【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の、パーシャルカットとフルカットとを選択して用紙をカットすることが可能なカッタ装置では、可動刃の幅方向全体が固定刃に乗り上げ、可動刃が固定刃に対して水平になった状態で、固定刃の刃部とフルカット刃部によって切り残し部を切断する。このため、固定刃の刃部とフルカット刃部とは、固定刃の刃部と傾斜刃部のような交差した状態の点接触にならない。しかも、フルカット刃部は、研磨作業が行いにくい場所に設けられていることが多く、研磨されていない場合も多い。これらのことから、固定刃の刃部とフルカット刃部によって切り残し部を円滑に切断するためには、フルカット刃部の圧接力を十分に確保する必要がある。この圧接力を十分に確保するためには、押付部材による押付荷重を大きくすることで対応できるが、押付部材の押付荷重を大きくすればするほど、可動刃と固定刃との接触部の摩耗量が増加し、さらに可動刃と固定刃との接触部の一部が極端に摩耗する偏摩耗が生じやすくなり、カッタ装置の寿命が短くなってしまう虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、押付部材による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができるカッタ装置およびプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明のカッタ装置は、
固定刃と、
前記固定刃に対して進退自在であって、該固定刃に対して進出することで該固定刃との間に用紙を挟んで該用紙をカットする可動刃と、
前記可動刃を前記固定刃に押し付ける押付部材とを備え、
前記可動刃が、前記固定刃から離れる方向に傾斜した傾斜刃部と、該傾斜刃部よりも該固定刃から離れた位置に設けられたフルカット刃部と、該フルカット刃部
を該可動刃の進退方向にまたぐ領域に設けられ該固定刃と該フルカット刃部との間に用紙を挟んだときでも該固定刃に対して非接触になる非接触部とを有するものであることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記傾斜刃部が、前記可動刃の幅方向における両外側から該幅方向の内側に向かうにつれて前記固定刃から離れ、該幅方向に間隔をあけて設けられた一対の刃部であって、前記フルカット刃部が、前記一対の刃部の間に設けられたものであってもよい。この態様では、前記フルカット刃部は、前記可動刃の幅方向の中央に設けられたものであってもよいし、該可動刃の幅方向のいずれか一方にずれた位置に設けられたものであってもよい。さらに、前記傾斜刃部が、前記可動刃の幅方向における一方の端部から他方の端部に向かうにつれて前記固定刃から離れる方向に傾斜したものであって、前記フルカット刃部が、該他方の端部に設けられたものであってもよい。
【0010】
また、前記フルカット刃部は、突出したものであってもよく、より具体的には、前記幅方向に突出したものであってもよく、前記非接触部は、前記フルカット刃部の付け根近傍に設けられたものであってもよい。すなわち、前記非接触部は、前記フルカット刃部の付け根から前記幅方向にズレた位置に設けられたものであってもよい。
【0011】
本発明のカッタ装置によれば、前記非接触部によって前記可動刃と前記固定刃との接触面積が減少するため、前記押付部材が該可動刃を該固定刃に押し付ける押付荷重を該非接触部近傍の前記フルカット刃部に集中させることができ、該フルカット刃部の圧接力が高まる。この結果、前記押付部材による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。
【0012】
また、本発明のカッタ装置において、前記非接触部は、前記可動刃の厚み方向に凹んだ凹みを有するものであってもよく、該可動刃の厚み方向に貫通した孔を有するものであってもよい。
【0013】
ここで、前記非接触部は、前記凹みと該凹みにつながる前記孔を有するものであってもよく、該孔は、該凹みの幅方向における、前記フルカット刃部側の端部につながる位置に設けられていてもよい。前記凹みを、例えばプレスによるつぶし加工によって形成すると、該凹みの周囲に僅かな膨らみが生じてしまう場合がある。膨らみが生じてしまうと、この膨らみに荷重が集中し、フルカット刃部の圧接力が低下してしまう虞がある。このため、前記凹みと併せて前記孔を有する態様を採用すれば、該孔の肉逃がし作用によってつぶし加工による膨らみの発生を抑えることができる。特に、前記孔を、前記凹みの幅方向における、前記フルカット刃部側の端部につながる位置に設ければ、膨らみによる、フルカット刃部の圧接力の低下をより確実に抑えることができる。
