特許第6471620号(P6471620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6471620エポキシ化合物、部分エステル化エポキシ化合物及びそれらを含む硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6471620
(24)【登録日】2019年2月1日
(45)【発行日】2019年2月20日
(54)【発明の名称】エポキシ化合物、部分エステル化エポキシ化合物及びそれらを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/22 20060101AFI20190207BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20190207BHJP
【FI】
   C08G59/22
   C08L63/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-120225(P2015-120225)
(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-2246(P2017-2246A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】堀越 良爾
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−280677(JP,A)
【文献】 特表2000−515531(JP,A)
【文献】 米国特許第05955551(US,A)
【文献】 特開2008−003260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/22−59/72
C08L 63/00−63/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるエポキシ化合物。
−O−CR11(−CH−X)−CH−O−Y−O−G (1)
〔式中、
及びGは、独立に、グリシジル又はメチルグリシジルであり、
11は、水素又はメチルであり、
は、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn1−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n1は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールであり、
は、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn2−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n2は、0又は1〜6の整数である)である〕
【請求項2】
が、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、又は、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンである、請求項1に記載のエポキシ化合物。
【請求項3】
及びYが有するベンゼン環の数の合計が3以上である、請求項1又は2に記載のエポキシ化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法であって、工程(1A)及び工程(1B):
(1A)芳香族単官能エポキシ化合物と、ジオール化合物とを反応させて、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程であって、ジオール化合物の使用量は、芳香族単官能エポキシ化合物におけるエポキシ基1当量に対して、1当量〜10当量である、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基をエポキシ化する工程と
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法
【請求項5】
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法であって、工程(1C):
(1C)請求項1〜のいずれか1項に記載のエポキシ化合物又は請求項4に記載の製造方法により得られたエポキシ化合物(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる工程
を含む、部分エステル化エポキシ化合物の製造方法
【請求項6】
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法であって、工程(1A’)、工程(1B’)及び工程(1C’):
(1A’)芳香族単官能エポキシ化合物と、ジオール化合物とを反応させて、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B’)工程(1A’)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基をエポキシ化して、エポキシ化合物を得る工程と、
(1C’)工程(1B’)で得られたエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる工程と
を含む、部分エステル化エポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
下記式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物。
−O−CR12(−CH−X)−CH−O−Y−O−A (2)
〔式中、
及びAは、独立に、G又は基:−CHCR13(OR21)CHO−Zであり、Gは、グリシジル又はメチルグリシジルであり、R13は、水素又はメチルであり、R21は、水素又は(メタ)アクリロイルであり、Zは、(メタ)アクリロイルであり、Gの平均の個数と基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの平均の個数との割合は10:90〜90:10であり、
12は、水素又はメチルであり、
は、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn3−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜4のアルキレンであり、n3は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールであり、
は、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn4−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n4は、0又は1〜6の整数である)である〕
【請求項8】
(a)請求項1〜のいずれか一項に記載のエポキシ化合物及び(b)請求項に記載の部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物と、硬化剤とを含む、硬化性組成物。
【請求項9】
液晶滴下工法用シール剤である、請求項8に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物、部分エステル化エポキシ化合物及びそれらを含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法は真空下でシール剤の閉ループ内に液晶を直接滴下、貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作成することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シールの硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
シール剤の原料化合物としてエポキシ化合物が用いられている。また、シール剤の原料であるエポキシ化合物として、液晶への溶解性を下げるために、高極性化したエポキシ化合物及び(メタ)アクリレート化エポキシ化合物が用いられている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2002/092718号
【特許文献2】特開2005−232370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載されたエポキシ化合物は、これらを用いて得られる硬化物の親水性が高くなる。これにより、透湿性が高まり液晶表示特性の信頼性が低下する問題があった。
【0006】
本発明は、液晶への溶解性が低く、透湿性が低い硬化物を与えるエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討の結果、単官能エポキシ化合物にジオール化合物を付加させ、さらにグリシジルエーテル化させたエポキシ化合物、または、その部分エステル化エポキシ化合物は、それらを用いて得られる硬化物の透湿性が低く、液晶への溶解性が低くなることを見出し、本発明に至った。本発明は以下の構成を有する。
[1]下記式(1)で示されるエポキシ化合物。
−O−CR11(−CH−X)−CH−O−Y−O−G (1)
〔式中、
及びGは、独立に、グリシジル又はメチルグリシジルであり、
11は、水素又はメチルであり、
は、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn1−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n1は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールであり、
は、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn2−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n2は、0又は1〜6の整数である)である〕
[2]Yが、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、又は、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンである、[1]のエポキシ化合物。
