特許第6471393号(P6471393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471393
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】インナーイヤー型イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20190207BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20190207BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   H04R1/00 317
   A61B5/055 390
   H04R1/10 104Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-210012(P2016-210012)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-64258(P2018-64258A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501494230
【氏名又は名称】小林 興弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 興弘
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−053640(JP,A)
【文献】 特開2015−109589(JP,A)
【文献】 特開2009−232443(JP,A)
【文献】 特開2014−107828(JP,A)
【文献】 特開2014−146949(JP,A)
【文献】 特開2015−061158(JP,A)
【文献】 実開昭55−144482(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/031238(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
H04R 1/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形L字型の円筒状のケースと、該ケースの一端に一方の端部を固定されケース内部に向かってカンチレバー状に配置した平板状の振動子と、該振動子と一体にされた振動板と、ケースの他方の端部から一部が突出するように挿入され、他方の端部がケースの内部で前記振動子および振動板の自由端部と一体に接合された中空のパイプ状の振動管と、前記振動管のケースから突出した部分に挿入され、中央に振動管の中空部と連通するように構成された空気穴を有する吸音材からなる耳栓と、前記振動子に電気信号を供給する信号線とから構成される事を特徴とするインナーイヤホン。
【請求項2】
振動管はプラスチックである硬質材で構成されていることを特徴とする請求項1記載のインナーイヤホン。
【請求項3】
振動管はケースとの間に振動防止材を介してケースに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のインナーイヤホン。
【請求項4】
振動子とケースの間に空間を有する事を特徴とする請求項1記載のインナーイヤホン。
【請求項5】
ケースの一部に空気穴を設けケース内部の振動子の振動効率を上げたことを特徴とする請求項1記載のインナーイヤホン。
【請求項6】
断面C型の装着部と、顔に当接する部分に平板状のずれ止め板を設けた固定ホルダをケースの基部付近に装着し、インナーイヤホンを耳に装着した場合に、装着位置のずれによる防音性能の低下を防止することを特徴とする請求項1記載のインナーイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高磁界を有するMRI等の騒音環境で良好な音声、音楽を聞くことが出来る騒音低減機能をもたせ音声の明瞭度及び音圧レベルを改善したMRIで使用することができるインナーイヤー型イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、外耳道に挿入されるシリコンゴムやウレタンゴム等の部材で成型された棒状部材13に積層型圧電アクチュエータ素子あるいは積層型バイモルフ振動子から成る振動体が埋設される構造が開示されており、外耳道に挿入されたときに棒状部材が耳栓として機能するとともに棒状部材の振動で音波を鼓膜に導き、棒状部材の振動を外耳道内壁近傍の軟骨を介して骨伝送として伝達するイヤホンが開示されている。
【0003】
しかしながら、このイヤホンは振動子が樹脂の中に埋設されているために振動が制限され、骨伝導としても吸音作用を持つ弾性体が介在しているために、音響変換効率や伝達効率が悪い等の欠点が有った。
