(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
歯周病、う蝕、口臭などの口腔疾患の原因となる口腔細菌によって形成される口腔バイオフィルムの除去には、歯ブラシを用いたブラッシングによる物理的な方法だけでなく、歯ブラシの届かない部位のバイオフィルムをも除去可能な化学的な方法が有用である。化学的に除去する方法としては、共凝集抑制作用のあるエリスリトールや、菌体外多糖類を分解する酵素としてプロテアーゼ、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等のグルカナーゼを用いる方法などが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記酵素のうちプロテアーゼは、口腔粘膜に対する刺激を有するものが多く、口腔用組成物に配合すると口腔粘膜刺激が強く発現し、また、酵素活性が失活し易いという問題もあり、このため、プロテアーゼを用いて口腔バイオフィルム除去に有効な使用に適する口腔製剤を得ることは難しく、実用化されるに至っていないのが現状であった。
【0004】
特許文献1(特表平9−507481号公報)には、歯表面の沈着着色物を除去するための組成物に、水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩からなる調製物に加えてプロテアーゼが配合され、実施例としてパパインが配合された歯を白くする練り歯磨き剤が記載され、また、特許文献2(特表2002−526029号公報)には、酵素及びポリアニオン性ドメインを含んでなる修飾された酵素が、歯垢の予防又は除去のために口腔組成物に使用し得ることが提案され、酵素としてプロテアーゼが例示されているが、具体的にプロテアーゼを使用した組成は記載がない。なお、これら特許文献1、2には、プロテアーゼの口腔粘膜刺激について言及がない。
【0005】
特許文献3(特開2011−126819号公報)には、ナットウエキスとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを併用して配合した口腔用組成物が提案され、これは、口腔粘膜刺激が少ないナットウエキスに特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を併用することによってプロテアーゼ活性を保持し、歯垢除去効果(洗口後の歯表面のツルツル感、スッキリ感)、口臭除去効果が優れ、口腔粘膜刺激が少ないが、口腔バイオフィルムに対する分散除去効果は十分でなく改善の余地があった。なお、
特許文献3の比較例4に示されたプロテアーゼ(500unit/g)を1質量%含有する洗口剤は口腔粘膜刺激が強く、使用に適さない。
【0006】
一方、ポリグルタミン酸又その塩は、唾液分泌促進作用を有することが知られており、唾液分泌促進剤として配合した口腔用組成物は、特許文献4、5(国際公開第2005/049050号、特開2009−96748号公報)に提案されている。しかし、ポリグルタミン酸又はその塩がプロテアーゼ由来の口腔粘膜刺激を抑制し、口腔バイオフィルム除去効果の向上に寄与することに関する言及はない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明は、(A)プロテアーゼと(B)ポリグルタミン酸又はその塩とを併用することを特徴とする。
【0015】
(A)成分のプロテアーゼとしては、植物に由来するものや微生物に由来するものが好ましい。具体的には、パパイア(Carica papaya)の果実に含まれるパパイン、キウイ(Actinidia deliciosa)の果実に含まれるアクチニジン、パイナップル(Ananas comosus)の果実や根茎に含まれるブロメライン、納豆菌(Bacillus natto)産生のナットウキナーゼ、アスペルギルス属(Aspergillus属)やバシルス属(Bacillus属)に属する細菌産生のプロテアーゼが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できるが、中でもパパイン、アクチニジン、ブロメライン、ナットウキナーゼが、高い口腔バイオフィルム除去効果を与えることから好ましく、特にパパイン、アクチニジン、ブロメラインが好ましい。とりわけ、パパインは、その単位質量あたりの活性が高く、比較的少量で口腔バイオフィルム除去効果を得ることができることから、より好適である。
【0016】
プロテアーゼとしては、その種類に応じ適宜な酵素活性を有するものを使用し得る。
例えば、パパインとしては、酵素活性が200,000〜2,500,000U/g、特に800,000U/gのもの、アクチニジンは、酵素活性が9,000〜210,000U/g、特に180,000U/gのもの、ブロメラインは、酵素活性が300,000〜500,000U/g、特に400,000U/gのもの、ナットウキナーゼは、酵素活性が1,000〜20,000U/g、特に20,000U/gのものを用いることができる。
