(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
運転者が把持する環状のリム部と、前記リム部の中央部に配されるボス部と、前記リム部及び前記ボス部間を連結する複数のスポーク部とを有し、前記リム部は、芯材となるリム芯金部と、前記リム芯金部を被覆するリム被覆部とを備えるステアリングホイールであって、
前記リム芯金部に基端部が一体化されるとともに前記リム芯金部の内側に延出する片持ち状のアーム部と、前記アーム部に取着され、前記アーム部を介して前記リム部に振動を与える振動発生部とを有する、
ことを特徴とするステアリングホイール。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全運転支援システムとして、例えば自動車が車線を外れそうになった場合や、対向車線にはみ出しそうになった場合に、警告音を発生させるとともに、ステアリングホイールのハンドル部分であるリム部を振動させることによって、運転者の注意を喚起する技術が知られており、このような安全運転支援システムを用いることによって、自動車の衝突事故等を未然に防ぐことが可能となる。
【0003】
更に現在では、車両の走行状態やその他の様々な情報を運転者に知覚させるために、ステアリングホイールのリム部を振動させることが考えられており、実用化に向けて開発されてきている。
【0004】
また、ステアリングホイールのリム部を振動させる技術に関する発明が、例えば特開平7−10007号公報(特許文献1)に記載されている。
この特許文献1に記載されているステアリングホイール60は、
図13に示すように、環状のリム部61と、リム部61の中央部に配されるボス部62と、リム部61及びボス部62間を連結する左右のスポーク部63とを有しており、ボス部62とスポーク部63とは、通常、破線で示されたパッド部64によって覆われている。
【0005】
パッド部64の内部には、直流モーター65が左右のスポーク部63にそれぞれ取り付けられており、各モーター65の回転軸には、偏心ウェイト(分銅)66がそれぞれ取り付けられている。これにより、左右のモーター65に電源から電流が流れて偏心ウェイト66を回転させることによって、左右のモーター65がそれぞれ振動する。このモーター65の振動がスポーク部63を介してリム部61に伝達されることにより、リム部61全体を振動させることが可能となる。
【0006】
特に特許文献1のステアリングホイール60には、モーター65の通電電流を制限する源流手段67と、電流を源流手段67に流すか否かを切り替えるスイッチ部68とが設けられている。この場合、スイッチ部68を切り替えることによって、源流手段67を介さずにモーター65に電流を流すことと、源流手段67を介してモーター65に電流を流すこととを運転者が選択することが可能になる。
【0007】
従って、特許文献1によれば、例えばスイッチ部68を操作して源流手段67を介さずにモーター65に電流を流すことによって、モーター65に流れる電流が大きくなるため、モーター65による加振力を大きくしてリム部61に強い振動を与えることができ、一方、スイッチ部68を操作して源流手段67を介してモーター65に電流を流すことによって、モーター65に流れる電流が小さくなるため、リム部61に与える振動を弱めることができるとしており、それによって、運転者の好みに合わせて振動の強さを切り替えることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のようなリム部に振動を与えることが可能な従来のステアリングホイールでは、モーターと偏心ウェイトとを備えた振動発生部が、リム部とボス部とを連結するスポーク部に固定されている。しかし、振動発生部がスポーク部に固定されると、1つの振動発生部で発生させる振動がリム部だけでなく、ボス部にも伝達される。
【0010】
このため、1つの振動発生部による振動効果がリム部とボス部に分散し、リム部に伝達される振動が弱くなる。従って、従来のステアリングホイールでは、リム部に与える振動を適切に確保するために、スポーク部に大型の振動発生部を固定することや、また、特許文献1のように複数の振動発生部を用いて、2本以上の複数のスポーク部に振動発生部をそれぞれ固定すること等が行われていた。
【0011】
