特許第6471083号(P6471083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471083操作レバー機構及び操作レバー機構のダンパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471083
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】操作レバー機構及び操作レバー機構のダンパー
(51)【国際特許分類】
   G05G 5/05 20060101AFI20190204BHJP
   G05G 1/04 20060101ALI20190204BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20190204BHJP
   F16F 1/06 20060101ALI20190204BHJP
   F16F 3/04 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   G05G5/05
   G05G1/04 Z
   F16F1/12 A
   F16F1/06
   F16F3/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-226261(P2015-226261)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-97456(P2017-97456A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007478
【氏名又は名称】和研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】森 陽一
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156077(JP,A)
【文献】 実開昭60−065821(JP,U)
【文献】 特公昭36−015456(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 5/05
F16F 1/06
F16F 1/12
F16F 3/04
G05G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバー軸で傾動自在に軸支された操作レバーが、外力が加えられなくなると中立位置に復帰する操作レバー機構において、レバー軸と中立ピンとが突出されたレバーベースと、前記レバー軸が挿入される円筒状のレバーボスとこのレバーボスを挟んで前記中立ピンと対向するレバー側ピンとを有する操作レバーと、前記レバー軸に支持される一対の復帰アームと、この一対の復帰アームの間に掛け渡される復帰ばねと、両端が前記中立ピンを跨いだ状態で前記レバーボスに外嵌圧入されるダンパーばねとを具備しており、前記操作レバーを傾動させると、レバー側ピンを介して一方の復帰アームも傾動されるとともに、ダンパーばねは中立ピンが一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばねがスリップし、傾動した操作レバーへ外力が加えられなくなると、前記操作レバーが復帰ばねによって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばねの他端が中立ピンに当接してダンパーばねが緩む方向へと力を加えられてダンパーばねがスリップし、前記ダンパーばねがスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバーが中立位置へと復帰する際の復帰ばねの復帰トルク以下に設定されていることを特徴とする操作レバー機構。
【請求項2】
ダンパーばねを構成する素線は、角断面線であることを特徴とする請求項1記載の操作レバー機構。
【請求項3】
レバー軸で傾動自在に軸支された操作レバーが、外力が加えられなくなると復帰ばねによって中立位置に復帰する操作レバー機構のダンパーにおいて、レバー軸が挿入される円筒状のレバーボスに両端が中立ピンを跨いだ状態で外嵌圧入されるダンパーばねと、前記レバー軸に支持される一対の復帰アームとを具備しており、前記操作レバーの傾動に伴って一方の復帰アームも傾動されるとともに、ダンパーばねは中立ピンが一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばねがスリップし、傾動した操作レバーへ外力が加えられなくなると、前記操作レバーが復帰ばねによって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばねの他端が中立ピンに当接してダンパーばねが緩む方向へと力を加えられてダンパーばねがスリップし、前記ダンパーばねがスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバーが中立位置へと復帰する際の復帰ばねの復帰トルク以下に設定されていることを特徴とする操作レバー機構のダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾動自在に軸支された操作レバーが外力が加えられなくなると中立位置に復帰する操作レバー機構と、操作レバー機構のダンパーとに関する。
【背景技術】
【0002】
