特許第6471391号(P6471391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471391
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】MRI用通話装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20190207BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20190207BHJP
   H04R 23/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   A61B5/055 390
   H04R1/10 101A
   H04R1/10 101Z
   H04R23/00 320
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-187187(P2014-187187)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-59429(P2016-59429A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501494230
【氏名又は名称】小林 興弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 興弘
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−245580(JP,A)
【文献】 特開2004−008356(JP,A)
【文献】 特開2000−115879(JP,A)
【文献】 特開2010−227500(JP,A)
【文献】 特開2009−284342(JP,A)
【文献】 特開昭63−203096(JP,A)
【文献】 実開昭58−138483(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
H04R 1/10
H04R 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のヘッドホンユニットのいずれか一方のヘッドホンユニットにおいて、該ヘッドホンユニットに装着された非磁性体から構成され弾性を有するヘッドホンアームと、該ヘッドホンアームの延長上で且つ被験者の顔の側面に位置する部分に非磁性体の光センサーマイクとを設けヘッドホンアームの弾性で被験者の顔に光センサーマイクの前面が圧接するように構成されたMRI用通話装置において、光センサーマイクは、非磁性材料で構成された音響キャビティ内部に配置された光センサーユニットと音響キャビティ前面で且つ音響キャビティの開口部を覆うように設けられた振動板と、音響キャビティの外側に設けられ音響キャビティ外面全体を覆うように設けられた弾性を有する吸音材とから構成され、前記吸音材の端部はヘッドホンアームの弾性によって顔面の輪郭に沿って前記振動板が接触するように構成し、光センサーマイクの出力は光ファイバーによって送出されるように構成したことを特徴とするMRI用通話装置。
【請求項2】
ヘッドホンユニットは、セラミック振動子と該セラミック振動子と一体に固着されたセラミック振動子よりも大きな面積を有する非磁性体で構成された振動板と、有底円筒状に構成され内部に振動板を固定するように構成された吸音材から成る防音構造体によって音響カップを構成し、ヘッドホンの装着時には聴取者の耳殻が前記音響カップ内に入ることにより耳殻の近傍に振動板を配置し耳殻に対して接触するか又は近接させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のMRI用通話装置。
【請求項3】
光センサーマイクの光センサーユニットは、吸音材によって構成され且つ開口部を振動板で閉鎖した音響キャビティ内に取り付けられ、光センサーユニットのダイアフラムが音響キャビティー内に露出していることを特徴とする請求項記載のMRI用通話装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging system磁気共鳴画像装置)の騒音環境下で診断を受ける被験者とMRI装置を操作する医師等との間で双方向通話を行うために被験者が装着する非磁性のMRI用双方向通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MRI装置の診断性能が向上して高度な診断を行う高精細診断画像が得られるようになり多くの病院でMRI装置の導入が図られ医療分野における重要な装置として毎日多くの患者(被験者)の診断などに使われている。
