(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
密封シール材、断熱材もしくは防音材、靴底、包装材、コーティング、有効成分の捕捉および放出のためのシステム、真空パイプ、レオロジー添加剤、アスファルト用添加剤、ホットメルト接着剤用添加剤、または複合材のマトリックスを製造するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の物質の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前置きとして、表現「の間」は本説明において記載の両端を含むと解釈されるものとすることに注意されたい。
【0017】
上記のように、本発明による超分子物質は、個数基準で90%より多くの末端、好ましくは100%の末端が同一の特定の単位で終結している、線状または分枝状のオリゴアミドX.Yを含むものである。
【0018】
オリゴアミドという用語は、低い数平均分子量Mnを有する重縮合物を表す。Mnの値は、重縮合に関与する反応体のモル比の関数として、および反応の進行度合いの関数として、当業者に知られた慣用的な公式を用いることにより予測することができる。該モル比は、完全変換を前提として、Stockmayer,W.H.(Journal of Polymer Science,1952,9,67−71)の公式によって予測されるMnが10000g/mol未満、好ましくは4500g/mol未満となるように選択される。
【0019】
「オリゴアミドX.Y」は、アミノ酸の縮合によって得られる単位を含むオリゴアミドとは違って、少なくとも1種類の二酸と少なくとも1種類のジアミンから得られる低質量のホモポリアミドまたはコポリアミドを意味すると理解されたい。
【0020】
用語「線状オリゴアミド」は、鎖内に二酸単位とジアミン単位のみを含むオリゴアミドを表し;用語「分枝状のオリゴアミド」は、鎖内に2より多い官能部を有する1つ以上のポリ酸単位またはポリアミン単位を含むオリゴアミドを表す。
【0021】
また、表現「個数基準で90%より多くの…」は、該物質を構成する分子の末端のうち個数基準で10%未満は、場合により反応物の不完全変換に起因するものであり得るか、または使用される単量体中に存在する単官能性存在体に由来するものであり得ることを意味すると理解されたい。より具体的には、酸官能部、アミン官能部またはアルキル官能部が考えられ、該官能部は、慣用的な解析手法、例えば電位差測定法、プロトンNMR分光法または赤外分光法によって観測され得る。
【0022】
本発明の第1の実施形態によれば、この物質は、下記の式(Ia):
X−NH−Ra−NH−[CO−Rb−CO−NH−Ra−NH−]
a−X
(Ia)
(式中:
Raは、場合により1個以上の酸素原子および/または窒素原子が介在している、飽和または不飽和の炭化水素鎖を表し、
Rbは飽和または不飽和の炭化水素鎖を表し、
aは、鎖1つあたりの単位の平均数を表し、0より大きく20以下、好ましくは9以下、より好ましくはさらに1と3との間であり、
XはA−L
1−CO−L
2−CO−基を表し、
ここで:
Aは含窒素複素環を含む会合性基であり、
L
1は化学結合であるか、または場合により1個以上の窒素原子および/または酸素原子が介在している、飽和もしくは不飽和で環状もしくは非環状の炭化水素鎖からなるスペーサーアームであり、
L
2は、少なくとも4個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のオキソ基が介在しており、且つ場合により1つ以上の−OH基および/または1個以上の塩素原子で置換されている、飽和または不飽和で環状または非環状の炭化水素鎖である。)
に該当するオリゴマーを含むものである。
【0023】
上記の式(Ia)において、X基は、L
1’−CO−L
2−CO−配列(ここで、L
2は線状アルキレン鎖を表し、L
1’は−NH−CH
2−CH
2−鎖を表す。)を含むものであることが好ましい。
【0024】
第2の実施形態によれば、本発明による物質は、下記の式(Ib):
X’−CO−Rb−CO−[NH−Ra−NH−CO−Rb−CO−]
a−X’
(Ib)
(式中:
Ra、Rbおよびaは上記に示した規定を有するものであり、
