(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ノズルチェック工程では、製造開始後、上記或る単位層を形成するときに、初めて使用されるノズルを検査対象としてノズルチェックを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元造形物の製造方法。
上記ノズルチェック工程では、上記ヘッドが備えるノズルのうち、予め定められた少なくとも一部を、予め定められた数の単位層が形成される毎及び予め定められた時間のうちの少なくとも一方でノズルチェックすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、積層体の各層で、同一ノズルが同一箇所を打たないようにすることで、ノズル詰まりが生じているノズルによる影響を抑制する技術であり、吐出形成された位置をセンサで特定することで、ノズル抜けしたドット位置を判断している。
【0005】
しかし、特許文献1のような従来技術は、毎回積層された層でノズル抜けの位置を検出しながら、そのヘッド位置を制御しようとすると、制御自体が複雑化してしまうなど、三次元造形物の製造しながらノズルチェックを行うのには適していない。
【0006】
三次元造形物を製造する場合には、インクの種類(モデル材用のインク、サポート材用のインク及びカラー材用のインク等)毎に総吐出量又は使用頻度が大きく異なる。例えば、モデル材用のインクは多量に使うが、三次元造形物の構造によってはサポート材を用いる場合と用いない場合とがあり、サポート材を用いる場合であっても、サポート材が用いられる箇所が限定的であることが一般的である。また、着色された三次元造形物を製造する場合には、モデル材の表面に印刷する、カラーインク、透明インクは使用頻度が少ない。使用頻度によって、吐出不具合の発生のしやすさに影響と与える一因となる。例えば、カラーインクなどの使用頻度が少ないインクは増粘しやすく、ノズルの目詰まりが発生しやすい。また、紫外線硬化型インク等の光硬化型インクを用いて、三次元造形物を製造する場合、硬化させるための光を照射し続ける必要がある。しかし、二次元の印刷媒体に同様のインクで印刷する場合に比べて、三次元造形物には高さがあること等から、光源から被照射物までの距離が長く、光が反射するまでの距離が長い。また、三次元造形物は造形が進むにつれ表面の凹凸が大きくなることから、ヘッド面及び着弾面を含む反射面が、その位置及び積層回数によって距離が二次元の印刷媒体とは異なる。そのため、二次元の印刷媒体に印刷する場合に比べて乱反射しやすい。乱反射した光がノズルに届くとインクが増粘、硬化して目詰まりが起こりやすくなる。従って、積層開始前の全てのノズルを一律に検査したとしても、頻度が低いノズルは、その吐出タイミングには異常ノズルとなっている可能性が高い。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされた発明であり、三次元造形物の製造に適したノズルチェックを行う三次元造形物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、以下の本発明に達した。
【0009】
本発明に係る三次元造形物の製造方法は、単位層を積層する三次元造形物の製造方法であって、上記単位層は、ヘッドの備えるノズルから吐出される液滴で形成され、上記ノズルを検査するノズルチェック工程を含み、上記ノズルチェック工程は、或る単位層を形成する前であって、当該単位層が最下層である場合には製造開始の後に、当該単位層が最下層以外である場合には当該単位層の直下にある単位層を形成した後に、当該単位層を形成するための液滴を吐出するノズルのうちの少なくとも一部のノズルを検査対象としてノズルチェックを行うことを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る三次元造形物の製造装置は、単位層を積層する三次元造形物の製造装置であって、上記単位層は、ヘッドの備えるノズルから吐出される液滴で形成され、上記ノズルを検査するノズル検査部と、上記ノズル検査部を制御するノズルチェック制御部とを備え、上記ノズルチェック制御部は、或る単位層を形成する前であって、当該単位層が最下層である場合には製造開始の後に、当該単位層が最下層以外である場合には当該単位層の直下にある単位層を形成した後に、当該単位層を形成するための液滴を吐出するノズルのうちの少なくとも一部のノズルを検査対象としてノズルチェックを行うように制御することを特徴とする。
【0011】