【0003】
MRI装置は周知のごとく高磁場を発生させて被験者の患部に磁場を照射させる事により細胞の変化を高精細な画像で検知診断する事が出来る装置である。
【0004】
しかし高精細な画像を得る為には高磁場を発生させなくてはならず、この高磁場を発生させる為にはMRI装置のコイルに断続的に高電圧を加えることが必要で、コイルに高電圧を断続的に与える事によりコイルに大きな電流が流れることになって同時に大きな騒音が発生する。
【0005】
現在のMRI装置は上述したようにコイルに断続的な大電流を加える方式であるため、この騒音を少なくする取り組みは種々行われているが、現時点で騒音を無くす事は困難である。
【0006】
MRIによる診断は、このようなMRIの騒音環境下において被験者の診断を行わなくてはならず、しかも通常1回の診断時間は短くて15分、長くて30分から40分位の時間を必要とするため、この間、被験者は固定されて動くことができないことで苦痛を感じ、その上に騒音を我慢しなくてはならないという負担を負うことになり、その苦痛は図り知れないものが有る。
【0007】
また、従来のMRI装置室には検査人である医師から被験者へ音声で情報を伝える事が出来る手段として、MRI室モニタースピーカーを設置することが提案されていたが、MRI室モニタースピーカーの場合は、MRI装置の診断が停止した状態では騒音レベルは低く静かで、被験者はMRI室モニタースピーカーにより医師の音声を聞くことが可能である。
【0008】
しかし一旦MRI装置が動作を開始する事によりMRIの騒音レベルは極端に大きくなり医師の指示が騒音にマスキングされて被験者はMRI室モニタースピーカーで医師の音声を聞く事が困難になってしまう問題が有った。
【0009】
また、非常に高い騒音の中で、検査を行う医師から被験者に問いかけたり、「リラックスしてください」「もうすぐ終わります」などと指示を出したりしなければならないが、通常のヘッドホンは、磁性体を用いているために、MRIの画像に悪影響を及ぼすなどの理由で、MRIでは使う事が出来ない。そのため、非磁性体によるヘッドホンが提案されているが、セラミック素子のみを振動子として使っているために、再生音の高音成分が強調され非常に聞きにくいなどの欠点が有った。
【0010】
さらにMRIで頭部などの検査をするためには、被験者の頭部を固定し強い磁場を形成するためのガントリーと言われる装置を用いるが、ガントリーは円筒状でコイルが内蔵され、高精細画像を得るためには、できるだけ被験者に近い事が望ましいために、ガントリーと被験者の頭部との間は10mm程度の非常に狭い空間しかなく、音質の良いヘッドホンを使おうとしても、音質の良いヘッドホンは比較的厚みが有るため、狭い空間に合うヘッドホンは使えなかった。
【0011】
その上、被験者の発する音を拾うためのマイクも、ガントリー内の狭い空間か、その周辺に設けなければならないため、種々提案されているが、非常に限られた空間の周辺に被験者が送受話できるための装置を設けなければならないことから実現が難しく、非磁性体で、且つガントリーの狭い空間に挿入できるヘッドホンと、非磁性体で被験者の音声を的確にピックアップできるマイクの実現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−245580号公報
【特許文献2】特開2006−148295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はMRI装置作動中に発生する騒音によって、検査を行う医師から被験者である患者に対する指示が聞き取りにくかったり、被験者が狭い空間に固定されることによる閉所恐怖症のような精神的な圧迫を感じた場合にそれを医師に伝えることが難しかったり、また被験者の恐怖を取り除くために気持ちが落ち着くような音や音楽を流しても、騒音にマスキングされて非常に聞きにくいなどの欠点があった。
【0014】
その上、頭部を覆うガントリーの中に被験者が聴取するヘッドホンを入れなければならないが、ガントリー内面と被験者の皮膚の表面との間の隙間は10mm程度と極めて狭く、通常のヘッドホンを挿入することはほとんど不可能であり、限られた条件の中でマイクを被験者の近傍に配置して明瞭度の高いクリアーな音声をピックアップすることも困難だった。
【0015】