通常、振動発生部の特性は、偏心ウェイト(分銅)の重さや形状で調整することが一般的であり、例えば上述のように適切な振動を確保するために大型の振動発生部を用いる場合、偏心ウェイトの大きさ及び重さが大きくなるとともに、その偏心ウェイトに対するモーターの耐久性や出力を増大させる必要がある。一方、適切な振動を確保するために複数の振動発生部を用いる場合には、各スポーク部に振動発生部のモーターと偏心ウェイトとを取り付ける必要がある。その結果、どちらの場合においても、ステアリングホイールの高重量化や製造コストの増大などを招くという問題があった。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、振動発生部で発生させる振動を効率良くリム部に伝達させ、適切な振動をリム部に与えることを可能にすることにより、振動発生部の小型化を図って軽量化や製造コストの削減を実現することが可能なステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるステアリングホイールは、基本的な構成として、運転者が把持する環状のリム部と、前記リム部の中央部に配されるボス部と、前記リム部及び前記ボス部間を連結する複数のスポーク部とを有し、前記リム部は、芯材となるリム芯金部と、前記リム芯金部を被覆するリム被覆部とを備えるステアリングホイールであって、前記リム芯金部に基端部が一体化されるとともに前記リム芯金部の内側に延出する片持ち状のアーム部と、前記アーム部に取着され、前記アーム部を介して前記リム部に振動を与える振動発生部とを有することを最も主要な特徴とするものである。
【0014】
特に、前記アーム部の前記基端部は、前記リム芯金部に成形により一体化されていることが好ましい。
このような本発明に係るステアリングホイールにおいて、前記振動発生部は、電動モーターと、前記電動モーターの回転軸に取着される偏心ウェイトとを有することが好ましい。
【0015】
この場合、前記電動モーターは、取付ブラケットを介して前記アーム部に取着され、前記取付ブラケットは、前記電動モーターを内部に収容して固定するモーター収容保持部と、前記モーター収容保持部の一端部及び他端部から、互いに重なり合うように延出する第1固定片部及び第2固定片部とを有し、前記モーター収容保持部は、前記電動モーターを覆う外郭部と、前記外郭部の内周面から突出し、前記電動モーターを支持固定する複数の支持突起部とを備え、前記第1固定片部及び前記第2固定片部の対応する位置に、前記アーム部に螺着させるブラケット固定部材を挿通可能な挿通孔が穿設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るステアリングホイールは、リム部に振動を与えるために、リム部のリム芯金部に基端部が一体化されるとともにボス部に向けて延出する片持ち状のアーム部と、アーム部に取着される振動発生部とを有し、更に、振動を発生させる所定の条件を検知したときに振動発生部を動作させるように制御する振動制御部が設けられている。
【0017】
このような本発明のステアリングホイールによれば、振動発生部がリム部のリム芯金部に片持ち状に連設されるアーム部の自由端部に取着されているため、振動発生部による振動効果が従来のようにリム部とボス部とに分散させることはなく、振動発生部で発生させた振動をリム部に対して効率的に伝達して、振動発生部の振動効果をより有効に発揮させることができる。
【0018】
これにより、リム部に与える振動を適切に確保するために、従来のようにスポーク部に大型の振動発生部を固定する必要がなくなって、振動発生部に小型のモーターや、小さい偏心ウェイトを採用することが可能となるとともに、複数個の振動発生部を設ける必要もなくなる。このため、ステアリングホイールの軽量化やコストダウンを図ることができる。
【0019】
また、リム部に振動を与える場合に同じ振動発生部を用いても、ステアリングホイールの形状、大きさ、及び材質等が変わるとリム部に伝達される振動も変化するため、従来では、異なるステアリングホイール毎に適切な振動を得るために、振動発生部の構造を、各ステアリングホイールに対応するようにそれぞれ変える(調整する)必要があったため、コストアップに繋がっていた。
【0020】
これに対して、上述した本発明のステアリングホイールによれば、アーム部の形状、寸法、及び材質等を変化させることによってリム部に与える振動を容易に調整することができる。それにより、形状などが異なるステアリングホイールであっても、同じ振動発生部を用いて適切な振動を簡単に且つ安定して得ることができるため、更なるコストダウンを実現することが可能となる。
【0021】
このような本発明のステアリングホイールにおいて、振動発生部が設けられるアーム部の基端部は、リム芯金部に成形により一体化されていることにより、リム芯金部に連結するアーム部を容易に且つ効率的に形成することができ、また、リム芯金部に対するアーム部の強度を安定して確保できる。