【0017】
プロテアーゼの酵素活性値は、食品添加物公定書のパパインの項に記載の測定方法に従って測定することができる。当該測定方法の概要は、プロテアーゼがカゼインをどの程度消化できるか吸光度(275nm)により定量するというものであり、1分間にチロシン1μgに相当するアミノ酸を生成する酵素量が1単位(U)と定義される。なお、ナットウキナーゼでは、カゼインの代わりにフィブリンを用いて測定し、生成するフィブリン分解産物の吸光度(275nm)を1分間に0.01増加させる酵素量を1単位(U)と定義される。
【0018】
上記プロテアーゼは、市販されているものを使用することができる。パパインとしては、三菱化学フーズ株式会社製の精製パパイン、合同酒精株式会社製のパパイン、ヤクルト薬品工業株式会社製のパパイン Y−20、天野エンザイム株式会社製のパパイン W−40などがある。アクチニジンとしては、ビーエイチエヌ株式会社製のザクティナーゼなど、ブロメラインとしては合同酒精株式会社製のブロメラインなど、ナットウキナーゼとしては、株式会社日本生物科学研究所製の納豆菌培養エキスNSK−SDや大和薬品株式会社製の精製納豆菌培養物NKPCなどがある。アスペルギルス属細菌産生プロテアーゼとしては、三菱化学フーズ株式会社製のコクラーゼP、バシルス属細菌産生プロテアーゼとしては、ヤクルト薬品工業株式会社製のアロアーゼAP−10、天野エンザイム株式会社製のプロチン SD−NY10などが挙げられる。
【0019】
本発明の口腔用組成物において、(A)プロテアーゼの配合量は、組成物1gあたりの酵素活性値として好ましくは80〜40,000U/g、より好ましくは400〜40,000U/g、特に好ましくは400〜20,000U/gである。(A)成分の配合量が多いほど、口腔バイオフィルム除去効果が高まり、80U/g以上であると、十分な口腔バイオフィルム除去効果を得ることができ、40,000U/g以下であると、口腔粘膜刺激が強くなることがなく、十分な刺激抑制効果が得られる。
【0020】
更に、プロテアーゼの組成物全体に対する配合量は、プロテアーゼの種類、その酵素活性値に応じて適宜調整することができる。
例えば、(A)成分としてプロテアーゼを用いる場合、その配合量は、800,000単位(U/g)品として0.01〜5%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは0.05〜2.5%である。
(A)成分としてアクチニジンを用いる場合、その配合量は、180,000単位(U/g)品として0.04〜22.2%が好ましく、より好ましくは0.22〜11.1%である。
(A)成分としてブロメラインを用いる場合、その配合量は、400,000単位(U/g)品として0.02〜10%が好ましく、より好ましくは0.1〜5%である。
(A)成分としてナットウキナーゼを用いる場合、その配合量は、20,000単位(U/g)品として0.4%以上が好ましく、より好ましくは2%以上である。
【0021】
(B)成分のポリグルタミン酸又はその塩としては、化学的に公知の方法で合成されるポリグルタミン酸、あるいは納豆菌等の各種γ−ポリグルタミン酸産生菌株からの発酵生産物として得られる天然のポリグルタミン酸や、これらの塩を使用することができ、市販品を使用してもよい。これらの中でも、口腔用組成物に配合する点から天然のポリグルタミン酸又はその塩が好ましく、工業的に大量生産できるγ−ポリグルタミン酸又はその塩が最も好適である。なお、ポリグルタミン酸は、D体でもL体でもよく、D体及びL体が混合していてもよい。
【0022】
ポリグルタミン酸は、水に不溶であるが、塩にすることで水溶性となる。この場合、ポリグルタミン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩などが挙げられ、口腔用組成物として使用できるものならば特に制限はない。なお、塩の中和度は、その1%濃度の水溶液がpH1〜14の範囲で目的に応じて任意に選ぶことができる。
【0023】
ポリグルタミン酸又はその塩としては、特に下記式(1)で示されるポリグルタミン酸ナトリウムが好適である。
[−NH−CH(COONa)−CH
2CH
2−CO−]
n (1)
(式中、n=66〜33,112、好ましくは331〜13,245の整数。)
【0024】
ポリグルタミン酸又はその塩の粘度は、特に限定されないが、後述するBL型粘度計を用いた測定法による25℃における4%水溶液の粘度が好ましくは10〜200mPa・s、より好ましくは30〜120mPa・sの範囲である。製品の種類に応じて各種粘度のものを使用できる。
【0025】
粘度測定法
200mLビーカーに水96gをとり、スターラーで撹拌しながらこれにγ−ポリグルタミン酸又はその塩を4.0g加えて完全に溶解させる。次に、25℃恒温水槽中に1時間静置後、BL型粘度計を用いて正確に1分後の粘度を測定する。