[3]X及びYが有するベンゼン環の数の合計が3以上である、[1]又は[2]のエポキシ化合物。
[4]エポキシ化合物であって、工程(1A)及び工程(1B):
(1A)芳香族単官能エポキシ化合物と、ジオール化合物とを反応させて、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基をグリシジルエーテル化する工程と
を含む方法により得られる、エポキシ化合物。
[5][4]に記載の方法により得られる、[1]のエポキシ化合物。
[6]部分エステル化エポキシ化合物であって、工程(1C):
(1C)[1]〜[4]のいずれかに記載のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる工程
を含む方法により得られる、部分エステル化エポキシ化合物。
[7]下記式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物。
−O−CR12(−CH−X)−CH−O−Y−O−A (2)
〔式中、
及びAは、独立に、G又は基:−CHCR13(OR21)CHO−Zであり、Gは、グリシジル又はメチルグリシジルであり、R13は、水素又はメチルであり、R21は、水素又は(メタ)アクリロイルであり、Zは、(メタ)アクリロイルであり、Gの平均の個数と基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの平均の個数との割合は10:90〜90:10であり、
12は、水素又はメチルであり、
は、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn3−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜4のアルキレンであり、n3は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールであり、
は、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn4−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n4は、0又は1〜6の整数である)である〕
[8](a)[1]〜[5]のいずれかのエポキシ化合物及び(b)[6]及び[7]のいずれかの部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物と、硬化剤とを含む、硬化性組成物。
[9]液晶滴下工法用シール剤である、[8]の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶への溶解性が低く、透湿性が低い硬化物を与えるエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本明細書において、「グリシジル」とは、2,3−エポキシプロピルを意味する。「メチルグリシジル」とは、2,3−エポキシ−2−メチルプロピルを意味する。「エポキシ基」とは、グリシジル基(2,3−エポキシプロピル基)及びメチルグリシジル基(2,3−エポキシ−2−メチルプロピル基)の少なくとも一方を含む。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH=CH−C(=O)−)及びメタクリロイル基(CH=CH(CH)−C(=O)−)の少なくとも一方を含む。
【0010】
[エポキシ化合物]
(第一のエポキシ化合物)
第一のエポキシ化合物は、上記式(1)で示される。
式(1)中、G及びGは、独立に、グリシジル又はメチルグリシジルである。G及びGは、同一であって、グリシジルであるのが好ましい。G及びGが、同一であってグリシジルであると、合成が容易である。
式(1)中、R11は、水素又はメチルである。R11は、水素であるのが好ましい。R11が水素であると、合成が容易である。
【0011】
式(1)中、Xは、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn1−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n1は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールである。
【0012】
炭素原子数6〜20のアリールは、単環又は多環の芳香族炭化水素基であり、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、ターフェニリル、アントラセニル、フルオレニル等が挙げられ、好ましくはフェニル及びビフェニリルである。
【0013】
炭素原子数6〜20のアリールの置換基は、特に限定されず、炭素原子数1〜4のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルメルカプト、シクロアルキルが挙げられる。
【0014】
炭素原子数1〜4のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられる。
【0015】
アルコキシにおけるアルキル部分の例示は、前記した炭素原子数1〜4のアルキルの例示が挙げられる。アルコキシとして、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。アルキルカルボニル及びアルキルメルカプトにおけるアルキルの例示は、前記した炭素原子数1〜4のアルキルの例示が挙げられる。アルキルカルボニルとして、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイル等が挙げられる。アルキルメルカプトとして、メチルメルカプト、エチルメルカプト、プロピルメルカプト、i−プロピルメルカプト、ブチルメルカプト、i−ブチルメルカプト、sec−ブチルメルカプト、tert−ブチルメルカプト等が挙げられる。シクロアルキルは、炭素原子数3〜20の単環又は多環の脂肪族炭化水素基であり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、アダマンチル等が挙げられる。
【0016】
炭素原子数1〜4のアルキレンは、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン(プロパン−1,2−ジイル)、プロピリデン(プロパン−1,1−ジイル)、イソプロピリデン(プロパン−2,2−ジイル)、テトラメチレン、ブチリデン(ブタン−1,1−ジイル)、イソブチリデン(2−メチルプロパン−1,1−ジイル)等が挙げられる。また、炭素原子数1〜6のアルキレンは、前記の炭素原子数1〜4のアルキレンに加えて、ペンタメチレン、2−メチルペンタン−1,5−ジイル、ヘキサメチレン等の炭素原子数5及び6のアルキレンが含まれる。
【0017】
総原子数5〜30のヘテロアリールは、炭素原子の他に、少なくとも酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む単環又は多環の複素環基であり、フタルイミジル、イミダゾリル、キサンテニル、チオキサンテニル、チエニル、ジベンゾフリル、クロメニル、イソチオクロメニル、フェノキサチイニル、ピロリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニル等が挙げられる。総原子数5〜30のヘテロアリールの置換基は、前記した炭素原子数6〜20のアリールの置換基が挙げられる。
【0018】
は、フェノキシ、4−tert-ブチル−フェノキシ、ビフェニル−2−イルオキシ、フタルイミジル、フェニル−(OCHCHn1a−O−(ここで、n1aは2〜10の整数を表す)が好ましく、ビフェニル−2−イルオキシがより好ましい。
【0019】
式(1)中、Yは、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn2−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n2は、0又は1〜6の整数である)である。
【0020】
炭素原子数6〜20のアリーレンは、単環又は多環の芳香族基であり、フェニレン、ナフチレン、及びアントラセニレンが挙げられ、好ましくはフェニレンである。
【0021】
炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける炭素原子数1〜4のアルキレン及び炭素原子数6〜20のアリーレンの例示は、前記したとおりである。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンとして、エチレン−1,4−フェニレンが好ましい。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける各基への結合の順序はいずれであってもよいが、Xを含む基が結合する酸素原子には、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける、炭素原子数6〜20のアリーレンが結合しているのが好ましい。
【0022】
炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレンにおける炭素原子数1〜4のアルキレン及び炭素原子数6〜20のアリーレンの例示は、前記したとおりである。炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレンとして、1,3−フェニレンビスメチレン(m−キシリレン)及び1,4−フェニレンビスメチレン(p−キシリレン)が好ましい。
【0023】
炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンにおける炭素原子数1〜4のアルキレン及び炭素原子数6〜20のアリーレンの例示は、前記したとおりである。炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンとして、(2,2−プロパンジイル)ビス(1,4−フェニレン)が好ましい。
【0024】
式(1)中、Yは、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、又は、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレンであるのが好ましい。好ましいYを有するエポキシ化合物は、X及びYがいずれも芳香環を有する。X及びYがいずれも芳香環を有するエポキシ化合物を用いると、得られる硬化物の透湿性がより優れる。
