(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、前記筒部内部に形成され、前記流入口から前記流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールを補修するための補修部材であって、
環状に形成され、中央に第1孔部を有し、前記筒部の内径よりも小さな外径を有し、前記インバート流路の上に前記第1孔部が位置するように前記筒部に挿入される第1環状部材と、
第2孔部を有する筒体と、前記筒体の外周面の周囲に沿って配置され、前記筒体から径方向の外方に突出し、前記筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、前記シール部材の隣にて前記筒体から径方向の外方に突出し、突出長さが前記シール部材の突出長さよりも短く、前記シール部材が前記筒体の軸方向に撓むときに前記シール部材を支える支持部材と、を有し、前記第2孔部が前記第1孔部の上に位置するように前記第1環状部材上に配置される立管と、
前記筒部の内周面と前記立管とにより仕切られた空間に充填された充填材と、
前記筒体の上方の開口を覆う蓋と、を備えた、筒部の補修部材。
環状に形成され、前記立管の筒体が挿入される第3孔部を中央に有し、前記筒部の内径よりも小さな外径を有し、前記第3孔部に前記立管の筒体が挿入された状態で前記立管の前記支持部材上に積み重ねられる1または複数の第2環状部材をさらに備えた、請求項1に記載の筒部の補修部材。
上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、前記筒部内部に形成され、前記流入口から前記流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールと、前記ますまたは前記マンホールを補修するための補修部材と、を備えた地下排水施設であって、
前記補修部材は、
環状に形成され、中央に第1孔部を有し、前記筒部の内径よりも小さな外径を有し、前記インバート流路の上に前記第1孔部が位置するように前記筒部に挿入される第1環状部材と、
第2孔部を有する筒体と、前記筒体の外周面の周囲に沿って配置され、前記筒体から径方向の外方に突出し、前記筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、前記シール部材の隣にて前記筒体から径方向の外方に突出し、突出長さが前記シール部材の突出長さよりも短く、前記シール部材が前記筒体の軸方向に撓むときに前記シール部材を支える支持部材と、を有し、前記第2孔部が前記第1孔部の上に位置するように前記第1環状部材上に配置される立管と、
前記筒部の内周面と前記立管とにより仕切られた空間に充填された充填材と、
前記筒体の上方の開口を覆う蓋と、を備えた、地下排水施設。
上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、前記筒部内部に形成され、前記流入口から前記流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールを補修するための補修方法であって、
環状に形成され、中央に第1孔部を有し、前記筒部の内径よりも小さな外径を有する第1環状部材を、前記インバート流路の上に前記第1孔部が位置するように前記筒部に挿入する工程と、
第2孔部を有する筒体と、前記筒体の外周面の周囲に沿って配置され、前記筒体から径方向の外方に突出し、前記筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、前記シール部材の隣にて前記筒体から径方向の外方に突出し、突出長さが前記シール部材の突出長さよりも短く、前記シール部材が前記筒体の軸方向に撓むときに前記シール部材を支える支持部材と、を有する立管を、前記第2孔部が前記第1孔部の上に位置するように前記第1環状部材上に配置する工程と、
前記筒体の上方の開口を覆うように蓋を配置する工程と、
前記筒部の内周面と前記立管とにより仕切られた空間に充填材を充填する工程と、を備える、筒部の補修方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、老朽化した保護鉄蓋およびコンクリートますの上部材の補修方法に言及しているに留まり、コンクリートますの補修部分の位置に制限がある。すなわち、特許文献1は、コンクリートますの保護鉄蓋および上部材以外の部分、つまりコンクリートますの筒部に破損が生じた場合にこの破損箇所を補修し得る技術を提案するものではない。また、特許文献2の技術では、作業者がます内に入ってアンカーボルトを打ち込むため、困難な作業が必要となる。