【0014】
前記非接触部は、前記傾斜刃部と前記フルカット刃部との前記可動刃の進退方向における間の位置から、該フルカット刃部よりも該固定刃から離れた位置までの領域に設けられたものであってもよい。
【0015】
前記フルカット刃部を前記可動刃の進退方向にまたぐ領域に前記非接触部を設けることで、該進退方向における該フルカット刃部の前後の領域に前記押付部材の押付荷重を集中させ、該フルカット刃部の圧接力をより安定して高めることができる。また、前記フルカット刃部によって切り残し部を切断する際に、前記固定刃の刃部が前記非接触部の縁に干渉しないように、該非接触部を該フルカット刃部よりも該固定刃から離れた位置まで設けることが好ましい。
【0016】
上記目的を解決する本発明のプリンタは、
用紙を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された用紙に印字を施す印字部と、
前記印字部よりも用紙搬送方向下流側に配置され前記用紙を切断する請求項1から4のうちいずれか1項記載のカッタ装置とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明のプリンタによれば、前記押付部材による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。これにより、切り残し部の切断不良等によって生じる不要な紙片の発生を抑制できるので、プリンタが紙詰まりを起こす虞を低減することができ、また不要な紙片によってプリンタ機構部分の動作に問題を生じる虞を低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカッタ装置およびプリンタによれば、押付部材による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態であるカッタ装置は、帯状の用紙をロール状に巻き取った状態で収納し、収納した用紙を引き出しながらその用紙に印字を行うプリンタ等に搭載することができる。なお、本実施形態では、カッタ装置をサーマルプリンタに搭載した例を用いて説明するが、カッタ装置は、ドットプリンタ等の他のプリンタにも搭載されることがあり、さらにはプリンタに限らず、用紙を収容した機器や用紙を搬送する機器等、様々な機器に搭載されることがある。また、カッタ装置が搭載される製品としては、POSレシート発券機、宝くじ発券機あるいは整理券発券機等を例示することができる。
【0021】
図1は、カッタ装置1が搭載されたプリンタ9を示す図である。この
図1では、図の右側がプリンタ9の前側になり、左側がプリンタ9の後側になる。
【0022】
図1に示すプリンタ9の用紙カバー911で覆われた用紙収納部92には、ロール状に巻き取られた用紙Pが収納されている。プリンタ9の前面(図では右側の面)には、その上側部分に第1カッタカバー912が設けられ、その下側部分に第2カッタカバー913が設けられている。第1カッタカバー912と第2カッタカバー913の間には、用紙排出口93が形成されている。このプリンタ9では、用紙収納部92と用紙排出口93を結ぶ経路が用紙搬送路になる。
図1では、用紙収納部92から用紙搬送路に引き出されて搬送されている用紙Pを点線で示している。また、その搬送方向を矢印で示している。
【0023】
図1に示すプリンタ9は、プラテンローラ94と、サーマルヘッド95と、カッタ装置1を備えている。本実施形態のプラテンローラ94は搬送部の一例に相当し、本実施形態のサーマルヘッド95は印字部の一例に相当する。以下、サーマルヘッド95により印字が施される用紙Pの印字面を用紙Pのおもて面と称し、印字面とは反対側の面を用紙Pの裏面と称することがある。プラテンローラ94は、用紙幅方向(
図1では紙面に対して垂直方向)に延在したものであり、紙送りモータ96によって回転する。プラテンローラ94は、用紙搬送路に臨む位置に設けられたものであって、用紙収納部92から引き出された用紙Pの裏面側に位置する。
【0024】