【0022】
また、本発明に係るステアリングホイールにおいて、アーム部に設けられる振動発生部は、電動モーターと、電動モーターの回転軸に取着される偏心ウェイトとを有する。これにより、振動発生部を簡単に且つ安価に形成できるとともに、リム部に与える振動を安定して発生させることができる。
【0023】
この場合、電動モーターをアーム部に取り付けるために用いる取付ブラケットは、電動モーターを内部に収容して固定するモーター収容保持部と、モーター収容保持部の一端部及び他端部から、互いに重なり合うように延出する第1固定片部及び第2固定片部とを有する。また、取付ブラケットのモーター収容保持部は、電動モーターを覆う外郭部と、その外郭部の内周面から突出し、電動モーターを支持固定する複数の支持突起部とを備える。更に、取付ブラケットの第1固定片部及び第2固定片部の対応する位置には、アーム部に螺着させるブラケット固定部材を挿通可能な挿通孔が穿設されている。
【0024】
このような取付ブラケットを用いれば、電動モーターを取付ブラケットのモーター収容保持部内に収容して保持した状態で、同取付ブラケットの第1固定片部と第2固定片部とを、ビス等のブラケット固定部材を用いてアーム部に固定できる。これによって、電動モーターをアーム部に簡単に且つ安定して取り付けることができ、また、電動モーターの取付状態を長期に亘って安定して維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した構成と実質的に同一な構成を有し、且つ、同様な作用効果を奏する範囲において多様な変更が可能である。
【0027】
例えばステアリングホイールの形状、寸法、及びデザイン等については、以下の実施例に限定されるものではなく、任意に変更することができる。また、以下の実施例において、振動発生部が取り付けられるアーム部は、リム部の下端部から上方に向けて(言い換えると、リム部の6時の部分からリム部の中心部に向けて)延設されているが、本発明はこれに限定されず、アーム部は、リム部から内側に向けて延びていれば、リム部のその他の部分に設けることも可能である。
【実施例1】
【0028】
図1は、本実施例1に係るステアリングホイールを示す正面図であり、
図2は、同ステアリングホイールの芯金部、アーム部、及び振動発生部を示す模式図である。
図3は、同ステアリングホイールの要部を拡大して示す要部拡大斜視図である。
【0029】
なお、以下の説明において、上下方向及び左右方向とは、ステアリングシャフトの軸方向に直交する方向で、ステアリングホイールをニュートラル位置の状態にて運転者側から見たときの同ステアリングホイールにおける上下方向(
図1においてリム部の0時の部分と6時の部分を結ぶ方向)及び左右方向(
図1においてリム部の9時の部分と3時の部分を結ぶ方向)を言う。また、前方とは、ステアリングシャフトの軸方向に平行な方向で、運転者側から見たときのステアリングホイールの奥側(裏面側)の方向を言い、後方とは、ステアリングホイールの手前側(表面側)の方向を言う。
【0030】
本実施例1のステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体10と、ステアリングホイール本体10の表面(後面)側に配され、エアバッグモジュールを内部に収納するステアリングパッド2と、ステアリングパッド2の左右両側に配され、ステアリングホイール本体10の表面(後面)側を被覆する左右のフィニッシャー3と、ステアリングホイール本体10の裏面(前面)側を被覆する図示しないロアカバーと、後述する振動発生部15の動作を制御する図示しない振動制御部とを有する。
【0031】
また、ステアリングホイール本体10は、
図2に示すように、運転者が把持する環状のリム部11と、リム部11の中央部に配されるボス部12と、リム部11及びボス部12間を連結する左右のスポーク部13と、リム部11の下端部分から上方に向けて延出するアーム部14と、アーム部14の自由端部(上端部)に取着されえる振動発生部15とを有する。
【0032】
本実施例1において、ステアリングホイール本体10のリム部11、ボス部12及びスポーク部13は、
図2に示したように、芯材(骨格)となるリム芯金部11a、ボス芯金部12a及びスポーク芯金部13aをそれぞれ有する。また、リム芯金部11aを被覆する発泡ウレタンなどの合成樹脂製のリム被覆部11bと、スポーク芯金部13aの一部を被覆する発泡ウレタンなどの合成樹脂製のスポーク被覆部13bとが設けられている。更に、左右のスポーク被覆部13bとリム部11の下端部分(6時の部分)とを繋ぐように合成樹脂製のカバー部4が設けられており、このカバー部4はステアリングパッド2とロアカバーとの間に配される。
