(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
筒状部を有する軸受け部材と、この軸受け部材に回転可能に保持される軸部材と、この軸部材の下部に固定され当該軸部材が前記軸受け部材から抜けるのを防止する抜け止め部材と、前記軸部材の回転動作を検出する回転検出手段と、前記軸部材の下方に設けられ前記軸部材の軸線方向への押圧操作に伴って駆動されるプッシュスイッチとを備えた回転型電気部品において、
前記軸受け部材は、前記軸部材を回転可能に案内する軸受け部と、この軸受け部の下部に当該軸受け部よりも大きく形成された収容部と、を有し、前記収容部の天井部に平坦な面を有する受け部が設けられており、
前記抜け止め部材は、前記収容部に配置されるとともに前記受け部と当接可能に対向する板状部を有し、
前記受け部と前記板状部との間に潤滑剤が設けられていることを特徴とする回転型電気部品。
前記抜け止め部材は、金属材からなり、環状の前記板状部と、前記板状部の内縁側に繋がって形成され前記軸部材と係合可能な複数の係合片と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転型電気部品。
前記軸部材は、下端部側に前記抜け止め部材の前記係合片と係合する係合軸部と、前記板状部の上側に当接する規制部とを有し、前記抜け止め部材は、前記板状部が前記規制部に当接した状態で、前記軸部材に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の回転型電気部品。
前記受け部には、前記板状部に対向する前記平坦な面から上方に窪むように凹部が設けられており、前記凹部に前記潤滑剤が保持されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の回転型電気部品。
前記筒状部の内面には、先端部と前記収容部との間の位置に、前記軸部材の回転中心軸と直交する方向における寸法が前記収容部側よりも前記先端部側で大きくなるように形成された段差部が設けられ、
前記軸部材には、前記段差部の下部側に挿通可能な細軸部と、前記筒状部の前記先端部側に挿通可能であって前記細軸部よりも太い太軸部とが設けられるとともに、前記細軸部と前記太軸部との間に前記段差部と対向する当接部が形成され、
前記段差部と前記当接部との間には潤滑剤が設けられており、前記軸部材が前記軸線方向に押圧操作された際に、前記当接部が前記段差部に当接することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の回転型電気部品。
【背景技術】
【0002】
従来、操作軸に対する回転操作量を検出する回転型電気部品が知られている。特に、操作軸に対する押圧操作を検出するプッシュスイッチが内蔵された回転型電気部品は、例えば、自動車のエアコンの温度やオーディオの音量などの調整を行うための回転型エンコーダとして好適に利用される。
【0003】
プッシュスイッチが内蔵された回転型電気部品は、例えば特許文献1に開示されている。
図11は、従来の回転型電気部品900を示す分解斜視図である。
図12は、従来の回転型電気部品900を示す断面図である。操作軸902は、例えば、金属製で、下端部は駆動体906に嵌り込む駆動体係止部902Aとなっている。また、駆動体係止部902Aのやや上方部分には抜け止め凹部が形成されている。本体930は絶縁ケース904の上部に軸受け部材903を組み合わせて構成され、内部に回転体収納部904Bを有する。軸受け部材903は、例えば、アルミダイキャストで形成され、円筒状に形成されている。軸受け部材903には小径円筒部903Aと大径円筒部903Bが形成されている。回転体収納部904B内には、回転体905が回転可能に配設されている。回転体905は、例えば、樹脂材料で形成され、中空の円盤状に形成されている。小径円筒部903Aには操作軸902が挿通状態で嵌合され、抜け止め凹部にリング910を嵌め込むことで操作軸902が小径円筒部903Aの下縁部に抜け止めされている。操作軸902を回転すると駆動体906も回転し、駆動体906を介して回転体905が回転するようになっている。大径円筒部903Bには、回転体905の上部が駆動体906とともに嵌合し、回転体905は大径円筒部903Bの内壁面にガイドされて回転する。絶縁ケース904には、1対の固定接点部材911、912と3本の摺動接点部材913、914、915が埋設されている。ゴムラバー909は、ゴム材料で形成され、押圧されると下方に弾性変形し押圧部909Bが可動接点部材916を押圧する。
