(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸連動装置において、
前記受け部材は、前記隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と、この基体から突出して前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部とを備えることを特徴とする引戸連動装置。
前記受け部材の基体は、前記隣接引戸または隣接壁部に固定され前記板状連結部と重なり合う固定部と、この固定部から連設されるとともにこの固定部に対して前記板状連結部を前後方向に挟んだ対向位置に設けられた対向部とを備え、
前記拘束突部は、前記固定部または対向部から他方部側に突出することを特徴とする請求項1記載の引戸連動装置。
前記挟持部は、前記対向部の表面側に配置された主壁部と、この主壁部の引戸開閉方向両側から前記固定部側に向かって延びる一対の側壁部と、この各側壁部の先端部から引戸開閉方向の内側に向かって延び前記固定部に係合する係合片とを備え、
前記各側壁部は、上下方向の高さ位置について前記板状連結部と少なくとも一部において重なる位置に配設されていることを特徴とする請求項3記載の引戸連動装置。
前記拘束突部は、前記板状連結部側の各側端面が前後方向に軸心を有する円弧状面として構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の引戸連動装置。
前記拘束突部は、引戸開閉方向外側の各面が引戸開閉方向内側に向かってこの拘束突部の突出方向側に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の引戸連動装置。
前記受け部材の基体は、前記隣接引戸または隣接壁部に固定される固定本体部と、この固定本体部の引戸開閉方向両端部からそれぞれ下方に垂下して、それぞれの間に前記板状連結部が配置される一対の固定脚部とを備え、
前記拘束突部は、前記固定脚部の引戸開閉方向内側面において、引戸開閉方向内側に向かって突出することを特徴とする請求項1記載の引戸連動装置。
引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸連動装置における前記受け部材において、
前記隣接引戸または隣接壁部に固定され前記板状連結部と重なり合う固定部と、
この固定部から連設されるとともにこの固定部に対して前記板状連結部を挟んだ対向位置に設けられた対向部と、
前記固定部または対向部から他方側に突出し、前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部を備えることを特徴とする引戸連動装置の受け部材。
構造物の開口部の幅方向に沿って配設されるガイドレールと、このガイドレールに沿って前記開口部を開閉するとともに全開状態で戸袋に収納される複数枚の引戸と、引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸のうちの一の引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記一の引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記一の引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸装置において、
前記受け部材は、前記隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と、この基体から突出して前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部とを備えることを特徴とする引戸装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、構造物の開口部はもともと厳密な矩形状では無いことが多く、例えばこの開口部に配設された戸枠についても初期状態で多少の歪みを有していることがある。また、このような歪みは、湿度等の周辺環境や経年劣化等によっても僅かではあるものの変化することが知られている。このような歪みに基づく締め残しを解消するため引戸の高さ調節を行うことなどの理由から、引戸が僅かばかりではあるものの前後方向を軸として傾倒することがある。
【0013】
従って、このような歪みが生じている開口部を開閉する複数枚の引戸について、前記従来の連動装置を設置した場合、各引戸のスライド位置に応じて該引戸の傾倒角度が相対的に異なるため、この傾倒が引戸の開閉操作における抵抗として生じる場合があった。具体的には、従来の引戸連動装置では、受け部材において、板状先端部が緊密状態に拘束されているため、これらの受け部材および板状先端部を通じて一方の引戸の前後方向を軸とした傾倒に基づく外力が他方の引戸に相互に作用し、引戸の開閉操作における抵抗として生じる場合があった。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、引戸の開閉操作を円滑に行うことができる引戸連動装置、受け部材および引戸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、この発明に係る引戸連動装置は、引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸連動装置において、前記受け部材は、前記隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と、この基体から突出して前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部とを備えることを特徴とするものである。ここで、「線状部分で当接する」とは、線接触する場合の他、一定の幅を有する線状部分、例えば前後方向の長さが高さ方向の長さよりも長く設定された矩形状部分で当接する場合も含む概念である。また、「隣接壁部」とは、一の引戸に隣接する壁部そのものの他、床部に固定された受け部材用の保持部としての壁部も含む概念である。
【0016】
この発明によれば、前記受け部材は、前記隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と、この基体から突出して前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部とを備えるので、構造物の開口部の歪みに基づき引戸が前後方向を軸として傾倒した、或いは傾倒させた場合でも、前記板状連結部が前記拘束突部との関係で前記線状部分を軸に回動することができ、この回動によって前記引戸の傾倒に基づく板状連結部と受け部材との相対的な位置関係の変化を吸収することができる。このため、前記引戸の傾倒に基づく外力を逃がすことができ、引戸の開閉操作を円滑に行うことができる。
【0017】
この発明において、前記受け部材の基体の具体的構成は、特に限定するものではなく、例えば、前記隣接引戸または隣接壁部に固定され前記板状連結部と重なり合う板状の固定部のみで構成されるものや、前記板状連結部と重なり合わないように門状に構成された固定部のみで構成されるもの、ブロック状の固定部とその前後方向先端部から上下方向に延びる一対の垂下部とを備えるもの等であってもよいが、前記基体は、前記隣接引戸または隣接壁部に固定され前記板状連結部と重なり合う固定部と、この固定部から連設されるとともにこの固定部に対して前記板状連結部を前後方向に挟んだ対向位置に設けられた対向部とを備えるのが好ましく、この場合、前記拘束突部は、前記固定部または対向部から他方部側に突出するのが好ましい。
【0018】
このように構成すれば、前記固定部と対向部とで板状連結部を前後方向から略抱持することができるので、この板状連結部が受け部材に対し不測に離脱することを効果的に防止することができる。加えて、固定部が板状連結部と重なり合うので、引戸の開閉操作に伴い板状連結部が隣接引戸等に接触して当該隣接引戸等に傷を付けることもない。また、拘束突部は、前記固定部または対向部から他方部側に突出して形成されているので、この拘束突部を簡単に構成することができるとともに、固定部と対向部との隙間が板状連結部の回動許容空間として構成でき、当該空間を簡易に設定することができる。
