特許第6471094号(P6471094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471094
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】農業用フィルム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20190204BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20190204BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20190204BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20190204BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   A01G9/14 S
   A01G13/02 D
   C08L31/04 C
   C08L23/02
   B32B27/28 101
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-532883(P2015-532883)
(86)(22)【出願日】2014年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2014071806
(87)【国際公開番号】WO2015025899
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-172503(P2013-172503)
(32)【優先日】2013年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・デュポンポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140877
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100140545
【弁理士】
【氏名又は名称】早瀬 貴介
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】柴山 知大
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝田 保喜
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−143509(JP,A)
【文献】 特開2005−118032(JP,A)
【文献】 特開平07−312996(JP,A)
【文献】 特開2011−109991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
A01G 13/00−13/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が14質量%以上であり、メルトフローレート(MFR、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が11g/10分以上300g/10分以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、MFR(JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が5g/10分以下のポリオレフィン(B)と、を含有し、
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及び前記ポリオレフィン(B)の含有割合[(A):(B)]が、質量比で30:70以上70:30以下であり、酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が質量%以上12質量%未満であり、且つ、MFR(JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上10g/10分以下である混合物層を有する農業用フィルム。
【請求項2】
前記混合物層が最外層である請求項1に記載の農業用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農業用フィルムとしては、光線透過率の大きいものが望まれるが、作物の種類によっては直達光の割合をできるだけ少なくし、散乱光の割合を増加させることが望まれている。例えば、葉たばこやレタスのような軟弱野菜の育苗ハウスにおいては、葉の日焼け防止のために、直達光の少ない農業用フィルムの使用が不可欠である。また、葉たばこの乾燥ハウスにおいては、急乾燥の防止、あるいはむれ葉、くされ葉の生出防止のために、直達光の少ない農業用フィルムの使用が不可欠である。そのため、農業用フィルムとして、梨地タイプ(satin like)のフィルムが用いられてきた。
【0003】
梨地タイプの農業用フィルムとしては、例えば、酢酸ビニル含有量24〜34重量%、MI4〜40のエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)及びMI0.04〜2.0のポリエチレン(B)の混合物からなり、酢酸ビニル含有量が12〜22重量%とされ、かつ成分(A)/成分(B)のMI比が10〜100とされ、フィルム状に成形された、絹布状感触を有するプラスチックフィルムが開示されている(例えば、特公昭63−67812号公報参照)。
【0004】
また、例えば、最外層の少なくとも一層が、酢酸ビニル含有量が20〜35重量%、メルトフローレート(MFR)が4〜50g/10分のエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びMFRが0.04〜2.0g/10分の低密度ポリエチレン(B)の混合物からなり、且つ(A)と(B)の混合割合((A)/(B))が35〜90/65〜10(重量比)、該混合物の平均酢酸ビニル含有量が12〜22重量%、及びそのMFR比((A)のMFR/(B)のMFR)が10〜100である混合物層である農業用フィルムが開示されている(例えば、特開平06−143509号公報参照)。
【0005】
さらに、例えば、外層、中間層および内層の少なくとも3層からなる梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、該内層が、メルトフローレート1.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリオレフィン(A)75〜95質量部と、該ポリオレフィン(A)よりメルトフローレートが0.2g/10分以上小さい、高圧法低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種からなるポリオレフィン(B)5〜25質量部と、からなり、前記内層の表面に、熱可塑性樹脂からなるバインダーと無機質コロイドゾルとからなる防曇性塗膜を有することを特徴とする梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムが開示されている(例えば、特開2011−109991号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特公昭63−67812号公報、特開平06−143509号公報、及び特開2011−109991号公報に示されるように、種々の機能性を持つ、表面が梨地状の農業用フィルム(プラスチックフィルム)を得るため、様々な試みがされている。
従来より、梨地状の風合いを持つ農業用フィルムを作製する観点から、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量がある程度高い樹脂が望まれている。
