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特許6471172リファイナ内におけるファイバフローの均等化の方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471172
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】リファイナ内におけるファイバフローの均等化の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D21D 1/30 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   D21D1/30
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-555559(P2016-555559)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2017-507253(P2017-507253A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】SE2015050230
(87)【国際公開番号】WO2015133962
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2018年1月15日
(31)【優先権主張番号】1450243-9
(32)【優先日】2014年3月5日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515203011
【氏名又は名称】バルメット・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンドブロム,トミー
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−520947(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0006924(US,A1)
【文献】 特開昭49−022649(JP,A)
【文献】 実開平03−092793(JP,U)
【文献】 特開昭54−023706(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0306769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B−D21J
B02C1/00−7/18
15/00−17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースを含む材料を離解することが意図されたリファイナ用のリファイナセグメント(1)であって、本リファイナセグメントは、叩解面を有し、前記リファイナの叩解面の一部を形成するように構成可能であり、前記リファイナセグメント(1)は、叩解される材料の供給流れの方向に向けられた流入領域(2)と、叩解された材料の材料流れの方向に向けられた叩解領域(3)とを有し、前記リファイナセグメントは、
少なくとも2つの第1のバー(10)および少なくとも3つの第2のバー(20)のグループであって、前記少なくとも2つの第1のバー(10)の各々と、前記少なくとも3つの第2のバー(20)の各々は、流入領域(2)の方向に向けられた第1の端部(10−1、20−1)と、叩解領域(3)の方向に向けられた第2の端部(10−2、20−2)を有する、少なくとも2つの第1のバー(10)および少なくとも3つの第2のバー(20)のグループを備え、
前記少なくとも2つの第1のバー(10)と前記少なくとも3つの第2のバー(20)とは、前記第1のバー(10)の前記第2の端部(10−2)が、前記第2のバー(20)の前記第1の端部(20−1)と交錯して、第2のバー(20)の幅以上の幅をもつ、前記第1のバー(10)間の第1の溝(30−1)を形成するとともに、第1のバー(10)の幅以上の幅をもつ、前記第2のバー(20)間の第2の溝(30−2)を形成する、交錯される方式で配置され、
少なくとも2つの第1のバー(10)の前記第2の端部(10−2)は、前記少なくとも2つの第1のバーの上面から叩解領域(2)の方向に前記第2の端部(10−2)へ減少するそれぞれのガイド面(R1)を有し、
前記少なくとも3つの第2のバー(20)の前記第1の端部(20−1)は、流入領域(2)の方向から前記バー(20)の上面に、第2の端部(20−2)に向かって増大するそれぞれのガイド面(R2)を有し、
