(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行経路に沿って走行する走行部と、物品を支持する第一支持部と、前記走行経路に沿う方向に対して直交する複数の直交方向のうちの少なくともいずれかの方向に、前記第一支持部を前記走行部に対して移動させる駆動部と、前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備えた物品搬送装置であって、
前記駆動部による前記第一支持部の前記走行部に対する移動方向における、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する運動を表す物理量を検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、移載制御と制振制御とを実行するように構成され、
前記移載制御は、前記走行部の停止中に前記駆動部の作動を制御して、前記走行経路内の第一位置と、物品の搬送元又は搬送先となる搬送対象部と前記第一支持部との間で物品を受け渡す第二位置との間で、前記第一支持部を前記走行部に対して移動させる制御であり、
前記制振制御は、前記走行部が走行中であり且つ前記第一支持部が物品を支持している状態で、前記検出部により検出される前記物理量に基づいて前記駆動部の作動を制御して、前記第一支持部に支持されている物品の、前記走行部の走行に伴う振動を低減する制御である物品搬送装置。
前記制御部は、前記制振制御において、前記検出部により検出される前記物理量に基づき、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する前記経路幅方向の相対加速度を取得し、取得した前記相対加速度に応じた加速度で、前記第二支持部を前記走行部に対して移動させる請求項2に記載の物品搬送装置。
前記制御部は、前記制振制御において、前記検出部により検出される前記物理量に基づき、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する鉛直方向の相対加速度である鉛直加速度を取得し、取得した前記鉛直加速度に応じた回転加速度で、前記巻回部の回転速度を変化させる請求項4に記載の物品搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第一支持部に支持されている物品の揺れ(振動)は、物品を鉛直軸周りに回転させなくても、単に走行部が走行することによっても発生し得る。例えば、走行部が走行するレールの段差や湾曲に起因して物品が鉛直方向に揺れることや、物品に作用する遠心力等の慣性力に起因して物品が走行経路の幅方向(経路幅方向)に揺れることが想定される。そして、このように走行部の走行に起因する物品の振動は、特許文献1で制御対象としている物品を鉛直軸周りに回転させる際に昇降体に発生する揺れとは全く異なるものである。しかしながら、特許文献1では、このような走行部の走行に起因する物品の揺れについての直接的な対策は考慮されておらず、当然ながら、走行部の走行に起因する物品の振動を低減するための制振制御について一切記載されていない。
【0005】
そこで、走行部の走行に起因する物品の振動を、比較的簡素な構成で低減することが可能な物品搬送装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、走行経路に沿って走行する走行部と、物品を支持する第一支持部と、前記走行経路に沿う方向に対して直交する複数の直交方向のうちの少なくともいずれかの方向に、前記第一支持部を前記走行部に対して移動させる駆動部と、前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備えた物品搬送装置の特徴構成は、前記駆動部による前記第一支持部の前記走行部に対する移動方向における、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する運動を表す物理量を検出する検出部を更に備え、前記制御部は、移載制御と制振制御とを実行するように構成され、前記移載制御は、前記走行部の停止中に前記駆動部の作動を制御して、前記走行経路内の第一位置と、物品の搬送元又は搬送先となる搬送対象部と前記第一支持部との間で物品を受け渡す第二位置との間で、前記第一支持部を前記走行部に対して移動させる制御であり、前記制振制御は、前記走行部が走行中であり且つ前記第一支持部が物品を支持している状態で、前記検出部により検出される前記物理量に基づいて前記駆動部の作動を制御して、前記第一支持部に支持されている物品の、前記走行部の走行に伴う振動を低減する制御である点にある。
