(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471524
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】ラックベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/28 20060101AFI20190207BHJP
【FI】
F16G1/28 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-25474(P2015-25474)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-148401(P2016-148401A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】國保 雄介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹康
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−244938(JP,A)
【文献】
実開昭63−008453(JP,U)
【文献】
特開2007−210362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製又はゴム製であって、延在方向に移動するように適合される歯付きのベルト本体と、
前記ベルト本体の延在方向に沿って延びる状態で該ベルト本体に埋設される金属製の第1芯線と、
前記第1芯線の周りにヘリカル状に巻回される状態で前記ベルト本体に埋設される金属製の第2芯線とを備え、
前記第1芯線は、複数の素線をより合わせたものであり、
前記素線のピッチ及び前記第2芯線のピッチは互いに逆向きである、ラックベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばサンルーフなどの駆動に使用されるラックベルトは、その延在方向に沿って延びる互いに平行な一対の金属製の芯線を埋設することで強度確保が図られている。しかしながら、ラックベルト内にそれら2本の芯線が一定距離をあけて配置されることで、ラックベルトの屈曲自在性を損なうことになっていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、芯線をラックベルト内の中央部に1本のみ配置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−210362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、芯線の本数の減少及びこれに伴う表面積の減少によって、ラックベルトの外形をなす樹脂製のベルト本体と芯線との接合強度が低下し、ひいてはラックベルトの機械的強度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、機械的強度をより増加することができるラックベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するラックベルトは、樹脂製又はゴム製であって、延在方向に移動するように適合される歯付きのベルト本体と、前記ベルト本体の延在方向に沿って延びる状態で該ベルト本体に埋設される金属製の第1芯線と、前記第1芯線の周りにヘリカル状に巻回される状態で前記ベルト本体に埋設される金属製の第2芯線とを備え
、前記第1芯線は、複数の素線をより合わせたものであり、前記素線のピッチ及び前記第2芯線のピッチは互いに逆向きである。
【0008】
この構成によれば、前記ベルト本体に前記第1芯線及び前記第2芯線の2本が埋設されることで、それら第1芯線及び第2芯線を合わせた表面積の増加によって前記ベルト本体との接合強度を増加することができ、ラックベルトの機械的強度の低下を抑えることができる。一方、前記第1芯線の周りに前記第2芯線が巻回される状態でそれら第1芯線及び第2芯線が集約配置されていることで、ラックベルトの屈曲自在性を確保することができる。
【0010】
この構成によれば、前記素線のピッチ及び前記第2芯線のピッチが互いに逆向きであることで、例えば互いに同じ向きである場合に比べてそれら素線及び第2芯線の傾斜を増加することができ、前記ベルト本体との接合強度をいっそう増加することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、機械的強度をより増加できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態が適用されるサンルーフ装置を示す平面図。
【
図3】(a)は(b)の3A−3A線に沿った断面図であり、(b)は(a)の3B−3B線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ラックベルトの一実施形態について説明する。なお、以下では、車両の前後方向を「前後方向」という。
図1に示すように、自動車などの車両のルーフ10には、サンルーフ装置11が搭載されている。すなわち、ルーフ10には、略四角形の開口10aが形成されるとともに、例えばガラス板からなる略四角形の可動パネル12が設置されている。可動パネル12は、前後方向に移動して開口10aを開閉する。
【0014】
