(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471004
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】超音波切断装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/08 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
B26D7/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-42302(P2015-42302)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-159413(P2016-159413A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501410126
【氏名又は名称】ブランソン・ウルトラソニックス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】玉本 修
(72)【発明者】
【氏名】王 浪
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−118287(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0199423(US,A1)
【文献】
実用新案登録第2520732(JP,Y2)
【文献】
特開2012−143864(JP,A)
【文献】
特開平09−262730(JP,A)
【文献】
特開2003−071789(JP,A)
【文献】
特開2003−266378(JP,A)
【文献】
実開平04−070425(JP,U)
【文献】
特開2015−123519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に支承板を対立設し、前記二つの支承板の内の一方の支承板は、前記基台に固定すると共に、もう一方の支承板は、前記基台上に後記切断刃の長さに沿って設けたリニアガイドレール及び該リニアガイドレールに沿って摺動するリニアガイドブロックを介して移動自在とし、また前記リニアガイドレールにおける前記移動側の支承板の前記固定側の支承板との反対側に、該リニアガードレールに沿って摺動するリニアガイドブロックを介してテンション調整板を配設すると共に、該テンション調整板を、前記基台上に備えたボールねじ及び該テンション調整板に設けた該ボールねじが螺合するナット部材とからなる送りねじ機構をもって移動可能とし、また、前記移動側の支承板と前記テンション調整板との間にテンション用のコイルばねを介装し、また厚味が薄く且つ帯状に長い、共振体とし且つその一端側をコンバータに接続した加振ホーンに支持せしめてこれによる加振側とした切断刃を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹又は節のいずれかになるようになし、該切断刃の加振側と反対側の端部が、腹となる場合には支持ホーンにより支持する一方、節となる場合には所定の質量の支持ブロックに支持するようになし、前記対立設する支承板における一方の支承板に、前記加振ホーンを保持すると共に、もう一方の支承板に、前記切断刃の加振側と反対側の端部を支持する支持ホーン又は支持ブロックを保持し、前記切断刃の加振側と反対側の端部が腹となる場合においては前記加振ホーンと支持ホーンの夫々の先端面に、また前記切断刃の加振側と反対側の端部が節となる場合においては前記加振ホーンの先端面に、加振ホーン又は支持ホーンの中心部において最も深くなる三角形状の切り込みを設け、該三角形状の切り込みの各平坦な傾斜面の夫々に、該傾斜面の夫々と同一角度の傾斜面を設けて該傾斜面に沿って摺動自在となすと共に、双方の対向壁を加振ホーン又は支持ホーンの軸と平行な平坦面となした一対の挟持駒を、それらの中心部に穿設した加振ホーン又は支持ホーンの軸方向に沿い且つ前記三角形状の切り込みの傾斜面の浅深方向に長いねじ挿通孔に挿通した加振ホーン又は支持ホーンの前記三角形状の切り込みの各傾斜面に加振ホーン又は支持ホーンの軸と平行に螺装した六角孔付き頭部のねじをもって保持し、前記ねじを螺進させ、その頭部で前記一対の挟持駒の夫々を前記三角形状の切り込みの傾斜面に押し付けることによって双方の対向間隙を狭め、もってこれら一対の挟持駒間に前記切断刃の端部を挟持固定するようになしたことを特徴とする超音波切断装置。
【請求項2】
