(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、本発明の
ダイレクトブローボトル(以下、単にプラスチック容器と呼ぶことがある)においては、成形直後の容器10(以下、ブランク容器と呼ぶことがある)の外面に保護膜20が形成されている。
【0015】
かかる容器において、ブランク容器10は、保護膜20の下地となる外面が透明樹脂により形成されていれば、透明樹脂を用いて形成されている限り、着色剤の配合により着色されていてもよいし、着色剤が配合されておらず、未着色の層であってもよい。即ち、透明樹脂により外面が形成されている場合、には、一般に、容器同士の接触や搬送部材(各種ベルトやスクリュー、シュータなど)等との接触により、擦れ傷や引っ掻き傷が付き易く、このため、本発明にしたがって、保護膜20を設けることが必要となる。
【0016】
上記の透明樹脂としては、
共重合ポリエステル樹脂が使用される。
【0017】
共重合ポリエステル樹脂の例としては、エチレンテフタレート単位に少量のコポリエステル単位が導入されている共重合ポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0018】
尚、上記のコポリエステル形成用の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらジカルボン酸のアルキルエステル誘導体などのジカルボン酸成分;プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール成分を挙げることができる。
中でもテレフタル酸及びエチレングリコールを主モノマーとし、エチレングリコールをシクロヘキサンジメタノールに変換して共重合させたシクロヘキサンジメタノール系共重合が特に好適である。
【0019】
上記のブランク容器10の外面に設けられる保護膜20は、シリコーン油と界面活性剤とを含むエマルジョンを塗布することにより形成されるものであり、かかる保護膜20により、このブランク容器20は、優れた耐傷付き性と防汚性とを示すものである。
【0020】
本発明において、保護膜20中のシリコーン油は、特に滑り性を高め、動摩擦係数の低下に寄与するものであり、耐傷付き性を高めるための成分である。
【0021】
上記のようなシリコーン油としては、入手の容易さやコスト、エマルジョン化が容易であることなどの点で、ジメチルシリコーン油、フェニルメチルシリコーン油などが好適である。
【0022】
また、界面活性剤は、シリコーン油のエマルジョン化と共に、界面活性剤が有する帯電防止能を通じて防汚性を向上させるための成分であり、上記のシリコーン油100質量部当り
150〜350質量部の量で保護膜20中に含まれていることが重要である。界面活性剤の量が、上記範囲よりも少ない場合には、例えば、上記シリコーン油のエマルジョンを調製するには十分であるが、防汚性を向上させるには、不十分となってしまう。即ち、界面活性剤の帯電防止能が十分に発揮されず(界面活性剤による水分保持能が不十分となる)、この結果、雰囲気中の埃等の微粒子がブランク容器10の外面に付着し易くなってしまう。一方、界面活性剤の量が上記範囲よりも多いと、保護膜20がべた付いたものとなってしまい、ボトルを手にした場合の官能的に不快となる虞がある。
上記の説明から理解されるように、本発明において、保護膜20中に含まれる界面活性剤量は、通常のシリコーン油エマルジョン中に含まれる界面活性剤量よりもかなり多い。
【0023】
上述した界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系活性剤、両性界面活性剤の何れも使用可能であるが、特にシリコーン油に対する乳化作用やコスト、或いは防汚性等の観点から、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が好適である。
ノニオン系界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の脂肪酸系のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの高級アルコール系のもの、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのアルキルフェノール系のものが代表的であり、用いるシリコーン油の種類等に応じて、適度なHLB(親水性親油性バランス)のものを選択して使用すればよい。
また、アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム等の脂肪酸系のもの、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼン系のもの、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール系のもの、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等のα−オレフィン系のもの、アルキルスルホン酸ナトリウム等のn−パラフィン系のものなどが代表的である。
【0024】
