(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
歯牙のエナメル質や象牙質は、口腔内細菌によって産生された酸に晒されるとミネラル成分を失い、う蝕が発症、進行する。しかし、う蝕表層に明確な欠損がなく、う蝕内部のミネラルイオンのみが溶出した初期う蝕の状態であれば、適切な口腔ケアによって初期う蝕内部にミネラルイオンが供給され、再石灰化によって元の状態に改善することが知られている。
【0003】
う蝕を予防する方法として歯牙表面の再石灰化の促進、う蝕原因菌の殺菌が挙げられる。歯牙にカルシウムイオンやリン酸イオンを供給することで再石灰化を促進することができ、また、フッ化物イオンが存在することで酸により脱灰し難いフルオロアパタイトを形成して初期う蝕を修復し、再石灰化を促進する効果があることが知られている。
更に、う蝕予防効果を高めるためには、口腔用殺菌剤によって、う蝕原因菌に対して高い殺菌効果を持続的に与えることが有効であり、再石灰化促進効果と持続的な殺菌効果とを同時に付与することができれば、う蝕の予防又は抑制効果の更なる向上が期待される。
【0004】
しかしながら、特に、練歯磨剤等と比べて粘性がほとんどない上に、数十秒という短時間で処置する洗口剤等の液体口腔用組成物では、口腔内に有効成分であるフッ化物が残存し難いという問題があり、また、口腔用殺菌剤を配合しても口腔内のう蝕原因菌に対して持続的な殺菌効果を与えることは難しく、再石灰化促進効果と殺菌効果の持続性も両立できていないのが現状であった。
【0005】
フッ化物の残存性、再石灰化促進効果の改善に関して、特許文献1(特開2008−156251号公報)には、洗口液にフッ化ナトリウム、水溶性カルシウム塩及び水溶性マグネシウム塩を適切な配合比率で組み合わせて配合した技術が提案され、特許文献2(特開2011−126788号公報)には、洗口剤等の液体製剤にモノフルオロリン酸塩、グリセロリン酸カルシウム及び特定ポリマーを組み合わせて配合した技術が提案されているが、これらには殺菌効果の持続性について言及されていない。
【0006】
一方、口腔用殺菌剤としてカチオン性殺菌剤は、う蝕原因菌への殺菌活性が高いだけでなくその殺菌効果は歯牙表面等に吸着することで発現するものであるが、他の配合成分の影響によって殺菌活性が失活し易く、吸着性も低下し易いという問題があった。
【0007】
カチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着量の改善に関しては、液体口腔用組成物においてカルシウムイオン供給物質、カチオン性殺菌剤及び特定界面活性剤を組み合わせて配合した特許文献3(特開2009−1511号公報)が提案され、特許文献4(特開2011−140454号公報)には、口腔用組成物にカチオン性殺菌剤、グリセロリン酸カルシウムを併用配合した技術が提案されている。しかし、これらは、殺菌効果の持続性の面では十分とは言い難く改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、液体口腔用組成物において、優れた再石灰化促進効果とう蝕原因菌に対する持続的な殺菌効果とを両立させることができる技術の開発が望まれた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた再石灰化促進効果とう蝕原因菌に対する持続的な殺菌効果とを兼ね備え、う蝕の予防又は抑制に有効な液体口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、液体口腔用組成物に(A)フッ化ナトリウム、(B)グリセロリン酸カルシウム、(C)縮合リン酸又はその塩、(D)カチオン性殺菌剤を特定量、かつ{(B)成分+(C)成分}/(D)成分の質量比が特定割合で組み合わせて配合することによって、優れた再石灰化促進効果とう蝕原因菌に対する持続性の高い殺菌効果とが両立し、また、味が良く低刺激性で使用感も良好となり、う蝕の予防又は抑制に有効な液体製剤を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
更に詳述すると、液体口腔用組成物にフッ化ナトリウム等のフッ化物、カチオン性殺菌剤を配合しても、十分な再石灰化促進効果及び持続的な殺菌効果を与えることができないが、本発明においては、(A)、(B)、(C)、(D)成分を組み合わせると、{(B)成分+(C)成分}/(D)成分の質量比が特定範囲内において、(B)及び(C)成分によって、(A)成分由来の再石灰化促進効果が高まると同時に(D)成分の殺菌効果の持続性が格段に向上する。この場合、アニオン性物質の添加はカチオン性殺菌剤の活性低下を招くおそれがあるにもかかわらず、アニオン性物質である(B)及び(C)成分を併用すると、両成分が特異的かつ相乗的に作用して、意外にも、(D)成分のカチオン性殺菌剤の殺菌力が低下することなく高い殺菌効果が持続し、上記格別顕著な作用効果を奏する。