【0004】
また、特許文献2には特許文献1の棒状部材に相当し、中央に貫通孔設けた特許文献1と同様な構成のイヤホンが開示されており、特許文献1の文献とは異なる点は、貫通孔を介して外部の音を聞くことができる構成であるが、特許文献1と構造が同様であるため、音響変換効率が悪く、音質を好みに応じて可変することは出来なかった。
【0005】
特許文献3には、一部が外耳道に挿入されるイヤーパッドと円筒状の筒体と筒体に一体的に設けられた延在部と、延在部に取り付けられた圧電素子が設けられて伝達部材が構成され、イヤーパッドと筒体に貫通する孔を設けて外部の音が聞くことができるようにし、イヤーパッドで音声振動を鼓膜に伝達するとともに、伝達部材で耳珠に当接させて耳珠を介して軟骨振動によっても音声を伝達しようとするものが開示されている。
【0006】
しかしながらこの特許文献3に開示されているものは、主に耳珠に当接させて再生音を伝達するものであり、外耳道内に弾性変形部材から成るイヤーパッド3と振動部分6が挿入されるものであるが、圧電素子が延在部2aに全体が貼り付けられているために変換効率が悪く、全体の素材を変える以外に音質を変える事もできない等の欠点が有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−232443号公報
【特許文献2】特開2014−107828号公報
【特許文献3】特開2014−146949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に記載されているイヤホンは、振動体が外耳道に挿入される部材に外耳道と並行して配置される構造で有ったために主として外耳道に対する軟骨振動主体の音響再生であり、振動子が樹脂の中に埋設されているために振動が制限され、骨伝導としても吸音作用を持つ弾性体を介しているために、音響変換効率や伝達効率が悪い等の欠点が有った。
【0009】
また、特許文献3に開示されているものは、空気伝搬による音声信号と伝達部材で耳珠に当接させて耳珠を介して軟骨振動によっても音声を伝達しようとするものであるが、圧電素子が延在部2aに全体が貼り付けられているために音響変換効率が悪かった。
【0010】
また、ハイファイと言われる高音質の殆どのイヤホンは磁性金属と磁気回路を用いて振動板を電気信号によって振動させるスピーカーで音波を外耳道に送り、音波によって鼓膜を振動させるものである。このために従来のイヤホンにおいては、いつも耳元に音源が有ることになり、鼓膜に対して強い音圧を加える事になる。
【0011】
その場合の音圧レベルは90dBから100dBに達する事があり、この音圧レベルはカード下で電車の通過音を聞く場合と同じレベルである。
従って、このようなイヤホンは、長時間聴取すると耳が疲労したり、また大音量で聞いたりすると、耳の機能にダメージを与えることから難聴になるなどの問題が有り、一度難聴になってしまうと元の状態には戻らないために、イヤホンで音楽を聴取することが多い若年層が難聴になることは大きな社会問題であった。
又、従来のイヤホンは素材としてスピーカーのフレームに金属材料を磁性回路には磁性金属等を使用し、これらの材料はMRIに使用した場合、MRIの高磁場により吸引され装置へ重大な損傷を与えるとともに、更には撮像画像への影響も無視できず問題とされている。
【0012】
このような従来のイヤホンの欠点を無くすために特許文献1から3に示すような骨伝導や軟骨伝導等が提供されているが、音響的に満足できるものは少なく、広帯域の再生すなわち高音質再生に向かない等の欠点が有った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は長時間聴取しても疲れにくく、骨伝導(軟骨伝導)型のイヤホンでは難しかった高音質のイヤホンを、非磁性圧電素子を用いて骨伝導を使いながら実現するとともに、難聴になりにくいイヤホンを提供するものであり、外形L字型の円筒状のケースと、該ケースの一端に一方の端部を固定されケース内部に向かってカンチレバー状に配置した平板状の振動素子と、該振動素子と一体に張り付けられた振動板と、ケースの他方の端部から一部が突出するように挿入され、他方の端部がケースの内部で前記振動素子及び振動板の自由端部と一体に接合された振動管と、振動管のケースから突出した部分を覆う耳栓とで構成され、前記振動素子に電気信号を供給する信号線を含めて全ての構成材料を非磁性材料で構成されたことを特徴とするインナーイヤホンである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインナーイヤー型イヤホンにおいては、振動素子及び振動板がケースの末端にカンチレバー状に固定され、振動素子及び振動板の周囲をパイプ状のケース内の空間に配置し、ケースに振動を伝えないようにして全ての振動エネルギーを振動管に伝えることができるようにした事により、ケースに伝わることによって減衰する振動が少なくなるもので、更に振動素子及び振動板の自由端を耳に対して振動を伝達する振動管のケース内の端部に取り付ける事により、振動素子及び振動板が振動する範囲を大きく取ることができることになり、振動効率が上がるとともに電気音響変換効率が上がる効果を有するものである。