開口10aの車両の幅方向両縁部には、一対のガイドレール13が配設されている。各ガイドレール13は、例えばアルミニウム合金の押出材からなり、長手方向に一定断面を有して前後方向に延在する。そして、各ガイドレール13には、機能部品20が前後方向に移動可能に案内及び支持されている。両機能部品20には、それらの間に橋渡しされる状態で前記可動パネル12が連係及び支持されている。両機能部品20は、ガイドレール13に沿う前後方向への移動に伴い、可動パネル12を開閉動作させる。
【0015】
また、両ガイドレール13の前端同士は、車両の幅方向に延在するフロントハウジング14を介して連結されている。このフロントハウジング14の長手方向中間部には、例えば平歯車からなる出力ギヤ及びモータを有する電気的駆動源15が設置されている。この電気的駆動源15は、略帯状の一対のラックベルト16の各々を介して各機能部品20に連結されており、両機能部品20を同時に前後方向に移動させる。なお、各ラックベルト16は、フロントハウジング14に沿って車両の幅方向に延びるとともに、ガイドレール13の前端付近で転向してこれに沿って車両の後方に延びている。
【0016】
次に、上述したラックベルト16の構造について説明する。
図2及び
図3(a)、(b)に示すように、ラックベルト16は、その外形をなす樹脂製又はゴム製(例えばエラストマ製)のベルト本体21を有する。このベルト本体21は、前述の出力ギヤと噛合可能なラック部21aを有して歯付きとなっている。従って、出力ギヤが回転すると、これに伴ってベルト本体21がその延在方向に移動する。機能部品20の前後方向の移動が、ガイドレール13に沿って前後方向に延在するベルト本体21の移動によって実現されることはいうまでもない。
【0017】
ベルト本体21には、その延在方向に沿って延びる状態で金属製の第1芯線22が埋設されるとともに、該第1芯線22の周りに所定ピッチでヘリカル状に巻回される状態で金属製の第2芯線23が埋設されている。第1及び第2芯線22,23は、ベルト本体21の歯幅方向中央部に配置されている。
【0018】
第1芯線22は、例えばピアノ線などの硬鋼線からなる素線22aを複数本でより合わせたもの(いわゆるより線)であり、第2芯線23は1本の硬鋼線からなる。素線22aの直径は、第2芯線23の直径よりも小さく設定されている。また、各素線22aのより合わせのピッチ及び第2芯線23の巻回のピッチは、互いに異なっている。すなわち、各素線22aのより合わせのピッチ及び第2芯線23の巻回のピッチは、互いに逆向きになっている。
【0019】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ベルト本体21に第1芯線22及び第2芯線23の2本が埋設されることで、それら第1芯線22及び第2芯線23を合わせた表面積の増加によってベルト本体21との接合強度を増加することができ、ラックベルト16の機械的強度の低下を抑えることができる。一方、第1芯線22の周りに第2芯線23が巻回される状態でそれら第1芯線22及び第2芯線23が集約配置されていることで、ラックベルト16の屈曲自在性を確保することができる。
【0020】
(2)本実施形態では、素線22aのピッチ及び第2芯線23のピッチが互いに異なることで、それら素線22a及び第2芯線23の傾斜分だけベルト本体21との接合強度をより増加することができる。
【0021】
(3)本実施形態では、素線22aのピッチ及び第2芯線23のピッチが互いに逆向きであることで、例えば互いに同じ向きである場合に比べてそれら素線22a及び第2芯線23の傾斜を増加することができ、ベルト本体21との接合強度をいっそう増加することができる。
【0022】
(4)本実施形態では、ラックベルト16の機械的強度が好適に確保されることで、例えば可動パネル12を開動作すべく機能部品20を押す場合にも、ラックベルト16の姿勢を安定・保持することができる。
【0023】
(5)本実施形態では、より線構造の第1芯線22に第2芯線23を巻回するのみの構造であるため、第1芯線22自体の引張強度及び曲げ弾性への影響が僅かであり、例えばラックベルト16の移動時の摺動抵抗の増加を抑えることができる。
【0024】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、ベルト本体21は、ラック部21aの歯が歯幅方向に沿っているものでもよいし、歯幅方向に対して傾斜しているもの(いわゆるはす歯ラック)でもよい。
【0025】
・前記実施形態において、ラックベルト16のベルト本体21は、例えば天然ゴム製であってもよい。
・前記実施形態において、第1芯線22は、1本の硬鋼線で構成されていてもよい。
【0026】
・本発明は、エンジンのクランクシャフトの回転をカムシャフトやウォータポンプに伝達するためのタイミングベルトに適用してもよい。また、サイドガラスを開閉駆動するパワーウィンド装置(レギュレータ)やスライドドアを開閉駆動するパワースライドドア装置、バックドアを開閉駆動するパワーバックドア装置などでラックベルトを備える場合、それらに適用してもよい。さらに、車両以外の任意の装置に搭載されるラックベルトに適用してもよい。要は、その延在方向への移動に伴って駆動対象を駆動するラックベルトであればよい。
【符号の説明】
【0027】
16…ラックベルト、21…ベルト本体、21a…ラック部、22…第1芯線、22a…素線、23…第2芯線。