特許第6471379号(P6471379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471379薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及びレーザアニール装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471379
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及びレーザアニール装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20190207BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20190207BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H01L29/78 618Z
   H01L29/78 627G
   H01L21/20
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-238202(P2014-238202)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-100537(P2016-100537A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
(72)【発明者】
【氏名】畑中 誠
(72)【発明者】
【氏名】木口 哲也
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/005250(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/172965(WO,A1)
【文献】 特開2001−127302(JP,A)
【文献】 特開2002−222957(JP,A)
【文献】 特開2005−294851(JP,A)
【文献】 特開2011−029411(JP,A)
【文献】 特開2002−110542(JP,A)
【文献】 特開2008−192688(JP,A)
【文献】 特開平11−17190(JP,A)
【文献】 特開2000−183358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/20
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタであって、
前記半導体層は、ポリシリコン薄膜であり、ポリシリコン薄膜の結晶粒径が前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域の中央部から前記ソース電極及び前記ドレイン電極側端部に向かって次第に小さくなっていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記基板上に被着されたアモルファスシリコン薄膜の少なくとも前記ゲート電極に対応した領域にレーザ光を照射してポリシリコン薄膜とし、前記半導体層を形成するレーザアニール工程を含み、
前記レーザアニール工程は、照射形状が前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域と同じ形状となるように整形されたレーザ光の照射位置を、照射部が一部重なった状態で前記ゲート電極に対応した領域内の前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側の一方端から他方端に向かってステップ移動させるように、前記照射位置のステップ移動量を制御することにより、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域のポリシリコン薄膜の結晶粒径が前記チャンネル領域のポリシリコン薄膜の結晶粒径に比べて小さくなるように、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域にレーザ光を前記チャンネル領域よりも少ない照射量で照射して実施されることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光の照射位置のステップ移動量は、レーザアニールが前記レーザ光のnショット(nは3以上の整数)で実施される場合に、前記チャンネル領域の前記ソース電極及び前記ドレイン電極の対向方向の幅の1/nに等しいことを特徴とする請求項2記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタの、少なくとも前記ゲート電極に対応した領域のアモルファスシリコン薄膜をレーザアニールしてポリシリコン薄膜とし、前記半導体層を形成するレーザアニール装置であって、
前記基板上にレーザ光を照射するレーザ照射光学系と、
照射形状が前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域と同じ形状となるように整形されたレーザ光の照射位置を、照射部が一部重なった状態で前記ゲート電極に対応した領域内の前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側の一方端から他方端に向かってステップ移動させるように、前記照射位置のステップ移動量を制御することにより、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径が、前記チャンネル領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径に比べて小さくなるように、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域のレーザアニールを前記チャンネル領域のレーザアニールよりも少ないレーザ光の照射量で実施すべくレーザ光の照射量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記レーザ光の照射位置のステップ移動量を、レーザアニールが前記レーザ光のnショット(nは3以上の整数)で実施される場合に、前記チャンネル領域の前記ソース電極及び前記ドレイン電極の対向方向の幅の1/nに等しくなるように制御することを特徴とする請求項4記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