上記構成により、三次元造形物を製造するときに、液滴を吐出するノズル毎に、当該ノズルが使用される直前により近いタイミングで検査できる。仮に積層開始前の全てのノズルを一律に検査したとしても、頻度が低いノズルは、その吐出タイミングには異常ノズルとなっている可能性がある。しかし、上記構成によれば、使用頻度の違いによる異常ノズルの発生の影響を効果的に検出することができる。このように、三次元造形物の製造に適したノズルチェックを行うことができる。
【0012】
本発明に係る三次元造形物の製造方法では、上記ノズルが或る方向に沿って1つ以上配置されたノズル列を有し、当該ノズル列によって吐出する上記液滴の種類が異なっており、上記ノズルチェック工程では、上記検査対象のノズルを有するノズル列のノズルチェックを行うことがより好ましい。
【0013】
上記構成により、ノズル列によって吐出量及び使用頻度が大きく異なっていても、その影響によるノズルの不具合の発生を効果的に検出することができる。
【0014】
本発明に係る三次元造形物の製造方法において、上記ノズルチェック工程では、製造開始後、上記或る単位層を形成するときに、初めて使用されるノズルを検査対象としてノズルチェックを行ってもよい。
【0015】
上記構成により、或る単位層よりも前に形成した単位層までは使用されておらず、或る単位層を形成するときに初めて使用されるノズルのみを検査することで、検査するノズルの数を減らすことができる。その結果、ノズルの検査時間を短縮でき、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。
【0016】
本発明に係る三次元造形物の製造方法において、上記ノズルチェック工程では、上記ヘッドが備えるノズルのうち、予め定められた少なくとも一部を、予め定められた数の単位層が形成される毎及び予め定められた時間のうちの少なくとも一方でノズルチェックすることがより好ましい。
【0017】
上記構成により、定期的にノズルチェックが行われるので、前回検査が行われた後にノズルに吐出不具合が生じていてもこれを検出することができる。
【0018】
本発明に係る三次元造形物の製造方法において、上記ノズルチェック工程では、上記ヘッドが備えるノズルのうち、予め定められた複数のノズルを一つの集団とし、上記ヘッドが備えるノズルのうちの少なくとも一部を複数の集団に分割した集団情報に基づいて、予め定められた数の単位層を形成する毎に、上記複数の集団のうちの一部の集団のノズルチェックを行うことがより好ましい。
【0019】
仮に、一定の数の単位層を形成する毎に、全てのノズルを検査すると、ノズルチェックに時間がかかり、直前に形成した単位層の表面に、次の単位層を形成するまでの待機時間が長くなってしまう。その結果、直前に形成した単位層の表面の状態と他の単位層との表面の状態とが、例えば乾燥状態及び濡れ性の点等で異なってしまい、直前に形成した単位層の表面が不良状態になる虞がある。そこで、上記の構成によれば、グループごとに分割してノズルチェックを行うので、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。これにより、或る単位層を形成してから、次の単位層を形成するまでの時間を、三次元造形物を製造する間にわたって、より均一にすることができる。そのため、単位層の表面をより均一な状態にして、次の単位層を形成することができ、高精度な三次元造形物を製造できる。
【0020】
上記ノズルチェック工程では、或る単位層を形成した後、予め定められた数の単位層を形成するまでの間、又は、予め定められた時間内に、予め定められた回数の液滴の吐出を行っていない上記ノズル及び予め定められた量の液滴の吐出を行っていない上記ノズルのうち少なくとも一方をノズルチェック及び/又はフラッシングすることがより好ましい。
【0021】
稼働状況が少ないことで、ノズルが不吐出状態になる虞がある。上記の構成によれば、稼働状況の少ないノズルに対してノズルチェックを行うことで、当該ノズルが不吐出状態になっても、当該ノズルが不吐出状態にあることを認識できる。稼働状況の多いノズルについては、異常ノズルの発生が少ないため、稼働状況の少ないノズルのみにチェックを行うことで、ノズルの検査時間を短縮できる。また、稼働状況の少ないノズルに対してフラッシングを行うことで、当該ノズルの増粘を抑制できる。
【0022】
本発明に係る三次元造形物の製造装置では、上記三次元造形物を支持する支持台と、上記ノズル検査部、上記支持台及び上記ヘッドのうちの少なくとも一つを、積層方向に移動可能にする位置制御部とをさらに備え、上記位置制御部は、上記支持台及び上記ヘッドの少なくとも一方が、上記積層方向に移動した場合にも、上記ノズル検査部と上記ヘッドの液滴の吐出面との距離の差が、予め定められた長さ内とするように制御することがより好ましい。
