特許第6471180号(P6471180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許6471180グリセロールの短鎖アルキルエステルを含むジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471180
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】グリセロールの短鎖アルキルエステルを含むジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20190204BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20190204BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 5/39 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20190204BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20190204BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20190204BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K5/103
   C08K5/39
   C08K5/548
   C08K9/04
   B60C1/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-571124(P2016-571124)
(86)(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公表番号】特表2017-518418(P2017-518418A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015062294
(87)【国際公開番号】WO2015185571
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】14170950.1
(32)【優先日】2014年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・フェルトヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・ウンターベルク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン−ヨーゼフ・ヴァイデンハウプト
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ヴィーデマイヤー−ヤラト
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02604651(EP,A1)
【文献】 特開2007−161822(JP,A)
【文献】 特開2008−274197(JP,A)
【文献】 特開2012−188537(JP,A)
【文献】 特開2006−300131(JP,A)
【文献】 特開2013−032440(JP,A)
【文献】 特開2002−103911(JP,A)
【文献】 特表2012−505281(JP,A)
【文献】 特開昭63−039935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C08K 3/04
C08K 3/36
C08K 5/103
C08K 5/39
C08L 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にジフェニルグアニジンを含まないゴム混合物であって、少なくとも
− NR、SBR、BR、IR、SIBR、IIR、ENR、およびEPDM、好ましくはNR、SBR、BR、IIR、およびEPDM、特に好ましくはNR、BR、およびSBRからなる群から選択される非極性ゴム、
− シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、
− 式(I)
【化1】
(式中、
、R、Rは、相互に独立して、水素または直鎖状のC〜C−アルキル残基もしくは分岐状の〜C−アルキル残基、好ましくはメチル残基であり、但し、R、R、Rは、同時に水素を示すものではない)
で表されるグリセロールの短鎖アルキルエステル、
− 加硫戻り防止剤としての1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)
を含むゴム混合物。
【請求項2】
0.1〜15phr、好ましくは0.1〜2phr、特に好ましくは0.2〜1phrの1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
NR、SBR、BR、IR、SIBR、IIR、ENR、およびEPDMからなる群から、好ましくはNR、SBR、BR、IIR、およびEPDMからなる群から、特に好ましくはNR、BR、およびSBRからなる群から選択される非極性ゴムの合計含量が、少なくとも50phr、好ましくは少なくとも60phr、特に好ましくは少なくとも70phrであることを特徴とする、請求項1または2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
極性ゴムを含み、NBR、HNBR、HXNBR、およびXNBRの含量が、好ましくはそれぞれの場合において10phr未満、特に好ましくはそれぞれの場合において1.0phr未満、より好ましくはそれぞれの場合において0.1phr未満、最も好ましくはそれぞれの場合において0.01phr未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1種の架橋剤、好ましくは少なくとも1種のペルオキシド系または硫黄ベースの架橋剤、特に好ましくは、硫黄、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)を含む群からの少なくとも1種の架橋剤、極めて特に好ましくはTBzTDを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物の含量が、0.1〜40phr、好ましくは0.2〜20phr、特に好ましくは0.5〜15phr、極めて特に好ましくは1〜12phr、より好ましくは2〜10phr、最も好ましくは3〜8phrであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項7】