前記レーザ照射光学系は、前記レーザ光の照射形状を前記チャンネル領域の形状に合わせて整形するための開口を有するシャドウマスクと、前記開口を前記アモルファスシリコン薄膜上に縮小して合焦させる集光レンズとを備えたことを特徴とする請求項4又は5記載のレーザアニール装置。
【請求項7】
前記基板上には、複数の前記薄膜トランジスタが一定の配列ピッチでマトリクス状に配置して備えられ、
前記シャドウマスクは、複数の前記薄膜トランジスタに対応させて複数の前記開口を設けたものであり、
前記制御手段は、前記レーザアニールが、複数の前記開口のうち前記ソース電極及び前記ドレイン電極の対向方向に対応して並んだ複数の前記開口を通過した複数の前記レーザ光の多重照射により実施されるように、同方向への前記レーザ照射光学系及び前記基板の相対的な移動速度、及び前記レーザ光の照射タイミングを制御することを特徴とする請求項6記載のレーザアニール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン薄膜の半導体層を備えた薄膜トランジスタに関し、特に簡単なプロセスでリーク電流を低減可能な構造を実現しようとする薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及びレーザアニール装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、薄膜トランジスタ(以下「TFT(Thin Film Transistor)」という)は、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた構造を有している。この場合、半導体層としてポリシリコン薄膜を用いたTFTは、電子の移動度が高く、低消費電力のディスプレイに用いられている。
【0003】
ポリシリコン薄膜の半導体層は、基板の全面に被着されたアモルファスシリコン薄膜の、少なくともゲート電極に対応した領域を均一にレーザアニール処理することによりポリシリコン化させて形成される。この場合、ソース電極及びドレイン電極に夫々対応した領域のアモルファスシリコン薄膜も、ソース電極及びドレイン電極間のチャンネル領域と同様にアニール処理されてポリシリコン薄膜となっているため、電極間の電界強度が高くなりTFTオフ時のリーク電流が大きくなるという問題があった。
【0004】
この問題に対処するために、従来のTFTは、チャンネル領域とソース電極に対応した領域、及びチャンネル領域とドレイン電極に対応した領域との間のポリシリコン薄膜に不純物を注入してチャンネル領域よりも低濃度としたLDD(Lightly Doped Drain)構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−335780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような従来のTFTにおいては、ポリシリコン薄膜に不純物を注入する工程が必要であり、製造プロセスが複雑となって製造コストが増加するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、簡単なプロセスでリーク電流を低減可能な構造を実現しようとする薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及びレーザアニール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による薄膜トランジスタは、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタであって、前記半導体層は、ポリシリコン薄膜であり、ポリシリコン薄膜の結晶粒径前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域の中央部から前記ソース電極及び前記ドレイン電極側端部に向かって次第に小さくなっているものである。
【0009】
また、本発明による薄膜トランジスタの製造方法は、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタの製造方法であって、前記基板上に被着されたアモルファスシリコン薄膜の少なくとも前記ゲート電極に対応した領域にレーザ光を照射してポリシリコン薄膜とし、前記半導体層を形成するレーザアニール工程を含み、前記レーザアニール工程は、照射形状が前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域と同じ形状となるように整形されたレーザ光の照射位置を、照射部が一部重なった状態で前記ゲート電極に対応した領域内の前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側の一方端から他方端に向かってステップ移動させるように、前記照射位置のステップ移動量を制御することにより、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径が前記チャンネル領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径に比べて小さくなるように、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域にレーザ光を前記チャンネル領域よりも少ない照射量で照射して実施されるものである。
【0010】