サーマルヘッド95も、用紙搬送路に臨む位置に設けられ、用紙幅方向に延在したものである。このサーマルヘッド95は、用紙収納部92から引き出された用紙Pのおもて面側に位置する。サーマルヘッド95は、プラテンローラ94が配置されている方向に向けてヘッドバネ951によって付勢されている。用紙収納部92から引き出された用紙Pは、ダンパ97を経由した後、プラテンローラ94とサーマルヘッド95によって挟まれている。また、引き出された用紙Pは、プラテンローラ94の回転に伴って用紙搬送路に沿って用紙排出口93に向かって搬送される。サーマルヘッド95は、用紙幅方向に並んだ複数の発熱素子を有する。図示しないプリンタの制御部がこれら複数の発熱素子を選択的に発熱させることで、発熱素子に接した用紙Pに印字が施される。
【0025】
カッタ装置1は、サーマルヘッド95よりも用紙搬送方向下流側であって、プリンタ9の用紙排出口93近傍に搭載されている。このカッタ装置1は、用紙収納部92から引き出され、印字が施された用紙Pの印字済部分を、用紙排出口93手前で用紙幅方向にフルカットして未印字部分から切り離し、あるいはパーシャルカットして印字済部分と未印字部分との間に切り残し部を残してカットするものである。
【0026】
カッタ装置1は、固定刃11と可動刃ユニット2を備えている。固定刃11は、切断する用紙Pのおもて面側に配置され、前側から第1カッタカバー912によって覆われている。可動刃ユニット2は、用紙搬送路を挟んで固定刃11と対向するように用紙Pの裏面側に配置され、前側から第2カッタカバー913によって覆われている。なお、固定刃11を用紙Pの裏面側に配置し、可動刃ユニット2を用紙Pのおもて面側に配置してもよい。
【0027】
図2は、
図1に示すカッタ装置1をプリンタ9の前方(図では右側)から見た図である。この
図2では、図の左右方向が切断する用紙Pの幅方向になる。
【0028】
図2に示すように、固定刃11は、用紙幅方向に長手方向を有する略長方形をしたステンレス製の板材で構成されている。固定刃11の可動刃ユニット2側端縁には、刃部110が形成されている。この刃部110は、用紙幅方向に真直に形成されている。
【0029】
可動刃ユニット2は、スライドユニット21と、このスライドユニット21を進退動作させる駆動ユニット22とを備えている。スライドユニット21は、可動刃3と、板ばね4とを備えている。スライドユニット21は、駆動ユニット22によって、固定刃11に向かう進出方向と、固定刃11から離間する後退方向とに移動自在に設けられている。
図1および
図2では、スライドユニット21が最も後退したホームポジションに位置する状態を示している。なお、このスライドユニット21の進退方向は、用紙幅方向に直交する方向(
図1および
図2における上下方向)である。
【0030】
可動刃3は、弾性を有する薄鋼板材、本実施形態では、ステンレス製の板材を材料として板金加工により成形されたもので、板厚が1mm程度に設定されている。本実施形態では、可動刃3は、全体としては用紙幅方向に長手方向を有する略長方形状であり、可動刃3の幅方向は、用紙幅方向に一致している。以下、用紙幅方向、すなわち可動刃3の幅方向を単に幅方向と称することがある。また、本実施形態では、幅方向の中央に設けられたスリット3aによって、固定刃11側部分が幅方向に分断された一部分断型の可動刃3を採用している。可動刃3における、スリット3aの右側には第1腕部31が設けられ、スリット3aの左側には第2腕部32が設けられている。
【0031】
第1腕部31の、固定刃11側であって右側端部には、固定刃11に向かって突出したガイド311が設けられている。また、ガイド311部分を除く第1腕部31の固定刃11側端縁には、幅方向中央に向かうにしたがって固定刃11から離れる方向に傾斜した傾斜刃部312が設けられている。この傾斜刃部312の幅方向中央側の端部よりも、所定寸法、例えば2mm程度、固定刃11から離れた位置にはフルカット刃部313が設けられている。このフルカット刃部313は、第1腕部31の幅方向中央側の端部から、幅方向に突出して設けられ、進退方向においてスリット3aを遮る位置に配置されている。なお、フルカット刃部313は、幅方向と平行に真直に形成してもよいが、本実施形態では、後述する切り残し部の切断を安定させるため、先端(図では左側)に向かうに従い固定刃11から離れる方向に傾斜する勾配を設けている。
【0032】