即ち、後述の比較例に示すように、(B)成分が配合されていないと、(A)、(D)成分と共に(C)成分が配合されていても再石灰化促進効果が低い上に殺菌効果が持続せず、また、(C)成分が配合されていないと、(A)、(D)成分と共に(B)成分が配合されていても再石灰化促進効果が低い上に殺菌効果の持続性が劣る。更には、{(B)成分+(C)成分}/(D)成分の質量比が不適切であると、(A)、(D)成分と共に(B)、(C)成分が配合されていても殺菌効果の持続性が低くなる。これに対して、後述の実施例に示すように、(A)、(B)、(C)、(D)成分を組み合わせて配合し、かつ{(B)成分+(C)成分}/(D)成分の質量比が特定範囲内であると、再石灰化促進効果及び殺菌力の持続性が向上し、歯牙の再石灰化を高率で促進し得る再石灰化促進効果と共にう蝕原因菌であるストレプトコッカス ミュータンス菌に対する持続的な殺菌効果を与え、両効果が両立する。
また、本発明によれば、口腔内で不快な味や刺激感が強く発現する洗口剤等の液体口腔用組成物において、渋味、苦味、異味、あるいは刺激を持つ(B)、(C)、(D)成分が配合されていても良好な使用感を与え、使用感を良好に保って再石灰化促進効果及び持続的な殺菌効果を両立できる。
【0013】
なお、特許文献5(特開2013−129620号公報)は、グリセロリン酸又はその塩を配合した口腔用組成物の刺激感等を抑制することによる使用感の改善技術であり、処方例9の液体歯磨、洗口液(いずれも油相、水層からなる二層製剤)はフッ化ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、縮合リン酸塩、カチオン性殺菌剤を含有するが、カチオン性殺菌剤に対するグリセロリン酸カルシウム及び縮合リン酸塩の配合比率が350と大きい。特許文献5から、本発明の{(B)成分+(C)成分}/(D)成分の質量比が50以下での再石灰化促進効果及び殺菌効果の持続性の向上を想起することはできない。
【0014】
従って、本発明は、下記の液体口腔用組成物を提供する。
(A)フッ化ナトリウム 0.005〜0.21質量%、
(B)グリセロリン酸カルシウム 0.005〜1質量%、
(C)縮合リン酸又はその塩 0.05〜0.5質量%、
(D)カチオン性殺菌剤 0.005〜0.1質量%
を含有してなり、{(B)成分+(C)成分}/(D)成分が質量比として0.5〜50であることを特徴とする液体口腔用組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた再石灰化促進効果及びう蝕原因菌に対する持続的な殺菌効果を兼ね備えた、う蝕の予防又は抑制に有効な液体口腔用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の液体口腔用組成物は、(A)フッ化ナトリウム、(B)グリセロリン酸カルシウム、(C)縮合リン酸又はその塩、(D)カチオン性殺菌剤を含有する。
【0017】
(A)フッ化ナトリウムは、製剤中でフッ化物イオンとして存在することで、歯の再石灰化を促進する。
フッ化ナトリウムの配合量は、組成物全体の0.005〜0.21%(質量%、以下同様。)であり、好ましくは0.01〜0.1%、更に好ましくは0.01〜0.05%である。配合量が多いほど再石灰化を促進できるが、0.005%未満では、(B)、(C)成分と組み合わせても再石灰化促進効果が向上しない。0.21%を超えると、誤飲時のリスクが高まって安全性に劣る。
【0018】
本発明では、(B)グリセロリン酸カルシウムと(C)縮合リン酸又はその塩とを併用して配合することで、(A)成分の再石灰化促進効果が高まると共に(D)成分の殺菌力の持続性が格段に向上する。
【0019】
(B)グリセロリン酸カルシウムは、天然物由来でも合成品でも使用でき、例えば岩城製薬(株)製の商品名「グリセロリン酸カルシウム」などの市販品を使用することもできる。
(B)成分のグリセロリン酸カルシウムの配合量は、組成物全体の0.005〜1%であり、好ましくは0.01〜0.2%である。0.005%未満では、再石灰化促進効果及び殺菌力の持続性が向上しない。1%を超えると、(B)成分自身の渋味・異味が強く発現して使用感が損なわれる。
【0020】