上記のようなシリコーン油及び界面活性剤を含む保護膜20は、膜厚が、室温での乾燥基準で、10〜1000nmでブランク容器10の外面に形成されていることが望ましく、これにより、優れた防汚性と共に、例えば後述する方法で測定した動摩擦係数(23℃、50%RH)が1.5以下となり、優れた滑り性が発揮される。膜厚がこの範囲を下回ると滑り性が不足し耐傷付き性不良となる虞があり、この範囲を上回るとべたつく触感があり手触りが不快となる虞がある。膜厚は原子間力顕微鏡で保護膜有無の差を測定した値である。
【0025】
本発明において、上記の保護膜20は、先にも簡単に述べたように、上述した量でシリコーン油と界面活性剤とを含むエマルジョン塗布液を、成形直後のブランク容器10の外面にスプレー噴霧することにより形成されることが望ましい。
【0026】
このようなエマルジョン塗布液の水分量は、固形分濃度が1.0〜10.0質量%、特に2.0〜6.0質量%の範囲にあるように調整されることが望ましく、噴霧により、このような固形分濃度の保護膜20が形成されるように、噴霧するエマルジョンの固形分濃度や噴霧ノズルからの吐出圧力等が設定される。
このようなエマルジョン噴霧により保護膜20を形成する場合、特に乾燥工程が不要であり、室温での水分蒸発により固形分の保護膜20が形成されるため、ローコストで保護膜20を形成できるという利点があり、さらに、有機溶剤などを使用する必要もなく、環境不良を引き起こすこともない。
【0027】
上述した保護膜20を外面に有するブランク容器は、
特に、傷付きや埃の付着などにより汚れが問題となるダイレクトブローボトルの形態を有している。また、着色剤の使用により種々の色に加飾されていることが、本発明の利点を活かす上でより好適である。
【0028】
図2には、ブランク容器10が着色された形態のダイレクトブローボトルの代表的な層構造を示す。
かかる
図2を参照して、このボトル10は、大まかにいって、2つの形態に分類することができ、一つの形態は、
図2(a)に示されているように、外表面に着色剤(例えば有機或いは無機の顔料)が分散された着色樹脂層1が形成されており、もう一つの形態は、
図2(b)に示されているように、外表面には透明樹脂層2が形成されており、この透明樹脂層2の下側に着色剤が分散された着色樹脂層1が形成されている。何れの層構造においても、着色樹脂層1は、内容物と接触する内表面側に位置する内層3に隣接して形成される。
このように、何れの態様においても、着色樹脂層1による加飾がなされている。
【0029】
かかる
図2において、上記の着色樹脂層1は、ベースの樹脂(前述した透明樹脂)に着色剤を分散させたものであり、着色剤として、公知の有機或いは無機の顔料が使用されるが、本発明の効果を最大限に発揮させるためには、着色剤として金属顔料及び/又はパール顔料を用いることが最適である。即ち、金属顔料により、メタリック感が、パール顔料により、パール感が得られ、高級感が発揮される。このような高級感は、僅かな傷や汚れでも損なわれてしまうが、本発明では、このような僅かな傷や汚れを有効に抑制することができ、高級感を有効に維持することができる。
【0030】
金属顔料としては、金属光沢を発現するものであればよく、例えば、アルミ顔料、銅顔料、銅亜鉛(真鍮)顔料、銅錫(ブロンズ)顔料や、雲母等の表面をアルミ、酸化鉄、酸化チタン等でコートした光輝顔料などを使用することができるが、特に金属光沢という観点で、アルミ顔料やアルミ製光輝顔料が好適である。パール顔料としては、マイカ系光輝顔料、ガラス系光輝顔料等の光輝顔料等を好適であり、これらの顔料を1種又は2種以上を組合せて使用しても良い。
【0031】
本発明において、着色剤のベース樹脂への配合量は、その種類や色によっても異なるが、例えば上述した金属顔料及び/又はパール顔料を用いる場合は、ベース樹脂100質量部当り0.1〜10.0質量部の量で着色樹脂層1中に存在していることが、良好なメタリック感及び/又はパール感を与える上で好適である。
【0032】
尚、着色樹脂層1が
図2(a)のように、外表面に位置する場合には、耐傷付き性等の観点から、ベースの透明樹脂としてバージンのオレフィン系樹脂や結晶性の小さい共重合ポリエステルあるいは非晶性の共重合ポリエステルが好適である。
また、着色樹脂層1が
図2(b)のように、外表面を形成する透明樹脂層2の下側に位置する場合、着色樹脂層1のベース樹脂として、このダイレクトブローボトル10を成形する際に発生するバリ等のスクラップとバージンの樹脂(例えばオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂)と混合したリグラインドを用いることも可能である。
【0033】
尚、着色樹脂層1の厚みは、ボトルの大きさ等によって異なり、一概に規定することはできないが、着色剤による色調が十分に発現する程度の厚み、例えば10μm以上の範囲にあればよい。
【0034】
また、
図2(b)に示されているように、外表面の透明樹脂層2の下側に着色樹脂層1が形成されている場合においても、透明樹脂層2を形成する透明樹脂としては、
結晶性の小さい共重合ポリエステル樹脂あるいは非晶性の共重合ポリエステル樹脂が使用される。このような共重合ポリエステル樹脂は、溶融温度が低いため成形しやすく有利である。
【0035】
また、このような透明樹脂層2の厚みは、このダイレクトブローボトル10の大きさや要求される柔軟性、スクイズ性等によって適宜の範囲に設定することができるが、一般的には、10〜200μm程度の厚みに設定される。
