【実施例】
【0024】
本発明の実施の形態に係る実施例の丁張調整器具について、
図1乃至
図4を用いて詳細に説明する。
図1(a)は実施例に係る丁張調整器具を上方から視た場合の外観図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるA方向矢視図である。
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施例に係る丁張調整器具1は、構造物の基礎材50(
図4参照)を据え付ける際の丁張り作業において、水糸L(
図3及び
図4参照)の位置調整を行うための丁張調整器具である。
丁張調整器具1は、基礎材50を挟んで互いに対向して設置される支柱51,51(
図4参照)へ取り付けられ、長手方向Xに沿ってスリット3が設けられる筒状体2と、この筒状体2の両端部2a,2bに跨って設けられ、筒状体2の内部2cに収容されるネジ部材4と、ネジ部材4に取り付けられる留め部材7,8(
図2参照)と、筒状体2の内部2cにおいて、ネジ部材4に取り付けられる環状部材5(
図2参照)と、この環状部材5に立設され、水糸Lが結着される棒状部材6と、を備える。このうち、筒状体2においては、両端部2a,2bはそれぞれネジ部材4が貫通する平板である。さらに、端部2aと端部2bの間には、長手方向Xの水平に対する傾斜を検出する水準器10が設けられる。
【0025】
次に、筒状体の内部について、
図2を用いながらより詳細に説明する。
図2(a)及び
図2(b)は、それぞれ
図1(a)及び
図1(b)において筒状体の一部を省略した図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、水準器10の図示も省略する。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、ネジ部材4は、軸体4cに第1のネジ部S
1が形成されるとともに、基端4a及び先端4bが両端部2a,2bに対し、それぞれ留め部材7及び留め部材8を介して回動可能に固定される。
また、ネジ部材4は、筒状体2の外部において、基端4aに摘み部9が設けられる。摘み部9は、基端4aに溶接されるナットであって、基端4aの半径方向へ突出する2枚の羽根9aが備えられる。
なお、ネジ部材4の基端4a及び先端4bとは、それぞれ筒状体2の両端部2a,2bを挟んで一定の長さを占める範囲をいう。すなわち、基端4a及び先端4bとは、それぞれネジ部材4の両切断端面4d,4eのみを指しているのではなく、両切断端面4d,4eを含んだ軸体4cの一部分を指す概念である。
【0026】
次に、留め部材7は、筒状体2の内部2cにおいて、細径の基端4aに螺着され、ネジ部材4をスリット3に沿って端部2bの方向(X
1)へ移動させるように付勢するコイルバネである。また、留め部材8は、筒状体2の内部2cにおいて、先端4bに固定され、端面8aが筒状体2の端部2bに当接するナットである。すなわち、留め部材7,8は、ネジ部材4とともに回動可能である。
また、環状部材5は、その内周面5aに第1のネジ部S
1に螺合する第2のネジ部S
2が形成される。
そして、
図2(b)に示すように、棒状部材6は、その下端6aが環状部材5の外周面5bに例えば溶接によって強固に固定されるとともに、その上端6bが筒状体2の外部へ突出し、スリット3を通過して配設される。より詳細には、棒状部材6は、外周面5bの法線方向に沿って配設される。
【0027】
続いて、本実施例に係る丁張調整器具の作用について、
図3を用いて詳細に説明する。
図3は、実施例に係る丁張調整器具の斜視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、水準器10の図示も省略する。
図3に示すように、摘み部9の羽根9aを把持してネジ部材4を回動させると、環状部材5がネジ部材4に取り付けられた位置に留まって、ネジ部材4とともに回動しようとする。しかし、棒状部材6の下端6aが環状部材5の外周面5bに固定されており、さらに、棒状部材6はスリット3を通過して配設されるため、棒状部材6はスリット3に係止された状態となっている。そのため、ネジ部材4が回動しても環状部材5はこれとともに回動することができない。一方、環状部材5は内周面5aに第2のネジ部S
2が形成されることから、環状部材5はネジ部材4とともに回動できない代わりに、ネジ部材4に沿ってスライド移動することとなる。より詳細には、ネジ部材4をα方向またはβ方向に回動させると、環状部材5がX
2方向またはX
1方向へスライド移動する。
また、環状部材5の外周面5bには、水糸Lが結着される棒状部材6が固定されているので、ネジ部材4の回動に伴い、棒状部材6と水糸Lがスリット3に沿ってスライド移動することとなる。
【0028】
さらに、丁張調整器具1においては、留め部材7によって、ネジ部材4の先端4bが筒状体2の端部2bの方向X
1に移動するように付勢されるため、留め部材8の端面8aが筒状体2の端部2bに強く当接される。したがって、ネジ部材4の長手方向Xに沿った位置が変化することがなく、水糸Lの位置が保持される。さらに、ネジ部材4の回動時におけるガタつきも抑制される。
【0029】