50〜100phrのシリカベースの充填剤、および0.2〜12phrの有機シラン、好ましくは硫黄含有有機シラン、特に好ましくはアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項8】
前記式(I)の前記化合物が、キャリヤー、好ましくは天然および合成ケイ酸塩、特に中性、酸性もしくは塩基性のシリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラック、および酸化亜鉛を含む群から選択されるキャリヤー上への吸収および/または吸着後に使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項9】
セルロースおよび/またはセルロース誘導体の含量が、1phr以下、好ましくは0.5phr未満、特に好ましくは0.1phr未満、最も好ましくは0phrであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に規定のゴム混合物を製造するためのプロセスにおいて、請求項1に規定の少なくとも1種のゴム、1種のシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、ならびに式(I)で表されるグリセロールの短鎖アルキルエステルが、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは80〜150℃の温度で相互に混合されることを特徴とする、プロセス。
【請求項11】
ゴム加硫物を製造するためのプロセスにおいて、請求項1〜9のいずれか一項に規定のゴム混合物が、好ましくは100〜250℃の温度で加硫され、特に好ましくは130〜180℃の温度で加硫されることを特徴とする、プロセス。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に規定のゴム混合物を加硫させることによって得ることが可能な加硫物。
【請求項13】
請求項12に規定の1種または複数のゴム加硫物を含むゴム製品、好ましくはタイヤ。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に規定のゴム混合物、請求項12に規定の加硫物、または請求項13に規定のゴム製品を製造するための、請求項1に規定の式(I)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のゴム、1種のシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、ならびにグリセロールの短鎖アルキルエステルを含む、実質的にジフェニルグアニジンフリーのゴム混合物、それらの製造および使用に関し、さらには、そのようにして加硫プロセスにより得ることが可能な、特にタイヤ、タイヤの部品、または工業的ゴム製品の形態の加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムの加硫の発明によって、ユニークな性質を有する新規な物品が得られるようになり、それらは、近代技術の発展に大いに貢献してきた。20世紀の初頭には、塩基性の有機化合物の加速効果が発見された。
【0003】
(特許文献1)は、天然ゴムおよび合成的に製造されたゴムにおける加硫を促進させるためにピペリジンを使用したことを開示している。ピペリジンは毒性および揮発性があり、不快臭を有しているため、ゴム加工産業ではピペリジンに対する塩基性の代替物を追求し、使用してきた。
【0004】
他の特許公報には、促進剤として、たとえば、アニリン、ならびにたとえばヘキサメチレンテトラミンおよびチオカルバニリドなどのその他の窒素含有有機化合物などが記載されている。
【0005】
硫黄−促進剤系を使用したゴムの架橋では、一般的に、各種の促進剤およびそれらを組合せることによって、加工性および製品の性質を広く変化させることが可能となるという利点を有しており、その例としては誘導時間(スコーチ時間)および反応速度の調節が挙げられる。誘導時間および加硫時間を調節する目的で、ゴム混合物に「二次促進剤」を添加することができる。最もよく知られた二次促進剤としては、グアニジン促進剤が挙げられる。それらは遅効性の(slow−acting)促進剤であり、スコーチ時間および/または完全加硫時間を必要に合わせて調節するために使用することができる。ゴム混合物において、それらは活性成分を基準にしてたとえば2phrの量で使用される。
【0006】
グアニジンを使用しているゴム混合物の弾性率曲線は、ゆっくりと立ち上がり、その最大値に達するまでに比較的長い時間がかかる。それらの促進剤を単独で使用すると、それらは比較的不十分な流動時間/加熱時間比を与え、そのために、コンパウンディングされたゴム物質中でかなり激しい加硫戻り(reversion)が起きる。そのため、それらは、たとえばスルフェンアミドベースの促進剤などの一次促進剤と組み合わせて使用されることが多い。
【0007】
それらの遅効性の促進剤は、省燃費性シリカタイヤの製造において重要な機能を果たす。それらは、シラノール基との相互作用を有していて、充填剤の相互作用および粘度を低減させる。それらはさらに、酸性の充填剤の抑制効果を打ち消す。
【0008】
ゴム工業における最も重要なタイプのグアニジンの1つがジフェニルグアニジン(DPG)である。DPGは広く使用されている。加硫条件下ではDPGがアニリンを放出することは、当業者には公知である。この観点から、アニリンが原因の問題に関心を寄せるユーザーは、別の二次促進剤を求めている。
【0009】
特許の開示には、各種のDPG削減混合物が記載されている。(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、および(特許文献5)では、シリカベースのゴム混合物中のDPGを、完全にまたはある程度まで、特定のアミンまたはチウラムジスルフィドと置き換えることを提案している。
【0010】
