特許第6471588号(P6471588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471588玉型形状決定装置、玉型形状決定方法及び玉型形状決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471588
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】玉型形状決定装置、玉型形状決定方法及び玉型形状決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20190207BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   B24B9/14 B
   G02C13/00
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-74641(P2015-74641)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193467(P2016-193467A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031847(JP,A)
【文献】 特開平06−082729(JP,A)
【文献】 特開2009−160682(JP,A)
【文献】 特開2014−233788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
G02C 13/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定装置であって、
眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得手段と、
眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定手段と、
を備えることを特徴とする玉型形状決定装置。
【請求項2】
請求項1の玉型形状決定装置において、
前記玉型基準軸は、眼鏡レンズ加工装置が有するレンズ保持軸であって、眼鏡レンズを保持させるときのレンズ保持軸の軸線方向に設定されていることを特徴とする玉型形状決定装置。
【請求項3】
眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定方法であって、
眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得ステップと、
眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定ステップと、
を備えることを特徴とする玉型形状決定方法。
【請求項4】
眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定装置において実行される玉型形状決定プログラムであって、
玉型形状決定装置のプロセッサによって実行されることで、
眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得ステップと、
眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定ステップと、
を玉型形状決定装置に実行させることを特徴とする玉型形状決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズ周縁加工装置によって眼鏡レンズの周縁を加工するときに使用される玉型形状を決定する玉型形状決定装置、玉型形状決定方法及び玉型形状決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームのリムの輪郭をトレースしてリムの三次元形状を測定する眼鏡枠形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、リムのトレースデータに基づいて二次元の玉型形状を決定し、決定された玉型形状に基づいて眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、レンズ加工装置のレンズチャック軸に眼鏡レンズを保持させるための加工治具であるカップを眼鏡レンズに取り付けるカップ取付装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
従来、眼鏡レンズ周縁加工装置で使用される二次元の玉型形状は、例えば、リムのトレースデータの三次元形状を玉型の正面方向(リムの反り角に垂直な方向)から見た場合の形状データとして得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−021069号公報
【特許文献2】特開2014−136287号公報
【特許文献3】特開2008−299140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、スポーツ用サングラスのように、眼鏡装用時のリムの前傾角が大きく、左右方向におけるリムの反り角も通常より大きくなっているフレームが多く使用されるようになってきた。このようなフレームについて、玉型の正面方向から見た形状として得た二次元の玉型形状を基に眼鏡レンズを加工すると、リムの前傾角の影響によって、リムに取り付けたレンズの乱視軸角度が処方値からずれることがあった。
【0006】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡枠装用状態でのレンズの乱視軸角度のずれの問題を軽減できる玉型形状決定方法、玉型形状決定装置及び玉型形状決定プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定装置であって、
眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得手段と、眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定手段と、を備えることを特徴とする。
(2) 眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定方法であって、
眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得ステップと、眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定ステップと、を備えることを特徴とする。