前記第1のバー(10)の前記第2の端部(10−2)と、前記第2のバー(20)の前記第1の端部(20−1)は、前記第1および第2のバー(10、20)と実質的に交差するとともに、前記第1および第2のバー(10、20)とに対し実質的に垂直である均等化溝(40)を形成するように配置され、前記均等化溝(40)は、前記少なくとも2つの第1のバー(10)間の少なくとも1つの前記第1の溝(30−1)から、前記少なくとも3つの第2のバー(20)間に形成された1つまたは複数の前記第2の溝(30−2)内への材料の流れを緩和するとともに分配するように構成された、リファイナセグメント。
【請求項2】
前記均等化溝(40)が、前記第1および第2のバーの長手方向に垂直な方向、かつ、前記リファイナセグメント(1)に対する法線方向に見た場合、前記第1のガイド面(R1)および前記第2のガイド面(R2)によって形成された傾斜対向面によって形成されている、請求項1に記載のリファイナセグメント。
【請求項3】
前記傾斜対向面(R1、R2)間の距離が、前記叩解面に対する法線方向に沿って増大する、請求項2に記載のリファイナセグメント。
【請求項4】
前記増大が線形である、請求項3に記載のリファイナセグメント。
【請求項5】
前記増大が多項式によるものである、請求項3に記載のリファイナセグメント。
【請求項6】
前記均等化溝(40)がV状である、請求項3に記載のリファイナセグメント。
【請求項7】
前記第1のガイド面(R1)と前記第2のガイド面(R2)とが同じ傾斜を有する、請求項6に記載のリファイナセグメント。
【請求項8】
前記第1のガイド面(R1)と前記第2のガイド面(R2)とが異なる傾斜を有する、請求項6に記載のリファイナセグメント。
【請求項9】
前記第1のバー(10)と第2のバー(20)とが異なる高さで配置されている、請求項1に記載のリファイナセグメント。
【請求項10】
前記第1のバー(10)と前記第2のバー(20)とが同じ高さで配置されている、請求項1に記載のリファイナセグメント。
【請求項11】
前記均等化溝(40)が、前記第1の(30−1)および/または第2の(30−2)の深さに等しい深さを有する、請求項3に記載のリファイナセグメント。
【請求項12】
前記均等化溝(40)が、前記第1のおよび/または第2のの深さ未満の深さを有する、請求項3に記載のリファイナセグメント。
【請求項13】
前記リファイナセグメントが、第1のバー(10)および第2のバー(20)の複数のグループを備え、そのようなグループの各々は、それぞれの均等化溝(40)を備えている、請求項1から12のいずれか一項に記載のリファイナセグメント。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのリファイナセグメント(1)を備えた、リグノセルロースを含む材料を離解するためのリファイナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してファイバリファイナに関し、より詳細には、そのようなリファイナ内のファイバフローの均等化を促進することに関する。
【背景技術】
【0002】
機械パルプを製造するために使用されるリファイナは、通常、対向して配置され、互いに対し回転する1つまたは複数のリファイナ要素を備えている。固定された、または静止したリファイナ要素は、リファイナのステータと呼ばれ、回転する、または回転可能なリファイナ要素は、リファイナのロータと呼ばれる。ディスク型リファイナでは、リファイナ要素はディスク状であり、コーン型リファイナでは、リファイナ要素は円錐形である。ディスク型リファイナおよびコーン型リファイナに加え、ディスク−コーンリファイナと呼ばれるものもある。ディスク−コーンリファイナでは、繊維が離解される材料の流れ方向において、ディスク型リファイナ要素が最初におかれ、その後に、繊維が離解される材料は、円錐形リファイナ要素間でさらに叩解される。さらに、リファイナのステータとロータとの両方が円筒状のリファイナ要素である、円筒状リファイナも存在する。
【0003】
リファイナ要素の叩解面は、バー、すなわちバーと、バー間のブレード溝、すなわち溝とで形成されている。バーの役割は、リグノセルロース材料を離解することであり、溝の役割は、叩解面上の離解される材料と、すでに離解された材料との両方を移送することである。最も一般的なリファイナのタイプであるディスク型リファイナでは、叩解される材料が、通常はステータの中間、すなわち、ステータの叩解面の内周にある開口を通して、ディスクの叩解面間のスペース、すなわち、ブレードの隙間に供給される。叩解された材料は、ブレードの隙間から、リファイナディスクの叩解面の外周から排出され、パルプ製造プロセスの先へ供給される。リファイナディスクの叩解面は、リファイナディスク上に直接形成される表面であるか、各ブレードセグメントが連続した叩解面の一部を形成するように、相互に隣接して配置された別々のブレードセグメントとして形成することができるかの、いずれかである。コーン型リファイナについても同様である。
