(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アニオンが、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、o−フルオロ安息香酸、m−フルオロ安息香酸、p−フルオロ安息香酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホメタクリル酸エチル、ポリスルホメタクリル酸エチルを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体から選ばれるものである請求項1記載の高誘電率樹脂成形物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、(A)熱可塑性樹脂100質量部と、(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体0.005〜1.0質量部とを含有してなる高誘電率樹脂組成物である。
【0013】
(A)熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン樹脂(PS)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアクリル樹脂(PMMA)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(U−PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリカーボネート樹脂(PC)、変性PPE樹脂(m−PPE)、6ナイロン樹脂(PA6)、66ナイロン樹脂(PA66)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリサルフォン樹脂(PSF)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、PEEK樹脂、PPS樹脂、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、液晶ポリマー樹脂(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PVDF−HFP)、ウレタン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレエン共重合体、エチレン−クロロフルオロエチレン共重合体、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、フッ素樹脂フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及び各種高分子物質の共重合物、混合物などを例示することができる。
これらの中で好ましい熱可塑性樹脂は、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、6ナイロン樹脂、66ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂である。
更に好ましい熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂である。
【0014】
(A)熱可塑性樹脂は、使用に際し、粉体、ペレット等の固体の形態であってもよいし、分散液、水溶液等の液状の形態であってもよい。
【0015】
(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体は、下記式(I)で表される3,4−ジアルコキシチオフェンを、アニオンの存在下、触媒の存在下、酸化剤を配合し、水系溶媒中で化学的酸化重合させてなる複合体である。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は相互に独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であるか、あるいはR
1とR
2が相互に結合して炭素数1〜4のアルキレン基を形成してもよく、該アルキレン基は任意に炭素数1〜12のアルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい。)
【0016】
更に、アニオンを3,4−ジアルコキシチオフェン100質量部に対して50〜2,000質量部、好ましくは50〜500質量部用いてなることが好ましい。
【0017】
ここで使用されるアニオンは、モノアニオンを用いてもよいし、ポリアニオンを用いてもよい。
モノアニオンを用いる場合は、中でもp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、o−フルオロ安息香酸、m−フルオロ安息香酸、p−フルオロ安息香酸などが好ましく、特にp−トルエンスルホン酸が好ましい。
ポリアニオンを用いる場合は、中でも溶媒溶解性の点から、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホメタクリル酸エチル、ポリスルホメタクリル酸エチルを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体などが好ましく、特にポリスチレンスルホン酸が好ましい。ポリアニオンの分子量は、特に限定されるものではないが、溶媒溶解性及び導電性の点からは、重量平均分子量(Mw)が好ましくは1,000〜2,000,000の範囲であり、より好ましくは2,000〜1,000,000の範囲であり、更に好ましくは10,000〜500,000の範囲のものである。
【0018】
この複合体は、例えば、以下の方法により製造できる。まず、アニオンを水系溶媒に分散又は溶解させ、これにより得られた溶液に、前駆体モノマーとしての3,4−ジアルコキシチオフェンを添加してモノマー分散液を得る。次に、当該モノマー分散液に触媒としての硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等の第一鉄塩又は第二鉄塩等を添加して、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等を酸化剤として3,4−ジアルコキシチオフェンを化学的酸化重合させる。その後、余剰の酸化剤や未反応モノマーを除去して精製し、必要に応じて導電性向上剤を添加して、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとが複合化した構造の高分子水分散液を得、乾燥して複合体の粒子を得ることができる。