(C)縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状のポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等の環状のポリリン酸が挙げられ、その塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種類以上を併用して使用し得る。中でも、直鎖状ポリリン酸塩が好ましく、とりわけトリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが好ましい。
これら縮合リン酸又はその塩は、市販品を使用し得る。
【0021】
(C)成分の縮合リン酸又はその塩の配合量は、組成物全体の0.05〜0.5%であり、好ましくは0.1〜0.3%である。0.05%未満では、再石灰化促進効果及び殺菌効果の持続性が向上しない。0.5%を超えると、(C)成分由来の口腔粘膜への刺激が強く発現して使用感が損なわれる。
【0022】
(D)カチオン性殺菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、特に塩化セチルピリジニウムが、(B)成分との相互作用、殺菌力の持続性及び使用性の観点から、好適である。
【0023】
(D)カチオン性殺菌剤の配合量は、組成物全体の0.005〜0.1%であり、好ましくは0.01〜0.08%である。配合量が多いほど殺菌力は高まるが、0.005%未満では、(B)、(C)成分と組み合わせても殺菌力の持続性が向上しない。0.1%を超えると、(D)成分由来の渋味・苦味・刺激が強く発現して使用感が損なわれる。
【0024】
本発明では、(B)、(C)成分と(D)成分との配合比率を示す{(B)成分+(C)成分}/(D)成分が、質量比として0.5〜50であり、好ましくは1〜25である。{(B)成分+(C)成分}/(D)成分が0.5未満では、(B)、(C)成分を(D)成分と組み合せても殺菌効果の持続性が十分発揮されず、50を超えると、(B)、(C)成分を(D)成分に組み合わせることでアニオンとカチオンでコンプレックスを形成することによって殺菌剤の活性を阻害し、殺菌効果の持続性が低くなる。
【0025】
更に、本発明では、(B)成分と(C)成分とを適切な割合で併用することが好ましい。この場合、(B)、(C)成分の配合比率を示す(C)成分/(B)成分は、質量比として0.1〜50が好ましく、より好ましくは0.5〜30である。この範囲内であると、再石灰化促進効果及び殺菌効果の持続性がより優れる。0.1に満たないと、再石灰化促進効果及び殺菌効果の持続性が十分に向上しない場合がある。50を超えると、最早それ以上の効果向上は期待できず経済的に不利になる場合がある。
【0026】
本発明の液体口腔用組成物には、更に液体媒体を配合し得る。好ましい液体媒体は、水である。水の含有量は、通常、組成物全体の60%以上であり、好ましくは60〜95%である。
【0027】
更に、液体媒体として、水以外の液体媒体を添加してもよい。水と共に使用可能な液体媒体としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の20℃で液体である多価アルコール、エタノール等の炭素数2又は3の低級一価アルコールが挙げられる。
前記多価アルコールは、湿潤剤として作用するため添加することが好ましく、その含有量は組成物全体の1〜20%、特に3〜15%であることが好ましい。
前記低級一価アルコールは、添加する場合はその含有量が組成物全体の20%以下、特に10%以下であることが好ましい。低級一価アルコールは、使用時のすっきり感、清涼感を付与するのに好適であるが、含有量が20%を超えると刺激が強くなり使用感を低下させる場合がある。また、低級一価アルコールを実質的に含有しない(含有量が組成物全体の0.1%以下)のアルコールフリー製剤は、低刺激タイプの製剤として好適である。
【0028】
本発明の液体口腔用組成物は、配合成分が可溶化した洗口剤、液体歯磨等の液体口腔用組成物、つまり、液分離や不溶成分の析出等が生じることなく各成分が均一に溶解している製剤として好適に調製される。あるいは、配合成分が均一に分散している製剤でもよく、公知の調製済みエマルジョン(例えば、国際公開第2011/055888号、特開2015−89870号公報記載の液体口腔用組成物と同様のエマルジョン、具体的には、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL NET−TE−50等)を添加してエマルジョン製剤として調製することもできる。なお、エマルジョンの添加量は組成物全体の0.1〜4%が好ましい。
【0029】