【0004】
通常、2つの隣接するバーを相互に接続するダムは、リファイナのステータとロータとの両方の叩解面のブレード溝の底部に配置される。ダムの役割は、叩解される材料と、すでに叩解された材料とをさらに叩解するために、対向する叩解面のバー間のスペースに案内することである。ダムが叩解される材料を対向するブレードバー間のスペースに案内することから、ダムのおかげで材料の叩解を促進することができる。しかしながら同時に、ダムにより、ブレード溝の断面流れ面積を制限することにより、叩解される材料を先に進めるブレード溝内の蒸気の流れが低減され、叩解面上の叩解される材料および、すでに叩解された材料の通過が防止される。このことは、とりわけ、叩解面上の妨害となり、このため、リファイナの生産能力の低減、叩解される材料の品質の不均一性、および、叩解に消費されるエネルギの増大に繋がる。
【0005】
国際公開第2010/106225号パンフレットには、対向する叩解面間のブレードの隙間に材料を案内するのにダムを使用しない叩解面が説明されている。叩解面は、間にブレード溝を有する第1のブレードバーと第2のブレードバー、および、第1のブレードバーと第2のブレードバーとの間のブレード溝に位置する第3のブレードを備えている。第3のブレードバーは、ブレード溝の底部からブレードバーの上面に登るスロープ状の端部を有している。スロープ状の端部は、叩解面の供給縁部に最も近いブレードバーの端部に位置し、したがって、ブレードバー間のブレード溝からブレードバーの上面へ、およびブレードの隙間へ材料を案内する、上り坂のガイド面を形成する。
【0006】
任意の継続的なプロセスにおいて、変化量を最小化することが、品質を最大化し、コストを最小化し、そして安定したプロセスを得るために極めて重要である。このことは、ファイバ(木または他のリグノセルロース材料)がリファイナセグメント間で叩解される、あらゆるパルプ叩解プロセスについても当てはまる。リグノセルロースとの用語は、植物乾燥物質、または、いわゆるリグノセルロースバイオマスに関する。リグノセルロースは、炭水化物ポリマ(たとえば、セルロース、ヘミセルロース)、および芳香族ポリマ(リグニン)で構成される。これら炭水化物ポリマは、様々な糖モノマ(六炭糖および五炭糖)を含んでおり、リグニンとしっかりと結合している。リグノセルロースバイオマスは、未使用のバイオマス、廃棄バイオマス、およびエネルギ作物に広く分類することができる。未使用のバイオマスには、木、低木、および草などの、自然発生の陸生植物すべてが含まれる。廃棄バイオマスは、農業(コーンの茎や葉、サトウキビバカス、わらなど)、林業(製材工場および製紙工場の廃棄物)などの、様々な産業分野の低価値の副産物として生産される。エネルギ作物は、スイッチグラス(Panicum virgatum)およびエレファントグラスを含む第二世代の生物燃料例の生成のための原材料としての役割を果たすように生成される、収率の高いリグノセルロースバイオマスの作物である。
【0007】
パルプの叩解において、ステータとロータのセグメント間の叩解隙間への供給量の変化により、所定または所望のパルプの品質を維持するのに必要なエネルギを増大させ、最終的なファイバの品質の変化を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/106225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述の欠点を克服するために、ブレードセグメントの設計を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、概してパルプの叩解に関し、より詳細には、パルプリファイナ内の供給量の変化の最小化に関する。
【0011】
