(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471079
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】車両盗難防止システム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/24 20130101AFI20190204BHJP
B60R 25/04 20130101ALI20190204BHJP
【FI】
B60R25/24
B60R25/04
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-215779(P2015-215779)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-87761(P2017-87761A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】荒川 和典
(72)【発明者】
【氏名】江川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】荒川 将宏
(72)【発明者】
【氏名】岸本 耕平
(72)【発明者】
【氏名】太田 恭久
(72)【発明者】
【氏名】舟山 友幸
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−137354(JP,A)
【文献】
特開2004−359036(JP,A)
【文献】
特開2008−001133(JP,A)
【文献】
特開2007−320411(JP,A)
【文献】
米国特許第05229648(US,A)
【文献】
特開2007−170162(JP,A)
【文献】
特開2004−038766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00−25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間で照合を実施し、照合成立を条件に、前記セキュリティ制御手段が前記エンジン制御手段によるエンジンの始動を許可する車両盗難防止システムにおいて、
前記セキュリティ制御手段と前記エンジン制御手段との間で前記照合が成立し、且つ、前記エンジン制御手段と他の制御手段との間で他の照合が成立したことを条件に、前記セキュリティ制御手段が前記エンジン制御手段によるエンジンの始動を許可し、
前記セキュリティ制御手段は、前記エンジン制御手段と前記他の制御手段との間で前記他の照合が成立したことを条件に、前記エンジン制御手段との間で前記照合を実施する
ことを特徴とする車両盗難防止システム。
【請求項2】
前記エンジン制御手段は、エンジン始動操作が行われる毎に、前記他の照合を実施する前記他の制御手段をランダムに変更する
請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項3】
前記エンジン制御手段は、エンジン始動操作が行われる毎に、前記他の制御手段として複数の制御手段の中から一部の制御手段を選択し、その選択した制御手段とのみ前記他の照合を実施する
請求項1又は2に記載の車両盗難防止システム。
【請求項4】
前記セキュリティ制御手段は、エンジン始動操作を契機に電子キーとの間でキー照合を行い、
前記エンジン制御手段は、前記セキュリティ制御手段と前記電子キーとの間で前記キー照合が成立したことを条件に、前記他の制御手段との間で前記他の照合を実施する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両盗難防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間で照合を実施し、照合成立を条件に、セキュリティ制御手段がエンジン制御手段によるエンジンの始動を許可する車両盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジン始動操作を契機にイモビライザECUがキー照合を行い、キー照合が成立すると、イモビライザECUとエンジンECUとの間で照合を実施し、照合成立を条件に、イモビライザECUがエンジンECUによるエンジンの始動を許可する車両盗難防止システムが開示されている。
【0003】
車両オーナは、自車の電子キーを所持することで、車外でのキー照合の成立を経て解錠されたドアから乗車できる他、車内に設置されたエンジン始動用のプッシュスイッチを操作してエンジンを始動できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他車からイモビライザECU、エンジンECU、電子キーをセットで交換すると、エンジン始動が可能となる。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、防盗性の向上を可能にした車両盗難防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両盗難防止システムは、セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間で照合を実施し、照合成立を条件に、前記セキュリティ制御手段が前記エンジン制御手段によるエンジンの始動を許可する車両盗難防止システムにおいて、前記セキュリティ制御手段と前記エンジン制御手段との間で前記照合が成立し、且つ、前記エンジン制御手段と他の制御手段との間で他の照合が成立したことを条件に、前記セキュリティ制御手段が前記エンジン制御手段によるエンジンの始動を許可することをその要旨としている。