加振ホーンとコンバータの間にブースターを介在させてなる請求項1記載の超音波切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波切断装置に関し、更に詳細には所定の形状に造形することはできるが、軟らかで、力を加えると変形してしまう部材の切断に用いるに好適な超音波切断装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、切断刃に超音波振動を与えて部材を切断する技術は周知であり、そして、所定の形状に造形することはできるが、軟らかで、力を加えると変形してしまう部材、例えば、極めて微細な粒子と水との混合体である焼結前の陶器のような粘土質のものを切断するには、厚みが薄く且つ帯状に長い切断刃を用いて行うことが有効であることは良く知られ、従来においてもそのような装置が種々案出されている。
【0003】
ところで、そのような装置で用いる切断刃は、薄ければ薄い程且つ安定した縦振動共振を維持する程切断に有利である。しかし、従来における切断刃は一般的に相当な厚みがあり、1mm以上のものが殆どであるから,被切断物の切断面の変形が避けられず、よってより薄い切断刃による切断の実現化が要望されている。
【0004】
また、そのような切断装置では切断刃の摩耗や折損が生じたときにおける切断刃の交換作業の迅速性も求められている。
【0005】
そして前記の如く厚みが薄く且つ帯状に長い切断刃を、従来におけるよりも一段と厚みを薄く且つ安定した縦振動共振を維持することができるようにするためには、次の二点の工夫が必要である。
【0006】
先ず、第1の点は、切断刃への振動のかけ方であり、それは、切断刃自身を共振体とし、且つその全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が腹又は節のいずれかになるようになすと共に,該端部が腹である場合には支持ホーンで、また該端部が節である場合には支持ブロックで支持するようになし、更に切断刃に安定して適度のテンションをかけることである。
【0007】
次に、第2の点は、切断刃における端部の加振ホーン又は支持ホーンへの固定の仕方である。
【0008】
切断刃の厚みが薄く且つ長くなると、切断に必要な振動モード以外の振動モードが発生し易くなる。即ち、切断に必要な振動モードは縦振動であるが、これ以外の横振動や捻じれ振動が発生し易くなる。それは、切断刃の厚みが1mm以上あれば充分な剛性を有することから撓みを生じないが、それ以下だと撓みを生じ、これが原因して横振動や捻じれ振動が発生し易くなるのである。尚、横振動や捻じれ振動が発生すると、切断の効率が低下すると共に、切断刃の折損を招く虞がある。
【0009】
そして、厚みが薄く且つ長い切断刃に撓みを生じさせないようにし、或いは振動モードを縦振動に安定させるには、切断刃自身を共振体とし且つ切断刃をその全体の長さにおいて、加振側と反対側の端部が振動の腹又は節のいずれかになるようになすと共に、該端部が腹である場合には支持ホーンで、また該端部が節である場合には支持ブロックで支持するようになし、更にその剛性を補うべく適度のテンションをかけることと、切断刃における端部の加振ホーン又は支持ホーンへの固定の仕方が重要である。
【0010】
従来の装置においても前記第1の点を略満たす構成のものが特許文献1に示されている。しかし、特許文献1に示されたものは、切断刃へのテンションのかけ方と、切断刃における端部の加振ホーンと支持ホーンへの固定の仕方において問題があり、切断刃の撓みや捻じれを防ぐことができず、また振動モードを安定させることができない。
【0011】
該特許文献1に示された装置における切断刃へのテンションのかけ方は、
図11に示す通りであり、切断刃100の両端部の夫々を支持する加振ホーン(図示せず。)と支持ホーン101(図では支持ホーンのみを示している。)の切断刃100と反対側の面に、先端に雄ねじ102aを刻設したテンション調整杆102を突設し、該テンション調整杆102を支承枠103に設けた孔103aに摺動自在に貫挿した状態において該テンション調整杆102の雄ねじ102aにナット104、104を螺合してなるものである。そして、該ナット104、104をテンション調整杆102の軸方向にずらすことによって切断刃100のテンションを調整するものである。尚、図中105は切断刃100の端部の支持ホーン101への固定金具である。
【0012】
斯かる切断刃へのテンションのかけ方は、装置を稼働する前の状態においてナット104、104のテンション調整杆102の軸方向における位置を決めるため、稼働中に振動でナット104、104が緩んだときにテンションが不充分になるという問題がある。よって安定して適度のテンションをかけることができない。そしてまた、この場合には切断刃100に撓みや捻じれが生じることになる。
【0013】
また、該特許文献1に示された装置における切断刃の両端部の各加振ホーンと支持ホーンへの固定の仕方は、
