(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に回転することにより車両に設けられる開閉部材を閉駆動させ、前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転することにより前記開閉部材を開駆動させる駆動モータの回転の開始動作及び前記駆動モータの回転の方向を、切替部の接続を切り替えるための制御信号を出力することにより制御する制御部と、
前記駆動モータの回転の方向を示す信号を前記制御部に出力する検出部とを備え、
前記制御部は、前記検出部からの信号を基に、前記切替部の固着の有無を判断し、
前記制御部は、前記固着があると判断した場合、前記駆動モータを停止させ、かつ停止状態を維持させるように前記切替部の接続を切り替えるための制御信号を出力し、
前記切替部は、
制御部からの制御信号によりオン又はオフに制御される、第1のスイッチ、第2のスイッチ及び第3のスイッチを有し、
前記第1のスイッチがオン、前記第2のスイッチがオフ、かつ前記第3のスイッチがオフの場合に前記駆動モータは前記第1の方向に回転し、
前記第1のスイッチがオフ、かつ前記第2のスイッチがオンの場合に前記駆動モータは前記第2の方向に回転し、
前記第3のスイッチがオン、かつ前記第2のスイッチがオンの場合に前記駆動モータは前記第2の方向に回転し、
それ以外の場合に前記駆動モータは停止する
ように構成され、
前記制御部は、前記第1のスイッチを切り替えることができない固着が有ると判断した場合に、前記第3のスイッチを切り替えることにより前記駆動モータを停止させ、又は停止状態を維持させる、車両用開閉部材の制御装置。
前記制御部は、前記制御部が前記駆動モータを停止させる信号を出力した後、前記駆動モータが前記第1の方向又は第2の方向に回転していることを示す信号が第1の規定時間以上前記検出部から入力され続けている場合に前記固着があると判断する、請求項1又は2に記載の制御装置。
前記制御部は、前記制御部が前記駆動モータを停止させる信号を出力し、その後前記駆動モータの回転方向を反転させる信号を出力した後、前記駆動モータが前記第1の方向又は第2の方向に回転していることを示す信号が第2の規定時間が経過するまでに入力されない場合に前記固着があると判断する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構造等に応じて適宜変更可能である。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に説明される実施形態で具体的に記載された形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、パワーサンルーフユニット100及びパワーウィンドウユニット106の概略構成図である。
【0011】
図1(a)は、車両用開閉部材の一例としてのルーフパネル102a及びシェードパネル102b、並びに、該車両用開閉部材の制御装置200を備えたパワーサンルーフユニット100を示す。ルーフパネル102aは、車両ルーフ101に形成された開口部103を開閉し、シェードパネル102bは、ルーフパネル102aの下方に配置され、開口部103から入る光量を調節する。ルーフパネル102a及びシェードパネル102bは、開口部103の内縁に沿って設置されたガイドプレート104に移動自在に支持されている。ユーザは、車両内の所望の位置に設置された開閉スイッチ110を操作することにより、ルーフパネル102a及びシェードパネル102bを電動で開閉駆動することができる。つまり、ルーフパネル102a及びシェードパネル102bの開駆動又は閉駆動を指示する信号が開閉スイッチ110から制御装置200に出力される。その信号に応じて、制御装置200は、駆動モータ209を回転させ、ギヤやベルト(不図示)を介してルーフパネル102a及びシェードパネル102bをガイドプレート104に沿って車両の前後方向に移動させる。なお、ユーザは、ルーフパネル102a及びシェードパネル102bをそれぞれ独立に駆動することができる。
【0012】
図1(b)は、車両用開閉部材の一例としてのウインドウガラス102c及び該車両用開閉部材の制御装置200を備えたパワーウィンドウユニット106を示す。ウインドウガラス102cの一端は、昇降機構109に固定され、ウインドウガラス102cは、昇降機構109の動きに応じてドアフレーム107に形成された開口部108を開閉する。ユーザは、開閉スイッチ110を操作することにより、ウインドウガラス102cを電動で開閉駆動することができる。つまり、ウインドウガラス102cの開駆動又は閉駆動を指示する信号が開閉スイッチ110から制御装置200に出力される。その信号に応じて、制御装置200は、駆動モータ209を制御し、駆動モータ209は、昇降機構109を介してウインドウガラス102cを車両の上下方向に移動させる。
【0013】