【0004】
1対の固定接点部材911、912が可動接点部材916を介して導通、非導通となることで、スイッチ手段が構成される。回転体905が回転すると摺動接点部材913、914、915の接触部が、回転体905の下面に設けられた導電パターンと接離して、摺動接点部材913、914、915の端子部間が導通、非導通となり、パルス信号が出力される。
【0005】
操作軸902に対する押圧操作及び回転操作を可能とするために、操作軸902の上部は、軸受け部材903の先端部に、下部は、駆動体906及び回転体905を介して間接的に軸受け部材903に支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、操作軸(軸部材)の軸線方向への押圧操作を解除した際に、軸部材が初期状態に復帰し、軸部材に取り付けられた抜け止め用リングが軸受け部材に当接して、音が発生し、品位を損なう。特に、この当接音は、軸受け部材と抜け止め用リングが金属材で構成される場合に大きくなる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、軸部材への押圧操作を解除して初期状態に復帰する際に発生する音を抑制して、品位を高めることができる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転型電気部品は、筒状部を有する軸受け部材と、この軸受け部材に回転可能に保持される軸部材と、この軸部材の下部に固定され当該軸部材が前記軸受け部材から抜けるのを防止する抜け止め部材と、前記軸部材の回転動作を検出する回転検出手段と、前記軸部材の下方に設けられ前記軸部材の軸線方向への押圧操作に伴って駆動されるプッシュスイッチとを備えた回転型電気部品において、前記軸受け部材は、前記軸部材を回転可能に案内する軸受け部と、この軸受け部の下部に当該軸受け部よりも大きく形成された収容部と、を有し、前記収容部の天井部に平坦な面を有する受け部が設けられており、前記抜け止め部材は、前記収容部に配置されるとともに前記受け部と当接可能に対向する板状部を有し、前記受け部と前記板状部との間に潤滑剤が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、軸受け部材の受け部と抜け止め部材の板状部との間には、潤滑剤が設けられているので、軸部材の軸線方向への押圧操作を解除して初期状態に復帰し、板状部が受け部に当接する際の音を小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の回転型電気部品は、前記抜け止め部材は、金属材からなり、環状の前記板状部と、前記板状部の内縁側に繋がって形成され前記軸部材と係合可能な複数の係合片と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、確実かつ容易に、抜け止め部材を軸部材に取り付けることができる。
【0013】
また、本発明の回転型電気部品は、前記軸部材は、下端部側に前記抜け止め部材の前記係合片と係合する係合軸部と、前記板状部の上側に当接する規制部とを有し、前記抜け止め部材は、前記板状部が前記規制部に当接した状態で、前記軸部材に固定されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、軸部材に対する抜け止め部材の取り付け位置が定まるので、軸部材の軸受け部材から突出する量のばらつきを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の回転型電気部品において、前記受け部には、前記板状部に対向する前記平坦な面から上方に窪むように凹部が設けられており、前記凹部に前記潤滑剤が保持されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、受け部に凹部が形成されているので、潤滑剤によって抜け止め部材が受け部の平坦な面に貼り付いてしまうことを防止できる。また、凹部を潤滑剤のたまり部として利用できる。
【0017】
また、本発明の回転型電気部品において、前記凹部は、前記軸部材への押圧操作を行わない初期状態において、前記板状部によって覆われていることが好適である。