そのため、容易に補修できる補修部材の開発が望まれていた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、筒部の劣化箇所または破損箇所によらずに当該筒部を容易に補修することが可能な筒部の補修部材、それを備えた地下排水施設、および筒部の補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る筒部の補修部材は、上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、筒部内部に形成され、流入口から流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールを補修するための補修部材であって、環状に形成され、中央に第1孔部を有し、筒部の内径よりも小さな外径を有し、インバート流路の上に第1孔部が位置するように筒部に挿入される第1環状部材と、第2孔部を有する筒体と、筒体の外周面の周囲に沿って配置され、筒体から径方向の外方に突出し、筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、シール部材の隣にて筒体から径方向の外方に突出し、突出長さがシール部材の突出長さよりも短く、シール部材が筒体の軸方向に撓むときにシール部材を支える支持部材と、を有し、第2孔部が第1孔部の上に位置するように第1環状部材上に配置される立管と、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間に充填された充填材と、筒体の上方の開口を覆う蓋と、を備えている。
【0008】
本発明に係る筒部の補修部材によれば、第1環状部材および立管を筒部内部に挿入するといった比較的容易な作業で済み、アンカーボルトのような部材を筒部に打ち込むという作業負担が大きい作業が必要ではない。これにより、ますやマンホール内に隆起部が形成されていなくても、筒部を容易に補修することができる。また、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間に充填材が充填されるので、筒部の破損箇所や劣化箇所によらずに当該筒部を補修することができる。このような補修によって、筒部内の排水が外部へ漏れることが防止されると共に、筒部の外部の水が破損した箇所から筒部内へ侵入することが防止される。破損した箇所から筒部の外部の木の根などが筒部内へ侵入することも防止される。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、環状に形成され、立管の筒体が挿入される第3孔部を中央に有し、筒部の内径よりも小さな外径を有し、第3孔部に立管の筒体が挿入された状態で立管の支持部材上に積み重ねられる1または複数の第2環状部材をさらに備えている。
【0010】
上記態様によれば、1または複数の第2環状部材を配置することにより、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間を小さくすることができる。それにより、例えばモルタル等の充填材の量を低減することができる。これによって、工期短縮を実現することができる。また、上記のようにモルタル等の充填材の量を低減することができるので、施工後に充填材の硬化に起因したひび割れが地表面に発生することを抑制することができる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、インバートは、第1環状部材を支持する傾斜上面を備え、第1環状部材は、インバートの傾斜上面と接触し、当該傾斜上面と同じ傾きの傾斜下面を備えている。
【0012】
上記態様によれば、インバートに対する第1環状部材の密着性を向上することができる。これにより、第1環状部材がインバートにより安定して支持される。特に第1環状部材の上方に1または複数の第2環状部材が積み重ねられる場合には、本態様を採用することがより望ましい。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、第1環状部材は、当該第1環状部材の外周面が径方向に切り欠かれて側面視で半円形に形成された切り欠き部を備え、切り欠き部はインバート流路の上に配置されている。
【0014】
上記態様によれば、インバート流路およびその上方の流路に対する第1環状部材の干渉をなくすことができる。すなわち、インバート流路およびその上方の流路を塞がないように第1環状部材を配置することができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、第1環状部材は、立管を支持するとともに水平に形成された上面を備えている。
【0016】
上記態様によれば、立管の荷重および充填材の荷重を第1環状部材に均一に分散させることができる。これにより、第1環状部材に疲労破壊が生じることを防ぐことができる。
【0017】
本発明の好ましい他の一態様によれば、第2環状部材の上部に凸部が形成され、第2環状部材の下部に凹部が形成され、立管の支持部材上に第1の第2環状部材が配置され、第1の第2環状部材上に第2の第2環状部材が積み重ねられ、第1の第2環状部材の凸部は、第2の第2環状部材の凹部に嵌合されている。