BL型粘度計:東京計器 B型粘度計 型式BL
ローター:No.2
回転数:60rpm
測定温度:25℃
【0026】
このようなポリグルタミン酸又はその塩としては、具体的に市販されている明治フードマテリアル社製のポリグルタミン酸、東洋紡社製のアミノピジェール、一丸ファルコス社製のバイオPGA、味の素社製のカルテイクなどを用いることができる。
【0027】
本発明の口腔用組成物において、(B)ポリグルタミン酸又はその塩の配合量は、組成物全体の0.025〜5%が好ましく、より好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.1〜2.5%である。配合量が多いほど口腔バイオフィルム除去効果、唾液分泌促進効果が高まり、また、口腔粘膜刺激抑制効果が向上し、0.025%以上であると十分な口腔バイオフィルム除去効果、唾液分泌促進効果、口腔粘膜刺激抑制効果が得られる。5%以下であると、口腔バイオフィルム除去効果が低下することがなく、好適である。
【0028】
本発明においては、(A)成分と(B)成分とを、特に両成分の配合量の比率が適切な割合となるように組み合わせて配合すると、口腔バイオフィルム除去効果がさらに増強し、唾液分泌促進効果も向上し、かつ口腔粘膜刺激をより抑制できることから好適である。
この場合、(A)成分の組成物1gあたりの酵素活性(a)(U/g)と(B)成分の組成物全体に対する配合量(b)(%)との比率を示す(a)/(b)が、好ましくは400〜200,000、より好ましくは1,000〜100,000であり、とりわけ口腔粘膜刺激を好適に抑制し高い口腔バイオフィルム除去効果を得るという点から1,000〜40,000であることが好ましい。
【0029】
更に、プロテアーゼの種類や酵素活性値に応じて、上記したプロテアーゼの組成物全体に対する配合量と同様に、(A)及び(B)成分の配合割合も適宜調整できる。
例えば、(A)成分としてパパイン(A1)を用いる場合は、パパインの800,000単位(U/g)品としての配合量と(B)成分の配合量との比率を示す(A1)/(B)が、質量比として0.05〜25、特に0.1〜13、とりわけ0.1〜5が好ましい。
(A)成分としてアクチニジン(A2)を用いる場合は、アクチニジンの180,000単位(U/g)品としての配合量と(B)成分の配合量との比率を示す(A2)/(B)が、質量比として0.22〜111、特に0.44〜56が好ましい。
(A)成分としてブロメライン(A3)を用いる場合は、ブロメラインの400,000単位(U/g)品としての配合量と(B)成分の配合量との比率を示す(A3)/(B)が、質量比として0.1〜50、特に0.2〜25が好ましい。
(A)成分としてナットウキナーゼ(A4)を用いる場合は、ナットウキナーゼの20,000単位(U/g)品としての配合量と(B)成分の配合量との比率を示す(A4)/(B)が、質量比として2〜1,000、特に4〜500が好ましい。
(A)成分と(B)成分との配合割合が上記範囲内であると、口腔バイオフィルム除去効果及び口腔粘膜刺激抑制効果がより優れる。比率が小さすぎると十分な口腔バイオフィルム除去効果が得られない場合があり、大きすぎると口腔粘膜刺激抑制効果が低下して満足に得られない場合や、唾液分泌促進効果が満足に得られない場合がある。
【0030】
本発明の口腔用組成物は、液体、ペースト状、固体などの形態にして、洗口剤、マウススプレー、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤などの各種剤型に調製し得るが、特に液体又はペースト状の形態で、洗口剤、マウススプレー、練歯磨、液状歯磨、液体歯磨等の歯磨剤として好適に調製できる。この場合、上記成分に加えて、その剤型に応じた適宜な成分を本発明の効果を妨げない範囲で任意に配合することができる。歯磨剤には、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、更に必要に応じて香料、甘味剤、着色剤、防腐剤、その他の有効成分などを配合できる。洗口剤等の液体製剤には、湿潤剤、界面活性剤、溶剤、更に必要に応じて香料、甘味剤、防腐剤、緩衝剤、有効成分などを配合できる。
【0031】
研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤などが挙げられる。研磨剤の配合量は、通常、0〜50%、特に2〜40%、とりわけ10〜30%である。
【0032】
粘稠剤(湿潤剤)としては、ソルビット、キシリット等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。配合量は、通常、5〜50%、特に20〜45%である。
【0033】