【0033】
この場合、スポーク芯金部13aは、リム芯金部11aの左右側縁部分(9時の部分と3時の部分)と、ボス芯金部12aとを接続している。これにより、ステアリングホイール1の強度を適切に確保できる。一方、リム芯金部11aの下端部分にスポーク芯金部13aが設けられていないことにより、リム芯金部11aの下端部分に、アーム部14の設置スペースを安定して確保できる。
【0034】
なお、本実施例1では、スポーク芯金部13aを、リム芯金部11aの下端部分(6時の部分)とボス芯金部12aとを接続するようにして、アーム部14とは別に独立して設けることも可能である。また、ステアリングホイール1の意匠性を高めるために、リム被覆部11bに本革を巻き付けることや加飾を行うことも可能である。
【0035】
ステアリングホイール本体10のボス部12には、ステアリングシャフトが連結されるシャフト連結部16が形成されているとともに、ステアリングパッド2が取り付けられたエアバッグモジュールを取り付けるモジュール取付部や、フィニッシャー3を取り付ける図示しないフィニッシャー取付部等が設けられている。
【0036】
リム芯金部11aは、略U字状の断面を有するとともに、リム芯金部11aの外周がリム被覆部11bによって覆われている。この環状のリム芯金部11aの下端部分(6時の部分)からボス芯金部12aに向けてアーム部14が延設されている。
【0037】
本実施例1において、このアーム部14と、リム芯金部11a、ボス芯金部12a及びスポーク芯金部13aとは、マグネシウム合金などの同じ金属材料を用いて成形により一体的に形成されている。また、アーム部14のリム芯金部11aに連結する基端部14aの一部が、リム被覆部11bによって覆われている。
【0038】
本実施例1のアーム部14は、一定の板厚を有する薄板状に形成されているとともに、その一端部がリム芯金部11aに接続され、他端部が自由端部となるように片持ち状に配されている。この場合、アーム部14は、アーム幅方向の寸法がリム芯金部11aから離れるにつれて漸減する基端部14aと、アーム幅方向の寸法が一定の大きさで基端部14aから延びる舌片部14bとを有する。この場合、舌片部14bの先端部分が、アーム部14の自由端部となる。
【0039】
なお、本発明では、アーム部14の形状や大きさ(例えば、アーム部14のリム芯金部11aから延出する方向の長さ寸法に対し、アーム部14の基端部14a及び舌片部14bのアーム幅方向の寸法の割合等)を変化させることにより、リム部11に与える振動を容易に調整することが可能である。
【0040】
このため、ステアリングホイール1の形状や大きさが異なるものにアーム部14を設ける場合、そのアーム部14の形状や大きさについては、後述する振動発生部15で振動を発生させたときに、その振動をリム部11に適切に伝達できるように、そのステアリングホイール1の形状や大きさ等に応じて任意に変更することができる。
【0041】
本実施例1において、アーム部14の自由端部(先端部)には、振動発生部15が取り付けられている。本実施例1の振動発生部15は、アーム部14の一面に接着剤を介して固着された小型の電動モーター15aと、その電動モーター15aの回転軸に固着される偏心ウェイト(錘)15bとを有しており、安価で簡単な構造を備える所謂アンバランスマス型の振動発生部として形成されている。
【0042】
この場合、電動モーター15a及び偏心ウェイト15bは、従来の振動発生部に一般的に用いられる電動モーター及び偏心ウェイトと基本的に同じように形成されている。また、アーム部14と振動発生部15とは、ステアリングホイール本体10にエアバッグモジュール及びロアカバーが取り付けられたときに、エアバッグモジュールのステアリングパッド2と、左右のカバー部4と、図示しないロアカバーとに覆われることによって、外部から見えないように隠される。
【0043】
また本実施例1において、電動モーター15aは、偏心ウェイト15bが固着される回転軸が、アーム部14のリム芯金部11aからの延出方向に対して直交する方向に向いて設置されているが、本発明において、電動モーター15aの取り付け方向は特に限定するものではなく、例えば、電動モーター15aの回転軸の向きが、アーム部14におけるリム芯金部11aからの延出方向と平行となるようにして電動モーター15aをアーム部14に設置することも可能である。
【0044】