【0018】
この構成によれば、潤滑剤を保持する凹部が、初期状態において板状部で覆われているので、凹部からの潤滑剤の流れ出しを少なくでき、長期にわたって潤滑剤を保持して、音の抑制を行うことができる。
【0019】
また、本発明の回転型電気部品において、前記筒状部の内面には、先端部と前記収容部との間の位置に、前記軸部材の回転中心軸と直交する方向における寸法が前記収容部側よりも前記先端部側で大きくなるように形成された段差部が設けられ、前記軸部材には、前記段差部の下部側に挿通可能な細軸部と、前記筒状部の前記先端部側に挿通可能であって前記細軸部よりも太い太軸部とが設けられるとともに、前記細軸部と前記太軸部との間に前記段差部と対向する当接部が形成され、前記段差部と前記当接部との間には潤滑剤が設けられており、前記軸部材が前記軸線方向に押圧操作された際に、前記当接部が前記段差部に当接することが好適である。
【0020】
この構成によれば、軸部材が押圧操作された際に、軸部材の当接部が段差部に当たって軸部材の移動が停止する際に、当接音が発生するが、段差部と当接部との間に潤滑剤を設けることで、この当接音を小さくできる。また、段差部及び当接部を、筒状部の先端部から離間した位置に設けることができるので、潤滑剤が外部に流出しにくい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、筒状部を有する軸受け部材は、軸部材を回転可能に案内する軸受け部と、この軸受け部の下部に当該軸受け部よりも大きく形成された収容部と、を有し、収容部の天井部に平坦な面を有する受け部が設けられている。抜け止め部材は、収容部に配置されるとともに受け部と当接可能に対向する板状部を有し、受け部と板状部との間に潤滑剤が設けられている。これにより、軸部材の軸線方向への押圧操作を解除して板状部が受け部に当接する際の音を小さくすることができる。したがって、軸部材への押圧操作を解除して初期状態に復帰する際に発生する音を抑制して、品位を高めることができる回転型電気部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、分かりやすいように、図面は寸法を適宜変更している。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の回転型電気部品1を示す斜視図である。
図2は、回転型電気部品1を斜め上方から見た分解斜視図である。
図3は、回転型電気部品1を斜め下方から見た分解斜視図である。
図4は、回転型電気部品1を示す正面図である。
図5は、
図4のV−V線で切断した断面図である。
図6は、
図5と同じ断面において軸部材10が軸線10a方向へ押圧操作された状態を示す断面図である。
図7は、軸受け部材20を示す外観図であり、
図7(a)は平面図であり、
図7(b)は底面図である。
図8は、軸部材10を示す外観図であり、
図8(a)は側面図であり、
図8(b)は底面図である。
図9は、抜け止め部材16を示す外観図であり、
図9(a)は平面図であり、
図9(b)は正面図である。
図10は、
図4のX−X線で切断した断面図である。
【0025】
本発明の第1実施形態の回転型電気部品1は、
図1〜
図5に示すように、軸部材10と、軸受け部材20と、回転検出手段30と、プッシュスイッチ40とを備え、ケース部材50に組み込まれたものである。なお、本明細書においては、以下の説明を分かりやすくするために、
図1のZ1側を上方、Z2側を下方とする。
【0026】
軸部材10は、アルミニウム等の金属材から、例えば切削加工によって構成され、断面が円形状の第1軸部11及び第2軸部12と、第1軸部11より大きな形状に形成された操作部13とを有している。
図2及び
図3に示すように、軸部材10は軸部材10の軸線10a方向において上方側が太くなるように形成されていて、本実施形態では、第1軸部11が第2軸部12よりも太い太軸部10eを構成し、第2軸部12が細軸部10dを構成している。細軸部10dと太軸部10eとの間には、
図3に示すように、段差によって当接部10fが形成されている。この当接部10fは、軸線10aと直交する平坦な面を有している。また、軸部材10の下端部側には非円形状の係合部14が形成されている。さらに、軸部材10は、第2軸部12と係合部14との間に、係合軸部10bと規制部10cとを有している。なお、係合軸部10bは円形状に形成されている。また、規制部10cは軸線10aと直交する平坦な面で形成されている。