粘結剤としては、有機又は無機粘結剤を配合できる。具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、キサンタンガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの有機粘結剤、ゲル化性シリカ、ゲル化性アルミニウムシリカ等の無機粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、0〜10%であり、配合する場合は0.1〜10%、特に0.5〜5%である。
【0034】
界面活性剤としては、一般的に用いられるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、N−ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アルキル−N−アシルタウリン塩、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン系、イミダゾリン系が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、通常、0〜10%、特に0.01〜5%である。
【0035】
香料としては、通常用いられる周知の香料を適宜配合することができる。例えば、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、組成物中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成物中に0.1〜2%使用するのが好ましい。
【0036】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム等が挙げられ、着色剤としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
防腐剤としては、メチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステルなどが挙げられる。
【0037】
有効成分としては、通常配合される公知のもの、例えばイソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸などの抗炎症剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ等のプロテアーゼ以外の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、水溶性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等の無機塩類、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等のビタミン類、ゼオライト、アズレン、ジヒドロコレステロール、クロロフィル、トウキ軟エキス、タイム、オウゴン、チョウジ等の植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤などが挙げられる。なお、上記有効成分は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量配合することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0039】
[実施例、比較例]
表1〜3に示す口腔用組成物(洗口剤)を常法によって調製し、これを被検液として下記方法で評価した。結果を表1〜3に併記した。
【0040】
(1)口腔バイオフィルム除去効果の評価方法
下記方法で口腔細菌の除去効果を評価し、その結果から口腔バイオフィルム除去効果を判定した。
口腔細菌の除去効果は、被験者10名について次の手順で測定した。
被検液10mLを口にふくみ、30秒間洗口して吐き出した洗口液を、50mLの遠沈管に採取した。更に、蒸留水10mLを口にふくみ、30秒間洗口して吐き出し、これを同じ遠沈管に採取し、洗口吐出液を得た。
このようにして採取して得た洗口吐出液1mLを10,000Gで10分間遠心した後、上清を廃棄し、洗口により除去された口腔細菌からなるペレットを得た。このペレットから口腔細菌のDNAを抽出し、リアルタイムPCR法(Microbiology,148,257−266,2002)によって細菌数を定量し、これを洗口により除去された細菌数とした。なお、この方法によれば、生菌に加えて死滅菌も含めた全除去細菌数を定量することができる。
口腔細菌の除去効果は、コントロールとして生理食塩水で洗口した時の除去された細菌数を100%とし、コントロールに対する除去細菌数の比率(細菌除去比率(%))を算出し、10名の平均値を求めて下記基準に則り判定し、この結果から口腔バイオフィルム除去効果を評価した。なお、コントロールについては、被検液の代わりに生理食塩水を用いる以外は上記と同様にして細菌数を定量し、これを洗口により除去された細菌数とした。
判定結果が◎及び○のものを口腔バイオフィルム除去効果が高く合格であるとした。