更に、本発明において、電動モーター15aをアーム部14に固定する手段は特に限定されるものではなく、接着剤のような接着手段の他に、例えば、電動モーター15aとアーム部14とを溶着させる溶着手段や、ネジ等の固定部材を用いて電動モーター15aをアーム部14に機械的に固定する固定手段を用いることも可能であり、或いは、実施例2で後述するように取付ブラケット21等を用いて電動モーター15aをアーム部14に機械的に固定することも可能である。
【0045】
また、振動発生部15には、上述のようなアンバランスマス型の振動発生部を採用する以外に、例えば、磁界中でコイルに電流を流すことによって振動を発生させるような動電型の振動発生部などのように、その他の形式で振動を発生させる振動発生部を採用することも可能である。
【0046】
本実施例1において、電動モーター15aの動作は、図示しない振動制御部によって制御されている。この場合、振動制御部は、電動モーター15aと電気的に接続されており、自動車が車線を外れそうになったことや、自動車の走行速度が所定の速度以上になったこと等のように所定の状態又は条件が検知されたときに、電動モーター15aに電流を流すことによって電動モーター15aを回転駆動させるように構成されている。
【0047】
以上のような本実施例1のステアリングホイール1によれば、振動制御部で所定の状態又は条件が検知されて電動モーター15aに電流を流すことによって、電動モーター15aの回転軸に設けた偏心ウェイト15bを回転させて、振動発生部15で振動を発生させることができる。
【0048】
このとき、本実施例1では、振動発生部15が片持ち状のアーム部14の自由端部に固定されているため、小型の振動発生部15で発生させた振動を、アーム部14及びリム芯金部11aを介して、リム部11の全体に効率的に伝達して、振動発生部15による振動効果を有効に発揮させることができる。これにより、振動発生部15が上述のように小型に形成されていても、リム部11を適切に振動させて、リム部11を把持する運転者の注意を確実に喚起させることができる。
【0049】
すなわち、本実施例1のステアリングホイール1では、1つの小型の振動発生部15をアーム部14の自由端部に設けることによって、従来のように複数の振動発生部をスポーク部に設ける場合や、大きな偏心ウェイトと高出力モーターとを備える大型の振動発生部を用いる場合と同程度の振動を、リム部11の全体に与えることが可能となる。このため、ステアリングホイール1の軽量化やコストダウンを図ることができる。
【0050】
なお、本実施例1のアーム部14は、上述したように、リム芯金部11aに成形により一体化されているとともに、リム芯金部11aからボス部12に向けて比較的長く延出している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば
図4に変形例に係るステアリングホイールの要部断面図を示すように、振動発生部15が固定されるアーム部14´は、ビスやボルト等のアーム固定部材17を用いてリム部11´のリム芯金部11a´に機械的に固定されて一体化されていても良い。
【0051】
この場合、リム芯金部11a´は合成樹脂製のリム被覆部11b´によって被覆されているものの、リム芯金部11a´のアーム部14´が固定される部分は、リム被覆部11b´によって被覆されておらず、露出している。
【0052】
また、この変形例では、アーム部14´におけるリム芯金部11a´からの延出長さも、上述した実施例1よりも短くして、振動発生部15が、リム芯金部11a´から近い位置に配置されている。更に、振動発生部15は、アーム部14´の第1面(表面)と、その第1面とは反対側の第2面(裏面)のどちらの面に固定されても良い。
【0053】
更に本発明では、例えば
図5に実施例1の別の変形例に係るステアリングホイール本体10″を示すように、例えば実施例1における左側のスポーク芯金部13aの一部をスポーク芯金部13a″まで削った(細くした)形態で、この変形例に係る左側のスポーク芯金部13a″が形成されるとともに、その削られた部分に、振動発生部15が取着されるアーム部14″をリム芯金部11aから延出させて設けることも可能である。言い換えると、実施例1の左側のスポーク芯金部13aにL字状のスリット18を設けることによって、変形例に係る左側のスポーク芯金部13a″とアーム部14″とを分割して形成することも可能である。
【0054】
この場合、アーム部14″には、実施例1よりも更にサイズの小さな振動発生部15が取り付けられており、この変形例の振動発生部15は、サイズ以外は実施例1と同様の電動モーター15aと偏心ウェイト15bとを有する。また、この変形例において、リム芯金部11a、ボス芯金部12a及び右側のスポーク芯金部13aは、上述の実施例1の場合と同様に形成されている。