【0025】
また、X及びYが有するベンゼン環の数の合計が3以上であるのが好ましい。X及びYが有するベンゼン環の数の合計が3以上であるエポキシ化合物を用いると、得られる硬化物の透湿性がさらにより優れる。ここで、ベンゼン環を形成する炭素原子は、別の炭素原子と更にベンゼン環を形成してもよい。例えば、ナフチルはベンゼン環の数が2である。
【0026】
以上より、式(1)で示されるエポキシ化合物は、下記化合物が好ましい。
【化1】
【0027】
式(1)で示されるエポキシ化合物のエポキシ当量は、特に限定されないが、100〜1,000g/eq.であるのが好ましく、150〜500g/eq.であるのがより好ましい。このような範囲であれば、接着性が良好であり、かつ液晶への汚染性が更に抑えられる。エポキシ当量は、エポキシ化合物が混合物である場合、混合物の平均値として求められる。本発明において、エポキシ当量は、JISK7236:2001(ISO3001:1999に対応)に準拠して求められる。
【0028】
式(1)で示されるエポキシ化合物の25℃における粘度は、特に限定されないが、1,000〜3,000,000mPa・sであるのが好ましく、5,000〜2,000,000mPa・sであるのがより好ましい。このような範囲であれば、従来よりも硬化剤や粉体等の固形成分を多く充填できる。なお、粘度は、E型粘度計を用いて測定した値である。
【0029】
第一のエポキシ化合物は、エポキシ基が0、1又は2個の化合物、並びにその多量体を含む混合物である場合がある。エポキシ基の数は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって計算できる。具体的には、HPLCによりグリシジル基及び/又はメチルグリシジル基の個数に対応したピークが得られ、それぞれのピーク面積からエポキシ基の個数の存在割合を算出できる。これにより、化合物に含まれるエポキシ基の個数を算出することができる。よって、第一のエポキシ化合物が混合物である場合、エポキシ基の数は混合物の平均値として算出される。すなわち、エポキシ基の数はHPLCの各ピークにおける質量分析(LC−MS)を行うことにより分子量が判断でき、混合物中の各成分の存在比から混合物におけるエポキシ基の平均数が算出できる。
【0030】
(第二のエポキシ化合物)
第二のエポキシ化合物は、エポキシ化合物であって、工程(1A)及び工程(1B):
(1A)芳香族単官能エポキシ化合物と、ジオール化合物とを反応させて、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基をエポキシ化する工程と
を含む方法により得られる。ここで、ヒドロキシ基のエポキシ化は、ヒドロキシ基をグリシジルオキシ基及び/又はメチルグリシジルオキシ基とすることを含む。
【0031】
第二のエポキシ化合物は、エポキシ基が0、1又は2個の化合物、並びにその多量体を含む混合物である場合がある。
第二のエポキシ化合物は、好ましくは、第一のエポキシ化合物である。
第二のエポキシ化合物の製造方法の条件は、好ましいものを含め、後述するとおりである。
【0032】
[部分エステル化エポキシ化合物]
(第一の部分エステル化エポキシ化合物)
部分エステル化エポキシ化合物は、前記式(2)で示される。
【0033】
式(2)中、A及びAは、独立に、G又は基:−CHCR13(OR21)CHO−Zであり、Gは、グリシジル又はメチルグリシジルであり、R13は水素又はメチルであり、R21は、水素又は(メタ)アクリロイルであり、Zは、(メタ)アクリロイルであり、Gの平均の個数と基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの平均の個数との割合は10:90〜90:10(即ち、G:CHCR13(OR21)CHO−Z=10:90〜90:10)である。
【0034】
はグリシジルであるのが好ましい。Gがグリシジルであると、合成が容易である。
【0035】
基:−CHCR13(OR21)CHO−Zは、エポキシ基と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させることにより形成される。エポキシ基がグリシジル基である場合、R13が水素であり、エポキシ基がメチルグリシジル基である場合、R13がメチルである。R13は水素であるのが好ましい。R13が水素であると、合成が容易である。(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物が(メタ)アクリル酸である場合、R21が水素であり、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物が(メタ)アクリル酸無水物である場合、R21が(メタ)アクリロイルである。
【0036】
式(2)中、Gの数及び基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの数は、HPLCによって計算することができる。具体的には、HPLCにより、各エポキシ基の数及び各(メタ)アクリロイル基の数に対応したピークが得られ、それぞれのピーク面積から各個数の存在割合を算出することができる。これにより、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物における、G及び基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの個数が求められる。式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物が混合物である場合は、G及び基:−CHCR13(OR21)CHO−Zの数は、平均値として算出される。例えば、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の混合物には、式(1)で示されるエポキシ化合物の混合物、並びにそれらのグリシジル基の一部及び/又は全部が基:−CHCR13(OR21)CHO−Zになった化合物が含まれる場合がある。
【0037】
式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物において、Gと基:−CHCR13(OR21)CHO−Zとの割合は、10:90〜90:10であるのが好ましい。ここで、Gと基:−CHCR13(OR21)CHO−Zとの割合は、HPLC及びエポキシ当量より求めることができる。具体的には、原料であるエポキシ化合物のエポキシ当量が部分エステル化された分だけ減少することから、部分エステル化エポキシ化合物のエポキシ当量を測定することにより、どの程度エステル化されたかが算出できる。また、HPLCの各ピークにおける質量分析(LC−MS)を行うことにより各成分の分子量及び存在割合が求められ、成分ごとのグリシジル基又はメチルグリシジル基と(メタ)アクリロイル基との割合を求めることができる。
【0038】
式(2)中、R12は、水素又はメチルである。R12は、水素であるのが好ましい。R12が水素であると、合成が容易である。
【0039】
式(2)中、Xは、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−O−、置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール−(O−Rn3−O−(式中、Rは、炭素原子数1〜4のアルキレンであり、n3は、1〜10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5〜30のヘテロアリールである。Xは、好ましいものを含め、Xで前記したとおりである。
【0040】
式(2)中、Yは、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn4−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n4は、0又は1〜6の整数である)である。Yは、好ましいものを含め、Yで前記したとおりである。
【0041】
式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の25℃における粘度は、特に限定されないが、2,000〜3,000,000mP・sであるのが好ましく、5,000〜2,000,000mP・sであるのがより好ましく、10,000〜1,500,000mP・sであるのが特に好ましい。このような範囲であれば、液晶に塗布した際に流動が生じにくく、液晶への汚染を抑えることができる。
【0042】
(第二の部分エステル化エポキシ化合物)
第二の部分エステル化エポキシ化合物は、(1C)工程(1A)及び工程(1B)を含む方法により得られるエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させることにより得られる。ここで、第二の部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、好ましいものを含め、後述するとおりである。
【0043】
[エポキシ化合物の製造方法]
エポキシ化合物の製造方法は、工程(1A)及び工程(1B):
(1A)芳香族単官能エポキシ化合物と、ジオール化合物とを反応させて、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体を得る工程と、
(1B)工程(1A)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基をエポキシ化する工程と
を含む。ヒドロキシ基をエポキシ化する工程は、ヒドロキシ基をグリシジルオキシ基とする工程及びヒドロキシ基をメチルグリシジルオキシ基とする工程の少なくとも一方を含む。
【0044】
(工程(1A))
<芳香族単官能エポキシ化合物>
芳香族単官能エポキシ化合物は、グリシジル基又はメチルグリシジル基を1つ有し、かつ少なくとも1つの芳香環を有するエポキシ化合物であれば特に限定されないが、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
−X (3)
〔式中、
は、グリシジル又はメチルグリシジルであり、
は、Xと同義である〕
【0045】
は、グリシジルであるのが好ましい。Gがグリシジルであると、合成及び入手が容易である。Xは、好ましいものを含め、Xで前記したとおりである。
【0046】