【0027】
軸受け部材20は金属製で、例えば、亜鉛ダイキャストで構成され、
図1〜
図4に示すように、筒状部25と、この筒状部25の下方側に設けられる矩形状のフランジ部26とを有している。本実施形態の軸受け部材20は、
図2に示すように、筒状部25の先端部25a側に第1軸受け部21が設けられている。また、
図3及び
図5に示すように、第1軸受け部21よりも軸部材10の軸線10a方向において下部に位置する第2軸受け部22を有している。そして、筒状部25の内面には、第1軸受け部21と第2軸受け部22との間の位置に、軸部材10の回転中心軸と直交する方向における寸法が第2軸受け部22側よりも第1軸受け部21側で大きくなるように形成された段差部23が設けられている。段差部23の上面は、軸部材10の当接部10fに対応した平行な面となっている。さらに、軸受け部材20には、第2軸受け部22の下部に第2軸受け部22よりも大きく形成された収容部27が設けられている。本実施形態の収容部27の天井部27aは平坦に形成されており、この天井部27aに平坦な面24aを有する受け部24が設けられている。本実施形態の受け部24には、
図3及び
図5に示すように、平坦な面24aから上方に窪むように凹部24bが設けられている。本実施形態の受け部24に設けられた凹部24bは、
図7(b)に示すように、複数(8個)である。また、軸受け部材20は、第2軸受け部22よりも下方に位置して後述する回転部材31を回転可能に保持する案内部20bを有している。なお、軸部材10の回転中心軸は、軸線10aと一致している。
【0028】
駆動体15は、合成樹脂が成形されたものである。駆動体15は、
図2に示すように、軸部材10の係合部14が嵌合する形状に形成されている。また、駆動体15は、外周に凹凸形状を有し、
図2及び
図3に示すように、軸線10a方向においては後述する回転部材31に摺接する形状を備えている。軸部材10の係合部14に駆動体15を圧入により嵌合させることによって、回転部材31に対する軸部材10の所望の動作を可能にしている。
【0029】
抜け止め部材16は、弾性を有する金属材からなり、
図2、
図3及び
図9に示すように、環状の板状部16aと、板状部16aの内縁側に繋がって形成された複数の係合片16bとを備えている。抜け止め部材16は、環状の板状部16aが軸部材10の規制部10cに当接した状態で、弾性を有する係合片16bが軸部材10の係合軸部10bと係合して、軸部材10の下端部に固定されている。これにより、確実かつ容易に、抜け止め部材16を軸部材10に取り付けることができる。
【0030】
軸部材10の第1軸部11は、第1軸受け部21に摺接可能に対向して配置され、第2軸部12は、第2軸受け部22に摺接可能に対向して配置され、軸受け部材20の第1軸受け部21及び第2軸受け部22に回転可能に支持される。また、後述するように、軸部材10は操作部13が押圧操作されたときには軸線10a方向へ移動可能に支持されている。
【0031】
そして、軸部材10の下端部は、軸受け部材20の収容部27に位置し、駆動体15及び抜け止め部材16が嵌め込まれている。これにより、軸受け部材20から軸部材10が引き抜かれてしまうことを防止できるとともに、操作部13が押圧操作されていないときには抜け止め部材16の板状部16aが収容部27の天井部27aの受け部24に当接する初期状態に保持できる。また、軸部材10に対する抜け止め部材16の取り付け位置が規制部10cで定まるので、軸部材10の軸受け部材20から突出する量のばらつきを抑えることができる。
【0032】
なお、
図5及び
図6に示すように、受け部24と板状部16aとの間に潤滑剤61が設けられている。受け部24は凹部24bを有しているので、凹部24bに潤滑剤61が保持されている。また、凹部24bを潤滑剤61のたまり部として利用できる。また、第1軸部11と第1軸受け部21との間、及び第2軸部12と第2軸受け部22との間、段差部23と当接部10fとの間には潤滑剤62が設けられている。潤滑剤61及び潤滑剤62にはグリース等の潤滑油が好適である。また、図示していないが、収容部27の案内部20bにも潤滑剤61が設けられている。なお、潤滑剤61と潤滑剤62は、同じものを用いている。
【0033】