しかしながら、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が高くなると、農業用フィルムの粘着性が上がる傾向にあり、次のことが生じやすくなる。つまり、製造過程でロール等に付着し易くなること、農業用フィルム同士がくっつくブロッキングが発生し易くなること、及びインフレーションフィルムの口開き性が悪くなること、等である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みて成されたものである。即ち、
本発明は、梨地状(satin like appearance)が維持され、且つ、粘着性が抑制された農業用フィルムを提供する。
【0008】
なお、梨地状とは、梨の実の表皮のように不定形で微細な斑点状の凹凸を複数有し、ザラザラとした質感を有する表面状態を表す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1> 酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が14質量%以上であり、メルトフローレート(MFR)が11g/10分以上300g/10分以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、MFRが5g/10分以下のポリオレフィン(B)と、を含有し、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及び前記ポリオレフィン(B)の含有割合[(A):(B)]が、質量比で30:70以上70:30以下であり、酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が6質量%以上12質量%未満であり、且つ、MFRが1g/10分以上10g/10分以下である混合物層を有する農業用フィルムである。
上記MFRは、いずれも、JIS K7210−1999に準拠し、190℃、2160g荷重で測定したものである。
【0010】
<2> 前記混合物層が最外層である<1>に記載の農業用フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、梨地状(satin like appearance)が維持され、且つ、粘着性が抑制された農業用フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[農業用フィルム]
本発明の農業用フィルムは、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が14質量%以上であり、メルトフローレート(MFR、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が11g/10分以上300g/10分以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、MFR(JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が5g/10分以下のポリオレフィン(B)と、を含有し、前記(A)及び前記(B)の含有割合[(A):(B)]が、質量比で30:70以上70:30以下であり、酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が6質量%以上12質量%未満であり、且つ、MFR(JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重)が1g/10分以上10g/10分以下である混合物層を有する。
【0013】
本発明の農業用フィルムは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)として、上記のようにMFRの差が大きいものを組み合わせて含有する。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)として、酢酸ビニルの構成単位が多く含まれるものを用いる。本発明においては、このようなエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)を適用することにより、本発明における農業用フィルムは、ヘイズが向上し、梨地状の表面が実現されたものとなる。
【0014】
加えて、本発明の農業用フィルムは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)を、上述した特定の含有割合で含ませ、農業用フィルム全体における酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量を少なくし、農業用フィルムのMFRを上記範囲内とする。そのようにすることで、本発明における農業用フィルムは、梨地状が維持され、且つ、粘着性が抑制されることとなる。
【0015】
なお、本発明において粘着性とは、製造過程にある農業用フィルムの粘着性と、得られた農業用フィルムの粘着性と、の両方を示す。
製造過程にある農業用フィルムの粘着性が抑制されると、製造に用いるロール等の加工部材に対する農業用フィルムの巻付きや口開き性の悪化が抑制され、加工の容易性が向上すると考えられる。
また、得られた農業用フィルムの粘着性が向上した場合、農業用フィルムの保管中でのブロッキングの発生が抑制できると考えられる。
【0016】
以下、本発明における農業用フィルムに含まれる各成分について、詳細に説明する。
なお、特に記載しない限り、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1999に準拠して、190℃、2160g荷重で測定された値〔g/10分〕である。
【0017】
〔混合物層〕
本発明における農業用フィルムは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)と、ポリオレフィン(B)と、を含有する混合物層を有する。
混合物層は、必要に応じて、その他の重合体や、添加剤を含んでもよい。
【0018】
<エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)>
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が14質量%以上であり、MFRが11g/10分以上300g/10分以下である。
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンに由来する構成単位と、酢酸ビニルに由来する構成単位とを少なくとも含み、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
【0019】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量が14質量%以上であることで、ポリオレフィン(B)との酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量の差が大きくなるため、梨地状の農業用フィルムを実現することができる。
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量は、16質量%以上であることが好ましく、18質量%以上がより好ましい。
但し、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量は、混合物層の酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量を低くする観点から、25質量%以下であることが好ましく、22質量%以下がより好ましい。
【0020】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のMFRは、上記範囲内であることで、梨地状の農業用フィルムを実現することができる。