(特許文献6)には、0.65phrのDPGおよび2phrのポリオール、たとえばTMPを含むゴム混合物が記載されている。
【0011】
(特許文献7)には、0.45phr未満のDPGと、さらに0.4phrのアミノエーテルアルコール(たとえば、2−(2−アミノエトキシ)エタノール)とを含む混合物が記載されている。
【0012】
(特許文献8)には、0.5phr未満のDPGと、0.45phr未満のエーテルアミン、たとえば3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンとを含む混合物が記載されている。
【0013】
(特許文献9)には、0.5phr未満のDPGと、約3.0phrのアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物とを含む混合物が記載されている。
【0014】
(特許文献10)には、0.5phr未満のDPGと、8phr未満の一級アミン、たとえばヘキサデシルアミンとを含む混合物が記載されている。
【0015】
しかしながら、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、および(特許文献10)などの公刊物は、一定のまたはいくつかの場合に長引かせたスコーチ時間にのみ関する。
【0016】
ゴム混合物中でセルロース誘導体のための「溶媒」としてトリアセチンを使用することが、(特許文献11)に記載されているが、この場合におけるトリアセチンおよびセルロース誘導体の添加では、加硫物の性質、特に摩耗性が損なわれるようになる。
【0017】
(特許文献12)にはさらに、エーテルチオエーテルまたはエステルチオエーテルを含み、かつトリアセチンを含む可塑剤調製物、および前記調製物を含む(H)NBR、CRなどをベースとする極性ゴム混合物が記載されている。その実施例からは、トリアセチンを使用した場合には、比較例と比較して、ゴム混合物の加工性に少しの改良が認められるものの、加硫物の性質の悪化を伴っていた。
【0018】
具体的には、非極性タイプのゴム中での添加剤としてのトリアセチンの使用は記載されておらず、また溶解パラメーターに差があるために、当業者には成功する可能性がないようにも思われ、その理由は、良好な性質を有するゴム混合物を製造するには成分の相溶性が重要であるからである。(非特許文献1)によれば、ゴムおよび可塑剤の溶解パラメーターを使用すれば、ゴム中における可塑剤の相溶性を推定することが可能である。この場合の第一近似では、溶解パラメーターの差は±10%以内とするべきである。上述の刊行物には、ゴムに関して、以下のような溶解パラメーターが記載されている。
【0019】
【表1】
【0020】
RoethemeyerおよびSommerの教示に基づくと、当業者であれば、非極性ゴム、たとえば17.6以下の溶解度積を有するゴム中では、溶解度積の差が20%もあるため、トリアセチンの良好な溶解性を期待しないであろう。
【0021】
本発明は、実質的にジフェニルグアニジンを含まないゴム混合物を提供する目的に基づいており、このことは、最大で1phr、好ましくは0.7phr未満、特に好ましくは0.4phr未満、極めて特に好ましくは0.1phr未満のジフェニルグアニジンのみを含み、性能特性、特にスコーチ時間(MS−t5)、ムーニー粘度、破断時伸び、引張強度、硬度、および摩耗が、ジフェニルグアニジン含有混合物のそれらよりも実質的に劣らない混合物を意味している。それらのゴム混合物は、特に好ましくは、非極性ゴムを含んでいるべきである。「phr」の単位は、ゴム混合物中で100重量部と定義されたゴムの含量を基準にした重量部を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】DRP第265221号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0048775号明細書
【特許文献3】米国特許第7605201号明細書
【特許文献4】米国特許第6753374号明細書
【特許文献5】米国特許第7714050号明細書
【特許文献6】国際公開第2013/104492号パンフレット
【特許文献7】仏国特許第2984898号明細書
【特許文献8】仏国特許第2984897号明細書
【特許文献9】仏国特許第2984895号明細書
【特許文献10】仏国特許第2984896号明細書
【特許文献11】欧州特許第2604651号明細書
【特許文献12】独国特許第102010005558号明細書
【特許文献13】欧州特許第1813310号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Roethemeyer and Sommer,Kautschuktechnologie[Rubber Technology],Hanser Verlag,Munich,Vienna,2nd Edition,2006,ISBN−13:978−3−446−40480−9,pp.331−333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
ジフェニルグアニジンを置き換えることによって、毒性リスクをより小さくし、アニリン放出の問題を低減させるか、またはその問題を根源からなくすゴム混合物を得ることが意図された。
【課題を解決するための手段】
【0025】
驚くべきことに、グリセロールの短鎖アルキルエステル、少なくとも1種のゴム、ならびに1種のシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラックを用いることによって、優れたスコーチ時間(MS−t5)および改良された摩耗値に合わせて、良好なムーニー粘度、ショアーA硬度、引張強度、および破断時伸びを有し、実質的にジフェニルグアニジンを含まないゴム混合物を得ることが可能であることが今や見出された。
【0026】
特に驚くべきことに、グリセロールの短鎖アルキルエステルを加硫戻り防止剤の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)と共に使用することによって、特に低い損失係数(tanデルタ、60℃)が得られることが見出された。「損失係数(tanデルタ、60℃)」は、転がり抵抗性を表す値である。この値が低いほど、転がり抵抗性が低くなり、それと共に、自動車のタイヤまたは乗用車の場合に燃料消費量が低くなる。
【0027】