回転検出手段30は、軸部材10の回転動作を検出するもので、軸部材10の軸線10aを中心に回転可能な回転部材31と、回転部材31に固定された摺動子32と、固定接点33a、34a、35aを有する導電部材33、34、35とを備えている。回転部材31は、合成樹脂材からなり、駆動体15を収容する部分に貫通孔が形成されている。この貫通孔は、駆動体15が下方に移動するときには駆動体15を移動可能とするとともに、駆動体15が軸線10aを中心に回転するときに駆動体15と一体に回転部材31を回転させる突起31cを有している。これにより、軸部材10の回転動作が駆動体15を介して回転部材31に伝達される。摺動子32は、金属の板バネを加工したものである。また、回転部材31の上面には凹凸部31bが形成されている。そして、この凹凸部31bに弾接可能となるように、金属製のバネ部材36が軸受け部材20に固定されている。
【0034】
導電部材33、34、35は、導電性の金属板を加工したものである。導電部材33、34、35は、後述する第1ケース部材51に固定され、導電部材33、34、35の固定接点33a、34a、35aが円周方向に分割配置されている。また、導電部材33、34、35は、第1ケース部材51から外部に露出した端子部33b、34b、35bを備えている。
【0035】
プッシュスイッチ40は、可動接点部材41と固定接点部材42と支持部材43と弾性部材45とを備えている。可動接点部材41は、導電性の金属板からなり、
図2及び
図3に示すように、可動接点部41aと、可動接点部41aを弾性変形可能に支持する支持部41bとを備えている。固定接点部材42は、導電性の金属板からなり、後述する第1ケース部材51に固定され、切替え固定接点である固定接点部42aと端子部42bとを有している。支持部材43は、導電性の金属板からなり、後述する第1ケース部材51に固定され、コモン固定接点である支持接点部43aと端子部43bとを有している。弾性部材45は、例えばシリコーンゴムをドーム状に成形したものであり、上下方向に弾性変形可能である。この弾性部材45は、駆動体15を介して軸部材10を押圧操作前の初期状態に復帰させる付勢部材(復帰部材)である。すなわち、本実施形態のプッシュスイッチ40は、軸部材10を初期状態に復帰させる復帰部材としての弾性部材45を備えている。なお、可動接点の構成によっては、可動接点部材に復帰部材の機能を持たせることも可能である。
【0036】
ケース部材50は、導電部材33、34、35、固定接点部材42及び支持部材43を保持する第1ケース部材51と、第1ケース部材51及び軸受け部材20を一体に保持するカバー53とからなる。
【0037】
第1ケース部材51は、絶縁性を有する合成樹脂材からなり、
図2及び
図3に示すように、導電部材33、34、35、固定接点部材42及び支持部材43と一体にインサート成形されたものである。
【0038】
カバー53は、金属板を折り曲げ加工したものである。カバー53は、軸受け部材20のフランジ部26と第1ケース部材51とを挟持するように折り曲げられている。
【0039】
回転型電気部品1は、軸部材10の回転操作と押圧操作とが可能となっている。回転検出手段30は、回転部材31に取り付けられた摺動子32の3つの接点部が導電部材33、34、35の固定接点33a、34a、35aと摺接することにより、回転部材31の回転を検出できるように構成されている。軸部材10の回転操作により回転部材31が回転し、導電部材33、34、35の固定接点33a、34a、35aと摺動子32の接点部とが接離して、導電部材33、34、35の間の導通状態が切り替わる。これにより、導電部材33、34、35の端子部33b、34b、35bに、摺動子32の摺接位置に応じた信号が出力される。こうして、出力される信号の変化により回転操作を検出することができる。このとき、軸受け部材20にはバネ部材36が固定されて、回転部材31の凹凸部31bに弾接する。これにより、回転部材31の回転に要する荷重が回転に伴って変化する。なお、回転検出手段30を、抵抗体パターンを用いた角度センサで構成することもできる。
【0040】
一方、プッシュスイッチ40は、
図5に示すように、可動接点部材41の可動接点部41aが初期状態で固定接点部42aに接触しないように配置される。支持部材43は、固定接点部材42には接触しない位置に配置され、支持接点部43aが可動接点部材41の支持部41bを支持している。弾性部材45のドーム部45bの下部は可動接点部材41の支持部41bに当接するように配置され、弾性部材45の中央部45aは、