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のMFRは、12g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、14g/10分以上160g/10分以下であることがより好ましい。
【0021】
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、1種単独で又は共重合比等の異なる2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル及びエチレン以外の他のモノマー単位を更に含んでもよい。本発明においては、酢酸ビニル及びエチレン以外の他のモノマー単位を含まず、酢酸ビニルに由来する構成単位と、エチレン由来の構成単位と、によってエチレン・酢酸ビニル共重合体が構成されていることが好ましい。
【0022】
<ポリオレフィン(B)>
ポリオレフィン(B)は、MFRが5g/10分以下のポリオレフィンである。
【0023】
ポリオレフィン(B)のMFRは、5g/10分以下であることで、梨地状の農業用フィルムを実現することができる。ポリオレフィン(B)のMFRは、好ましくは0g/10分を超える範囲である。更には、ポリオレフィン(B)のMFRは、3g/10分以下であることが好ましく、0.01g/10分以上1.5g/10分以下であることがより好ましい。
【0024】
ポリオレフィン(B)として具体的には、例えば、炭素数2以上10以下のα−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−オクテンなど)の単独重合体または共重合体などが挙げられる。より具体的なポリオレフィンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンが特に好ましい。
なお、ポリオレフィンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0025】
好ましいポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレン(High Pressure Low Density Polyethylene、HP−LDPE)、及び線状低密度ポリエチレン(Linear Low density Polyethylene、LLDPE)であり、高圧法低密度ポリエチレンが特に好ましい。
また、ポリエチレンは、エチレンとα−オレフィンとの共重合によるエチレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。エチレン・α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体が好適である。
【0026】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)の含有割合[(A):(B)]は、質量比で30:70以上70:30以下である。上記の有割合がこの範囲にあることで、農業用フィルムは、優れた梨地状を発現できる。
中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)の含有割合[(A):(B)]は、35:65以上65:35以下であることが好ましく、40:60以上65:35以下であることがより好ましい。
【0027】
更には、上記同様の理由から、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)及びポリオレフィン(B)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体及び低密度ポリエチレンであり、上記の含有割合[(A):(B)]は、40:60以上65:35以下[質量比]であることが特に好ましい。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体は、MFRが100未満のエチレン・酢酸ビニル共重合体とMFRが100以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体との2種(好ましくは両者のMFRの比が5以上)を含む態様が好適である。
【0028】
<その他の重合体>
その他の重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等が挙げられる。その他の重合体の含有量は、農業用フィルム全体に対して、30質量%以下が好ましい。
【0029】
<その他の添加剤>
その他の添加剤としては、例えば、保温剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、防曇剤、防霧剤等が適宜配合される。保温剤としては、混合物層の屈折率と近似した屈折率を有する公知のものが使用できる。保温剤は、特に保温性が良く、光線透過性に悪影響を及ぼさないハイドロタルサイトの使用が最も好ましい。
その他の添加剤の含有量は、農業用フィルム全体に対して、30質量%以下が好ましい。
【0030】
<混合物層の特性>
本発明の農業用フィルムが有する混合物層は、酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が6質量%以上12質量%未満であり、且つ、MFRが1g/10分以上10g/10分以下である。
【0031】
混合物層の酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が、12質量%以上であると、農業用フィルムは、粘着性を抑制することができなくなる。また、混合物層の酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量が、6質量%未満であると、農業用フィルムは、梨地性を維持することができなくなる。
混合物層の酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量は、農業用フィルムの粘着性を抑制する観点から、小さいことが好ましく、8質量%以上11質量%以下がより好ましい。
【0032】
なお、「酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量」は、具体的には、まず、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量を、JIS K7192 1999に準拠した方法により求めた後、エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)とポリオレフィン(B)との合計100質量%中の酢酸ビニル含有量を、下記式1を用いて計算することにより求める。この計算値を、混合物層における、酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量とする。
(式1)
酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量=
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)中の酢酸ビニルに由来する構成単位の含有量(質量%)×エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)の含有量(質量%、但しエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)+ポリオレフィン(B)を100とする)÷100
【0033】
混合物層のMFRは、上記範囲内であることにより、フィルム加工性に優れる。
混合物層のMFRは、フィルム加工性の観点から、2g/10分以上7g/10分以下が好ましく、2g/10分以上5g/10分以下がより好ましい。
【0034】
混合物層の厚みは、3μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上200μm以下がより好ましい。
【0035】