【0019】
この場合、前記受け部材は、前記固定部と前記対向部と拘束突部とを主要構成部分とするものであってもよいが、前記固定部と前記対向部との双方を前後から挟み込む挟持部を更に備えるのが好ましい。
【0020】
このように構成すれば、挟持部で固定部と対向部とを前後から挟み込むので、固定部と対向部との前後方向の離反を効果的に抑制することができ、これにより固定部と対向部とが離反して、不測に板状連結部の拘束が解除されることを効果的に抑制することができる。
【0021】
また、このように挟持部を備える場合、当該挟持部の具体的構成については特に限定するものではなく、U字状部材を一方向(例えば引戸開閉方向一方側、または、上方等)から差し入れて固定部と対向部とを挟持するものであっても良いが、前記挟持部は、前記対向部の表面側に配置された主壁部と、この主壁部の引戸開閉方向両側から前記固定部側に向かって延びる一対の側壁部と、この各側壁部の先端部から引戸開閉方向の内側に向かって延び前記固定部に係合する係合片とを備え、前記各側壁部は、上下方向の高さ位置について前記板状連結部と少なくとも一部において重なる位置に配設されているのが好ましい。
【0022】
このように構成すれば、挟持部を簡易に製作することができるとともに、挟持部によって固定部と対向部とを引戸開閉方向の両側から挟持することによって両部の離反を確実に抑制することができる。しかも、各側壁部は、上下方向の高さ位置について前記板状連結部と少なくとも一部において重なる位置に配設されているので、仮に衝撃等に基づき不測に固定部と対向部とが離反方向に移動して拘束突部による板状連結部の拘束が解除されたとしても、各側壁部が障壁となって板状連結部と受け部材との係合解除を確実に阻止することができる。
【0023】
また、この発明において、前記拘束突部の具体的形状については特に限定するものではなく、前後方向を法線とする断面における外縁形状が三角形状を含む多角形状であってもよいが、半円、半楕円、弓状を含む円弧状に構成されるのが好ましい。具体的には、前記拘束突部は、前記板状連結部側の各側端面が前後方向に軸心を有する円弧状面として構成されているのが好ましい。
【0024】
このように構成すれば、引戸傾倒に伴い板状連結部が回動等した場合であっても、拘束突部の円弧状面によって該拘束突部と板状連結部とが線状部分で安定して当接させることができ、これにより円滑な引戸の開閉操作を行うことができる。
【0025】
さらに、この発明において、拘束突部の具体的構成については特に限定するものではないが、前記拘束突部は、引戸開閉方向外側の各面が引戸開閉方向内側に向かってこの拘束突部の突出方向側に傾斜する傾斜面を有するのが好ましい。
【0026】
このように構成すれば、板状連結部と受け部材とを相対的にスライドさせることにより、板状連結部が傾斜面に沿って拘束突部を乗り越えることができるため、板状連結部と拘束突部との高さ位置を揃えて相対的にスライドさせるだけで、簡単に板状連結部と受け部材とを連結させることができる。
【0027】
また、受け部材の基体の具体的構成について、例えば、前記受け部材の基体は、前記隣接引戸または隣接壁部に固定される固定本体部と、この固定本体部の引戸開閉方向両端部からそれぞれ下方に垂下して、それぞれの間に前記板状連結部が配置される一対の固定脚部とを備えるものであってもよく、この場合は、前記拘束突部は、前記固定脚部の引戸開閉方向内側面において、引戸開閉方向内側に向かって突出するのが好ましい。
【0028】
このように構成すれば、基体を簡易に構成することができ、コストの抑制を図ることができる。また、前記拘束突部の突出量を調整することにより、簡単に板状連結部の回動許容空間を調整することができる。
【0029】
この場合に、前記受け部材は、引戸開閉方向に沿って前記一対の固定脚部を跨ぎ、かつ両端部が前記隣接引戸または隣接壁部に固定されるカバー部材を更に備え、このカバー部材は、上下方向の高さ位置について前記板状連結部と少なくとも一部において重なる位置に配設されているのが好ましい。
【0030】
すなわち、基体について、固定本体部と固定脚部とを備える場合には、固定脚部における強度の低下が懸念されるところ、カバー部材を固定脚部を跨いで両端部を直接隣接引戸または隣接壁部に固定されることで、固定脚部の強度の向上を図ることができる。しかも、カバー部材は、上下方向の高さ位置について前記板状連結部と少なくとも一部において重なる位置に配設されているので、一対の固定脚部の間に配置された板状連結部が不測にこれらの固定脚部間から飛び出しそうになってもこのカバー部材が障壁になり、両者の不測の係合解除を確実に防止することができる。
【0031】
なお、カバー部材の具体的形状については、特に限定されるものではないが、前記受け部材の固定本体部から固定脚部の表面側に配置されたカバー主壁部と、このカバー主壁部の引戸開閉方向両側から前記隣接引戸または隣接壁部側に向かって延びる一対のカバー側壁部と、各カバー側壁部の先端部から引戸開閉方向の外側に向かって延び前記隣接引戸または隣接壁部に固定する固定フランジ部とを備えるのが、基体の更なる強度の向上の点で好ましい。
【0032】
また、前記課題を解決するために、別の発明に係る引戸連動装置における受け部材は、引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸連動装置における前記受け部材
において、前記隣接引戸または隣接壁部に固定され前記板状連結部と重なり合う固定部と、この固定部から連設されるとともにこの固定部に対して前記板状連結部を挟んだ対向位置に設けられた対向部と、前記固定部または対向部から他方側に突出し、前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部を備えることを特徴とするものである。
【0033】
この発明によれば、前記受け部材は、固定部と対向部と一対の拘束突部とを備えるので、構造物の開口部の歪みに基づき引戸が前後方向を軸として傾倒した場合でも、前記板状連結部が前記拘束突部との関係で前記線状部分を軸に回動することができ、この回動によって前記引戸の傾倒に基づく板状連結部と受け部材との相対的な位置関係の変化を吸収することができる。このため、前記引戸の傾倒に基づく外力を逃がすことができ、引戸の開閉操作を円滑に行うことができる。また、前記固定部と対向部とで板状連結部を前後方向から略抱持することができるので、この板状連結部が受け部材に対し不測に離脱することを効果的に防止することができる。加えて、固定部が板状連結部と重なり合うので、引戸の開閉操作に伴い板状連結部が隣接引戸等に接触して当該隣接引戸等に傷を付けることもない。また、拘束突部は、前記固定部または対向部から他方部側に突出して形成されているので、この拘束突部を簡単に構成することができるとともに、固定部と対向部との隙間が板状連結部の回動許容空間として構成でき、当該空間を簡易に設置することができる。
【0034】
また、前記課題を解決するために、別の発明に係る引戸装置は、構造物の開口部の幅方向に沿って配設されるガイドレールと、このガイドレールに沿って前記開口部を開閉するとともに全開状態で戸袋に収納される複数枚の引戸と、引戸の開閉方向に沿ってスライドするスライダ及びこのスライダに連設され前記引戸のうちの一の引戸に沿って上下方向に延びる板状連結部を有するとともに前記一の引戸に取り付けられる連動装置本体と、前記一の引戸に隣接する隣接引戸または隣接壁部に取り付けられるとともに前記板状連結部と係合する受け部材とを備える引戸装置において、前記受け部材は、前記隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と、この基体から突出して前記板状連結部の引戸開閉方向の端面に対し前後方向に延びる線状部分で当接することにより前記板状連結部の引戸開閉各方向の移動を拘束する一対の拘束突部とを備えることを特徴とするものである。
【0035】