第2腕部32の、固定刃11側であって左側端部には、固定刃11に向かって突出したガイド321が設けられている。また、ガイド321部分を除く第2腕部32の固定刃11側端縁には、右側(幅方向中央)に向かうにしたがって固定刃11から離れる方向に傾斜した傾斜刃部322が設けられている。すなわち、第1腕部31の傾斜刃部312と、第2腕部32の傾斜刃部322は、幅方向の端部から中央に向かうにしたがって固定刃11から離れる方向に傾斜したものである。なお、第2腕部32における、フルカット刃部313と幅方向に対向する箇所には、フルカット刃部313との干渉を避けるための切欠部323が形成されている。
【0033】
板ばね4は、弾性を有する薄鋼板材によって構成され、後述するようにスライドユニット21を進出させ可動刃3を固定刃11に乗り上げさせた状態で、可動刃3を固定刃11に押し付けるものであり、押付部材の一例に相当する。スライドユニット21を構成する、可動刃3と板ばね4は、幅方向中央部分において進退方向に間隔をあけて挿通された2本のネジ61,61によって駆動ユニット22に固定されている。ネジ61,61は、後述する第1スライダ226のネジ穴2261a(
図4(b)および
図4(c)参照)に取付られている。また、板ばね4は、ばね作用を有する左右一対の加圧腕部41,41を有しており、これら加圧腕部41,41それぞれは、その先端部分に、可動刃3への加圧点となる加圧部41aを有している。右側の加圧部41aは、第1腕部31における幅方向中央側の端部であって、フルカット刃部313よりもやや固定刃11から離れた位置に配置されている。また、左側の加圧部41aは、第2腕部32における幅方向中央側の端部であって、切欠部323よりもやや固定刃11から離れた位置に配置されている。本実施形態で採用した一部分断型の可動刃3の場合は、右側の加圧腕部41によって第1腕部31に押付荷重が付与され、左側の加圧腕部41によって第2腕部32に押付荷重が付与される。すなわち、第1腕部31と第2腕部32には、板ばね4からそれぞれ独立して押付荷重が付与され、第1腕部31に設けられた傾斜刃部312およびフルカット刃部313と、第2腕部32に設けられた傾斜刃部322には、それぞれ独立して圧接力が生じる。
【0034】
第1腕部31には、非接触部5が設けられている。非接触部5は、凹み51、第1貫通孔521および第2貫通孔522を有している。凹み51は、第1腕部31における、図では裏面側(スライドユニット21を進出させ可動刃3が固定刃11に乗り上げた状態における固定刃11に接触する側)から可動刃3の厚み方向に凹んでいる。第1貫通孔521および第2貫通孔522は、いずれも可動刃3の厚み方向に貫通した孔である。第1貫通孔521は、第2貫通孔522よりも大径に形成され、非接触部5における、可動刃3の幅方向両端部分それぞれに形成されている。第2貫通孔522は、2つの第1貫通孔521の間に、可動刃3の幅方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)形成されている。
【0035】
非接触部5の詳しい構造は後述するが、非接触部5は、フルカット刃部313の近傍に設けられている。いいかえれば、後述するように、固定刃11の刃部110とフルカット刃部313によって用紙の切り残し部を挟んで切断する状態において、非接触部5は、可動刃3と固定刃11との接触面積の減少により、板ばね4が付与する押付荷重をフルカット刃部313に集中させることができ、フルカット刃部313の圧接力を高め、切り残し部を円滑に切断することができる位置に設けられている。
【0036】
具体的には、非接触部5は、進退方向においては、フルカット刃部313をまたぐ領域に設けられている。すなわち、非接触部5は、その固定刃11側の端部a1が、傾斜刃部312とフルカット刃部313との間に位置し、固定刃11とは反対側の端部a2が、フルカット刃部313よりも固定刃11から離れて位置している。なお、非接触部5の、進退方向の長さLは、傾斜刃部312とフルカット刃部313との間隔(本実施形態では2mm程度)よりも長くすることが好ましい。また、幅方向においては、フルカット刃部313の根元と間隔Cをあけている。この間隔Cは、可動刃3の板厚に対し、1倍以上10倍以下が好ましい。間隔Cが可動刃3の板厚の10倍を超えると、フルカット刃部313の圧接力を高める効果が不十分になる一方、間隔Cが可動刃3の板厚の1倍未満であると、フルカット刃部313の強度が弱くなり、固定刃11との接触によってフルカット刃部313が不用意に曲がってしまったり折れたりする虞がある。また、間隔Cが可動刃3の板厚の1倍未満のように狭すぎると、大きな荷重が狭い領域に集中し過ぎて摩耗の進行が増大する。