【0055】
この変形例のようにアーム部14″を形成することにより、振動発生部15の振動をリム部11に効率的に伝達できるとともに、スポーク芯金部13a″及びアーム部14″の設置スペース上の制約を小さくして、ステアリングホイールのデザインの自由度を高めることができる。
【実施例2】
【0056】
図6は、本実施例2に係るステアリングホイールの芯金部、アーム部、及び振動発生部を示す模式図であり、
図7は、同ステアリングホイールのリム芯金部、アーム部、及び振動発生部を示す要部断面図である。また、
図8は、振動発生部をアームに取り付けるための取付ブラケットを示す斜視図である。
【0057】
なお、本実施例2のステアリングホイールは、前述の実施例1のステアリングホイール1に比べて、リム芯金部11aから延びるアーム部24の形態と、そのアーム部24に振動発生部15を取り付けるために取付ブラケット21を用いることが異なるものの、それ以外の構成は、前述の実施例1のステアリングホイール1と実質的に同様に形成されている。
【0058】
従って、本実施例2において、また、後述する実施例3及び4において、前述した実施例1のステアリングホイール1と実質的に同じ構成を有する部分及び部材については、同じ符号を用いて表すことによって、その詳細な説明を省略することとする。
【0059】
本実施例2のアーム部24は、リム芯金部11aの下端部分(6時の部分)からボス芯金部12aに向けて延出している。このアーム部24は、リム芯金部11aに成形により一体化されているとともに、他端部が自由端部となるように片持ち状に配されている。
【0060】
また、本実施例2のアーム部24では、アーム幅方向の寸法が、ボス芯金部12aとの連結部から先端縁まで一定の大きさに設定されている。更に、アーム部24の所定位置には、後述するブラケット固定部材(ビス)22を螺合させることが可能な取付孔24aが穿設されている。
【0061】
このアーム部24に取り付けられる振動発生部15は、前述の実施例1の振動発生部15と同様に形成されており、小型の電動モーター15aと、電動モーター15aの回転軸に固着される偏心ウェイト15bとを有する。本実施例2では、振動発生部15の電動モーター15aが、取付ブラケット21を介してアーム部24に取着されて固定される。
【0062】
本実施例2の取付ブラケット21は、金属材料により形成されており、可撓性を備える。この取付ブラケット21は、
図7及び
図8に示したように、電動モーター15aを内部に収容して固定するモーター収容保持部21aと、モーター収容保持部21aのリム芯金部11aから離れている側の端部(第1端部)から延設される平板状の第1固定片部21bと、モーター収容保持部21aのリム芯金部11aに近接する側の端部(第2端部)から延設される平板状の第2固定片部21cとを有する。
【0063】
この場合、モーター収容保持部21aと第1及び第2固定片部21b,21cとは、アーム幅方向における寸法(幅寸法)が互いに同じ大きさで形成されており、これらのモーター収容保持部21a、第1固定片部21b、及び第2固定片部21cの幅寸法は、アーム部24のアーム幅寸法と同じ大きさ、又は同アーム幅寸法よりも小さい大きさに設定されている。
【0064】
モーター収容保持部21aは、電動モーター15aの外側を覆う外郭部21dと、外郭部21dの内周面に突設される3つの支持突起部21eとを有する。この場合、外郭部21dは、取付ブラケット21をその側面側から見たときに逆U字状に湾曲した形態を有しており、また、モーター収容保持部21a内に収容する電動モーター15aの形状及び大きさに対応する大きさで形成されている。
【0065】
モーター収容保持部21aの支持突起部21eは、外郭部21dにおける第1端部の近傍位置と、外郭部21dにおける第1固定片部21bから最も離れた頂端部の位置と、外郭部21dにおける第2端部の近傍位置とに、モーター収容保持部21aの内側に向けて突設されている。また、各支持突起部21eは、外郭部21dの全幅に亘って、アーム幅方向と平行に配されている。電動モーター15aは、モーター収容保持部21a内に保持されるときに、これら3つの支持突起部21eの頂部によって、3点で支持される。
【0066】
第1固定片部21bは、モーター収容保持部21aの第1端部から、屈曲部を介してまっすぐに延設されている。この第1固定片部21bの先端部(自由端部)には、ブラケット固定部材22を挿通させる円形の第1挿通孔21fが、第1固定片部21bの表裏面に直交する方向に穿設されている。また、第1固定片部21bの長さ寸法(アーム部24の延出方向における寸法)は、アーム部24の長さ寸法よりも短く設定されている。