第1の態様では、本開示は、リグノセルロースを含む材料を離解することが意図されたリファイナ用のブレードセグメントであって、叩解面を有し、リファイナの叩解面の一部を形成するように構成可能である、ブレードセグメントを提供する。ブレードセグメントは、叩解される材料の供給流れの方向に向けられた供給縁部と、叩解された材料の排出流れの方向に向けられた排出縁部と、ブレードセグメントの叩解面と、を有する。さらに、リファイナセグメントは、少なくとも2つの第1のブレードバーと、少なくとも3つの第2のブレードバーとのグループを含み、少なくとも第1のバーの各々と、少なくとも3つの第2のブレードバーの各々は、供給縁部の方向に向けられた第1の端部と、排出縁部の方向に向けられた第2の端部とを有する。さらに、少なくとも第1と少なくとも3つの第2のブレードバーとは、第1のブレードバーの第2の端部が第2のブレードバーの第1の端部と交錯して、第2のブレードバーの幅に対応する前記第1のブレードバー間の第1の谷部を形成するとともに、第1のブレードバーの幅に対応する前記第2のブレードバー間の第2の谷部を形成するように、交錯する方式で配置される。また、少なくとも2つの第1のブレードバーの第2の端部は、少なくとも1つの第1のブレードバーの上面から排出縁部の方向に第2の端部へ下がるそれぞれのガイド面を有し、少なくとも3つの第2のブレードバーの第1の端部は、供給縁部の方向から前記ブレードバーの上面に第2の端部に向かって登るそれぞれのガイド面を有する。最後に、第1のブレードバーの第2の端部と、第2のブレードバーの第1の端部とは、第1および第2のブレードバーと実質的に交差するとともに、第1および第2のブレードバーに対し実質的に垂直である均等化溝を形成するように配置され、均等化溝は、少なくとも2つの第1のブレードバー間の第1の谷部から、少なくとも3つの第2のブレードバー間に形成された1つまたは複数の第2の谷部内への材料の流れを緩和するとともに分配するように構成されている。
【0012】
本開示の利点により、リファイナセグメントにわたる材料の流れの均等化が可能である。
【0013】
本発明は、添付図面とともになされる以下の説明を参照することにより、そのさらなる目的および利点とともに、最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】リファイナ装置の供給量の経時変化を示す図である。
図2】従来技術における叩解面上の材料の配置を示す概略図である。
図3】本開示が実施され得るリファイナ装置の側面図である。
図4】本開示に係るリファイナセグメントを伴うステータ/ロータの正面図である。
図5】本開示に係るリファイナセグメントの実施形態を示す図である。
図6】本開示に係るリファイナセグメントの実施形態の一部の平面図である。
図7図6の実施形態の側面図である。
図8】本開示に係るリファイナセグメントのさらなる実施形態の一部の平面図である。
図9図8の実施形態の側面図である。
図10】本開示の実施形態を示す図である。
図11】本開示の実施形態を示す図である。
図12】本開示の実施形態を示す図である。
図13】本開示の実施形態を示す図である。
図14】本開示の実施形態を示す図である。
図15】本開示の実施形態を示す図である。
図16】本開示の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、概してリファイナに関し、より詳細には、均等化溝がセグメント内のバーにわたって形成され、それにより、バー間の溝内の材料の流れが均等になる、改良されたリファイナセグメントのバーの設計に関する。
【0016】
本開示の利点をさらに理解するために、現状の従来技術の欠点の詳細な説明を以下に続けて説明する。
【0017】
ほとんどのリファイナ装置では、リファイナの構造にわたって供給量の変化が生じる。これらは経時変化し、リファイナの構造にわたって(リングにわたって)変化する。ファイバの密度が小さい領域に結束繊維が入るのを避けるために、ステータセグメントとロータセグメントとの間の隙間は、通常は内側に向けて調整、たとえば低減される。これにより、エネルギ消費がより高く、かつ、ファイバの密度が大である領域の微粒子(ダスト)の生成量が増大する。これにより、エネルギ消費が大きくなり、ファイバの品質が低下する。結束繊維は、製紙に使用される化学パルプの、不完全に蒸解された(cooked)木繊維の小さい束を含んでいる。それらの束は、結束部よりも小さく、パルプから分離するのがより困難である。過剰な結束繊維は、ウッドチップの充填が不十分であることの表れである。結束繊維は、スクリーニングにおいてパルプから分離され、叩解の後に戻され得る。結束繊維が残りのパルプより暗い場合であっても、それら結束繊維は気付かれずに抄紙機へと通過する場合があるが、この理由は、結束繊維の漂白が容易であるためである。結束繊維は抄紙機内において、巻き取り紙のやぶれ、または他の動作上の問題を生じ得る。これらは、最終製品における傷として残る場合もある。
【0018】