【0023】
上記構成により、積層方向にヘッド又は支持台が動いたとしても、ノズル検査部とヘッドの液滴を吐出する面との距離がほぼ一定であることで、落下中の液滴が通過する領域であってノズル検査部によって検査する対象の領域と吐出面との距離が常にほぼ一定となる。従って、ヘッド又は支持台が積層方向に動くことによるノズル検査の誤差が生じない。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、三次元造形物の製造に適したノズルチェックを行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<三次元造形物の製造方法>
〔本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態〕
図1及び
図2を用いて本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態である印刷装置100を用いた三次元造形物Mを製造する手順について模式的に示す図である。
図2は本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態で用いる印刷装置100におけるヘッド1の概略構成を模式的に示す図である。なお、
図1は、支持台10の表面に垂直な面で切った、三次元造形物Mの断面図でもある。
【0027】
本実施形態では、紫外線硬化型インクを用いて、インクジェット法により三次元造形物Mを製造する場合について説明する。
【0028】
なお、本実施形態では、紫外線硬化型インクを使用しているが、本発明に係る三次元造形物の製造方法で用いるインクはこのような形態に限定されない。本発明に係る三次元造形物の製造方法では、製造する三次元造形物の目的等に応じて任意のインクを選択できる。例えば、従来公知のモデル材を適宜採用できる。
【0029】
インクの具体的な種類としては、例えば、紫外線硬化型インク及び熱可塑性インクが挙げられる。中でも、紫外線硬化型インクがより好ましい。紫外線硬化型インクは短時間で簡単に硬化させることができるため、短時間に単位層を形成することができる。また、積層させることが容易であるため、三次元造形物をより短時間で製造することができる。
【0030】
紫外線硬化型インクは紫外線硬化型化合物を含む。紫外線硬化型化合物としては、紫外線を照射した際に硬化する化合物であれば限定されない。紫外線硬化型化合物としては、例えば、紫外線の照射により重合する硬化型モノマー及び硬化型オリゴマー等が挙げられる。硬化型モノマーとしては、例えば、低粘度アクリルモノマー、ビニルエーテル類、オキセタン系モノマー及び環状脂肪族エポキシモノマー等が挙げられる。硬化型オリゴマーとしては、例えば、アクリル系オリゴマー等が挙げられる。
【0031】
なお、製造する三次元造形物にオーバーハングの部分があるなどの場合には、適宜、従来公知のサポート材を用いてもよい。
【0032】
図1に示すように、印刷装置100は、ヘッド1、UV−LEDランプ2、メンテナンス機構20、ノズル検査制御部4、位置制御部30及び支持台10を備えている。メンテナンス機構20は、ノズル検査部3及びクリーニング部5を備えている。
【0033】
また、
図1に示すように、三次元造形物Mは、複数の単位層を、単位層L1、L2・・・と積層することで形成されている。
【0034】
(ヘッド1)
ヘッド1は、インク(液滴)を吐出するためのインクジェットヘッドである。ヘッド1がX方向に往復移動しながら、支持台10等の上を走査する。走査しながらインクを吐出することで、支持台10又は前回製造した単位層の上にインクを吐出して単位層を形成する。
【0035】
なお、本発明に係る三次元造形物の製造方法で用いるヘッドは、従来公知のものでよい。例えば、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させるインクジェットヘッド(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッド)及び熱エネルギーを利用するインクジェットヘッド等が挙げられる。
【0036】
また、本実施形態では、X方向に支持台10上をヘッド1が走査するとき、吐出対象部は移動せず、ヘッド1が移動する形態について説明する。しかし、本発明に係る三次元造形物の製造方法はこのような形態に限定されず、ヘッドと吐出対象部とが相対的に移動する製造装置を用いればよい。
【0037】
(ノズル6)
ノズル6は、インクを吐出するものである。
