fに対して固定されるものである。台座部52は、長手方向一端部が当接部51の長手方向一端部に回動軸54を介して回動自在に配設され、長手方向他端部に複数のスリット52aが形成されている。台座部52は、断面形状がコの字型の剛性を有する部材で構成されている。台座部52の両フランジの長手方向一端部には、対向する位置に連結孔が形成されている。連結孔は、回動軸54が挿通可能な大きさに設定されている。
【0029】
台座部52の両フランジの長手方向他端部には、複数(実施形態1では、6つ)のスリット52aが形成されている。スリット52aは、等間隔で、両フランジの先端部からウェブ(本体)側に切り欠かれている。スリット52aは、係合ピン56の軸部の径よりも大きな幅、深さに設定されている。補強部材50の組み立て時に、台座部52を床面Fに載置して、当接部51の長手方向が鉛直方向と平行になるように、係合ピン56と係合するスリット52aを選択して、リンク部53を固定する。これにより、
図1、
図3に示すように、当接部51と台座部52との角度が調節された状態で、リンク部53が固定される。すなわち、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形の形状が変化する。
【0030】
具体的には、例えば、係合ピン56を、
図1に示すスリット52aと係合したときは、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形は直角三角形となっている。また、
図3に示すように、係合ピン56を、台座部52の長手方向一端側のスリット52aと係合させたときは、台座部52は長手方向一端側に向かって上り傾斜となっている。また、係合ピン56を、台座部52の長手方向他端側のスリット52aと係合させたときは、台座部52は長手方向他端側に向かって上り傾斜となる。このように、補強部材50の組み立て時は、当接部51の長手方向を鉛直方向と平行にして、係合ピン56と係合するスリット52aを選択して、リンク部53を固定する。これにより、シャッター4が設置されている床面Fの傾斜(水平も含む)に合わせて補強部材50が取り付けられる。
【0031】
また、台座部52の本体にはボルトアンカー60を床面Fに取り付けるための取付孔が、実施形態1では2つ形成されている。台座部52は、取付孔に挿通されたボルトアンカー60によって床面Fに対して固定される。床面Fには、内周面に雌ねじが形成された取付孔が配設されている。床面Fに配設する取付孔は、当接部51が平常時にはシャッター4の内面と離接するように、シャッター4と床面Fとの接触位置よりも屋内側に配設されている。
【0032】
リンク部53は、台座部52と当接部51とを連結するものである。リンク部53は、長手方向一端部が当接部51の長手方向他端部に回動軸55を介して回動自在に配設され、長手方向他端部が台座部52のスリット52aと係合ピン56を介して着脱自在に係合する。リンク部53は、断面形状がコの字型の剛性を有する部材で構成されている。リンク部53の両フランジの長手方向一端部には、それぞれ対向する位置に連結孔が形成されている。連結孔は、回動軸55、係合ピン56がそれぞれ挿通可能な大きさに設定されている。リンク部53の長手方向他端部には係合ピン56が配設されている。係合ピン56は、
図4に示すように、リンク部53の両フランジよりも外方に突出した突出部56aを有する。係合ピン56の軸部は、スリット52aと係合可能な大きさ、形状に設定されている。
【0033】
回動軸54は、ボルト・ナットを含む連結部材であり、軸部の長さは当接部51のフランジ間の距離より大に設定されている。回動軸54は、当接部51の長手方向一端部の連結孔と、台座部52の長手方向一端部の連結孔とを回動自在に連結する。
【0034】
回動軸55は、ボルト・ナットを含む連結部材であり、軸部の長さはリンク部53のフランジ間の距離より大に設定されている。回動軸55は、当接部51の長手方向他端部の連結孔と、リンク部53の長手方向一端部の連結孔とを回動自在に連結する。
【0035】
係合ピン56は、ボルト・ナットを含む連結部材であり、軸部の長さはリンク部53のフランジ間の距離より大に設定されている。係合ピン56は、台座部52のスリット52aと着脱自在である。具体的には、係合ピン56の軸部がスリット52aと係合する。
【0036】
このような構成の補強部材50は、スリット52aと係合ピン56との係合を解除することで、
図5に示すように、折り畳んでコンパクトに収納される。また、スリット52aと係合ピン56とを係合して、補強部材50は、組み立て時にはトラス構造となることで、十分な強度を有してシャッター4を支持する。
【0037】
上記のように構成される防水装置1の使用方法(組み立て方法)、作用について説明する。なお、主として、床面Fが水平であるものとして説明する。
【0038】
