特許第6471144号(P6471144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471144内燃エンジン用ピストンの製造方法および当該方法により製造されたピストン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471144
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】内燃エンジン用ピストンの製造方法および当該方法により製造されたピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20190204BHJP
   F02F 3/22 20060101ALI20190204BHJP
   F02F 3/26 20060101ALI20190204BHJP
   F16J 1/09 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   F02F3/00 G
   F02F3/00 301B
   F02F3/22 Z
   F02F3/26 C
   F16J1/09
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-503542(P2016-503542)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-516155(P2016-516155A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】DE2014000139
(87)【国際公開番号】WO2014146637
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】102013004577.0
(32)【優先日】2013年3月18日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013014344.6
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアハルト ベルー
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ オリバー ボッゼク
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー シャルプ
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0080004(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01077323(EP,A2)
【文献】 特表2007−500608(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222304(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222305(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/019595(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00
F02F 3/22
F02F 3/26
F16J 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンのためのピストン(10)を製造するための方法であって、
上記ピストンは、ピストン本体(11)とピストンリング部(17)とを備え、
上記ピストン本体(11)は、ドーム(13)を含む燃焼くぼみ(12)の全体と、ボスボア(15)を備えたピストンボス(14)とを有し、
上記ピストンボスは、摺動面(16)を介して互いに接続され、
上記ピストンリング部(17)は、ピストンクラウン(18)と、環状のファイアランド(19)と、環状のリング部(21)とを有し、
上記ピストン本体(11)および上記ピストンリング部(17)は、環状の冷却ダクト(22)を形成し、
方法は、次の方法ステップ、すなわち、
a)変形プロセスにより上記ピストン本体(11)の半加工品(11’)を製造し、上記燃焼くぼみ(12)の輪郭を完全に作製すること、
b)変形プロセスまたは鋳造プロセスにより上記ピストンリング部(17)の半加工品(17’)を製造すること、
c)溶接面(26,28,27,29)の仕上げ加工を実行することを含んで上記半加工品(11’,17’)を予備加工すること、
d)ピストン体(30)を形成するために、溶接プロセスにより上記ピストン本体(11)および上記ピストンリング部(17)の上記予備加工された半加工品(11”,111’,17”)を接合すること、
e)完成した上記ピストン(10)を形成するために、上記ピストン体(30)の二次加工、および/または、仕上げ加工を実行すること、
を含んでいる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、
ステップc)で、上記半加工品(11’,17’)内に冷却ダクト領域(22a,22b)が形成され、および/または、仕上げ加工される
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1において、
ステップc)で、上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)において、内部空間(24)が仕上げ加工され、かつ、上記冷却ダクト領域(22a)内に冷却オイルのための入口および出口の開口部が形成される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1において、
ステップc)で、上記ピストン本体(11)、および/または、上記ピストンリング部(17)の上記半加工品(11’,17’)において外径が予備加工され、および/または、上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)において上記ピストンボス(14)が予備加工される
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1において、
上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)が、1200〜1300℃での熱間加工により鍛造され、引き続き、冷間加工に供される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1において、
上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)が、1200〜1300℃での熱間加工により鍛造され、引き続き、150℃以下での冷間キャリブレーションに供される
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1において、
上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)が、600〜900℃での温間加工により鍛造される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7において、
上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)が、上記温間加工の後に、150℃以下の温度での冷間加工に供される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1において、
上記ピストン本体(11)の上記半加工品(11’)が、150℃以下での冷間加工により鍛造される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
内燃エンジンのためのピストン(10)であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造できる
ことを特徴とするピストン。
【請求項11】
請求項10において、
上記ピストンが、ピストン中心軸に対して非対称であるか、および/または、径方向にオフセットを有し、および/または、傾斜した燃焼くぼみ(12)を備えている