したがって、本発明は、実質的にジフェニルグアニジンを含まないゴム混合物であって、それぞれ少なくとも
− ゴム、
− シリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、
− 式(I)
【化1】
(式中、
、R、Rは、相互に独立して、水素または直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル残基、好ましくはメチル残基である)
で表されるグリセロールの短鎖アルキルエステル
を含むゴム混合物を提供する。
【0028】
本発明はさらに、それぞれ少なくとも
− 1種のゴム、
− 1種のシリカベースの充填剤および/またはカーボンブラック、
− 式(I)
【化2】
(式中、
、R、Rは、相互に独立して、水素または直鎖状もしくは分岐状のC〜C−アルキル残基、好ましくはメチル残基である)
で表される1種のグリセロールの短鎖アルキルエステル
を混合することによる、実質的にジフェニルグアニジンを含まない、充填されたゴム混合物を製造するためのプロセスであって、その物質の温度は、少なくとも40℃、好ましくは40〜200℃の範囲、特に好ましくは80〜150℃の範囲であり、次いで、さらなる加硫用化学物質の添加後に通常の加硫を実施する、プロセスも提供する。混合プロセスの際の剪断速度は、典型的には1〜1000sec−1、好ましくは1〜100sec−1の範囲である。式(I)の短鎖アルキルエステルグリセロールは、この場合にも、80℃〜200℃の範囲の高温、好ましくは約150℃の温度で、単独で添加することもでき、またはその混合物の1種または複数の他の成分と共に任意の所望の順序で添加することもできる。
【0029】
本発明の目的のためには、ジフェニルグアニジンの含量が1phr以下、好ましくは0.7phr未満、特に好ましくは0.4phr未満、極めて特に好ましくは0.1phr未満でありさえすれば、そのゴム混合物は、実質的にジフェニルグアニジンを含まない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1つの好ましい実施形態においては、そのゴム混合物/加硫物中のジフェニルグアニジンおよびその他のグアニジン誘導体の合計量が、1phr以下、好ましくは0.7phr未満、特に好ましくは0.4phr未満、最も好ましくは0.1phr未満である。
【0031】
1つの特に好ましい実施形態においては、本発明のゴム混合物には、ジフェニルグアニジンも、その他のグアニジン誘導体もまったく含まれない。
【0032】
セルロースおよび/またはセルロース誘導体(ここで、これは、特に、セルロースと、フェニルイソシアネート、無水n−酪酸、無水酢酸、ブチルイソシアネート、塩化ステアリル、ステアリルイソシアネート、塩化ブチリルとの反応生成物を意味するが、好ましくは酢酸セルロースである)の含量は、本発明のゴム混合物/加硫物中で典型的には1phr以下、好ましくは0.5phr未満、特に好ましくは0.1phr未満、最も好ましくは0phrである。
【0033】
本発明のゴム混合物は、亜鉛を含まないゴム中だけではなく、亜鉛含有ゴム加硫物中においても有利に使用することができる。
【0034】
式(I)の化合物としては、トリアセチンを使用するのが好ましい。
【0035】
本発明のゴム混合物は、典型的には0.1〜40phr、好ましくは0.2〜20phr、特に好ましくは0.5〜15phr、極めて特に好ましくは1〜12phr、より好ましくは2〜10phr、最も好ましくは3〜8phrの式(I)の化合物を含む。
【0036】
本発明のゴム混合物および本発明のゴム加硫物には、公知のその他のゴム添加剤が含まれていてもよい。少なくとも1種の加硫戻り防止剤、特に1,3−ビス((3−メチル−2,5−ジオキソピロル−1−イル)メチル)ベンゼン(CAS No.:119462−56−5)、特に二ナトリウム塩二水和物の形態のヘキサメチレン1,6−ビス(チオスルフェート)(CAS−No.:5719−73−3)、および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を含む群から選択される加硫戻り防止剤が存在するのが好ましい。上述の加硫戻り防止剤は、個別に使用することも可能であり、または相互に任意の所望の混合物として使用することも可能である。
【0037】
1つの好ましい実施形態においては、そのゴム混合物には、0.1〜15phr、好ましくは0.1〜2phr、特に好ましくは0.2〜1.0phrの加硫戻り防止剤の1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)が含まれる。
【0038】
本発明のゴム混合物においては、式(I)の添加剤を、混合プロセスの最初の部分で、物質の温度がたとえば100〜250℃であるときに添加するのが好ましいが、より後でより低い温度(40〜100℃)において、たとえば硫黄および/または促進剤と共にそれを添加することもできる。
【0039】
本発明のゴム混合物の場合における別の好ましい変形形態においては、式(I)の添加剤および1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)を、混合プロセスの最初の部分で、物質の温度がたとえば100〜250℃であるときに添加するのが好ましいが、より後でより低い温度(40〜100℃)において、たとえば硫黄および/または促進剤と共にそれを添加することもできる。
【0040】
式(I)の添加剤および/または1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)は、純粋な形態か、さもなければ、不活性な有機物または無機物またはキャリヤー、好ましくは天然および合成ケイ酸塩を含む群から選択されるキャリヤー、特には、中性、酸性もしくは塩基性のシリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラック、および酸化亜鉛上に吸収および/または吸着された形態のいずれかで、相互に独立して使用することができる。
【0041】
混合プロセスに対して式(I)の添加剤を、1,6−ビス(N,N−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(CAS No.:151900−44−6)との混合物の形態で添加することも可能である。
【0042】