図2に示すように、ヘッド1は、副走査方向(Y方向)に沿って整列した一つ以上のノズル6からなるノズル列6−1、6−2・・・を有している。また、全てのノズル6は、いずれかのノズル列に含まれる。換言すれば、ノズル6はノズル列ごとにグループ(集団)分けされている。なお、副走査方向は、主走査方向(X方向)に直交する方向である。
【0038】
ここで、各ノズル列6−1、6−2・・・で、吐出するインクの種類(モデル材用のインク、サポート材用のインク及びカラー材用のインク)が異なっている。換言すれば、一つ一つのノズル列のノズルは全て同じ種類のインクを吐出する。
【0039】
(UV−LEDランプ2)
UV−LEDランプ2は、ヘッド1から吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する器具である。
【0040】
なお、本発明に係る三次元造形物の製造方法で紫外線硬化型インクを用いる場合、光を照射するための器具はこのような形態に限定されず、紫外線を照射することのできる従来公知の様々な器具を採用し得る。
【0041】
(メンテナンス機構20)
メンテナンス機構20は、ノズル検査部3及びクリーニング部5を備えている。メンテナンス機構20はヘッド1を格納できるようになっている。また、格納しているヘッド1をノズル検査部3で検査したり、クリーニング部5でクリーニングしたりする。メンテナンス機構20は、ヘッド1の走査する範囲から離れた、ヘッド1の移動方向の端に設けられている。
【0042】
(ノズル検査部3)
ノズル検査部3は、ノズル6を検査するためのものである。
【0043】
本実施形態において、「吐出不良ノズル」とは、例えば、インク詰まり等の原因により適正なインク吐出が不可能になったものを指す。
【0044】
なお、本発明に係る三次元造形物の製造方法で使用するノズル検査部は従来公知のものでよく、本実施形態では、光路を遮断させてノズル検査を行うフォトセンサを用いる場合について説明する。ノズル検査部の他の例としては、テスト吐出領域に対して、インクを吐出させた後の吐出対象部の状況を確認してノズルチェックを行う構成でもよい。ただし、Z方向にヘッド又は支持体を移動させたときに、ノズル検査部とヘッドのインクを吐出する面との距離がほぼ一定となるようにして、ヘッド又は支持台がZ方向に動くことによる誤差が生じないようにする場合は、フォトセンサであることが好ましい。
【0045】
また、ノズル検査部3による検査は、ノズル検査制御部4により制御されている。ノズル検査制御部4から、いつ、どのノズル6を検査するかに基づく指示を示す信号を受信して、当該指示に基づいて検査を行う。
【0046】
(ノズル検査制御部4)
ノズル検査制御部4は、ノズル検査部3による検査を制御するためのものである。具体的には、検査対象のノズル6から吐出されるインクを使用する単位層を形成する前であり、当該単位層の直下にある単位層を形成した後に、当該ノズル6の検査を行うように制御する。ノズル6を使用する直前に検査することで、使用頻度が低いノズル6の吐出不良をより効果的に見つけることができる。
【0047】
本実施形態では、ノズル検査部3の検査は、印刷装置100に搭載された制御手段によって制御される形態について説明するが、本発明はこのような形態に限定されず、所定のタイミング毎の検査を、手動で印刷装置を操作することによって行ってもよい。
【0048】
(クリーニング部5)
クリーニング部5は、ノズル6をクリーニングするためのものである。ヘッド1のノズル6が形成された面をワイピングするワイパー、ノズル6のインクを吸引する吸引装置等で構成されている。
【0049】
(位置制御部30)
位置制御部30は、ヘッド1が移動した場合にも、ノズル検査部3とヘッド1のインクの吐出面との距離の差が、予め定められた長さ内とするように制御するものである。
【0050】
具体的には、位置制御部30は、ヘッドのZ軸方向の位置を検出し、ノズル検査部のZ軸方向の位置とのずれを認識し、検査をするときに、当該ずれが無くなるようにヘッド1又はメンテナンス機構20をZ軸方向に移動させるように制御する。例えば、検査をする直前にヘッド1の位置をZ軸方向に移動させた後で、メンテナンス機構20までヘッド1を移動させてノズルの検査が行われる。
【0051】
なお、ノズル検査部3が、ヘッド1をX方向に移動可能に支持するヘッド支持部の延長部分に設けられ、ヘッド1に対するノズル検査部3の位置が固定されていれば、位置制御部30は設けなくてもよい。インクの吐出面に対するノズル検査部3の位置が固定されていることになり、ひいては、ノズル検査部3がインクを検査するときの当該インクの位置と、当該インクの吐出面との距離が一定に保たれるからである。