【0036】
さらに、
図2(b)に示すように、外表面の透明樹脂層2の下側に着色樹脂層1が形成されている場合、透明樹脂層2と着色樹脂層1との接着性が乏しい場合には、適宜、接着樹脂層を間に介在させることもできる。
【0037】
このような接着樹脂層の形成に使用される接着剤樹脂は、それ自体公知であり、例えば、ポリオレフィン、エチレン・α−オレフィン共重合樹脂及びそれらの酸変性樹脂、オレフィンと酸の共重合樹脂、グリシジル基含有樹脂等が使用できる。また、接着性を向上させるために、それらの樹脂に公知の粘着付与剤を添加してもよい。
共重合体としては、ランダム、ブロック、グラフト等、どのような結合様式で製造されたものでも使用できる。酸変性樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、又はこれらの無水物でグラフト変性した樹脂が用いられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上のブレンド樹脂として、あるいは他樹脂とのブレンド樹脂として使用できる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂などがあげられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
また、接着樹脂層には、公知の添加物を添加してもよい。添加物としては、例えば、熱可塑性エラストマー、他の熱可塑性樹脂、ゴム樹脂、無機フィラー、顔料、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、アンチブロッキング剤などを使用できる。特に、ポリオレフィン樹脂(特にポリエチレン系樹脂)に粘着付与剤を添加した樹脂が好ましい。また、熱可塑性エラストマーは、層界面の凹凸の低減のため、スチレン系のエラストマーを使用することが好ましい。 かかる接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよく、一般的には、10〜200μm程度である。
【0038】
図2(a)及び
図2(b)の層構造において、内表面に面する内層3としては、この種のダイレクトブローボトルの成形に使用される公知の熱可塑性樹脂、例えば、前述したオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が使用される。
このような内層3は、複数の樹脂層からなる多層構造とすることも可能であり、例えば、ボトル10の内面に面していないことを条件として、このボトル10を成形する際に発生するバリ等のスクラップをバージンの樹脂と混合したリグラインド層を中間層として設けることもできる。
【0039】
さらに、内面に面していない中間層として、ガスバリア性樹脂層を設けることもできる。
このようなガスバリア性樹脂層は、形成するガスバリア性樹脂としては、例えば37℃−0%RHにおける酸素透過係数が5.5×10
−12cc・cm/cm
2・sec・cmHg以下の樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアミドが代表的であり、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体が好適である。
かかるエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物)としては、具体的には、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適に使用される。このエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと呼ぶことがある)は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール/水の重量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有している。
上記のガスバリア性樹脂層は、その優れた酸素バリア性が損なわれない限りにおいて、酸素バリア性樹脂に他の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
【0040】
さらに、内面に面していない中間層として、それ自体公知の酸素吸収性樹脂層を含んでいてもよい。この酸素吸収性樹脂層は、酸素バリア性を補足するものであり、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒を含む層であり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
【0041】
上記のような中間層として使用されるガスバリア性樹脂層や酸素吸収性樹脂層は、ボトル10の大きさや内容物の種類に応じて要求される酸素バリア性が発現する程度の厚みに設定されていればよく、また、ガスバリア性樹脂層と酸素吸収性樹脂層との両方を中間層として設けることもできる。
【0042】
また、上述したように内層3を多層構造とする場合において、互いに隣接する層同士の接着性が乏しい場合、或いは内層3と着色樹脂層1との接着性が乏しい場合には、間に前述した接着剤樹脂の層を介在させることもできる。