本発明のゴム混合物は、タイヤのトレッド、サブトレッド、カーカス、およびアペックス(apex)混合物を製造するのに特に適している。この場合のタイヤ/タイヤ部品には、たとえば、夏用、冬用、およびオールシーズン用タイヤのトレッド、さらには乗用車用タイヤおよび貨物車用タイヤのトレッドが含まれる。
【0043】
本発明の別の態様では、本発明のゴム混合物を加硫させることによって得られる加硫物も提供される。
【0044】
製造されるゴム加硫物は、各種のゴム製品の製造、たとえば、特にタイヤのトレッド、サブトレッド、カーカス、サイドウォール、ランフラットタイヤのための強化サイドウォール、アペックス混合物などのためのタイヤ構成要素の製造、さらには、制震要素、ロールカバー、コンベア用ベルト、その他のベルト、紡糸コップ、ガスケット、ゴルフボールの芯、靴底の被覆などの産業用ゴム製品の製造のために好適である。本発明のゴム製品は特に、それらを備えた自動車に対して、有利な運転特性を与えることができる。したがって、それらの自動車にも同様に本発明が利用される。
【0045】
本発明のゴム混合物およびゴム加硫物には、たとえば天然ゴム(NR)および/または合成ゴムなどの1種または複数のゴムが含まれる。好ましい合成ゴムの例は以下のものである。
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C1〜C4−アルキルコポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエンコポリマー(スチレン含量が1%〜60重量%、好ましくは20%〜50重量%のもの)
IIR:イソブチレン/イソプレンコポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(アクリロニトリル含量が5%〜60重量%、好ましくは10%〜50重量%のもの)
HNBR:部分水素化または完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー
SIBR:スチレン/イソプレンコポリマー
ENR:エポキシ化天然ゴム
【0046】
本発明のゴム混合物には、NR、SBR、BR、IR、SIBR、IIR、ENR、およびEPDMからなる群から、好ましくはNR、SBR、BR、IR、IIR、ENR、およびEPDMからなる群から、より好ましくはNR、SBR、BR、IIR、およびEPDMからなる群から、特に好ましくはNR、BR、およびSBRからなる群から選択される少なくとも1種の非極性ゴムが含まれているのが好ましく、ここで、そのゴム混合物中のそれら非極性ゴムの合計含量が、典型的には少なくとも50phr、好ましくは少なくとも60phr、特に好ましくは少なくとも70phrである。1つの特に好ましい実施形態においては、それら非極性ゴムの合計含量が、少なくとも80phr、好ましくは少なくとも90phr、より好ましくは少なくとも95phr、特に好ましくは少なくとも99phrである。
【0047】
本発明の混合物にはさらに、極性ゴム、特に17.6より高い溶解パラメーターを有するゴムが含まれていてもよい。ゴム混合物中のNBR、HNBR、HXNBR、およびXNBRの形態の極性ゴムの含量は、それぞれの場合において、典型的には10phr未満、好ましくは1.0phr未満、特に好ましくは0.1phr未満、極めて特に好ましくは0.01phr未満である。
【0048】
シリカベースの充填剤
本発明の目的のためには、シリカ含有充填剤としては下記のものが使用される:
− シリカ、特に沈降シリカまたはヒュームドシリカ、たとえばケイ酸塩の溶液の沈降またはケイ素のハロゲン化物の加水分解によって製造され、5〜1000m/g、好ましくは20〜400m/gの比表面積(BET表面積)と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。それらのシリカは、任意選択的に他の金属酸化物、たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物の形態であってもよい。
− 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、アルカリ土類金属のケイ酸塩、たとえば、ケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムで、20〜400m/gのBET表面積と、10〜400nmの一次粒径とを有するもの。
− 天然のケイ酸塩、たとえばカオリンおよびその他の天然産のシリカ。
およびそれらの物質の混合物。
【0049】
本明細書に記載されたシリカおよびケイ酸塩は、クロロシラン、たとえば、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、およびテトラクロロシラン、オルガノクロロシラン、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、トリエチルクロロシラン、さらには(メタ)アクリルオキシおよび/またはアルコキシ基を含むシラン、たとえばアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、またはモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−メトキシシランを使用して処理することにより得ることが可能なシラン化された形態で存在することもできる。対応する製造プロセスは、とりわけ欧州特許第2033990B1号明細書に記載されている。
【0050】
カーボンブラック充填剤
シリカベースの充填剤に加えるか、またはその代替物としてカーボンブラックを使用することも可能であり、ここで特に好適なカーボンブラックは、ランプブラックプロセス、ファーネスブラックプロセス、またはガスブラックプロセスによって製造され、20〜200m/gのBET表面積を有するもの、たとえば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、およびGPFカーボンブラックである。
【0051】
本発明のゴム混合物中の充填剤の合計含量は、原理的には、必要に応じて広く変化させることができる。通常の量は、0.1〜200phr、好ましくは30〜150phrである。1つの好ましい実施形態においては、カーボンブラックベースの充填剤の含量が、シリカベースの充填剤の含量に比較して相対的に低い。