この発明によれば、前記受け部材は、前記基体と、前記拘束突部とを備えるので、構造物の開口部の歪みに基づいて引戸を前後方向を軸として傾倒した、或いは傾倒させた場合でも、前記板状連結部が前記拘束突部との関係で前記線状部分を軸に回動することができ、この回動によって前記引戸の傾倒に基づく板状連結部と受け部材との相対的な位置関係の変化を吸収することができる。このため、前記引戸の傾倒に基づく外力を逃がすことができ、引戸の開閉操作を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る引戸連動装置、受け部材および引戸装置によれば、構造物の開口部の歪みに基づき引戸が前後方向を軸として傾倒した場合でも、この傾倒に基づく外力を逃がすことができて引戸の開閉操作を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の引戸連動装置は、上端部がガイドレールに案内支持される吊下式引戸装置について適用したものであるが、非吊下式の引戸等、複数枚の引戸があればその他の引戸装置にも当然に適用することができる。また、本実施形態では、引戸連動装置1が引戸の下端部に配設されているものについて説明するが、引戸の上端部に配設されているものであっても良い。
【0039】
図1は本発明の一実施形態に係る引戸連動装置が設置される引戸装置を示す斜視図であり、
図2は同引戸連動装置を一の引戸に取り付けられた状態で示す縦断面図である。なお、以下、便宜上、各図における+X方向を右方向、+Y方向を後方向、+Z方向を上方向として説明する。
【0040】
この引戸構造は、開口部に隣接する壁部Wの前側に前方開放型の戸袋が設置され、この戸袋から2枚の引戸D1,D2が左方(開口部の幅方向の一方)に引き出されることにより開口部が閉塞されるものである。これらの引戸D1,D2は、全開状態で戸袋において壁部Wと完全に重複する状態に配置されており、全閉状態においても壁部Wを含めて一部が重複する状態で配置されている。
【0041】
またこれらの引戸D1,D2は、それぞれ上端部に左右一対のガイドローラRが設けられている。これらのガイドローラRは、開口部の上部枠に沿って複数箇所で固定されたガイドレール(不図示)に案内支持される。また、これらのガイドローラRには高さ調節機構(不図示)が設けられ、この高さ調節機構を調節することにより引戸D1,D2を傾倒させて締め残しを解消するものとなされている。
【0042】
これらの引戸D1,D2のうち、壁部W側の引戸D2の下端部に、引戸D1,D2の開閉方向(以下単に「開閉方向」という場合には引戸D1,D2の開閉方向をいう)Aに沿った細長い収納溝部D21が設けられ、この収納溝部D21内に、本実施形態の引戸連動装置本体1aが取り付けられている。
【0043】
引戸連動装置1は、引戸D2に取り付けられた引戸連動装置本体1aと、引戸D2に隣接する隣接壁部Wまたは隣接引戸D1(以下「固定対象」と称する場合がある)に取り付けられた壁側受け部材20Aおよび戸側受け部材20Bとを備え、各受け部材20A、20Bと引戸連動装置本体1aとが引戸連動装置本体1aに備えられた連結部材15を介して連結されている。なお、壁側受け部材20Aと戸側受け部材20Bとは本実施形態では同一の構成を有しており、以下、壁側及び戸側のいずれかを特定する必要がない場合には、受け部材20として説明する。
【0044】
図3は、引戸連動装置本体1aを一部破断した状態で示す斜視図である。なお、引戸連動装置本体の具体的構成については、本実施形態のものに限られず、後述するスライダおよび板状連結部を有するものであれば、公知の引戸連動装置本体を用いることもできる。
【0045】
この引戸連動装置本体1aは、開閉方向Aに沿って延びる筐体2と、この筐体2の内部における長手方向両端部に配置された複数のプーリ5と、これらのプーリ5間に周回可能に架け渡された無端状ワイヤ10と、この無端状ワイヤ10に固定された一対のスライダ11と、この各スライダ11に取り付けられた連結部材15とを備え、これらの基本構成がユニット化されている。
【0046】
筐体2は、下方が開口した長尺枠体であり、前記したように引戸D2の収納溝部D21に収納されている。具体的には、
図2に示すように、筐体2は、開閉方向に延びる天壁部2aと、この天壁部2aの前後端縁から下方に垂下する前後側壁部2bと、前後側壁部2bの下端からそれぞれ前後方向内側に突出するとともに先端縁から下方に突出する突条が設けられたフランジ部2cと、前後側壁部2bの左右両端縁に設けられた左右側壁部2d(
図3参照)とを有し、フランジ部2cが後述するスライダ11のガイドレールとしての役目を果たしている。なお、
図3ではフランジ部2cを省略した状態で示している。
【0047】
プーリ5は、無端状ワイヤ10をガイドするガイド体としての役目を果たすものの一例であり、本実施形態ではL字状に折り曲げられた軸部5aを介して筐体2の内部に取り付けられている。このプーリ5は、上下方向を軸に回転可能に構成されているが、スライダ11の所望の動作を実現可能であれば、軸の方向は前後方向であっても良く、その具体的構成が特に限定されるものではない。また、プーリ5の数量、および配置態様についても同様に特に限定されるものではない。
【0048】
これらのプーリ5には、無端状ワイヤ10が周回可能に架け渡されている。この無端状ワイヤ10は、無端状体の一例であり、本実施形態では一本の長尺鋼製ワイヤの両端部が連結されることによって構成されている。なお、無端状体としては、無端状ワイヤのほか、ゴム製、合成樹脂製、化学繊維製の種々の無端状ベルト等が例示される。
【0049】
無端状ワイヤ10には、一対のスライダ11が固定されている。本実施形態において、これらスライダ11は、無端状ワイヤ10によって囲まれる平面領域の中心に対して点対称位置に固定されている。従って、例えば一方のスライダ11が壁部Wに近いワイヤ部分に固定されている場合には、他方のスライダが隣接引戸D1に近いワイヤ部分に固定され、その固定位置は、一方のスライダ11が一方のプーリ5側の周回限度位置に到達したとき、他方のスライダ11が他方のプーリ5側の周回限度位置に到達する位置となっている。これにより一方のスライダ11が開閉方向一方側にある場合には、他方のスライダ11は開閉方向他方側にあり、それぞれ同一の移動量で互いに逆方向に移動する。
【0050】
スライダ11のうち、一方(壁部W側)のスライダ11は、連結部材15を介して壁側受け部材20Aに連結され、他方(引戸D1側)のスライダ11は、同じく連結部材15を介して戸側受け部材20Bに連結されている。一方側及び他方側スライダ11は、同一の構成を有しているので、壁部W側スライダ11について詳細に説明する。
【0051】
図4は
図3に示す引戸連動装置本体1aのスライダ11を示す外観斜視図であり、
図5は
図4に示すスライダの構成を説明するための図(側面図)である。
【0052】
スライダ11は、筐体2に摺接してその移動をガイドするガイド部材110と、このガイド部材110との間で無端状ワイヤ10を挟着するカバー111とを備える。
【0053】
ガイド部材110は、本実施形態では合成樹脂の一体成形品である。このガイド部材110は、その前面上部において左右方向の全長に亘って細長く前方に開口するワイヤ収容溝110aと、このワイヤ収容溝110aを上下に横切るように凹設されてカバー111が嵌合される嵌合凹部110bと、この嵌合凹部110b内であってワイヤ収容溝110aを上下に横切るように左右一対設けられカバー111の後述するワイヤ係合部111aが収容される孔部110cと、後側部の下端部において左右全長に亘って設けられ筐体2のフランジ部2cが挿通されるガイド溝110dと、ガイド溝110dと嵌合凹部110bとの間に設けられ連結部材15の後述する一端取付部15aが下方から挿入される取付孔110eとを備え、筐体2のフランジ部2cに沿ってスライド移動できるように構成されている。
【0054】
ワイヤ収容溝110aの深さは、カバー111との間で無端状ワイヤ10を挟着できる範囲に設定されている。また、嵌合凹部110bはワイヤ収容溝110aよりも浅く形成されている一方、孔部110cはワイヤ収容溝110aよりも深く形成されている。
【0055】