【0007】
上記の特徴構成によれば、制御部により実行される制振制御によって、第一支持部に支持されている物品の、走行部の走行に伴う振動(走行部の走行に起因する振動)を低減することができる。そして、このような走行部の走行に伴う振動の低減は、物品搬送装置と搬送対象部との間で物品を移載するために物品搬送装置に備えられている駆動部の作動を制御することで実現される。すなわち、制振制御のための専用の装置を設けることなく、物品搬送装置に既存の駆動部やその制御部を有効に利用して制振制御を行うことができる。なお、制振制御を行う走行部の走行中には、物品の移載のために駆動部が作動されることはないため、すなわち、制振制御の実行期間は移載制御の実行期間と重複しないため、制振制御を行う構成とすることによって制御部に要求される性能(処理能力等)が過度に増すことはない。
以上のように、上記の特徴構成によれば、走行部の走行に起因する物品の振動を、比較的簡素な構成で低減することが可能な物品搬送装置を実現することができる。
【0008】
ここで、前記走行部に支持され且つ前記第一支持部を吊り下げ支持する第二支持部を更に備え、前記駆動部は、前記走行経路の幅方向である経路幅方向に前記第二支持部を前記走行部に対して移動させることで、前記経路幅方向を前記複数の直交方向のうちのいずれかの方向として、前記第一支持部を前記走行部に対して前記経路幅方向に移動させるように構成され、前記制御部は、前記制振制御において、前記第一支持部に支持されている物品の前記第二支持部に対する前記経路幅方向の変位が低減する向きに、前記第二支持部を前記走行部に対して移動させる構成とすると好適である。
【0009】
この構成によれば、制振制御において、第一支持部に支持されている物品の第二支持部に対する経路幅方向の変位が低減する向きに、第二支持部が走行部に対して移動される。よって、第一支持部が第二支持部に吊り下げ支持されるため、第一支持部に支持された物品は、第二支持部に対して振り子状に経路幅方向に振動し得るが、物品の第二支持部に対する経路幅方向の変位が制振制御により低減されることで、当該振動の振れ角或いは振幅を低く抑えることができる。この結果、物品の第二支持部に対する経路幅方向の振動を、適切に低減することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記制振制御において、前記検出部により検出される前記物理量に基づき、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する前記経路幅方向の相対加速度を取得し、取得した前記相対加速度に応じた加速度で、前記第二支持部を前記走行部に対して移動させる構成とすると好適である。
【0011】
この構成によれば、制振制御の実行中に、第二支持部の走行部に対する各時点での経路幅方向の移動量を、第一支持部に支持されている物品の走行部に対する経路幅方向の加速度の各時点での大きさに応じて、振動を効果的に低減するための適切な量に設定することが可能となる。
【0012】
また、前記走行部に支持され且つ前記第一支持部を吊り下げ支持する第二支持部を更に備え、前記第二支持部は、前記第一支持部に接続された索状体を巻回した巻回部を備え、前記駆動部は、前記巻回部を回転させて前記索状体を巻き取り又は繰り出すことで、鉛直方向を前記複数の直交方向のうちのいずれかの方向として、前記第一支持部を前記走行部に対して鉛直方向に移動させるように構成され、前記制御部は、前記制振制御において、前記索状体に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、前記巻回部を回転させる構成とすると好適である。
【0013】
この構成によれば、制振制御において、索状体に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、巻回部が回転される。よって、第一支持部が第二支持部に索状体を介して吊り下げ支持されるため、索状体が有する柔軟性によって、第一支持部に支持されている物品は第二支持部或いは走行部に対して鉛直方向に変位し得るが、索状体に作用する張力の変化量が制振制御により低減されることで、索状体に作用する張力を所定範囲内に維持することが可能となる。よって、索状体に作用する張力が急激に増大することで物品に衝撃的な力が作用する現象のような、索状体に作用する張力が大きく変化することに起因して発生し得る問題を適切に回避することが可能となる。
【0014】