【0052】
本発明のゴム混合物およびゴム加硫物には、1種または複数の硫黄含有シランおよび/または1種または複数の架橋剤をさらに含んでいてもよい。この目的のためには、硫黄ベースの架橋剤またはペルオキシド系架橋剤が特に好適であり、ここでは硫黄ベースの架橋剤が特に好ましい。
【0053】
本発明のゴム混合物では、一般的に、たとえば中国特許第101628994号明細書に記載されているタイプの再生ゴムとして公知のものを任意の所望の量で使用することができる。
【0054】
本発明のゴム混合物およびゴム加硫物のために好適に使用することが可能な硫黄含有シランは、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンおよびそれに対応するジスルファン、さらには3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンチオール、およびたとえば独国のEvonik製のSi363またはMomentive(旧GE、米国)製のシランNXT/NXT Zなどのシランであり、ここでそのアルコキシ残基はメトキシまたはエトキシであり、その使用量は、2〜20重量部、好ましくは3〜11重量部である(その計算は、それぞれの場合において、100%の活性成分、および100重量部のゴムを基準にしている)。しかしながら、それらの硫黄含有シランの混合物を使用することも可能である。液状の硫黄含有シランをキャリヤー上に吸収させて、計量を容易とし、および/または分散を容易とするように改良することができる(乾燥液体)。活性成分の含量は、乾燥液体100重量部あたり30〜70重量部、好ましくは40〜60重量部である。
【0055】
1つの好ましい実施形態においては、本発明のゴム混合物には、50〜100phrのシリカベースの充填剤と、0.2〜12phrの有機シラン、好ましくは硫黄含有有機シラン、特に好ましくはアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シラン、極めて特に好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランとが含まれる。
【0056】
使用されるペルオキシド系架橋剤としては、好ましくは、以下のもの挙げられる:ビス(2,4−ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4−クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、4,4−ジ−tert−ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン。
【0057】
それらペルオキシド系架橋剤と並行して、有利に使用することが可能なさらなる他の添加物は、架橋収率を向上させるために使用することが可能なものであり、この目的のために好適な化合物の例としては以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、1,2−ポリブタジエン、およびN,N’−m−フェニレンジマレイミド。
【0058】
硫黄は、元素状の可溶性もしくは不溶性の形態、または硫黄供与体の形態で架橋剤として使用することができる。使用することが可能な硫黄供与体の例は、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2−モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTB)である。1つの好ましい実施形態においては、そのゴム混合物が、0.1〜15phr、好ましくは0.1〜2phr、特に好ましくは0.1〜0.5phrのTBzTDを含む。
【0059】
本発明のゴム混合物の架橋は、原理的には、硫黄または硫黄供与体のみで実施するか、または加硫促進剤と共に実施することができ、加硫促進剤の好適な例としては、以下のものが挙げられる:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、二環もしくは多環アミン、ジチオホスフェート、カプロラクタム、およびチオ尿素誘導体。好適なその他の化合物としてはさらに、亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、さらには環状ジスルファンがある。本発明のゴム混合物が硫黄ベースの架橋剤と促進剤とを含んでいるのが好ましい。
【0060】
架橋剤として硫黄、酸化マグネシウムおよび/または酸化亜鉛を使用し、それに対して、公知の促進剤、たとえば、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、チオカルバメート、キサントゲネート、およびチオホスフェートなどを加えるのが特に好ましい。
【0061】
本発明のゴム混合物における架橋剤および加硫促進剤の好適な使用量は、0.1〜10phr、特に好ましくは0.1〜5phrである。
【0062】
本発明のゴム混合物およびゴム加硫物には、たとえば以下のようなその他のゴム助剤を含んでいてもよい:接着系(adhesion system)、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、ならびに特に、オゾン劣化防止剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エキステンダー、有機酸、リターダー、金属酸化物、および活性化剤、特にトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、および加硫戻り防止剤。
【0063】
それらのゴム助剤使用量は、慣用される量であり、とりわけ、その加硫物の使用目的に依存する。慣用される量は0.1〜30phrである。
【0064】
好適な老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノール、たとえば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、エステル基を含む立体障害フェノール、チオエーテルを含む立体障害フェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BPH)、およびさらには立体障害チオビスフェノール。
【0065】