カバー111は、本実施形態では、合成樹脂の一体成形品であり、側面視で逆L字状に構成された本体部111bと、本体部111bのガイド部材110側の側面に突設された左右一対(不図示)のワイヤ係合部111aと備える。このワイヤ係合部111aは、上方に鈎状に屈曲されて無端状ワイヤ10を抱持するように構成されている。
【0056】
カバー111は、そのワイヤ係合部111aに無端状ワイヤ10を抱持させ、このワイヤ係合部111aが前記孔部110cに収容された状態で、ガイド部材110の嵌合凹部110bに取り付けられ、この状態でガイド部材110との間において無端状ワイヤ10が挟持される。
【0057】
なお、スライダ11と無端状ワイヤ10との取付は、両者が相対的に移動しないように取り付けられていれば良く、本実施形態のようにガイド部材110とカバー111との間に無端状ワイヤ10を挟持するものに限らず、例えば無端状ワイヤ10に係合部材を固設して該係合部材とガイド部材とを固定するものや、ワイヤの両端部を、スライダを介して連結するもの、或いはワイヤの両端部を連結する前にスライダの所定の孔に挿通させてこの状態で固定するもの等であってもよい。
【0058】
一方、各連結部材15は、スライダ11と受け部材20とを連結するものであり、少なくとも一部分に引戸D2に沿って上下方向に延びて受け部材20と係合する板状先端部15c(板状連結部の下位概念に相当)を有するものである。本実施形態では、これらの連結部材15は、スライダ11と別体として構成されているが、スライダ11と一体に構成されているものであっても良い。
【0059】
具体的には、本実施形態では、各連結部材15は、
図2及び
図4に示すように、細長矩形状の金属板をU字状に屈曲して構成されている。すなわち、連結部材15は、上下方向に延びてスライダ11に取り付けられる一端取付部15aと、この一端取付部15aに対向して引戸D2に沿って上下方向に延びる板状先端部15cと、一端取付部15a及び板状先端部15cの各下端を繋ぐ中間部15bとを有し、一端取付部15aがスライダ11に取り付けられることにより板状先端部15cがスライダ11に連設されることになる。各板状先端部15cは、前後方向に弾性変形可能であり、それぞれ壁側受け部材20Aまたは戸側受け部材20Bに連結される。
【0060】
図6は、受け部材を一部破断した状態で示す斜視図である。
図7は、後述する受け本体を示す各種図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は背面図を示している。
【0061】
受け部材20は、固定対象W,D1に固定される受け本体21と、この受け本体21を前面側から抱持する挟持カバー22とを備え、本実施形態では左右対称に形成され、連結部材15の板状先端部15cの開閉方向の移動を拘束するものとなされている。
【0062】
受け本体21は、固定対象W,D1に固定される固定部23と、この固定部23に連設され上下方向に延びる対向部24と、固定部23の下端部において前方に突出する左右一対の拘束突部25とを備え、本実施形態ではこれらが合成樹脂の一体成形品として構成されている。なお、本実施形態では、固定部23と対向部24とが受け部材20の基体を構成している。
【0063】
固定部23は、受け部材20を固定対象W,D1に固定するためのものであり、当該固定具としてのねじを挿通する複数の取付孔235,236を有する。
【0064】
本実施形態では、固定部23は、連結部材15の板状先端部15cが重合される略板状の重合部231と、重合部231の上端部に前面が重合部231の前面よりも前方に膨出している膨出部232とを備え、背面の左右両端部における上端から下部にかけて挟持カバー22の後述する係合片223が挿通されるカバー係合溝233が凹設されている。言い換えれば、カバー係合溝233は、膨出部232の背面上端から重合部231の背面下端部を残した下部にかけて、左右一対、帯状に凹ませることによって構成されている。本実施形態では、カバー係合溝233が形成されていない残存部分の上下方向寸法は、拘束突部25の上下方向寸法に一致するように設定されている。
【0065】
重合部231は、前記したように略矩形板状体を呈し、左右両端面が左右方向内側に向かって前方に傾斜する傾斜ガイド面231aとして構成され、連結部材15の板状先端部15cと干渉した場合にでも当該板状先端部15cを前方側に案内するものとなされている。また、重合部231は、その中央部のやや下寄りに前後に貫通する取付孔235が設けられている。この取付孔235は、前記したように、固定対象W,D1に固定するためのねじが挿通される。
【0066】
膨出部232は、平面視略矩形状のブロック体を呈し、その上下方向中央部やや上寄りの左右対称位置に前記した取付孔236が前後に貫通した状態で設けられている。この膨出部232の左右両端部には、上端から上下方向中間部にわたって細幅切れ込み状の逃げ溝232aが設けられ、この逃げ溝232aの左右方向における外側部分232bが同方向内側に弾性変形可能に構成されている。この逃げ溝232aの外側部分232bにおける外側面には、それぞれ左右方向外側に向かって突出するクリック突部232cが設けられている。このクリック突部232cは、本実施形態では略直方体状を呈し、挟持カバー22の後述する係合孔222aに係脱することによって挟持カバー22を着脱可能に係止するものとなされている。また、このクリック突部232cは、係合孔222aとの係脱によってクリック感を得られるものとなされており、受け本体21の適正位置に挟持カバー22を装着可能となされている。なお、クリック突部232cの形状について、特に限定するものではなく、例えば係合孔222aとの係脱作業性を高めるために、前後方向に軸心を有する半円筒状や半球状等に構成しても良い。
【0067】
一方、対向部24は、固定部23における膨出部232の前端縁から下方に延設された略矩形板状体であり、下端の上下方向高さ位置が固定部23の重合部231における下端の高さ位置に対応するように構成されている。その結果、対向部24は、固定部23の重合部231と前後に対向する位置に配設され、固定部23とともに側面視略U字状を呈している。
【0068】
本実施形態では、この対向部24の前面は、膨出部232の前面と面一になるように設定されている。一方、対向部24の後面(重合部231との対向面)における左右方向中央部には、左右方向内側に向かって後方に膨出する膨出ガイド部24aが設けられ、連結部材15の板状先端部15cを重合部231側に案内するようになされ、併せて板状先端部15cが重合部231に重ね合わされた状態では当該板状先端部15cが重合部231から離反する方向への移動を抑制するものとなされている。膨出ガイド部24aの前後方向の膨出高さは、拘束突部25の突出先端面の位置に応じて適宜設定され、本実施形態では、膨出ガイド部24aの後方先端面(膨出先端面)が拘束突部25の突出先端面と略同じ高さ位置になるように設定されている(
図7(d)参照)。
【0069】
また、対向部24は、左右両端面が後方に向かって左右方向内側に傾斜する傾斜ガイド面24bとして構成され、連結部材15の板状先端部15cと干渉した場合でも当該板状先端部15cを後方側に移動させるように構成されている。さらに、対向部24は、正面視中心部やや下寄りであって、重合部231の取付孔235に対向する位置に、当該取付孔235にアクセスするためのアクセス孔24cが貫通状態に設けられている。
【0070】
拘束突部25は、
図6及び
図7(e)に示すように、固定部23、より詳しくは重合部231の下端部における左右両端部に前方(対向部24側)に突出して一対設けられている。
【0071】
この拘束突部25は、左右方向内側の各側端面が曲面状に構成されている。具体的には、拘束突部25は、正面視略半長円形状を呈し、左右方向内側の各側端面が前後方向に軸心Cを有する半円筒状面25aとして構成されている。このため、この拘束突部25の内側端面は、連結部材15の板状先端部15cの開閉方向の側端面に対し、線接触、詳しくは前後方向に延びる線状部分25b(
図7(d)参照)で当接することになる。
【0072】