シート10を開口部Oに設置する場合、すなわち、防水装置1を組み立てる場合、まず、作業者は、シャッター4をホイルかごに巻き取って開口部Oを開状態とする。そして、作業者は、シャッター4よりも屋内側の床面Fに補強部材50を取り付ける。具体的には、作業者は、折り畳んだ補強部材50の台座部52を広げる。そして、作業者は、台座部52の取付孔を床面Fの取付孔に合わせて、台座部52を床面Fに載置して、ボルトアンカー60で台座部52を床面Fに固定する。このとき、台座部52の長手方向一端部を屋外側、長手方向他端部を屋内側として配設する。
【0039】
そして、作業者は、当接部51とリンク部53とを把持して、回動軸54を軸として屋内側に回動させて、当接部51を起立させる。そして、作業者は、当接部51の長手方向を鉛直方向と平行にした状態で回動軸55を把持する。そして、作業者は、当接部51の姿勢を維持できるスリット52aを選択して係合ピン56と係合する。これにより、補強部材50は、
図1に示すように、側方からみて直角三角形となっている。すなわち、当接部51は床面Fから上方に向けて延在して、長手方向が鉛直方向と平行となっている。また、当接部51は、平常時にはシャッター4の内面と離接している。浸水時には、水圧でシャッター4が屋内側に凸に湾曲すると、当接部51はその内面と当接する。このようにして、防水装置1が組み立てられる。
【0040】
ここで、床面Fが水平ではない場合について説明する。具体的には、
図3に示すように、床面Fが屋内側から屋外側に向かって上り傾斜の場合は、作業者は、係合ピン56を、台座部52の長手方向一端側のスリット52aと係合させる。これにより、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形は、当接部51の長手方向が鉛直方向と水平で、台座部52が屋内側から屋外側に向かって上り傾斜となっている。また、床面Fの屋内側が高い場合は、係合ピン56を、台座部52の長手方向他端側のスリット52aと係合させる。これにより、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形は、当接部51の長手方向が鉛直方向と水平で、台座部52が屋外側から屋内側に向かって上り傾斜となる。
【0041】
つぎに、作業者は、シャッター4をホイルかごから繰り出して開口部Oを閉状態とする。そして、保持部材20を壁面3aに取り付ける。
【0042】
そして、作業者は、シート10の幅方向の両端を、保持部材20の挟持スリット22に上端から挿入して下端まで引き下げる。これにより、シート10の両端が保持部材20に挟持される。そして、作業者は、シート下部12を、保持部材20の下端と床面Fとの間を通して、床面F上に引き出し、床面Fに沿って屋外側に向けて延在させる。
【0043】
そして、作業者は、押圧部材30をシート下部12の表面の上に配設する。こうして、シート10が所定部Aと一対の壁面3aの所定部Aに隣接する部分とを一体に覆い、かつ、シート下部12が床面Fに沿って屋外側に向けて延在した状態で、押圧部材30によりシート10を床面F、構造物Sの一対の壁面3aおよびシャッター4に向けて押圧する。
【0044】
そして、作業者は、マグネット40をシート上部11の表面に配設する。マグネット40により、シート10がシャッター4に向けて吸引されて、シート10の垂れ下がりが抑制される。
【0045】
実施形態1に係る防水装置1では、屋外側が浸水すると、水圧によって屋内側に凸に湾曲したシャッター4の内面と、補強部材50の当接部51が当接する。これにより、補強部材50によって、屋外側の水圧に対抗して屋内側からシャッター4が支持されて、シャッター4の厚さ方向の変形が抑制される。
【0046】
実施形態に係る防水装置1によれば、補強部材50は、当接部51に対して台座部52とリンク部53とが角度調節自在である。これにより、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形の形状が変化する。このため、当接部51の長手方向を鉛直方向と平行にした状態で、補強部材50を屋内側の床面Fに固定することができる。このため、屋内側の床面Fが水平な場合はもちろんのこと、傾斜していても、係合ピン56と係合するスリット52aの位置を変えることによって角度調節して適切に補強部材50を設置することができる。
【0047】
[実施形態2]
図6、
図7を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。実施形態2に係る防水装置1の補強部材80は、リンク部70がターンバックルで構成されている点で、実施形態1と異なる。
【0048】
リンク部70は、長手方向(軸方向)一端部が当接部51の軸方向他端部に回動自在に配設され、軸方向他端部が台座部52の軸方向他端部と回動自在に配設されている。リンク部70は、軸方向に伸縮するものである。リンク部70は、
図6に示すように、同軸の2本のボルト71と、胴体部72と、固定ナット73と、連結部74とを有している。2本のボルト71は、一方が他方のいわゆる逆ねじとなっている。これにより、胴体部72を回転させることにより、胴体部72に対して2本のボルト71が締め込まれたり、弛められたりして、リンク部70が伸縮する。リンク部70が収縮した状態では、