以下では説明を簡単にするために、車両用開閉部材の一例としてルーフパネル102aを想定し、切替部の一例としてリレー206〜208を想定する。なお、車両用開閉部材は、シェードパネル102bやウインドウガラス102cであってもよいし、車両に設置された他の開閉部材(例えば、ボンネットや給油口扉)であってもよい。
【0014】
<車両用開閉部材の制御装置>
図2は、車両用開閉部材の制御装置200の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置200は、制御部201、入力回路202、電源回路203、出力回路204、駆動回路205及びパルスセンサ210を備える。制御装置200は、ルーフパネル102aを開閉駆動する駆動モータ209を制御する装置である。なお、制御装置200は、クロック周波数を提供する発振器や、カウンタ回路等のハードウェア素子をさらに備えていてもよい。
【0015】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)201aやメモリ201b等を備え、CPU201aやメモリ201bと協働して、入力された信号を処理し、車両用開閉部材の駆動を制御するための所定の機能を有する。CPU201aは、所定の機能を実現するための演算処理を行い、メモリ201bは、プログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)や、一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を備える。制御部201の機能は、CPU201aにより実行されるソフトウェアプログラムとしてメモリ201b内に記憶されていてもよいし、ハードウェア素子として制御部201内に実装されていてもよい。
【0016】
入力回路202は、A/Dコンバータや増幅器等を備え、開閉スイッチ110、イグニッション(IG)スイッチ113及びパルスセンサ210からの信号を制御部201で処理可能なデジタル信号に変換する。電源回路203は、DC-DCコンバータ等を備え、車両のバッテリ電源+Bのバッテリ電圧(V
B)を制御部201で利用可能な電圧へと変換する。出力回路204は、D/Aコンバータや増幅器等を備え、制御部201からの制御信号を警告装置112で利用可能な信号に変換する。
【0017】
ここで、警告装置112は、車両内の所望の場所に設置され、制御部201からの制御信号に応じて、光や音の発生又は警告内容の表示により、ユーザに警告を与える。また、IGスイッチ113は、車両のエンジン(又は電源)の始動/停止を示す信号を制御部201に出力し、制御部201は、その信号を基に、車両のエンジン(又は電源)の始動/停止を認識することができる。
【0018】
駆動回路205は、リレー(切替部)206、207及びトランジスタ206d、207dを備える。リレー206の端子206bはバッテリ電源+Bに接続され、端子206cはグラウンドGNDに接続され、そして、端子206aは駆動モータ209に接続されている。リレー207の端子207aは駆動モータ209に接続され、端子207bはバッテリ電源+Bに接続され、そして、端子207cはグラウンドGNDに接続されている。なお、駆動回路205は、必要に応じて、抵抗やコンデンサ等その他の素子を含んでいてもよい。
【0019】
トランジスタ206d、207dは、制御部201から出力される制御信号により、リレー206、207の切り替えを行うためのスイッチ及び増幅素子として機能する。トランジスタ206d、207dは、バイポーラトランジスタ、FET(Field Effect Transistor)、等により構成できる。
制御部201は、トランジスタ206d、207dのベース端子の電圧を変化されることにより、ON/OFFを切り替える。これにより、制御部201は、リレー206、207のソレノイドに流れる電流を制御し、リレー206、207の接続先を切り替えることができる。トランジスタ206d、207dがOFFのとき、リレー206の端子206a及びリレー207の端子207aは、グラウンドGNDに接続される。各トランジスタ206d、207dがONになると、リレー206、207のソレノイドに流れる電流が変化し、端子206a、207aがバッテリ電源+Bに接続される。換言すれば、制御部201は、トランジスタ206dをONすることで、リレー206の端子206aをバッテリ電源+Bに接続し(端子206bと206aとの接続)、トランジスタ206dをOFFすることで、リレー206の端子206aをグラウンドGNDに接続する(端子206cと206aとの接続)。また、制御部201は、トランジスタ207dをONすることで、リレー207の端子207aをバッテリ電源+Bに接続し(端子207bと207aとの接続)、トランジスタ207dをOFFすることで、リレー207の端子207aをグラウンドGNDに接続する(端子207aと207cとの接続)。上述のように、本明細書において各リレーの切替端子はONのときにバッテリ電源+Bに接続され、OFFのときにグラウンドGNDに接続されるものとする。