【0043】
上記のような内層3のトータル厚みは、その層構造や用いる樹脂の種類等やボトル10の大きさ(内容積)に応じて、ボトル10に要求される特性が発現するように設定されていればよい。
【0044】
上述した層構造を有するボトル10においては、これを構成する各層には、着色剤による色調が損なわれない限りにおいて、滑剤、各種改質剤、紫外線吸収剤等が配合されていてもよい。
【0045】
上述した種々の層構造を有する本発明のプラスチック容器は、成形・加飾後、前述した保護膜20を形成した後、輸送、保管等の工程を経て、ユーザーに販売され、購入したユーザーが内容物を充填した後、適宜、アルミ箔等のシール箔で口部を密封した後、さらにキャップ等により密封して一般の消費者に販売される。
尚、前述した保護膜20は、成膜された後、水分の蒸発による膜厚減少、或いは擦れ等によるシリコーン油や界面活性剤などの有効成分の脱離などを生じることがあるが、保護膜20の乾燥基準での初期量が前述した範囲に設定されていれば、ユーザーの使用時まで、耐傷付き性や防汚性を有効に確保できる。
【0046】
本発明のプラスチック容器は、耐傷付き性や防汚性に優れており、着色剤による加飾、特に金属顔料やパール顔料による加飾(メタリック感及び/又はパール感による加飾)を損なわずに維持することができるため、化粧品等の高価格製品に特に好適に適用される。
【実施例】
【0047】
本発明のプラスチック容器の優れた効果を、次の実験例により説明するが、以下の実験例は、本発明を限定するものではない。
尚、以下の実験において、各種の測定は、以下の方法により行った。
【0048】
<保護膜の膜厚測定>
ボトルに塗布液を噴霧し、室温で乾燥させたのち、ボトル側壁中央部を周方向90度ごとに4点切り出し、原子間力顕微鏡で保護膜有無の差を測定し、それらの平均の膜厚を計算した。
【0049】
<動摩擦係数の測定>
スリップテスターを用い、
図3に示されているように、JIS K―7125に準じて、台座の上に得られたボトルを3本俵積みし、下段の2本は台座に固定し、上段の1本はロードセルに固定し、台座のみを100mm/分の速度で
図3の矢印方向にスライドし、上段のボトルと下段のボトルとがスライド移動する際の荷重をロードセルにより測定し、かかる荷重から動摩擦係数を測定した。動摩擦係数は値が小さいほど滑り性がよく、傷が付きにくい。
尚、試料ボトルとしては、製造後、23℃、50%RHの恒温恒湿室に24時間保管したものを用い、23℃、50%RHの条件で測定した。
【0050】
<振動試験>
耐傷付き性の評価として、得られたボトルを12本カートンケースにいれ、JISZ0232記載のランダム振動試験機を使用し、ランダム振動30分の振動条件で振動試験を行った。振動後、ポトル側面を目視し、傷付き程度の評価を行った。傷がない場合を○、傷がわずかにあるが目立たない程度の場合を△、明らかな傷がある場合を×とした。△、○が許容範囲内である。
【0051】
<防塵性評価>
防汚性の評価として、得られたボトルをチャンバーに入れ、25℃RH50%雰囲気に24時間保管した後、カーボン粉を噴霧し、ボトル側壁へのカーボン粉の付着程度を目視で評価した。付着粉がない場合を○、付着粉が僅かにある場合を△、付着粉が明らかにある場合を×とした。許容範囲は○、△である。
【0052】
<べたつき性評価>
ボトルを手にした場合のべたつき性の評価として、得られたボトル側壁を指で擦り、べたつき程度を触感での官能検査で評価した。べたつきがない場合を○、べたつきがわずかにあるが製品として問題ない場合を△、べたつきがある場合を×とした。△、○が許容範囲である。
【0053】
<実施例1>
<ボトルの作製>
4つの押出し機にそれぞれ下記の樹脂を充填し、各樹脂を加熱しながら可塑化及び混練して押出し、多層ヘッドを用いて、外面側から順に、透明ポリエステル系樹脂外層、透明接着樹脂層、光輝顔料を含む着色ポリオレフィン系樹脂層、及び光輝顔料を含まない着色ポリオレフィン系樹脂層、の4層からなる多層パリソンを形成し、ついで、キャビティーを有する金型でパリソンを挟み、パリソンに圧縮空気を吹き込んで、容量500ml、ハイト200mm、胴径φ70mmで円筒形状の4種4層の多層プラスチックボトルを製造した。樹脂の詳細は次のとおりである。
【0054】
透明ポリエステル系樹脂外層:
透明非晶性シクロヘキサンジメタノール(CHDM)系共重合ポリエチレンテレフ
タレート樹脂
透明接着樹脂層:
粘着付与剤添加タイプでオレフィン系エラストマーを含有した透明無色の低密度ポ
リエチレン(LDPE)系樹脂
光輝顔料を含む着色ポリオレフィン系樹脂層:
透明無色のエチレン・プロピレンブロック共重合樹脂に光輝顔料として0.5重量
%のパールレッド及び着色顔料として0.5重量%のアゾ系赤色顔料を充填した樹脂
光輝顔料を含まない着色ポリオレフィン系樹脂層:
前記エチレン・プロピレンブロック共重合樹脂に、着色顔料として0.3重量%の
アゾ系赤色顔料を充填した樹脂
【0055】
<保護膜用塗布液の作製>
水96質量部、ジメチルシリコーン0.9質量部、ノニオン系界面活性剤3.1質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液(保護液)を作製した。乾燥後固形分として、ジメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤350質量部である。