図12に示す通り、前記固定金具105を用いて行うものである。そして、該固定金具105は、ホーン101の先端に突設したボルト106内の透孔106A内に、切断刃100を挟持するチャック体107を挿着し、その先端に、テーパー状をなす先端部にスリット杆108を形成し、更に前記ボルト106に螺合した締付ナット109のテーパー孔部109A内に前記スリット杆108を貫通させ、前記締付ナット109をボルト106の軸方向にずらすことによって締付ナット109のテーパー孔部109Aによりスリット杆108を縮小させ、もって切断刃100を固定するものである。尚、切断刃100を交換等のために取り外すときには、締付ナット109を反対方向に回してそのテーパー孔部109Aをずらし、もってスリット杆108を拡張させて行うものである。
【0014】
しかし、斯かる固定の仕方では、部品の数が多いことから結果として金属の接触面が多く、稼働中において摩擦による発熱と同時に超音波周波数以外の振動を誘発するという問題がある。そして、これが切断刃の振動モードの安定に悪影響を及ぼすことになる。
【0015】
即ち、斯かる固定の仕方では、10μm程度の小さな振幅の場合には殆ど問題がないが、振幅がそれ以上の大きさになると部品同士の摩擦による発熱が生じ、また部品同士の衝突により超音波周波数以外の振動が誘発され、切断刃の振動モードの安定に悪影響を及ぼすことになる。
【0016】
また、切断刃の加振ホーンへの固定の仕方としては、この他にも、例えば、特許文献2に示す方法もある。
図13には、該特許文献2に示す方法を示しており、切断刃(図示せず。)の端部を加振ホーン110の先端部の切断刃挿入溝111に差し込み、加振ホーン110に前記切断刃挿入溝111と直交する方向から差し込んだボルト112をもって切断刃を固定するものである。尚、切断刃の端部には前記ボルト112を貫挿する孔が穿設されている。
【0017】
しかし、斯かる固定の仕方の場合には、固定状態におけるボルト112の軸が切断刃の振動方向と直交することになる。このため、ねじが緩み易く、その場合は切断刃が安定せず、また超音波振動によるボルト112の雄ねじとホーン110の雌ねじとの間の表面摩擦が抑えられず、発熱することになる。尚、超音波ツール用のねじとしては振動方向と平行にすることが望ましく、それが雄ねじと雌ねじの緩みを防ぎ、且つそれらの間の表面摩擦による発熱を防ぐために有効である。
【0018】
また、特許文献3にも切断刃の加振ホーンへの固定の仕方が示されている。該特許文献3に示された固定の仕方は、
図14に示す通りであり、加振ホーン113に、その先端面に中心部に向かって深くなるテーパー状の傾斜面114を設けると共に、該傾斜面114から奥の方に加振ホーン113の軸に沿った雌ねじ115を刻設した孔116を設ける一方、前記加振ホーン113と別体で、加振ホーン113の前記雌ねじ115を刻設した孔116に螺入するボルト117における頭部117aを、その雌ねじ115を刻設した孔116との螺合側の面を前記傾斜面114と同等のテーパー状の傾斜面118となすと共に、頭部117aの端面に加振ホーン113の軸に沿った切断刃挿入溝119を設け、該切断刃挿入溝119に切断刃120を挿入した状態で前記ボルト117を前記加振ホーン113の雌ねじ115を刻設した孔116内に螺進させ、前記加振ホーン113の傾斜面114と前記ボルト117の傾斜面118との共働によってボルト117の切断刃挿入溝119を狭め、もって該ボルト117の切断刃挿入溝119によって切断刃120を把持するものである。
【0019】
しかし、斯かる固定の仕方では、ボルト117の切断刃挿入溝119の挟持による切断刃120の把持力が弱く、稼働中において切断刃120がずれたり、抜け落ちたりする虞がある。それは、ボルト117を螺進させて切断刃120を固定するとき、切断刃挿入溝119の対向壁における切口側(開放端)の部分から切断刃120への接触が始まるから、両対向壁は最後まで平行にならず、切断刃120に対して面ではなく点或いは線で接触していることになる。このため把持力が弱く、前記の問題が生じることになるのである。また、その結果、切断刃が薄い帯状の長い切断刃であると、テンションが不充分となり、切断刃に撓みや捻じれが生じることになる。
【0020】
またその他、斯かる固定の仕方では、ボルト117をねじ回すことによって切断刃120を把持するものであるから、切断刃120のホーン113の円周方向に対する位置の再現性に問題がある。即ち、切断刃120の交換の度毎にホーン113に対する切断刃120の回転方向の位置がずれ、改めてホーン或いは被切断物の位置を再セットし直さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平8−118287号公報
【特許文献2】特開2008−154785号公報
【特許文献3】特開2010−591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであって、切断刃への振動のかけ方において、切断刃自身を共振体とし、且つ切断刃を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹又は節のいずれかになるようになすと共に、該端部が腹である場合には支持ホーンで、また該端部が節である場合には支持ブロックで支持するようになし、更に切断刃に安定して適度のテンションをかけることができるようになすと共に、切断刃における端部の加振ホーン又は支持ホーンへの固定の仕方において、稼働中において切断刃の撓みや捻じれを生じないように確固として固定することができるようになし、もって従来に比して一段と切断刃の厚みを薄くすることができると共に安定した縦振動共振を維持することができるようになした超音波切断装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