【0019】
得られる複合体の粒子径(メジアン径)は6,000nm以下が好ましい。更に好ましくは、粒子径(メジアン径)は100nm以下である。粒子径が6,000nmを超えると、(A)熱可塑性樹脂を配合した際の組成物中で、凝集が発生し、誘電率の上昇効果が低減する。6,000nm以下であればよいが、粒子径は小さければ、小さいほど得られる組成物の誘電率の上昇効果は高い。粒子径の下限値は、1nm程度が好ましい。
なお、複合体の粒子径は、動的光散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製、商品名:Nanotrac Wave−EX150)により測定し、非球形設定での体積基準メジアン径を粒子径とした。なお、メジアン径とは粒度分布を累積分布として表した時の累積が50%に相当する粒子径である。
【0020】
(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体を、0.005〜1.0質量部配合することにより、本発明の高誘電率樹脂組成物が得られる。更に好ましくは0.01〜0.8質量部である。(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体の量が0.005質量部未満であると、誘電率の上昇効果が低減する。また、1.0質量部を超えると、凝集物が発生し、耐電性が低下するおそれがある。
【0021】
(A)熱可塑性樹脂に(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体を配合する方法としては特に限定されないが、例えば、下記のいずれかの配合方法が挙げられる。
(i)(A)熱可塑性樹脂を(C)有機溶媒に溶解した後、(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体を混合する方法、
(ii)(A)熱可塑性樹脂の水分散体に(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体を混合する方法、
(iii)(A)熱可塑性樹脂を溶融混練し、(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体を混合する方法
などが挙げられる。
【0022】
(i)の場合、使用する(C)有機溶媒としては、(A)熱可塑性樹脂が溶解するものであれば特に限定されないが、アルコール、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素、窒素含有有機溶媒等が挙げられ、これらは(A)熱可塑性樹脂と(C)有機溶媒の溶解パラメーター(SP値)や極性を考慮して選択される。
例えば、ポリエーテルイミド樹脂やポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂等であれば、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解する。低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等あれば、メシチレン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系有機溶媒に溶解する。また、6ナイロン樹脂等であれば、ベンジルアルコールに溶解する。更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂等であれば、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解する。
【0023】
この際に(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体も(C)有機溶剤の分散体としておくことが好ましい。特に(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体が水分散液である場合には、あらかじめ(C)有機溶媒に分散させておくことで、後に(A)熱可塑性樹脂を混合溶解する際に、異物の発生を防ぐことができる。
【0024】
(C)有機溶媒の使用量も特に限定はされないが、工業上使用するにあたり、(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体の分散に使用される合計量で、(A)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(C)有機溶媒10〜5,000質量部が好ましい。
(A)熱可塑性樹脂と(C)有機溶媒をプロペラ式攪拌機やホモジナイザーなどの公知の混合調製方法によって混合溶解した後、(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体と(C)有機溶媒を混合溶解したものを混合することによって本発明の高誘電率樹脂組成物が得られる。
【0025】
(ii)の場合、(A)熱可塑性樹脂のエマルジョンなどの水との分散体と(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体をプロペラ式攪拌機やホモジナイザーなどの公知の混合調製方法によって混合することによって本発明の高誘電率樹脂組成物が得られる。
(A)熱可塑性樹脂の水分散体を使用する場合、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリウレタン樹脂の水分散体が好ましい。
【0026】
(i)、(ii)の方法においては、このように得られた混合液を型に流し込み、乾燥してフィルム等の形状に成形する。
乾燥は有機溶媒が沸騰し、フィルムに空気が混合することを防ぐために、溶液の沸点以下の温度(30〜400℃)で段階的に乾燥させることが好ましく、該温度でプレ乾燥し、その後沸点近くの温度で本乾燥するのが好ましい。なお、本乾燥後は、沸点より高温で乾燥してもよい。プレ乾燥を行わなかった場合、フィルムが均一に成形できない場合がある。