【0018】
上記態様によれば、第2環状部材上に別の第2環状部材を安定して積み重ねることができる。また、第2環状部材に対する別の第2環状部材の芯ずれを防止することができる。
【0019】
本発明の好ましい他の一態様によれば、第2環状部材の凸部および凹部は、当該第2環状部材が配置された状態で、上方に向かうほど先細りとなるテーパ状に形成されている。
【0020】
上記態様によれば、第2環状部材上に別の第2環状部材を容易に積み重ねることができると共に、第2環状部材から上記別の第2環状部材を容易に取り外すことができる。
【0021】
本発明に係る地下排水施設は、上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、筒部内部に形成され、流入口から流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールと、ますまたはマンホールを補修するための補修部材と、を備えた地下排水施設であって、補修部材は、環状に形成され、中央に第1孔部を有し、筒部の内径よりも小さな外径を有し、インバート流路の上に第1孔部が位置するように筒部に挿入される第1環状部材と、第2孔部を有する筒体と、筒体の外周面の周囲に沿って配置され、筒体から径方向の外方に突出し、筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、シール部材の隣にて筒体から径方向の外方に突出し、突出長さがシール部材の突出長さよりも短く、シール部材が筒体の軸方向に撓むときにシール部材を支える支持部材と、を有し、第2孔部が第1孔部の上に位置するように第1環状部材上に配置される立管と、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間に充填された充填材と、筒体の上方の開口を覆う蓋と、を備えている。
【0022】
本発明に係る地下排水施設によれば、ますの筒部が破損または劣化した場合、本発明の補修部材を使用して筒部を補修することができる。
【0023】
本発明に係る筒部の補修方法は、上方に開口部を有し、側方に流入口および流出口を有する筒部と、筒部内部に形成され、流入口から流出口に向かって設けられた長溝状のインバート流路が形成されたインバートとを備えかつ地中に埋設されたますまたはマンホールを補修するための補修方法であって、環状に形成され、中央に第1孔部を有し、筒部の内径よりも小さな外径を有する第1環状部材を、インバート流路の上に第1孔部が位置するように筒部に挿入する工程と、第2孔部を有する筒体と、筒体の外周面の周囲に沿って配置され、筒体から径方向の外方に突出し、筒部の内径よりも大きい外径を有する可撓性のシール部材と、シール部材の隣にて筒体から径方向の外方に突出し、突出長さがシール部材の突出長さよりも短く、シール部材が筒体の軸方向に撓むときにシール部材を支える支持部材と、を有する立管を、第2孔部が第1孔部の上に位置するように第1環状部材上に配置する工程と、筒体の上方の開口を覆うように蓋を配置する工程と、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間に充填材を充填する工程と、を備えている。
【0024】
本発明に係る筒部の補修方法によれば、筒部の内周面と立管とにより仕切られた空間に充填材が充填されるので、筒部の破損箇所や劣化箇所によらずに当該筒部を補修することができる。また、第1環状部材および立管を筒部内部に挿入するといった比較的容易な作業で済み、アンカーボルトのような部材を筒部に打ち込むという作業負担が大きい作業が必要ではない。これにより、筒部を容易に補修することができる。以上の補修によって、筒部内の排水が外部へ漏れることが防止されると共に、筒部の外部の水が破損した箇所から筒部内へ侵入することが防止される。破損した箇所から筒部の外部の木の根などが筒部内へ侵入することも防止される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、筒部の劣化箇所または破損箇所によらずに当該筒部を容易に補修することが可能な筒部の補修部材、それを備えた地下排水施設、および筒部の補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施形態に係る筒部の補修部材、それを備えた地下排水施設、および筒部の補修方法について説明する。
【0028】
図1に示すように、地下排水施設100は、地中に埋設されており、排水を流す施設である。本明細書において、「排水」とは、排出された水を意味し、いわゆる汚水および雨水が含まれる。本実施形態に係る地下排水施設100は、ます50と補修部材1とを備えている。以下、補修部材1によります50の筒部52を補修する場合について説明する。なお、本発明における「補修」とは、破損した筒部52自体を復元することではなく、破損した筒部52の管路としての機能を復元することである。