而して、本発明の要旨とするところは、基台上に支承板を対立設し、前記二つの支承板の内の一方の支承板は、前記基台に固定すると共に、もう一方の支承板は、前記基台上に後記切断刃の長さに沿って設けたリニアガイドレール及び該リニアガイドレールに沿って摺動するリニアガイドブロックを介して移動自在とし、また前記リニアガイドレールにおける前記移動側の支承板の前記固定側の支承板との反対側に、該リニアガードレールに沿って摺動するリニアガイドブロックを介してテンション調整板を配設すると共に、該テンション調整板を、前記基台上に備えたボールねじ及び該テンション調整板に設けた該ボールねじが螺合するナット部材とからなる送りねじ機構をもって移動可能とし、また、前記移動側の支承板と前記テンション調整板との間にテンション用のコイルばねを介装し、また厚みが薄く且つ帯状に長い、共振体とし且つその一端側をコンバータに接続した加振ホーンに支持せしめてこれによる加振側とした切断刃を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹又は節のいずれかになるようになし、該切断刃の加振側と反対側の端部が、腹となる場合には支持ホーンにより支持する一方、節となる場合には所定の質量の支持ブロックに支持するようになし、前記対立設する支承板における一方の支承板に、前記加振ホーンを保持すると共に、もう一方の支承板に、前記切断刃の加振側と反対側の端部を支持する支持ホーン又は支持ブロックを保持し、前記切断刃の加振側と反対側の端部が腹となる場合においては前記加振ホーンと支持ホーンの夫々の先端面に、また前記切断刃の加振側と反対側の端部が節となる場合においては前記加振ホーンの先端面に、加振ホーン又は支持ホーンの中心部において最も深くなる三角形状の切り込みを設け、該三角形状の切り込みの各平坦な傾斜面の夫々に、該傾斜面の夫々と同一角度の傾斜面を設けて該傾斜面に沿って摺動自在となすと共に、双方の対向壁を加振ホーン又は支持ホーンの軸と平行な平坦面となした一対の挟持駒を、それらの中心部に穿設した加振ホーン又は支持ホーンの軸方向に沿い且つ前記三角形状の切り込みの傾斜面の浅深方向に長いねじ挿通孔に挿通した加振ホーン又は支持ホーンの前記三角形状の切り込みの各傾斜面に加振ホーン又は支持ホーンの軸と平行に螺装した六角孔付き頭部のねじをもって保持し、前記ねじを螺進させ、その頭部で前記一対の挟持駒の夫々を前記三角形状の切り込みの傾斜面に押し付けることによって双方の対向間隙を狭め、もってこれら一対の挟持駒間に前記切断刃の端部を挟持固定するようになしたことを特徴とする超音波切断装置にある。
【0024】
また、上記構成において、加振ホーンとコンバータの間にブースターを介在させるようになしてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記の如き構成であり、切断刃への振動のかけ方において、切断刃自身を共振体とし、且つ切断刃を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹又は節のいずれかになるようになすと共に、該端部が腹である場合には支持ホーンで、また該端部が節である場合には支持ブロックで支持するようになし、更に切断刃に安定して適度のテンションをかけることができるようになすと共に、切断刃における端部の加振ホーン又は支持ホーンへの固定の仕方において、稼働中において切断刃の撓みや捻じれを生じないように確固として固定することができるようになしたものである。したがって、切断刃を従来に比して一段と厚みを薄くできると共に安定した縦振動共振を維持することができ、もって切断効率を一段と向上させることができるものである。
【0026】
また、加振ホーンとコンバータの間にブースターを介在させるようになした場合には、加振ホーンのみの振幅では不充分である場合に振幅を増幅させてこれを補うことができるようになり、切断の効率が一段と向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る超音波切断装置の斜視図である。
【
図4】同加振ホーンと支持ホーンへの切断刃の固定方法の説明図であり、切断刃を一部省略して示した加振ホーンと切断刃の部分の斜視図である。
【
図5】同一対の挟持駒による切断刃の挟持前の状態の部分拡大断面図である。
【
図7】同一対の挟持駒による切断刃を挟持した状態の部分拡大正面図である。
【