【0007】
この構成によれば、セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間で照合を実施することに加え、エンジン制御手段と他の制御手段との間で他の照合を実施することにより、アタック対象の制御手段に当該他の制御手段が含まれることになる。これにより、アタック対象の制御手段が増えるため、防盗性を向上できる。
【0008】
上記車両盗難防止システムについて、前記エンジン制御手段は、エンジン始動操作が行われる毎に、前記他の照合を実施する前記他の制御手段をランダムに変更することとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、アタック対象の制御手段を絞り込むことができず、セット交換の範囲が広がることになる。したがって、防盗性をさらに向上できる。
上記車両盗難防止システムについて、前記エンジン制御手段は、エンジン始動操作が行われる毎に、前記他の制御手段として複数の制御手段の中から一部の制御手段を選択し、その選択した制御手段とのみ前記他の照合を実施することとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、エンジン制御手段が他の制御手段の全てとの間で他の照合を実施するのではなく、エンジン始動操作が行われる毎に選択する一部の制御手段とのみ他の照合を実施することで、他の照合に要する時間の増加が抑えられる。したがって、エンジン始動性の低下を抑制しつつ、防盗性を向上できる。
【0011】
上記車両盗難防止システムについて、前記セキュリティ制御手段は、前記エンジン制御手段と前記他の制御手段との間で前記他の照合が成立したことを条件に、前記エンジン制御手段との間で前記照合を実施することとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、エンジン制御手段と他の制御手段との間で他の照合が成立しない限り、セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間で照合が実施されない。したがって、セキュリティ制御手段とエンジン制御手段との間での照合の秘匿性を向上できる。
【0013】
上記車両盗難防止システムについて、前記セキュリティ制御手段は、エンジン始動操作を契機に電子キーとの間でキー照合を行い、前記エンジン制御手段は、前記セキュリティ制御手段と前記電子キーとの間で前記キー照合が成立したことを条件に、前記他の制御手段との間で前記他の照合を実施することとしてもよい。
【0014】
この構成によれば、車両オーナは、自車の電子キーを所持してエンジン始動操作を行うことで、キー照合の成立を経てエンジンを始動できるようになる。したがって、利便性とセキュリティ性を両立できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防盗性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、車両盗難防止システムの一実施の形態について説明する。
図1に示すように、車両盗難防止システム1は、車両オーナが所持する電子キー2との間でキー照合を行うイモビライザECU3を備えている。電子キー2は、車載機から車外或いは車内の通信エリアに発信された呼び掛け信号を受けて電子キー2に固有のキーIDを含む応答信号を返信する他、車載機からエンジン始動用のプッシュスイッチ付近の極限られた通信エリアに発信された起動用電波を受けて電子キー2に内蔵されたトランスポンダからトランスポンダコードを返信する。キーIDとトランスポンダコードは共に電子キー2に固有のキー情報であり、少なくとも一方が車載ECUに登録済のキー情報と一致したとき、キー照合が成立したことになる。
【0018】
イモビライザECU3は、自らが電子キー2との間でトランスポンダコードの照合を行う他、電子キー2との間でキーIDの照合を行う図示しないスマートECUからキーIDの照合結果を取得する。前者の場合、イモビライザECU3は、電子キー2との間で直接的にキー照合を行うとともに、後者の場合、イモビライザECU3は、スマートECUを通じて間接的にキー照合を行うことになる。そして、イモビライザECU3は、上記プッシュスイッチによるエンジン始動操作を契機に電子キー2との間でキー照合を行い、キー照合が成立すると、車内通信ネットワーク上にキー照合が成立したことを示すキー照合成立信号を出力する。イモビライザECU3はセキュリティ制御手段に相当する。
【0019】
上記車内通信ネットワークには、イモビライザECU3の他、エンジンECU4が接続されている。同ネットワーク上の信号は、当該ネットワークに接続された複数のECU間で共有される。ECU間で共有される信号には、上記キー照合成立信号の他、エンジン始動操作の検出信号等が含まれる。エンジン始動操作の検出信号は、当該ネットワークに接続された図示しない電源ECUから出力される。