また、拘束突部25の突出量は、連結部材15の板状先端部15cの厚みを考慮して適宜設定され、好ましくは板状先端部15cの厚みと同等ないしは大きく設定される。本実施形態では、板状先端部15cの厚みと同等となるように設定されている。この各拘束突部25の左右方向(開閉方向)外側の端面は、左右方向内側に向かって前方(拘束突部25の突出方向)に傾斜する傾斜ガイド面25cとして構成されている。連結部材15の板状先端部15cは、この傾斜ガイド面25cに沿って前方に撓み、一対の拘束突部25間に案内される。本実施形態では、この拘束突部25の傾斜ガイド面25cは、重合部231の傾斜ガイド面231aと傾斜角度を一致させた状態で面一となるように設定されているが、各傾斜ガイド面25c、231aの傾斜角度は各面で変更するものであっても良いし、各ガイド面25c、231aにおいて一定である必要もない。
【0073】
次に、挟持カバー22について説明する。
図8は、挟持カバーを示す各種図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は底面図を示している。
【0074】
挟持カバー22は、受け本体21の固定部23および対向部24の双方を前後から挟み込む。これにより、挟持カバー22は、固定部23に対して対向部24が離反方向(前方)に移動するのを抑制する役割を果たし、ひいては、拘束突部25と連結部材15の板状先端部15cとの係合状態が解除するのを効果的に防止するものとなされている。
【0075】
具体的には、挟持カバー22は、対向部24の前面側に配置された略矩形状の主壁部221と、この主壁部221の左右方向両側縁から後方(固定対象側)に向かって延びる一対の側壁部222と、側壁部222の先端(後端)から左右方向内側に向かって延びる係合片223と、主壁部221の上端縁から後方に向かって延びるフラップ部224とを備え、受け本体21をその前面側から抱持するものとなされている。本実施形態では、挟持カバー22は、前記役割を果たすことができる程度の剛性を有する金属板を屈曲することにより形成されている。
【0076】
主壁部221は、受け本体21の前面よりも大きく設定された正面視略矩形状を呈し、受け本体21の対向部24に重ね合わされるように配置される。この主壁部221は、受け本体21に取り付けられた状態で、固定部23の各取付孔235,236に対応する箇所に、各取付孔235,236にアクセスするためのカバー用アクセス孔221a、221bが貫設されている。なお、本実施形態では、重合部231の一対の取付孔236に対応するカバー用アクセス孔221bは、各取付孔236に対応して個別に設けられるものであっても良いが、本実施形態では左右方向に延びる長円形として、左右一対の取付孔236に対して一体に設けられている。
【0077】
側壁部222は、フラップ部224との間を所定長さ離間させた状態で主壁部221の下端まで延び、受け本体21の側面に沿って配設されている。フラップ部224との離間長さは、その隙間にドライバなどの工具が差し込めるように適宜設定され、この隙間222cを通じて工具を差込み、受け本体21から挟持カバー22を取り外し操作できるように構成されている。
【0078】
本実施形態では、側壁部222は、受け本体21の左右側面の上下方向略全域に亘って配設され、これにより挟持カバー22が受け本体21に取り付けられた状態では、側壁部222が上下方向の高さ位置について、連結部材15の板状先端部15cの高さ位置と一部において重なるように設定されている。
【0079】
この側壁部222には、挟持カバー22を受け本体21に取り付けた状態、すなわち主壁部221の下端が受け本体21の下端に一致した取付け状態で、固定部23のクリック突部232cが係合する係合孔222aが貫設されている。また、側壁部222には、その下端から所定高さ位置に、固定部23のクリック突部232cが係合する第2係合孔222bが貫設されている。この所定高さは、固定部23のクリック突部232cから膨出部232の下端に至るまでの長さを基準に設定され、当該基準長さよりも低く設定される。本実施形態では、この所定高さが前記基準長さと略一致するように設定される。
【0080】
このように設定することにより、第2係合孔222bに固定部23のクリック突部232cが係合している状態で、対向部24と固定部23の重合部231との間の隙間が左右方向に開放され(
図10(b)参照)、後述するように受け本体21に対して、連結部材15の板状先端部15cを係合連結させることができる。このため、挟持カバー22を受け本体21に対してわざわざ完全に取り外さなくても、前記連結作業を行うことができ、作業性を向上させることができるという利点がある。
【0081】
係合片223は、受け本体21の背面に沿って配設された所定幅のフラップ片として構成されている。本実施形態では、この係合片223は、受け本体21に対する挟持カバー22の取付状態で、側壁部222の上端から、受け本体21の拘束突部25の上端に対応する位置にまで延設されている。このように、係合片223が側壁部222の下端に至るまで延設されていないのは、カバー係合溝233が拘束突部25の裏側にまで延びて拘束突部25の剛性の低下を抑制するためである。
【0082】
フラップ部224は、前記したように、挟持カバー22を受け本体21から取り外すために設けられたものであり、工具等を引っ掛けることができるようにその幅、剛性等が適宜設定されている。このため、フラップ部224は、挟持カバー22の装着状態において、受け本体21の頂面から離隔した位置に配置される。本実施形態では、フラップ部224の幅は、受け本体21の厚みに対応するように設定されている。
【0083】
前記のように構成された引戸連動装置1の取付について、
図1および
図2に基づき説明した上で、連動装置本体1aと受け部材20との連結について、
図9ないし
図12を用いて説明する。
図9は、受け本体21を固定対象W,D1に取り付けた状態で示す側面図である。
図10は、受け本体21に挟持カバー22を取り付ける状態を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。また、
図11は受け本体21に連結部材15の板状先端部15cの取付過程を示す説明図であり、
図12は受け本体21と連結部材15の板状先端部15cとの連結状態を対向部を省略した状態で示す正面図である。
【0084】
まず、
図1及び
図2に示すように、引戸連動装置本体1aを引戸D1の収納溝部D21内に収納固定する。具体的には、連動装置本体1aを、一対の連結部材15の板状先端部15cがそれぞれ引戸D1の前後表面に沿う態様で、収納溝部D21内にねじなどの固定具(不図示)で固定する。
【0085】
次に、受け部材20の受け本体21を固定対象W,D2に取り付ける。具体的には、
図1に示すように、引戸D1,D2が全閉状態において、引戸D1と重なる隣接壁部Wの対向面における下端部であって、連結部材15の板状先端部15cが受け部材20の重合部231と重なるような高さ位置に、壁側受け部材20Aの受け本体21を固定する。また、引戸D1,D2が全閉状態において、引戸D1と重なる引戸D2の対向面における下端部であって、壁側受け部材20Aと同様の高さ位置に、戸側受け部材20Bの受け本体21を固定する。各受け本体21の取付は、
図9に示すように、固定部23を固定対象W,D1に重合し、各取付孔235,236を通じてねじなどの固定具で固定する。
【0086】
続いて、受け本体21に挟持カバー22を仮装着する。すなわち、挟持カバー22を受け本体21に対し、その上方から差し込む。この差し込みにあたっては、挟持カバー22の係合片223を、受け本体21のカバー係合溝233に上方からスライド挿入させる。そして、受け本体21のクリック突部232cを挟持カバー22の第2係合孔222bに嵌合させて、挟持カバー22を受け本体21に仮装着する。
【0087】
次に、引戸連動装置本体1aと各受け部材20とを、連結部材15を介して連結する。すなわち、各連結部材15と各受け本体21とをそれぞれ連結する。
【0088】
具体的には、例えば壁側受け部材20Aの受け本体21に対して、連結部材15の板状先端部15cを連結する場合、隣接壁部Wに対して引戸D1を開閉方向にスライドさせる。このスライドにより、板状先端部15cは、受け本体21に対して相対的に近接する方向に移動し(