特許文献1に示した特開2005−245580号公報には、MRIの被験者が装着するいわゆる骨伝導型のヘッドホン及びマイクが記載されており、被験者に接触させることで音を伝達し、また被験者の音声を骨伝導を用いてピックアップすることが提案されている。 また、この特許文献1の発明は、耳を覆う空間を設けたイヤーマフと言われる音声を遮断する構造体の内部に骨伝導スピーカや骨伝導マイクを設けるものである。
【0016】
しかしながら、最近のMRIは良好な画像を得るために磁界の強度を高めたり、被験者とガントリーの間を非常に狭く設定しているので、ガントリーと被験者との間隙は大きいもので10mm程度しかないので、騒音が更に高くなるとともに、通常の構造を有するイヤーマフやヘッドホンは、たとえ骨伝導を用いるものであっても、この間に押し込む事は非常に難しく、且つ、人間の耳の周辺やガントリーの内面も湾曲していることから、空間も湾曲したものになり、硬い材質で構成されたヘッドホンをこの隙間に挿入することはほとんど不可能であった。特許文献1及び2に記載されている発明にはガントリーに挿入することは想定されていないため、ガントリー内で使用できるものでは無い。
【0017】
また、従来セラミックなどを用いたヘッドホンなどもMRI用として提案されているが、構造的な制限から、音声は出るとしても高音域に偏っていて非常に聞きにくいなどの欠点があり、音質が良くMRIの騒音下においても、聞き取りやすいヘッドホンが望まれていた。
さらに、特許文献1に示した発明には、骨伝導のマイクをヘッドホンから延びるアームに取り付け、被験者の顎から音声をピックアップするものが示されている。
しかしながら、この骨伝導マイクは圧電型のマイクを用いたもので、音質的に明瞭度の低いものであり、感度の高い圧電素子を用いても、もごもごしたこもった音しか再生できず、音の明瞭度に欠けるものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明に係るMRI用通話装置においては、ヘッドホンユニットの一方に非磁性体で且つ弾性体から成るヘッドホンアームを取り付け、その延長上に非磁性体からなる光センサーマイクを取り付けて被験者に接触させるようにしたことにより、被験者の発する音声を被験者の皮膚を通過してきた振動をピックアップし、ピックアップされた信号を光信号のままで光ファイバーを通して送出することができるものである。
また、ヘッドホンユニットと光センサーマイクを連結し、光センサーマイクを被験者に圧接するためのヘッドホンアームが非磁性体のプラスチックで構成されていることにより、MRIの診断画像に悪影響を与えることが無いものである。
【0019】
また、MRI用通話装置は、受話器として光センサーマイクを用いており、非磁性体によって構成されている音響キャビティの中に光センサーユニットを内蔵し、被験者と接触する位置近傍に振動板を設け、音響キャビティの空間を介して振動板の振動が光センサーユニットに到達することより、被験者の発する音声をピックアップするようにしたものである。
しかも、音響キャビティの外側を吸音材で覆うことにより、MRI内部の騒音を吸音材と音響キャビティで遮断してマイクに到達することを防止するものであるから、被験者の発する音声のみを光センサーユニットで効率良くピックアップできるものである。
【0020】
請求項の発明に係るMRI用通話装置はセラミック振動子を用いているが、セラミック振動子よりも大きな面積を有する非磁性体によって形成された振動板にセラミック振動子を一体に接着することにより、振動する面積が拡大することにより再生する音声がセラミック振動子単体で発音する場合よりも低い音域まで再生することができ、音質が向上する。
また、振動板はヘッドホンを被験者が装着したときに被験者の耳殻近傍に位置させ、接触することも可能にしたことにより、音の伝達に空気を媒体とするとともに、振動板が耳殻に接触した場合被験者は皮膚を通して聴取することができる事により、明瞭な音声を被験者に聞かせることができるものである。
さらにこの発明のヘッドホンユニットは、ヘッドホンユニットの構造体として吸音材から成る防音材によって構成されているために、ヘッドホンユニット自体が防音効果を持つものであり、MRIの騒音下においても、ヘッドホンユニット自体が騒音を遮断することにより、被験者は騒音の少ない状態で、送られてきた音声を聞くことができるものである。
【0021】
の発明に係るMRI用通話装置においては、請求項示す光センサーマイクの吸音材を吸収する周波数特性が異なる2種類以上の吸音材によって構成し、騒音エネルギーの高い部分を吸収できるようにしたことにより、より騒音の少ない環境において被験者の音声をピックアップすることができるものである。