操作レバーには、傾動操作中に手を離す、すなわち外力が加えられなくなると、復帰ばねによって自動的に中立位置に復帰するものがある。
この種の操作レバーでは、中立位置に復帰する際に中立位置を通りすぎ、中立位置を中心として傾動が繰り返されるハンチングが生じることがある。
ハンチングが発生すると、操作レバーからの信号も中立位置を中心とした細かな振動が伴って出力されるため、操作レバーによって制御される被制御機器に不都合が生じることがある。
【0003】
かかるハンチングを発生させないような機構として、特許第4744424号の『操作レバーのダンパー』が発案されている。
この『操作レバーのダンパー』は、『回転支軸に、揺動可能に軸支される操作レバーのダンパーであって、操作レバーに固定され回転支軸廻りに枢設される円筒状の摺動部と、該摺動部の外周面を挟み込み摩擦抵抗を付与するボディ部材と、該ボディ部材に前記摺動部を挟み込む弾性力を付与する弾性体と、を備え、操作レバーの傾動操作に対して摩擦抵抗を付与する』ようにしている。
すなわち、この『操作レバーのダンパー』では、摺動部とそれを挟み込むボディ部材との摩擦によってハンチングを抑制し、挟み込む力を弾性体によって調整するように構成しているのである。
【0004】
【特許文献1】特許第4744424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許第4744424号公報記載の操作レバーのダンパーには、以下のような問題がある。
ボディ部が摺動部に対して適正な摩擦抵抗を付与するためには、ボディ部や摺動部に高い寸法精度が要求される。このため、ボディ部や摺動部には微妙な追加加工が必要となっていた。
また、摺動部の外周面をボディ部で挟み込んだ後に、適正な摩擦抵抗を与えるための調整作業が必要となっていた。
さらに、使用しているうちに、磨耗により摺動部の外周面とボディ部との接触面積が増大し、その結果、当初に想定した摩擦抵抗より大きな抵抗力が加わってしまい、操作レバーの自動的な中立位置への復帰を阻害することが起こりうる。そうなると、操作レバーを操作する作業員が手を離しても被制御機器は意図せずに動作し続けるので、思いがけない事故が発生するおそれがある。このため、この操作レバーのダンパーでは、一定期間が経過したならば、摩擦抵抗を再調整作業を行う必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、より長い期間にわたって使用しても自動的な中立位置への復帰が阻害されるようなことがなく、構成する部品の微妙な追加加工や調整作業が必要ない操作レバー機構と、操作レバーのダンパーとを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る操作レバー機構は、レバー軸で傾動自在に軸支された操作レバーが、外力が加えられなくなると中立位置に復帰する操作レバー機構であって、レバー軸と中立ピンとが突出されたレバーベースと、前記レバー軸が挿入される円筒状のレバーボスとこのレバーボスを挟んで前記中立ピンと対向するレバー側ピンとを有する操作レバーと、前記レバー軸に支持される一対の復帰アームと、この一対の復帰アームの間に掛け渡される復帰ばねと、両端が前記中立ピンを跨いだ状態で前記レバーボスに外嵌圧入されるダンパーばねとを備えており、前記操作レバーを傾動させると、レバー側ピンを介して一方の復帰アームも傾動されるとともに、ダンパーばねは中立ピンが一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばねがスリップし、傾動した操作レバーへ外力が加えられなくなると、前記操作レバーが復帰ばねによって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばねの他端が中立ピンに当接してダンパーばねが緩む方向へと力を加えられてダンパーばねがスリップし、前記ダンパーばねがスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバーが中立位置へと復帰する際の復帰ばねの復帰トルク以下に設定されている。
【0008】
また、本発明に係る操作レバー機構のダンパーは、レバー軸で傾動自在に軸支された操作レバーが、外力が加えられなくなると復帰ばねによって中立位置に復帰する操作レバー機構のダンパーであって、レバー軸が挿入される円筒状のレバーボスに両端が中立ピンを跨いだ状態で外嵌圧入されるダンパーばねと、前記レバー軸に支持される一対の復帰アームとを備えており、前記操作レバーの傾動に伴って一方の復帰アームも傾動されるとともに、ダンパーばねは中立ピンが一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばねがスリップし、傾動した操作レバーへ外力が加えられなくなると、前記操作レバーが復帰ばねによって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばねの他端が中立ピンに当接してダンパーばねが緩む方向へと力を加えられてダンパーばねがスリップし、前記ダンパーばねがスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバーが中立位置へと復帰する際の復帰ばねの復帰トルク以下に設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る操作レバー機構は、操作レバーが傾動された状態から中立位置に復帰ばねの力によって自動的に復帰する際に、レバーボスに外嵌されたダンパーばねの一端が中立ピンに当接して緩む方向に力を加えられることで、ダンパーばねがスリップし、そのスリップする時の保持トルクは復帰ばねの初期トルク以下に設定されているため、操作レバーの傾動状態から中立位置への復帰を阻害することはない。