図5に示すように、初期状態で可動接点部41aとは離間している。
【0041】
プッシュスイッチ40は、
図6に示すように、軸部材10の軸線10a方向への押圧操作によって駆動される。
図5に示す初期状態から操作部13に対して押圧操作が行われた場合、
図6に示すように、弾性部材45のスカート状(末広がり状)のドーム部45bが座屈するように弾性変形して、弾性部材45の中央部45aが可動接点部41aを押圧する。これにより、可動接点部材41の可動接点部41aが固定接点部材42の固定接点部42aに接触する。こうして、可動接点部材41を介して固定接点部材42の端子部42bと支持部材43の端子部43bとが導通する。したがって、軸部材10の押圧操作を検出することができる。また、押圧操作状態から解放されると、
図5に示すように、弾性部材45が初期状態に復元するとともに、可動接点部41aが固定接点部42aから離れる。したがって、非押圧操作状態に戻ったことを検出することができる。
【0042】
回転型電気部品1は、電子機器等に組み込まれて、その各種入力に使用される。なお、電子機器等に取り付けられた状態における軸線10a方向は、例えば水平方向であってもよい。
【0043】
次に、本実施形態の回転型電気部品1の特徴部分について詳述する。
【0044】
本実施形態の回転型電気部品1では、軸部材10が軸受け部材20の第1軸受け部21に摺接可能に対向して配置される第1軸部11と、軸受け部材20の第2軸受け部22に摺接可能に対向して配置される第2軸部12とを備えている。第1軸部11及び第2軸部12は円形の断面形状を有している。軸受け部材20の第2軸受け部22の内周面は、
図7(a)に示すように、円形の断面形状を有している。
図5及び
図6に示すように、第2軸部12と第2軸受け部22との間のクリアランスが小さくすることができる。一方、第1軸受け部21の内面は、断面形状が複数の辺を有する多角形状をなしており、より具体的には、
図2及び
図7(a)に示すように、正八角形の角部が丸められた断面形状を有している。これにより、
図10に示すように、第1軸受け部21の多角形状を構成する複数の辺に対応した部分に第1軸部11が回転可能に案内される。
【0045】
本実施形態での第1軸受け部21の内面は、断面形状が複数の辺を有する多角形状をなしており、ダイキャスト等の金型鋳造法等で精度を出しやすい。軸受け部材20の第1軸受け部21と第2軸受け部22の2箇所を、ダイキャスト等の金型鋳造法等で同時に真円に加工するのは、難しく、少なくとも一方の第1軸受け部21を多角形状とすることで、第1軸受け部21と第2軸受け部22の寸法精度が高められる。これにより、第1軸部11と第1軸受け部21との間のクリアランスを小さくすることができる。一方、回転部材31と案内部20bとの間のクリアランスは、第1軸部11と第1軸受け部21との間のクリアランス、及び、第2軸部12と第2軸受け部22との間のクリアランスよりも大きい。これにより、案内部20bにおける回転部材31の回転動作が軸部材10に影響することなく、確実に、軸部材10を軸受け部材20の第1軸受け部21及び第2軸受け部22で回転可能にガイドすることができる。なお、軸受け部材20の収容部27に配置された各部材は、固定または弾性力で付勢された状態にあり、ガタつきを生じることはない。
【0046】
本実施形態の回転型電気部品1は、軸部材10を軸受け部材20の第1軸受け部21及び第2軸受け部22で直接、回転可能に支持しているので、軸部材10と軸受け部材20との間に別な部材が介在しないものとなり、軸部材10のガタを小さくすることが可能となる。さらに、第1軸受け部21の断面形状を多角形状とすることによって、第1軸部11と第1軸受け部21との間のクリアランス、及び、第2軸部12と第2軸受け部22との間のクリアランスが同時に小さくなり、軸部材10のガタを小さくすることができる。なお、本実施形態の回転型電気部品1では、第2軸受け部22の内面が円形の断面形状を有しているが、第2軸部12の回転動作を妨げない形状であれば円形に限定されるものではない。
【0047】