図7に示すように、当接部51と台座部52との角度が鋭角となり、台座部52は長手方向他端部に向かって上り傾斜となる。また、リンク部70が伸長した状態では、当接部51と台座部52との角度が鈍角となり、台座部52は長手方向他端部に向かって下がり傾斜となる。
【0049】
実施形態2の防水装置1によれば、補強部材80の組み立て時に、リンク部70の胴体部72を回転するだけでリンク部70が伸縮し、補強部材80は、当接部51と台座部52とリンク部53とで形成される三角形の形状が変化する。このため、屋内側の床面Fが水平な場合はもちろんのこと、傾斜していても、胴体部72を回転するだけで角度調節して適切に補強部材80を設置することができる。このように、より簡単な操作で角度調節して補強部材80を適切に設置できる。また、胴体部72を回転してボルト71を締め込んだり、弛めたりすることにより、リンク部70の長さを調節できる。このため、リンク部70の長さを無段階で調節することができるので、より適切な角度調節が可能である。
【0050】
[変形例]
実施形態2では、リンク部70をターンバックルで構成することにより、リンク部70を伸縮自在なものとしたが、次のようにしてもよい。具体的には、
図8に示すように、リンク部53には、長手方向一端部に複数(ここでは、6つ)の係合孔58を等間隔で配設する。また、リンク部53の長手方向他端部と台座部52の長手方向他端部とは、回動軸56を介して回動自在に配設されている。回動軸55と係合する係合孔58の位置を変えることで、当接部51と台座部52との角度を調節することができる。
【0051】
また、実施形態1の補強部材50の組み立て時に、補強部材50を正しい向きに設置しやすいように、次のようにしてもよい。台座部52を床面Fに固定するボルトアンカー60を、台座部52の長手方向一端側と長手方向他端側とで異なる径のものを使用する。台座部52の本体、床面Fには、ボルトアンカー60に対応する大きさの異なる取付孔をそれぞれ形成する。これにより、実施形態1の補強部材50の組み立て時に、補強部材50を正しい向きに配設していないと、ボルトアンカー60を締め込むことができないため、間違って設置してしまうことを防止できる。
【0052】
また、実施形態1の補強部材50の台座部52のスリット52aの中で、使用しないスリット52aをゴムなどで形成されたキャップで閉塞してもよい。これにより、誤ったスリット52aに係合ピン56を係合してしまうことを防止できる。また、補強部材50の組み立て時は、開放されているスリット52aに係合ピン56を係合させればよいので、組み立てに要する手間と時間とを削減できる。
【0053】
また、実施形態1の補強部材50では、スリット52aは直線状の切り欠きとしたが、鉤型の切り欠きとしてもよい。具体的には、スリット52aは、両フランジの先端部から本体側に切り欠かれ、その先端部からフランジの長手方向他端側に向かって水平に切り欠いてL字型に形成される。これにより、スリット52aと係合した係合ピン56が、スリット52aから不用意に脱落することを防止できる。
【0054】
また、実施形態1の押圧部材30は、一本でもよいし、複数が開口部Oの幅方向に沿って連続的に配設されていてもよい。なお、使用上における止水目的を達成できれば、連続的でなく、若干途切れている箇所があってもよい。
【0055】
また、実施形態1では、補強部材50は、回動軸54、55を介して、当接部51と、台座部52と、リンク部53とが連結されているものとして説明したが、例えば、回動軸54を着脱自在な構成として、台座部52と、当接部51、リンク部53とを着脱自在なものとしてもよい。この場合、台座部52の長手方向一端部に、両フランジの先端部から本体側に切り欠いたスリットを形成する。補強部材50の組み立て時は、上方から、回動軸54と係合ピン56を、台座部52の長手方向一端部のスリット、長手方向他端部のスリット52aにそれぞれ係合させればよい。これにより、シャッター4が閉状態であっても、補強部材50を組み立てることができる。
【0056】
また、実施形態1および実施形態2の台座部52の底面(床面Fと接する面)に、例えば、ゴムなどで構成される弾性押圧部材を貼付してもよい。これにより、床面Fに凹凸がある場合であっても、弾性押圧部材が変形することで床面Fの凹凸を吸収することができる。
【0057】
また、実施形態1および実施形態2において、台座部52は長手方向他端部に向かって上り傾斜、すなわち、当接部51と台座部52との角度が鋭角とならないように、台座部52を設定してもよい。具体的には、実施形態1の台座部52のスリット52aの配設位置や、実施形態2のリンク部70の可動域を、当接部51と台座部52との角度が鋭角とならないように設定すればよい。
【0058】
また、実施形態1および実施形態2では、開閉体としてシャッター4を示しているが、本発明では、開閉体として、ガラスなどで構成された一対の扉などを備えた開閉扉を用いてもよい。
【0059】
さらに、実施形態1および実施形態2では、シャッター4の屋外側にシート10を設置するものとして説明したが、シャッター4が床面Fとの間で防水機能を有する場合には、シート10は設置しなくてもよい。