【0022】
さらにこの発明に係るMRI用通話装置においては、請求項2に示すヘッドホンの吸音材を吸収する周波数特性が異なる2種類の吸音材によって構成し、騒音のエネルギーの高い部分を吸収できるようにしたことにより、より騒音の少ない環境において被験者が再生音を聴取できるものである。
【0023】
請求項の発明に係るMRI用通話装置においては、光センサーマイクに内蔵される光センサーユニットが、吸音材によって構成され且つ開口部を振動板で閉鎖した空間である音響キャビティ内に取り付けられ、光センサーマイクのダイアフラムが音響キャビティー内に露出していることにより、振動板の音声振動を音響キャビティーを通してダイアフラムに到達して光センサーユニットで光信号に変換されるものであるから、光センサーユニット自体に外部からの騒音等の振動が到達することを防止できるものである。
【0024】
また、本発明のMRI用通話装置においては、ヘッドホンユニット及び光センサーマイクが、ヘッドホンユニットを連結するためのヘッドホンバンドから取り外すことができるように構成することができ、MRIのガントリーと呼ばれる構造体内に被験者の頭部を挿入して検査を行う場合であっても、ガントリー内部と被験者の間の狭い空間にヘッドホンを挿入できるものである。
【発明の効果】
【0025】
この発明のMRI用通話装置においては、被験者がMRIによる検査を受ける時に装着する医師などの検査を行う人からの指示や気持ちを落ち着かせるための音楽などを聴取するヘッドホンを非磁性体で構成し、左右いずれかのヘッドホンユニットに非磁性体で且つ弾性体から成るヘッドホンアームを取り付けその延長上に光センサーマイクを装着して被験者の皮膚に圧接したことにより、光センサーマイクで被験者の発する音を被験者の皮膚を通してピックアップする事ができるもので、光センサーマイクを用いたことにより非常に明瞭な音を再生することができるものである。
【0026】
更に、光センサーマイクでピックアップした信号を何ら処理すること無く、光ファイバーを通して送出することにより、MRIが設置された部屋から検査を行う人が居る部屋まで光ファイバーで送出することができるために、通話装置全体を非磁性体で構成することができるものであるから、本発明のMRI用通話装置を用いてもMRIの画像に対してなんら悪影響を与えることが無いものである。
【0027】
また、光センサーマイクは、非磁性材料から成る音響キャビティとその音響キャビティの被験者の皮膚に接触する端部近傍に振動板を設け、振動板による振動をキャビティ内の空気振動を通して光センサーユニットでピックアップすることにより、非常に明瞭度の高い音声を光信号としてピックアップできるとともに、音響キャビティの外側全体を吸音材によって覆う事によりキャビティ内にMRIの騒音が入り込むことが少なく、防音の面からもピックアップする音声の明瞭度が上がるものである。
【0028】
請求項に示すヘッドホンにおいては、セラミック振動子と共にセラミック振動子よりも大きな面積を有する非磁性体で構成された振動板を一体に固着することにより振動面積が広くなることによって、再生音が低域まで再生されるものである。
【0029】
また、吸音材によって耳殻が挿入される音響的なカップ状の空間が構成されるために外部のMRIが発する騒音を効果的に防止することができ、且つ耳殻の近傍で、耳殻に接触する事も有るような位置に振動板を設けたことにより、被験者に対して質の高い音声を聞かせることができるものである。
【0030】
請求項1に示す発明は、光センサーマイクの音響キャビティを覆う吸音材を2種類以上の吸音特性が異なる材料によって構成する事により、MRIの機種によって発生する騒音の周波数特性が異なる場合、その機種に合わせて吸音特性を変えられるようにしたり、同じ機械でも騒音のエネルギー分布に合わせて組み合わせることができるもので、より効果的に光センサーマイクに飛び込む騒音を防止するものである。
【0031】
請求項示す発明は、ヘッドホンの音響的なカップ状の空間を覆う吸音材を2種類以上の吸音特性が異なる材料によって構成することにより、MRIの機種によって発生する騒音の周波数特性が異なる場合、その機種に合わせて吸音特性を変えられるようにしたり、同じ機械でも騒音のエネルギー分布に合わせて組み合わせることができるもので、もので、より効果的にヘッドホンに飛び込む騒音を防止するものである。
【0032】