【0067】
第2固定片部21cは、モーター収容保持部21aの第2端部から、屈曲部を介してまっすぐに延設されている。この第2固定片部21cの先端部(自由端部)には、ブラケット固定部材22を挿通させる円形の第2挿通孔21gが、第2固定片部21cの表裏面に直交する方向に穿設されている。
【0068】
この場合、第2挿通孔21gは、モーター収容保持部21a内に電動モーター15aを収容した状態で第2固定片部21cを第1固定片部21bの上に重ね合せたときに、第1固定片部21bの第1挿通孔21fの位置に対応する位置に配されている。
【0069】
上述のような構造を有する取付ブラケット21を用いて電動モーター15aをアーム部24に取り付ける場合、先ず、取付ブラケット21の第1固定片部21bと第2固定片部21cとの間に小さな隙間ができるように第1固定片部21bとモーター収容保持部21aとを開いて、電動モーター15aを取付ブラケット21の側面側からモーター収容保持部21a内に挿入するとともに、その取付ブラケット21をアーム部24に載置する。
【0070】
このとき、モーター収容保持部21aに挿入される電動モーター15aは、3つの支持突起部21eでバランス良く支持されるようにその位置及び向きを合わせて、モーター収容保持部21a内にセットされる。また、取付ブラケット21をアーム部24に載置するときに、取付ブラケット21の第1固定片部21bの裏面全体がアーム部24に接触して支持されるとともに、取付ブラケット21の第1固定片部21bに穿設した第1挿通孔21fの位置が、アーム部24に穿設した取付孔24aの位置と重なるように、取付ブラケット21の位置をアーム部24に対して合わせる。
【0071】
次に、取付ブラケット21の第2固定片部21cを、当該第2固定片部21cの第2挿通孔21gの位置が第1固定片部21bの第1挿通孔21fの位置に一致するように、第1固定片部21bの上に重ね合せる。
【0072】
その後、第2固定片部21cの第2挿通孔21gと第1固定片部21bの第1挿通孔21fとに、ブラケット固定部材であるビス22を挿入し、当該ビス22をアーム部24の取付孔24aに螺着させる。これにより、振動発生部15の電動モーター15aが、取付ブラケット21のモーター収容保持部21a内で支持突起部21eによって3点で支持されている状態で、当該取付ブラケット21を介してアーム部24にしっかりと固定される。
【0073】
そして、振動制御部の制御によって振動発生部15が振動したときには、その振動発生部15の振動を、取付ブラケット21とアーム部24とを介して、リム部11に効率良く伝達させることができる。従って、本実施例2のステアリングホイールによれば、振動発生部15の振動効果をリム部11に有効に発揮させることができるため、前述の実施例1のステアリングホイール1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0074】
図9は、本実施例3に係るステアリングホイールのアーム部に対する電動モーターの取り付けを説明する説明図であり、
図10は、電動モーターがアーム部に取り付けられた状態を示す模式図である。
【0075】
本実施例3のステアリングホイールでは、リム芯金部11aから延びるアーム部34に、振動発生部15の電動モーター15aを前述の実施例1のように接着によって取り付けるのではなく、電動モーター15aを嵌着させて収容することによって取り付ける構造を有する。なお、それ以外の本実施例3のステアリングホイールの構成については、前述の実施例1のステアリングホイール1と実質的に同様に形成されている。
【0076】
本実施例3のアーム部34は、リム芯金部11aの下端部分(6時の部分)からボス芯金部12aに向けて、一定のアーム幅寸法をもって延出している。このアーム部34は、リム芯金部11aに成形により一体化されているとともに、他端部が自由端部となるように片持ち状に配されている。また、本実施例3のアーム部34の自由端部には、電動モーター15aを嵌着させて固定するモーター嵌着収容部31が設けられている。
【0077】
本実施例3のモーター嵌着収容部31は、電動モーター15aを底面側から支持する略矩形状の底面部31aと、底面部31aの4つの角隅部から電動モーター15aの外形に沿うように立設し、電動モーター15aの位置を固定する位置決め部31bと、底面部31aにおけるアーム幅方向の中央部から立設され、電動モーター15aを係止する一対の係止爪部31cとを有する。
【0078】