本発明組成物は、原液のまま使用するタイプの洗口剤、濃縮タイプで使用時に希釈して用いる洗口剤といった洗口剤、歯ブラシでブラッシングして使用する液体歯磨剤やマウスウォッシュ、口中スプレー等の各種剤型に調製できるが、特に洗口剤として好適である。また、この場合、上記成分に加えて、その形態、剤型などに適したその他の公知成分を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて配合できる。具体的には、湿潤剤、増粘剤、界面活性剤、更に必要により甘味剤、着色剤、香料、有効成分、pH調整剤等が配合される。なお、液体口腔用組成物には、研磨剤などの可溶化しない固形成分は通常配合されず、研磨剤は含まないことが好ましい。
【0030】
湿潤剤としては、前記多価アルコールに加えて、ソルビトール、マルチット、ラクチット等の糖アルコールを配合してもよく、その配合量は、多価アルコールを含めた総量で組成物全体の2〜20%、特に3〜15%が好ましい。
【0031】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。配合量は、通常、組成物全体の0〜5%、特に0.01〜4%である。
【0032】
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどが挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノセチル酸ヘキサグリセリル、脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、酢酸ベタイン型、イミダゾリン型が挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、中でもポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が、外観安定性(オリのなさ)の点で好適である。なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油はエチレンオキサイド(以下、E.O.と略記。)の平均付加モル数60〜100モル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルはアルキル基の炭素数16〜18、E.O.の平均付加モル数20〜40モルのものがよい。具体的にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL HCO系、日本エマルジョン(株)製のエマレックスHC系、日油(株)製のユニオックスHC系等、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては日光ケミカルズ(株)製のエマレックス100系、エマレックス600系等の市販品を使用できる。
これら界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.05〜5%が好ましい。
【0034】
甘味剤としては、キシリトール、マルチトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、アスパルテーム等が挙げられる。着色剤として、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号など、安全性の高い水溶性色素を添加することができる。
【0035】
香料としては、例えばペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油、及びl−メントール、l−カルボン、オレンジオイル、アネトール、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、オイゲノール、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分、また、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分、更には、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーの1種又は2種以上を、本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。添加量は、通常、組成中0.00001〜3%である。
【0036】
有効成分としては、例えばデキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、イソプロピルメチルセルロース等の非イオン性殺菌剤、ポリグルタミン酸塩、アラントイン又はその誘導体、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸等のビタミン類、グリチルレチン塩類、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム等の植物抽出物、グルコン酸銅、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム等を添加することができる。なお、これらの有効成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で、有効量とすることができる。