請求項に示す発明は、請求項の光センサーマイク内に装着された光センサーユニットを、吸音材を介して音響キャビティ内に取り付けるもので、音声を光信号に変換する部分である光センサーユニットが吸音材を介して音響キャビティ内に固定ることにより、光センサーユニットに外部の衝撃や騒音が伝わりにくくなるものである。
【0033】
請求項に示す発明は、ヘッドホンと光センサーマイクを通常使用時には、周知のヘッドホンのようにヘッドホンバンドによって左右のヘッドホンユニットが連結された状態で頭部に装着して使用するものであるが、MRIのガントリーを用いて被験者の頭部を検査するような場合には、被験者の頭部とガントリー内部にわずかな間隙しか無いために、ヘッドホンバンドを付けたままでは使用することができないので、ヘッドホンと光センサーマイクをヘッドホンバンドから外す事が出来るようにしたことにより、ガントリー内でも使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明のMRI用通話装置を装着した状態を示す実施例で、(a)装着状態を示す正面図、(b)通話装置のみの側面図である。
図2】本発明のMRI用通話装置のユニットのみの使用状態を示す概略図で、(a)は一方のヘッドホンユニットの断面を示してある。(b)はユニットのみの側面図である。
図3】本発明のMRI通話装置の動作を概念的に示す図で、(a)は装着状態を示す正面図、(b)はユニットのみの側面図である。
図4】本発明のMRI用通話装置をガントリー内で使用した状態を示す図である。
図5】本発明のMRI用通話装置のヘッドホンユニットをヘッドホンバンドから取り外す状態を示す実施例で(a)正面図、(b)側面図である。
図6】本発明のMRI用通話装置の特にヘッドホンの断面を示す側面図である。(a)(b)とも側断面図で状態の違いを示してある。
図7】本発明のMRI用通話装置をMRI内で使用した状態を示す図である。
図8】本発明のMRI用通話装置をMRI内で使用した場合の騒音の状態を示す図である。
図9】本発明のMRI用通話装置に用いる光センサーマイクの断面図である。
図10】本発明のMRI用通話装置を用いる光センサーユニットの断面図である。
図11】本発明のMRI用通話装置を用いる光センサーユニットと外部回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0036】
図1は本発明のMRI用通話装置を被験者が装着した状態を示す実施例で、(a)装着状態を示す正面図、(b)通話装置のみの側面図である。
図において、1はヘッドホンユニットでヘッドホンバンド3にヒンジ4を介して搖動自在に取り付けられているもので、左のヘッドホン1にはヘッドホンアーム5を介して光センサーマイクが取り付けられている。
【0037】
図2図1に示すMRI用通話装置のヘッドホンバンド3からヘッドホンユニット1等を外して被験者が装着した状態を示してあり、この状態でMRIのガントリー7に被験者6が入るもので、その状態を図4に示してある。
図2においては、ヘッドホンを装着することによってヘッドホンアーム5に取り付けられた光センサーマイク2がヘッドホンアーム5の弾性によって被験者6の顔の側面に当接することになり、被験者6の皮膚を通して被験者の発する音声をピックアップすることができるものである。
【0038】
図3図2のような装着状態の場合に音の方向を概念的に示したもので、ヘッドホン1は被験者6に向かって矢印の方向に音声が伝達され、光センサーマイク2は被験者6の内部から外に向かって矢印の方向に音が伝達される事を示し、それぞれの信号線1a、2aには信号線に対して矢印の方向に信号が伝達されるものである。
【0039】
図4は上記したようにガントリー7の内部に被験者6の頭部を入れ、検査を行っている状態を示す図である。このような使用状態の場合、ヘッドホン1とガントリー7が直接接触するようにすることもできるが、図に示すように吸音材8をヘッドホン1とガントリー7の間に介在させることによってガントリー7からヘッドホン1に直接伝達される振動を遮断することができるので、被験者6はより騒音の少ない再生音を聞くことができるようになる。
【0040】
図5はヘッドホンバンド3からヘッドホンユニット1を着脱する状態を示すもので、ヘッドホンバンド3の両側の端部は図に示すように二股に分かれ、それぞれの端部にC字状の嵌合部3a、3bが形成されている。
一方、ヘッドホンユニット1の両側面には円筒状の突起4a、4bが設けられており、ヘッドホンバンドのC字状の嵌合部3a、3b内に嵌入することによって、突起4a、4bが嵌合部3a、3b内で回転することにより、ヘッドホンユニット1がそれぞれ自由に搖動するものである。
【0041】