芳香族単官能エポキシ化合物は、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルp−tert−ブチルフェニルエーテル、2−ビフェニリルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、フェノキシ(EO)n3aグリシジルエーテル(ここで、EOはエチレンオキシ基であり、n3aは2〜10の整数を表す)等が好ましく、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物であるのがより好ましい。
【0047】
<ジヒドロキシ化合物>
ジヒドロキシ化合物は、分子中に2個のヒドロキシ基を含む化合物であれば特に限定されない。
【0048】
ジヒドロキシ化合物は、下記式(4)で示されるジヒドロキシ化合物であるのが特に好ましい。
HO−Y−OH (4)
〔式中、Yは、炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン、炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン、炭素原子数6〜20のアリーレン−炭素原子数1〜4のアルキレン−炭素原子数6〜20のアリーレン又は基:−R−(O−Rn5−(式中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキレンであり、n5は、0又は1〜6の整数である)である〕
ここで、Yは、好ましいものを含め、Y及びYで述べたとおりである。
【0049】
ジヒドロキシ化合物として、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール等のジヒドロキシベンゼン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、4,4’−ビフェノール;4−ヒドロキシメチルフェノール、3−ヒドロキシメチルフェノール、4−ヒドロキシエチルフェノール、3−ヒドロキシエチルフェノール等のヒドロキシアルキルフェノール;ベンゼン−1,4−ジメタノール、ベンゼン−1,3−ジメタノール、ベンゼン−1,4−ジエタノール等の芳香族アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のモノアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールが好ましく、レゾルシノール及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)がより好ましい。
【0050】
工程(1A)で、芳香族単官能エポキシ化合物として、式(3)の化合物が用いられ、そして、ジヒドロキシ化合物として、式(4)の化合物が用いられる場合、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体は、下記式(5)で表される。
HO−CR14(−CH−X)−CH−O−Y−OH (5)
〔式中、
は、式(3)で定義されたとおりであり、
は、式(4)で定義されたとおりであり、
14は、水素又はメチルである〕
【0051】
ジヒドロキシ化合物の使用量は、芳香族単官能エポキシ化合物におけるエポキシ基1当量に対して、0.5当量〜10当量であり、好ましくは1当量〜5当量である。芳香族単官能エポキシ化合物の開環体の生成は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、原料の芳香族単官能エポキシ化合物のピークの消失により確認できる。
【0052】
<反応条件>
工程(1A)における反応は、金属触媒の存在下又は不存在下で行うことができる。金属触媒は、エポキシ基の開環反応に用いられる触媒であればいずれも使用することができ、例えば、銅、亜鉛、鉄、マグネシウム、銀、カルシウム、錫等の金属と、BF、SiF2−またはPF、CFSO2−等のアニオンからなる金属触媒が挙げられる。好ましくは、ホウフッ化錫(Sn(BF)である。金属触媒は、全反応混合物の重量に対して、10〜1,000ppm、好ましくは、20〜200ppmである。
【0053】
また、工程(1A)における反応は、第四級アンモニウム塩の存在下又は不存在下で行うことができる。第四級アンモニウム塩としては塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化メチルトリデシルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウムのような塩化アラルキルトリアルキルアンモニウム等が挙げられ、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましい。第四級アンモニウム塩の使用量は、全反応混合物の全重量に基づいて、0.1〜5重量%であり、0.5〜2.0重量%がより好ましい。
【0054】
工程(1A)における反応は、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができる。用いることができる有機溶媒として、ベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素:シクロヘキサノン等の環式脂肪族ケトン;並びに出発物質のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0055】
工程(1A)における反応温度は、特に制限されず、50℃〜150℃とすることができ、70℃〜130℃であるのが好ましい。
【0056】
(工程(1B))
工程(1B)により、工程(1A)で得られた芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基がエポキシ化される。工程(1B)において、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体におけるヒドロキシ基の一部又は全部がエポキシ化される。エポキシ化合物が、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体のヒドロキシ基の1つ又は2つがエポキシ化した化合物の混合物である場合、芳香族単官能エポキシ化合物の開環体の総ヒドロキシ基中の、50%〜100%がエポキシ化されるのが好ましく、75%〜100%がエポキシ化されるのがより好ましい。
【0057】
<芳香族単官能エポキシ化合物の開環体>
芳香族単官能エポキシ化合物の開環体(以下、単に「エポキシ開環体」ともいう。)は、工程(1B)における原料化合物であり、前述の芳香族単官能エポキシ化合物のエポキシ基が開環した化合物である。工程(1B)において、エポキシ化は、ヒドロキシ基をエポキシエーテル基とする公知の反応を用いることができ、例えば、エピクロロヒドリン法及び酸化法が挙げられ、好ましくはエピクロロヒドリン法である。
【0058】
<<エピクロロヒドリン法>>
エピクロロヒドリン法は、エポキシ開環体を、相関移動触媒の存在下、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンと反応させることにより、エポキシ開環体のヒドロキシ基をエポキシ化する方法である。
【0059】
エピクロロヒドリン法では、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンを、所望のエポキシ基の数となるモル数で反応させることができる。エポキシ開環体のヒドロキシ基1モルに対して、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンの量は1.0〜20モル、好ましくは3.0〜15モルである。例えば、分子中に4個のヒドロキシ基を有する式(4)で示される化合物1モルに対して、エピクロロヒドリン又はメチルエピクロロヒドリンの量は、4〜80モル、好ましくは12〜60モルである。
【0060】
相間移動触媒は、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化メチルトリデシルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及び塩化ベンジルトリメチルアンモニウムのような塩化アラルキルトリアルキルアンモニウム等の第四級アンモニウム塩が挙げられ、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムが好ましい。相間移動触媒の使用量は、反応体の全重量に基づいて、0.1〜5重量%であり、0.5〜2.0重量%がより好ましい。
【0061】
エピクロロヒドリン法における反応は、ヘキサン及びペンタン等の炭化水素;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル及びジイソプロピルエーテル等のエーテル;またはアセトン及びメチルエチルケトン等のケトンのような溶媒の存在下で行うことができるが、溶媒として過剰のエピクロロヒドリン及びメチルエピクロロヒドリンを使用することもできる。反応温度は、30〜90℃、好ましくは40〜65℃、そして最も好ましくは約50ないし約55℃の範囲の温度で反応できる。
【0062】
<<酸化法>>
酸化法は、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化して、ジアリルエーテル化合物を得る工程と、ジアリルエーテル化合物のアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基を酸化する工程とを含む方法である。本発明において、ヒドロキシ基のアリル化には、ヒドロキシ基をアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基とすることが含まれる。
【0063】
ジアリルエーテル化合物を得る工程は、エポキシ開環体と、アリルハライド又は2−メチル−2−プロペニルハライドとを反応させることにより、エポキシ開環体のヒドロキシ基を、アリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基に変換する工程である。具体的には、エポキシ開環体及びアリルハライドをジメチルスルホキシドに溶解後、第四級アンモニウム塩を添加し、反応温度を40℃以下に保ちながらアルカリ水溶液を滴下し、滴下終了後、30〜40℃で約6時間反応を行う。
【0064】