図11(a)白抜き矢印)、板状先端部15cのスライド先端面が受け本体21の重合部231または拘束突部25の傾斜ガイド面231a、25cに当接する(
図11(b))。なお、いずれの傾斜ガイド面231a、25cに当接するかは、引戸D1,D2、隣接壁部Wの相互間の前後方向隙間寸法等により変化する。また、この前後方向隙間寸法によっては、板状先端部15cが受け本体21の対向部24における傾斜ガイド面24bに当接する場合もある。
【0089】
この状態から、さらに引戸D1を相対的にスライドさせると、板状先端部15cは、これらの傾斜ガイド面231a、25cに沿って前方(引戸D1側)に弾性変形し、この弾性変形に伴い、受け本体21の対向部24に当接する。その後、板状先端部15cは、拘束突部25の前面、対向部24の膨出ガイド部24aに摺接しながらスライドする。対向部24は、板状先端部15cの前記摺接に伴い、重合部231に対して離反する方向(本実施形態では前方)に弾性変形する(
図11(c)、(d))。
【0090】
そして、板状先端部15c及び対向部24は、板状先端部15cのスライド後端縁が拘束突部25を通過した時点で、弾性回復する。その結果、板状先端部15cは、左右方向について拘束突部25間に配置され、その開閉方向(左右方向)の端面に対して拘束突部25が線状部分25bで当接することにより、その引戸開閉各方向の移動が拘束される(
図12)。また、この状態で、対向部24は固定部23の重合部231に対して板状先端部15cを挟んだ対向位置に配置され、当該板状先端部15cは重合部231、対向部24および拘束突部25によって略抱持される。また、対向部24の膨出ガイド部24aは、その前後方向先端面(後面)が板状先端部15cに当接ないしは近接した位置に配置され、板状先端部15cの前後方向の移動を抑制するものとなされている。
【0091】
このように、拘束突部25は引戸開閉方向外側の各面が引戸開閉方向内側に向かってこの拘束突部の突出方向側に傾斜する傾斜ガイド面25cとして構成されているので、板状先端部15cと受け部材20とを相対的にスライドさせることにより、板状先端部15cが傾斜ガイド面25cに沿って拘束突部25を乗り越えることができるため、板状先端部15cと拘束突部25との高さ位置を揃えて相対的にスライドさせるだけで、簡単に板状先端部15cと受け部材20とを連結させることができる。
【0092】
受け本体21に連結部材15を連結した後、受け本体21に仮装着状態の挟持カバー22を受け本体21に装着する。すなわち、挟持カバー22は、前記したように、その第2係合孔222bに受け本体21のクリック突部232cが係合された仮装着状態にある(
図10参照)。この仮装着状態から挟持カバー22を下方に押し込むことにより、第2係合孔222bとクリック突部232cとの係合状態が解除され、続いて挟持カバー22の係合孔222aにクリック突部232cが係合され、挟持カバー22が受け本体21に対して装着される。
【0093】
なお、戸側受け部材20Bについても、壁側受け部材20Aと同様に、引戸D1に取り付けられることは言うまでもない。
【0094】
この状態では、固定部23の重合部231と対向部24とがその引戸開閉方向の両側において挟持カバー22によって前後から挟まれ、重合部231と対向部24との前後離反方向への移動が効果的かつ確実に規制される。このため、固定部23の重合部231と対向部24とが離反して、不測に板状先端部15cの拘束状態が解除されることを効果的かつ確実に抑制することができる。しかも、挟持カバー22は主壁部221と一対の側壁部222と一対の係合片223とを備えて構成されるので、挟持カバー22を簡易に製作することができる。加えて、挟持カバー22の各側壁部222は、上下方向の高さ位置について板状先端部15cと一部において重なる位置に配設されるので、仮に衝撃等に基づき不測に固定部23の重合部231と対向部24とが離反方向に移動して拘束突部25による板状連結部の拘束が解除されたとしても、各側壁部222が障壁となって板状先端部15cと受け部材(特に受け本体21)との係合解除を確実に阻止することができる。
【0095】
このように取り付けられた引戸連動装置1においては、例えば建物の開口部の歪に基づき、引戸D2が前後方向を軸として隣接引戸D1や隣接壁部Wに対して相対的に傾倒し、これに伴って連結部材15の板状先端部15cが受け本体21に対して前後方向を軸として傾倒した場合でも(
図12の二点鎖線)、板状先端部15cが拘束突部25の線状部分25bを軸に回動することができ、この回動によって引戸D1の傾倒に基づく板状先端部15cと受け本体21との相対的な位置関係の変化を吸収することができる(
図12参照)。このため、引戸D1の前記傾倒に基づく外力を逃がすことができ、引戸D1、ひいては引戸D2の開閉操作をスムーズに行うことができる。
【0096】
しかも、拘束突部25の板状先端部15c側の各側端面が前後方向に軸心を有する円弧状面として構成されているので、引戸D1の傾倒に伴い板状先端部15cが回動等した場合であっても、拘束突部25の円弧状面によって拘束突部25と板状先端部15cとが線状部分25bで安定して当接させることができ、これにより円滑な引戸D1,D2の開閉操作を行うことができる。
【0097】
また、固定部23の重合部231と対向部24と拘束突部25とで、板状先端部15cを前後左右方向から略抱持することができるので、この板状先端部15cが受け部材20に対し不測に離脱することを効果的に防止することができる。加えて、固定部23の重合部231が板状先端部15cと重なり合うので、引戸D2の開閉操作に伴い板状先端部15cが引戸D2や壁部Wに接触して傷を付けることもない。また、拘束突部25は、固定部23の重合部231から対向部24側に突出して形成されているので、この拘束突部25を簡単に構成することができるとともに、固定部23の重合部231と対向部24との隙間(拘束突部25の上方空間)が板状先端部15cの回動許容空間201として構成でき(
図12参照)、当該空間を簡易に設置することができる。
【0098】
なお、以上に説明した引戸連動装置1は、本発明の引戸連動装置の一実施形態であり、その具体的構成等については適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例を説明する。
【0099】
(1)前記実施形態では、受け部材20は、受け本体21と、挟持カバー22とを備えて構成されているが、受け部材の基本構成についてもこれに限定するものではなく、また受け本体は隣接引戸または隣接壁部に取り付けられる基体と拘束突部とを備えていればその具体的構成は特に限定するものではない。
【0100】
図13は第2実施形態に係る受け本体を示し、
図14は
図13(a)のXIV−XIV線断面図である。
図15は第2実施形態に係る受け本体に取り付けられるカバー部材を示し、
図16はこの第2実施形態に係る受け部材を示している。以下、この第2実施形態について、前記実施形態と異なる点を中心に説明するが、その他の構成については前記実施形態と同様である。
【0101】
この第2実施形態における受け部材320は、連結部材15の板状先端部15cと係合する受け本体321と、この受け本体321に装着される固定カバー322とを備える。
【0102】
この受け本体321は、前記実施形態の受け本体21に比べ、対向部24を省略するとともに固定部の具体的構成を変更し、加えて拘束突部の突出方向を前後方向から左右方向に変更している点で大きく異なる。また、前記実施形態では、受け本体21と板状先端部15cとが引戸D1,D2をスライドさせることにより連結されるように構成されていたが、この第2実施形態の受け本体321は、板状先端部15cの上方から受け本体321を差し込むことにより連結されるように構成されている点でも異なる。
【0103】
具体的には、受け本体321は、固定カバー322を介して隣接引戸D1または隣接壁部Wに固定される固定部333と、この固定部333の下端部に引戸開閉方向内側に向かって突設された拘束突部335とを備えて構成されている。
【0104】