【0020】
エンジンECU4は、上記キー照合成立信号を取得すると、当該エンジンECU4と共に他のネットワークに接続された複数のECU5〜7の中からエンジン始動操作毎にランダムに1つのECUを選択し、その選択したECUとの間で照合を実施する。ECU5〜7には、それぞれに固有の照合用暗号コードが内蔵されており、エンジンECU4は、選択したECUのみを対象に暗号コードの照合を実施する。そして、エンジンECU4は、照合が成立すると、当該エンジンECU4と共にイモビライザECU3が接続された上記ネットワーク上に暗号コード照合成立信号を出力する。エンジンECU4はエンジン制御手段に相当し、ECU5〜7はそれぞれ他の制御手段に相当する。
【0021】
イモビライザECU3は、上記暗号コード照合成立信号を取得すると、エンジンECU4との間で照合を実施する。そして、イモビライザECU3は、エンジンECU4との間で照合が成立したことを条件に、エンジンECU4にエンジン始動許可信号を出力しつつ、エンジンECU4によるエンジンの始動を許可する。
【0022】
次に、車両盗難防止システム1の作用について説明する。
エンジン始動操作が行われると、
図1に丸数字1で示すように、イモビライザECU3がキー照合を行う。
【0023】
上記キー照合が成立すると、丸数字2で示すように、エンジンECU4がECU5〜7のどれか1つとランダムで照合(他の照合に相当)を実施する。
上記他の照合が成立すると、丸数字3で示すように、イモビライザECU3とエンジンECU4との間で照合を実施し、照合成立を条件に、イモビライザECU3がエンジンECU4によるエンジンの始動を許可する。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)イモビライザECU3とエンジンECU4との間で照合を実施することに加え、エンジンECU4とECU5〜7との間で他の照合を実施することにより、アタック対象の車載ECUに当該ECU5〜7が含まれることになる。これにより、アタック対象の車載ECUが増えるため、防盗性を向上できる。
【0025】
(2)エンジンECU4は、エンジン始動操作が行われる毎に、他の照合を実施する車載ECUをECU5〜7の中でランダムに変更する。この構成によれば、アタック対象の車載ECUを絞り込むことができず、セット交換の範囲が広がることになる。したがって、防盗性をさらに向上できる。
【0026】
(3)エンジンECU4は、エンジン始動操作が行われる毎に、ECU5〜7の中から1つのECUを選択し、その選択したECUとのみ他の照合を実施する。この構成によれば、エンジンECU4がECU5〜7の全てとの間で他の照合を実施するのではなく、エンジン始動操作が行われる毎に選択する1つのECUとのみ他の照合を実施することで、他の照合に要する時間の増加が抑えられる。したがって、エンジン始動性の低下を抑制しつつ、防盗性を向上できる。
【0027】
(4)イモビライザECU3は、エンジンECU4とECU5〜7との間で他の照合が成立したことを条件に、エンジンECU4との間で照合を実施する。この構成によれば、エンジンECU4とECU5〜7との間で他の照合が成立しない限り、イモビライザECU3とエンジンECU4との間で照合が実施されない。したがって、イモビライザECU3とエンジンECU4との間での照合の秘匿性を向上できる。
【0028】
(5)エンジンECU4は、イモビライザECU3と電子キー2との間でキー照合が成立したことを条件に、ECU5〜7との間で他の照合を実施する。この構成によれば、車両オーナは、自車の電子キー2を所持してエンジン始動操作を行うことで、キー照合の成立を経てエンジンを始動できるようになる。したがって、利便性とセキュリティ性を両立できる。
【0029】
尚、上記実施の形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・エンジンECU4は、上記実施の形態によるECU5〜7の中からエンジン始動操作毎にランダムに2つのECUを選択し、その選択した2つのECUとの間で他の照合を実施してもよい。この場合も、3つ全てのECUとの間で他の照合を実施する訳ではないため、他の照合に要する時間の増加が抑えられることになる。
【0030】
・上記実施の形態によるECU5〜7から対象を広げ、全ての車載ECUのそれぞれに、エンジンECU4との間での他の照合に用いる固有の暗号コードを持たせ、エンジンECU4は、当該全ての車載ECUの中からエンジン始動操作毎にランダムに1つ又は複数のECUを選択し、その選択したECUとの間で他の照合を実施してもよい。
【0031】
・エンジンECU4は、エンジン始動操作毎に異なる個数のECUを選択し、その選択した全てのECUとの間で他の照合を実施してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…車両盗難防止システム、2…電子キー、3…イモビライザECU(セキュリティ制御手段)、4…エンジンECU(エンジン制御手段)、5〜7…ECU(他の制御手段)。