また、本実施形態の回転型電気部品1では、軸受け部材20は軸部材10を軸線方向へ移動可能に支持し、少なくとも第1軸部11と第1軸受け部21との間、及び第2軸部12と第2軸受け部22との間に、潤滑剤62が設けられている。第2軸部12と第2軸受け部22との間のクリアランスが小さく、しかも潤滑剤62が設けられているために、軸部材10を軸線方向へ移動させようとしたときに空気の移動が妨げられる。この場合であっても、第1軸受け部21の多角形状の角部は軸部材10との間のクリアランスが大きくなっている。このため、第1軸受け部21の角部分を第1軸受け部21と第2軸受け部22との間の空間との連通部とすることができる。したがって、第1軸受け部21と第1軸部11との間、及び第2軸受け部22と第2軸部12との間に潤滑剤62を設けても、空気の移動が可能であり、軸部材10の押圧操作による動作を妨げることがない。
【0048】
図5に示すように、軸受け部材20の段差部23と対向する当接部10fが軸部材10に形成され、段差部23と当接部10fとの間には潤滑剤62が設けられている。そして、軸部材10が軸線方向に押圧操作された際に、
図6に示すように、プッシュスイッチ40が駆動された後に当接部10fが段差部23に当接するように構成されている。軸部材10が押圧操作された際に、軸部材10の当接部10fが段差部23に当たって軸部材10の移動が停止する際に、当接音が発生するが、段差部23と当接部10fとの間に潤滑剤62を設けることで、この当接音を小さくできる。このような構成によれば、軸部材10の動きが緩衝される制動力を生じることになるものと考察される。また、段差部23及び当接部10fを、筒状部25の第1軸受け部21から離間した位置に設けることができるので、潤滑剤62が外部に流出しにくい。
【0049】
本実施形態の回転型電気部品1は、収容部27の天井部27aに平坦な面24aを有する受け部24が設けられている。そして、抜け止め部材16は、収容部27に配置されるとともに受け部24と当接可能に対向配置された板状部16aを有している。このため、押圧操作を解除して、弾性部材45の付勢力(復元力)によって初期状態に復帰する際に、
図5に示すように、板状部16aが受け部24に当接する。さらに、軸受け部材20の受け部24と抜け止め部材16の板状部16aとの間には、潤滑剤61が設けられているので、板状部16aが受け部24に当接する際の音を小さくすることができる。
【0050】
また、受け部24には凹部24bが形成されているので、潤滑剤61によって抜け止め部材16が受け部24の平坦な面24aに貼り付いてしまうことを防止できる。また、凹部24bを潤滑剤61のたまり部として利用できる。さらに、凹部24bは、受け部24に複数形成されているとともに、
図5に示すように、軸部材10への押圧操作を行わない初期状態において、板状部16aによって覆われている。こうすれば、凹部24bからの潤滑剤61の流れ出しを少なくでき、長期にわたって潤滑剤61を保持して、音の抑制を行うことができる。なお、凹部24bは、
図6及び
図7(b)に示す形状に限定されるものではなく、例えば周方向に連続する1つの環状溝であってもよい。また、凹部24bの一部が板状部16aに覆われる形状であればよく、凹部24bの全体が板状部16aによって覆われている必要はない。
【0051】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0052】
本実施形態の回転型電気部品1は、筒状部25を有する軸受け部材20と、この軸受け部材20に回転可能に保持される軸部材10と、この軸部材10の下部に固定され当該軸部材10が軸受け部材20から抜けるのを防止する抜け止め部材16と、軸部材10の回転動作を検出する回転検出手段30と、軸部材10の下方に設けられ軸部材10の軸線10a方向への押圧操作に伴って駆動されるプッシュスイッチ40とを備える。そして、軸受け部材20は、軸部材10を回転可能に案内する第2軸受け部22と、この第2軸受け部22の下部に当該第2軸受け部22よりも大きく形成された収容部27と、を有し、収容部27の天井部27aに平坦な面24aを有する受け部24が設けられている。さらに、抜け止め部材16は、収容部27に配置されるとともに受け部24と当接可能に対向する板状部16aを有し、受け部24と板状部16aとの間に潤滑剤61が設けられている。
【0053】
この構成によれば、軸受け部材20の受け部24と抜け止め部材16の板状部16aとの間には、潤滑剤61が設けられているので、軸部材10の軸線10a方向への押圧操作を解除して初期状態に復帰し、板状部16aが受け部24(平坦な面24a)に当接する際の音を小さくすることができる。
【0054】