【0020】
制御部201は、リレー206をバッテリ電源+Bに接続し、リレー207をグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209を「正転」させ、ルーフパネル102aを「閉駆動」することができる。一方、制御部201は、リレー206をグラウンドGNDに接続し、リレー207をバッテリ電源+Bに接続することにより、駆動モータ209を「反転」させ、ルーフパネル102aを「開駆動」することができる。また、制御部201は、リレー206及びリレー207をともにバッテリ電源+B又はグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209の回転を「停止」させ、ルーフパネル102aを「停止」させることができる。このように、制御部201は、車両のバッテリ電源+Bから駆動モータ209に供給される電圧を制御することにより、駆動モータ209の回転の開始及び停止、並びに、回転の方向(正転及び反転)を制御することができる。なお、駆動モータ209は、「正転」時に「開駆動」し、「反転」時に「閉駆動」するように構成されていてもよい。
【0021】
表1は、トランジスタ206d、207dのON/OFFと、駆動モータ209の正転、反転及び停止と、ルーフパネル102aの駆動方向との関係を示す。上述のようにこれらの関係は表1の構成には限定されず適宜変更可能であるが、以下の説明においては、トランジスタ206d、207d、駆動モータ209及びルーフパネル102aは表1に基づいて動作するものとする。
【0023】
パルスセンサ210は、駆動モータ209の回転を検出するための検出部としてのホール素子等を備え、駆動モータ209の回転に応じたパルス信号を制御部201に出力する。制御部201は、パルスセンサ210からのパルス信号のパルス数、パルス継続時間、パルス周期等に基づいて、駆動モータ209の回転状態(正転、反転又は停止)を判断することができる。また、制御部201は、パルスセンサ210からのパルス信号のパルス数をカウントすることで、ルーフパネル102aの開口量を判断することもできる。
【0024】
<車両用開閉部材の制御方法>
本実施形態に係る車両用開閉部材の制御装置による制御方法について説明する。本実施形態に係る制御装置は、挟み込みを検出して開駆動又は閉駆動を停止させる信号を出力した後に、リレーの固着の有無を監視し、該固着がある場合には車両用開閉部材の動作を停止させ、かつ停止状態を維持させるように信号を出力する。以下の説明では車両用開閉部材の閉駆動時に物体が挟み込まれた場合を想定するが、開駆動時に挟み込み等が生じた場合であっても、表1に基づいてリレーのON/OFF等の関係についての説明を適宜読み替えることにより、本発明は同様に適用可能である。
【0025】
図3は、車両用開閉部材の制御装置200による、車両用開閉部材の一例としてのルーフパネル102aの、閉駆動時における挟み込み検出後の制御フローチャートである。ステップS301以前の状態において、車両用開閉部材は閉駆動を行っている。車両用開閉部材に物体が挟み込まれたことを制御部201が検出すると、
図3の制御フローが実行される。
【0026】
なお、挟み込みの検出は、パルスセンサ210から制御部201に出力されるパルス信号等により算出可能な駆動モータ209の回転速度の変化等に基づいて行うことができる。例えば、ルーフパネル102aが開駆動又は閉駆動を行っている際に回転速度の変化量が所定値を超えた場合に挟み込みが発生したと判断することができる。また、駆動モータ209に加わっている負荷の大きさに基づいて挟み込み判定を行ってもよく、センサ等により挟み込みを検出してもよい。
【0027】
ステップS301において、制御装置200の制御部201は、駆動モータ209の閉駆動を停止させるための電圧信号をトランジスタ206dの制御端子(ベース端子)に出力する。該信号は、トランジスタ206dをOFFにして、リレー206をONからOFFに切り替えることにより、駆動モータ209を正転から停止に切り替えるための信号である。以下、リレーをONにするために制御部201から送信される信号をON信号と呼び、同様にリレーをOFFにするために制御部201から送信される信号をOFF信号と呼ぶ。
【0028】
ステップS302において、制御部201は、リレー206、207の固着を検出するために、パルスセンサ210から入力されるパルス信号の監視を開始する。本実施形態では、制御部201は、当該「パルス信号の監視」の一例として、ステップS301でOFF信号が出力されてからのパルス信号の継続時間を取得し、制御に用いるものとする。なお、パルスセンサ210からの信号の監視はステップS302以外のタイミングに行ってもよい。例えば、IGスイッチ113から車両のエンジンの始動を示す信号をトリガにしてもよく、ルーフパネル102aの開駆動を指示する開閉スイッチ110からの信号をトリガにしてもよい。パルスセンサ210からの信号を監視する機会を複数設けることで固着検出の確実性が向上する。