判定基準
◎:400%≦細菌除去比率の平均値
○:200%≦細菌除去比率の平均値<400%
△:100%<細菌除去比率の平均値<200%
×:細菌除去比率の平均値≦100%
【0041】
(2)唾液分泌促進効果の評価方法
試験前日に激しい運動等をしたことで口渇状態を主訴する10名の被験者について、次の手順で唾液分泌量を測定した。
まず、生理食塩水20mLで30秒間洗口して吐き出した後、唾液を吐き出して採取容器に採取することを繰り返し行った。洗口してから30分後までに採取した唾液量を測定し、これを、コントロールの唾液分泌量とした。その後、被検液を用いて同様にして洗口した後に唾液を採取し、唾液量を測定し、これを被検液洗口後の唾液分泌量とした。
唾液分泌促進効果は、被験者10名について、それぞれのコントロールの唾液分泌量を100%とし、コントロールに対する被検液洗口後の唾液分泌量の増加率(%)を算出し、10名の平均増加率を求めて下記評価基準に則り判定した。
判定結果が○及び◎のものを、唾液分泌促進効果が高く合格であるとした。
判定基準
◎:150%≦唾液分泌量の平均増加率
○:120%≦唾液分泌量の平均増加率<150%
△:100%<唾液分泌量の平均増加率<120%
×:唾液分泌量の平均増加率≦100%
【0042】
(3)口腔粘膜刺激抑制効果の評価方法
被検液20mLを30秒間洗口した後の粘膜刺激について、下記判定基準で被験者10名が官能評価し、平均値を求め、下記評価基準に基づき評価した。
判定結果が◎及び○のものを、口腔粘膜刺激の抑制効果が高く合格であるとした。
判定基準
4:刺激が十分に抑えられ、刺激を全く感じない
3:刺激が抑えられ、刺激をほとんど感じない
2:刺激がほとんど抑えられておらず、弱い刺激を感じる
1:刺激が抑えられず、刺激を強く感じる
評価基準
◎:平均値が3.5点以上4点以下
○:平均値が3点以上3.5点未満
△:平均値が2点以上3点未満
×:平均値が1点以上2点未満
【0043】
【表1】
*;((A)成分の組成物1gあたりの酵素活性(U/g))/((B)成分の組成物全体に対する配合量(%))(以下、同様。)
**;口腔粘膜刺激がなく、刺激を全く感じなかった。
【0044】
表1に示すように、(B)成分を含有しない比較例1は、(A)成分を含んでいても口腔バイオフィルム除去効果が劣り、唾液分泌促進効果がなく、また、口腔粘膜刺激が強かった。(A)成分を含有しない比較例2は、(B)成分を含んでいても口腔バイオフィルム除去効果がなく、唾液分泌促進効果が劣ったが、(A)成分を含まないため口腔粘膜刺激はなかった。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
使用原料の詳細を下記に示す。
(A)成分
パパイン:精製パパイン(三菱化学フーズ株式会社、酵素活性値800,000U/g
)
ブロメライン:ブロメライン(合同酒精株式会社、酵素活性値400,000U/g)
アクチニジン:ザクティナーゼ(ビーエイチエヌ株式会社、酵素活性値180,000
U/g)
ナットウキナーゼ:納豆菌培養エキスNSK−SD(株式会社日本生物科学研究所、酵
素活性値20,000U/g)
(B)成分
ポリグルタミン酸ナトリウム:
γ−ポリグルタミン酸ナトリウム(株式会社明治フードマテリアル)
BL型粘度計を用いて上記と同様の方法で測定した25℃における4%水溶液の粘度
は85mPa・s
【0048】
次に、処方例を示す。なお、使用原料は上記と同様である。下記の処方例は、いずれも口腔バイオフィルム除去効果、唾液分泌促進効果が優れ、口腔粘膜刺激が抑えられ使用感も良好であった。
【0049】
[処方例1]練歯磨
(A)パパイン(酵素活性値800,000U/g) 0.5%
(B)γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
70%ソルビット液 40
プロピレングリコール 3
アルギン酸ナトリウム 0.6
キサンタンガム 0.6
サッカリンナトリウム 0.2
無水ケイ酸 22
香料 1.2
水 バランス
計 100.0%
(a)/(b);8,000
【0050】
[処方例2]練歯磨
(A)パパイン(酵素活性値800,000U/g) 0.1%
(B)γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 1.3
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
70%ソルビット液 40
プロピレングリコール 3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.1
ポリアクリル酸ナトリウム 0.5
サッカリンナトリウム 0.2
フッ化ナトリウム 0.21
リン酸カルシウム 25
無水ケイ酸 5.0
香料 1.2
水 バランス
計 100.0%
(a)/(b);4,000