図1のグラフでは、供給量の変化が経時的に減少することの影響が示されている。最上段のグラフでは、一般的なリファイナ構成についての(一定の名目供給量における)供給量の変化が、時間の関数としてプロットされている。平行線で示すように、一定の最低エネルギレベルまたは入力が、叩解されたパルプの一定の品質を維持するために供給量の変化を補償するために必要である。時間の関数としての供給量の変化における変化量を低減するいくつかの手段を提供することにより、中間のグラフに示すように、所定の品質での最低エネルギレベルが低減される。最後に、下のグラフでは、変化量が低減された後の供給量の経時変化が示されている。供給量の経時変化における変化量を低減させる任意の方法または装置により、一定の品質を維持しつつ、エネルギレベルまたは入力が低減されることが明らかである。
【0019】
図2では、叩解面または領域にわたる結束繊維およびダストの変化が示されている。
【0020】
さらなる明確化および説明のために、概略的なリファイナセグメントが図3に示されている。図3は、同軸に配置されたステータ/ロータディスクの対を備えたリファイナを示している。これらディスクの内の少なくとも1つには、図4に示すように、複数のリファイナセグメント1を備えた叩解面が設けられている。ステータ/ロータディスクの対は1つのステータと1つのロータ、または2つのロータを備えることができる。さらに、本開示においては、主に重要視されるのはディスクリファイナ上であるが、本開示は他のリファイナ構成においても同様に実施することができる。ここで留意すべきは、ロータ/ロータ構成の場合には、2つのロータは、回転方向が逆に構成されることである。
【0021】
したがって、本発明者は、パルプの流れをリファイナの隙間/領域にわたって分配して、セグメント1のバーすべてをより効率的に利用することを可能にする解決策の必要性を確認した。したがって、ファイバの流れを均等化する設備がセグメント1上に設けられ、この設備により、以下の溝の各々にわたって経時的に、流れを一様に分配する。特定の実施形態によれば、平衡装置(equalizer)は、速度を多く失うことなく、流れがファイバで一杯になっていない以下の溝を選択することを可能にする均等化溝40を備えている。均等化溝40では、開放容量が最初に減少し、次いで急激に増大し、これにより、緩和された後に急激に放出する。このことは、経時的に流れを均等にすることの助けになる。急激に放出するとの用語は、圧力および体積の変化に起因して急激に放出するファイバと蒸気の組合せ(本質的には、対向するセグメント間の材料のすべて)を示している。
【0022】
ファイバの一部は、この急激な放出によって離解され得るが、より大きな影響は、後の溝に分配されるファイバが均質化されることである。
【0023】
本開示に係る均等化溝40は、ほぼ径方向に配置された溝およびバーにわたって設けられている。平衡装置は本質的に、2つの特徴、すなわち、流れ低減セクションと貯蔵分配セクションとを備えている。流れ低減セクションは、セグメント上に設けられた叩解溝の大多数よりも狭く、または少なく設計された溝を備えている。それにより、叩解面にわたって流れの差異を形成する。貯蔵分配セクションは、均等化溝を備え、これにより、パルプの流れをせき止め、利用可能な叩解溝にわたって流れを均等に分配することを可能にする。これは、リザーバが、隣接する溝よりも少ないファイバを有する溝に流れを分配する注水定理の一形態である。
【0024】
特定の実施形態によれば、均等化溝40はセグメント毎の単一の溝であるが、セグメントにわたって配置された一連の溝として溝を設計することも同様に可能である。しかしながら、通常は、ファイバが流入口、たとえば流入領域2から、流出縁部、たとえばセグメント1の叩解領域3に向かって移動する場合、2つ以上の均等化溝を設ける利点はない。
【0025】
図5を参照すると、本開示に係るリファイナセグメント1の基本的実施形態が示されている。リファイナセグメント1は、リグノセルロースを含む材料、たとえばウッドチップ、または他のリグノセルロース材料を離解することが意図されるリファイナにおいて有利に実施されている。リファイナセグメント1は、流入領域2と叩解領域3との間に配置された叩解面を有し、リファイナの叩解面の一部を形成するように構成可能である。そのようにするために、リファイナセグメント1は、叩解される材料の供給流れの方向に向けられた流入領域2と、叩解された材料の材料流れの方向に向けられた叩解領域3とを有している。リファイナセグメント1の叩解面は、少なくとも2つの第1のバー10と、少なくとも3つの第2のバー20とのグループを含み、少なくとも第1の各々と、少なくとも3つの第2のバー20の各々は、流入領域2の方向に向けられた第1の端部10−1、20−1と、叩解領域3の方向に向けられた第2の端部10−2、20−2を有している。それにより、流入領域2から叩解領域3に入る材料は、最初に第1のバー10上および間を通過し、次いで第2のバー20を通過する。