次に図6(a)に示すヘッドホン1の断面図に基づき、ヘッドホンの構造について説明する。
111はセラミック振動素子で、その前面(音の放射方向)に非磁性材料である樹脂やアルミで形成された振動板112が一体に接着されている。
113は吸音材から成るヘッドホンの構造体で、その前面にはドーナツ状の吸音材114が一体に形成されており、更にその前面に設けられた内側の円の経が吸音材114よりも小さく形成された吸音材115が配置され、吸音材113、114、115によってセラミック振動子111と振動板112が設置されるとともに、聴取者の耳殻が入る音響的な空間Sを構成するものである。空間Sは吸音材によって形成されている事により、被験者が装着したときに被験者の耳を吸音材で覆う事になり、MRIの騒音が被験者の耳に到達するのを効果的に防止することができるものである。
【0042】
セラミック振動子111の背面は吸音材113の内側の前面に接着剤などにより固定されるものであり、図示していないが、被験者がこのヘッドホン1を装着したときに、振動板112は被験者の耳殻の近傍に配置されるような位置に空間Sが構成されており、振動板112が耳殻に接触する場合でも問題なく音声を被験者に伝達できるものである。
構造体である吸音材113の背面には、非磁性材料のプラスチックなどの可撓性を有する素材で形成されたヘッドホンアーム5が一体に接着されており、ヘッドホンアーム5はヘッドホン1の外部にまで延長されていて、ヘッドホンアーム5は被験者の顔に沿うように顔の方向に曲げられて下方に伸びている。
【0043】
ヘッドホンアーム5の先端付近には図に示すように光センサーマイク2が装着され、被験者の顔に接触して被験者の発する音声をピックアップするように構成されているものである。ヘッドホンアーム5は可撓性を有する素材で形成されていることにより、その曲げ角を設定することにより、ヘッドホンアーム5の撓みと弾性により、被験者の顔の大きさに関わりなく、どのような被験者の顔にもフィットするように構成するものである。
ヘッドホン1のヘッドホンアーム5の更に背面には、MRIの騒音をより効果的に防止するために更に吸音材116が一体に設けられており、更にその外側にはヘッドホン1にヒンジ4などを取り付ける場合全体を覆うようなカバー117が設けられている。
【0044】
この実施例では、吸音材113、114,115によって振動板が配置される音響的な空間Sを形成したが、一つの吸音材によって空間Sを構成するようにしても良い事はもちろんであり、それぞれの吸音材は複数の吸音特性の異なる素材の組み合わせによって効果的に騒音を遮断するようにしても良く、適宜追加しても良いことはもちろんである。
【0045】
図6(a)(b)に示すものは、この発明におけるMRI用通話装置が被験者に装着された場合の被験者の顔の大きさなどの個体差が有る場合の状況を示すもので、太い実線で示したXは顔の輪郭の仮想線である。
図6(a)は比較的顔の大きい人を仮想線Xで示して有り、図6(b)は比較的顔の細い人を示すものである。
図から分かるように、被験者の顔の大きい、細いなどに合わせて図6(a)は顔の大きい人であるから光センサーマイク2が取り付けられたヘッドホンアーム5の角度θが浅く、図6(b)は顔の細い人であるから角度θが大きくなるものである。このような被験者の顔の個体差については、ヘッドホンアーム5の弾性によってそれぞれに適応するように構成したものである。
【0046】
図7は本発明のMRI用通話装置がMRIに使われた場合を示す図で、シールド隔壁9を介して左側がMRIが置かれたMRI室で、右側が医師などの検査を行う人が居る操作室であり、MRI10の移動ベッド11に寝た被験者6が頭部にヘッドホン1及び光センサーマイク2を装着してガントリー7内部に入った状態を示している。この状態で被験者6は移動ベッド11と共にMRI10内部に入って画像を撮影するものであるが、この場合被験者に対しては操作室からマイク14aを通して医師などが指示を与えると、入力制御装置13を通して被験者6のヘッドホン1に音声が伝達されるものである。
また、被験者6がMRI内の狭い空間に挿入される事でストレスを感じたような場合で医師に検査の中断などを依頼したい場合に、マイク2を通して話すことにより、操作室のスピーカ12から音声で操作室に伝達することができるものである。
説明は省略するが、操作室からは、被験者の心を落ち着かせるために、14bに示すように音楽や色々なソースを被験者に送る事が出来るようになっているものである。
【0047】
図8に示すものは、MRI10の内部に被験者が入った場合にどのような騒音に曝されるかを視覚的に表したもので、被験者の周辺全体から騒音が被験者に降りかかるもので、その状態を矢印で概念的に示したものである。