固定部333は、前記実施形態と異なり、正面視門状に構成されている。すなわち、固定部333は、横長矩形状の固定本体部333aと、この固定本体部333aの左右両端部からそれぞれ下方に垂下する一対の固定脚部333bとを備え、これらの固定脚部333b間に板状先端部15cが配置されるように構成されている。この固定部333の板厚は、板状先端部15cの厚みに対応して設定される。本第2実施形態では、固定部333の板厚は、板状先端部15cの厚みと略同等に設定されている。
【0105】
また、固定本体部333aは、固定カバー322に対して位置決めするために前方に向かって突設された左右一対の第1位置決め突部333cと、これらの第1位置決め突部333cの間に前方に向かって突設されたカバー用係止部333dとを備える。カバー用係止部333dは、固定カバー322を着脱自在に取り付けるためのものであり、
図14に示すように、上下一対の係止フック部333eを含む。この係止フック部333eは、先端爪部がそれぞれ上下方向外側に突出するフック状に構成され、上下方向に弾性変形可能に構成されている。
【0106】
各固定脚部333bは、上下方向中央部のやや下寄りに、前方に向かって突設された第2位置決め突部333fを有する。この第2位置決め突部333fは、第1位置決め突部333c及びカバー用係止部333dとともに、固定カバー322の上下左右の位置決めを行うものであり、略直方体状形状を呈し、角部が面取りされ、固定カバー322と係合し易くなっている。また、各固定脚部333bの下端面は、左右方向内側に向かって上方に傾斜する傾斜ガイド面333gとして構成されている。すなわち、本実施形態の受け部材320は板状先端部15cの上方から差し込まれるものであるため、この傾斜ガイド面333gは、板状先端部15cを固定脚部333b間に導くためのガイドとして機能する。
【0107】
一方、拘束突部335は、固定部333における固定脚部333bの下端部内側において、それぞれ左右方向(引戸開閉方向)内側に向かって突出している。この拘束突部335は、正面視略半円形状を呈し、左右方向内側の各側端面が前後方向に軸心を有する半円筒状面として構成されている。各拘束突部335の左右方向突出量は、連結部材15の板状先端部15cにおける前後方向を軸とした回動量を想定して適宜設定される。本実施形態では、拘束突部335の突出量は、固定脚部333bの左右幅に対して、若干小さく設定されている。また、拘束突部335の下端面は、固定脚部333bの傾斜ガイド面333gに連続するように構成されており、板状先端部15cのガイド機能を強化している。
【0108】
この受け本体321においては、連結部材15の板状先端部15cが各固定脚部333b及び拘束突部335の間に配設される。
【0109】
この受け本体321によれば、前記実施形態と同様に、拘束突部335における前後方向に延びる線状部分335bにおいて板状先端部15cと当接することにより、板状先端部15cの引戸開閉各方向の移動を拘束することができる。また、この第2実施形態に係る受け本体321によれば、前記実施形態の受け本体21と比べて、前後方向に薄く形成することができ、隣接引戸や隣接壁部との隙間が狭いような引戸構造に好適に用いることができる。
【0110】
一方、この第2実施形態に係る受け本体321は、上記のように、正面視門状に構成されているため、その強度向上のため、前記実施形態の挟持カバー22に代えて、受け本体21を前面側から覆った状態で隣接引戸D1または隣接壁部Wに固定される固定カバー322(カバー部材の下位概念に相当)が装着される。
【0111】
固定カバー322は、受け本体321の前面全体に重ね合わされるカバー主壁部322aと、このカバー主壁部322aの引戸開閉方向両側から隣接引戸D1または隣接壁部W側に向かって延びる一対のカバー側壁部322bと、各カバー側壁部322bの先端部から引戸開閉方向の外側に向かって延び隣接引戸D1または隣接壁部Wに固定する固定フランジ部322cとを備え、本第2実施形態では金属板を屈曲することによって構成されている。
【0112】
カバー主壁部322aは、受け本体321に装着した状態で、受け本体321の第1位置決め突部333c、カバー用係止部333dおよび第2位置決め突部333fに対応する位置に、それぞれ、左右一対の第1位置決め嵌合孔322d、カバー係止孔322eおよび左右一対の第2位置決め嵌合孔322fを有する。
【0113】
第1位置決め嵌合孔322dは、受け本体321の第1位置決め突部333cに嵌合されるものであり、本第2実施形態では左右一対設けられ、第1位置決め突部333cに対応して平面視略円形に構成されている。カバー係止孔322eは、一対の第1位置決め嵌合孔322dの間に設けられている。このカバー係止孔322eは、固定本体部333aのカバー用係止部333dが挿通され、周縁部にこの係止部333dの係止フック部333eが係止されるものである。本第2実施形態では、このカバー係止孔322eは、正面視略矩形状を呈し、前面側の上下両縁部が、前面に向かうに従い上下方向外側に傾斜する傾斜面322gとして構成され、この傾斜面322gに係止フック部333eの先端爪部が係止されるものとされている。第2位置決め嵌合孔322fは、第2位置決め突部333fの正面視形状に適合する形状を呈し、本第2実施形態では略矩形状を呈する。この位置決め嵌合孔322fは、本第2実施形態では貫通した状態に設けられているが、裏面側(後面側)に開口する凹部として構成されるものであっても良い。
【0114】
カバー主壁部322aには、各位置決め嵌合孔322fの間における背面側に後方に膨出する押圧突部322hが含まれる。この押圧突部322hは、固定脚部333b間に配置された板状先端部15cを前方側から押圧するものであり、これにより板状先端部15cの前後方向のガタツキを抑制するものとなされている。本第2実施形態では、押圧突部322hは、球体の一部である球欠形状に構成されている。
【0115】
カバー側壁部322bは、固定部333の側面に沿って延び、固定部333の厚みおよび固定カバー322の板厚等を考慮して適宜設定される。
【0116】
一方、固定フランジ部322cは、隣接引戸D1または隣接壁部Wに重ね合わされ、ねじなどの固定具でこれらの固定対象D1,Wに取付固定される左右一対の板状体である。このため、各固定フランジ部322cには、ねじなどの固定具が差し込まれるフランジ取付孔322i,jが貫設され、本第2実施形態では、左右一対のフランジ取付孔322i,jが上下に一対設けられている。特に本第2実施形態では、各対角線上に配置された取付孔の形状を異にしており、一の対角線上に配置されたフランジ取付孔322iは長円形状を呈し、他の対角線上に配置されたフランジ取付孔322jは円形状を呈している。すなわち、一対の固定フランジ部322cは、長円形状のフランジ取付孔322jにねじなどの固定具を差し込み、仮止め状態で左右位置合わせした上で、円形状のフランジ取付孔322iを含めて、本止め可能に構成されている。
【0117】
前記のように構成された受け本体321と固定カバー322とは、まず両者を組み付けて受け部材320を構成し、その後、固定対象D1,Wに取り付けられる。
【0118】
すなわち、固定カバー322を受け本体321の前面側から組み付ける。
【0119】
具体的には、固定カバー322のカバー係止孔322e及び第1、第2位置決め嵌合孔322d,fを、受け本体321のカバー用係止部333d及び第1、第2位置決め突部333c,fの位置に合わせる。そして、固定カバー322を受け本体321側に移動させると、カバー用係止部333dの係止フック部333eの先端爪部がカバー係止孔322eの周縁部に当接する。この状態で固定カバー322を受け本体321側に押し込むと、係止フック部333eがそれぞれ上下方向内側に弾性変形し、係止フック部333eの先端爪部がカバー係止孔322eの傾斜面322gに達すると、係止フック部333eが弾性回復して、カバー係止孔322eの周縁部に係止される。また、カバー用係止部333dのカバー係止孔322eに対する挿入と同時に、受け本体321の第1及び第2位置決め突部333c,fが、固定カバー322の第1及び第2位置決め嵌合孔322d,fに挿入される。
【0120】
このようにして組み付けられた受け部材320においては、