本実施例3のモーター嵌着収容部31において、底面部31aには、当該底面部31aを貫通する貫通孔31dが穿設されている。4つの位置決め部31bは、電動モーター15aをモーター嵌着収容部31に嵌入する方向側からモーター嵌着収容部31及び電動モーター15aを見たときに、電動モーター15aの本体部における4つの角部を外側から押さえて、電動モーター15aを所定位置に保持するように配されている。
【0079】
この場合、各位置決め部31bにおける底面部31aからの立設高さは、係止爪部31cにおける底面部31aからの立設高さよりも低くされている。各係止爪部31cは、底面部31aから延びる柱部31eと、柱部31eの頂端部に鉤状に設けられる係止頭部31fを有する。
【0080】
このようなモーター嵌着収容部31に電動モーター15aを取り付ける場合は、電動モーター15aを、
図9に示すように、モーター嵌着収容部31の開口側(底面部31aとは反対の天井側)からモーター嵌着収容部31内に挿入する。このとき、係止爪部31cが弾性変形することによって、電動モーター15aをモーター嵌着収容部31内に円滑に挿入して4つの位置決め部31bの内側に収容でき、また、電動モーター15aが収容された後に柱部31eが弾性復帰することによって、電動モーター15aを係止頭部31fでしっかりと係止し、モーター嵌着収容部31内に電動モーター15aを収容して固定することができる。
【0081】
このように片持ち状のアーム部34に設けられたモーター嵌着収容部31に振動発生部15の電動モーター15aが固定された本実施例3のステアリングホイールによれば、振動発生部15の振動を前述の実施例1の場合と同様にリム部11に効率良く伝達できるため、前述の実施例1のステアリングホイール1と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0082】
図11は、本実施例4に係るステアリングホイールのアーム部を示す要部斜視図であり、
図12は、アーム部に対する電動モーターの取り付けについて説明する説明図である。
【0083】
本実施例4のステアリングホイールでは、アーム部44に設けたモーター固定壁部41aにモーター固定部材(ビス)42を用いて電動モーター15aを固定することによって、アーム部44に振動発生部15が取り付けられている。なお、それ以外の本実施例4のステアリングホイールの構成については、前述の実施例1のステアリングホイール1と実質的に同様に形成されている。
【0084】
本実施例4のアーム部44は、リム芯金部11aの下端部分(6時の部分)からボス芯金部12aに向けて、一定のアーム幅寸法をもって延出している。このアーム部44は、リム芯金部11aに成形により一体化されているとともに、他端部が自由端部となるように片持ち状に配されている。また、本実施例4のアーム部44の自由端部には、電動モーター15aを固定するモーター固定部41が設けられている。
【0085】
本実施例4のモーター固定部41は、アーム部44にアーム長さ方向に沿って立設され、一定の壁厚を有するモーター固定壁部41aと、モーター固定壁部41aを補強する2つの補強リブ41bとを有する。モーター固定壁部41aには、電動モーター15aの回転軸部が挿入される挿入開口部41cが形成されており、モーター固定壁部41aは、この挿入開口部41cにより略U字状の形態を有する。
【0086】
また、モーター固定壁部41aの頂端部には、電動モーター15aに螺合するビス(モーター固定部材)42を挿通させるための2つの挿通孔41dが形成されている。この場合、電動モーター15aの本体部におけるモーター固定壁部41aの挿通孔41dに対応する位置には、ビス42を螺合させることが可能な2つの取付孔15cが設けられている。
【0087】
このようなモーター固定部41に電動モーター15aを取り付ける場合は、
図12に示すように、電動モーター15aをアーム部44の自由端部に載置するとともに、電動モーター15aの本体部における回転軸が突出する側の端面をモーター固定壁部41aに当接させる。そして、モーター固定部材であるビス42を、モーター固定壁部41aに設けたそれぞれの挿通孔41dから挿入して、電動モーター15aの取付孔15cに螺着させる。これによって、電動モーター15aが、アーム部44の表面とモーター固定壁部41aの壁面とに密接した状態で、アーム部44の自由端部にしっかりと固定される。
【0088】
このように片持ち状に配されたアーム部44のモーター固定部41に振動発生部15の電動モーター15aが固定された本実施例4のステアリングホイールによっても、振動発生部15の振動を前述の実施例1の場合と同様にリム部11に効率良く伝達できるため、前述の実施例1のステアリングホイール1と同様の効果を得ることができる。