(3) 眼鏡レンズ加工装置による眼鏡レンズの周縁加工に使用される玉型形状を決定する玉型形状決定装置において実行される玉型形状決定プログラムであって、
玉型形状決定装置のプロセッサによって実行されることで、眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データを取得するリム形状取得ステップと、眼鏡装用状態を基準にした前記三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸に垂直な平面に前記三次元形状データと眼鏡装用状態の水平軸とを投影し、前記平面に投影された水平軸をレンズの乱視軸の基準方向として決定し、前記三次元形状データが前記平面に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状として決定する玉型形状決定ステップと、を玉型形状決定装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る眼鏡レンズ加工システムの概略構成図である。
図2】眼鏡レンズ周縁加工装置に配置されている加工機構部の概略図である。
図3】眼鏡枠形状測定装置を右斜め上から見た斜視図である。
図4】眼鏡枠形状測定装置の測定ユニットを説明する概略構成図である。
図5】測定ユニットを上から見た図である。
図6】測定ユニットの回転ユニット及び回旋ユニットを側面から見た図である。
図7】眼鏡枠形状測定装置の電機系の構成図である。
図8】玉型形状決定装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図9】本開示に係る玉型形状決定方法の処理フローである。
図10】タッチパネルに表示される入力画面例である。
図11】装用者の眼鏡装用状態を基準とした左右方向を水平軸に持つ空間の座標系の例である。
図12】空間の座標系での左右リムの三次元形状データ、球中心の配置の例を示す図である。
図13】平面OLHに投影された水平軸の軸方向及び左三次元形状データによって形成される二次元玉型形状の例を示す図である。
図14】前傾角を考慮せずに、従来の方法で得た乱視軸の軸方向と玉型形状の比較例を示す図である。
図15】カップ取付装置でカップをレンズに取り付けるときに使用される画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
典型的な実施形態を、図1図15を用いて説明する。図1図15は実施形態に係る眼鏡レンズ加工システム、玉型形状決定装置、玉型形状決定方法及び玉型形状決定プログラムを説明するための図である。例えば、眼鏡レンズ加工システムは、眼鏡枠形状測定装置1と、眼鏡レンズ周縁加工装置10と、玉型形状決定装置700と、カップ取付装置800と、を備える。眼鏡レンズ周縁加工装置10は、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸(レンズチャック軸21L、21R)と、眼鏡レンズの周縁を加工するための加工具と、を有する。
【0010】
本開示の玉型形状決定装置700は、演算部710と、記憶部(メモリ)712と、を備える。演算部710はプロセッサを有する。記憶部7に玉型形状決定プログラムが記憶されている。玉型形状決定装置700は、表示部及び入力部(タッチパネル720)を備えると良い。
【0011】
玉型形状決定装置700は、リム形状取得手段(演算部710)を備える。リム形状取得手段は、眼鏡装用状態を基準にした眼鏡フレームの左リム及び右リムの少なくとも一方の三次元形状データ(TDL,TDR)を取得する。例えば、リム形状取得手段は、三次元形状データ(TDL,TDR)を、眼鏡装用状態での眼鏡フレームの左右リムの前傾角及び反り角を再現したデータとして得る。例えば、左リム及び右リムの三次元形状データは、眼鏡枠形状測定装置1で測定された左リム及び右リムのトレースデータを基に得られる。
【0012】
玉型形状決定装置700は、加工用の玉型形状を決定する玉型形状決定手段(演算部710)を備える。例えば、玉型形状決定手段は、眼鏡装用状態を基準にして取得されたリムの三次元形状データに対して、加工用の玉型形状を得るために設定された玉型基準軸(VLa、VLp)に垂直な平面(OLH,PLH)にリムの三次元形状データと眼鏡装用状態基準の水平軸とを投影し、平面(OLH,PLH)に投影された水平軸を眼鏡レンズの乱視軸の基準方向(H1)として決定し、リムの三次元形状データが平面(OLH,PLH)に投影されることによって得られた二次元形状を加工用の玉型形状(TD2L)として決定する。これにより、リムの前傾角に起因する乱視軸角度のずれの問題が軽減され、リムに支持された眼鏡レンズの乱視軸をより正確に位置させることができる。
【0013】
なお、玉型基準軸(VLa、VLp)は、眼鏡レンズ加工装置10が有するレンズ保持軸であって、眼鏡レンズを保持させるときのレンズ保持軸の軸線方向に設定されていると良い。これにより、リムに、より適合するレンズの周縁加工が行える。
【0014】
例えば、玉型形状決定装置700は、レンズ保持軸の軸線方向(VLa)を定めるにあたって、リムの三次元形状データ(TDL,TDR)が球上に載ると仮定される球形状(SL,SR)を取得する球形状取得手段(演算部710)を備えると良い。例えば、玉型形状決定手段は、眼鏡装用状態での装用者の視線方向から見たリムの三次元形状データの幾何中心を求め、求めた幾何中心と球中心(SOL,SOR)とに基づき、軸線方向を決定する。これにより、レンズ保持軸を加工用の二次元玉型の幾何中心に位置させてレンズの周縁を加工する場合に、より正確なレンズ加工が行える。
【0015】
また、玉型形状決定手段は、眼鏡装用状態での装用者の視線方向から見たリムの三次元形状データの玉型と、装用者の視線と、の位置関係のレイアウトデータを取得するレイアウトデータ取得手段(演算部710)を備えていると良い。玉型形状決定手段は、取得されたレイアウトデータに基づいて球形状(SL,SR)上におけるレンズ光学中心位置を求め、求めたレンズ光学中心位置と球中心(SOL,SOR)とに基づき、軸線方向を決定する.これにより、レンズ保持軸をレンズ光学中心に位置させてレンズの周縁を加工する場合に、より正確なレンズ加工が行える。
【0016】
なお、リム形状取得手段は、眼鏡装用状態を基準とした装用者の左右方向である水平方向、上下方向及び前後方向の空間座標系におけるデータとしてリムの三次元形状データを配置するとよい。玉型形状決定手段は、玉型基準軸に垂直な平面に空間座標系の水平方向の軸を投影することで、眼鏡レンズの乱視軸の基準方向を決定することができる。