そして、本実施例に係る丁張調整器具の使用状態について、
図4を用いながら詳細に説明する。
図4は、実施例に係る丁張調整器具の使用状態を示す外観図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、ネジ部材4、水準器10等の図示も省略する。
図4に示すように、支柱51は、例えば、鉛直方向に沿って設置される鋼管であって、基礎材50を据え付けるための掘削穴52の土留擁壁として円筒形状に組み立てられたライナープレート53の上縁53aに、ボルト54によって固定されたものである。なお、上縁53aは、地上Gから一定の高さに設置されている。
筒状体2は、支柱51と支柱51の間に、地上Gから所望の高さにおいて、取付部55を介して取り付けられる。このとき、筒状体2には水準器10(
図1参照)が設けられるため、長手方向Xが水平となるように、支柱51に対する筒状体2の配置が予め決定される。なお、より正確な棒状部材6の位置は、トランシット等を使用して後に決定される。また、具体的には、筒状体2の地上Gからの高さは、例えば1(m)程度であり、取付部55としては、例えばクロスクランプ等が使用される。
このように設置された一対の丁張調整器具1によって張設された水糸Lの高さに、上端50aを一致させることで、基礎材50が設計通りに掘削穴52へ据え付けられる。
【0030】
以上説明したように、本実施例の丁張調整器具1によれば、ネジ部材4の回動に伴い、棒状部材6(ポイント釘に相当する部材)と水糸Lがスリット3に沿ってスライド移動するため、水糸Lの位置を容易に調整することができる。そのため、従来行われていたようなポイント釘の抜き差し等の煩雑な手順を繰り返す必要がなく、効率良く丁張り作業を完了させることができる。
このとき、ネジ部材4の回動運動を棒状部材6のスライド運動へ変換することができるため、特許文献1乃至3に開示された発明又は考案のように水糸を直接手でスライド運動させる場合と比較して、張設された水糸の位置を精度良く微調整可能である。また、この微調整は、ネジ部材を回動させるという極めて簡易な一種類の操作で行うことが可能であるので、作業者の熟練度等に依存せず、複数回に亘る水糸Lの位置の調整を均一の高い精度で行うことができる。
【0031】
さらに、ネジ部材4は、留め部材7,8によって、ネジ部材4の長手方向Xに沿った位置が変化することがないので、水糸Lの位置の調整時における再現性が良好である。また、留め部材7,8によって、ネジ部材4の回動時におけるガタつきが抑制されるため、環状部材5がネジ部材4に沿って滑らかにスライド移動することが可能となり、水糸Lがスライド移動する際の誤差を無視し得る程度に小さくすることができる。
加えて、ネジ部材4は、摘み部9により、回動の際に指がネジ部材4から滑ることが防止されることから、ネジ部材4をわずかに回動させる際の操作を正確に行うことができる。したがって、水糸Lの位置の微調整を確実に行うことができる。
【0032】
また、棒状部材6は、下端6aが環状部材5の外周面5bに強固に固定されるとともに、スリット3に係止されることから、丁張り作業の当初から完了の間、棒状部材6の屈曲を抑制することが可能である。したがって、棒状部材6が外周面5bに対しほぼ直交して配設される状態を安定的に保持することが可能である。
さらに、筒状体2は、支柱51及びライナープレート53を介し、地上G付近から離れた位置に取り付けられるので、作業員等による棒状部材6や水糸Lへの接触を防止することができるとともに、重機の通過によって発生する振動の影響を大きく軽減することが可能である。したがって、張設された水糸Lの位置を、長期間に亘って安定的に保持可能である。また、筒状体2は水準器10が設けられるため、支柱51へより正確かつ手早く取り付けることができる。
【0033】
なお、本発明の丁張調整器具1の構造は実施例に示すものに限定されない。例えば、摘み部9と留め部材7によって筒状体2の端部2aが強く挟み込まれる場合には、長手方向Xに沿ったネジ部材4の移動が抑制されるため、留め部材8は設けられなくても良い。
また、留め部材7は、筒状体2の内部2cにおいて、ネジ部材4の先端4bに螺着され、ネジ部材4をスリット3に沿って端部2aの方向(X
2)へ移動させるように付勢する弾性体であっても良い。この場合、留め部材8は、筒状体2の外部において、ネジ部材4の先端4bに固着されるナットであり、端面8aと反対側の端面が端部2bに当接することで、長手方向Xに沿ったネジ部材4の移動を抑制することができる。
さらに、留め部材7が筒状体2の内部2cにおいてネジ部材4の基端4aに螺着され、かつ筒状体2の内部2cに留め部材8が設置される場合であって、留め部材8の端面8aが端部2bへ固着され留め部材8がネジ部材4と供回りをせず、かつネジ部材4の先端4bが留め部材8に係止される場合には、先端4bが端部2bを貫通しなくても良いし、貫通していても良い。
また、筒状体2の端部2a,2bが開放端であっても良く、この開放端がネジ部材4を貫通可能な板状の留め部材によってそれぞれ閉鎖され、この板状の留め部材にネジ部材4の基端4aと先端4bがそれぞれ係止されることで、長手方向Xに沿ったネジ部材4の移動を抑制可能な構造であっても良い。さらに、摘み部9として、凹部が基端4aに設けられても良い。