【0056】
<保護液の塗布>
得られた塗布液(保護液)を市販のクイックフォッガー(スプレーイングシステムスジャパン株式会社製)で、得られたボトル側壁に噴霧し、室温で乾燥し、プラスチックボトルを作製した。乾燥した後の膜厚を、300nmとした。
プラスチックボトルを作製後、上記評価を行った。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0057】
<実施例2>
水96質量部、ジメチルシリコーン0.08質量部、ノニオン系界面活性剤3.92質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液(保護液)を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。
保護膜の乾燥後固形分は、ジメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤5000質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0058】
<実施例3>
水96質量部、ジメチルシリコーン2.7質量部、ノニオン系界面活性剤1.3質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液(保護液)を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。
保護膜の乾燥後固形分は、ジメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤50質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例4>
保護膜の膜厚を10nmとした以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0060】
<実施例5>
保護膜の膜厚を1000nmとした以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0061】
<実施例6>
水96質量部、フェニルメチルシリコーン1.6質量部、ノニオン系界面活性剤2.4質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。
保護膜の乾燥後固形分は、フェニルメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤150質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
【0062】
<比較例1>
保護膜用塗布液を設けない以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。仕様と評価結果を表1に示す。動摩擦係数が1.8と大きく、振動試験でボトル側壁の傷付きが不良であった。
【0063】
<比較例2>
水96質量部、シリコーン油なし、ノニオン系界面活性剤4質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液(保護液)を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。
保護膜の乾燥後固形分は、ノニオン系界面活性剤のみである。また、前述した実施例1での保護膜中のノニオン系界面滑性剤量を350質量部としたとき、この比較例2での保護膜でのノニオン系界面活性剤の量(保護膜の全量に相当)は4000質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。
保護膜中のシリコーン油がないため、動摩擦係数が1.8と大きく、振動試験でボトル側壁の傷付きが不良であった。
【0064】
<比較例3>
水96質量部、ジメチルシリコーン0.07質量部、ノニオン系界面活性剤3.93質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液(保護液)を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。
保護膜の乾燥後固形分は、ジメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤5500質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。保護膜中のジメチルシリコーン量が少ないため、動摩擦係数が1.6と大きく、振動試験でボトル側壁の傷付きが不良であった。
【0065】
<比較例4>
保護膜用塗布液(保護液)を、水96質量部、ジメチルシリコーン2.9質量部、ノニオン系界面活性剤1.1質量部を混合し撹拌することによって、保護膜用エマルジョン系塗布液を作製した以外は実施例1と同様にしてプラスチックボトルを作製し、評価した。保護膜の乾燥後固形分は、ジメチルシリコーン100質量部に対し、ノニオン系界面活性剤40質量部である。保護膜仕様と評価結果を表1に示す。保護膜中の界面活性剤量が少ないため、防塵性が不良であった。
【0066】
【表1】