【0017】
なお、玉型形状決定装置700は、眼鏡枠形状測定装置1、眼鏡レンズ周縁加工装置10及びカップ取付装置800の一つに設けられていても良い。
<実施例>
以下、典型的な実施例の一つを図面に基づいて説明する。図1は本開示に係る眼鏡レンズ加工システムの概略構成図である。図8は、眼鏡レンズ加工システムの機能ブロック図である。
【0018】
図1において、眼鏡レンズ加工システム1000は、眼鏡枠形状測定装置1と、眼鏡レンズ周縁加工装置10(加工装置10と略す)と、玉型形状決定装置700と、カップ取付装置800と、を備える。
<眼鏡レンズ周縁加工装置>
図2は、加工装置10に配置されている加工機構部11の概略図である。加工装置10は、レンズ回転ユニット20と、加工具回転ユニット30と、眼鏡レンズLEと加工具32との位置関係を調整する位置調整ユニット40と、を備える。レンズ回転ユニット20は、レンズ保持軸の例である一対のレンズチャック軸21L、21Rと、レンズチャック軸21L、21Rを保持するキャリッジ22と、を備える。レンズチャック軸21Lはキャリッジ22の左アーム22Lに回転可能に保持され、レンズチャック軸21Rはキャリッジ22の右アーム22Rに回転可能に保持されている。レンズ回転ユニット20は、レンズチャック軸21Lを回転するモータ23Lと、レンズチャック軸21Rを回転するモータ23Rと、を備える。
【0019】
加工具回転ユニット30は、加工具回転軸31を回転するためのモータ32と、加工具回転軸31に取り付けられた加工具33と、を備える。加工具33は、レンズLEの周縁を加工するために使用される。例えば、加工具33は、粗加工具33a、仕上げ加工具33bと、鏡面仕上げ加工具33cと、を備える。加工具33b及び33cは、レンズLEの周縁にヤゲンを形成するためのV溝を持つヤゲン加工具と、レンズLEの周縁を平加工するための平加工具と、を備える。
【0020】
位置調整ユニット40は、レンズチャック軸21L、21Rと加工具回転軸31との軸間距離を変動するために構成された軸間距離変動機構40Aと、レンズチャック軸21L、21Rの軸方向へ、キャリッジ22を移動するために構成された保持軸移動機構40Bと、を備える。軸間距離変動機構40Aはモータ41Aを備え、保持軸移動機構40Bはモータ41Bを備える。位置調整ユニット40によって加工具33cとレンズLE(レンズチャック軸21L、21R)との相対的な位置関係が調整される。位置調整ユニット40は制御ユニット50(図8参照)によって制御される。
【0021】
以上のような加工機構部11の構成は、例えば、特開2014−136282号公報等で周知であるので、詳細は略す。
<眼鏡枠形状測定装置>
図3図6は、眼鏡枠形状測定装置1の概略構成図である。図3は眼鏡枠形状測定装置1を右斜め上から見た斜視図である。
【0022】
眼鏡枠形状測定装置1は、眼鏡フレームFを保持するためのフレーム保持ユニット500を有する。眼鏡フレームFは左リムFL、右リムFR、左テンプルFTL、右テンプルFTRを有する。また、眼鏡枠形状測定装置1は、本体カバー12の内部に配置された測定ユニット100を有する。測定ユニット100は、フレーム保持ユニット500によって保持されたフレームFのリム(FL、FR)の輪郭をトレースしてリムの三次元形状を測定するために使用される。
【0023】
フレーム保持ユニット500は、左右リム(FL、FR)を保持するためのリム保持ユニット500Aと、眼鏡フレームFの左右のテンプルを保持するテンプル保持ユニット600Aと、を備える。
【0024】
リム保持ユニット500Aは、左右リムにおける少なくとも一部の箇所を一定位置で保持し、左右リムの前傾角を変化可能に保持する構成を有する。例えば、リム保持ユニット500Aは、左右のリム(FL、FR)を眼鏡装用時の上下方向から挟み込んで保持するために、上下方向(Y方向)に移動される第1スライダー503及び第2スライダー505と、第1スライダー503及び第2スライダー505を上下方向に移動可能にガイドするガイド機構508と、を備える。
【0025】
図3の実施例においては、第1スライダー503の下面503Baが左右リムの上部(又は下部)に当接する第1当接部となる。また、第2スライダー505の上面505Uaは左右リムの下部(又は上部)に当接する第2当接部となる。
【0026】
リム保持ユニット500Aは、第1スライダー503及び第2スライダー505の互いの間隔が広がる方向及び互いの間隔が狭くなる方向に、第1スライダー503及び第2スライダー505を連動して移動させるために構成された連動機構530を備える。この連動機構530は、周知の機構のもが使用できる。例えば、連動機構530としては、特開2015−7536号公報に記載された構成を採用することができる。
【0027】
図3において、リム保持ユニット500Aは、左右リム(FL、FR)の上部及び下部の何れか一方の前後方向の位置を規制するリム位置決めユニットの例であるクランプ機構580を有する。例えば、クランプ機構580は、第2スライダー505に配置され、左リムFLの下部及び右リムFRの下部を前後方向からそれぞれクランプするための一対の前ピン582a及び後ピン582bを有する。操作者が回転ノブ570を回転することによりクランプ機構580が駆動され、前ピン582a及び後ピン582bの間隔が狭められ、左リムFLの下部及び右リムFRの下部の前後方向の位置が規制される。
【0028】
一方、図3の実施例では、左リムFL及び右リムFRの上部が当接する第1スライダー503の下部には、リムの上部の前後方向の位置を規制するための規制部材(前ピン582a、後ピン582b)は非配置となっている。左右リムFL、FRの上部には、カバー503aの下面503Baが当接し、左右リムFL、FRの上下方向の移動位置を規制するが、前後方向の位置を自在に移動可能に保持している。これにより、リム保持ユニット500Aは、後述するテンプル保持ユニット600Aとの協同によって左右リムの前傾角を自由に変更可能に、左右リムFL、FRを保持できる。
【0029】
なお、リム位置決めユニットとしては、前ピン582a及び後ピン582bに代えて、V字状の溝を持つ規制部材を設けた構成でもよい。また、実施例ではリム位置決めユニット(クランプ機構580)を左リムFL及び右リムFRの下部側に設けたが、左リムFL及び右リムFRの上部側に設けても良い。
【0030】