具体的には、進退方向において、フルカット刃部313直前の固定刃11側の部分(傾斜刃部312とフルカット刃部313との間の部分であって図では二点鎖線の楕円で囲む部分S)に凹段差が生じやすく、この凹段差が生じると切断性が悪化してしまい好ましくない。なお、幅方向において、フルカット刃部313の根元と非接触部5の幅方向中央側の端部との間に、板ばね4の加圧部41aの全部あるいは一部が位置する態様を採用すれば、フルカット刃部313の圧接力を高める点で好ましい。さらに、非接触部5の幅Wは、可動刃3の板厚に対し、10倍以上30倍以下が好ましい。なお、非接触部5の幅Wを、幅方向外側に広げていくと、可動刃3における非接触部5の幅方向外側部分に荷重が集中し摩耗量が増加してしまう一方、フルカット刃部313の圧接力を高めることにはならない。このため、可動刃3における非接触部5の幅方向外側部分に偏摩耗が生じない範囲で非接触部5の幅Wを設定することが好ましい。
【0037】
図3は、
図2に示すホームポジションからスライドユニット21が進出した状態のカッタ装置1を示す図である。
図3においても、左右方向が幅方向になり、上下方向が進退方向になる。
【0038】
図3(a)では、可動刃3における傾斜刃部312,322の幅方向全体が、固定刃11に乗り上げ、フルカット刃部313が、固定刃11の刃部110に到達する直前まで、スライドユニット21が進出している。
図3(a)に示す状態では、スリット3aに位置する用紙の一部が切り残し部として残るパーシャルカットが行われる。以下、
図3(a)に示すスライドユニット21の位置をパーシャルカットポジションと称することがある。なお、パーシャルカットが行われると、スライドユニット21は、
図3(a)に示す位置から、
図2に示すホームポジションに後退する。
【0039】
一方、
図3(b)では、フルカット刃部313が固定刃11の刃部110と重なる位置までスライドユニット21が進出している。すなわち、
図3(b)では、固定刃11の刃部110とフルカット刃部313によって用紙の切り残し部を挟んで切断する状態を示している。
図3(b)に示す状態では、用紙の幅方向全てを切断するフルカットが行われる。以下、
図3(b)に示すスライドユニット21の位置をフルカットポジションと称することがある。なお、フルカットが行われる場合は、確実に切り残し部を切断するため、スライドユニット21は、
図3(b)に示す位置からさらに進出した後、
図2に示すホームポジションに後退する。なお、非接触部5における、固定刃11とは反対側の端部a2は、フルカット刃部313よりも、固定刃11から離れた位置に存するため、
図3(b)に示す位置からスライドユニット21をさらに進出させても、固定刃11の刃部110と、非接触部5における、固定刃11とは反対側の端部a2との接触を回避することができる。
【0040】
本実施形態のカッタ装置1は、駆動ユニット22によるスライドユニット21の進出動作を、
図3(a)に示すパーシャルカットポジションと、
図3(b)に示すフルカットポジションとに切り替えることで、パーシャルカットとフルカットとを選択して用紙をカットすることができる。スライドユニット21を進退動作させる駆動手段は特に限定されるものではないが、
図4を用いて本実施形態の駆動ユニット22の一例を説明する。
【0041】
図4は、内部構成を説明するため、駆動ユニット22を段階的に組み立てる様子を示す図である。この
図4では、図のやや左斜め下方とやや右斜め上方とを結ぶ方向が幅方向になり、図のやや右斜め下方とやや左斜め上方とを結ぶ方向が進退方向になる。
【0042】
図4(a)に示すように、駆動ユニット22は、カッタモータ221と、ウォームギヤ221aと、ウォームホイール222と、ギヤ軸223aを中心に回転するギヤ223と、HPセンサ224とを備えている。ギヤ223は、逃がし部としての切欠部分223cを有し、その切欠部分223cを除いた外周形状は円弧状をしている。HPセンサ224には接触子2241が設けられている。
図4では、