【0052】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法で使用する位置制御部は、ノズル検査部、支持台及びヘッドのうちの少なくとも一方を、積層方向に移動可能にし、ヘッドとノズル検査部との距離の差が、予め定められた長さ内となるように制御できるものであればよい。
【0053】
(支持台10)
支持台10は、形成される三次元造形物を支持する台である。
【0054】
本実施形態では、支持台10を固定し、ヘッド1を副走査方向(Y方向)及びZ方向に移動させる場合について説明するが、本発明に係る三次元造形物の製造装置では、ヘッドと吐出対象部とが相対的に移動すればよい。例えば、ヘッド1の主走査が1回終わる毎に支持台をY方向(副走査方向)に移動させてもよいし、単位層を一つ形成する毎に支持台を鉛直下向きの方向に移動させるものであってもよい。
【0055】
〔三次元造形物Mを製造しながらノズルを検査する方法〕
次に、三次元造形物Mを製造しながらノズル6を検査する方法について説明する。
【0056】
印刷を開始する前、ヘッド1はメンテナンス機構20に格納されている。
【0057】
ノズル検査制御部4は、印刷の開始(三次元造形物の製造開始)を認識すると、次に、単位層L1を形成するために使用するノズル6を認識する。例えば、どのノズル6をいつ使用してインクを吐出するかを示すデータを、ノズル検査制御部4自身が三次元造形物Mの画像データから作成するか、又は、別の印刷ソフトがインストールされたハードウェアによって作成したデータを取得して、単位層L1を形成するために使用するノズル6を認識する。
【0058】
なお、ノズル検査制御部4は、印刷の開始を次のように認識する。つまり、ユーザーが製造を開始する指示を入力部(図示せず)に入力し、当該指示を受信することで印刷の開始を認識する。また、一度の開始の指示が、複数の種類の三次元造形物の製造を指示するものである場合、製造する三次元造形物の種類が変わるタイミングを、印刷の開始として認識するようにしてもよい。
【0059】
ノズル検査制御部4は、単位層L1を形成するために使用するノズル6及び当該ノズル6と同じノズル列のノズル6を検査するようにノズル検査部3に指示を送る。このような形態により、インクの種類によって総吐出量及び使用頻度が大きく異なっていても、同じ種類のインクを吐出するノズル6毎に効率的に検査することができる。なお、本発明に係る三次元造形物の製造方法では、ノズル列毎にノズル6を検査しなくてもよく、或る単位層を形成するために使用するノズル6のみを検査すればよい。
【0060】
ノズル検査部3はノズル検査制御部4からの指示に基づいてノズル6を検査する。具体的には、光センサによって遮光されるか否かでインクの吐出を判定する。ノズル検査部3は、測定結果をノズル検査制御部4に送信する。ノズル検査制御部4は、予め定められた時間内で当該吐出量がゼロか、ゼロでないとしても予め定められた量に満たないノズルを吐出不良ノズルとして認定する。なお、予め定められた時間、予め定められた量は、記録部(図示せず)に格納されており、ノズル検査制御部4は、当該記録部から当該時間及び当該量の情報を読み取り、不吐出ノズルであるか否かの判断に使用する。
【0061】
吐出不良ノズルとして認定されたノズル6が存在する場合、当該ノズルによる影響を抑えながら、単位層L1の形成が開始される。当該影響を抑える方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、クリーニング部5によってノズル6が形成された面のワイピングをし、その後、ノズル6から微量のインクを下方に吐出(フラッシング)させることや吸引によりノズル6のインクを除去することが考えられる。これにより、吐出不良ノズルの増粘を抑制できる。
【0062】
また、次回以降の検査において吐出不良ノズルが認められた場合、製造時間を短くする観点からは、単位領域の画像を形成するために必要な走査の回数を増やすことで、一回当たりのノズル6からの吐出量を少なくしてもよい。より具体的には、マルチパスで印刷したり、マルチパスのパス数を増やしたりすることで吐出不良ノズルの影響を抑えることができる。
【0063】
次に、ヘッド1をX方向に走査させながら、インクを吐出する。このとき、ヘッド1にはUV−LEDランプ2が隣接しているので、UV−LEDランプ2もヘッド1と同様に移動する。
【0064】
ヘッド1から吐出されたインクに対して、UV−LEDランプ2から発せられた紫外線が照射される。これにより、吐出されたインクが硬化されていく。
【0065】
次に、ヘッド1の一走査毎にヘッド1をY方向に移動させる。
【0066】