図3において、装置1の後方に、テンプル保持ユニット600Aが設けられている。例えば、テンプル保持ユニット600Aは、眼鏡フレームの左テンプルFTLを支持するためのクランプ機構610Lと、眼鏡フレームの右テンプルFTRを支持するためのクランプ機構610R(図3では図示が略されている)と、を有する。クランプ機構610L及び610Rは、例えば、眼鏡フレームFの後方側(装用者の眼が位置する側)で、取付ユニット602に配置されている。取付ユニット602は、本体カバー630に対して上下移動可能に配置されている。例えば、取付ユニット602は、カバー630の上面に位置する上板602aと、左右それぞれの側面に延びる側面板602L及び602Rを有する。側面板602L及び602Rにクランプ機構610L及び610Rがそれぞれ配置されている。例えば、クランプ機構610Lは、テンプルの耳かけ部分を上下方向から挟み込んで保持するために、テンプルの耳かけ部に当接するテンプル当接部材の例である第1円柱部材612及び第2円柱部材614を有する。第2円柱部材614は、支点614aを中心に移動可能に側面板602Lに取り付けられている。支点614aを中心に第2円柱部材614が回転されることにより、第1円柱部材612と第2円柱部材614との間にテンプルFTLの耳かけ部分が挟み込まれ、保持される。支点614aに図示を略すコイルバネが配置されており、テンプルFTLを挟み込む方向に第2円柱部材614が移動するような付勢力が与えられる。図示が略されたクランプ機構610Rも同様な構成とされている。
【0031】
ここで、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aによって保持されるリムの前傾角を所期する状態で規制するように眼鏡フレームの左右のテンプルを保持するために構成されている。すなわち、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aによって保持されるリムの前傾角が眼鏡フレームFを装用者が装用したときの傾斜を実現するための構成を有する。例えば、テンプル保持ユニット600Aは、リムの上下位置に対してテンプルFTL,FTRの上下位置(テンプルの傾斜角の場合も含む)を調整するための調整機構620を有する。調整機構620は、本体カバー630に対して取付ユニット602を上下方向に移動するために、操作者が操作する回転ノブ622と、回転ノブ622の下に固定されたネジ付き支柱624と、を備える。取付ユニット602の上板602aに支柱624に形成されたネジに噛み合うネジ穴が形成されている。支柱624の下端は本体カバー630に上面に当接する。回転ノブ622の正回転と逆回転が切換えられることにより、支柱624のネジの回転によってテンプル保持ユニット600Aのクランプ機構610L及び610Rの上方向への移動と下方向への移動とが切換えられる。これにより、テンプルFTL,FTRを保持するときの上下位置(又はテンプルの傾斜角)が調整可能にされている。
【0032】
装用者が選択したフレームFのテンプルFTL,FTRの耳かけ部分の上下位置が標準のものと異なる場合は、調整機構620によってテンプルFTL,FTRの上下位置(傾斜)を調整する。左リムFL及び右リムFRの下部はリム位置決めユニット(クランプ機構580)によって前後方向の位置が規制されている一方で、左リムFL及び右リムFRの上部は前後方向に自在に移動可能に保持されているため、テンプルFTL,FTRの上下位置が調整されると、左右リムFL、FRの前傾角が変えられる。例えば、予め装用者がフレームFを装用したときの側面の状態をカメラで撮影した後、操作者が撮影された画像をディスプレイ等で見ながら調整機構620を操作して左右のテンプルFTL,FTRが眼鏡装用時の上下位置となるように調整する。これにより、眼鏡装用時のリムFL、FRの前傾角を再現した状態でフレームFを保持できる。
【0033】
なお、テンプル保持ユニット600Aは、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して一定の位置関係でテンプルを保持するように構成されていてもよい。一つの例では、クランプ機構610L及び610Rがテンプルを保持する位置は、リム保持ユニット500Aに保持されるリムの上下位置に対して、標準的な眼鏡フレームのテンプルの延びる方向が水平方向となるように設定されている。これによっても、標準的な配置値のテンプルを持つ眼鏡フレームにおいても、眼鏡装用時のリムFL、FRの前傾角を再現した状態でフレームFを保持できる。
【0034】
次に、測定ユニット100の構成例を、図4図6を基に説明する。図4は、図3に対して本体カバー630及びベースカバー631を取り除いた状態の測定ユニット100を説明する概略構成図である。図5は、図4の測定ユニット100を上から見た図である。図6は回転ユニット及び回旋ユニットを側面から見た図である。
【0035】
測定ユニット100の主要な機構は、本体ベース101に配置され、フレーム保持ユニット500によって保持された眼鏡フレームFの後側(装用者の眼が位置する側)に位置する。
【0036】
測定ユニット100は、測定子110と、測定子軸112と、測定子移動ユニット108と、回転ユニット200と、前後移動ユニット300と、を備える。測定子110は眼鏡フレームFのリムFR、FLの溝(図示を略す)に挿入される。測定子110は測定子軸112の先端に取り付けられている。測定子移動ユニット108は、測定子110を径方向に移動させるために構成されている。測定子移動ユニット108によって、測定子110は回転軸Z1の付近から離れる方向及び回転軸Z1の付近に近づく方向に移動される。回転ユニット200は、回転軸Z1を中心に測定子移動ユニット108を回転するために構成されている。例えば、回転軸Z1は、測定子110の先端110aがリムの輪郭に沿ってリムをトレースするように、リムの輪郭内を通るように設定されている。回転ユニット200は、フレーム保持ユニット500に保持されたリムの後側に配置されている。前後移動ユニット300は、フレームFの前後方向におけるリムの変化に沿って測定子110がリムをトレースするように、前前後方向における測定子110の位置を変化させるために構成されている。
【0037】
実施例の測定子移動ユニット108は、回転軸Z1に対して非平行に設定された回旋軸A1を中心にして測定子軸112をリムの径方向に回旋させるための回旋ユニット120を備える。
【0038】
また、測定ユニット100は、フレームFの右リムFRを測定するための第1測定位置と、他方の左リムFLを測定するための第2測定位置と、の間で回転ユニット200等を移動する左右移動ユニット400を備える。左右移動ユニット400は、モータ404を備え、回転ユニット200等が配置された円弧動ベース402を、モータ404の駆動によって軸C1(縦軸)を中心に回転させる。