【0029】
図2(b)に示すように、ます50は有底筒状に形成されている。ます50は、底部51と、底部51に連結され、地面に向かって延びた筒部52と、筒部52の上端52aに積載された筒状の上部材53とを備えている。上部材53の上部には環状の溝部53aが形成されており、この溝部53aに平板状の蓋54が設置されている。溝部53aに設置された状態の蓋54の上面54aは、地面とほぼ面一となっている。
図2(a)に示すように、筒部52の側方に流入口57および流出口58が貫通して設けられている。流入口57には図示しない流入配管が接続されており、流出口58には図示しない流出配管が接続されている。補修の際には蓋54は取り除かれる。ます50は、底部51上に形成されたインバート55を備えている。インバート55は、後述の第1環状部材2(
図1参照)を支持する。インバート55には、流入口57から流出口58に向かって設けられた長溝状のインバート流路56が形成されている。インバート55は、インバート流路56を挟んで両側に配置された第1インバート形成部55aおよび第2インバート形成部55bにより構成されている。第1インバート形成部55aは、インバート流路56に向かうほど高さが低くなる第1傾斜上面55a1を有している。第2インバート形成部55bは、インバート流路56に向かうほど高さが低くなる第2傾斜上面55b1を有している。排水は流入口57からインバート流路56に流入し、インバート流路56を流れた排水は流出口58からます50の外へ流出する。
【0030】
本実施形態では、ます50の筒部52が破損しており、その破損箇所に対して補修部材1を用いた補修が施される。以下、その補修部材1の詳細について説明する。
図1に示すように、補修部材1は、第1環状部材2と、立管4と、モルタル5と、蓋6とを備えている。筒部52の補修の際には、先ず、上述のように蓋54(
図2参照)を取り除く。
【0031】
第1環状部材2は例えば樹脂の成形加工により形成される。樹脂を用いれば、成形加工し易くなる。第1環状部材2はインバート55に支持されている。第1環状部材2は、筒部52内に隆起部が形成されていない場合に、当該第1環状部材2を介してインバート55上に立管4を設置するための嵩上げ部材の機能を有している。第1環状部材2は、筒部52の内周面に沿った外形を有すればよい。第1環状部材2は円環状に形成されている。第1環状部材2の厚みは薄くてもよい。具体的には、第1環状部材2の厚みは筒部52の厚みよりも薄くてもよい。第1環状部材2の外径は、筒部52の内径よりも小さく形成されている。
図3(a),(b)に示すように、第1環状部材2の中央に第1孔部10が形成されている。第1環状部材2は切り欠き部11を備えている。この切り欠き部11は、第1環状部材2の外周面が径方向に切り欠かれて側面視で半円形に形成されたものである。
図1に示すように、第1環状部材2は、切り欠き部11がインバート流路56の上方に位置しかつ当該インバート流路56を跨ぐようにインバート55上に配置されている。切り欠き部11は、流入口57(
図2(a)参照)および流出口58よりも大きく形成されている。これにより、インバート流路56およびその上方の流路を塞ぐことなく開放することができる。なお、厚みが異なる複数の第1環状部材2を容易しておくとよい。後述する筒部52の破損箇所A(
図6(a)参照)を、後工程で筒部52内に充填されるモルタル5(
図7(b)参照)により塞ぐためである。詳しくは、立管4の支持部材41およびシール部材44の高さ位置、厳密に言えば、シール部材44が筒体40の軸方向の上方に撓んだ状態における当該シール部材44の最上点の高さ位置が破損箇所Aよりも低くなるように、適切な厚みの第1環状部材2を用いるとよい。なお、切り欠き部11は成形加工時に形成するが、これに限定されるものではない。現場で作業者がグラインダー等を使用して、第1環状部材2に切り欠き部11を加工するようにしてもよい。
【0032】
第1環状部材2は、水平に形成された環状の上面2bを備えている。また、第1環状部材2は、上述の第1傾斜上面55a1および第2傾斜上面55b1とほぼ同じ傾きの環状の傾斜下面2aを備えている。この傾斜下面2aは、第1孔部10に向かうほど、矢印D1の方向における第1環状部材2の厚みが増すように傾斜して形成されている。第1環状部材2の傾斜下面2aは第1傾斜上面55a1および第2傾斜上面55b1に接触している。
【0033】
第1環状部材2の材質としては、例えば複合樹脂を用いることができる。これにより、第1環状部材2において空隙を少なくすることができ、耐荷重を大きくすることができる。それにより、第1環状部材2の上にモルタル5を充填しても、第1環状部材2の耐久性が低下するのを抑制することができる。ただし、第1環状部材2の材質は上記に限定されるものではない。
【0034】
次に、立管4について説明する。立管4は円筒形状に形成されている。
図4および