X’はA−L
1−CO−L
2−M
1−基を表し、
ここで:
A、L
1およびL
2は上記に示した規定を有するものであり、
M
1は酸素原子またはNH基である。)
に該当するオリゴマーを含むものである。
【0025】
上記の式(Ia)および(Ib)において、Ra鎖とRb鎖のうち少なくとも一方は線状アルキレン鎖からなるものでないことが好ましい。
【0026】
次に、このような物質の合成のための方法に使用される反応体をより詳細に説明する。
【0027】
<ジカルボン酸>
本発明による方法の第1段階に使用されるジカルボン酸は、好都合には4から100個の炭素原子を含むものである。これは、4から22個の炭素原子を含む飽和線状ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン(azaleic)酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプシン酸、オクタデカン二酸およびそれらの混合物であり得る。択一的な一形態では、本発明で使用されるジカルボン酸は、例えば6から10個の炭素原子を含む飽和分枝状のジカルボン酸、例えば、3,3−ジメチルグルタル酸であり得る。
【0028】
別の択一的な形態では、これは、芳香族二酸、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン二酸(naphthalenic diacid)およびそれらの混合物であり得る。別の択一的な形態では、二酸は脂環式であり得る。後者の場合、これは、以下の炭素系主鎖:ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)またはジ(メチルシクロヘキシル)プロパンを含むものであり得る。
【0029】
また、本発明によれば、2種類の単量体の脂肪酸からなる植物起源のカルボン酸の二量体も使用され得、該脂肪酸は同一であるかまたは異なっており、場合により単量体および/または三量体の脂肪酸の混合物であり、このような混合物は、得られる重縮合物が化学的ゲル化点より下のままであるように選択される。このような植物起源の化合物は不飽和であっても、そうでなくてもよい。これは、不飽和脂肪酸、例えば、ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エイコセン酸およびドコセン酸(これらは、通常、パイン油(トール油脂肪酸)、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、ダイズ油、グレープシードオイル、亜麻仁油およびホホバ油にみられる。)、また、エイコサペンタエン(eicosapentanoic)酸およびドコサヘキサエン(docosahexanoic)酸(これらは魚油中にみられる。)のオリゴマー化(特に、二量体化)により得られる。
【0030】
従って、少なくとも30重量%、さらには実に少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の二量体の線状または環状C
18脂肪酸(これは場合により一部または完全に水素化されている。)を含むオリゴマーの脂肪酸の混合物が使用され得、前記混合物には、低割合(合計で典型的には5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1重量%未満)の単量体の脂肪酸が含まれており、好ましくは同一の脂肪酸二量体の異なる異性体が含まれている。
【0031】
二量体の脂肪酸を含む混合物の例として、Crodaから商標名Pripol
(R)1006、1009、1012、1013、1017、1022、1025および1027で、Arizona Chemicalsから商標名Unidyme
(R)14で、BASFから商標名Empol
(R)1008、1016もしくは1018、またはOleonから商標名Radiacid
(R)0980で販売されているものが挙げられ得る。
【0032】
また、本発明によれば、文献FR2962131A1に記載され、前記文献の図(IIa)、(IIb)および(IIc)に示されたようにして脂肪族物質から誘導される二酸およびポリ酸も使用され得る。このような二酸は、酸官能基を有するチオールを用いたチオール−エン化学反応による天然起源の脂肪酸(例えば、菜種油のオレイン酸)の変性または脂肪酸混合物の変性によって得られる。