しかも、操作レバーを中立位置へと復帰させようとする復帰ばねの力は、ダンパーばねによっていわば吸収されるので、操作レバーが中立位置へと復帰したならば、スムーズにその位置で停止しハンチングは抑制される。
さらに、レバーボスにダンパーばねを外嵌圧入させるだけでよいので、従来の特許第4744424号に係る『操作レバーのダンパー』より大幅に部品点数を削減することができた。
しかも、従来の特許第4744424号に係る『操作レバーのダンパー』のようなボディ部等の構成部品の微妙な追加加工や組込み後の調整作業も不必要になった。
また、従来の特許第4744424号に係る『操作レバーのダンパー』よりも構成が簡素になったこととも相まって耐久度が高くなったので、より長期間に渡って使用し続けることができる。すなわち、再調整までの期間をより長くすることができるのである。
また、本発明に係る操作レバー機構のダンパーも同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る操作レバー機構の概略的分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る操作レバー機構の概略的側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る操作レバー機構を構成する操作レバーの概略的正面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る操作レバー機構を構成する復帰アームの概略的正面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る操作レバーの中立位置を示す図面であって、一対の復帰アームの一部破断した概略的一部破断正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る操作レバーの右側への傾動を示す図面であって、一対の復帰アームの一部破断した概略的一部破断正面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る操作レバーの右側へ傾動した状態から中立位置への復帰を示す図面であって、一対の復帰アームの一部破断した概略的一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る操作レバー機構は、レバー軸210で傾動自在に軸支された操作レバー100が、外力が加えられなくなると中立位置に復帰する操作レバー機構であって、レバー軸210と中立ピン220とが突出されたレバーベース200と、前記レバー軸210が挿入される円筒状のレバーボス121とこのレバーボス121を挟んで前記中立ピン220と対向するレバー側ピン122とを有する操作レバー100と、前記レバー軸210に支持される一対の復帰アーム300A、300Bと、この一対の復帰アーム300A、300Bの間に掛け渡される復帰ばね400と、両端が前記中立ピン220を跨いだ状態で前記レバーボス121に外嵌圧入されるダンパーばね500とを備えており、前記操作レバー100を傾動させると、レバー側ピン122を介して一対の復帰アーム300A、300Bの一方も傾動されるとともに、ダンパーばね500は中立ピン220が一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばね500がスリップし、傾動した操作レバー100へ外力が加えられなくなると、前記操作レバー100が復帰ばね400によって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばね500の他端が中立ピン220に当接してダンパーばね500が緩む方向へと力を加えられてダンパーばね500がスリップし、前記ダンパーばね500がスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバー100が中立位置へと復帰する際の復帰ばね400の復帰トルク以下に設定されている。
【0012】
前記操作レバー100は、作業員が手で傾動操作する部分であって、棒状のレバー部110と、このレバー部110の一端側に取り付けられる板状のプレート部120とを有している。前記レバー部110には作業員が手で握りやすいように合成樹脂等で構成されたハンドル部が取り付けられる。
【0013】
前記プレート部120には、レバーボス121と、レバー側ピン122とが取り付けられている。前記レバーボス121は、操作レバー100の傾動の支点となる部分であり、後述するレバー軸210が貫通するように前記プレート部120とともに貫通孔121Aが開設された円筒状になっている。
一方、前記レバー側ピン122は、レバーボス121より力点側に形成されている。なお、このレバー側ピン122は、前記レバーボス121より若干長めに形成されている。
【0014】
また、このプレート部120は、操作レバー100をレバーベース200に傾動可能に取り付けた場合、後述する中立ピン220がレバーボス121の下側に突出するように中立220の部分は切りかかれている。