図5に示すように、立管4は、筒体40と、支持部材41と、シール部材44とを備えている。筒体40には第2孔部45が形成されている。筒体40の材料は特に限定されないが、本実施形態では筒体40は塩化ビニル製である。筒体40の外周面の少なくとも一部には、砂付け加工が施してあることが好ましい。後述するように、モルタル5を筒部52の内周面と立管4とにより仕切られた空間に充填して固めるとき、当該モルタル5と上記砂付け加工とが噛み合うので、モルタル5が上記空間から抜け難くなる。シール部材44は、筒体40の下端部に設けられている。ただし、シール部材44を筒体40の下端部以外の部分に設けることも可能である。シール部材44は環状に形成されており、筒体40の外周面から外方に向かって突出している。シール部材44は、筒体40の外周面の全周にわたって形成されている。シール部材44は、筒部52の内径よりも大きい外径を有している。シール部材44は、可撓性を有しており、例えばゴムによって成形されている。ただし、シール部材44は可撓性を有していればよく、その材料は特に限定されない。なお、シール部材44を筒体40に取り付ける方法は特に限定されないが、本実施形態ではシール部材44は接着剤によって筒体40に取り付けられている。
【0035】
支持部材41は、シール部材44が筒体40の軸方向の上方に向かって撓むときに(
図1参照)、シール部材44を支える部材である。支持部材41は、筒体40と別体で形成されており、筒体40に取り付けられている。本実施形態では、
図4および
図5に示すように、支持部材41は、シール部材44上に位置している。支持部材41は、ボス状に形成されており、断面L字状に形成されている。支持部材41は、筒体40の外周面に接触して設けられた筒部42と、筒部42の下端から径方向の外方に延び、シール部材44上に設けられた支持部43とを備えている。支持部材41は、筒体40から径方向の外方に突出し、突出長さがシール部材44の突出長さよりも短くなっている。支持部材41は、シール部材44よりも硬い材料で成形されている。本実施形態では、支持部材41は塩化ビニル製であるが、その材料の種類は特に限定されない。筒部42には筒体40が嵌め込まれている。筒部42と支持部43とは一体で成形されている。このような構成において、立管4は筒部52(
図1参照)内に挿入され、第1環状部材2(
図1参照)上に配置される。詳細には、立管4は、シール部材44および筒体40の下端部が第1環状部材2の上面2b(
図1参照)に接触した状態で配置される。この場合、第1環状部材2の第1孔部10の上方に筒体40の第2孔部45が位置する。第1環状部材2の第1孔部10の周壁と筒体40の第2孔部45の周壁とがほぼ面一となる。このとき、シール部材44は筒体40の軸方向の上方に向かって撓んだ状態で筒部52の内周面に接触する。これにより、シール部材44と筒部52の内周面との隙間が塞がれる。
【0036】
図1に示すように、立管4の上方の開口は蓋6により閉じられる。蓋6は、立管4に対して着脱可能となっている。インバート55およびインバート流路56を清掃および検査等するときには、蓋6を取り外して立管4を開口した状態にする。インバート55およびインバート流路56の清掃等が終了すると、立管4に蓋6を取り付けるようにする。
【0037】
本実施形態では、充填材としてモルタル5を用いる。モルタル5の他に、充填材としてコンクリートなどの他の材料を充填してもよい。モルタル5として、急結モルタルを充填するようにしてもよい。急結モルタルを充填することにより、硬化時間の短縮を実現することができ、工期短縮を図ることができる。モルタル5は、筒部52内に充填されている。詳しくは、
図1に示すように、立管4と筒部52の内周面とにより仕切られた空間が形成されている。モルタル5は、上記空間に充填される。モルタル5は、当該モルタル5の上面が蓋6の上面およびます50の上部材53の上端面とほぼ面一となるように充填されている。なお、モルタル5を充填する前に上記空間に液状の硬化性注入材を充填してもよい。これにより、たとえ、筒部52の内周面とシール部材44との間に隙間があったとしても、硬化性注入材によってその隙間が埋められる。これにより、筒部52の内周面とシール部材44との間からモルタル5または水等が漏れることを防止することができる。
【0038】
次に、補修部材1を用いて筒部52を補修する手順について説明する。ここでは、
図6(a)に示すように、筒部52の箇所Aが破損しているものとする。以下、この箇所Aを破損箇所と呼ぶ。この破損は、例えば長期間の使用により腐食ガスまたは付着物などによって浸食されて劣化するもの、或いは、地盤沈下または地上からの荷重による疲労によって生じるものである。このように筒部52に破損が生じると、筒部52内の排水が外部に漏れ、或いは外部の水が筒部52内に侵入するおそれがあるため、補修部材1により筒部52を補修する。
【0039】
最初に、
図6(a)に示すように、上部材53の蓋54(
図2参照)を取り除く。これにより、筒部52が開口された状態となる。次に、