例えば、(A)熱可塑性樹脂と(B)ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンとの複合体のNMP分散液では150℃でプレ乾燥し、その後、沸点近くの200℃で本乾燥し、フィルムを得る。乾燥時間はフィルムの厚みによって調整できるが、工業上の使用を考慮すると0.1〜100時間で乾燥することが好ましい。
【0027】
この実施の形態に係るフィルムにおいて、形成される塗膜の厚みは、特に限定されるものではなく目的に応じて適宜選択でき、例えば、好適には、1μm〜10mmの範囲に設定できる。好ましくは2μm〜1mmがよい。塗膜の厚みが10mmを超えると、長時間乾燥しても溶剤がフィルム中に残ってしまうおそれがある。また、塗膜の厚みを1μm未満とすると、破れなどの欠陥が増えて成形不良となる可能性がある。
【0028】
(iii)の方法においては、溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で実施される。その条件は特に限定されないが、200〜500℃の温度で混練して成形することが好ましい。溶融混練したものを射出成形等によって樹脂を成形する。
この実施の形態に係る射出成形品は、フィルム以外の形状でもよく、幅広い用途に使用できる。
【0029】
上記のようにして得られたフィルムや成形品は、体積抵抗率が1×10
9Ω・cm以上、特に5×10
9Ω・cm以上であることが好ましい。該体積抵抗率が1×10
9Ω・cmよりも低いと、導体としての特性が強くなっていき、導通など絶縁性の悪化の不具合が懸念される。1×10
9Ω・cm以上であれば、本発明の誘電体として使用するにあたり十分な絶縁性を確保できる。
【0030】
誘電率は100kHzで2.5以上、特に3.0以上であることが好ましい。誘電率が2.5よりも低いと、求められるデバイスの誘電性が不足する場合がある。誘電率は高ければ高い方が好ましいが、通常その上限は20程度である。
誘電正接は1.0以下、特に0.3以下であることが好ましい。誘電正接が1.0を超えると誘電体のエネルギー損失が大きくなるため、工業上利用するにあたって適さない場合がある。その下限は特に制限されないが、通常0.0001以上である。
誘電率が大きい樹脂組成物は、誘電正接の値が大きくなる傾向にあるが、本発明の樹脂組成物は、高誘電率を維持しながらも、誘電正接を小さく抑えることができる。
【0031】
また、高誘電率樹脂組成物には、性能に影響を与えない範囲で、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、他の樹脂等を添加してもよい。
【0032】
本発明の高誘電率樹脂組成物は、フィルムや射出成形品など幅広い用途に展開可能である。高誘電率で、更に誘電欠損が少ないという優れた電気特性を有するため、特にコンデンサなどの電気・電子部品材料として広く使用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、製造例と、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0034】
1.ポリアニオンの合成
<製造例1>
1,000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した3gの過硫酸アンモニウム溶液を2時間滴下し、その溶液を6時間攪拌した。得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液に対して、陽イオン交換樹脂200gを用いて2回処理した。その後、固形分が5%になるように、イオン交換水を加えて調整した。GPC(ゲル濾過クロマトグラフィ)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィ)システムを用いて、得られたポリスチレンスルホン酸の分析を行った。昭和電工株式会社製のプルランを標準物質として重量平均分子量(Mw)を測定した結果、ポリスチレンスルホン酸のMwは約20万であった。
【0035】
2.ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とアニオンの複合体の合成
<製造例2>
5gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、上記製造例1にて得られたポリスチレンスルホン酸水溶液300g(固形分:15g)を1,000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを混合した。これにより得られた混合溶液を30℃に保ち攪拌を行いながら、3gの硫酸第二鉄と10gの過硫酸アンモニウムをそれぞれ50mlのイオン交換水に溶かした酸化触媒溶液をゆっくり加え、4時間攪拌して反応させた。これにより得られた反応液に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂をそれぞれ100g用いて2回処理した。次に、溶液中の固形分が1.2%になるように、イオン交換水を加えて固形分濃度を調整して、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸の複合体(PEDOT:PSS(質量比)=1:3)の1.2%水溶液を得た。
粒子径はそれぞれ微粒化装置等によって、46nm、809nm、23nm、16nm、4,513nm、1,164nm、1,013nmに調整した。
【0036】
<製造例3>
1.5gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、メタノール100g、水100gの混合溶液を30℃に保ち攪拌を行いながら、硫酸第二鉄0.5gをイオン交換水20gに溶かした溶液を加えた。これに、p−トルエンスルホン酸一水和物2.0gをイオン交換水10gに溶かした溶液を加え、更に、過硫酸アンモニウム3.0gをイオン交換水50gに溶かした溶液をゆっくり加え、7時間攪拌して反応させた。これにより得られた反応液をメンブレンフィルター(ADVANTEC製T080A047A)で濾過し、濾物を水で洗浄した。洗浄濾物を乾燥し、アセトンで固形分が0.3%になるように調整し、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−p−トルエンスルホン酸の複合体(PEDOT:p−トルエンスルホン酸(質量比)=3:4)の0.3%アセトン分散液を得た。