ゴムの変色がさほど重要でないのであれば、たとえば以下のようなアミン系の老化防止剤を使用することも可能である:ジアリール−p−フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル−α−ナフチルアミン(PAN)、フェニル−β−ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)。
【0066】
その他の老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:ホスファイト、たとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合化2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMQ)、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。これらのものは、ほとんどの場合、上述のフェノール性老化防止剤と組み合わせて使用される。TMQ、MBI、およびMMBIがNBRゴムに主として使用され、ここで、それらはペルオキシド加硫される。
【0067】
オゾン抵抗性は、たとえば以下のような抗酸化剤を使用することにより改良することができる:N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N−1,4−ジメチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン(77PD)、エノールエーテル、または環状アセタール。
【0068】
加工助剤は、ゴム粒子の間で作用させ、混合、可塑化、および変形の際の摩擦力を打ち消すことを目的としている。本発明のゴム混合物中の存在しうる加工助剤としては、プラスチックの加工で慣用されるすべての潤滑剤、たとえば以下のものが挙げられる:炭化水素、たとえば、オイル、パラフィンおよびPEワックス、6〜20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸、たとえば脂肪酸およびモンタン酸、酸化させたPEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、およびたとえばアルコールのエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと酸成分としての長鎖カルボン酸とからのカルボン酸エステル。
【0069】
本発明のゴム混合物の組成にはさらに、燃焼性を抑制するため、および燃焼の際の発煙性を抑制するための難燃剤を含んでいてもよい。この目的のために使用される化合物の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム。
【0070】
本発明のゴム混合物および架橋させる前の本発明のゴム加硫物には、他の熱可塑性樹脂を添加することも可能であり、それらはたとえばポリマー性加工助剤としてまたは耐衝撃性改良剤として機能する。それらの熱可塑性樹脂は、好ましくは、以下のものからなる群から選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状もしくは非分岐状のC1〜C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレートおよびメタクリレートをベースとするホモポリマーおよびコポリマー、特に好ましいのは、C4〜C8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノールおよび2−エチルヘキサノールの群からの同一または異なるアルコール残基を有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー。
【0071】
公知の接着系は、レソルシノール、ホルムアルデヒド、およびシリカをベースとするものであり、これらはRFS直接接着系(RFS direct adhesion system)として知られている。本発明のゴム混合物においては、これらの直接接着系を、本発明のゴム混合物中に原料を混合するいかなる時点においても、任意の所望量で使用することができる。
【0072】
ヘキサメチレンテトラミンに加えて、その他の好適なホルムアルデヒド供与体としては、メチロールアミン誘導体が挙げられる。公知のゴム混合物に対して、合成樹脂の生成を可能とする成分、たとえばフェノールおよび/またはアミンおよびアルデヒド、または分解してアルデヒドを生成する化合物を添加することによって、接着性の改良を達成することが可能となる。ゴムの接着性混合物中で樹脂形成成分として広く使用されている化合物としては以下のものが挙げられる:レソルシノールおよびヘキサメチレンテトラミン(HEXA)(英国特許第801928号明細書、仏国特許第1021959号明細書)、任意選択的にシリカ充填剤との組合せ(独国特許第1078320号明細書)。
【0073】
本発明のゴム加硫物は、たとえばフォームを製造するために使用することができる。そのためには、化学的発泡剤または物理的発泡剤をそれに添加する。化学的発泡剤として使用することが可能な物質は、この目的のために公知である任意のものでよく、たとえば以下のものが挙げられる:アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラアゾール、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラアミン、炭酸亜鉛、または炭酸水素ナトリウム、またはさもなければそれらの物質を含む混合物。好適な物理的発泡剤の例は、二酸化炭素およびハロゲン化炭化水素である。
【0074】
本発明のゴム混合物は、典型的には100〜250℃、好ましくは130〜180℃の温度で、10〜200barの範囲内で任意に選択される一般的な圧力を用いて加硫される。
【0075】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物、加硫物および/またはゴム製品を製造するための、式(I)の化合物の使用も提供する。
【実施例】
【0076】
本発明のゴム加硫物は、たとえば、下記の混合ステージで製造することができる。
【0077】
第一混合ステージ:
− ゴム(たとえばSBRとBRとの混合物)をインターナルミキサー内に仕込み、約30秒間混合。