さらに、本発明によるレーザアニール装置は、基板上にゲート電極、ソース電極、ドレイン電極及び半導体層を積層して備えた薄膜トランジスタの、少なくとも前記ゲート電極に対応した領域のアモルファスシリコン薄膜をレーザアニールしてポリシリコン薄膜とし、前記半導体層を形成するレーザアニール装置であって、前記基板上にレーザ光を照射するレーザ照射光学系と、照射形状が前記ソース電極と前記ドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域と同じ形状となるように整形されたレーザ光の照射位置を、照射部が一部重なった状態で前記ゲート電極に対応した領域内の前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側の一方端から他方端に向かってステップ移動させるように、前記照射位置のステップ移動量を制御することにより、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径が、前記チャンネル領域の前記ポリシリコン薄膜の結晶粒径に比べて小さくなるように、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に夫々対応した領域のレーザアニールを前記チャンネル領域のレーザアニールよりも少ないレーザ光の照射量で実施すべくレーザ光の照射量を制御する制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アモルファスシリコン薄膜のレーザアニールにおけるレーザ光の照射量を制御するだけで、ソース電極及びドレイン電極に夫々対応した領域のポリシリコン薄膜の結晶粒径をソース電極とドレイン電極とに挟まれたチャンネル領域のポリシリコン薄膜の結晶粒径に比べて小さくすることができる。したがって、ソース電極及びドレイン電極に夫々対応した領域における電子の移動度をチャンネル領域に比べて下げることができ、TFTオフ時のリーク電流を低減することができる。
【0012】
また、チャンネル領域だけを均一にアニール処理した場合には、アニール処理後に半導体層上に形成されるソース電極及びドレイン電極のチャンネル領域に対する位置ずれが生じたとき、その位置ずれがTFTの電気特性に影響するおそれがあるが、本発明によれば、半導体層のポリシリコン薄膜の結晶粒径をソース電極及びドレイン電極に夫々対応した領域及びチャンネル領域で段階的に変化させているので、上記位置ずれの許容量を増すことができる。したがって、TFTの製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による薄膜トランジスタの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明による薄膜トランジスタのレーザアニールについて断面で示す説明図である。
図3】本発明による薄膜トランジスタのレーザアニールについて平面で示す説明図である。
図4】上記レーザアニールにおけるレーザ光の照射量の分布を示す説明図である。
図5】本発明によるレーザアニール装置の一実施形態を示す正面図である。
図6】本発明によるレーザアニール装置に使用するシャドウマスク及びマイクロレンズアレイの一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図である。
図7】本発明によるレーザアニール装置の制御手段の一構成例を示すブロック図である。
図8】本発明によるレーザアニール装置のレーザアニール動作を示す説明図である。
図9】本発明によるレーザアニール装置に使用するシャドウマスク及びマイクロレンズアレイの他の構成例を示す説明図であり、(a)はマイクロレンズをゲート電極の配置に合致させた場合の開口の配置例を示し、(b)は開口をゲート電極の配置に合致させた場合のマイクロレンズの配置例を示している。
図10図9(b)のマイクロレンズの配置について解説する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による薄膜トランジスタの一実施形態を示す断面図である。この薄膜トランジスタ(TFT)は、ディスプレイの画素電極を駆動するために、TFT基板上に縦横に交差させて設けられた複数のデータ線とゲート線との交差部に設けられたもので、ゲート電極1と、半導体層2と、ソース電極3と、ドレイン電極4とを備えて構成されている。
【0015】
上記ゲート電極1は、透明ガラスから成る基板5上に一定の配列ピッチでマトリクス状に複数形成されたもので、上記基板5の横方向に平行に伸びて形成された複数のゲート線(図3参照)6に電気的に接続されて表示領域外に設けられたゲートドライブ回路から走査情報が供給されるようになっている。
【0016】
上記ゲート電極1を覆って、半導体層2が設けられている。この半導体層2は、基板5上に被着されたアモルファスシリコン薄膜7の少なくともゲート電極1に対応した領域に紫外線のレーザ光Lを照射し、アモルファスシリコン薄膜7をレーザアニールして形成されたポリシリコン薄膜8であり、ゲート電極1との間に絶縁膜9を介在させて設けられている。そして、後述のソース電極3及びドレイン電極4に夫々対応した領域のポリシリコン薄膜8の結晶粒径がソース電極3とドレイン電極4とに挟まれたチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さくした構造を有している。
【0017】
このような構造の半導体層2は、ソース電極3及びドレイン電極4に夫々対応した領域のアモルファス薄膜のレーザアニールをチャンネル領域10のレーザ光Lの照射量よりも少ない照射量で実施して形成される。以下、ソース電極3に対応した半導体層2の領域を「ソース領域11」といい、ドレイン電極4に対応した半導体層2の領域を「ドレイン領域12」という。
【0018】