【0037】
<製造例4>
1.5gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)と、メタノール100g、水100gの混合溶液を30℃に保ち攪拌を行いながら、硫酸第二鉄0.5gをイオン交換水20gに溶かした溶液を加えた。これに、o−フルオロ安息香酸1.5gをイオン交換水10gに溶かした溶液を加え、更に、過硫酸アンモニウム3.0gをイオン交換水50gに溶かした溶液をゆっくり加え、7時間攪拌して反応させた。これにより得られた反応液をメンブレンフィルター(ADVANTEC製T080A047A)で濾過し、濾物を水で洗浄した。洗浄濾物を乾燥し、アセトンで固形分が0.3%になるように調整し、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−o−フルオロ安息香酸の複合体(PEDOT:o−フルオロ安息香酸(質量比)=1:1)の0.3%アセトン分散液を得た。
【0038】
3.高誘電率樹脂組成物の合成
[実施例1]
ポリアクリル樹脂(PMMA)(旭化成ケミカルズ(株)製デルペット60N)100部をN−メチルピロリドン(NMP)500部に室温で溶解した。製造例2の粒子径(メジアン径)46nmのポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸の複合体(PEDOT−PSS(以下、同様),PEDOT:PSS=1:3)の1.2%水溶液25部(固形分換算0.3部)をNMP225部に分散させた溶液に、PMMA溶解液を30分間かけて滴下漏斗で連続追加し、樹脂溶解液を得た。得られた樹脂溶解液を所望の厚さになるようにアルミ製トレーに流しこみ、150℃で2時間、200℃で2時間乾燥して、厚さ0.43mmのフィルムを得た。
得られたフィルムの体積抵抗率、誘電率、誘電正接を測定した。結果を表1に示す。なお、各測定については以下のように実施した。
【0039】
[体積抵抗率測定]
高抵抗抵抗率計として(株)三菱化学アナリテック製Hiresta−UX MCP−HT800を、治具としてリングプローブに(株)三菱化学アナリテック製URSプローブを、レジテーブルに(株)三菱化学アナリテック製UFLを用い、樹脂フィルムを挟み、印加電圧1,000V、10秒間の条件で樹脂フィルムの体積抵抗率を測定した。
体積抵抗率は5×10
9〜9×10
14Ω・cmであることが好ましい。
【0040】
[誘電率測定]
LCRメータとしてAgilent社製E−4980Aを、治具にAgilent社製16451B誘電体テストフィクスチャを用い、平行板法における電極接触法で測定した。各周波数(100Hz、1kHz、10kHz、100kHz、1MHz、2MHz)において測定したC
p[F]値を、下記式に代入し、誘電率(ε
r)を求めた。
【数1】
t
m:膜厚[m]
A:主電極の表面積[m
2]
d:主電極の直径[m]
ε
0:真空の誘電率=8.854×10
-12[F/m]
【0041】
[誘電正接測定]
LCRメータとしてAgilent社製E−4980Aを、治具にAgilent社製16451B誘電体テストフィクスチャを用い、平行板法における電極接触法で測定した。各周波数(100Hz、1kHz、10kHz、100kHz、1MHz、2MHz)において誘電正接D値を測定した。
【0042】
また、PEDOT−PSS複合体の粒子径は以下のように測定した。
[粒子径測定]
動的光散乱式粒子径分布測定装置Nanotrac Wave−EX150(マイクロトラック・ベル(株)製)を用い、複合体の1.2%水溶液の非球形設定の平均粒子径(メジアン径:d50)を測定した。
実施例26,27においては、動的光散乱式粒子径分布測定装置Nanotrac Wave−EX150(マイクロトラック・ベル(株)製)を用い、複合体の0.3%アセトン分散液の非球形設定の粒子径(メジアン径:d50)を測定した。
【0043】
[実施例2]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリスチレン樹脂(PS)(PSジャパン(株)製GPPS SGP10)に代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例3]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリカーボネート樹脂(PC)(出光興産(株)製タフロンIR2200)に代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[実施例4]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)(アルケマ(株)製Kynar741)に代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例5]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(PVDF−HFP)(アルケマ(株)製Kynar2801−00)に代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例6]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリ塩化ビニル樹脂(PVC)(和光純薬工業(株)製)に代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例7]
ポリ乳酸樹脂(PLA)エマルジョン(ミヨシ油脂(株)製ランディPL−3000)250部(固形分換算100部)に粒子径46nmのPEDOT−PSS(PEDOT:PSS=1:3)の1.2%水溶液25部(固形分換算0.3部)を分散させた溶液を調製した。実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0049】
[実施例8]