図8】同一対の挟持駒による切断刃を挟持した状態の部分拡大断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る超音波切断装置の正面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る超音波切断装置の斜視図である。
【
図11】特許文献1に示された超音波切断装置における切断刃へのテンションのかけ方の説明図である。
【
図12】特許文献1に示された超音波切断装置における切断刃のホーンへの固定の仕方の説明図である。
【
図13】特許文献2に示された超音波切断装置における切断刃のホーンへの固定の仕方の説明図である。
【
図14】特許文献3に示された超音波切断装置における切断刃のホーンへの固定の仕方の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。
図中、1は超音波切断装置である。
【0030】
また、該超音波切断装置1は、長方形の基台2上に支承板3、4を対立設し、前記二つの支承板3、4の内の一方の支承板4は、前記基台2に固定すると共に、もう一方の支承板3は、前記基台2上に後記切断刃の長さ方向に沿って設けたリニアガイドレール5及び該リニアガイドレール5に沿って摺動するリニアガイドブロック6を介して移動自在とし、また前記リニアガイドレール5における前記移動側の支承板3の前記固定側の支承板4との反対側に、該リニアガードレール5に沿って摺動するリニアガイドブロック7を介してテンション調整板8を配設すると共に、該テンション調整板8を、前記基台2上に備えたボールねじ9及び該テンション調整板8に設けた該ボールねじ9が螺合するナット部材10とからなる送りねじ機構11をもって移動可能とし、また、前記移動側の支承板3と前記テンション調整板8との間にテンション用のコイルばね12を介装し、また厚みが薄く且つ帯状に長い、共振体とし且つその一端側をコンバータ14に接続した加振ホーン15に支持せしめてこれによる加振側とした切断刃13を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹となるようになすと共に、該切断刃13の加振側と反対側の端部を支持ホーン16により支持し、また前記対立設する支承板3、4における一方の支承板3に前記加振ホーン15を保持すると共に、もう一方の支承板4に前記支持ホーン16を保持し、更に前記加振ホーン15と支持ホーン16の夫々の先端面に、加振ホーン15又は支持ホーン16の中心部において最も深くなる三角形状の切り込み17を設け、該三角形状の切り込み17の各平坦な傾斜面17A、17Bの夫々に、該傾斜面17A、17Bの夫々と同一角度の傾斜面18A、19Aを設けて該傾斜面17A、17Bに沿って摺動自在となすと共に、双方の対向壁18B、19Bを加振ホーン15又は支持ホーン16の軸と平行な平坦面となした一対の挟持駒18、19を、それらの中心部に穿設した加振ホーン15又は支持ホーン16の軸方向に沿い且つ前記三角形状の切り込み17の各傾斜面17A、17Bの浅深方向に長いねじ挿通孔20、21に挿通した、加振ホーン15又は支持ホーン16の前記三角形状の切り込み17の各傾斜面17A、17Bに加振ホーン15又は支持ホーン16の軸と平行に螺装した六角孔付き頭部22A、23Aのねじ22、23をもって保持し、前記ねじ22、23を螺進させ、その頭部22A、23Aで前記一対の挟持駒18、19の夫々を前記三角形状の切り込み17の傾斜面17A、17Bに押し付けることによって双方の対向間隙を狭め、もってこれら一対の挟持駒18、19間に前記切断刃13の端部を挟持固定するようになしたものである。また、その他図中9Aは前記ボールねじ9の回転ハンドル、9Bは回転止めである。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態は、上記の如く加振ホーン15から加えられた超音波振動により切断刃13自身が共振して大きく振動し、そして、該切断刃13の加振側と反対側の振動の腹となる端部も加振側と同様の支持ホーン16によって支持されているから、切断刃13の振動が減衰されることがないものである。したがって、切断刃13は、切断するに充分な大きさの振動を行うと共に、振動する部分と振動しない部分の状態が安定して持続することになり、切断の効率が向上するものである。また、一方側の加振ホーン15を保持する一方の支承板3は、リニアガイドレール5に沿って切断刃13の長さ方向に移動し、送りねじ機構11によるテンション調整板8の移動によってこれらテンション調整板8と一方の支承板3との間に介装したコイルばね12の張力を調整することによって切断刃13のテンションを適度に調整するものであるから、切断刃13に充分なテンションをかけることができ、振動中における撓みや捻じれが生じることを防止することができるものである。したがって、切断刃13には切断に必要な縦振動のみを発生させることができるものであり、前記作用と相俟って、切断刃13をより薄く且つ安定した縦振動共振を維持することができるものである。尚、切断刃13のテンションは100Nから1000Nが望ましく、また、切断刃13は、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹となるようになし、具体的には超音波振動周波数による刃の1/2波長共振長さを求め、その整数倍で決定すればよい。例えば、超音波振動周波数20KHzの鋼材で切断刃を製作した場合には、縦振動1/2波長共振長さは約130mmとなり、その整数倍の260mm、390mmとすればよい。