ヘッド1の移動距離はヘッド1のインクの吐出領域(ノズル列6−1、6−2等)の副走査方向(Y方向)の長さと同じ距離である。つまり、本実施形態では、シングルパスの場合について説明する。シングルパスでは、単位画像領域(単位長さ四方の印刷領域)を1回の主走査で形成する。なお、本発明はシングルパスに限定されるものではなく、マルチパスでも適用され得る。つまり、一度の副走査方向(Y方向)のヘッドの移動距離が、ヘッドのインクの吐出領域(ノズル列6−1、6−2等)の副走査方向(Y方向)の長さよりも短い。そのため、単位画像領域を印刷するために複数回の主走査が行われる。
【0067】
このように、ヘッド1をX方向に走査し、Y方向に移動させていくことで単位層L1の形成が完了する。
【0068】
次に、ノズル検査制御部4は、単位層L2の形成に用いるノズル6及び当該ノズル6と同じノズル列のノズル6を検査するようにノズル検査部3に指示を送る。
【0069】
このように、本発明に係る三次元造形物の製造方法では、製造開始後、初めてインクを吐出することになるノズルを、当該インクを用いる単位層を形成する前に検査するように制御してもよい。当該ノズルに、どのノズルが相当するかは、上述したどのノズルをいつ使用してインクを吐出するかを示すデータから認識できる。このような制御により、或る単位層よりも前に形成した単位層までは使用されておらず、或る単位層を形成するときに初めて使用されるノズルのみを検査することで、検査するノズルの数を減らすことができる。その結果、ノズルの検査時間を短縮でき、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。
【0070】
ノズルの検査を行なう前に、位置制御部30は、ノズル検査部3とヘッド1のインクの吐出面との距離の差が、予め定められた長さ内となるように、ノズル検査部3の位置を制御する。例えば、ヘッド1の位置もZ方向に移動させる。このような制御により、単位層を積層させるためにヘッド1がZ方向に動いても、ノズル検査部3とヘッド1のインクを吐出する面との距離がほぼ一定にすることができる。このようにして、ノズル検査部3がインクを検査するときの当該インクの位置と、当該インクの吐出面との距離を常に一定に保つことで、ヘッド1がZ方向に移動することが検査に与える影響を抑制することができる。「予め定められた長さ」については、位層の厚さ等に基づいて、適宜設定すればよい。また、「予め定められた長さ」を示す情報については、記録部(図示せず)に格納されており、位置制御部30は、当該情報を読み取る。
【0071】
なお、本実施形態では位置制御部30はヘッド1をZ方向に移動させることで、ヘッド1とノズル検査部3との相対的な位置を調整する形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、支持台及び/又はノズル検査部を移動させることで調整してもよい。
【0072】
次に、単位層L2を形成するために、ヘッド1をZ方向に移動させる。
【0073】
単位層L2は、単位層L1と同様にヘッド1をX方向に走査し、Y方向に移動させることで形成される。
【0074】
同様に、単位層を次々とZ方向に積層していく。このとき、或る単位層を形成した後、次に積層する単位層を形成するときに使用するインクのノズル6及び当該ノズル6を含むノズル列中の他のノズル6を検査対象として、検査が行われる。
【0075】
また、本実施形態では、これまで説明した検査に加えて、次に説明する検査が行われる。
【0076】
つまり、ノズル検査制御部4は、予め定められた数の単位層を形成する間に、予め定められた回数のインクの吐出を行っていないノズル6及び予め定められた量のインクの吐出を行っていないノズル6を検査するようにノズル検査部3を制御する。このような制御により、使用頻度の少ないノズル6が吐出不良となっても、検出することができる。
【0077】
「予め定められた数」、「予め定められた回数」、「予め定められた量」については、インクの増粘のしやすさ、又は、単位層の大きさ等に基づいて、適宜設定すればよく、インクの種類ごとに変えてもよい。また、「予め定められた数」、「予め定められた回数」、「予め定められた量」を示す情報については、記録部(図示せず)に格納されており、ノズル検査制御部4は、当該情報を読み取る。
【0078】
なお、本発明に係る三次元造形物の製造方法では、予め定められた時間内に上述の条件を満たしていないノズルを検査するようにノズル検査部を制御してもよい。例えば、1時間毎に、所定の量のインクを吐出しないか、所定の数の吐出を行わないノズルを検査するなどしてもよい。
【0079】
また、これまでの検査とは独立して、予め定められた数の単位層を形成した後に、ノズル列6−1の検査を行い、またノズル列6−1の検査をした後、予め定められた数の単位層を形成した後にノズル列6−2の検査を行う。