【0039】
前後移動ユニット300は、回転ユニット200が搭載される前後動ベース310と、前後動ベース310を回転軸Z1の方向に移動可能にガイドするガイド機構304と、モータ306と、等を備える。回転ユニット200(前後動ベース310)は、ガイド機構304にガイドされ、モータ306の駆動によって測定位置と退避位置とに移動される。また、前後移動ユニット300は、回転軸Z1方向における前後動ベース310の移動位置を検知するためのセンサ314を備える。センサ314の検知情報は、回転軸Z1方向における測定子110の移動位置の検知に利用される。
【0040】
図6は、回転ユニット200及び回旋ユニット120を側面から見た図である。図4図6において、前後動ベース310上に保持ブロック202が固定されている。保持ブロック202に回転ベース204が回転軸Z1を中心に回転可能に保持されている。回転ベース204は、保持ブロック202に固定されたモータ206によって、ギヤ等から構成される回転伝達機構208を介して回転軸Z1の回りに回転される。
【0041】
回転ベース204に回旋ユニット120が搭載されている。回転ベース204に固定ブロック122が配置され、固定ブロック122に測定子軸支持部材124が回旋軸A1を中心にして回転可能に保持されている。測定子軸支持部材124に測定子軸112の基部が取り付けられている。測定子軸112が回旋軸A1を中心にして回旋されることにより、測定子110は回転軸Z1から円弧運動として径方向に移動される。測定子軸支持部材124は、測定子110の先端が回転軸Z1から離れる方向に回転されるように、測定圧付与手段の一例であるバネ(付勢部材)126によって付勢力が与えられる構成となっている。回旋軸A1は、回転軸Z1に対して或る角度β(例えば、45度)で傾斜して設定されている。回旋軸A1が回転軸Z1に対して傾斜していることにより、測定子110の先端が回転軸Z1から離れるに従って、測定基準面S1(回転軸Z1に直交する平面)に対する測定子110の先端方向の傾斜角が大きくなる。これにより、高カーブフレームのリムから測定子110が外れ難くなり、高カーブフレームのリムの輪郭をスムーズにトレースできる。
【0042】
なお、測定基準面S1の基準位置は、フレーム保持ユニット500の所定位置(例えば、基準平面S1が第2スライダー505側の前ピン582a及び582bの中央を通る位置)とされる。
【0043】
測定子軸支持部材124にセンサ板132が取り付けられている。また、固定ブロック122には、動径方向における測定子110の位置を検知するための検知ユニットの例であるセンサ130が取り付けられている。センサ130はセンサ板132に形成された指標を検知することで、測定子軸112の回旋状態を検知し、その検知結果を基に測定子110の位置を検知する。また、バネ126の付勢力に抗して測定子軸112の測定子110が回転軸Z1の付近に移動させる移動機構140が、前後動ベース310に設けられている。
【0044】
なお、上記の測定ユニット100の構成は、基本的に特開2015−7536号公報に記載されたものと同様であるので、詳細な説明は省略する。測定ユニット100の構成は、例えば、特開平2011−12899号公報、特開平2000−304530号公報、等の周知のものが使用でき、その構成は特に問わない。
【0045】
図7は、眼鏡枠形状測定装置1の電機系の構成図である。図7において、例えば、制御ユニット150は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御ユニット150は、眼鏡枠形状測定装置の全体の制御を司る。また、制御ユニット150は、各種の演算(例えば、リムの三次元形状の演算)を行う演算ユニットを兼ねていてもよい。また、制御ユニット150には、測定結果等を記憶するメモリ152、測定開始信号を入力するスイッチ161、タッチ機能のディスプレイ162等を有する入力ユニット160が接続されている
上記のような測定ユニット100によるリムの形状測定の動作を説明する。前述のようにフレーム保持ユニット500Aによって眼鏡装用時のリムFL、FRの前傾角を再現した状態で保持される。測定開始信号が入力されると、測定(眼鏡枠形状取得プログラム)が実行される。例えば、右リムから測定が開始される。
【0046】
制御ユニット150は、前後移動ユニット300の駆動を制御し、退避位置に置かれていた回転ユニット200及び測定子110等を測定開始の初期位置まで移動させる。測定開始の初期位置は、測定子110が右リムFRの下端側の前ピン582aと後ピン582bとの中央位置に設定されている。制御ユニット150は、移動機構140を制御して測定子軸112の回旋の固定を解除し、測定子110の先端をリムの溝に挿入させる。その後、制御ユニット150は、回転ユニット200のモータ206を駆動し、回転ベース204を回転軸Z1の回りに回転させる。回転ベース204の回転により回旋ユニット120と共に測定子軸112及び測定子110が回転軸Z1の回りに回転される。これによって測定子110がリムの周方向に移動される。すなわち、リムの輪郭が測定子110によってトレースされる。トレース時の測定子軸112の回旋状態はセンサ130によって検知される。また、回転軸Z1方向におけるリムの変化に追従して測定子110が前後方向(回転軸Z1方向)に移動される。この前後移動はセンサ314によって検知される。制御ユニット150は、センサ130の検知信号に基づき、回転ベース204の回転角毎に基準位置(回転軸Z1の位置)からのリムの動径長rnを得る。回転ベース204の或る回転角(θn)における動径長(rn)は、測定子軸112の回旋角と、回旋中心から測定子110の先端までの距離(これは既知である)と、等に基づいて数学的に演算される。また、制御ユニット150はセンサ314の検知信号に基づいて回転ベースの回転角(θn)毎に、回転軸Z1方向の右リムFRの位置(zn)を得る。そして、回転ベース204を1回転させることにより、リムの全周の三次元形状データ(rn,zn,θn)(n=1,2,3、・・・,N)が得られる。
【0047】
右リムFRの測定が終了すると、制御ユニット150は、左右移動ユニット400のモータ404の駆動を制御し、左リムFLの測定用の所定位置に円弧動ベース402及び回転ユニット200を移動する。その後、制御ユニット150は、測定ユニット200の各モータを制御し、右リムFRの測定と同様に左リムFLの全周の三次元形状データを得る。右リムFR及び左リムFLの測定結果(トレース結果)は、メモリ152に記憶される。