【0033】
好ましくは、本発明において、芳香族二酸、例えばテレフタル酸、または4から12個の炭素原子を含む飽和線状ジカルボン酸、例えばアジピン酸もしくはセバシン酸が使用される。
【0034】
<ジアミン>
ジアミンは、2つの第1級アミン官能基を有する、任意の飽和または不飽和の線状、分枝状または環状の化合物から選択され得る。従って、本説明において、用語「ジアミン」は、特に、2つの第1級アミン官能基だけ、および少なくとも1つの他の第2級または第3級アミン官能基を含むポリアミンを包含している。
【0035】
従って、ジアミンは、式(II):
H
2N−(CH
2)
p−NH
2 (II)
(式中、pは3から20の範囲の整数である。)
の化合物、例えば、カダベリン、プトレシン、ヘキサメチレンジアミンまたは1,12−ジアミノドデカンであり得る。
【0036】
択一的な一形態では、脂環式ジアミンおよび分枝状の鎖を含むジアミン、例えば、イソホロンジアミンまたはビス(3−メチル−4−アミノシクロ(cycloc)ヘキシル)メタン(BMACM)、または植物性脂肪酸、特に、C
18脂肪酸(これは一部水素化されたものであっても完全に水素化されたものであってもよい。)、例えば、上記のものから得られる二量体ジアミンも使用され得る。このような二量体ジアミンは、特に、Crodaから例えば商標名Priamine
(R)1074または1073で入手可能である。
【0037】
ジアミンの他の例は、鎖内にヘテロ原子(N)を含む線状ジアミン、特に、式(III):
H
2N−(CHR
1)
m−[NH−(CH
2)
x]
y−NH−(CHR
2)
n−NH
2
(III)
(式中:
R
1およびR
2は独立して、水素原子またはC
1−C
6アルキル基、例えばメチル基を表し、
mおよびnは独立して、1から3の範囲の整数を表し、
xは1から6の範囲の整数を表し、
yは0から2の範囲の整数を表す。)
の化合物である。
【0038】
上記の式(III)では、以下の条件のうち少なくとも1つ、好ましくは全部が満たされている:
・R
1およびR
2は水素原子を表す、
・m+nは2、3または6に等しく、好ましくは2に等しく、
・xは2から4の範囲の整数を表す、
・yは0または1、好ましくは0である。
【0039】
式(III)のポリアミンの好ましい例はDETA(ジエチレントリアミン)、TETA(トリエチレンテトラミン)、TEPA(テトラエチレンペンタミン)、スペルミンおよびジヘキシレントリアミンである。
【0040】
本発明に従って使用され得るまた別の型のジアミンは、鎖内にヘテロ原子(O)を含むものであって、特に、線状または分枝状のポリエーテル鎖、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコール鎖およびそれらのコポリマー(該鎖の各末端は第1級アミン基を有する。)からなるポリエーテルアミンからなるものである。かかる化合物は、特に、Huntsmanから商標名Jeffamine
(R)D,EDまたはEDRシリーズで入手可能である。
【0041】
また、本発明によれば、分枝状であるとともに鎖内にヘテロ原子(S)を有するジアミンおよびポリアミン、例えば、文献FR2962131A1に記載され、前記文献の図(IIa)、(IIb)および(IIc)に示されたものも使用され得る。このようなジアミンは、特に、アミン官能基を有するチオール(システアミンなど)を用いたチオール−エン化学反応による天然起源(例えば、菜種油)の不飽和トリグリセリドの変性によって得られる。
【0042】
択一的な一形態では、線状ジアミン、鎖内にヘテロ原子(O、SまたはN)を含む線状ジアミン、分枝鎖ジアミンおよび脂環式ジアミンが混合物として使用され得、このとき、好ましくは、鎖内にヘテロ原子を含まない線状ジアミンのモル分率は、関与するジアミンの総モル数の50%を超えない。
【0043】
二酸の場合と同様、本発明によるジアミンを場合によりモノアミンまたはポリアミンとの混合物として使用してもよく、このような混合物は、得られる重縮合物が化学的ゲル化点より下のままであるように選択される。
【0044】