【0029】
ステップS303において、制御部201は、パルスセンサ210から入力される信号の継続時間をカウントし、事前に定められた規定値以上であるか否かを判断する。継続時間が規定値以上である場合(S303でYesの場合)、駆動回路205は、リレー206のOFF信号を出力しているにもかかわらずルーフパネル102aの閉駆動が規定時間内に停止できない状態にある。この場合、制御部201は、リレー206がON状態に固着していると判断し、ステップS304に進む。継続時間が規定値未満である場合(S303でNoの場合)、ルーフパネル102aの閉駆動は停止していると判断されるが固着の有無は不明である。この場合、ステップS305に進む。
【0030】
上述のパルスセンサ210から入力される信号の監視条件としてパルスの継続時間を設定する理由は、物体の挟み込みによって生じた荷重でルーフパネル102aの閉駆動が停止した場合に、固着がないと誤判断される可能性を低減するためである。リレー206の固着がない場合には、リレー206がOFFになると駆動モータ209に駆動電流が流れなくなるため、短い時間でルーフパネル102aの閉駆動が停止する。よって、ルーフパネル102aの停止に長時間を要した場合は、リレーに固着が発生していると推定される。ステップS303の判断に用いられる規定値は、固着がない場合に要する停止時間と固着がある場合に要する停止時間の間の値になるように設定することが好適である。固着がある場合の停止時間は、挟み込んだ物体が柔らかいほど長くなるので、挟み込む可能性がある物体をあらかじめ想定した上で、誤検出が最も発生しにくくなるように当該規定値を設定することがより望ましい。
【0031】
ステップS303でYesの場合、ステップS304において、制御装置200の制御部201は、リレー207のON状態を維持させるようにトランジスタ207dの制御端子(ベース端子)にON信号を出力し続ける。これにより、リレー206、207はいずれもONになり、駆動モータ209は停止状態を維持した状態で本制御フローは終了する。リレー206は固着しており、OFFにすることができないので、リレー207はフローの終了後もONの状態のままにしておく必要がある。ただし、リレー206の交換等の修理の完了、挟み込みの解消の確認などが行われ、ユーザがルーフパネル102aを閉駆動してもよいという意図を明示した場合に、制御部201がリレー207をOFFにすることができる機能を追加してもよい。
【0032】
ステップS303でNoの場合、ステップS305において、制御装置200の制御部201は、トランジスタ206dにOFF信号を、トランジスタ207dにON信号をそれぞれ出力する。リレー206に固着がない場合、駆動モータ209は反転状態となる。
【0033】
その後、ステップS306において、制御部201は、規定時間内にパルスセンサ210からパルス信号が入力されるか否かを判断する。規定時間内にパルス信号が入力された場合(S306でYesの場合)、挟み込みを解消するためのルーフパネル102aの開駆動が行われており、固着はないと判断され、本制御フローは終了する。規定時間内にパルス信号が入力されない場合(S306でNoの場合)、駆動モータ209の反転駆動は行われていない。この場合、制御部201は、リレー206がON状態に固着していると判断し、ステップS304に進む。ステップS304での処理は上述のものと同様である。
【0034】
図4A、
図4B及び
図4Cは、(a)トランジスタ206dのON/OFF、(b)トランジスタ207dのON/OFF、(c)パルスセンサ210からの信号電圧(+Vp、−Vp)及び(d)駆動モータ209の回転方向を示すタイミング図である。なお、(a)、(b)に示す動作タイミングがハイレベルの場合に各トランジスタがONになり、ローレベルのときに各トランジスタはOFFになるものとする。また、(c)はそれぞれ+Vpの場合に正転、−Vpの場合に反転を示すパルスが出力されている状態を示し、0の場合はパルスが出力されておらず、停止を示しているものとする。以下、
図4A、
図4B及び
図4Cの動作タイミングについて順に説明するが、各図を通じて同様の処理が行われているステップについては重複する説明を省略する。
【0035】
図4Aは、リレー206の固着が発生していない正常状態における制御タイミング図である。
図3のフローチャートにおいて、ステップS303でNoと判断され、ステップS306でYesと判断された場合に
図4Aのタイミング図による制御が行われる。
【0036】
時刻t1において、制御部201はトランジスタ206dにON信号を送信する。これにより、リレー206がON、リレー207がOFFになり、駆動モータ209は正転し、ルーフパネル102aの閉駆動が開始される。このとき、駆動モータ209の正転を示す信号(+Vp)がパルスセンサ210から制御部201に入力される。