【0048】
以上のようにして、眼鏡装用時のリムの前傾角を再現した状態のリムの三次元形状データが得られる。また、眼鏡装用状態のリムの三次元形状が得られることにより、眼鏡装用状態のリムの前傾角AL1(図12(a)参照)を得ることもできる。また、眼鏡装用状態の左右リムFL、FRの三次元形状を基に、より正確なリムの反り角BL1、BR1(図12(b)参照)を得ることができる。また、眼鏡装用状態の左右リムFL、FRを同一基準で測定しているため、左リムFLと右リムFRの位置関係のデータの例であるリム幾何中心間距離FPD(左リムFLの幾何中心と右リムFRの幾何中心との距離)が得られる。
<カップ取付装置>
図1及び図8において、カップ取付装置800は、レンズLEが載置される3個の支持ピン820を持つレンズ支持機構810と、加工治具であるカップCuをレンズ表面に固定するためのカップ取付け機構830と、操作画面等が表示される表示部の例であるタッチパネル720と、カップ取付装置全体の制御を司る制御部840(図8参照)と、を備える。レンズ支持機構810は、装置本体1から前側に張り出した台座801aの上部に配置されている。カップ取付け機構830が持つアーム831の先端には、加工治具であるカップCuの基部が装着される装着部832が配置されている。タッチパネル720はカラーディスプレイのタッチパネルで構成され、玉型形状決定装置700の表示部及び入力部として共用されている。
【0049】
例えば、カップ取付け機構830は、アーム831を左右方向、前後方向及び上下方向に三次元的に移動するアーム移動機構を備える。アーム移動機構はアーム831を各方向に移動させるためのモータを有し、カップ取付装置800の筐体内部に配置されている。
【0050】
また、カップ取付装置800は、レンズ支持機構810に支持されたレンズLEを観察する観察光学系832を備える。観察光学系832は、レンズLEを照明する照明光学系と、カメラによってレンズLEの像を撮影する撮像光学系と、を備えていても良い。また、カップ取付装置800は、レンズLEの光学中心及び乱視軸を検出するための検出光学系834を備えていても良い。カップ取付装置全体の制御を司る制御部840と、備える。
【0051】
カップ取付装置800の構成は、特開2008−299140号公報に開示されたものと同様なものが使用できるので、特開2008−299140号公報の記載を援用し、詳細な説明は略す。
<玉型形状決定装置>
図8は玉型形状決定装置700の構成を説明する機能ブロック図である。玉型形状決定装置700は、演算部710と、記憶部(メモリ)712と、タッチパネル720と、スイッチ部714と、を備える。タッチパネル720はカップ取付装置800と共用されているが、専用に設けたものであっても良い。タッチパネル720は、レイアウトデータ等を入力するための入力部の例としても使用される。演算部710はプロセッサによって構成される。演算部710は、タッチパネル720の画面を制御する制御部の例としても使用される。記憶部712には玉型形状を決定するためのプログラムが記憶されている。
<玉型形状決定装置の動作>
次に、眼鏡レンズ加工システム1000について、玉型形状決定装置700の動作を中心に説明する(図9の処理フローを参照)。
【0052】
加工装置10によるレンズLEの加工に先立ち、眼鏡枠形状測定装置1によって眼鏡フレームのリムの形状が測定される。眼鏡枠形状測定装置1の測定結果(眼鏡装用状態での左リムFL及び右リムFRの三次元形状データ)は、スイッチ部714によってデータ転送の指令信号が入力されることにより、玉型形状決定装置700に入力される。これにより、演算部710は眼鏡装用状態での左リムFLの三次元形状データTDL及び右リムFRの三次元形状データTDRを取得する。この三次元形状データは、眼鏡装用状態でのリムの前傾角(AL1)と反り角(BL1,BR1)を再現したものとなる。取得された三次元形状データTDL及びTDRは、記憶部712に記憶される。
【0053】
なお、リムの三次元形状データの取得に当たっては、左リムFL及び右リムFRの少なくとも一方のデータがあれば良い。左右の一方のデータがあれば、他方は一方のデータの左右を反転したデータに変換して利用できるからである。
【0054】
また、リムの三次元形状データの取得の例としては、リムの傾斜角AL1を眼鏡装用状態で測定したデータを直接得るのではなく、次のようにして得ても良い。例えば、眼鏡枠形状測定装置では、従来と同じく、左リムFL及び右リムFRの前傾が無い状態(前傾角が0度の状態)で、リムの三次元形状を測定する(特開2011−122899号公報参照)。前傾角については、別に、眼鏡フレームFを装用した状態の被検者顔の側面をカメラで撮影し、その撮影画像を画像処理等してリムの前傾角AL1を検出する。検出された前傾角AL1と、前傾角が0度の状態のリムの三次元形状と、が玉型形状決定装置700に入力される。演算部710は、入力された前傾角AL1を基に、前傾角が0度の状態の三次元形状データを座標変換する演算を行うことにより、眼鏡装用状態のリムの前傾角を再現した三次元形状を得る。また、リムの反り角(BL1,BR1)は、左右リムの形状を同一基準で測定することにより得ることができる。
【0055】
また、操作者は、加工装置10による加工に際して、加工条件データをタッチパネル720によって入力する。図10は、タッチパネル720に表示される入力画面例である。図10の画面例では、レイアウトデータ等の加工条件データが入力可能にされる。タッチパネル720の画面には、例えば、左右リムを装用者の正面方向から見た場合の右玉型図形FTR及び右玉型図形FTLが模式的に表示される。右玉型図形FTR及び右玉型図形FTLは、演算部710によって表示される。例えば、演算部710は取得された三次元形状データTDL及びTDRに基づき、眼鏡装用状態での装用者の視線方向(正面方向)から見た形状に変換することで玉型図形FTR及び右玉型図形FTLを決定する。なお、ここでの玉型図形FTR及びFTLは目安として使用するため、概略的なものであっても良い。
【0056】
また、操作者は、タッチパネル720の入力機能によって、眼鏡装用状態での装用者の視線方向(正面方向)から見たときの玉型に対するレンズの光学中心位置の位置関係データであるレイアウトデータを入力する。例えば、レイアウトデータとしては、眼鏡装用者の左右眼の瞳孔中心間距離PDと、左右リムの幾何中心間距離FPD(左リムの幾何中心PCLと右リムの幾何中心PLRとの距離)と、左リムの幾何中心PCLに対するレンズ光学中心OCLの高さデータと、右リムの幾何中心PCRに対するレンズ光学中心OCRの高さデータと、がある。入力されたレイアウトデータは演算部710によって取得され、記憶部712に記憶される。幾何中心間距離FPDは、眼鏡枠形状測定装置1のトレースデータを転送したときに、自動的に入力されることでもよい。