【0080】
同様にして、すべてのノズル列についての検査が行われていく。例えば、1層毎に6−1、6−2、・・・と順にノズル列毎に検査が行われていく。このように、複数のグループに分けて、グループごとに検査を行うことで、より高精度な三次元造形物を製造することができる。例えば、一定の数の単位層を形成する毎に、全てのノズルを検査する場合、直前で形成した単位層の表面の状態は、それまで形成してきた単位層の表面の状態と、乾燥状態、濡れ性等の点で異なる。次の単位層が表面に形成されるまでの時間が、ノズルの検査を行った時間だけ異なるからである。
【0081】
そこで、本実施の形態によれば、グループ毎に分けて検査を行うので、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。また、一定の層を形成する毎に検査を行うことで、或る単位層を形成してから、次の単位層を形成するまでの時間を、三次元造形物を製造する間にわたって、より均一に近づけることができる。
【0082】
どのノズル6がどのグループに属するかを示す情報(集団情報)は、予め記録部(図示せず)に格納されており、ノズル検査制御部4は当該情報を当該記録部から受信する。
【0083】
本実施形態では、ノズル列毎にグループ分けして、ノズル列毎に順番に検査を行ったが、グループ分けはノズル列毎ではなくてもよい。例えば、ノズル列をさらに細分化してもよい。例えば、1又は複数のノズル列における、副走査方向の上流側、下流側で分割して、或る単位層の形成前は上流側のノズル列、別の単位層の形成前に下流側のノズル列を検査するようにしてもよい。
【0084】
また、本発明に係る三次元造形物の製造装置は、本実施形態のようにグループ分けして、グループごとに順に検査をする形態に限定されない。予め定められた少なくとも一部のノズル6について、予め定められた数の単位層が形成される毎、予め定められた時間が経過する毎に検査するようにしてもよい。例えば、予め使用頻度の低いノズル(群)を選定しておき、所定のタイミングでノズルチェックを繰り返してもよい。
【0085】
なお、本実施形態において説明した、三次元造形物Mを製造しながらノズル6を検査する方法は、本発明に係る三次元造形物の製造装置の一実施形態でもある。
【0086】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ノズル検査制御部4及び位置制御部30の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0087】
後者の場合、ノズル検査制御部4及び位置制御部30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワーク及び放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0088】
<付記事項>
以上のように、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態は、単位層L1及びL2等を積層する三次元造形物Mの製造方法であって、単位層L1及びL2等は、ヘッド1の備えるノズル6から吐出されるインクで形成され、ノズル6を検査するノズルチェック工程を含み、ノズルチェック工程は、或る単位層を形成する前であって、当該単位層が最下層(単位層L1)の場合には製造開始の後に、当該単位層が最下層以外である場合には当該単位層の直下にある単位層を形成した後に、当該単位層を形成するためのインクを吐出するノズル6のうちの少なくとも一部のノズル6を検査対象としてノズルチェックを行うことを含む。
【0089】
また、本発明に係る三次元造形物の製造装置の一実施形態は、単位層L1及びL2等を積層する三次元造形物Mの印刷装置100であって、各単位層は、ヘッド1の備えるノズル6から吐出されるインクで形成され、ノズル6を検査するノズル検査部3と、ノズル検査部3を制御するノズル検査制御部4とを備え、ノズル検査制御部4は、或る単位層を形成する前であって、当該単位層が最下層(単位層L1)である場合には製造開始の後に、当該単位層が最下層以外である場合には当該単位層の直下にある単位層を形成した後に、当該単位層を形成するためのインクを吐出するノズル6のうちの少なくとも一部のノズル6を検査対象としてノズルチェックを行うように制御する。
【0090】
上記構成により、三次元造形物Mを製造するときに、インクを吐出するノズル6毎に、当該ノズル6が使用される直前により近いタイミングで検査できる。これにより、使用頻度の違いによる異常ノズルの発生の影響を効果的に検出することができる。このように、三次元造形物Mの製造に適したノズルチェックを行うことができる。