【0015】
前記レバーベース200は、操作レバー100が傾動自在に軸支される部分であって、操作レバー100の支点となる円柱状のレバー軸210と、操作レバー100の直立方向を決定するための円柱状の中立ピン220とが設けられている。
前記レバー軸210は、操作レバー100のレバーボス121に嵌まり込み、操作レバー100の傾動操作の支点となる。このレバー軸210は、レバーボス121に嵌まり込んだ状態で先端がレバーボス121から突出するような長さ寸法に設定されている。このレバーボス121から突出した部分には、後述する一対の復帰アーム300A、300Bが取り付けられるためである。
一方、前記中立ピン220は、レバー軸210に操作レバー100が取り付けられた状態で操作レバー100のプレート部120の下側で、かつ中立状態にある操作レバー100のレバー側ピン122に対してレバーボス121を中心点として点対称の位置に形成されている。
なお、この中立ピン220は、前記レバー軸210と同等の長さ寸法に設定されている。
【0016】
また、図1等におけるレバーベース200は、レバー軸210と中立ピン220とが設けられている部分と、この部分に対して直交した部分とで全体として略L字形状に形成されているが、本発明におけるレバーベース200がこのような形状に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0017】
前記復帰ばね400はいわゆるコイルスプリングであり、自然状態から引っ張られることで畜勢する引っ張りばねである。かかる復帰ばね400の両端はフック状に形成されており、後述する一対の復帰アーム300A、300Bの切込み部331A、331Bに引っかけられるようになっている。
【0018】
前記復帰アーム300A、300Bは、図4等に示すように、前記レバー軸210が貫通される貫通孔311A、311Bが開設された中央部310A、310Bと、この中央部310A、310Bから延出されたレバー側ピン受け部320A、320Bと、このレバー側ピン受け部320A、320Bとは前記貫通孔311A、311Bを挟んで反対側に延出された復帰ばね止め部330A、330Bとが一体に形成された略への字形状の板部材である。
また、中央部310A、310Bと復帰ばね止め部330A、330Bとの間には、操作レバー100が中立位置にある場合、前記中立ピン220と当接する中立ピン受け部340A、340Bが形成されている。
【0019】
かかる復帰アーム300A、300Bは、操作レバー100の傾動操作を受け、操作レバー100に外力が加えられなくなったならば、後述する復帰ばね400の収縮力を受けて操作レバー100を中立位置に復帰させるようにする。
前記レバー側ピン受け部320A、320Bは、復帰アーム300A、300Bがレバー軸210に取り付けられた状態でレバー側ピン122の側方に位置する。一方、復帰ばね止め部330A、330Bには、復帰ばね400を引っかけるための切込み331A、331Bが形成されている。
このような復帰アーム300A、300Bは、それぞれ切込み部331A、331Bを外側に向けた状態でレバー軸210に取り付けられる。
【0020】
また、前記ダンパーばね500は、いわゆるねじりコイルばねであり、自然状態における巻部510の内径はレバーボス121の外径より若干小さく設定されている。従って、このダンパーばね500をレバーボス121に取り付けるには外嵌圧入することになる。かかるダンパーばね500は、巻部510をレバーボス121に圧入した状態では両端520A、520Bが中立ピン220を跨いだ状態となる。
このダンパーばね500を構成する素線は丸断面線でも角断面であってもよいが、丸断面線であると繰り返して使用された場合、レバーボス121に接触する部分が磨耗して接触面積が変わり、その結果、保持トルクが変動してしまうことがある。しかしながら、角断面線であると、このような保持トルクの変動をより少なくすることができるというメリットがある。
【0021】
また、レバーボス121の外周面を耐磨耗材料、例えばポリアミド合成繊維の一種であるナイロン(登録商標)、ポリアセタールの一種であるジュラコン等でコーティングしたり、これらからなる薄膜シートでカバーしたり、これらからなるシャフトカラーを嵌め込んだりすることで、磨耗の軽減、ダンパーばね500との摩擦係数の調整等を図ることができる。
【0022】
このような部品から構成される操作レバー機構では、2つのばね、すなわち復帰ばね400とダンパーばね500とを使用するが、この両ばね400、500には以下のような関係がある。すなわち、ダンパーばね500がスリップする時の保持トルクは、復帰ばね400の初期トルク以下に設定されているのである。
ここで、ダンパーばね500がスリップする際の保持トルクが、復帰ばね400の初期トルクより大きければ、傾動した操作レバー100に加えられる外力がなくなっても、ダンパーばね500の保持トルクによってそのままの状態が維持され、操作レバー100が中立位置へと自動的に復帰できないためである。
【0023】
このように構成された各部品は次のようにして組み合わせられる。
(1)レバーベース200のレバー軸210を操作レバー100のレバーボス121に挿入する。
(2)操作レバー100のレバーボス121の外周面にダンパーばね500を圧入する。この際、ダンパーばね500の両端520A、520Bが、レバーベース200の中立ピン220を跨ぐようにする(図5参照)。