図2に示す、スライドユニット21がホームポジションに位置する状態を示している。ホームポジションにスライドユニット21が位置する状態では、ギヤ223の切欠部分223cと接触子2241との間には僅かな隙間が生じている。これにより、HPセンサ224からプリンタの制御部に、可動刃3と固定刃11とが非接触であることを示す信号が出力されている。ギヤ223が回転すると、接触子2241がギヤ223の円弧状部分に接触し、接触子2241が所定の設定値(例えば0.6mm)以上押されると、HPセンサ224からプリンタの制御部に、可動刃3と固定刃11とが接触することを示す信号が出力される。ギヤ223がさらに回転すると、ギヤ223の切欠部分223cと接触子2241との間に隙間が生じ、接触子2241がギヤ223に非接触になる。これにより、HPセンサ224からプリンタの制御部に、可動刃3と固定刃11とが非接触になることを示す信号が出力される。プリンタの制御部は、このHPセンサ224からの信号に基づいてカッタモータ221に駆動出力を出すことで、スライドユニット21の進退移動を制御する。なお、カッタモータ221の回転を制御するための制御部をカッタ装置1に設け、HPセンサ224から出力された信号に基づいてそのカッタ装置1の制御部がスライドユニット21の進退移動を制御するように構成してもよい。
【0043】
ウォームホイール222は、カッタモータ221のウォームギヤ221aに噛合し、ギヤ223とも噛合している。ギヤ223には、駆動ピン223bが設けられている。カッタモータ221が回転するとウォームホイール222を介してギヤ軸223aを中心軸にしてギヤ223が回転し、これに伴い駆動ピン223bも回転する。
【0044】
続いて
図4(b)に示すように、駆動ユニット22は、さらに、第1カッタフレーム225と、第1スライダ226と、第2スライダ227とを備えている。第1スライダ226は、第2スライダ227を幅方向にスライド自在に収容するスライド開口部226aを有し、このスライド開口部226aの上下それぞれには、ネジ穴2261aを有する固定部2261が設けられている。このネジ穴2261aには、
図2を用いて前述したように、スライドユニット21を固定するネジ61が取り付けられる。第2スライダ227は、第1スライダ226のスライド開口部226aに幅方向にスライド自在に収容され、駆動ピン223bが挿入される段差開口部2271を有している。段差開口部2271は、進出方向側における幅方向左側部分に第1当接壁2271aを有し、進出方向側における幅方向右側部分に第2当接壁2271bを有している。第1当接壁2271aは、第2当接壁2271bよりも後退方向側に位置し、段差開口部2271の幅方向左側部分における進退方向の寸法は、駆動ピン223bの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0045】
図4(c)に示すように、駆動ユニット22は、さらに、第2カッタフレーム228を備えている。この第2カッタフレーム228は、進退方向に延在し固定部2261を進退方向に案内する案内開口部228aを有している。なお、案内開口部228aから突出した固定部2261には、カバー部材229が取り付けられている。
【0046】
プリンタの制御部からパーシャルカットの駆動出力が出され、カッタモータ221が回転すると、駆動ピン223bが反時計回りに回転する。駆動ピン223bは反時計回りに少し(例えば45度程度)回転した後に、段差開口部2271の第2当接壁2271bに当接する。これにより、駆動ピン223bの回転の開始から少し遅れて第1スライダ226が進出方向にスライドを開始し、駆動ピン223bが半回転したときに、スライドユニット21が、
図3(a)に示すパーシャルカットポジションに進出する。さらに駆動ピン223bが反時計回りに回転し、
図4に示す位置に戻ると、スライドユニット21も、
図2に示すホームポジションまで後退する。
【0047】
プリンタの制御部からフルカットの駆動出力が出され、カッタモータ221が回転すると、駆動ピン223bが時計回りに回転する。駆動ピン223bは回転を開始するのと略同時に段差開口部2271の第1当接壁2271aに当接する。これにより、駆動ピン223bの回転の開始と略同時に第1スライダ226が進出方向にスライドを開始する。このため、駆動ピン223bが半回転したときには、パーシャルカットの動作よりもスライドユニット21の進出距離が長くなり、
図3(b)に示すフルカットポジションまで進出する。さらに駆動ピン223bが時計回りに回転し、
図4に示す位置に戻ると、スライドユニット21も、
図2に示すホームポジションまで後退する。
【0048】
図5は、スライドユニットがホームポジションからフルカットポジションまで進出する過程における、固定刃11の刃部に対する、傾斜刃部312,322およびフルカット刃部313の状態を段階的に示す概念図である。
図5では、固定刃11と可動刃3とを後退方向に見た図(