図6(b)に示すように、第1環状部材2を筒部52内に挿入し、インバート55上に配置する。この場合、第1環状部材2を、筒部52の内周面から離間するように挿入する。第1環状部材2の中心軸と筒部52の中心軸とが重なるように第1環状部材2を挿入するとよい。このとき、第1環状部材2を、切り欠き部11がインバート流路56の上方に位置しかつ当該インバート流路56を跨ぐようにインバート55上に配置する。本実施形態では、上述のように、第1環状部材2の傾斜下面2aが第1傾斜上面55a1および第2傾斜上面55b1とほぼ同じ傾きとなっている。そのため、第1傾斜上面55a1および第2傾斜上面55b1に沿って第1環状部材2の傾斜下面2aを配置すれば、第1環状部材2の中心軸と筒部52の中心軸とが自然に重なるようになっている。
【0040】
次に、
図7(a)に示すように、立管4を筒部52内に挿入し、第1環状部材2上に配置する。この場合、立管4の中心軸と第1環状部材2の中心軸とが重なるように立管4を挿入するとよい。このとき、筒体40の第2孔部45の周壁と第1環状部材2の第1孔部10の周壁とがほぼ面一となる。これにより、シール部材44は筒体40の軸方向の上方に向かって撓んだ状態で筒部52の内周面に接触する。これによって、シール部材44と筒部52の内周面との密着性を向上させることができる。その結果、シール部材44と筒部52の内周面との隙間が確実に塞がれる。それにより、後工程で筒部52内に充填されるモルタル5(
図7(b)参照)が筒部52内の下方に侵入することが防止される。なお、立管4の挿入時にシール部材44が筒部52の内周面から圧力を受けるため、立管4の中心軸と第1環状部材2の中心軸とが重なり易くなり、当該立管4が中央に配置され易くなっている。また、第2孔部45の周壁と第1孔部10の周壁とがほぼ面一となることにより、維持管理のための各種器具を地上から挿入するときに、当該器具が第1孔部10の周壁および第2孔部45の周壁に引っ掛かり難くなる。上記の様にして立管4を配置した後、立管4の上方の開口を蓋6で閉じる。なお、後述の後工程においてモルタル5を充填した後に、蓋6を設置するようにしてもよい。この場合、モルタル5を筒部52内に充填する際に、立管4の上方の開口から当該モルタル5が入らないようにすることが望ましい。
【0041】
続いて、
図7(b)に示すように、モルタル5を筒部52内に充填する。詳細には、立管4と筒部52の内周面とにより仕切られた空間にモルタル5を充填する。これにより、筒部52の破損箇所A、具体的には、
図7(b)の破損箇所Aの左端にモルタル5が接触することとなる。モルタル5の上面が蓋6の上面およびます50の上部材53の上端面とほぼ面一となるようにモルタル5を充填すればよい。なお、モルタル5を充填する前に上記空間に液状の硬化性注入材を充填してもよい。以上により、筒部52の破損箇所Aの補修が完了する。
【0042】
以上のように本実施形態では、筒部52の内周面と立管4とにより仕切られた空間にモルタル5が充填されるので、筒部52の破損箇所や劣化箇所によらずに当該筒部52を補修することができる。また、第1環状部材2および立管4を筒部52内部に挿入するといった比較的容易な作業で済み、アンカーボルトのような部材を筒部52に打ち込むという作業負担が大きい作業が必要ではない。これにより、ます内に隆起部が形成されていない筒部52を容易に補修することができる。以上の補修によって、筒部52内の排水が外部へ漏れることが防止されると共に、筒部52の外部の水が破損した箇所から筒部52内へ侵入することが防止される。破損した箇所から筒部52の外部の木の根などが筒部52内へ侵入することも防止される。
【0043】
また、本実施形態によれば、第1環状部材2は、第1インバート形成部55aの第1傾斜上面55a1および第2インバート形成部55bの第2傾斜上面55b1と同じ傾きの傾斜下面2aを備えている。これにより、インバート55に対する第1環状部材2の密着性を向上することができる。それにより、第1環状部材2がインバート55により安定して支持される。特に第1環状部材2の上方に1または複数の第2環状部材3が積み重ねられる場合には、本態様を採用することがより望ましい。
【0044】
また、本実施形態によれば、第1環状部材2が挿入された状態で切り欠き部11はインバート流路56の上に配置されている。これにより、インバート流路56およびその上方の流路に対する第1環状部材2の干渉をなくすことができる。すなわち、インバート流路56およびその上方の流路を塞がないように第1環状部材2を配置することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、第1環状部材2は、立管4を支持するとともに水平に形成された上面2bを備えている。それにより、立管4の荷重およびモルタル5の荷重を第1環状部材2に均一に分散させることができる。これにより、第1環状部材2に疲労破壊が生じることを防ぐことができる。
【0046】