詳細には、図2,3に示すように、上記レーザアニールは、照射形状が上記チャンネル領域10と同じ形状となるように整形されたパルスレーザ光(以下、単に「レーザ光L」という)の照射位置を、レーザ光Lの照射領域が一部重なった状態でゲート電極1に対応した領域内のソース電極3側又はドレイン電極4側の一方端から他方端に向かってステップ移動させて実施される。本実施形態においては、レーザ光Lの照射位置がソース電極3側からドレイン電極4側に向かう方向(図3に示す矢印方向)にステップ移動される場合について示す。
【0019】
より詳細には、レーザ光Lの照射位置のステップ移動量は、レーザアニールがレーザ光Lのnショット(nは3以上の整数)で実施される場合に、上記チャンネル領域10のソース電極3及びドレイン電極4の対向方向(図3に示す矢印方向)の幅dの1/nに等しい量に設定される。
【0020】
具体的には、上記ステップ移動量は、チャンネル領域10のソース−ドレイン間の幅が例えば4μmであり、レーザアニールが例えばトータル20ショットのレーザ光照射で実行される場合には、4μm/20=0.2μmに設定される。
【0021】
レーザ光Lの照射は、後述のレーザ照射光学系14(図5参照)及び基板5が相対的にd/nずつステップ移動する度に行うとよい。又は、基板5をゲート電極1のドレイン電極4側からソース電極3側に向かう方向(図3の矢印と反対方向)に一定速度で搬送しながら、基板5がd/nだけ移動する毎にレーザ光Lを照射してもよい。又は、ドレイン電極4側からソース電極3側に向かう方向(図3の矢印と反対方向)のゲート電極1の配列ピッチをwとしたとき、同方向に互いに(w−d/n)だけ離れた位置を照射するように複数の開口25を設けたシャドウマスク21(図6参照)を使用し、基板5を同方向に一定速度で搬送しながら、基板5が最初の照射位置からwだけ移動する毎にレーザ光Lを照射させてもよい。
【0022】
上記半導体層2上にて、ゲート電極1の一方端側には、ソース電極3が設けられている。このソース電極3は、上記ゲート線6に交差させて設けられた図示省略のデータ線に電気的に接続されており、表示領域外に設けられたソースドライブ回路からデータ信号が供給されるようになっている。
【0023】
上記半導体層2上にて、ゲート電極1の他方端側には、ドレイン電極4が設けられている。このドレイン電極4は、ディスプレイの図示省略の画素電極に上記データ線及びソース電極3を介して供給されるデータ信号を供給するもので、上記画素電極に電気的に接続させて設けられている。
【0024】
そして、上記ソース電極3及びドレイン電極4上には、絶縁膜からなる図示省略の保護膜が形成されている。
【0025】
次に、このように構成されたTFTを製造する方法について説明する。
本発明によるTFTの製造方法は、基板5上にゲート電極1、ソース電極3、ドレイン電極4及び半導体層2を積層して備えたTFTの製造方法であって、基板5上に成膜されたアモルファスシリコン薄膜7の少なくともゲート電極1に対応した領域に紫外線のレーザ光Lを照射してポリシリコン薄膜8とし、半導体層2を形成するレーザアニール工程を含んでいる。
【0026】
なお、本発明のTFTは、半導体層2の構造が異なる点を除いて公知のTFT構造と同じであるため、基本的な製造方法は、従来技術が適用される。そこで、ここでは、従来技術と異なる半導体層2の形成、特にレーザアニール工程について説明する。
【0027】
本発明によるTFTの製造方法におけるレーザアニール工程は、ソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン薄膜8の結晶粒径がチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さくなるように、ソース領域11及びドレイン領域12のレーザアニールをチャンネル領域10のレーザ光Lの照射量よりも少ない照射量で実施することを特徴としている。
【0028】
詳細には、上記レーザアニール工程は、レーザ光Lの照射領域の形状が上記チャンネル領域10と同じ形状となるように整形されたレーザ光Lの照射位置を、上記照射領域のソース電極3とドレイン電極4との対向方向の一部が重なった状態でゲート電極1に対応した領域内のソース電極3側又はドレイン電極4側の一方端から他方端に向かってステップ移動させて実施される。
【0029】
より詳細には、上記レーザアニール工程は、レーザアニールがレーザ光Lのnショット(nは3以上の整数)で実施される場合に、上記レーザ光Lの照射位置のステップ移動量をチャンネル領域10のソース電極3及びドレイン電極4の対向方向の幅dの1/nに等しい量となるように設定して実施される。
【0030】
以下、レーザアニール工程を、図2及び図3を参照して説明する。ここでは、一例として5ショットのレーザ光照射によりレーザアニールが実施される場合について説明する。
先ず、図2(a)及び図3(a)に示すように、アモルファスシリコン薄膜7上のレーザ光Lの照射形状が上記チャンネル領域10と同じ形状となるように整形された紫外線のレーザ光Lを、ゲート電極1に対応した領域内でソース電極3側端部領域のアモルファスシリコン薄膜7に1ショット照射(1回目の照射)する。これにより、アモルファスシリコン薄膜7のレーザ光Lの照射された部分が瞬間加熱されて溶融し、シリコン分子の結合状態がアモルファス(非結晶)状態から、ポリ(多結晶)状態に変えられてポリシリコン薄膜8となる。
【0031】
ここで使用されるレーザは、波長が355nmのYAGレーザや波長が308nmのエキシマレーザである。
【0032】
次に、レーザ光Lの照射位置がドレイン電極4方向(図2(a)及び図3(a)に示す矢印方向)にd/5だけステップ移動され、上記と同様にレーザ光Lを1ショット照射(2回目の照射)する。
【0033】
詳細には、図2(a)に示すように、レーザ光Lを基板5(又はゲート電極1)に対して相対的に矢印方向にステップ移動し、図2(a)及び図3(a)に示す1回目のレーザ光照射位置から、図2(b)及び図3(b)に示すように矢印方向にd/5だけずれたゲート電極1上の位置に1ショットのレーザ光Lを照射(2回目の照射)する。これにより、レーザ光Lの照射されたアモルファスシリコン薄膜7の部分が瞬間加熱されて溶融し、シリコン分子の結合状態がアモルファス状態からポリ状態に変えられ、ポリシリコン薄膜8となる。