【0057】
また、タッチキー723によって、加工装置10のレンズ保持軸(レンズチャック軸21L、21R)でレンズLEを保持するときのチャック位置(すなわち、加工中心位置)を、光心位置(レンズ光学中心)とするか、枠心位置(玉型の幾何中心)とするか、を指定できる。このチャック位置である光心位置、枠心位置の指定は、カップ取付装置800によってカップCuをレンズ表面に取り付ける位置の指定でもある。ここで、光心位置及び枠心位置は、チャック位置の代表的な位置であり、玉型に対するレンズ保持軸のチャック位置の位置関係が分かっていれば、レンズLEに対するチャック位置は任意の位置であっても良い。
【0058】
なお、玉型形状決定装置700では、図10の入力画面のタッチキー722a,722b,722c,722D,722eによってレンズの材質、フレームの種類、加工モード(ヤゲン加工、平加工、溝掘り加工)、鏡面加工の有無、等の加工条件データも入力できる。
【0059】
演算部710は、レイアウトデータ、レンズLEに対するチャック位置の指定等の加工条件データを取得すると、加工用玉型決定プログラムに従い、取得された左リムFL及び右リムFRの三次元形状データ、レアイウトデータ等に基づいて加工用データの玉型形状を決定する。以下、加工用玉型決定プログラムを説明する。
【0060】
まず、演算部710は、取得された左リムFL及び右リムFRの三次元形状データを、空間の座標系(三次元座標系)に配置する演算を行う。図11は、装用者の眼鏡装用状態を基準とした左右方向を水平軸に持つ空間の座標系の例であり、左右方向をX軸方向とし、前後方向をY軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。空間の座標系の原点をOとする。このときの左リムFLの左三次元形状データTDLを(XrLi,YrLi,ZrLi)(i=1,2,3・・・、N)とする。また、右リムFLの左三次元形状データTDRを(XrRi,YrRi,ZrRi)(i=1,2,3・・・、N)とする。例えば、iは1000ポイントのデータである。
【0061】
演算部710は、左三次元形状データTDLに関し、左三次元形状データTDLが近似的に球上に載ると仮定される球SLを決定(取得)する。例えば、左三次元形状データTDLの任意の4点を選び、この4点が球上に位置するような球中心SOLと半径SrLを求めることにより、球SLを決定できる。同様に、演算部710は、右三次元形状データTDRに関し、右三次元形状データTDRが近似的に球上に載ると仮定される球SRを決定し、その球中心SORと半径SrRを求める。
【0062】
図12は、空間の座標系での左右リムの三次元形状データTDL及びTDR、球中心SOL及びSORの配置の例を示す図である。例えば、図12(a)のように、空間の座標系のZ軸方向に対して三次元形状データTDL及びTDR、球中心SOL及びSORが眼鏡装用状態の傾斜角AL1を持つように、各データの配置位置が決定される。また、図12(b)のように、X軸に対する左三次元形状データTDLの反り角BL1と、X軸に対する右三次元形状データTDRの反り角BR1とが、等しくなるように配置位置が決定される。また、球中心SOLと球中心SORとのX軸方向の距離は、眼鏡枠形状測定装置1で測定された左三次元形状データTDLの左端と右三次元形状データTDRの右端との距離DBLを基に決定できる。
【0063】
次に、演算部710は、取得されたレイアウトデータに基づき、球SL上のレンズ光学中心OCLの座標位置と、球SR上のレンズ光学中心位置OCRの座標位置と、を決定する。
【0064】
まず、幾何中心間距離FPDに基づき、X軸方向(水平方向)における左三次元形状データTDLの幾何中心PCLと、右三次元形状データTDRの幾何中心PCRが決定される。そして、瞳孔中心間距離PDに基づき、Y軸に平行でX軸方向に離れた左眼の視線LOSLの方向及び右眼の視線LOSRの方向が決定される(図11図12(b)参照)。また、左リムの幾何中心PCLに対するレンズ光学中心OCLの高さデータに基づき、Z軸における視線LOSLの位置が決定される。同様に、右リムの幾何中心PCRに対するレンズ光学中心OCRの高さデータに基づき、Z軸における視線LOSRの位置が決定される。そして、視線LOSLと球SLとの交点を求めることにより、球SL上のレンズ光学中心OCLの座標位置が決定される。また、視線LOSRと球SRとの交点を求めることにより、球SR上のレンズ光学中心位置OCRの座標位置が決定される。
【0065】
次に、演算部710は、加工用の玉型形状を得るための玉型基準軸を設定する。玉型基準軸は、加工装置10のレンズ保持軸(レンズチャック軸21L、21R)によって眼鏡レンズLEを保持させるときの軸線方向として設定する。例えば、演算部710は、レンズLEに対するチャック位置の指定に基づき、眼鏡装用状態を基準にした左右の三次元形状データTDR及びTDLについて、加工装置10のレンズ保持軸(レンズチャック軸21L、21R)によって眼鏡レンズLEを保持させるときの軸線方向を定め、これを玉型基準軸とする。
【0066】
レンズ保持軸のチャック位置が光心位置に指定されている場合を説明する。以下では、左レンズを例にして説明する。
【0067】
演算部710は、レンズ保持軸の軸線方向として、レンズ光学中心OCLと球SLの球中心SOLとを通る法線ベクトルVLaを求める。球中心SOLを通る法線ベクトルVLaは、近似的にレンズ保持軸の軸線方向として扱うことができる。演算部710は、法線ベクトルVLaに垂直な平面OLHを求め、この平面OLHに左三次元形状データTDLと、レンズ光学中心OCLと、座標系の水平軸(X軸)と、を投影する。そして、演算部710は、図13(a)に示すように、平面OLHに投影された水平軸の軸方向H1をレンズLEの乱視軸の基準方向(0度−180度の方向)として決定する。また、演算部710は、平面OLHに投影された左三次元形状データTDLによって形成される二次元形状を加工用データの玉型形状TD2Lとして決定する。図13(a)では、平面OLH上で、リムの反り方向をx軸(従来の方法で定められた玉型の横軸)とし、上下方向をy軸とした座標で表した二次元玉型形状が図示されている。この平面OLH上に投影された水平軸の軸方向H1は右下がりとなり、x軸に対して角度CL1aでずれている。なお、水平軸(X軸)及び左三次元形状データTDLを平面OLHへ投影した各点の座標については、周知の演算方法によって数学的に求めることができる。