【0037】
時刻t2において、ルーフパネル102aに物体が挟み込まれ、
図3の制御フローが開始する。ステップS301において、制御部201はトランジスタ206dにOFF信号を送信する。これにより、リレー206はOFFになり、駆動モータ209は停止し、ルーフパネル102aも停止する。このとき、パルスセンサ210から制御部201に入力される信号は駆動モータ209の停止を示している。同時刻にステップS302により、制御部201はパルスセンサ210からの信号の監視を開始し、その後ステップS303において、パルスセンサ210からの信号の継続時間が規定値以上であるか否かを判断する。
図4Aのタイミング図の場合、OFF信号の出力後すぐに駆動モータ209が停止しているので、ステップS303では継続時間が規定値以下と判断(S303でNoと判断)され、ステップS305に進む。
【0038】
時刻t3において、ステップS305の制御が行われる。すなわち、制御部201はトランジスタ207dにON信号を送信し、リレー206がOFF、リレー207がONになり、駆動モータ209は反転する。これにより、ルーフパネル102aの開駆動が開始され、ルーフパネル102aに挟み込まれた物体が開放される。このとき、駆動モータ209の反転を示す信号(−Vp)がパルスセンサ210から制御部201に入力される。
図4Aのタイミング図の場合、ON信号の出力後すぐに駆動モータ209が反転を開始しているので、パルスが規定時間以内に制御部201に入力されたと判断(S306でYesと判断)され、
図3の制御フローは終了する。その後、時刻t4において、制御部201はトランジスタ207dにOFF信号を送信し、駆動モータ209は挟み込み時の反転制御を終了する。この場合、リレー206は正常動作を行っているため、固着はないと判断される。
【0039】
図4Bは、リレー206の固着が発生している異常状態における制御タイミング図の一例である。本タイミング図はルーフパネル102aに挟み込まれた物体が柔らかい物体であり、挟み込み自体によってルーフパネル102aの閉駆動が停止しない場合を想定したものである。
図3のフローチャートにおいて、ステップS303でYESと判断された場合に
図4Bのタイミング図による制御が行われる。
【0040】
時刻t2において、制御部201はトランジスタ206dにOFF信号を送信するが、リレー206がON状態に固着しているため、リレー206はOFFにならない。そのため、駆動モータ209は正転を継続し、パルスセンサ210から制御部201に入力される信号は正転を示す信号(+Vp)のままである。よって、ステップS303において、制御部201はパルスセンサ210からの信号の継続時間が規定値以上であると判断(S303でYesと判断)し、ステップS304に進む。
【0041】
時刻t3において、ステップS305の制御が行われる。すなわち、制御部201はトランジスタ207dにON信号を送信し、リレー207がONになる。リレー206はON固着のままであるため、駆動モータ209は停止する。その後、トランジスタ207dをOFFが戻ると再び駆動モータ209は正転してしまうので、リレー207がON状態を継続するように制御部201はトランジスタ207dにON信号を送信し続ける。このフローではリレー206の固着があると判断される。
【0042】
図4Cは、リレー206の固着が発生している異常状態における制御タイミング図の他の例である。本タイミング図はルーフパネル102aに挟み込まれた物体が固い物体であり、挟み込み自体によってルーフパネル102aの閉駆動が停止する場合を想定したものである。
図3のフローチャートにおいて、ステップS303でNoと判断され、ステップS306でNoと判断された場合に
図4Cのタイミング図による制御が行われる。
【0043】
時刻t2において、制御部201はトランジスタ206dにOFF信号を送信するが、リレー206がON状態に固着しているため、リレー206はOFFにならない。しかしながら、ルーフパネル102aに挟み込まれた物体が固い物体である場合、挟み込み自体によってルーフパネル102aの閉動作が停止し、駆動モータ209も停止する。そのため、パルスセンサ210から制御部201に入力される信号は停止を示す。よって、ステップS303において、制御部201はパルスセンサ210からの信号の継続時間が規定値以下であると判断(S303でNoと判断)し、ステップS305に進む。なお、この時点では、挟み込まれた物体が固いためルーフパネル102aは動かないが駆動モータ209には電流が供給されているため、挟み込まれた物体に荷重が加わり続けている。
【0044】