【0026】
少なくとも2つの第1のバー10および少なくとも3つの第2のバー20は交錯される方式で配置され、この方式では、第1のバー10の第2の端部10−2が第2のバー20−1の第1の端部20−1と交錯して、少なくとも第2のバー20の幅に対応する第1のバー10間の第1の溝30−1を形成するとともに、少なくとも第1のバー10の幅に対応する第2のバー20間の第2の溝30−2を形成する。少なくとも2つの第1のバー10の第2の端部10−2は、少なくとも1つの第1のバーの上面から叩解領域3の方向に第2の端部10−2へ減少するそれぞれのガイド面R1すなわち面取を有する。対応する方式で、少なくとも3つの第2のバー20の第1の端部20−1は、流入領域2の方向からバー20の上面に、第2の端部20−2に向かって増大するそれぞれのガイド面R2すなわち面取を有する。この実施形態では、第1のバー10の第2の端部10−2と、第2のバー20の第1の端部20−1とが、第1のバー10および第2のバー20と実質的に交差するとともに、第1のバー10および第2のバー20に対し実質的に垂直である均等化溝40を形成するように配置されており、これにより、均等化溝40が、少なくとも2つの第1のバー10間の少なくとも1つの第1の溝30−1から、少なくとも3つの第2のバー20間に形成された1つまたは複数の第2の溝30−2内への材料の流れを緩和するとともに分配するように構成されるようになっている。
【0027】
図5の実施形態では、バー10、20のグループは、セグメント1の表面上のいくぶん隔離された構造を形成するように示されている。しかしながら、第2のバー20の第2の端部20−2は、セグメント1の外縁または叩解領域3まで延びるように構成することが可能であり、第1のバー10の第1の端部10−1は、セグメント1の内縁または流入領域2付近まで延びるように構成することが可能であることを理解されたい。
【0028】
特定の実施形態によれば、図6および図7を参照すると、第1のバー10の第2の端部10−2および第2のバー20の第1の端部20−1は、端部が同じ線Cに沿って並べられて、第1のバー10と第2のバー20のそれぞれの高さと同等の同じ深さを有するV状の均等化溝40を形成するように配置されている。それにより、「交錯された」との用語には、第1のバー10と第2のバー20との間に重なり合った部分が存在しない状況が含まれる。図7の側面図では、それぞれの傾斜、すなわちガイド面R1、R2は、第1のバー10および第2のバー20の長手方向に垂直な方向、かつ、リファイナセグメント1に対する法線方向に見た場合に、均等化溝40が、第1のガイド面R1および前記第2のガイド面R2によって形成された傾斜対向面によって形成されているように、構成される。ガイド面R1、R2、および第1のバー10と第2のバー20のそれぞれの構成に基づき、均等化溝の断面形状が変化し得る。概して、ガイド面の傾斜対向面間の距離は、リファイナセグメントの法線方向に沿って増大する。この増大は線形もしくは多項式によるもの、またはいくつかの他の形態を有するものとすることができる。線形で同一のガイド面の場合、均等化溝40はV状の形状となる。
【0029】
ここで留意すべきは、第1のバー10の第1の端部10−1および第2のバー2の第2の端部20−2は、開示の図、たとえば図7図9に応じて構成することができるか、第1のバー10の第2の端部10−2および第2のバーの第1の端部20−1のそれぞれとして、対応する、または同様のガイド面すなわち面取または他の形状を有して構成することができることである。
【0030】
特定の実施形態によれば、それぞれのガイド面R1およびR2は同じ傾斜を有するが、異なる傾斜を有することも同様に可能である。
【0031】
対応する方式で、第1のバー10および第2のバー20の高さおよび幅は異なるものとすることができ、これにより、均等化溝40の形状を変化させる。
【0032】
図6に図解の実施形態については、均等化溝40は第1の谷部30−1および/または第2の谷部30−2の深さと等しい深さを有する。
【0033】
図8および図9を参照して、リファイナセグメント1のさらなる実施形態を説明する。この場合、第1のバー10および第2のバー20は、2つのグループのバーが明確に重なり合うように、交錯した方式で配置されている。したがって、第1のバー10の第2の端部10−2と第2のバー20の第1の端部20−1とは、同じ線Cに沿って並べられておらず、むしろ線Cと交差してある距離だけ移動している。それにより、第1の溝30−1および第2の溝30−2の深さ未満の深さを有する、線Cに沿う均等化溝40を形成する。このことは図9に明確に示されている。
【0034】