図2および
図3における上方から見た図)であり、固定刃11の刃部は、固定刃11の紙面裏側に隠れている。この
図5では、左右方向が幅方向になり、紙面と直交する方向が進退方向になる。なお、図面を簡略化するため、
図5(a)〜同図(c)の可動刃3については、一対の傾斜刃部312,322と、一対のガイド311,312のみを示し、その他の部分は省略している。また、
図5(d)では、一対の傾斜刃部312,322および一対のガイド321,322に加え、フルカット刃部313を示している。
【0049】
図5(a)は、
図2に示す、スライドユニットがホームポジションに位置する状態を示している。
図5は板ばねを省略した概念図であり、
図5(a)では、板ばねに押しつけられることで生じる、傾斜刃部312,322の撓み形状も略し、傾斜刃部312,322を幅方向に水平な姿勢に示している。ただし、本実施形態における、板ばね4を備えるスライドユニット21は、
図2に示すホームポジションに位置していても、実際には、板ばね4によって可動刃3の幅方向中央が押され、可動刃3の幅方向中央が沈む(
図2では紙面奥側に凸となるように撓み、
図5(a)では上方に凸となるように撓む)状態になる。これにより、可動刃3を常に厚さ方向V字状に撓ませて(反らせて)固定刃11と点接触する状態を確保することができる。
【0050】
図5(b)は、スライドユニットが進出し、一対のガイド321,322が固定刃11に乗り上げ、さらに、一対の傾斜刃部312,322のガイド321,322側の部分が、固定刃11の刃部と接触している状態を示している。この
図5(b)に示す状態では、傾斜刃部312,322と固定刃11の刃部とが、進退方向に対して交差した状態で点接触する。さらに、スライドユニットが進出すると、
図5(c)に示すように、固定刃11の刃部と点接触する、傾斜刃部312,322の箇所が、幅方向中央に移っていく。
【0051】
やがて、
図3(a)に示すパーシャルカットポジションまでスライドユニットが進出すると、
図5(d)に示すように、可動刃3は、幅方向全体が固定刃11に乗り上げ、傾斜刃部312,322は、幅方向に水平な姿勢になり、さらにフルカット刃部313も固定刃11に重なるように水平な姿勢になる。また、
図3(b)に示すフルカットポジションまでスライドユニットが進出すると、
図5(d)の状態のままフルカット刃部313が固定刃11の刃部と重なる位置まで進出する。
【0052】
前述したように、傾斜刃部312,322は、固定刃11の刃部と進退方向に対して交差した状態で点接触するため、板ばね4(
図2等参照)によって付与される押付荷重が接触部分に集中し、傾斜刃部312,322の圧接力が十分に高まる。この結果、傾斜刃部312,322によって用紙を円滑に切断することができる。一方、フルカット刃部313は、傾斜刃部312,322のように、固定刃11の刃部と進退方向に対して交差した状態で点接触せず、固定刃11に乗り上げた状態で固定刃11の刃部と重なるため、フルカット刃部313の圧接力を高める手段が必要になる。
【0053】
図6は、
図3(b)に示す、スライドユニットがフルカットポジションに位置する状態、すなわち固定刃11の刃部110とフルカット刃部313によって用紙の切り残し部を挟んで切断する状態のカッタ装置における、非接触部の断面構造を示すA−A断面図である。
【0054】
図6に示すように、非接触部5は、凹み51、第1貫通孔521および第2貫通孔522を有している。この非接触部5は、例えば、可動刃3に、第1貫通孔521および第2貫通孔522を形成した後、プレスによるつぶし加工によって、0.1mm〜0.2mm程度凹ませることで凹み51を形成すればよい。この非接触部5は、固定刃11と接触していない。すなわち、前述したように、フルカット刃部313(
図3(b)参照)の近傍に設けられた非接触部5によって可動刃3と固定刃11との接触面積が減少するため、板ばね4(
図3(b)参照)が可動刃3を固定刃11に押し付ける押付荷重を非接触部5近傍のフルカット刃部313に集中させることができ、フルカット刃部313の圧接力が高まる。この結果、板ばね4による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。
【0055】