アリルハライド及び2−メチル−2−プロペニルハライドにおけるハライドとして、塩素及び臭素が挙げられる。アリルハライド及び2−メチル−2−プロペニルハライドの添加量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基1モルに対して3〜30モルが好ましい。
【0065】
第四級アンモニウム塩としては、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド等のテトラアルキルアンモニウムハライド又はテトラフェニルアンモニウムクロリド等のテトラアリールアンモニウムハライドが挙げられる。第四級アンモニウム塩の添加量は、エポキシ開環体1モルに対して0.001モル〜0.1モルが好ましい。
【0066】
アルカリ水溶液としては、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。用いられるアルカリ金属の使用量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基1当量に対して1〜8当量が好ましい。
【0067】
ジアリルエーテル化合物のアリルオキシ基又は2−メチル−2−プロペニルオキシ基を酸化する工程は、ジアリルエーテル化合物を、炭酸カリウムの存在下、過酸化水素水と反応させる工程である。具体的には、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化したジアリルエーテル化合物を、メタノール、エタノール等のアルコール、又はアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等の溶剤と、炭酸カリウムを加え、撹拌下、5〜40%、好ましくは30〜35%の過酸化水素水を滴下し、滴下終了後、0.5〜12時間、好ましくは1〜8時間、酸化反応を行う。
【0068】
過酸化水素水の添加量は、エポキシ開環体のヒドロキシ基をアリル化したジアリルエーテル化合物1モルに対して、5〜15モルになるよう加えることが好ましい。反応温度は、例えば45℃以下、好ましくは20〜40℃である。
【0069】
エポキシ化合物の製造方法は、好ましくは、式(1)で示されるエポキシ化合物の製造方法である。
【0070】
[部分エステル化エポキシ化合物の製造方法]
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、工程(1C):
(1C)前記工程(1A)及び(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物を、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物と反応させる工程を含む。
【0071】
工程(1A)及び(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物は、特に限定されないが、好ましいものを含め第1のエポキシ化合物で前記したとおりである。
(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸無水物としては、特に限定されず、例えば市販のアクリル酸、メタクリル酸、無水アクリル酸及び無水メタクリル酸が挙げられる。
【0072】
(反応条件)
工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対する、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物の反応量は、好ましくは10〜90当量%であり、より好ましくは20〜80当量%であり、さらに好ましくは30〜70当量%であり、特に好ましくは40〜60当量%である。部分エステル化エポキシ化合物の製造方法において、グリシジル基及びメチルグリシジル基と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は定量的に進むため、得られた部分エステル化エポキシ化合物のエステル化率は、エポキシ当量より推定することもできる。
【0073】
工程(1A)及び(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物を上記範囲内で反応させると、不飽和基のみを反応させる一次重合の際に、仮固定に良好な樹脂特性が得られ、二次重合の際に相分離等を生じることなく均質な重合物を形成することが可能な部分エステル化エポキシ化合物を得ることができる。
【0074】
反応は塩基性触媒の存在下又は不存在下で行うことができる。塩基性触媒として、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応により用いられる公知の塩基性触媒を使用することができる。また塩基性触媒をポリマーに担持させた、ポリマー担持塩基性触媒を使用することもできる。塩基性触媒としては、3価の有機リン化合物及び/又はアミン化合物であることが好ましい。塩基性触媒の塩基性原子は、リン及び/又は窒素である。
【0075】
3価の有機リン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィンのようなアルキルホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリス−(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のアリールホスフィン類及びその塩、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸トリエステル類及びその塩等が挙げられる。3価の有機リン化合物の塩としては、トリフェニルホスフィン・エチルブロミド、トリフェニルホスフィン・ブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・オクチルブロミド、トリフェニルホスフィン・デシルブロミド、トリフェニルホスフィン・イソブチルブロミド、トリフェニルホスフィン・プロピルクロリド、トリフェニルホスフィン・ペンチルクロリド、トリフェニルホスフィン・ヘキシルブロミド等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン(PPh)が好ましい。
【0076】
アミン化合物としては、ジエタノールアミン等の第二級アミン、トリエタノールアミン、ジメチルベンジルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリスジエチルアミノメチルフェノール等の第3級アミン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(Me−TBD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン等の強塩基性アミン及びその塩が挙げられる。中でも、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)が好ましい。アミン化合物の塩としては、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムが挙げられる。
【0077】
塩基性触媒を担持させるポリマーとしては、特に限定されず、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋させたポリマーやアクリル樹脂をジビニルベンゼンで架橋させたポリマー等が用いられる。これらのポリマーは、工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応に用いられる溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等)及び原料、生成物に不溶である。ポリマー担持塩基性触媒としては、例えばPS−PPh(ジフェニルホスフィノポリスチレン、バイオタージ社製)、PS−TBD(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンポリスチレン、バイオタージ社製)等の市販品が挙げられる。
【0078】
工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物の反応工程における温度は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
【0079】
触媒存在下で、工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物とを反応させる場合、ゲル化を防止するために反応系内及び反応系上の気相の酸素濃度を適正に保つ必要がある。例えば、積極的に反応系内に空気を吹き込む場合は、触媒の酸化を引き起こし、活性の低下を招く場合があるので注意が必要である。
【0080】
工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は、この反応によって得られる部分エステル化エポキシ化合物が紫外線等の活性エネルギー線によって硬化することから、紫外線を遮光する容器内で反応を行うことが望ましい。また、工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸無水物との反応は、気相重合を防止するために、エポキシ化合物に対して良溶媒性を示す還流溶剤存在下で行なってもよいが、この場合は、反応終了後に溶媒を除去する必要があるため、無溶剤で行うことが好ましい。還流溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0081】
部分エステル化エポキシ化合物の製造方法は、好ましくは、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の製造方法である。
【0082】
[硬化性組成物]
(a)式(1)で示されるエポキシ化合物及び工程(1A)及び工程(1B)を含む製造方法により得られるエポキシ化合物、並びに、(b)式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物及び工程(1A)〜(1C)を含む製造方法により得られる部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物と、硬化剤とを含む硬化性組成物について説明する。硬化性樹脂組成物に含まれるベースオリゴマー成分となる化合物は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物である。例えば、式(1)で示されるエポキシ化合物又は式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物を単独で用いてもよく、あるいは式(1)で示されるエポキシ化合物の1種以上と式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物の2種以上とを混合して用いてもよい。