〔混合物層以外の層〕
本発明における農業用フィルムは、農業用フィルムにあった機械的強度、耐久性、保温性等の必要特性を得る観点から、上記混合物層以外の層を有していてもよい。
混合物層以外の層として、具体的には、例えば、オレフィン樹脂層、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)等のバリア性樹脂を用いたバリア性樹脂層、等が挙げられる。
【0036】
混合物層は、植物への過剰な直達光を抑制する観点から、最外層であることが好ましい。
【0037】
〔農業用フィルムの製造方法〕
本発明における農業用フィルムの製造方法としては、例えば、上述した成分を含む混合物を調製後、公知の方法でフィルム状に成形する方法が挙げられる。
以下、混合物層を単独で有する農業用フィルムの製造方法について、説明する。但し、本発明における農業用フィルムの製造方法は、以下の方法に限定されない。
【0038】
例えば、上記各成分をドライブレンド又はメルトブレンドすることによって、上記混合物を調製する。ドライブレンドの場合、成形機中で各成分が溶融可塑化される段階で混合される。また、メルトブレンドの場合、単軸又は二軸押出機などの各種押出機、バンバリーミキサーなどの各種ミキサー、ロール、ニーダーなどの配合機や混合機を用いて溶融混合すればよい。メルトブレンドの場合の混合順序には、特に制限はない。
その後、例えば、インフレーション法、キャスト法などの公知の方法によって、フィルム状に成形する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
農業用フィルムの作製に用いる成分の詳細は以下の通りである。
【0041】
<1.エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)>
(EVA−1):
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):19質量%
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)15g/10分
(EVA−2):
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):19質量%
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)150g/10分
(EVA−3):
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):28質量%
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)15g/10分
(EVA−4):
酢酸ビニルの構成単位の含有量(VA含量):10質量%
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)9g/10分
【0042】
<2.ポリオレフィン(PO)>
(PO−1):
種類:低密度ポリエチレン
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)1.1g/10分
(PO−2):
種類:低密度ポリエチレン
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)0.15g/10分
(PO−3):
種類:低密度ポリエチレン
MFR(JIS K7210−1999、190℃、荷重2160g)0.3g/10分
【0043】
[実施例1]
(農業用フィルム1の作製)
下記の成分を用意した。
<成分>
・EVA−1:30質量部
・EVA−2:13質量部
・PO−1:38質量部
・PO−2:19質量部
【0044】
−混合物の調製−
上記成分を、単軸押出機(押出機スクリュー径:65mm)を用い、ダイス温度160℃、溶融ゾーン温度160℃の条件下で、メルトブレンドした。
メルトブレンド後の混合物について、酢酸ビニルの構成単位の含有量(酢酸ビニルに由来する構成単位の平均含有量(単位:質量%);表1ではVA含量と表記する)及びMFRを、既述の方法で測定した。結果は表1に示す。
【0045】
−成形−
メルトブレンドした上記混合物を、単層インフレーション成形機(口径100mm、押出機スクリュー径30mm)を用い、ダイス温度160℃、溶融ゾーン温度160℃、LS(ライン速度)4.0m/min、BUR(ブローアップ比)1.6の条件下でチューブ状に成形することで混合物層を形成し、折径250mm、厚さ50μmの農業用フィルム1を得た。
【0046】
(評価)
以下の項目について、農業用フィルム1の評価を行った。結果は表2に示す。
【0047】
−口開き性評価−
成形されたチューブ状の農業用フィルム1を試料台に置き、23℃、50%RHの雰囲気下で1日保管し、これを評価用サンプル(2枚が重なって層になっている状態)とした。そして、この評価用サンプルを、片手の親指と人差し指との間に挟んで何度か軽く捻り、口が開くまでに捻った回数を求めて下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:1回捻るだけで口が開く
B:2〜3回捻るだけで口が開く
C:捻る回数が5回未満では口が開かない
【0048】
−外観評価−
得られた農業用フィルム1について、目視で外観を下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A :農業用フィルムは、非常に優れた梨地状を有している。
A−B:農業用フィルムは、優れた梨地状を有している。
B :農業用フィルムに梨地状が発現している。
C :農業用フィルムに梨地状が発現していない。
【0049】
−全光線透過率−
得られた農業用フィルム1について、ヘイズメーター(スガ試験機(株)製)にてJIS−K7136に準じて全光線透過率を測定し、農業用フィルム1の光線透過率を評価する指標とした。
全光線透過率の測定は、農業用フィルム1の片面(「面1」と称する)に光を入射した場合と、反対側の面(「面2」と称する)に光を入射した場合と、の両方を測定した。
全光線透過率は、90%以上であれば実用上の問題がない。
【0050】
−ヘイズ−
得られた農業用フィルム1について、ヘイズメーター(スガ試験機(株)製)にてJIS−K7136に準じてヘイズを測定し、農業用フィルム1の梨地状の程度を評価する指標とした。
ヘイズの測定は、農業用フィルム1の片面(「面1」と称する)に光を入射した場合と、反対側の面(「面2」と称する)に光を入射した場合と、の両方を測定した。
ヘイズは、70%以上であれば実用上の問題がない。
【0051】
−グロス−
得られた農業用フィルム1について、JIS K7105に準拠してグロスを測定し、農業用フィルム1の梨地状の程度を評価する指標とした。
グロスの測定は、農業用フィルム1の片面(「面1」と称する)に光を入射した場合と、反対側の面(「面2」と称する)に光を入射した場合と、の両方を測定した。
【0052】
[実施例2、3、比較例1、2]
実施例1において、農業用フィルムの組成を表1に従って変更したこと以外は、実施例1と同様にして、農業用フィルムを作製した。得られた農業用フィルムについて、実施例1と同様の評価を行った。結果は表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1〜表2からわかるように、本実施例の農業用フィルムは、梨地状が維持され、且つ、口開き性に優れるため、粘着性が抑制されていることが明らかである。一方、比較例の農業用フィルムは、梨地状ではあるものの、粘着性が抑制されていないことが明らかである。
なお、本実施例における農業用フィルムは、本比較例における農業用フィルムに比較して、製造後のみならず、製造過程においても粘着性が抑制されていると予測できる。
【0056】
日本出願2013−172503の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。