【0032】
また、切断刃13における両端部の夫々の加振ホーン15、支持ホーン16への固定の仕方も、前記の如くであり、加振ホーン15、支持ホーン16の夫々の先端面に三角形状の切り込み17を設け、該切り込み17の傾斜面17A,17Bに、ねじ22、23のねじ回しによって接離方向に移動する一対の挟持駒18、19を設けてなるものであるから、構成部品の数が少ないと共に、ねじ22、23は加振ホーン15、支持ホーン16の軸方向に沿っているから切断刃13の振動による緩みが発生しにくく、したがって、従来の固定手段の如く部品同士の摩擦による発熱が生ずることもなく且つ超音波周波数以外の振動を誘発することもないものである。加えて、一対の挟持駒18、19が切断刃13を挟持固定したときには、
図7及び
図8に示す如く、一対の挟持駒18、19の各対向壁18B、19Bは切断刃13と平行に接触するから、全体が面で接触することになるものであり、従来の固定手段に比してはるかに把持力が増大することになるものである。したがって、稼働中において振動で切断刃13の把持が緩むことがなく、該切断刃13の撓みや捻じれを確実に防止することができるものである。また、一対の挟持駒18、19の平坦な対向壁18B、19Bは、加振ホーン15、支持ホーン16の円周方向に対して常に一定の角度になるから、切断刃13を新たなものに交換したときにおいても前と同じ向きにセットすることが可能となるものである。また、切断刃13を交換するときには、ねじ22、23をねじ回すだけの簡単な操作で済むから、交換作業を手際よく迅速に行うことができるものである。
【0033】
次に、
図9に示した本発明の第2実施形態について説明する。
【0034】
本実施形態と前記第1実施形態との相違点は、本実施形態において、加振ホーン15とコンバータ14の間にブースター24を介在させたことにある。
【0035】
本実施形態は斯くの如く構成することにより、ホーンのみの振幅では不充分である場合に振幅を増幅させてこれを補うことができるようになり、切断の効率が一段と向上するものである。尚、その他の構成並びに作用は前記第1実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
次に、
図10に示した本発明の第3実施形態について説明する。
【0037】
本実施形態と前記第1実施形態及び第2実施形態との相違点は、前記第1実施形態及び第2実施形態において、切断刃を、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の腹となるようにしてなるのに対して、本実施形態においては振動の節となるようにしてなることにある。そしてまた、本実施形態においては、この切断刃の端部を所定の質量の支持ブロック25によって支持せしめている。
【0038】
また、該支持ブロック25は、支承板4の上端部に設置しており、水平な支持板26と、該支持板26の上部に固定した、重合する一対の切断刃支持ブロック27、28とからなり、該一対の切断刃支持ブロック27、28の対向面に形成した切り込み29、30に挟持することをもって切断刃13の節となる端部を支持するものである。また、該一対の切断刃支持ブロック27、28の対向面の中央部には、嵌まり合う凹部31と凸部32を形成し、該凹部31と凸部32の部分に前記切り込み29、30を形成している。
【0039】
また、斯かる実施形態の場合における切断刃13は、その全体の長さにおいて加振側と反対側の端部が振動の節となるようになし、基本は1/4波長(20KHz鋼材で切断刃を製作した場合には縦振動1/4波長、共振長さは約65mm)、それに1/2波長を加えたものとすることが可能となる。具体的には、65mm、65mm+130mm、65mm+130mm+130mm等となる。尚、その他の構成並びに作用は前記第1実施形態及び第2実施形態と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0040】
1 超音波切断装置
2 基台
3、4 支承板
5 リニアガイドレール
6、7 リニアガイドブロック
8 テンション調整板
9 ボールねじ
10 ナット部材
11 送りねじ機構
12 コイルばね
13 切断刃
14 コンバータ
15 加振ホーン
16 支持ホーン-
17 三角形状の切り込み
18、19 一対の挟持駒
22、23 ねじ
24 ブースター
25 支持ブロック