【0083】
(硬化剤)
硬化剤は、熱硬化剤及び重合開始剤が挙げられ、硬化性組成物に含まれる化合物に応じて適宜選択できる。重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。熱硬化剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を用いることにより、硬化性組成物を熱硬化性組成物とすることができる。光重合開始剤を用いることにより、硬化性組成物を光硬化性組成物とすることができる。熱硬化剤と重合開始剤とを用いることにより、硬化性組成物を熱及び光で硬化する硬化性組成物とすることができる。
【0084】
熱硬化剤は、特に限定されないが、アミン系硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、およびポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン−1,18−ジカルボン酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;ADEKA社から、アデカハードナーEH5030S、味の素ファインテクノ社から、アミキュアPN−23、アミキュアPN−30、アミキュアMY−24、アミキュアMY−H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。これらの硬化剤は、単独で用いても、複数で用いてもよい。熱硬化剤の配合量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、1〜25重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることがより好ましい。
【0085】
光重合開始剤は、光のエネルギーを吸収することによって活性化し、ラジカルを発生する化合物を意味する。光重合開始剤は、特に限定されず、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α−アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類及びアントラキノン類の重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。このような好ましい重合開始剤として、例えばEYレジンKR−2(ケイエスエム社製)等が挙げられる。光重合開始剤の量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。
【0086】
熱ラジカル重合開始剤は加熱によりラジカルを発生し、重合反応を開始させる。熱ラジカル重合開始剤は、特に限定されず、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤の配合量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、1〜25重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることがより好ましい。
【0087】
(更なる成分)
硬化性組成物は、更に、フィラー、カップリング剤を含むことができる。
【0088】
フィラーは、硬化性組成物の粘度制御や硬化性組成物を硬化させた硬化物の強度向上、または線膨張性を抑えることによって硬化性組成物の接着信頼性を向上させる等の目的で添加される。フィラーは、特に限定されず、エポキシ化合物を含む組成物に対して用いられる公知の無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとして、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。有機フィラーとして、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子が挙げられる。本発明において、特に無機フィラー、例えば二酸化ケイ素及びタルクが好ましい。フィラーの配合量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物100重量部に対して、2〜40重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。
【0089】
カップリング剤は、液晶表示基板との接着性をさらに良好とすることを目的として添加される。カップリング剤は、特に限定されず、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。シランカップリング剤の量は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜2重量部であることがより好ましい。
【0090】
硬化性組成物の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、硬化性組成物は、好ましくは、液晶滴下工法用シール剤である。
【0091】
硬化性組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物を含む硬化性組成物を硬化させる方法は、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物を含む硬化性組成物に紫外線等のエネルギー線を照射するか、熱を加えるか、又は紫外線等のエネルギー線の照射の前、後又は同時に熱を加える工程を含む。
【0092】
エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、低粘度で、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる、高品位のシール剤のオリゴマー成分として使用できる。
【実施例】
【0093】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0094】
[実施例1] 化合物1の製造
【0095】
【化2】
【0096】
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP−G、三光社製)150g、エチレングリコール(東京化成社製)288g、45%ホウフッ化錫(II)水溶液(森田化学工業社製)2.0gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、80℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、クロロホルム(関東化学社製)を500g加え、水1Lで3回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、無色透明粘稠物の開環体(OPP−G−エチレングリコール開環体)180gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0097】
OPP−G−エチレングリコール開環体170g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)654g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)22gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた2Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、177gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム(関東化学社製)500gを加え1Lの水で5回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物1)214gを得た。
【0098】
[実施例2] 化合物2の製造
【0099】
【化3】
【0100】
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP−G、三光社製)17g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)(関東化学社製)34g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)0.7g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)50gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液100gで3回、水100mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(OPP−G−ビスフェノールA開環体)30gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0101】
OPP−G−ビスフェノールA開環体28g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)114g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)2gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた500mLの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、18gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム100gを加え200mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物2)31gを得た。
【0102】
[実施例3] 化合物3の製造
【0103】
【化4】
【0104】