以上、第1実施形態に係る補修部材1について説明したが、本発明に係る補修部材は第1実施形態のものに限らず、他の種々の形態で実施することができる。以下、第2実施形態について説明する。なお以下では、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を使用し、その説明は省略することとする。
【0047】
図8に示すように、第2実施形態の補修部材1aが上記第1実施形態の補修部材1と異なる点は、1または複数の第2環状部材3を筒部52内に配置する点である。その他の点は第1実施形態と同様である。第2環状部材3は、立管4の支持部材41上に積み重ねられる。一つの第2環状部材3を用いる場合には、当該第2環状部材3は立管4の支持部材41上に積まれる。一方、
図8に示すように、第2環状部材3として、3つの第2環状部材3a,3b,3cを用いる場合には、立管4の支持部材41上に第2環状部材3aが積まれ、第2環状部材3a上に第2環状部材3bが積み重ねられ、第2環状部材3b上に第2環状部材3cが積み重ねられる。
【0048】
第2環状部材3aと第2環状部材3b,3cとは基本的には同一構造である。
図9(b)および
図10(b)に示すように、第2環状部材3b,3cが第2環状部材3aと異なる点は、凹部22が設けられている点である。第2環状部材3bと第2環状部材3cとは同一構造である。以下では、第2環状部材3aについて説明し、第2環状部材3b,3cについては、第2環状部材3aと異なる点である凹部22についてのみ説明する。
【0049】
第2環状部材3aは樹脂の成形加工により形成される。樹脂を用いれば、成形加工し易くなる。
図9(a)に示すように、第2環状部材3aは、筒部52(
図8参照)の内周面に沿った外形を有すればよい。第2環状部材3aは円環状に形成されている。第2環状部材3aの厚みは薄くてもよい。具体的には、第2環状部材3aの厚みは筒部52の厚みよりも薄くてもよい。第2環状部材3aの外径は、筒部52の内径よりも小さく形成されている。第2環状部材3aの中央に第3孔部20が形成されている。第2環状部材3aは、その上面に環状の凸部21を備えている。この凸部21は、第3孔部20と同軸状で第3孔部20の径方向において当該第3孔部20の外側に形成されている。凸部21は、設置された状態で上方に向かうほど先細りとなるテーパ状に形成されている。具体的には、凸部21は例えば断面台形状に形成されている。ここで、第1環状部材2の強度は、第2環状部材3の強度よりも高いことが望ましい。第2環状部材3の材質としては、例えば発泡樹脂を用いることができる。より具体的には、第2環状部材3の材質として、ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。ただし、第2環状部材3の材質は上記に限定されるものではない。
【0050】
図10(b)に示すように、第2環状部材3b,3cは、その下面に環状の凹部22を備えている。この凹部22は、第3孔部20と同軸状で第3孔部20の径方向において当該第3孔部20の外側に形成されている。凹部22は、設置された状態で上方に向かうほど先細りとなるテーパ状に形成されている。具体的には、凹部22は例えば断面台形状に形成されている。このような構成において、第2環状部材3aの上に第2環状部材3bを積み重ねる際に、第2環状部材3aの凸部21を第2環状部材3bの凹部22に嵌合させる。この場合、第2環状部材3aの上に第2環状部材3bが積み重ねられた状態で、第2環状部材3aの第3孔部20の周壁と第2環状部材3bの第3孔部20の周壁とはほぼ面一となっている。なお、第2環状部材3bの上に第2環状部材3cを積み重ねる場合も同様である。
【0051】
次に、第2実施形態の補修部材1aを用いた補修手順についての説明を行う。なお、立管4を配置した後でかつ蓋6を設置する前かつモルタル5を充填する前に第2環状部材3を配置する点を除いて、第1実施形態に係る補修手順と同じであるため、以下では第2環状部材3の配置のみ説明する。
【0052】
第1実施形態で説明したように筒部52内に立管4を配置した後、
図8に示すように、第2環状部材3aの第3孔部20に立管4の筒体40を挿通させた状態で、当該第2環状部材3aを筒部52の下方に挿入する。そして、第2環状部材3aを支持部材41の支持部43上に配置する。この場合、第2環状部材3aの中心軸と立管4の中心軸とが重なるように第2環状部材3aを挿入するとよい。このとき、第2環状部材3aの第3孔部20に支持部材41の筒部42が挿入された状態となる。次に、第2環状部材3bの第3孔部20に筒体40を挿通させた状態で、当該第2環状部材3bを筒部52の下方に挿入する。そして、第2環状部材3bの凹部22に第2環状部材3aの凸部21を嵌合させた状態で、第2環状部材3bを第2環状部材3a上に配置する。このとき、第2環状部材3aの第3孔部20の周壁と第2環状部材3bの第3孔部20の周壁とがほぼ面一となる。次に、同様にして第2環状部材3cを第2環状部材3b上に積み重ねる。