【0034】
この場合、1回目のレーザ光Lの照射領域と2回目の照射領域との重なり部は、1回目の照射領域よりもレーザ光Lの照射量が増して照射エネルギーが高くなり、上記重なり部の結晶化(結晶成長)が促進される。その結果、同部分のポリシリコン薄膜8の結晶粒径は、他の部分のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて大きくなる。
【0035】
次いで、上記と同様にして、レーザ光Lを基板5に対して相対的に矢印方向にステップ移動し、図2(b)及び図3(b)に示す2回目のレーザ光Lの照射位置から、図2(c)及び図3(c)に示すように矢印方向にd/5だけずれたゲート電極1の位置に1ショットのレーザ光Lを照射(3回目の照射)する。これにより、1回目〜3回目の3ショットのレーザ光Lによる照射領域の重なり部分は、レーザ光Lの照射量が先の2回のレーザ光Lの照射量よりもさらに増して照射エネルギーがより高くなり、上記重なり部分のポリシリコン薄膜8の結晶化(結晶成長)はより促進される。その結果、同部分のポリシリコン薄膜8の結晶粒径は、より大きくなる。
【0036】
さらに、上述と同様にして、レーザ光Lを基板5に対して相対的に矢印方向にステップ移動し、図2(c)及び図3(c)に示す3回目のレーザ光Lの照射位置から、図2(d)及び図3(d)に示すように矢印方向にd/5だけずれたゲート電極1上の位置に1ショットのレーザ光Lを照射(4回目の照射)する。これにより、1回目〜4回目の4ショットのレーザ光Lによる照射領域の重なり部分は、レーザ光Lの照射量が先の3回のレーザ光Lの照射量よりもさらに増して照射エネルギーがさらに高くなり、上記重なり部分のポリシリコン薄膜8の結晶化(結晶成長)はさらに促進される。その結果、同部分のポリシリコン薄膜8の結晶粒径は、より大きくなる。
【0037】
さらにまた、上述と同様にして、レーザ光Lを基板5に対して相対的に矢印方向にステップ移動し、図2(d)及び図3(d)に示す4回目のレーザ光Lの照射位置から、図2(e)及び図3(e)に示すように矢印方向にd/5だけずれたゲート電極1上の位置(ドレイン電極4側端部領域)に1ショットのレーザ光Lを照射(5回目の照射であり、最後のレーザ光照射)する。これにより、ゲート電極1に対応した領域のアモルファスシリコン薄膜7のレーザアニールが終了し、ポリシリコン薄膜8の半導体層2が形成される。
【0038】
この場合、1回目〜5回目の5ショットのレーザ光Lによる照射領域の重なり部分(チャンネル領域10の中央部)は、レーザ光Lの照射量が先の4回のレーザ光Lの照射量よりもさらに増して照射エネルギーがさらに高くなり、上記重なり部分の結晶化(結晶成長)はより促進される。その結果、同部分のポリシリコン薄膜8の結晶粒径は、より大きくなる。
【0039】
また、チャンネル領域10の中央部からドレイン電極4側端部に向かって、レーザ光Lの照射領域の重なる回数が減るためレーザ光Lの照射量が減少する。したがって、チャンネル領域10の中央部からドレイン電極4側端部に向かって、照射エネルギーが減少し、ポリシリコン薄膜8の結晶粒径が次第に小さくなる。
【0040】
上述したように、レーザ光Lの照射位置をd/nずつステップ移動させることにより、図4に示すように、ゲート電極1上のアモルファスシリコン薄膜7へのレーザ光Lの照射量に分布を持たせることができる。即ち、チャンネル領域10に比べてソース領域11及びドレイン領域12のレーザ光Lの照射量を少なくすることができ、ソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン化の進行をチャンネル領域10よりも抑えることができる。これにより、ソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン薄膜8の結晶粒径をチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さくすることができる。
【0041】
なお、レーザアニールに要するレーザ光Lのショット回数nは、少なくともチャンネル領域10におけるアモルファスシリコン薄膜7の全膜厚を溶融させるのに十分な照射エネルギーが得られるように決定するのがよい。
【0042】
このように、本発明によれば、ソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン薄膜8の結晶粒径をチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さくすることができる。したがって、半導体層2のソース領域11及びドレイン領域12の電子移動度をチャンネル領域10の電子移動度よりも低くすることができ、TFTオフ時のリーク電流を低減することができる。
【0043】
次に、上記レーザアニール工程を実施するための本発明によるレーザアニール装置について図5を参照して説明する。
本発明によるレーザアニール装置は、搬送手段13と、レーザ照射光学系14と、アライメント手段15と、撮像手段16と、制御手段17と、を備えて構成されている。
【0044】
上記搬送手段13は、最表面にアモルファスシリコン薄膜7が形成されたTFT基板18を図5に示す矢印A方向に一定速度で搬送するものであり、TFT基板18に予め形成されたゲート線6が搬送方向(矢印A方向)と平行となるように位置決め載置できるようになっている。
【0045】
上記搬送手段13の上方には、レーザ照射光学系14が配設されている。このレーザ照射光学系14は、紫外線のレーザ光LをTFT基板18上の予め定められた所定位置に適切に照射させるものであり、レーザ光Lの進行方向上流側から下流側に向かって、レーザ19と、カップリング光学系20と、シャドウマスク21と、マイクロレンズアレイ22と、をこの順に備えて構成されている。
【0046】
ここで、上記レーザ19は、紫外線のレーザ光Lをパルス発光するもので、例えば波長が355nmのYAGレーザや波長が308nmのエキシマレーザである。
【0047】