ことを特徴とするピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンのためのピストンを製造する方法に関するものである。当該ピストンは、ピストン本体およびピストンリング部を備え、ピストン本体は、ドームを有する燃焼くぼみとボスボアを備えたピストンボスとを有し、ピストンボスは、摺動面を介して互いに接続され、ピストンリング部は、ピストンクラウンと環状ファイアランドと環状リング部とを有し、ピストン本体とピストンリング部とは環状冷却ダクトを形成している。本発明は、また、当該方法により製造され得るピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンを製造するための方法が特許文献1および特許文献2から知られており、当該方法では、ピストン本体の半加工品は燃焼くぼみの全体において鍛造により仕上げられる。よって、燃焼くぼみの輪郭は二次加工プロセスに関係しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011013141号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011013067号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、当該製造方法は、ピストン上側部がピストンヘッドを有しかつピストン下側部がピストンスカートを有するピストンのためにのみ使用され得る。その他のピストン構造は実現され得ない。
【0005】
異なったピストン構造が実現され得るように、一般的な方法をより改善することが本発明の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
解決方法は、ステップa)で、ピストン本体の半加工品の製造の間に、燃焼くぼみの輪郭が完全に作製されることである。
【0007】
本発明は、また、本発明に係る方法により製造可能なピストンに関する。
【0008】
本発明に係る方法は、リング部が異なる材料および構造で構成され得るピストンが製造され得ることに特徴がある。例えば、強化されたリング部を備えたピストンを実現することが可能である。
【0009】
有利な改良点は、従属請求項から明らかになるだろう。
【0010】
便宜的には、半加工品の溶接の後には冷却ダクト領域にもはやアクセスできなくなるため、ステップc)で、半加工品内に冷却ダクト領域が形成され、および/または、仕上げ加工される。
【0011】
さらに有利には、ステップc)で、ピストン本体の半加工品において、内部空間が仕上げ加工され、かつ、冷却ダクト領域内に冷却オイルのための入口および出口の開口部が形成される。ピストン本体は、この目的のために、溶接されたピストン体よりも容易に処理することができる。
【0012】
さらに、同様の思考に基づいて、ステップc)で、ピストン本体、および/または、ピストンリング部の半加工品において外径が予備加工され、および/または、ピストン本体の半加工品においてピストンボスが予備加工されることが推奨される。
【0013】
好ましい改良では、ステップe)で、ボスボアは、ピストンクラウンが仕上げ加工された後にピストンボス内に形成される。ピストンのコンプレッションハイトはピストンクラウンとボスボアの中心軸との間の距離によって規定されるため、完成したピストンの予め規定されたコンプレッションハイトが特にシンプルな態様で得られる。
【0014】
ピストン本体の半加工品の製造のためにさまざまな変形的な方法が選択され得る。半加工品は、1200〜1300℃での熱間加工により鍛造され、引き続き、冷間キャリブレーションに供されてもよい。半加工品は、また、1200〜1300℃での熱間加工により鍛造され、引き続き、150℃以下の温度での冷間加工に供されてもよい。半加工品は、さらに、600〜900℃での温間加工により鍛造されてもよい。さらに、半加工品は、温間加工の後に、150℃以下の温度での冷間加工に供されてもよい。最後に、半加工品は、150℃以下での冷間加工により鍛造されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る方法により製造されたピストンの代表的な実施形態を示す図である。
図2図2は、図1に係るピストンのためのピストン本体とピストンリング部との半加工品の各ケースにおける第1の代表的な実施形態を示す図である。
図3図3は、予備加工が実行された後の図2に係る半加工品を示す図である。
図4図4は、図3に係る予備加工された半加工品から形成された溶接されたピストン体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの場合において、概略図は正確な縮尺ではない。
【0017】
図1は、本発明に係るピストン10の代表的な実施形態を示している。ピストン10は、中央ドーム13を備えた燃焼くぼみ12を有するピストン本体11を備えている。ピストン本体11は、さらに、それ自体公知の態様で、ピストンピン(図示せず)を収容するためのボスボア15を含むピストンボス14と、内部空間24とを有している。ピストンボス14は、摺動面16を介して互いに接続されている。
【0018】
ピストン10は、ピストンクラウン18と、環状ファイアランド19と、ピストンリング(図示せず)を収容するための環状溝を含む環状リング部21とを有するピストンリング部17をさらに備えている。冷却オイル(図示せず)のための入口および出口の開口部を有する環状冷却ダクト22がリング部21の高さに設けられている。
【0019】
目下の代表的な実施形態では、ピストン本体11とピストンリング部17とは、溶接プロセス、例えば電子ビーム溶接またはレーザ溶接により互いに接合されている。
【0020】
ピストン本体は、変形プロセスに供され得る材料から製造される。これは、典型的には焼戻し鋼、例えば42CrMo4または38MnVS6のようなAFP鋼である。
【0021】
本発明によると、複雑な形状の燃焼くぼみでも製造できることが目的である。さらに、本発明に係る方法により、ピストンの中心軸に対して径方向にオフセットを有するかまたは傾斜して配置された燃焼くぼみを製造できることが意図されている。
【0022】
この目的のために、図2に示すように、まず第一に、ピストン本体11およびピストンリング部17のための半加工品が製造される。ピストン本体11のための半加工品11’は、代表的な実施形態では、1200〜1300℃での熱間加工およびそれに続く冷間キャリブレーション(半加工品11’の表面を室温で加圧する)によりさらに処理される。
【0023】
代表的な実施形態では、燃焼くぼみ12の形状は鍛造により仕上げられる。このことは、完成したピストン10の製造のために、燃焼くぼみ12の二次加工が全く必要ないことを意味する。
【0024】
ピストンリング部17の半加工品17’は、例えば変形または鋳造により、任意の適当な材料から製造され得る。
【0025】
図3に示すように、鍛造プロセスの後に、加工半加工品11”,17”を形成するために半加工品11’,17’を予備加工することが可能である。両方の半加工品11’,17’において、例えば外径を予備加工することが可能である。
【0026】
ピストン本体11のための半加工品11’において、ボス領域を予備加工することがまた可能である。最後に、内部空間24が仕上げ加工され得る。さらに、冷却ダクト領域22aは、完成したピストン10において冷却ダクト22の一部を形成するものであって、半加工品11’内に形成される。冷却ダクト領域22aは、また、鍛造プロセスの間に形成されてもよく、この場合には、鍛造プロセスの後に仕上げ加工される。冷却オイルのための入口および出口の開口部は、冷却ダクト領域22a内に形成される。
【0027】
ピストンリング部17のための半加工品17’において、例えば、冷却ダクト領域22bが、完成したピストン10において冷却ダクト22の一部を形成するものであって、半加工品17’内に形成される。
【0028】
最後に、鍛造プロセスの後に、両方の半加工品11’,17’において、溶接面26,27,28,29が、それらにより半加工品11’,17’が互いに接合されるものであって、それぞれ仕上げ加工される。
【0029】
そして、半加工品11’,17’は、それらの溶接面26および溶接面28と、溶接面27および溶接面29とをそれぞれ介して、例えば図4に示すように、ピストン体30を形成するためにそれ自体公知の態様で適当な溶接プロセスにより互いに接合される。
【0030】
本発明に係る方法を完了させるために、ピストン体30は、例えば、製作される最終的な精細な輪郭に基づいて仕上げ加工され、ピストンクラウン18が仕上げ加工され、リング領域21に環状溝が形成され、そしてピストンボス14内にボスボア15が形成される。ボスボア15は、完成したピストンの予め規定されたコンプレッションハイトがピストンクラウン18に対する上記ボスボアの中心軸により定められるように形成される。図1に係るピストンが結果として得られる。
図1
図2
図3
図4