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP−G、三光社製)60g、レゾルシノール(東京化成工業社製)58g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)3g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)100gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液500gで3回、水500mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(OPP−G−レゾルシノール開環体)85gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0105】
OPP−G−レゾルシノール開環体85g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)467g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)10gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、76gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム500gを加え1Lの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物3)103gを得た。
【0106】
[実施例4] 化合物4の製造
【0107】
【化5】
【0108】
フェニルグリシジルエーテル(EX−141、ナガセケムテックス社製)50g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)(関東化学社製)152g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)3g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)200gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液1000gで3回、水1000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(EX−141−ビスフェノールA開環体)120gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0109】
EX−141−ビスフェノールA開環体50g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)244g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)5gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、39gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム300gを加え500mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物4)56gを得た。
【0110】
[実施例5] 化合物5(化合物4の50%メタクリレート化エポキシ化合物)の製造(化合物5は、A及びAが、独立に、G又は基:−CHCR13(OR21)CHO−Zであり、Gが、グリシジルであり、R13が、水素であり、R21が、水素であり、Zが、メタクリロイルであり、G:−CHCR13(OR21)CHO−Z=50:50であり、R12が、水素であり、Xが、フェニル−O−であり、Yが、(2,2−プロパンジイル)ビス(1,4−フェニレン)である、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物に相当する)
【0111】
化合物4を40g、メタクリル酸(東京化成社製)7g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)40mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)10mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、部分メタクリレート化エポキシ化合物(化合物5)45gを得た。化合物4のグリシジル基の50%がメタクリロイル化されていた。
【0112】
[実施例6] 化合物6の製造
【0113】
【化6】
【0114】
フェニルグリシジルエーテル(EX−141、ナガセケムテックス社製)75g、レゾルシノール(東京化成工業社製)110g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)5g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)150gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液1000gで3回、水1000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(EX−141−レゾルシノール開環体)120gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0115】
EX−141−レゾルシノール開環体95g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)405g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)14gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、110gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム500gを加え1Lの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物6)110gを得た。
【0116】
[実施例7] 化合物7の製造
【0117】
【化7】
【0118】
p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル(EX−146,ナガセケムテックス社製)80g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)(関東化学社製社製)177g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)4g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)200gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液1000gで4回、水1000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(EX−146−ビスフェノールA開環体)121gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0119】
EX−146−ビスフェノールA開環体85g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)362g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)7gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、59gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム500gを加え1Lの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物7)105gを得た。
【0120】
[実施例8] 化合物8(化合物7の50%メタクリレート化エポキシ化合物)の製造(化合物8は、A及びAが、独立に、G又は基:−CHCR13(OR21)CHO−Zであり、Gが、グリシジルであり、R13が、水素であり、R21が、水素であり、Zが、メタクリロイルであり、G:−CHCR13(OR21)CHO−Z=50:50であり、Xが、tert−ブチルで置換されたフェニル−O−であり、Yが、(2,2−プロパンジイル)ビス(1,4−フェニレン)である、式(2)で示される部分エステル化エポキシ化合物に相当する)
【0121】
化合物7を60g、メタクリル酸(東京化成社製)9g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)60mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)10mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、濾過により触媒を除去し部分メタクリレート化エポキシ化合物(化合物8)68gを得た。化合物7のグリシジル基の50%がメタクリロイル化されていた。
【0122】
[実施例9] 化合物9の製造
【0123】
【化8】
【0124】
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP−G、三光社製)100g、ヒドロキノン(東京化成工業社製)170g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)4g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)300gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液1000gで3回、水1000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、無色透明粘稠物の開環体(OPP−G−ヒドロキノン開環体)130gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0125】