また、本実施形態の回転型電気部品1は、抜け止め部材16は、金属材からなり、環状の板状部16aと、板状部16aの内縁側に繋がって形成され軸部材10と係合可能な複数の係合片16bと、を備える。この構成によれば、確実かつ容易に、抜け止め部材16を軸部材10に取り付けることができる。
【0055】
さらに、軸部材10は、下端部側に抜け止め部材16の係合片16bと係合する係合軸部10bと、板状部16aの上側に当接する規制部10cとを有し、抜け止め部材16は、板状部16aが規制部10cに当接した状態で、軸部材10に固定されている。この構成によれば、軸部材10に対する抜け止め部材16の取り付け位置が定まるので、軸部材10が軸受け部材20から突出する量のばらつきを抑えることができる。
【0056】
また、受け部24には、板状部16aに対向する平坦な面24aから上方に窪むように凹部24bが設けられており、凹部24bに潤滑剤61が保持されていることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、受け部24に凹部24bが形成されているので、潤滑剤61によって抜け止め部材16が受け部24の平坦な面24aに貼り付いてしまうことを防止できる。また、凹部24bを潤滑剤61のたまり部として利用できる。
【0058】
また、凹部24bは、軸部材10への押圧操作を行わない初期状態において、板状部16aによって覆われていることが好適である。
【0059】
この構成によれば、潤滑剤61を保持する凹部24bが、初期状態において板状部16aで覆われているので、凹部24bからの潤滑剤61の流れ出しを少なくでき、長期にわたって潤滑剤61を保持して、音の抑制を行うことができる。
【0060】
また、筒状部25の内面には、先端部25aと収容部27との間の位置に、軸部材10の回転中心軸と直交する方向における寸法が収容部27側よりも先端部25a側で大きくなるように形成された段差部23が設けられ、軸部材10には、段差部23の下部側に挿通可能な細軸部10dと、筒状部25の先端部25a側に挿通可能であって細軸部10dよりも太い太軸部10eとが設けられるとともに、細軸部10dと太軸部10eとの間に段差部23と対向する当接部10fが形成され、段差部23と当接部10fとの間には潤滑剤62が設けられており、軸部材10が軸線方向に押圧操作された際に、当接部10fが段差部23に当接することが好適である。
【0061】
この構成によれば、軸部材10が押圧操作された際に、軸部材10の当接部10fが段差部23に当たって軸部材10の移動が停止する際に、当接音が発生するが、段差部23と当接部10fとの間に潤滑剤62を設けることで、この当接音を小さくできる。また、段差部23及び当接部10fを、筒状部25の先端部25aから離間した位置に設けることができるので、潤滑剤62が外部に流出しにくい。
【0062】
以上のように、本発明の第1実施形態の回転型電気部品1を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらも本発明の技術的範囲に属する。
【0063】
(1)本実施形態において、抜け止め部材16は板状部16aと係合片16bとを備えるとしたが、係合軸部10bに係合する係合片16bをネジ止め等の他の係止方法による構成に変更してもよい。
【0064】
(2)本実施形態において、収容部27に平坦な面24aを有する受け部24が設けられていればよく、天井部27aが受け部24以外の位置で段差を有していてもよい。また、受け部24以外の壁面がドーム状であってもよい。
【0065】
(3)本実施形態において、軸部材10の第1軸部11と摺接可能に設けられた第1軸受け部21の内面が多角形状の断面形状を有し、第2軸部12と摺接可能に設けられた第2軸受け部22の内面が円形の断面形状を有しているが、これに限定されない。例えば、切削加工で形成される軸受け部材では、軸部材10の第1軸部11と摺接可能に設けられた第1軸受け部の内面を円形の断面形状を有して、スパイラル状の逃げ溝を設けたものとすることができる。
【0066】
(4)本実施形態において、軸部材10の第1軸部11及び第2軸部12が、それぞれ軸受け部材20の第1軸受け部21及び第2軸受け部22に直接対向して、回転可能に案内されるものとしているが、これに限定されない。例えば、下側の軸部は回転部材を介して、間接的に軸受け部材に案内されるものでも構わない。