時刻t3において、ステップS305の制御が行われる。すなわち、制御部201はトランジスタ207dにON信号を送信する。リレー207がONになるが、リレー206はON固着のままであるため、駆動モータ209は停止状態を維持する。そのため、パルスセンサ210から制御部201に入力される信号は変化しない。よって、パルスが規定時間以内に制御部201に入力されていないと判断(S306でNoと判断)され、ステップS304に進む。その後は
図4Bの場合と同様である。この制御により、ルーフパネル102aが停止した状態であることは時刻t3以前の挟み込み状態と変わらないが、挟み込まれた物体に駆動モータから荷重が加わり続けることが解消される。このフローではリレー206の固着があると判断される。
【0045】
以上のように、本実施形態の制御フローでは、ステップS303とステップS306の2つのステップにより固着の有無を判断する。ステップS303においては、制御部201は挟み込み発生時にリレー206のON固着の有無を判断し、固着があった場合であってもルーフパネル102aの閉駆動を停止することができる。また、ステップS305、S306による反転動作の判断を行うことにより、固い物体を挟み込んで閉駆動が停止された場合に固着がないと誤検出される可能性も低減されている。
【0046】
固着の判断方法は
図3に示したS303、S305及びS306の組合せに限定されるものではない。ステップS303及びステップS306のいずれかのステップを省略したり、さらに別のステップを追加してもよい。固着の判断方法について、挟み込み検出によるルーフパネル102aの動作制御を説明した。しかしながら、固着の判断方法は、挟み込み検出によるルーフパネル102aの動作に限られるものではない。例えば、使用者が任意の位置でルーフパネル102aの動作を制御させたい場合には、ステップS305とステップS306を省略してもよい。具体的には、ステップS303において、制御部201がパルスセンサ210からの信号の継続時間を規定値未満であると判断(ステップ303でNoと判断)すれば、固い物体の挟み込みを考慮することなく、ルーフパネル102aの閉動作が停止したものと判断することができる。他方、ステップS303において、制御部201がパルスセンサ210からの信号の継続時間を規定値以上であると判断(ステップS303でYesと判断)すれば、固着があったものとして、ルーフパネル102aの閉動作が続くことになる。この場合、ルーフパネル102aの閉動作を停止させる必要がある(ステップS304)。このため、固い物体の挟み込みにおいて固着がない誤検出を防止するためのステップS305とステップS306を行う必要はない。
【0047】
本実施形態では、制御部201は固着の有無を判断できる。この判断結果を用いて、固着が発生していると判断された場合にユーザに警告を与えるステップを追加しても良い。この追加のステップでは、制御部201は、警告装置112に制御信号を出力する。その制御信号に応じて、警告装置112は、光若しくは音の発生又は警告内容の表示によりユーザに警告を与える。例えば、警告装置112は、ルーフパネル102aが動作しない旨をユーザに警告してもよく、部品の交換又は修理を促す警告をしてもよい。この警告は音声を車内に流すことにより行ってもよく、車両に設置されたナビゲーション機器の画面上に表示して行ってもよい。また、リレーの固着があった場合には、ユーザが開閉スイッチ110を操作したとしても、制御部201は開閉スイッチ110からの信号を受け付けず、ルーフパネル102aを開閉駆動しないようにしてもよい。
【0048】
制御部201はパルスセンサ210の出力に基づいてルーフパネル102aの位置情報を取得して、この位置情報を制御に用いてもよい。この位置情報はルーフパネル102aが開状態であるか又は閉状態であるかを示す2値のデータであってもよく、ルーフパネル102aの開口幅を定量化した多値のデータであってもよい。
【0049】
制御部201は、上述のルーフパネル102aの位置情報に基づいて本制御フローを実行するか否かを決定してもよい。例えば、ルーフパネル102aが全閉に近い場合にのみ本制御フローを実行してもよい。ルーフパネル102aが大きく開いている状態で本制御フローを実行するとルーフパネル102aが開状態のまま固定されてしまうことがあり、ユーザの利便性を損なう場合があるためである。ルーフパネル102aが大きく開いているときに挟み込みの可能性を制御部201が検出した場合、停止状態を一定時間だけ保持して、その後リレー207をOFFにして再度閉駆動を行うようにしてもよい。そうすることにより、挟み込みを抑制しつつ、ルーフを全閉することができる。
【0050】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る車両用開閉部材の制御装置及び制御方法について説明する。
【0051】
<車両用開閉部材の制御装置>
図5は、車両用開閉部材の制御装置500の機能ブロック図である。