(3)レバーボス121から突出したレバー軸210の先端に一対の復帰アーム300A、300Bを取り付ける。この際、一対の復帰アーム300A、300Bの中央部310A、310Bが重なり、かつレバー側ピン受け部320A、320B及び復帰ばね止め部330A、330Bが重ならないようにする。すると、レバー側ピン122の左側にレバー側ピン受け部320Aが位置する復帰アーム300Aでは、復帰ばね受け部331Aは中立ピン220の右側に位置するようになる。逆に、レバー側ピン122の右側にレバー側ピン受け部320Bが位置する復帰アーム300Bでは、復帰ばね受け部330Bは中立ピン220の左側に位置するようになる。
なお、本明細書では奥側に取り付けられるものを復帰アーム300A、手前側に取り付けられるものを復帰アーム300Bとする。
【0024】
このようにして組み上げられた操作レバー機構の動作について図5図7を参照しつつ説明する。
(1) 中立状態の場合(図5参照)
中立状態の場合は、図5に示すように、一対の復帰アーム300A、300Bは復帰ばね400によって引っ張られているので、中立ピン220の左右両側に一対の復帰アーム300A、300Bの中立ピン受け部340A、340Bが当接している。同時に、レバー側ピン122の左右両側も一対の復帰アーム300A、300Bのレバー側ピン受け部320A、320Bが当接するので、操作レバー100は直立する。
【0025】
(2)右側に操作レバー100を傾動させた場合(図6参照)
図6に示すように、操作レバー100を復帰ばね400の弾性力に抗しつつ右側に傾動させると、復帰アーム300Bのレバー側ピン受け部320Bがレバー側ピン122の右側に位置するため、操作レバー100の動きに連動して復帰アーム300Bが右向きに傾斜する。この際、もう一方の復帰アーム300Aは中立ピン220に当接したままで、中立状態と同じ状態を維持する。
操作レバー100が右側に傾動することによって、当初はダンパーばね500がレバーボス121を締め付けて密着しており一体で傾動するが、ダンパーばね500の右側の端部520Aが中立ピン220に当接することで、ダンパーばね500の巻部510は巻きを戻す方向に力を受け、コイル内径が拡大することによりレバーボス121に対して密着がゆるみ、特定の摩擦トルクを伴ったスリップが生じる。
【0026】
(3)操作レバー100が右側に傾動させられた状態から外力が加えられなくなる、すなわち作業員が手を離した場合(図7参照)
右側に傾動していた復帰アーム300Bが復帰ばね400の力によって中立位置に復帰しようとする。この動きに伴って、レバー側ピン122を介して操作レバー100も中立位置に復帰しようとする。
この操作レバー100の中立位置への復帰動作によって、当初はダンパーばね500が一旦レバーボス121との密着状態に戻るが、中立ピン220の右側に位置する。ダンパーばね500の左側の端部520Bが中立ピン220に当接する。ここで、ダンパーばね500の巻部510が再び巻き戻す方向に力を受け、コイル内径が拡大することによりレバーボス121に対して密着が緩み、特定の摩擦トルクを伴ったスリップが生じる。
スリップする時の摩擦トルクは、復帰ばね400によるレバー復帰トルクの最小値以下に設定する。すなわち、ダンパーばね500は操作レバー100の中立位置への復帰動作を阻害することはない。
しかしながら、操作レバー100を中立位置へと復帰させようとする復帰ばね400の力は、ダンパーばね500によっていわば吸収されるので、操作レバー100が中立位置へと復帰したならば、スムーズにその位置で停止する。すなわちハンチングは抑制されることになる。
【0027】
なお、操作レバー100を左側へ傾動させた場合も方向が逆になるだけなので、詳細な説明は省略する。
【0028】
また、上述した実施の形態では、一定の構成を有する操作レバー機構を説明したが、本発明に係る操作レバー機構のダンパーは、レバー軸で傾動自在に軸支された操作レバーが、外力が加えられなくなると復帰ばねによって中立位置に復帰する操作レバー機構のダンパーであって、レバー軸が挿入される円筒状のレバーボスに両端が中立ピンを跨いだ状態で外嵌圧入されるダンパーばねと、前記レバー軸に支持される一対の復帰アームとを備えており、前記操作レバーの傾動に伴って一方の復帰アームも傾動されるとともに、ダンパーばねは中立ピンが一端に当接して緩む方向に力が加えられてダンパーばねがスリップし、傾動した操作レバーへ外力が加えられなくなると、前記操作レバーが復帰ばねによって中立位置に復帰する途中で前記ダンパーばねの他端が中立ピンに当接してダンパーばねが緩む方向へと力を加えられてダンパーばねがスリップし、前記ダンパーばねがスリップする時の保持トルクは、傾動した操作レバーが中立位置へと復帰する際の復帰ばねの復帰トルク以下に設定されていることを特徴とする操作レバー機構のダンパーであるので、上述した操作レバー機構にのみ限定されることなく、他の構成を有する操作レバー機構にも適用することができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
100 操作レバー
121 レバーボス
122 レバー側ピン
200 レバーベース
210 レバー軸
220 中立ピン
300A、300B 復帰アーム
340A、340B 中立ピン受け部
400 復帰ばね
500 ダンパーばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7