図5に示されているように、本開示に係るリファイナセグメント1は、第1のバー10および第2のバー20の複数のグループを含んでおり、各グループはそれぞれの均等化溝40を含んでいる。
【0035】
図10から図16を参照して、本開示の複数の実施形態を説明する。
【0036】
前述したように、また、ここで図10を参照すると、第1のバー10と第2のバー20とは、いくぶん交錯することができる。図では、第1のバー10および第2のバー20の配置が上から見て、および側面図で示されており、均等化溝の中心線も破線で示されている。いちばん左の図では、第1のバー10の端部と第2のバー20の端部が均等化溝40に沿って重なり合うことなく並べられている。中心の図では、第1のバー10の端部と第2のバー20の端部とがある小さい距離で重なり合っている。たとえば、それぞれのバーの面取R1、R2が重なり合っている。最後に、いちばん右の図では、第1のバー10と第2のバー20とが、均等化溝40が極めて浅く狭い溝であるような範囲で重なり合っている。
【0037】
図11を参照すると、いちばん左の図に示されているように、バー10、20のガイド面R1、R2、すなわち面取が、同一の傾斜および長さを有することができる。しかしながら、ガイド面R1、R2は、いちばん右の図に示すように、異なる傾斜および長さを有することもできる。それにより、均等化溝40は対称または非対称なV形状を有し得る。
【0038】
図12を参照すると、(前述した)ガイド面R1、R2は、いちばん左の図に示すように、それぞれの線形、直線形状を有し得るが、ガイド面R1、R2は、いちばん右の図に示したように、非線形または不均一な形状を有することもできる。この実施形態では、第2のバー20のガイド面R2のみが不均一な形状を有し、一方、第1のバー10のガイド面R1は線形形状を有する。前述の多項式による形状または他の不均一な形状などの他の組合せも可能である。
【0039】
図13を参照して、溝30−1、30−2の幅が変化する実施形態を説明する。この説明における前述の実施形態のほとんどでは、溝30−1、30−2のそれぞれの幅は、いちばん左の図に示すように、第1のバー10と第2のバー20のそれぞれの幅に対応する。しかしながら、第1のバー10と第2のバー20のそれぞれの幅とは異なる溝の幅を有することも可能である。また、面している溝30−2、30−1に対するバー10、20それぞれの位置は変化させることができる。中心の図では、第1のバー10が、面している溝30−2の中心線と並べられており、同様に、第2のバー20が、面している溝30−1の中心線と並べられている。しかしながら、いちばん右の図に示されているように、面している溝と整列されていないバーを有することが可能である。さらに、それぞれの溝の幅は、第1のバー10と第2のバー20のそれぞれのグループ内の溝すべてについて同じである必要はなく、このことも、いちばん右の図に示されている。
【0040】
図14を参照して、第1のバー10と第2のバー20の高さと幅が変化している実施形態を説明する。いちばん左の図は、第1のバー10と第2のバー20の高さと幅が同じ場合を示している。いちばん右の図では、第2のバー20が、幅が広いことと、第1のバー10よりも大である高さを有することとの両方であるか、またはその逆である。
【0041】
さらに、図15を参照すると、第1のバー10と第2のバー20のそれぞれのグループは、互いに対しある角度で配置することができる。いちばん左の図では、第1のバー10と第2のバー20とが整列され、一方、いちばん右の実施形態では、第1のバー10と第2のバー20とが互いに対しある角度で配置されている。
【0042】
図16を参照すると、均等化溝40が直線とは異なる、本開示の複数の実施形態が示されている。いちばん左の図から始めると、均等化溝40は、その中心線が、第1のバー10および第2のバー20に対して直線状の角度を形成するか、非直線状の角度を形成するように配置することができる。さらに、均等化溝40は、その中心線が、第1のバー10および第2のバー20に対してアーチまたは多項式によるカーブを形成するように配置することができる。
【0043】
上述の実施形態は、単に例として与えられたものであり、提案の技術がそれに限定されないことを理解されたい。様々な変形、組合せ、および変更を、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、各実施形態に行うことができることを、当業者には理解されたい。特に、異なる実施形態の異なる部分の解決策は、技術的に可能であれば、他の構成に組み入れられることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16