本発明によれば、あまり結晶化性でないはずの柔軟性の配列を含むジアミンを使用することが好ましい。このようなアミンは、以下のリスト:線状または分枝状のポリエーテル鎖(特に、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)またはポリ(テトラメチレングリコール)構造およびそれらのコポリマー(該鎖の各末端は第1級アミン基を有する。))を含むポリエーテルアミン、分枝状のジアミンおよびポリアミン(該アミンの鎖にはイオウ原子が含まれている。)、ならびに上記のような場合により一部または完全に水素化された植物性脂肪酸から得られる二量体ジアミン、から選択され得る。
【0045】
場合により一部または完全に水素化された植物性脂肪酸から得られる二量体ジアミンが好ましいジアミンである。
【0046】
<変性用化合物>
本発明による方法では、ジアミンまたはジカルボン酸を、一方に含窒素複素環を含む会合性基、および他方に、それぞれ該ジアミンまたは該二酸と反応し得る反応性官能基を有する変性用化合物と反応させる。
【0047】
この変性用化合物は一般式:A−L
1−CO−L
2−Wを有するものであり、式中、Aは含窒素複素環を含む会合性基であり;L
1は化学結合であるか、または場合により1個以上の酸素原子および/または窒素原子が介在している、飽和もしくは不飽和で環状もしくは非環状の炭化水素鎖からなるスペーサーアームであり;L
2は、少なくとも4個の炭素原子を含み、場合により1つ以上のオキソ基が介在しており、且つ場合により1つ以上の−OH基および/または1個以上の塩素原子で置換されている、飽和または不飽和で環状または非環状の炭化水素鎖であり;Wは、それぞれ該ジアミンまたは該二酸のアミン官能基または酸官能基と反応し得る反応性基である。
【0048】
具体的な会合性基は以下のとおりである:
【0049】
【化2】
式中:
Yは、酸素原子もしくはイオウ原子またはNH基から選択され、
C’1の円弧で表した結合は−CH
2−CH
2−、−CH=CH−および−NH−CH
2−から選択される。
【0050】
従って、会合性基の例としては、イミダゾリドニル基、トリアゾリル基、トリアジニル基、ビス−ウレイル基およびウレイド−ピリミジル基が挙げられ得る。本発明における使用に好ましい会合性基はイミダゾリドニル基である。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、変性用化合物は該ジアミンのアミン官能基と反応する。この場合、該変性用化合物の反応性官能基に対する該二酸の酸官能基のモル比は1と8との間、例えば1と3との間であり、該ジアミンのアミン官能基のモル数は上記の酸官能基と反応性官能基のモル数の合計に等しいことは理解されよう。
【0052】
かかる変性用化合物の例は式A−L
1−CO−L
2−W
1のものであり、
式中:
A、L
1およびL
2は上記に示した意味を有し、
W
1はカルボン酸官能基、エステル官能基、無水物官能基またはアシル塩化物官能基である。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態によれば、変性用化合物は、式(IV):
【0054】
【化3】
に該当するものであり、
式中、R
1、R
2および各Rx基は独立して、水素原子、−OH基または−CH
3基、好ましくは水素原子を表し;nは2から12の範囲であり、好ましくは2、4または6に等しく、より好ましくは2に等しく;R
3は−OH基、−OCH
3基または塩素原子、好ましくは−OCH
3基を表す。
【0055】
さらにより好ましくは、変性用化合物は、下記の式(V):
【0056】
【化4】
に該当するものであり、
式中、nは4と14との間であり、X=HまたはCH
3である。
【0057】
この化合物は新規であり、従って本発明の主題を構成するものでもある。
【0058】
上記の変性用化合物は、UDETA(または1−(2−アミノエチル)イミダゾリジン−2−オン)を:
−脂環式無水物、例えば、グルタル酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、ジグリコール酸無水物もしくはイタコン酸無水物、または
−芳香族無水物、例えば、1,8−ナフタル酸無水物、フタル酸無水物およびイサト酸無水物、または
−ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、または
−ジカルボン酸エステル、例えば、アジピン酸ジメチルもしくはテレフタル酸ジメチル、または
−ジカルボン酸塩化物
と反応させることにより得られ得る。
【0059】
UDETA自体は尿素とジエチレントリアミン(DETA)の反応によって調製され得る。他の同様の変性用化合物は、UDETAをUTETAまたはUTEPA(これらは、それぞれ、尿素をトリエチレンテトラミン(TETA)およびテトラエチレンペンタミン(TEPA)と反応させることにより調製され得る。)に置き換えることにより得られ得る。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、変性用化合物は、式(VI):
【0061】
【化5】
に該当する化合物から選択され、
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基またはアルキル基、また、それらの位置異性体およびエステル、アシル塩化物および無水物を表す。
【0062】
上記のように、択一的な一形態では変性用化合物を、本発明による方法において使用されるジカルボン酸の酸官能基と反応させてもよい。この場合、変性用化合物の反応性官能基に対するジアミンのアミン官能基のモル比は1と8との間であり、該二酸の酸官能基のモル数は上記のアミン官能基と反応性官能基のモル数の合計に等しいことは理解されよう。
【0063】
この実施形態において、変性用化合物は、一般的に、式:A−L
1−CO−L
2−W
2
を有するものであり、
式中:
A、L
1およびL
2は上記に示した意味を有し、
W
2はOH基またはNH
2基である。
【0064】
かかる変性用化合物の一例は、式(VII):
【0065】
【化6】
に該当するものであり、
式中、R
1、R
2、Rxおよびnは上記に示した意味を有し、R
3はOH基またはNH
2基を表し、R
4は水素原子またはアルキル基を表す。
【0066】
この実施形態で使用され得る別の変性用化合物は以下のウレイド−ピリミジル(UPy)誘導体:
【0067】
【化7】
であり、この合成は文献FR2954941の実施例1に記載されている。
【0068】
上記のように、本発明の上記の2つの実施形態において、即ち(i)変性用化合物をジアミンのアミン官能基と反応させる場合、および(ii)変性用化合物を二酸の酸官能基と反応させる場合、該二酸を一酸B1、二酸B2、三酸B3などの混合物で置き換えてもよい、および/または該ジアミンをモノアミンA1、ジアミンA2、トリアミンA3などの混合物で置き換えてもよい。これらの場合、3つ以上の官能部を有するポリ酸およびポリアミンの量は、化学的ゲル化点に達しないように制限されるべきである。
【0069】
このため、混合物の各成分のモル数は、以下の積Pが厳密に1未満のままとなるように選択される:
【0070】
【数1】
式中:
n
A1は(i)の場合はモノアミンのモル数、(ii)の場合はモノアミンのモル数と変性用化合物のモル数の合計を表し、
n
B1は(i)の場合は一酸のモル数と変性用化合物のモル数の合計、(ii)の場合は一酸のモル数を表し、
n
A2はジアミンのモル数を表し、
n
B2は二酸のモル数を表し、
n
A3はトリアミンのモル数を表し、
n
B3は三酸のモル数を表し、
n
Ai(i>3)はi個のアミン官能基を含むポリアミンのモル数を表し、
n
Bj(j>3)はj個の酸官能基を含むポリ酸のモル数を表す。
【0071】
<超分子物質の合成>
本発明による方法では、少なくとも90%の純度が示されるように事前に合成し、単離し、場合により精製しておいた変性用化合物を使用する。この化合物の合成は、場合により本発明による方法の予備段階を構成し得る。他方、この化合物のインサイチュ合成は、望ましくない生成物、例えば、UDETAと線状ジカルボン酸から得られる以下に示すもの:
【0072】
【化8】
の形成を回避するために除外される。
【0073】
ジカルボン酸、ジアミンおよび変性用化合物を上記に示したモル比で、任意の順序で同時または逐次のいずれかで反応器内に導入する。重縮合反応は、50から200℃、例えば160から200℃の温度で、1から24時間、特に4から6時間の範囲の時間で行う。反応は、通常、例えば、200から350回転/分の速度の撹拌下で行う。好ましくは溶媒の非存在下で、好都合には、反応中に生成する水とメタノールが排出されることを可能にし、従って反応が所望のオリゴアミドの形成の方向にシフトされることを可能にする不活性ガス(例えば、窒素)流下で行う。