図5に示すように、制御装置500は、制御部201、入力回路202、電源回路203、出力回路204、駆動回路501及びパルスセンサ210を備える。制御部201、入力回路202、電源回路203及び出力回路204の構成は、第1実施形態と略同様であり、説明を省略する。なお、制御装置500は、電源遮断回路、クロック周波数を提供する発振器、カウンタ回路等のハードウェア素子等をさらに備えていてもよい。
【0052】
駆動回路501は、リレー206〜208及びトランジスタ206d〜208dを備える。すなわち、本実施形態の駆動回路501は、緊急用のリレー208及びトランジスタ208dをさらに備える点において第1実施形態に係る駆動回路205と異なる。リレー206の端子206bはバッテリ電源+Bに接続され、端子206cはグラウンドGNDに接続され、そして、端子206aはリレー208の端子208bに接続されている。リレー208の端子208bはリレー206の端子206aに接続され、端子208cはグラウンドGNDに接続され、そして、端子208aは駆動モータ209に接続されている。また、リレー207の端子207aは駆動モータ209に接続され、端子207bはバッテリ電源+Bに接続され、そして、端子207cはグラウンドGNDに接続されている。なお、駆動回路501は、必要に応じて、抵抗やコンデンサ等その他の素子を含んでいてもよい。
【0053】
制御部201は、トランジスタ206d〜208dをON/OFFすることで、リレー206〜208のソレノイドに流れる電流を制御し、リレー206〜208の接続先を切り替える。リレー208の端子208aは、トランジスタ208dがONのときグラウンドGNDに接続された状態になっており、トランジスタ208dがOFFになるとリレー206に接続される。そして、制御部201は、トランジスタ208dをOFFすることで、リレー208の端子208aをリレー206に接続し(端子208bと208aとの接続)、トランジスタ208dをONすることで、リレー208をグラウンドGNDに接続する(端子208cと208aとの接続)。なお、リレー206、207の制御については第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0054】
つまり、制御部201は、リレー206をバッテリ電源+Bに接続し、リレー208をリレー206に接続し、そして、リレー207をグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209を正転させ、ルーフパネル102aを閉駆動することができる。一方、制御部201は、リレー207をバッテリ電源+Bに接続し、リレー208をグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209を反転させ、ルーフパネル102aを開駆動することができる。また、制御部201は、リレー207をバッテリ電源+Bに接続し、リレー208をリレー206に接続し、リレー206をグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209を反転させ、ルーフパネル102aを開駆動することができる。また、制御部201は、リレー206及びリレー207をともにバッテリ電源+B又はグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209の回転を停止させ、ルーフパネル102aを停止させることができる。また、制御部201は、リレー207及びリレー208をともにグラウンドGNDに接続することにより、駆動モータ209の回転を停止させ、ルーフパネル102aを停止させることができる。このように、制御部201は、車両のバッテリ電源+Bから駆動モータ209に供給される電圧を制御することにより、駆動モータ209の回転の開始及び停止、並びに、回転の方向(正転及び反転)を制御することができる。
【0055】
表2は、トランジスタ206d〜208dのON/OFFと、駆動モータ209の正転、反転及び停止との関係を示す。
【0057】
<車両用開閉部材の制御方法>
本実施形態に係る車両用開閉部材の制御装置による制御方法について説明する。
【0058】
図6は、車両用開閉部材の制御装置200による、車両用開閉部材としてのルーフパネル102aの制御フローチャートである。なお、ステップS301、302は、第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0059】
ステップS601において、制御部201はリレー206の固着の有無を判断する。固着の判断は第1実施形態のステップS303、S305、S306と同様の手順により行ってもよく、ステップS303のみにより行ってもよく、その他の方法により行ってもよい。固着がある場合、ステップS602に進み、固着がない場合、ステップS603に進む。
【0060】
ステップS601においてリレー206に固着があると判断された場合、ステップS602において、制御部201は緊急用のリレー208にON信号を出力する。これにより、リレー206はON固着、リレー207はOFF、リレー208はONになるため、駆動モータ209は停止する。その後、ステップS603に進む。