【0015】
また、本発明のイヤホンにおいては、従来の骨伝導と比べて振動効率等が上がるのに加え、骨伝導のみならず振動素子及び振動板の振動によって空気振動をも生み出すことができ、その空気振動を振動管の中空部を通して直接耳に到達することができるようにするものであるから、音圧レベルが向上するとともに、振動管自体の振動を骨電動として耳に伝えることができるものであるから、騒音下でも明瞭に聞くことができるものである。
【0016】
更に本発明のイヤホンにおいては、上記のように振動素子及び振動板がケースの末端にカンチレバー状に固定され、その自由端を音声発生する振動管の端部に取り付ける事により、振動素子の振動範囲を大きく取ることができることになり、骨伝導のみならず振動体で空気振動も生み出すことができる構成にしたことにより、骨伝導の欠点である「イヤホンより大きなドライブパワーが必要」「大きな音量が得られない」「広帯域音の再生に向かない」「感音性難聴者では聞こえにくい」「補聴器では感度を上げるとハウリングが起き易い」等の欠点を改善することができるものである。
また、ケースにケース内部と外部を連通する空気穴を設けることにより、空気抵抗を受けることなく振動素子及び振動板が振動することができるために、よりイヤホン自体の効率が上がり、音質も向上するものである。
【0017】
更に外耳道に挿入された時に外耳道の内部に挿入される吸音材からなり中央に貫通した穴を有する耳栓を設けることにより、外耳道を防音材からなる耳栓で塞ぐ事により外部雑音を遮断するもので、音楽などをMRI内部の騒音下で聞いても騒音の少ない状態で聴取することができるようにしたものである。
【0018】
また、本発明においては非磁性体でイヤホンの全ての部分を構成することができるためにMRIのガントリー内(ヘッドコイル)で磁性体を使うことができない場所でも使用することができるものであり、更にガントリー内でイヤホンを耳に装着する際にイヤホンが、外れる場合があるが、本発明においてはイヤホンケースにずれ止め防止板を装着することにより、イヤホンと耳との隙間から騒音が侵入することがなく、MRIの内部で良好な使用リスニング環境を構築することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のインナーイヤホンを示すもので、(A)は正面図(B)は側断面図である。
図2】本発明のインナーイヤホンの他の実施例で、(A)は正面図、(B)は側断面図である。
図3】本発明のインナーイヤホンを装着した場合にずれるのを防止するずれ止め(A)が正面図、(B)が底面図である。
図4】本発明のインナーイヤホンにずれ止めを装着する概念図である。
図5】本発明のインナーイヤホンを人の耳に装着した状態を示す写真である。
図6】従来のイヤホンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明のインナーイヤホンの実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されないものとする。
図1は本発明のインナーイヤホンの実施例で基本形を示す第一の実施例であり、(A)は正面図、(B)は側断面図である。
ケース1は断面L字型の円筒状のパイプであり一方は他方より段階的に細くなるように形成して有る。
【0021】
2は圧電バイモルフ素子や圧電アクチュエータ素子等で構成される振動素子2と、その振動素子2と一体に接着などの方法で張り付けられた振動板3からなる構造体である。振動板は、紙や樹脂などの材料からなり、振動素子2の振動を増強するものである。
この振動素子2と振動板3からなる構造体は、一端をケースの細い方の一方の端部に弾性体からなる共振止め8によって固定され、他端はケース1内の空間である音響キャビティー1aにケース1の内壁に接触しないように配置されており、振動素子2と振動板3からなる構造物のカンチレバー状に自由に振動し得るように構成された端部は、ケース1の端部から挿入された中空のパイプからなる振動管4の端部に接着されている。
【0022】
振動管4はプラスチックなどのパイプから構成されており、ケース1内の端部を振動板3と振動素子2からなる構造体と接着されていることにより、振動するもので、ケース1との間に防振材7を介してケース1に保持されていることによって、振動管4は空気振動によって音を放出するとともに、振動管4自体の振動を骨伝導(軟骨伝導)によって直接耳に伝えるものである。
【0023】