【0068】
演算部710は、左三次元形状データTDLを平面OLHに投影したデータを、図13(b)に示すように、レンズ光学中心OCL(すなわちチャック中心)を基準とし、軸方向H1を0度−180度とした二次元データに変換することで、加工用の玉型形状TD2Lを得る。
【0069】
演算部710は、右レンズの加工用データの玉型形状及び乱視軸の基準方向についても同様な方法によって決定する。あるいは、左レンズの加工用の玉型形状TD2L及び軸方向H1を左右反転することで、右レンズの加工用データの玉型形状及び乱視軸の基準方向を決定しても良い。
【0070】
ここで、図14(a)は、前傾角AL1を考慮せずに、従来の方法で得た乱視軸の軸方向と玉型形状TD2Laの比較例を示す図である。従来方法では、図14(a)のように、リムの反り方向のx軸に平行な軸H1aがレンズLEの乱視軸の基準方向(0度−180度の方向)として扱われていたものである。この場合、実際の眼鏡装用状態では、リムの傾斜角AL1が有ることにより、装用者の視線方向(正面方向)から見ると、図14(b)のように、軸H1aは空間座標系のX軸に対して角度CL1aのずれが生じていることになる。
【0071】
これに対して、図13(b)における玉型形状TD2Lの軸H1は、ずれの角度CL1aが補正されたものとなり、眼鏡装用状態での乱視軸がより正しく位置することになる。
【0072】
レンズ保持軸のチャック位置が枠心位置に指定されている場合を説明する。以下では、左レンズを例にして説明する。
【0073】
演算部710は、レンズ保持軸の軸線方向として、幾何中心PCLと球SLの球中心SOLとを通る法線ベクトルVLpを求める。球中心SOLを通る法線ベクトルVLpは、近似的にレンズ保持軸の軸線方向として扱うことができる。演算部710は、法線ベクトルVLpに垂直な平面PLHを求め、この平面PLHに左三次元形状データTDLと、レンズ光学中心OCLと、座標系の水平軸(X軸)と、を投影する。そして、演算部710は、図13(a)と同様に、平面PLHに投影された水平軸に軸方向をレンズLEの乱視軸の基準方向(0度−180度の方向)として決定する。また、演算部710は、平面PLHに投影された左三次元形状データTDLによって形成される二次元形状を加工用データの玉型形状として決定する。なお、光心位置の場合と枠心位置の場合における加工用玉型形状の違いは、法線ベクトルVLaとVLpの角度差分となる。このため、チャック位置が枠心位置の場合に決定される加工用データの玉型形状及び乱視軸の基準方向の図示は省略する。
【0074】
なお、玉型基準軸の設定は上記に限られず、種々の方法がある。例えば、チャック位置が枠心位置の場合、平面PLHは、空間座標系に配置した左三次元形状データTDLの最小二乗平面として求めることでもよい。この場合、玉型基準軸とするレンズ保持軸の軸線方向(ベクトルVLp)は最小二乗平面の法線方向に設定される。すなわち、最小二乗平面もレンズ保持軸の軸線方向を法線に持つ平面PLHとして設定され、平面PLHに左三次元形状データTDと、座標系の水平軸(X軸)と、を投影することにより、加工用の玉型形状及び乱視軸の基準方向が決定される。またさらに、チャック位置が光心位置の場合には、最小二乗平面の平面PLHにレンズ光学中心OCLを投影することで、レンズ光学中心OCLを基準とした加工用の玉型形状及び乱視軸の基準方向を決定できる。玉型基準軸(VLp,VLa)は、予め設定されているものでもよい。
【0075】
玉型形状決定装置700で決定された加工用の玉型形状及び乱視軸の基準方向のデータは、カップ取付装置800に送られ、レンズLEへのカップCuの取付に使用されても良い。例えば、図15は、カップ取付装置800でカップCuをレンズLEに取り付けるときに使用されるタッチパネル720の画面例である。画面上には、観察光学系832が含む撮像光学系のカメラで撮像されたレンズLEのレンズ像LE1が表示されている。また、画面には玉型形状決定装置700で決定された二次元の玉型形状RD2Lが表示されている。図15の画面例では、玉型形状RD2Lの水平軸H1が0−180度で表示されている。レンズ像LE1には、レンズLEに付された3つの印点の像M1,M2,M3が映し出されている。操作者は、中央の印点像M2が、取付の基準軸のL1に一致するようにレンズLEを移動させる。また、操作者は、3つの印点を結ぶ軸が水平軸(H1)に一致するようにレンズLEを回転させる。これにより、乱視軸の基準方向の位置合わせができる。このとき玉型形状TD2Lが同時に表示されていることにより、操作者はレンズ像LE1の外径と玉型形状TD2Lとを見比べることで、レンズ径が足りているか否かを確認できる。レンズLEの位置合わせが完了したら、カップ取付け機構830を作動させ、カップCuをレンズLEの表面に取り付ける。
【0076】
なお、カップ取付装置700に検出光学系834が設けられている場合は、検出光学系834で検出された乱視軸に、図13のずれの角度CL1aを補正してカップCuの装着部832を回転させることで、カップCuを取り付けることでも良い。
【0077】
レンズLEへのカップCuの取付が完了したら、加工装置10のレンズ保持軸(レンズチャック軸21L、21R)にカップCuを介してレンズLEをチャッキングする。玉型形状決定装置700で決定された加工用の玉型形状は加工装置50に転送され、加工装置10によるレンズ周縁加工に使用される。このレンズ加工において、加工用の玉型形状は乱視軸の基準方向が補正されているため、リムの前傾角に起因する乱視軸角度のずれの問題が軽減され、リムに支持された眼鏡レンズの乱視軸がより正確に位置することとなる。
【0078】
なお、本発明に開示の技術は、本実施例に記載した装置への適用のみに限定されない。例えば、上記実施例の機能を行う玉型決定ソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU、プロセッサ等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 眼鏡枠形状測定装置
10 眼鏡レンズ周縁加工装置
700 玉型形状決定装置
710 演算部
712 記憶部
720 タッチパネル
800 カップ取付装置
TDL,TDR 三次元形状データ
OLH,PLH 平面
VLa,VLp 軸線方向
TD2L 加工用の玉型形状
H1 乱視軸の基準方向
SL,SR 球
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15