【0037】
pH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、リボ核酸及びその塩類、更に水酸化ナトリウムなどが挙げられる。本発明では、組成物の25℃におけるpHを5.5〜8.0、特に6.0〜7.5に調整することが好ましく、この付近のpH調整剤としてクエン酸とクエン酸ナトリウムを組み合わせたものが特に好適である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0039】
[実施例、比較例]
表1〜4に示す組成の液体口腔用組成物(洗口剤)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
【0040】
(1)再石灰化促進効果の評価方法
押野一志他、口腔衛生会誌54:2−8,2004の記載に従って、以下の実験を行った。
脱灰試料の調製:
牛歯のエナメル質部分を硬組織切断機(アイソメット2000,Buehler社製)で十字に分割して、1歯につき4個のエナメル質ブロックを作製した。これらのブロックのエナメル質表面を鏡面研磨し、約4×4mmのウインドウ(Window)が露出するようにネイルエナメルを用いて被覆した。エナメル質ブロックを、下記組成の脱灰溶液に浸漬し、37℃にて3日間静置して、人工的な表層化脱灰病変を形成させた。
脱灰溶液の組成:(pH4.5)
CaCl
2 3.0mmol/L
KH
2PO
4 1.8mmol/L
乳酸 20mmol/L
乳酸ナトリウム 80mmol/L
ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業(株)製) 5.0%
(上記濃度になるように蒸留水で1Lに調製した。)
【0041】
再石灰化処理:
脱灰試料(各群5ブロック)を、1日2回(9時及び18時頃)、表1〜4の試験組成物に5分間浸漬した。浸漬後の脱灰試料は、Window面を歯ブラシ(PCクリニカライオンハブラシ スタンダード、ライオン(株)製)で約10ストローク刷掃後、水道水の流水下で約30秒間洗浄し、その後は1ブロックずつ下記組成の再石灰化溶液10mLに浸漬して37℃に保持した。この再石灰化溶液は、スクロース摂取30分後のプラークフルイド組成に類似させて、MFPase活性を有する酸性フォスファターゼ(P−3627 コムギ由来)を添加したものであり、1日2回調製して交換した。この一連の操作は14日間継続した。
再石灰化溶液の組成:(pH6.0)
CaCl
2 2.0mmol/L
KH
2PO
4 10mmol/L
乳酸 40mmol/L
NaCl 30mmol/L
KOH 適量
酸性フォスファターゼ(シグマアルドリッチジャパン(株)製)
0.025units/mL
(上記濃度になるように蒸留水で1Lに調製した。)
【0042】
Contact microradiograph(CMR)によるミネラル損失量の測定:
脱灰後及び再石灰化処理後の試料を樹脂包埋(Rigolac2004:パーメックN:プロモーターE=120:1:1,応研商事(株)製)し固化させた後、硬組織切断機(アイソメット2000,Buehler社製)にて厚さ300μmに切断し、自動研磨機(スピードラップML−150DC,マルトー社製)にて、厚さ約150μmの研磨切片試料とした。各切片は、軟X線発生装置(CMR−III,Softex社製)を用い、電流3mA、電圧20kV、X線照射時間20分の条件で、検量線用のアルミステップとともにCMR撮影(SO−343,Kodak社製)を行った。顕微鏡(OPTIPHOTO T2,Nikon社製)下で表層下脱灰部のCMR像をカメラ撮影(HD camera model HQ−130,(株)Nikon製)し、画像解析ソフト(WinRoof V3.0,Mitani社製)を用いてエナメル質表層から深層に向かうミネラル濃度を解析した。バックグラウンドと健全エナメル質のミネラル濃度をそれぞれ0及び100%とし、これらのミネラル濃度プロファイルから、研磨切片試料のミネラル喪失量(ΔZ;vol%・μm)を測定し、算出した。
脱灰サンプルと再石灰化後のミネラル喪失量ΔZを測定し、各群の再石灰化率を計算し、下記基準に従って再石灰化促進効果を評価した。○以上を合格とした。
【0043】
再石灰化促進効果の評価基準:
◎:再石灰化率が60%以上
○:再石灰化率が50%以上60%未満