【0074】
反応の進行は赤外分光法によってモニタリングされ得る。二酸またはジアミンに特徴的なバンドが消失してアミドが優勢になることにより反応の終了時点を判定することが可能である。
【0075】
この反応により、各末端が会合性単位によって官能性付与され、従って水素結合によって互いに結合し得るさまざまな鎖長のオリゴアミドが生成し、該水素結合は温度の関数として可逆的である。得られる鎖の長さ、またこの結晶化性分率は上記の化学量論比に直接的に関連していることが観測されている。従って、後者は、良好な機械的特性が付与されるために必要とされる結晶性、および低溶融粘度を示すのに充分に低い分子量を有する物質を得ることが可能となるように調整される。
【0076】
この方法の結果として得られる重縮合物は、例えば10J/gより大きい融解エンタルピーを特徴とする半結晶性のものであり、一般的に120と260℃との間、好ましくは130と180℃との間、より好ましくは140と170℃との間の溶融温度(T
f)、および一般的に−25℃と100℃との間、好ましくは−25℃と10℃との間のガラス転移温度(T
g)を有するものである。
【0077】
数平均分子量は、GPCで測定したとき、一般的に4500g/mol未満、例えば1000から3000g/molであるが、択一的な一形態では10000g/molまでの範囲であり得る。
【0078】
この物質は、融点より30℃上で一般的に10Pa.s未満、好ましくは1Pa.s未満、典型的には0.1から0.5Pa.sの低溶融粘度、ならびに周囲温度および周囲温度より上の広い温度範囲で1MPaより大きい、特に3MPaより大きい、好ましくは4MPaより大きい、さらには実に10MPaより大きい破断応力によって反映される良好な機械的特性、ならびに場合により引張延性挙動を示すものである。
【0079】
上記の特性は、本説明の実施例のパートに示した手法に従って測定される。本発明による物質はこれらの特性の少なくとも1つ、好ましくは全部を示すものである。
【0080】
本発明による物質は、特に、密封シール材、断熱材もしくは防音材、靴底、包装材、コーティング(塗料、膜、美容用製品)、有効成分の捕捉および放出のためのシステム、真空パイプ、一般的には、良好な引裂強度および/または疲労強度を示すものでなければならない部品、レオロジー添加剤、アスファルト用添加剤もしくはホットメルト接着剤用添加剤、また、複合材のマトリックスを製造するために使用され得る。
【0081】
以下の実施例に鑑みると本発明のよりよい理解が得られよう。以下の実施例は、例示の目的で示したものにすぎず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定する目的を有するものではない。
【実施例】
【0082】
<測定方法>
1.熱分析:試料は示差走査熱量測定(DSC)によって特性評価した。以下のプロトコルを適用した:まず10℃/分で−100℃から250℃まで加熱、250℃で5分間等温、−10℃/分で−100℃まで冷却、−100℃で5分間等温、次いで10℃/分で250℃まで2回目の加熱。融解エンタルピーを、TA Universal Analysisソフトウェアを用いて「Sigmoidal tangent」モードで測定した。ピーク頂点を溶融温度、および変曲点をガラス転移温度として求めた。
【0083】
2.レオロジー:試料の粘度は100s
−1の剪断速度で、直径が50mmの円錐平板型幾何形状体を備えたレオメータを用いて測定した。試料を、180℃まで予熱した幾何形状体の下に置いた。
【0084】
3.機械的特性:一軸引張特性を、12mm×2mm×1.2mmのダンベル形態の試験片においてInstron 5564引張試験デバイスを用いて試験した。試験は周囲温度にて2mm/分の速度で行った。各物質について独立した3回の試験を行い、続いて、この3回の試験の結果の平均を計算した。
【0085】
[実施例1]:本発明による変性用化合物の調製
この実施例では、本発明に従って使用される種々の変性用化合物の合成を示す。