第2実施形態によれば、第1実施形態と同じ効果を奏することに加えて、1または複数の第2環状部材3を配置することにより、筒部52の内周面と立管4とにより仕切られた空間を小さくすることができる。それにより、上記空間に充填するモルタル5の量を低減することができる。これによって、工期短縮を実現することができる。また、上記のようにモルタル5の量を低減することができるので、施工後に当該モルタル5の硬化に起因したひび割れが地表面に発生することを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、第2環状部材3bの凹部22は第2環状部材3aの凸部21に嵌合し、第2環状部材3cの凹部22は第2環状部材3bの凸部21に嵌合している。これにより、第2環状部材3a上に第2環状部材3bを安定して積み重ねることができると共に、第2環状部材3b上に第2環状部材3cを安定して積み重ねることができる。また、第2環状部材3aに対する第2環状部材3bの芯ずれを防止することができると共に、第2環状部材3bに対する第2環状部材3cの芯ずれを防止することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第2環状部材3aの凸部21、第2環状部材3bの凹部22および凸部21は、設置された状態で、上方に向かうほど先細りとなるテーパ状に形成されている。これにより、第2環状部材3a上に第2環状部材3bを容易に積み重ねることができると共に、第2環状部材3aから第2環状部材3bを容易に取り外すことができる。また、第2環状部材3b上に第2環状部材3cを容易に積み重ねることができると共に、第2環状部材3bから第2環状部材3cを容易に取り外すことができる。
【0055】
以上、第1実施形態および第2実施形態について説明したが、さらに次の変形例を本発明に適用してもよい。
【0056】
上記実施形態では、充填材としてモルタルを用いたが、これに限定されるものではない。モルタルの代わりに、例えばコンクリートなどの他の材料を充填してもよい。この場合、モルタルよりもコンクリートの方がコストを抑えることができる。
【0057】
上記実施形態では、筒部52内に3つの第2環状部材3を配置することとしたが、これに限定されるものではない。第2環状部材3を配置しなくてもよいし、4つ以上の第2環状部材3を配置することにより、充填するモルタル5の量をより低減するようにしてもよい。
【0058】
上記実施形態では、補修部材1,1aを用いて、地下排水施設100の既設管路である筒部52を補修するようにした。しかし、補修する既設管路は筒部52に限定されるものではない。例えば、補修する既設管路は、水平方向に延びる配管または水平方向から傾いた配管であってもよい。例えば、補修する既設管路は、ますに接続された流入配管または流出配管等の横に延びた既設配管であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、補修部材1,1aによります50の筒部52を補修するようにしたが、これに限定されるものではない。補修部材1,1aによりマンホールを補修するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、第2環状部材3aの凸部21およびこれに嵌合する第2環状部材3bの凹部22、並びに、第2環状部材3bの凸部21およびこれに嵌合する第2環状部材3cの凹部22をそれぞれ環状としたが、これに限定されるものではない。これらを例えば平面視で円弧状としてもよいし、平面視で円形や矩形などの他の形状としてもよい。
【0061】
上記実施形態では、第1環状部材2および第2環状部材3の形状を円環状としたが、これに限定されるものではない。環状であれば、第1環状部材2および第2環状部材3の形状を例えば角環状としてもよい。
【0062】
上記実施形態では、インバート55上に1つの第1環状部材2を配置することとしたが、これに限定されるものではない。2つ以上の第1環状部材2をインバート55上に積み重ねるようにしてもよい。
【0063】
上記実施形態では、立管4の中心軸と第1環状部材2の中心軸とが重なるように立管4を配置し、第2環状部材3aの中心軸と立管4の中心軸とが重なるように第2環状部材3aを配置するようにしたが、これに限定されるものではない。第1環状部材2の第1孔部10と立管4の第2孔部45とが通じていれば、これらを同軸状に設けなくてもよい。また、第2環状部材3aの第3孔部20に立管4が挿通されていれば、これらを同軸状に設けなくてもよい。
【0064】
上記実施形態では、インバート流路56が直線状に延びている例を示したが、インバート流路は折れ曲がっていてもよい。具体的には、インバート流路は例えば90°に折れ曲がっていてもよい。また、流入口57および流出口58はそれぞれ1つに限らず、例えば2つの流入口と1つの流出口とが設けられていてもよい。この場合、2つの流入口と1つの流出口とに対応したインバート流路を形成するようにする。