− ヒドロキシ基を含む酸化物系充填剤、および表面変性のためのシランの任意選択的な添加(たとえば、シリカの2/3とシランの2/3とを添加し、約60秒間混合し、その後でシリカの1/3とシランの1/3とを添加し、約60秒間混合)。
− 式(I)の添加剤の添加、および任意選択的にカーボンブラック、オイル、老化防止剤、酸化亜鉛、および抗オゾン剤ワックスの添加、および約60秒間の混合。
【0078】
この混合手順は、100〜170℃、好ましくは150℃の領域の温度で実施することができる。
【0079】
第二混合ステージ:
第一混合ステージが完了してから、その混合物を下流のロールミルで受け取り、成形してシート、ストリップまたはペレットとし、室温で24時間保存する。
【0080】
ここでの加工温度は、60℃未満である。
【0081】
第三混合ステージ:
第三混合ステージには、たとえばニーダー/インターナルミキサー内における、140〜170℃、好ましくは150℃でのさらなる混練ステップが含まれる。
【0082】
第四混合ステージ:
好ましくはロール上、低温(80℃未満)での、さらなる物質、たとえば促進剤および/または硫黄架橋剤の添加。
【0083】
その混合物を製造するのに好適な装置(assemblies)はそれ自体公知であり、たとえば、ロール、インターナルミキサー、さらには混合エクストルーダーが挙げられる。
【0084】
本発明のゴム加硫物の製造
表1において実施例1〜3、さらには参照例について列記したゴム配合から加硫物を製造した。このためには、それぞれの場合において、実施例1〜3、さらには参照例のそれぞれの構成成分を下記の多段混合プロセスで混合し、次いでそれらの混合物を170℃で完全に加硫させた。
【0085】
第一混合ステージ:
− BUNA(登録商標)CB24およびBUNA(登録商標)VSL5025−2をインターナルミキサーに仕込み、約30秒間混合。
− VULKASIL(登録商標)Sの2/3、SI(登録商標)69の2/3、式(I)の添加剤の2/3を添加し、約60秒間混合。
− VULKASIL(登録商標)Sの1/3、SI(登録商標)69の1/3、式(I)の添加剤の1/3、およびTUDALEN 1849−TEを添加し、約60秒間混合。
CORAX(登録商標)N 339、EDENOR(登録商標)C18 98−100、VULKANOX(登録商標)4020/LG、VULKANOX(登録商標)HS/LG、ROTSIEGEL亜鉛華、およびANTILUX(登録商標)654を添加し、約60秒間混合。
【0086】
この混合手順の温度は、150℃であった。
【0087】
第二混合ステージ:
第一混合ステージが完了してから、その混合物を下流のロールミルで受け取り、成形してシートとし、室温で24時間保存する。
【0088】
ここでの加工温度は、60℃未満である。
【0089】
第三混合ステージ:
第三の混合ステージには、ニーダー中で150℃でのさらなる混練が含まれていた。
【0090】
第四混合ステージ:
ロール上、80℃未満の温度で、追加物質のCHANCEL90/95摩砕硫黄、VULKACIT(登録商標)CZ/C RHENOGRAN(登録商標)DPG−80の添加。
【0091】
製造されたゴム混合物および加硫物を、以下において述べる技術的試験にかけた。測定された数値を表2に同様に示す。
【0092】
ゴム混合物/加硫物の物性の測定:
ムーニー粘度の測定:
この物性は、ASTM D1646に従い、剪断円板式粘度計の手段により測定した。粘度は、ゴム(およびゴム混合物)が、加工に抵抗する力から直接求めることができる。ムーニー剪断円板式粘度計内で襞付きのディスクが上下共に試験物質で取り囲まれていて、加熱可能なチャンバー内で約2回転/分の速度で回転される。そこで、必要となった力をトルクの形式で測定し、それぞれの粘度に対応させる。そのサンプルは一般的には、1分間にわたって100℃に予備加熱しておき、さらに4分間かけて測定を行い、温度はそこで一定に保持しておく。粘度は、それぞれの試験条件と共に記述し、一例は、ML(1+4)100℃(ムーニー粘度、大ロータ、予備加熱時間および試験時間(分)、試験温度)である。
【0093】
スコーチ性能(スコーチ時間t5):
同一の試験をさらに使用して、混合物のスコーチ性能を測定することができる。選択した温度は130℃であった。ロータを回転させて、トルク値が最小値を過ぎ、その最小値(t5)より5ムーニー単位だけ高くなるまで続ける。この数値(単位:秒)が大きい程、スコーチが遅くなり、プロセスの信頼性が高くなる。
【0094】
レオメーター(バルカメーター)からの170℃/t95完全加硫時間:
MDR(ムービングダイレオメーター)加硫プロファイルおよびそれに伴う分析データは、ASTM D5289−95に従い、MDR 2000 Monsantoレオメーターで測定する。求めた完全加硫時間は、ゴムの95%が架橋した時間である。選択した温度は170℃であった。
【0095】
硬度の測定:
本発明のゴム混合物の硬度は、表1の配合によるゴム混合物から厚み6mmのミル加工したシートを作製することによって求めた。そのミル加工したシートから直径35mmの試験片を切り出し、それらのショアーA硬度は、デジタルショアー硬度試験器(Zwick GmbH&Co.KG,Ulm)を使用して求めた。ゴム加硫物の硬度が、その剛性の第一の指標を与える。
【0096】
動的制動:
動的試験方法を使用して、周期的に負荷を変化させる条件下でエラストマーの変形挙動の特性を求める。外部から加えられた応力が、ポリマー鎖のコンホメーションを変化させる。
【0097】
この場合、損失係数tanδは、損失弾性率G’’対貯蔵弾性率G’の比率から間接的に求める。
【0098】
表1:ゴム配合
以下で実施例を使用して、本発明を説明するが、本発明はそれらに限定される訳ではない。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
驚くべきことに、本発明のゴム混合物が、顕著に長いスコーチ時間(MS−t5)および低いムーニー粘度を有していること、ならびにそれらから得られた加硫物が、優れた摩耗値、さらには高いショアーA硬度、引張強度、および破断時伸び、ならびに低いtanδ値(60℃)を有していることが今や見出された。
【0103】
本発明のゴム混合物は、分散の問題をまったく示さなかった。加工の際のアニリンの放出も、微少であるか、またはまったくない。