【0048】
図9は本発明に用いる光センサーマイク2の横断面図を示したもので、22は光センサーユニットで、非磁性体で有底円筒状に非磁性材料で形成された音響キャビティ23の内部に装着され、光ファイバー222、223によって音響キャビティ23の外部に信号を送出できるように構成されている。
音響キャビティ23の端面には、音響キャビティ23の端面全体を覆うように、非磁性体のアルミやプラスチックなどの可撓性材料で形成された振動板24が張られている。
音響キャビティ23の内部には、光センサーユニット22を固定するための吸音材から成る取り付け部材28が設けられており、光センサーユニット22がその内部に埋め込まれている。
【0049】
取り付け部材28と振動板24の間には、空間27が形成されており、その空間27は光センサーユニット22の端部まで連続しており、光センサーユニット22の空間27に露出しているダイアフラム224に空気振動が伝達されるように構成されている。
また、音響キャビティ23の外側は、吸音材25と26に覆われており、外部からの騒音を遮断するものである。吸音材25と26は非磁性体で形成されており、吸音特性が同じものを2枚重ねても良いが、吸音特性が異なるものを組み合わせて騒音のエネルギーの高い部分を吸収するようにして、光センサーマイクに飛び込む騒音を効果的に減らす事もできるものである。
【0050】
図10に示すものは光センサーユニット22の概略的な横断面図で、円筒状のケース22aの端面にフランジ部22bを形成し、フランジ部22bにアルミなどで形成されたダイアフラム224が張られている。ケース内部には光ファイバー222、223が外部から挿入されており、固定部材225に装着されている。光ファイバー222の端面からレーザー光Fが振動板の中央に当てられるように構成されており、ダイアフラム224で反射したレーザー光Rは光ファイバー223に入射するように構成されている。
次に、この光センサーマイク2の動作について説明する。
このように構成された光センサーマイク2は、振動板24が被験者の皮膚に接触するか近傍に置かれることにより振動すると、その振動が音響キャビティ内の空間27の空気を振動させることになり、空間27の空気振動は、光センサーユニット22のダイアフラム224を振動させることになる。
【0051】
ダイアフラム224の振動は、その背面に照射されたレーザー光Fを変調することになり、反射したレーザー光Rはダイアフラム224の振動で変調された光が送出されることになる。
この反射したレーザー光Rを図11に示すように、制御室内の光変換素子30に供給することにより、音声信号に復調し、音声増幅器32、スピーカ制御部34を通して操作室のモニタースピーカ35から音声として出力するものである。
図11において、29は光発行素子で31は光制御部、33は電源部、36は電源プラグである。
このような本発明の光センサーマイク2は、振動板24の振動が色々な振動成分を含んでいるとしても、光センサーユニット22内のレーザー光はダイアフラム224の1点で反射することによって、エネルギーの大きな部分の1点における振動のみを検知する事になるため、被験者の音声のみを効率的にピックアップできる事になるから、再生音の明瞭度が向上し、クリアーな音声としてモニタースピーカ35によって再生されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本、発明はMRI装置等の高騒音下で被験者と検査をする医師などとの間で交信が必要な場合に最適であり、MRI等を製造する産業等に利用することができるものである。
【符号の説明】
【0053】
1:ヘッドホンユニット
2:光センサーマイク
3:ヘッドホンバンド
4:ヒンジ
5:ヘッドホンアーム
6:被験者
7:ガントリー
8:吸音材
9:シールド隔壁
10:MRI
11:移動ベッド
12:スピーカ
13:入力制御装置
14a:マイク
22:光センサーユニット
23:音響キャビティ
24:振動板
25:吸音材
26:吸音材
27:空間
28:取り付け部材
29:光発行素子
30:光信号変換素子
31:光制御部
32:音声増幅器
33:電源部
34:スピーカ制御部
35:操作室モニタースピーカ
36:電源プラグ
111:セラミック振動子
112:振動板
113〜116:吸音材
222:光ファイバー
223:光ファイバー
224:ダイアフラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11