【0091】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態では、ノズル6が或る方向に沿って1つ以上配置されたノズル列6−1、6−2・・・を有し、ノズル列6−1、6−2・・・によって吐出するインクの種類が異なっており、ノズルチェック工程では、検査対象のノズル6を有するノズル列6−1、6−2・・・のノズルチェックを行う。
【0092】
上記構成により、ノズル列6−1、6−2・・・によって吐出量及び使用頻度が大きく異なっていても、その影響によるノズル6の不具合の発生を効果的に検出することができる。
【0093】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態において、ノズルチェック工程では、製造開始後、或る単位層を形成するときに、初めて使用されるノズル6を検査対象としてノズルチェックを行ってもよい。
【0094】
上記構成により、或る単位層よりも前に形成した単位層までは使用されておらず、或る単位層を形成するときに初めて使用されるノズル6のみを検査することで、検査するノズルの数を減らすことができる。その結果、ノズルの検査時間を短縮でき、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。
【0095】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態において、ノズルチェック工程では、ヘッド1が備えるノズル6のうち、予め定められた少なくとも一部を、予め定められた数の単位層が形成される毎及び予め定められた時間のうちの少なくとも一方でノズルチェックする。
【0096】
上記構成により、定期的にノズルチェックが行われるので、前回検査が行われた後にノズルに吐出不具合が生じていてもこれを検出することができる。
【0097】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態において、ノズルチェック工程では、ヘッド1が備えるノズル6のうち、予め定められた複数のノズル6を一つの集団とし、ヘッド1が備えるノズル6のうちの少なくとも一部を複数の集団であるノズル列6−1、ノズル列6−2・・・に分割した集団情報に基づいて、予め定められた数の単位層を形成する毎に、複数の集団のうちの一部の集団のノズルチェックを行う。
【0098】
上記の構成によれば、グループごとに分割してノズルチェックを行うので、次の単位層を形成するまでの時間を短くすることができる。これにより、或る単位層を形成してから、次の単位層を形成するまでの時間を、三次元造形物Mを製造する間にわたって、より均一にすることができる。そのため、単位層の表面をより均一な状態にして、次の単位層を形成することができ、高精度な三次元造形物Mを製造できる。
【0099】
また、本発明に係る三次元造形物の製造方法の一実施形態において、ノズルチェック工程では、或る単位層を形成した後、予め定められた数の単位層を形成するまでの間、又は、予め定められた時間内に、予め定められた回数のインクの吐出を行っていないノズル6及び予め定められた量のインクの吐出を行っていないノズル6のうち少なくとも一方をノズルチェック及びフラッシングする。
【0100】
上記の構成によれば、稼働状況の少ないノズル6に対してノズルチェックを行うことで、当該ノズルが不吐出状態になっても、当該ノズル6が不吐出状態にあることを認識できる。稼働状況の多いノズル6については、異常ノズルの発生が少ないため、稼働状況の少ないノズル6のみにチェックを行うことで、ノズル6の検査時間を短縮できる。また、稼働状況の少ないノズル6に対してフラッシングを行うことで、当該ノズル6の増粘を抑制できる。
【0101】
また、本発明に係る三次元造形物の製造装置の一実施形態では、三次元造形物Mを支持する支持台10と、ノズル検査部3、支持台10及びヘッド1のうちの少なくとも一つを、Z方向に移動可能にする位置制御部30とをさらに備え、位置制御部30は、支持台10及びヘッド1の少なくとも一方が、Z方向に移動した場合にも、ノズル検査部3とヘッド1のインクの吐出面との距離の差が、予め定められた長さ内とするように制御する。
【0102】
上記構成により、Z方向にヘッド1又は支持台10が動いたとしても、ノズル検査部3とヘッド1のインクを吐出する面との距離がほぼ一定であることで、常にノズル検査部3からヘッド1のインクの吐出面から吐出したインクを検出する領域までの距離がほぼ一定となる。従って、ヘッド1又は支持台10がZ方向に動くことによるノズル検査の誤差が生じない。