OPP−G−ヒドロキノン開環体130g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)428g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)14gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、129gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム(関東化学社製)500gを加え1Lの水で5回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物9)165gを得た。
【0126】
[実施例10] 化合物10の製造
【0127】
【化9】
【0128】
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP−G、三光社製)70g、p−ヒドロキシフェネチルアルコール(p−HPEA)(関東化学社製)45g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)3g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)150gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液500gで3回、水500mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、無色透明粘稠物の開環体(OPP−G−p−HPEA開環体)105gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0129】
OPP−G−p−HPEA開環体100g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)305g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)10gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、82gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム(関東化学社製)500gを加え1Lの水で5回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物10)116gを得た。
【0130】
[実施例11] 化合物11の製造
【0131】
【化10】
【0132】
フェニルグリシジルエーテル(EX−141、ナガセケムテックス社製)24g、ヒドロキノン(東京化成工業社製)35g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)2g、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)50gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液200gで2回、水200mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、無色透明粘稠物の開環体(EX−141−ヒドロキノン開環体)35gを得た。なお、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の原料のエポキシ樹脂のピークの消失により、エポキシ基が開環されていることを確認した。
【0133】
EX−141−ヒドロキノン開環体30g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)213g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)4gを温度計、冷却管、ディーン−スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた500mLの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、35gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しクロロホルム(関東化学社製)300gを加え500mLの水で5回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、淡黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物11)42gを得た。
【0134】
[比較例1]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA850CRP、DIC株式会社製)を、比較例1の化合物とした。
[比較例2]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA850CRP、DIC株式会社製)の50%メタクリレート化エポキシ化合物(エポキシ基の50%をメタアクリル化した化合物)を比較例2とした。
【0135】
(粘度及びエポキシ当量の測定)
E型粘度計(東機産業社製 RE105U)を用いて、25℃で、コーンロータの回転速度2.5rpmで粘度を測定した粘度、及び、JISK7236:2001により測定したエポキシ当量を表1に示す。
【0136】
(NI点の測定)
以下の方法で、NI点の測定を行った。液晶の相転移温度であるNI点(Nematic−Isotropic point)の変化により、液晶へのエポキシ化合物又は部分エステル化エポキシ化合物の溶出性の評価を行える。液晶のNI点は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は低下することが知られており、不純物混入具合をNI点より評価することができる。ここで、NI点変化が小さいことは、エポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物の液晶への汚染が低減されており、このようなエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は液晶溶出性に優れることを示す。
【0137】
(測定用試料の作製)
アンプル瓶にエポキシ化合物及び部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物0.1gを入れ、液晶(MLC−11900−080、メルク社製)1gを加えた。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し0.2μmフィルターによりろ過し、評価用の液晶サンプルとした。NI点の測定は、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris6)を使用した。評価用の液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った。
【0138】
(透湿度の測定)
以下の方法で、透湿度の測定を行った。表2に示す配合物を直径3.6mm〜3.8mm厚さ0.28mm〜0.32mmになるように100mm×100mm厚さ0.1mmのPETフィルムにより挟み、100mW/cm2の紫外線照射照度で両面を1500 mJ/cm2ずつの光エネルギーで照射を行い、120℃の熱風オーブンで1時間熱硬化を行い透湿度測定用のサンプルとした。透湿度測定はJISK0208:1976に準じ、65 ℃/95%の恒温恒湿槽を用い、透湿カップ法での重量変化より算出した。透湿度の単位はg/(m−2・24h)である。
【0139】
[光開始剤の製造]
実施例12及び13及び比較例3で使用した光重合開始剤は、以下のようにして製造した。
【0140】
<光重合開始剤TU−I 101Nの製造>
デナコールEX−830(PEG400のジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)26.8g、4−ジメチルアミノ安息香酸16.5g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、メチルイソブチルケトン25.0gをフラスコに入れ、110℃、24時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50mLに溶解させ、水100mLで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤TU−I 101Nを35.3g得た。
【0141】
<光開始剤TU−I 102Nの製造>
デナコールEX−830(PEG400のジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)26.8g、2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン22.8g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.7g、メチルイソブチルケトン40.0gをフラスコに入れ、110℃、72時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50mLに溶解させ、水100mLで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光開始剤TU−I 102Nを36.2g得た。
【0142】
結果を表1及び表2に示す。
【0143】
【表1】

*表1中、「高粘度」とは、粘度が高すぎてしまい測定ができなかったことを意味する。
【0144】
【表2】

EH5030S:アミンアダクト(アデカハードナーEH5030S、ADEKA社製)
【0145】
実施例のエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、NI点変化が小さく液晶への溶解性が低い。また、実施例のエポキシ化合物分エステル化エポキシ化合物は、透湿性が低い硬化物を与えた。一方、比較例のエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、NI点変化が大きく、液晶溶出性に劣る。また、比較例のエポキシ化合物は、透湿性が高い硬化物を与えた。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明のエポキシ化合物及び部分エステル化エポキシ化合物は、液晶への溶解性が低く、透湿性が低い硬化物を与えることから、高い信頼性を維持できるシール剤の原料として有用である。