低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックLD M2170)100部をメシチレン2,000部に100℃にて溶解した。粒子径46nmのPEDOT−PSS(PEDOT:PSS=1:3)の1.2%水溶液25部(固形分換算0.3部)をメチルエチルケトン100部に分散させた溶液を、LDPE溶解液に滴下し、樹脂溶解液を得た。実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0050】
[実施例9]
実施例8の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックHD J241)に代えた以外は実施例8と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0051】
[実施例10]
実施例8の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)をポリプロピレン樹脂(PP)(日本ポリプロ(株)製ノバテックPP MG03BD)にし、溶解温度を130℃に代えた以外は実施例8と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0052】
[実施例11]
実施例8の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を6ナイロン樹脂(PA6)(東レ(株)製アミランCM1017)、メシチレンをベンジルアルコールにし、溶解温度を150℃に代えた以外は実施例8と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0053】
[実施例12]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)(東レ(株)製ルミラーT60)100部をヘキサフルオロイソプロパノール2,000部に室温で溶解した。粒子径46nmのPEDOT−PSS(PEDOT:PSS=1:3)の1.2%水溶液25部(固形分換算0.3部)をメチルエチルケトン200部に分散させた溶液を、PET溶解液に滴下し、樹脂溶解液を得た。得られた分散液を40℃で1時間乾燥し、フィルムを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例1〜12]
表1及び表2に示すようにPEDOT−PSSを加えず、各実施例と同様の方法でフィルムを作製し、評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0055】
[実施例13〜18、20〜25]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリエーテルイミド樹脂(PEI)(ウルテムレジン1000:SABIC.I.P.製)に、PEDOT−PSSの粒子径を表3及び表4に記載のように代えた以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表3及び表4に示す。
【0056】
[実施例19]
実施例1のポリアクリル樹脂(PMMA)をポリエーテルイミド樹脂(PEI)(ウルテムレジン1000:SABIC.I.P.製)に変え、更に、フィルムの乾燥温度をプレ乾燥150℃で2時間、本乾燥を200℃で1時間、更に350℃で30分間乾燥を行った以外は実施例1と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0057】
[実施例26]
ポリエーテルイミド樹脂(PEI)(ウルテムレジン1000:SABIC.I.P.製)100部をN−メチルピロリドン(NMP)500部に室温で溶解した。製造例3の粒子径(メジアン径:アセトン分散液で測定)1,173nmのポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−p−トルエンスルホン酸(PEDOT:p−トルエンスルホン酸=1:1)複合体の0.3%アセトン分散液100部(固形分換算0.3部)を、ポリエーテルイミド樹脂溶解液に10分間かけて滴下漏斗で連続追加し、樹脂溶解液を得た。得られた分散液を150℃で2時間、200℃で2時間乾燥して、厚さ0.48mmのフィルムを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0058】
[実施例27]
ポリエーテルイミド樹脂(PEI)(ウルテムレジン1000:SABIC.I.P.製)100部をN−メチルピロリドン(NMP)500部に室温で溶解した。製造例4の粒子径(メジアン径:アセトン分散液で測定)1,379nmのポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)−o−フルオロ安息香酸(PEDOT:o−フルオロ安息香酸=1:1)複合体の0.3%アセトン分散液100部(固形分換算0.3部)を、ポリエーテルイミド樹脂溶解液に10分間かけて滴下漏斗で連続追加し、樹脂溶解液を得た。得られた分散液を150℃で2時間、200℃で2時間乾燥して、厚さ0.33mmのフィルムを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0059】
[比較例13]
PEDOT−PSSを加えず、実施例13と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0060】
[比較例14]
PEDOT−PSSをポリアニリン(Aldrich社製)とした以外は実施例13と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0061】
[比較例15]
PEDOT−PSSをポリピロール(Aldrich社製)とした以外は実施例13と同様にフィルムを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0062】
[比較例16]
実施例13のPEDOT−PSSを固形分換算で3部加えた以外は同様に、PEPOT−PSS1.2%水溶液のNMP分散液に、ポリエーテルイミド樹脂溶解液を追加混合したが、樹脂の凝集物が発生したため、フィルムの形成は不可能であった。結果を表4に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】