6は振動管4のケース1の外部に突出した部分に装着され、イヤホンが外耳道に挿入されたときにソフトな感触を持って装着されるようにするシリコンチューブなどの弾性材によって構成されている耳栓で、その中央に振動管7の中空部5と連通する放音口6aを有しており、放音口6aによって振動管7に装着されているものである。
耳栓6は音響的には雑音となる高域のホワイトノイズを吸収することから音質的にも重要なもので、且つMRIの騒音下では必須のものである。
9は振動子に信号を供給するリード線で、一端を振動子2に電気的に結合され、音響機器などから音楽等の電気信号を振動素子2に供給するものである。リード線9と振動素子2の接続部付近は、ウレタン等の吸音材から成る共振止め8でケースの振動を振動素子2に伝わることが無いようにケース1から音響的にシールドされた状態で固定されるものである。
【0024】
このような構成において、振動素子2に電気信号を供給すると、振動素子2は電気信号に応じて振動板と一体として振動し、端部が結合された振動管4を振動させるものである。
この実施例においては、上記のように構成したことにより、イヤホンを外耳道に挿入した場合、耳栓6が外耳道9に接触することによって振動管4の振動が外耳道を通じて聴覚器官に骨伝導(軟骨伝導)によって伝達される(図2のY方向)とともに、振動管3自体の振動によって発生する空気の振動が放音口を通して鼓膜に伝達され(図2のX方向)、空気振動と骨伝導(軟骨伝導)によって音声として聴取者に聞こえるものである。
【0025】
本発明においては、振動素子2及び振動板3の構造体に比べて振動管4の体積や質量が大きい事により振動体が発する空気振動はわずかであるが、振動管4の振動は骨伝導としても聞くことができるので、鼓膜に与える音圧が少なく、疲労等が極めて少なくてすむもので、長時間使用しても疲労することが無いイヤホンを提供することができる。
【0026】
また、本発明においては、振動素子2及び振動板3の一端をケース1端部付近に固定し、固定部分以外は空間に位置するようなカンチレバー構造とし、自由端に振動管4の末端を結合したことにより、振動素子2の振動エネルギーを有効に活用することができ、効率よく電気信号を音声信号に変換することができるものである。
【0027】
図2に示すものは、図1に示す実施例のケース1に空気穴10を設けたもので、空気穴10によってケース1の内部と外部を空間的に連通させたことにより、振動素子2及び振動板3からなる構造体の振動が、空気の粘性に左右されることなく振動することができるようになるものであるから、より音響変換効率の良いイヤホンを提供することができるものである。
【0028】
図3に示すものは、本発明のインナーイヤー型イヤホンをMRIで検査を受ける人に使用した場合に、イヤホンを装着した後にガントリー内に被験者の頭部を挿入することになるので、イヤホンを正しく装着したとしても、ガントリー内に頭部を挿入するときにイヤホンがずれて、MRIの騒音が隙間を通して被験者の耳に入ってしまう不具合を改善するためのずれ止め板11で有って、図3に示すような平板部11aに断面円弧状が向かい合う形に配置された弾性を有する装着部11bを設け、図4に示すように、イヤホンのケース1を装着部11bに挿入することによってイヤホンに取り付けるものである。
【0029】
図5には本発明のイヤホンを人の耳に装着した場合の写真を示すもので、ずれ止め板11の平板部11aの平面が頬に当節するようになり、イヤホンがずれたり、浮き上がってイヤホンと耳との間に隙間が生じたりすることを防止することができるものである。
【0030】
したがって、MRIが作動しているときのものすごい騒音の中でこのイヤホンを装着しても、吸音材から構成された耳栓6によってMRIの騒音が耳に到達することを防止できるものであり、同時にイヤホンからの音声は振動管4の中空部5から耳栓6の放音口6aを通して聞くことができるとともに、ケース1及び耳栓6を通して直接耳に振動として伝えることができるものであるから、空気振動の音声のみならず骨伝導(軟骨伝導)によっても音楽などを聞くことができ、音質的にも良いイヤホンを提供できるものである。
【0031】
本発明においては、振動管4の材質をプラスチックで説明したが、金属などに変えるなどによって、イヤホンの音質を変えることも任意に変更できるものである。
また、振動管4の中空部5の内径を変更又は断面形状を変更することによって音質を変更することができることはもちろんである。
【0032】
さらに、耳栓6の形状を変えたり、材質をより吸音性の高いものにすることによって、MRI内部の騒音をさらに防止するようにしたり、装着感をより良好なものにすることももちろんである。
【符号の説明】
【0033】
1 ケース
2 振動素子
3 振動板
4 振動管
5 中空部
6 耳栓
6a 放音口
7 防振材
8 共振止め
9 信号線
10 空気穴
11 ずれ止め板
図1
図2
図3
図4
図5
図6