【0086】
[実施例1A]:無水物の開環
反応スキームは以下のとおりとした:
【0087】
【化9】
第1の工程では、グルタル酸無水物(7.95g,即ち、0.07mol)を滴下漏斗に導入した。アセトニトリル(15ml)を該無水物に添加し、撹拌下で60℃にて溶解させた(溶解は完全ではなかった。)。UDETA(10g,即ち、0.077mol)のアセトニトリル(15ml)溶液を調製し、磁性バーを備えており滴下漏斗を取り付けた二口丸底フラスコに導入した。この丸底フラスコを周囲温度の水浴中に導入し、続いて数滴の36から38%の塩酸(即ち、0.001mol)を添加し、この無水物溶液を滴下で30分間にわたって導入した。反応混合物を撹拌状態で周囲温度にて20時間、次いで40℃にて4時間維持した。生成物(これは、形成されるにつれて白色粉末の形態で析出した。)を濾過(真空ポンプ)によって回収し、アセトニトリルで2回洗浄し、ベルジャー下で周囲温度にて乾燥させた。得られた生成物は白色粉末であり、化学的に特性評価した:最終生成物の純度は、プロトンNMR分光法によって容易に測定され得た。
【0088】
この方法は、異なる鎖サイズを有する同様の変性用化合物の合成に適用され得る。
【0089】
[実施例1B]:UDETAとジエステルとの縮合
反応スキームは以下のとおりとした:
【0090】
【化10】
UDETA(30g,即ち、0.232mol)と大過剰(9当量)のアジピン酸ジメチル(364.13g,即ち、2.090mol)を、磁性バーを備えた二口丸底フラスコに導入した。透明な出発混合物を撹拌し、反応媒体中に形成されたメタノールを除去するために窒素流を送った。この丸底フラスコを、140℃に加熱したシリコーン油浴中に6時間入れた。反応終了時、過剰のジエステルを蒸留により、開始時は160℃で静的真空下にて、蒸留が遅くなった場合は180℃で静的真空下にて、次いで、可能な限り最大量のジエステルを回収するために動的真空下にて160℃で除去した。最後に、形成された生成物をペンタンで5回洗浄し、ベルジャー下、周囲温度で24時間乾燥させた。最終生成物(UDETA−C6)はNMR分光法によって特性評価され得、良好な純度が示された。
【0091】
上記で使用したジエステルをジカルボン酸またはジカルボン酸塩化物に置き換えて、同様の方法が行われ得る。
【0092】
[実施例1C]:ラクトン開環
反応スキームは以下のとおりとした:
【0093】
【化11】
第1の工程では、UDETA(20g,即ち、0.155mol)を周囲温度で30mlのアセトニトリルに、磁性バーを備えた二口丸底フラスコ内で溶解させた。この丸底フラスコに滴下漏斗を取り付け、この漏斗内には、18.3ml(0.17mol)のカプロラクトンを含む15mlのアセトニトリルの溶液を導入しておいた。この溶液を周囲温度で反応混合物に30分間にわたって滴下した。続いて、混合物を撹拌状態で12時間、次いで40℃でさらに4時間放置した。溶液を回転式エバポレータで濃縮し、反応生成物を結晶化させるために冷凍庫内に12時間入れた。続いて、反応生成物を濾過によって回収し、アセトニトリルで洗浄し、ベルジャー下で6時間乾燥させた。反応生成物は、この純度を調べるためにプロトンNMR分光法によって容易に解析され得た。
【0094】
多種多様なラクトンが、同様にして開環され得、官能性付与された炭素系鎖が生成され得る。
【0095】
[実施例2]:酸二量体に基づく超分子オリゴアミドの調製
不飽和脂肪族の二酸(Pripol
(R)1009)、環と不飽和を含むジアミン(Priamine
(R)1074)および実施例1Bに記載のようにして得た変性用化合物(UDETA−C6)を、以下の式:
【0096】
【化12】
(式中、nは0から3まで変化する。)
の化合物が得られるように縮合させた。
【0097】
反応はジャケット付き反応器内で行い、該反応器は60mmの直径および1lの公称容積を有し、シリコーン油の循環を有するサーモスタット制御浴を用いて調節し、パイプは金属シースで補強した。この反応器にメカニカルスターラーを取り付け、ボトムバルブ、ガス供給口および気泡発生部を備え付けた。反応を赤外分光法によってモニタリングし、反応生成物をNMR分光法およびGPCによって解析した。
【0098】
従って、n=1に対応する生成物を以下のようにして合成した。