ここで、非接触部5は、凹み51のみで構成することもできるが、本実施形態のように、第1貫通孔521や第2貫通孔522を有する構成を採用すれば、凹み51を例えばプレスによるつぶし加工によって形成した際に、第1貫通孔521や第2貫通孔522が肉逃がしの作用を奏する。このため、フルカット刃部313の圧接力を低下させるような膨らみの発生を抑えることができる。特に、非接触部5におけるフルカット刃部313側(図では左側)の部分に、第1貫通孔521を設けているため、非接触部5とフルカット刃部313との間に膨らみが生じてしまうことを防止でき、フルカット刃部313の圧接力の低下をより確実に抑えることができる。
【0056】
また、非接触部5全体を貫通孔にしてもよいが、可動刃3の強度が大きく低下する場合があり、本実施形態のように、凹み51と、第1貫通孔521および第2貫通孔522との組合せがより好ましい。
【0057】
本発明のカッタ装置1によれば、板ばね4による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。また、カッタ装置1を搭載した本発明のプリンタ9によれば、カッタ装置1によって切り残し部の切断不良等によって生じる不要な紙片の発生を抑制できるので、プリンタ9が紙詰まりを起こす虞を低減することができ、また不要な紙片によってプリンタ9の機構部分の動作に問題を生じる虞も低減できる。
【0058】
次いで、これまで説明してきたカッタ装置1の変形例について説明する。以下の変形例の説明では、これまで説明してきたカッタ装置1との相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0059】
図7は、
図1〜
図6に示すカッタ装置1とは可動刃の構成が異なる変形例について、スライドユニット21がフルカットポジションに位置する状態を示す図である。
図7においても、左右方向が幅方向になり、上下方向が進退方向になる。
【0060】
変形例のカッタ装置1’の可動刃3’は、1枚の板材で構成され、V字状に配置された一対の傾斜刃部312,322の間には、後退方向に切り欠かれた切欠き溝状のフルカット刃部313’を有している。板ばね4における左右一対の加圧腕部41,41それぞれの加圧部41aによって可動刃3’に押付荷重が付与されると、傾斜刃部312,322およびフルカット刃部313’に圧接力が生じる。本変形例では、フルカット刃部313’の近傍に非接触部5が2つ設けられている。具体的には、フルカット刃部313’を挟んだ幅方向の両側それぞれに非接触部5が設けられている。なお、本変形例の可動刃3’を採用する場合には、板ばね4の加圧部41aを、可動刃3’の幅方向中央における、フルカット刃部313’のやや後退方向側に1箇所設けてもよい。
【0061】
本変形例においても、
図7に示す、スライドユニット21がフルカットポジションに位置する状態において、フルカット刃部313’の近傍に設けられた非接触部5,5によって可動刃3’と固定刃11との接触面積が減少するため、板ばね4が付与する押付荷重をフルカット刃部313’に集中させることができ、フルカット刃部313’の圧接力が高まる。この結果、板ばね4による押付荷重を大きくすることなく、切り残し部を円滑に切断することができる。
【0062】
本発明は前述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、傾斜刃部およびフルカット刃部を有する第1可動刃と、傾斜刃部を有する第2可動刃とを備えた分割型の可動刃を採用し、第1可動刃のフルカット刃部の近傍に非接触部を設けてもよい。また、上述の実施形態におけるフルカット刃部313は、幅方向と水平な姿勢に突出させているが、固定刃11と接触する面側に凸状になるように、例えば1度〜2度程度の曲げを設けてもよい。こうすることで、固定刃11の刃部110とフルカット刃部313とを進退方向に対して交差した状態で点接触させることができる。これにより、非接触部5が圧接力を高める作用と併せてフルカット刃部313の圧接力を高めることができる。ただし、フルカット刃部313に曲げを設けると、可動刃3を重ねた状態で実施される、傾斜刃部312,322の研磨作業が行いにくい。傾斜刃部312,322の研磨作業を実施した後に、フルカット刃部313に曲げを設けることもできるが、その場合には後工程が増えて製造コストがアップしてしまう。さらに、曲げたフルカット刃部313が傾斜刃部312,322と衝突して互いに摩耗が進みやすいという不都合もある。これらの点において、フルカット刃部313に曲げを設けず、非接触部5によってフルカット刃部313の圧接力を高める態様がより優れている。