また、上記カップリング光学系20は、レーザ19から放出されたレーザ光Lを拡張すると共に均一化して後述のシャドウマスク21に照射させるものであり、図示省略のビームエキスパンダ、フォトインテグレータ、コリメータレンズを含んでいる。
【0048】
さらに、上記シャドウマスク21は、1つのレーザ光Lから複数のレーザ光Lに分離するものであり、図6(b)に示すように透明な石英基板23上に成膜されたクロム(Cr)やアルミニウム(Al)等の遮光膜24にTFT基板18上に照射されるレーザ光Lの照射形状をチャンネル領域10の形状に合わせて整形するための複数の開口25を設けたもので、レーザ光Lの照射形状と相似形に形成されている。
【0049】
詳細には、上記シャドウマスク21は、図6(a)に示すように、TFT基板18上にマトリクス状に形成されたゲート電極1の搬送方向(矢印A方向)と交差する方向の配列ピッチwの2以上の整数倍のピッチ(図6(a)においては2wで示す)で複数の開口25を1直線に並べて形成した開口列26を搬送方向に複数列設けると共に、搬送方向上流側に位置する複数列の開口列26(以下「第1の開口群27」という)の各開口25を通してレーザ光Lが照射される各ゲート電極1の間に位置する他の複数のゲート電極1を補間してレーザ光Lが照射できるように後続の複数列の開口列26(以下、「第2の開口群28」という)を搬送方向と交差する方向に所定寸法(図6(a)においてはwで示す)だけずらして設けたものである。
【0050】
より詳細には、上記第1及び第2の開口群27,28の各開口列26は、レーザアニールにおけるレーザ光Lのショット数nに等しい列数(図6(a)においては5列で示す)で形成されている。この場合、開口25の搬送方向の幅をD、同方向のゲート電極1の配列ピッチをw、レーザアニールにおけるレーザ光Lのショット数をnとすると、第1及び第2の開口群27,28における隣接する開口列26間の距離は、(w±d/n)に設定されている。そして、第1及び第2の開口群27,28は、各開口群27,28の搬送方向上流側に位置する開口列26間の距離が搬送方向のゲート電極1の配列ピッチwのm倍(mはレーザ光Lのショット数n以上の整数)に設定されている。なお、図6(a)においてはn=5で示すと共に、隣接する開口列26間の距離が(w−d/n)の場合について示す。
【0051】
上記マイクロレンズアレイ22は、上記開口25をゲート電極1上に縮小投影するものであり、図6に示すように、上記第1及び第2の開口群27,28の各開口25の中心に光軸中心を合致させて複数のマイクロレンズ(集光レンズ)29を配置している。この場合、マイクロレンズ29の縮小倍率は、開口25の像をチャンネル領域10の形状に合わせてゲート電極1上のアモルファスシリコン薄膜7上に合焦させ得るように設定されている。これにより、開口25の搬送方向の幅Dは、マイクロレンズ29の上記縮小倍率で縮小されてチャンネル領域10のソース−ドレイン間の幅dに合致することになる。
【0052】
上記シャドウマスク21及びマイクロレンズアレイ22を一体的に搬送方向と交差する方向に移動可能にアライメント手段15が設けられている。このアライメント手段15は、レーザ光Lを目標位置に適切に照射させるためのものであり、搬送方向に対して左右に振れながら搬送されるTFT基板18の動きに追従させてシャドウマスク21及びマイクロレンズアレイ22を移動させることができるようになっている。
【0053】
上記搬送手段13側にて搬送面の下側には、撮像手段16が設けられている。この撮像手段16は、TFT基板18の裏面側からTFT基板18の透明ガラスを透かしてTFT基板18の表面に形成されたゲート電極1及びゲート線6を撮影するものであり、複数の受光素子を搬送方向と交差する方向に1直線に並べて備えた細長状の受光面を有するラインカメラである。そして、上記シャドウマスク21の搬送方向(矢印A方向)の最も上流側に位置する開口列26aの中心線に受光面の長手中心線を合致させて、又は前記開口列26aよりも搬送方向上流側に予め定められた所定距離だけ離れた位置を撮影するように配置されている。
【0054】
上記搬送手段13、レーザ照射光学系14、アライメント手段15及び撮像手段16に電気的に接続して制御手段17が設けられている。この制御手段17は、TFT基板18のソース電極3及びドレイン電極4に夫々対応した領域のポリシリコン薄膜8の結晶粒径が、ソース電極3とドレイン電極4とに挟まれたチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さくなるように、ソース領域11及びドレイン領域12のレーザアニールをチャンネル領域10のレーザアニールよりも少ないレーザ光Lの照射量で実施すべくレーザ光Lの照射量を制御するものである。
【0055】
詳細には、上記制御手段17は、照射形状がチャンネル領域10と同じ形状となるように整形されたレーザ光Lの照射位置を一部が重なった状態でゲート電極1に対応した領域内のソース電極3側又はドレイン電極4側の一方端から他方端に向かってステップ移動させるように、上記照射位置のステップ移動量を制御するものである。これにより、チャンネル領域2のレーザ光Lの照射量が他の部分よりも多くなるようにレーザ光Lの照射量に分布を持たせることができる。
【0056】
より詳細には、制御手段17は、レーザアニールが、複数の開口25のうちソース電極3及びドレイン電極4の対向方向(搬送方向)に対応して並んだ複数の開口25を通過した複数のレーザ光Lの多重照射により実施されるように、同方向へのTFT基板18の移動速度及びレーザ光Lの照射タイミングを制御するようになっている。
【0057】
そして、上記制御手段17は、図7に示すように、搬送手段駆動コントローラ30と、レーザ駆動コントローラ31と、アライメント手段駆動コントローラ32と、画像処理部33と、演算部34と、メモリ35と、制御部36と、を備えて構成されている。
【0058】