【0099】
52.5g(0.18mol)のPripol
(R)1009を秤量して反応器に導入した。続いて、101.01g(0.37mol)のPriamine
(R)1074、次いで50g(即ち、0.18mol)のUDETA−C6を反応器に導入した。次いで反応器を閉鎖し、280回転/分での撹拌下で180℃まで加熱した。300ml/分の窒素流を、高温に耐え得るパイプを用いて流した。このパイプは撹拌混合物にできるだけ近接して導入した。気泡発生部に接続したガス排出口により反応器の気密性を確認すること、および反応中に形成されたメタノールを保持することが可能であった。赤外線(IR)分光法によるモニタリングを、加熱を停止すべき時点を決定するために実施した。IR分光法による解析により、およそ1394cm
−1におけるカルボキシレート官能基のν(C=O)バンドの消失、およびおよそ1650cm
−1におけるアミドのν(C=O)バンドの出現を確認した。6時間後に反応が終了し、得られたオリゴマーをボトムバルブからテフロン
(R)製ビーカー内に回収した。得られた生成物はビーカー内でかなり急速に晶出し、ビーカーには付着しなかった。従って容易に回収して解析することができた。
【0100】
この実施例の試料はすべて同じ様式で得た。生成物は鎖サイズが異なっており、この鎖サイズは、nの値、即ち変性用化合物の反応性官能基に対する二酸の酸官能基のモル比に依存している。また、本発明の範囲に含まれない変性用化合物を用いて2つの比較例を行った。最後に、Pripol
(R)1009をPripol
(R)1017に置き換えて追加実施例を行った。実施した種々の試験を以下の表に比較対照する。
【0101】
【表1】
【0102】
[実施例3]:アジピン酸に基づく超分子オリゴアミドの調製
一連の第2試料を、以下の式:
【0103】
【化13】
(nは0から3の間で種々である。)
に該当する物質を得るためにPripol
(R)1009をアジピン酸に置き換えて、実施例2と同様の様式で調製した。
【0104】
実施例2の場合のように、UDETA−C6を本発明の範囲に含まれない変性用化合物に置き換えることにより比較試料も調製した。この一連の試料の調製条件を以下の表にまとめる:
【0105】
【表2】
【0106】
[実施例4]:超分子物質の特性の評価
実施例2および3で調製した物質を、物理化学的特性および機械的特性を評価する目的で、上記に示した種々の試験に供した。実施例3に従って合成した物質を100℃で1時間アニーリングした後、融解エンタルピーを測定した。
【0107】
これらの試験の結果を以下の表に比較対照する:
【0108】
【表3】
【0109】
これらの試験から、本発明による変性用化合物を、含窒素複素環を含むものでない別の化合物に置き換えると、120℃より低い融点(これは数多くの用途で不充分である。)を有する物質、さらには実に、周囲温度で固形ではなく粘性の液の形態で存在する物質が得られることがわかる。また、二酸(n=0)なしで、または不充分な量の二酸(n=0.33)の存在下で調製した物質は脆すぎて成形型から取り出すことができず、従って試験することができなかった。
【0110】
また、本発明による物質の上記の特性は、18000g/molである分子量を有する典型的なポリアミド−6を用いて得られるものと同様であることが観測された。しかしながら、溶融粘度はこの型のポリマーのものより100倍超低く、これにより使用が非常に容易になる。
【0111】
[例5](比較):変性用化合物をUDETAで置き換えることにより得られる物質
比較オリゴアミドを、本発明による変性用基UDETA−C6の代わりにUDETAを使用することにより調製した。この物質は、50gのPripol
(R)1009(0.175mol)、24gのPriamine
(R)1074(0.088mol)および11.32gのUDETA(0.088mol)を出発物質とし、Priamine
(R)とUDETAを180℃まで加熱した反応器内に導入した後にPripol
(R)1009を添加したこと以外は実施例2に示したものと同様の方法に従って調製した。
【0112】
得られた生成物は、周囲温度で非常に粘性の液の形態で存在し、なんら有意な機械的特性を示さないものであった。粘度は180℃で0.3Pa.s未満であった。