【0061】
ステップS603において、制御部201はトランジスタ207dにON信号を出力する。これにより、リレー206はON固着、リレー207はON、リレー208はONになるため、駆動モータ209は反転し、ルーフパネル102aによる物体の挟み込みが解消される。
【0062】
図7は、(a)トランジスタ206dのON/OFF、(b)トランジスタ207dのON/OFF、(b)トランジスタ208dのON/OFF、(d)パルスセンサ210からの信号電圧(+Vp、−Vp)及び(e)駆動モータ209の回転方向を示すタイミング図である。
図6のフローチャートにおいて、ステップS601でYESと判断された場合に
図7のタイミング図による制御が行われる。
【0063】
時刻t1において、制御部201はトランジスタ206dにON信号を送信し、トランジスタ208dにOFF信号を送信する。これにより、リレー206がON、リレー208がOFFになり、駆動モータ209は正転し、ルーフパネル102aの閉駆動が開始される。このとき、駆動モータ209の正転を示す信号(+Vp)がパルスセンサ210から制御部201に入力される。
【0064】
時刻t2において、ルーフパネル102aに物体が挟み込まれ、
図6の制御フローが開始する。トランジスタ206dにOFF信号が出力されるが、リレー206に固着がある場合、駆動モータ209は停止せず正転を続ける。よってステップS601ではYesと判断される。
【0065】
時刻t3において、ステップS602の制御が行われる。すなわち、制御部201はトランジスタ208dにON信号を出力し、駆動モータ209は停止する。その後、時刻t4において、制御部201はトランジスタ207dにON信号を送信し、駆動モータ209は反転する。
【0066】
このように、本実施形態では、リレー206がON固着した場合であっても緊急用として設けられたリレー208を用いることにより、通常時と同様の反転駆動が可能となる。これにより、リレーが固着した状況で物体の挟み込みが生じた場合に車両用開閉部材を停止させることができるだけでなく、反転駆動により物体に加わる荷重を逃すこともできる。
【0067】
<第2実施形態の第1変形例>
図8は第2実施形態の変形例に係るフローチャートである。
図6との違いは、リレー208にON信号を出力するステップS602の前にトランジスタ207dにON信号を出力するステップS604を設けている点である。ステップS604において、リレー206はON固着、リレー207はON、リレー208はOFFになるため、駆動モータ209は停止する。その後、ステップS602において、制御部201はリレー208にON信号を出力する。これにより、リレー206はON固着、リレー207はON、リレー208はONになるため、駆動モータ209は反転し、ルーフパネル102aによる物体の挟み込みが解消される。したがって、本変形例においても
図6のフローチャートと同様の制御が実現される。
【0068】
<第2実施形態の第2変形例>
第2実施形態の別の変形例として、
図5の回路において、リレー208をリレー206の代替回路として用いてもよい。制御部201は、リレー208にリレー206と反対の動作をするように信号を出力する。通常動作時のトランジスタ206d〜208dのON/OFFと、駆動モータ209の正転、反転及び停止との関係を表3に示す。
【0070】
ここでリレー206がON固着した場合、リレー206及びリレー208の直列接続回路のON/OFFはリレー208のON/OFFで決まるので、ON固着時の動作は表4のようになる。
【0072】
表3及び表4から理解できるように、リレー208をリレー206の代替回路として用いることで、リレー206がON固着している場合であっても通常時と同じ制御が可能となる。したがって、本変形例では、上述の各実施形態と同様にリレー206のON固着時に物体の挟み込み時の停止及び反転動作が可能になるとともに、固着時であってもユーザの利便性が損なわれない。
【0073】
[その他の実施形態]
第1又は第2の実施形態において、駆動モータ209の制御としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行い、切替部として、リレー以外のスイッチング素子(スイッチ)を用いてもよい。例えば、リレー206〜208の代わりにFETを用いて車両用開閉部材の制御装置を構成してもよい。すなわち、FETが故障により常にON、又はOFFになった場合においても、駆動モータの回転方向を検出することで、故障に対するフェールセーフを実現することができる。なお、切替部としてリレーの代わりにFETを用いる構成の場合には、上記第1又は第2の実施形態の説明の中で、「リレーの固着」を「FETの故障」に読み替えることにより、該構成は同様に説明される。