ここで、搬送手段駆動コントローラ30は、TFT基板18を予め定められた一定速度で矢印A方向に搬送させるように搬送手段13の駆動を制御するものである。また、レーザ駆動コントローラ31は、レーザ光Lを所定の時間間隔でパルス発光させるようにレーザ19の駆動を制御するものである。さらに、アライメント手段駆動コントローラ32は、搬送方向に対して左右に振れながら搬送されるTFT基板18の動きに追従させるべく、シャドウマスク21とマイクロレンズアレイ22とを一体的に搬送方向と交差する方向に移動させるよう制御するものである。
【0059】
画像処理部33は、撮像手段16により撮影された画像情報に基づいて搬送方向の輝度変化から、ゲート電極1の搬送方向と交差する縁部を検出すると共に、搬送方向と交差する方向の輝度変化(受光面の長軸方向の輝度変化)から搬送方向に平行に伸びるゲート線6の縁部の位置を検出するものであり、上記各検出情報及び撮像手段16に予め定められた基準位置情報を後述の演算部34に出力するようになっている。
【0060】
演算部34は、ゲート電極1の搬送方向と交差する縁部の検出情報を画像処理部33から入力し、該検出時点からTFT基板18の移動距離を演算し、TFT基板18の移動距離が移動距離の目標値と合致して、シャドウマスク21の搬送方向の最も上流側に位置する開口列26aの開口25に対応するレーザ光Lの照射位置がゲート電極1上のソース電極3側端部領域における最初の照射位置に合致すると、レーザ駆動コントローラ31に1パルスのレーザ光Lの発光指令を出力するようになっている。また、演算部34は、搬送方向に平行なゲート線6の縁部の位置情報のうち予め定められたゲート線6の縁部の位置情報と撮像手段16に予め定められた基準位置情報とに基づいて両者間の距離を演算し、該距離とアライメント目標値とのずれ量を算出し、そのずれ量(位置ずれ情報)をアライメント手段駆動コントローラ32に出力するようになっている。これにより、アライメント手段駆動コントローラ32は、上記位置ずれ情報に基づいて位置ずれを補正するようにアライメント手段15を駆動することになる。
【0061】
メモリ35は、TFT基板18の搬送速度、上記各目標値等を保存するものであり、書き換え可能な記憶装置である。そして、制御部36は、上記各要素が適切に動作するように装置全体を統合して制御するものである。
【0062】
次に、このように構成されたレーザアニール装置の動作について説明する。ここでは、1つのゲート電極1に注目し、レーザアニールがレーザ光Lの5ショットで実行され場合について説明する。
先ず、搬送手段13が制御手段17によって制御されてTFT基板18を図5の矢印A方向に一定速度で搬送を開始する。
【0063】
次に、撮像手段16によりTFT基板18の裏面側からTFT基板18を透かして表面に形成されたゲート電極1及びゲート線6が撮影される。この場合、撮像手段16により撮影された画像が画像処理部33で処理され、搬送方向の輝度変化から搬送方向の最も下流側に位置するゲート電極1の搬送方向と交差する縁部が検出されると、該縁部が検出された時点を基準にてTFT基板18の移動距離が演算部34において演算される。そして、その移動距離がメモリ35に保存された移動距離の目標値に合致して、シャドウマスク21の搬送方向の最も上流側に位置する開口列26aの開口25に対応するレーザ光Lの照射位置がゲート電極1上のソース電極3側端部領域の予め定められた最初の照射位置に合致すると、演算部34からレーザ駆動コントローラ31に1パルスのレーザ光Lの発光指令が出力される。
【0064】
また、画像処理部33では、撮像手段16により撮影された画像の搬送方向と交差方向の輝度変化から搬送方向に平行なゲート線6の縁部が検出され、その位置情報が演算部34に出力される。演算部34では、入力した位置情報のうち予め定められたゲート線6の縁部(例えば、搬送方向に向かって右側縁部)の位置情報と撮像手段16に予め定められた基準位置情報とに基づいて両者間の距離を演算し、該距離とメモリ35に保存されたアライメント目標値とのずれ量を算出し、そのずれ量(位置ずれ情報)をアライメント手段駆動コントローラ32に出力する。
【0065】
アライメント手段駆動コントローラ32は、上記位置ずれ情報に基づいて位置ずれを補正するようにアライメント手段15を駆動し、シャドウマスク21及びマイクロレンズアレイ22を一体的に搬送方向と交差する方向に微動させる。これにより、シャドウマスク21及びマイクロレンズアレイ22は、TFT基板18の搬送方向と交差方向の動きに追従して動き、レーザ光Lをゲート電極1上の予め定められた所定位置に適切に照射させることができる。シャドウマスク21及びマイクロレンズアレイ22のTFT基板18に対する追従動作は、TFT基板18の搬送中、常時実行される。
【0066】
レーザ駆動コントローラ31は、演算部34から入力した発光指令に基づいてレーザ19を駆動し、1パルスのレーザ光Lを発光させる。レーザ19で発光したレーザ光Lは、カップリング光学系20によりビーム径が拡張され、輝度分布が均一化されてシャドウマスク21に照射する。
【0067】
シャドウマスク21に照射したレーザ光Lは、シャドウマスク21に設けられた複数の開口25により複数のレーザ光Lに分離される。さらに、分離された複数のレーザ光Lは、図8(a)に示すように、各開口25に夫々対応して設けられたマイクロレンズ29によりゲート電極1上のアモルファスシリコン薄膜7の上記最初の照射位置に集光される。このとき、アモルファスシリコン薄膜7上には、開口25の像が縮小投影されてチャンネル領域10と同形状の領域がレーザ光Lにより照明される。これにより、1ショット目のレーザ光Lにより照明された上記最初の照射位置のアモルファスシリコン薄膜7が瞬間加熱されて溶融し、アモルファスシリコン薄膜7の一部がポリシリコン化(多結晶化)する。
【0068】
演算部34では、TFT基板18の移動距離が演算される。そして、TFT基板18の移動距離がメモリ35に保存されたゲート電極1の搬送方向の配列ピッチwに等しい距離だけ移動し、図8(b)に示すように、ゲート電極1が搬送方向下流側の次のマイクロレンズ29の下に達すると、演算部34からレーザ駆動コントローラ31に2ショット目の発光指令が出力される。これにより、レーザ駆動コントローラ31は、レーザ19を駆動して2ショット目のレーザ光Lを発光させる。