図16(a),(b)に示すように、受け本体321の前面側を覆うように、固定カバー322が取り付けられ、この固定カバー322を介して固定対象D1,Wに取り付けられる。なお、この取付状態においては、受け本体321の固定脚部333bの間が下方に開口した状態になる。
【0121】
具体的には、
図1に示すように、引戸D1,D2が全閉状態において、引戸D1と重なる隣接壁部Wの対向面における下端部であって、連結部材15の板状先端部15cが受け部材20の重合部231と重なるような高さ位置に、受け部材320を固定する。各受け部材320の取付は、受け部材320の後面を固定対象D1,Wに重ね合わせ、まず固定フランジ部322cの長円形のフランジ取付孔322iにねじなどの固定具を挿通して固定対象D1,Wに仮止めする。なお、固定具の代表例としてねじをとって説明する。
【0122】
この仮止め状態で受け部材320の左右位置の微調整を行った上で、前記ねじを締め付けるとともに、円形のフランジ取付孔322jにもねじを挿通し、このねじで固定対象D1,Wに取り付け、これにより、受け部材320を固定対象D1,Wに取り付ける。
【0123】
この受け部材320と連結部材15の板状先端部15cとの連結は、引戸D1ごと受け部材320を持ち上げ、受け本体321の固定脚部333bの左右方向の隙間に板状先端部15cを差し込むことにより行う。
【0124】
この第2実施形態における引戸連動装置においても、前記実施形態と同様に、構造物の開口部の歪みに基づき引戸D1,D2が前後方向を軸として傾倒した場合でも、この傾倒に基づく外力を逃がすことができて引戸D1,D2の開閉操作を円滑に行うことができる。
【0125】
(2)前記第2実施形態における受け部材320の他、受け部材や受け本体について次のように構成することもできる。
【0126】
具体的には、
図17に示すように、受け本体121は、隣接引戸D1または隣接壁部Wに固定される固定部123と、この固定部123の下端部に突設された拘束突部125とを備える。この固定部123は、固定対象W,D1の表面に沿って配設され、連結部材15の板状先端部15cと重ね合わされる板状体から構成され、図示省略の取付孔を通じて固定対象W,D1に固定される。拘束突部125は、固定部123の下端部における左右両縁部からそれぞれ前方に突出し、引戸開閉方向外側の端面が、前記実施形態と同様に、前方に向かって左右方向内側に傾斜する傾斜ガイド面125aとして構成されている。この受け本体121は、前記実施形態と同様に、拘束突部125の線状部分125bにおいて板状先端部15cと当接することにより、板状先端部15cの引戸開閉各方向の移動を拘束することができる。また、受け本体121は、前記実施形態に比べ受け本体121が単純に構成されているので、より簡易に製作することができる。なお、この受け本体121に、前記実施形態における挟持カバーと同一の構成を有するカバーを装着するようにしても良い。
【0127】
また、さらに別の実施形態では、
図18に示すように、第2実施形態と同様、固定部133が正面視門状に構成されるとともに、拘束突部135の突出方向が引戸開閉方向内側に突出させている。
【0128】
すなわち、受け本体131は、隣接引戸D1または隣接壁部Wに固定される固定部133と、この固定部133の下端部に引戸開閉方向内側に向かって突設された拘束突部135とを備えて構成されている。固定部133は、図示省略の取付孔を有する横長矩形状の固定本体部133aと、この固定本体部133aの左右両端部からそれぞれ下方に垂下する固定脚部133bとを備え、正面視略門状に構成されている。固定脚部133bは、その引戸開閉方向外側の側面が、前方に向かって左右方向内側に傾斜する傾斜ガイド面133cとして構成されている。拘束突部135は、固定部133の固定脚部133bの下端部内側において、それぞれ左右方向(引戸開閉方向)内側に向かって突出している。この拘束突部135は、正面視略半長円形に構成されている。また、拘束突部135の左右方向の突出量は、連結部材15の板状先端部15cにおける前後方向を軸とした回動量を想定して適宜設定される。
【0129】
この受け本体131においては、連結部材15の板状先端部15cが各固定脚部133b及び拘束突部135の間に配設される。
【0130】
この受け本体131によれば、拘束突部135の線状部分135bにおいて板状先端部15cと当接することにより、板状先端部15cの引戸開閉各方向の移動を拘束することができる。また、受け本体131によれば、前記各実施形態の受け本体21,121と比べて、前後方向に薄く形成することができ、隣接引戸や隣接壁部との隙間が狭いような引戸構造に好適に用いることができる。
【0131】
また、引戸D1を操作することで、受け本体131と板状先端部15cとを連結することができ、第2実施形態の受け部材320に比べ、簡易に装着することができる。
【0132】
(3)前記実施形態では、拘束突部25について、正面視略半長円形状を呈しているが、左右方向内側の側面と連結部材15の板状先端部15cにおける左右方向外側の側面とが前後方向に延びる線状部分で当接するものであれば、その具体的な形状、特に外縁形状については特に限定するものではない。
【0133】
例えば、
図19に示すように拘束突部145が正面視略半楕円型状に構成されるものであっても良いし、また、
図20に示すように拘束突部155が正面視略三角形状に構成されるものであっても良いし、さらに拘束突部を正面視略多角形状等に設定し、左右方向内側に当該多角形状の頂点が配置されるように構成し、或いは正面視弓状等に構成しても良い。これらの拘束突部145,155によっても、板状先端部15cの左右両端面に線状部分145b、155bで当接させることができる。
【0134】
ただし、
図16〜
図19に示すように、拘束突部が板状連結部側の各側端面が前後方向に軸心を有する円弧状面として構成されると、引戸傾倒に伴い板状先端部15cが回動等した場合であっても、拘束突部の円弧状面によって該拘束突部と板状先端部とが線状部分で安定して当接させることができ、これにより拘束突部の欠損を抑制することができ、しかも円滑な引戸の開閉操作を行うことができるという点で有利である。
【0135】
(4)前記実施形態では、挟持カバー22は、主壁部221と一対の側壁部222と一対の係合片223とフラップ部224とを備えているが、挟持カバーは固定部と対向部とを前後方向から挟持できるものであれば、その具体的構成は特に限定されない。
【0136】
従って、例えば、
図21に示すように、挟持カバー52は、上下方向高さが受け本体21の高さよりも低く設定された前壁部521と、この前壁部521に対向して設けられた後壁部522と、これらの前壁部521及び後壁部522を連結する側壁部523とを備え、側壁部523が連結部材15の板状先端部15cの高さ位置に少なくとも一部に重複するように受け本体21に装着される。
【0137】
なお、この場合、受け本体21には、カバー係合溝233に代えて、挟持カバー52の後壁部522が差し込まれるカバー係合溝があらたに形成される。
【0138】
この場合、カバー係合溝は溝状に構成されなくても、孔状に構成されるものであっても良い。
【0139】
また、
図21に示す挟持カバー52は、受け本体21の側方から差し込むように構成されているが、同一の構成で受け本体21の上方から差し込むように構成するものであっても良い。このように構成しても、挟持カバー52によって、固定部23と対向部24との離反を効果的に抑制することができる。
【0140】
(5)前記実施形態では、板状連結部について、連結部材15の板状先端部15cとして構成されているが、先端部が受け本体から上方に突出して中間部において連結されるものであっても良い。また、前記実施形態では、連結部材15の板状先端部15cが正面視略矩形状に形成されているが、板状連結部は板状であれば、正面視略樽状、略台形状等、前記動作を阻害しない形状であれば、その具体的構成を特に限定するものではない。
【0141】
(6)前記実施形態では、拘束突部25は、固定部23の下端部において前方に突出するものとなされているが、対向部24の下端部において後方に突出するものとしても良い。ただし、拘束突部25の剛性を担保する上では、拘束突部25は前記実施形態のように固定部23から突出するものとなされるのが好ましい。