【実施例】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明のインナーイヤホンの実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されないものとする。
図1は本発明のインナーイヤホンの実施例で基本形を示す第一の実施例であり、(A)は正面図、(B)は側断面図である。
ケース1は断面L字型の円筒状のパイプであり一方は他方より段階的に細くなるように形成して有る。
【0021】
2は圧電バイモルフ素子や圧電アクチュエータ素子等で構成される振動素子2と、その振動素子2と一体に接着などの方法で張り付けられた振動板3からなる構造体である。振動板は、紙や樹脂などの材料からなり、振動素子2の振動を増強するものである。
この振動素子2と振動板3からなる構造体は、一端をケースの細い方の一方の端部に弾性体からなる共振止め8によって固定され、他端はケース1内の空間である音響キャビティー1aにケース1の内壁に接触しないように配置されており、振動素子2と振動板3からなる構造物のカンチレバー状に自由に振動し得るように構成された端部は、ケース1の端部から挿入された中空のパイプからなる振動管4の端部に接着されている。
【0022】
振動管4はプラスチックなどのパイプから構成されており、ケース1内の端部を振動板3と振動素子2からなる構造体と接着されていることにより、振動するもので、ケース1との間に防振材7を介してケース1に保持されていることによって、振動管4は空気振動によって音を放出するとともに、振動管4自体の振動を骨伝導(軟骨伝導)によって直接耳に伝えるものである。
【0023】
6は振動管4のケース1の外部に突出した部分に装着され、イヤホンが外耳道に挿入されたときにソフトな感触を持って装着されるようにするシリコンチューブなどの弾性材によって構成されている耳栓で、その中央に振動管7の中空部5と連通する放音口6aを有しており、放音口6aによって振動管7に装着されているものである。
耳栓6は音響的には雑音となる高域のホワイトノイズを吸収することから音質的にも重要なもので、且つMRIの騒音下では必須のものである。
9は振動子に信号を供給するリード線で、一端を振動子2に電気的に結合され、音響機器などから音楽等の電気信号を振動素子2に供給するものである。リード線9と振動素子2の接続部付近は、ウレタン等の吸音材から成る共振止め8でケースの振動を振動素子2に伝わることが無いようにケース1から音響的にシールドされた状態で固定されるものである。
【0024】
このような構成において、振動素子2に電気信号を供給すると、振動素子2は電気信号に応じて振動板と一体として振動し、端部が結合された振動管4を振動させるものである。
この実施例においては、上記のように構成したことにより、イヤホンを外耳道に挿入した場合、耳栓6が外耳道9に接触することによって振動管4の振動が外耳道を通じて聴覚器官に骨伝導(軟骨伝導)によって伝達される(
図2のY方向)とともに、振動管3自体の振動によって発生する空気の振動が放音口を通して鼓膜に伝達され(
図2のX方向)、空気振動と骨伝導(軟骨伝導)によって音声として聴取者に聞こえるものである。
【0025】
本発明においては、振動素子2及び振動板3の構造体に比べて振動管4の体積や質量が大きい事により振動体が発する空気振動はわずかであるが、振動管4の振動は骨伝導としても聞くことができるので、鼓膜に与える音圧が少なく、疲労等が極めて少なくてすむもので、長時間使用しても疲労することが無いイヤホンを提供することができる。
【0026】
また、本発明においては、振動素子2及び振動板3の一端をケース1端部付近に固定し、固定部分以外は空間に位置するようなカンチレバー構造とし、自由端に振動管4の末端を結合したことにより、振動素子2の振動エネルギーを有効に活用することができ、効率よく電気信号を音声信号に変換することができるものである。
【0027】
図2に示すものは、
図1に示す実施例のケース1に空気穴10を設けたもので、空気穴10によってケース1の内部と外部を空間的に連通させたことにより、振動素子2及び振動板3からなる構造体の振動が、空気の粘性に左右されることなく振動することができるようになるものであるから、より音響変換効率の良いイヤホンを提供することができるものである。
【0028】
図3に示すものは、本発明のインナーイヤー型イヤホンをMRIで検査を受ける人に使用した場合に、イヤホンを装着した後にガントリー内に被験者の頭部を挿入することになるので、イヤホンを正しく装着したとしても、ガントリー内に頭部を挿入するときにイヤホンがずれて、MRIの騒音が隙間を通して被験者の耳に入ってしまう不具合を改善するためのずれ止め板11で有って、
図3に示すような平板部11aに断面円弧状が向かい合う形に配置された弾性を有する装着部11bを設け、
図4に示すように、イヤホンのケース1を装着部11bに挿入することによってイヤホンに取り付けるものである。
【0029】
図5には本発明のイヤホンを人の耳に装着した場合の写真を示すもので、ずれ止め板11の平板部11aの平面が頬に当節するようになり、イヤホンがずれたり、浮き上がってイヤホンと耳との間に隙間が生じたりすることを防止することができるものである。
【0030】
したがって、MRIが作動しているときのものすごい騒音の中でこのイヤホンを装着しても、吸音材から構成された耳栓6によってMRIの騒音が耳に到達することを防止できるものであり、同時にイヤホンからの音声は振動管4の中空部5から耳栓6の放音口6aを通して聞くことができるとともに、ケース1及び耳栓6を通して直接耳に振動として伝えることができるものであるから、空気振動の音声のみならず骨伝導(軟骨伝導)によっても音楽などを聞くことができ、音質的にも良いイヤホンを提供できるものである。
【0031】
本発明においては、振動管4の材質をプラスチックで説明したが、金属などに変えるなどによって、イヤホンの音質を変えることも任意に変更できるものである。
また、振動管4の中空部5の内径を変更又は断面形状を変更することによって音質を変更することができることはもちろんである。
【0032】
さらに、耳栓6の形状を変えたり、材質をより吸音性の高いものにすることによって、MRI内部の騒音をさらに防止するようにしたり、装着感をより良好なものにすることももちろんである。