【0069】
2ショット目のレーザ光Lは、図8(b)に示すように、マイクロレンズ29によりゲート電極1上のアモルファスシリコン薄膜7上に集光する。そして、2ショット目のレーザ光Lにより照明された領域のアモルファスシリコン薄膜7が瞬間加熱されて溶融し、アモルファスシリコン薄膜7の一部がポリシリコン化する。このとき、開口25及びマイクロレンズ29は、図8(a)に示すように、搬送方向に(w−d/5)ピッチで設けられているため、2ショット目のレーザ光Lの照射位置は、1ショット目のレーザ光Lの照射位置よりもd/5だけ搬送方向上流側にずれた位置となる。なお、dはチャンネル領域10の搬送方向の幅寸法である。
【0070】
1ショット目のレーザ光Lの照射領域と2ショット目のレーザ光Lの照射領域との重なった部分には、1ショット目のレーザ光Lの照射領域よりも高い照射エネルギーが付与され、同部分のポリシリコン薄膜8の結晶化が促進される。
【0071】
以降、図8(c)〜(e)に示すように、TFT基板18がwだけ搬送される毎にレーザ光Lが発光され、3ショット目〜5ショット目のレーザ光Lがゲート電極1上のアモルファスシリコン薄膜7に照射される。この場合、3ショット目〜5ショット目のレーザ光Lの照射位置は、搬送方向上流側にd/5ずつずれた位置となる。
【0072】
このように、1ショット目〜5ショット目のレーザ光Lの照射領域の重なり数の多い部分ほどレーザ光Lの照射量が増して照射エネルギーがより高くなり、ポリシリコン薄膜8の結晶化(結晶成長)がより促進される。その結果、レーザ光Lの照射量が多いチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径がレーザ光Lの照射量の少ないソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン薄膜8の結晶粒径よりも大きくなる。このようにして、ソース領域11及びドレイン領域12のポリシリコン薄膜8の結晶粒径がチャンネル領域10のポリシリコン薄膜8の結晶粒径に比べて小さい半導体層2が形成される。
【0073】
なお、上記実施形態においては、搬送方向における開口25及びマイクロレンズの配列ピッチが(w−d/5)の場合につて説明したが、本発明はこれに限られず上記配列ピッチは(w+d/5)であってもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、開口25の中心とマイクロレンズ29の光軸とを合致させてシャドウマスク21とマイクロレンズアレイ22とを形成した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、図9(a)に示すように、マイクロレンズ29の搬送方向の配列ピッチをゲート電極1の同方向の配列ピッチwに合わせてマイクロレンズアレイ22を形成してもよい。この場合、開口25は、真ん中の開口25の中心を対応するマイクロレンズ29の光軸に合致させた状態で搬送方向に(w±D/n)の配列ピッチで配置するとよい。なお、図9(a)は、(w+D/n)及びn=5の場合について示している。
【0075】
又は、図9(b)に示すように、開口25の搬送方向の配列ピッチをゲート電極1の同方向の配列ピッチwに合わせてシャドウマスク21を形成してもよい。この場合、マイクロレンズ29は、真ん中のマイクロレンズ29の光軸を対応する開口25の中心に合致させた状態で搬送方向に(w±D×d/{(D+d)×n})(図9(b)は(w−D×d/{(D+d)×n})及びn=5の場合を示す。)の配列ピッチで配置するとよい。
【0076】
これについて、図10を参照して詳細に説明する。先ず、図9(b)に示す真ん中の開口25及びマイクロレンズ29の右隣の開口25及びマイクロレンズ29に注目して考える。この場合、図10に示すように、開口25の中心とマイクロレンズ29の光軸中心との間のずれ量をΔとすると、ゲート電極1上に投影される開口25の像の中心は、マイクロレンズ29の光軸に対してΔ×d/Dだけずれた位置となる。ここで、d/Dはマイクロレンズ29の縮小倍率に相当する。したがって、開口25の中心線とゲート電極1上の開口25の像の中心線との間の距離は、(1+d/D)×Δとなる。
【0077】
この場合、真ん中の開口25の中心とマイクロレンズ29の光軸とを合致させているため、真ん中の開口25の像の中心線は、開口25の中心線に合致しているが、真ん中の開口25の右隣の開口25の像は、該開口25の中心線の位置から(1+d/D)×Δだけずれた位置となる。そして、そのずれ量がd/nであるから、(1+d/D)×Δ=d/nと表すことができ、Δ=D×d/{(D+d)×n}となる。したがって、マイクロレンズ29は、真ん中のマイクロレンズ29の光軸を対応する開口25の中心に合致させた状態で搬送方向に(w±Δ)、即ち(w±D×d/{(D+d)×n})の配列ピッチで配置すればよいことになる。
【0078】
さらに、上記実施形態においては、マイクロレンズアレイ22が各開口25に対応させて夫々1つのマイクロレズを備えた場合について説明したが、複数の開口25(開口群)に対応させて1つのマイクロレンズ29を備えたものであってもよい。この場合、搬送方向上流側の複数の開口群が対応する複数のマイクロレンズ29により投影される搬送方向と交差方向の複数領域の間の領域を後続の複数の開口群で補間するように複数の開口群及びマイクロレンズ29を設けるとよい。
【符号の説明】
【0079】
1…ゲート電極
2…半導体層
3…ソース電極
4…ドレイン電極
5…基板
7…アモルファスシリコン薄膜
8…ポリシリコン薄膜
10…チャンネル領域
11…ソース領域
12…ドレイン領域
14…レーザ照射光学系
17…制御手段
21…シャドウマスク
29…マイクロレンズ(集光レンズ)
L…レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10