△:再石灰化率が40%以上50%未満
×:再石灰化率が40%未満
【0044】
(2)殺菌力の持続性の評価方法
菌液の調製:
冷凍ストックされたストレプトコッカス ミュータンス菌(S.mutans25175)を、白金耳にて培地(TSB:Toryptic Soy Bloth培地)4mLに分散し、37℃、嫌気条件下にて24時間培養後、培養液1mLを別のTSB培地4mLに分散し、再び37℃、嫌気条件下にて24時間培養した。
ハイドロキシアパタイト(HAP)粉末に対する殺菌力の持続性の評価:
96wellプレートの1列目のwellにHAP粉末を10mgずつ量り取り、10mM、pH7.0のリン酸バッファー(PBS)200μLにて洗浄した後、PBS200μLに一晩浸漬した。
MIC(最小発育阻止濃度)の測定:
PBS処置したHAP粉末をPBS200μLで2回洗浄後、滅菌唾液150μLを添加し、wellを密閉した状態で、室温にて5rpm、30分間回転させた。唾液を取り除き、サンプル100μLを添加し、再び30分間回転させた後、余剰サンプルを除去し、PBS200μLにて3回洗浄し、HAP粉末の入っているwellには200μL、その他のwellには100μLのPBSを添加した。1時間後、攪拌しながらHAP粉末を含めて2倍段階希釈した後、各wellにPBS100μLを添加、更に前記菌液10μLを添加し、軽く攪拌後、37℃、嫌気条件下にて24時間培養し、肉眼でMIC(最小発育阻止濃度)判定を行い、下記基準に従って殺菌力の持続性を評価した。○以上を合格とした。
【0045】
殺菌力の持続性の評価基準:
◎:MICが100倍以上
○:MICが60倍以上100倍未満
△:MICが30倍以上60倍未満
×:MICが30倍未満
【0046】
(3)使用感(渋味・苦味・異味・刺激のなさ)の評価方法
サンプル(液体口腔用組成物)約10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、洗口後の渋味・苦味・異味・刺激のなさについて下記の4段階で判定した。10名の平均点を次の評価基準に従い、◎、○、△、×で示した。○以上を合格とした。
使用感の評点基準:
4点:渋味・苦味・異味・刺激がなかった。
3点:渋味・苦味・異味・刺激がほとんどなかった。
2点:渋味・苦味・異味・刺激のいずれかが、わずかにあった〜ややあった。
1点:渋味・苦味・異味・刺激がかなりあった。
使用感の評価基準:
◎:平均点3.5点以上4.0点以下
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0047】
使用原料の詳細を下記に示す。
フッ化ナトリウム(ステラケミファ(株)製)
グリセロリン酸カルシウム(岩城製薬(株)製)
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)
ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)
塩化セチルピリジニウム(和光純薬工業(株)製)
塩化ベンゼトニウム(ハイアミン:ロンザジャパン社製)
ポリオキシエチレン(POE)(60)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)製)
ポリオキシエチレン(POE)(100)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)製)
プロピレングリコール(旭硝子(株)製)
グリセリン(85%、阪本薬品工業(株)製)
キシリトール(ロケット・フルーレ社製)
クエン酸(扶桑化学工業(株)製)
クエン酸ナトリウム(扶桑化学工業(株)製)
その他の成分については医薬部外品原料規格2006に適合したものを用いた。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
次に、処方例を表5に示す。使用した香料組成物Aの組成は表6〜12に示す通りであり、カチオン化セルロースはレオガードGP(ライオン(株)製)、エマルジョンはNIKKOL NET−TE−50(日光ケミカルズ(株)製)を使用した。
処方例の液体口腔用組成物は、いずれも再石灰化促進効果、殺菌力の持続性が優れ、使用感(渋味・苦味・異味・刺激のなさ)も良好であった。
【0053】
【表5】
*;香料組成物A0.2%中に、l−メントール0.03%を含む(いずれも組成物全体に対する含有量)。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
(表中、部は質量部である(以下同様。)。)
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】