また、前記制御部は、前記制振制御において、前記検出部により検出される前記物理量に基づき、前記第一支持部に支持されている物品の前記走行部に対する鉛直方向の相対加速度である鉛直加速度を取得し、取得した前記鉛直加速度に応じた回転加速度で、前記巻回部の回転速度を変化させる構成とすると好適である。
【0015】
この構成によれば、制振制御の実行中に、巻回部の各時点での回転速度を、第一支持部に支持されている物品の鉛直加速度の各時点での大きさに応じて、索状体に作用する張力の変化量を効果的に低減するための適切な回転速度に設定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
物品搬送装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1〜
図5に示すように、物品搬送装置2は、走行経路に沿って走行する走行部11と、物品3を支持する第一支持部4と、第一支持部4を走行部11に対して移動させる駆動装置26と、駆動装置26の作動を制御する制御装置80と、を備えている。第一支持部4は、走行部11に支持されており、走行部11の走行に伴い走行経路に沿って移動する。本実施形態では、物品搬送装置2は、走行部11に支持され且つ第一支持部4を吊り下げ支持する第二支持部5を備えており、第一支持部4は、第二支持部5を介して走行部11に支持されている。本実施形態では、駆動装置26が「駆動部」に相当し、制御装置80が「制御部」に相当する。
【0018】
駆動装置26は、走行経路に沿う方向(以下、「経路長手方向Y」という。)に対して直交する複数の直交方向のうちの少なくともいずれかの方向に、第一支持部4を走行部11に対して移動させる。本実施形態では、駆動装置26は、2つの直交方向である経路幅方向X及び鉛直方向Zのそれぞれに、第一支持部4を走行部11に対して移動させる。ここで、経路幅方向Xは、走行経路の幅方向である。すなわち、経路幅方向Xは、経路長手方向Y及び鉛直方向Zの双方に直交する方向である。本実施形態では、後述するように、経路長手方向Yに沿って延びるように、走行レール1が設置される。
【0019】
物品搬送装置2は、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する運動を表す物理量(以下、「特定物理量」という。)を検出する検出装置40を更に備えている。検出装置40は、駆動装置26による第一支持部4の走行部11に対する移動方向における特定物理量を検出する。本実施形態では、この移動方向は、経路幅方向X及び鉛直方向Zの双方であり、検出装置40は、経路幅方向X及び鉛直方向Zのそれぞれにおける特定物理量を検出する。本実施形態では、検出装置40が「検出部」に相当する。
【0020】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、走行部11は、天井側に形成された走行経路に沿って走行する。走行経路は、走行部11が走行する際に、走行部11、本体部12、及び第一支持部4に支持された物品3が移動する空間である。本体部12は、物品搬送装置2における走行部11に支持される部分であり、本体部12には、第一支持部4及び第二支持部5が含まれる。本実施形態では、
図1及び
図3に示すように、走行部11が走行する際に物品3が移動する空間は、走行部11が走行する際に本体部12が移動する空間に含まれる。走行経路は、複数の搬送対象部91を経由するように形成される。搬送対象部91は、物品搬送装置2による物品3の搬送元又は搬送先となる。本実施形態では、物品3は、半導体基板等の基板を収容する容器であり、具体的には、FOUP(Front Opening Unified Pod)である。そして、
図1及び
図2に一例として示す搬送対象部91は、物品3に収容された基板に対して処理を行う処理装置90の支持台(ロードポート)である。搬送対象部91は、例えば、走行経路よりも下側であって鉛直方向Zに見て走行経路と重なる位置に配置され、或いは、走行経路よりも下側であって経路幅方向Xで走行経路の外側に配置される。
【0021】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、走行部11は、天井から吊り下げられた走行レール1に支持された状態で、走行経路に沿って走行するように構成されている。本体部12は、走行レール1よりも下側に位置するように、走行部11に吊り下げ支持される。走行部11は、走行レール1の上面を転動する走行輪14を備えており、走行部11は、走行輪14が走行レール1に対して上側から接触した状態で、走行レール1により支持される。本実施形態では、経路幅方向Xに離間した一対の走行レール1が、走行経路に沿って設けられ、走行部11は、一対の走行レール1の一方の上面を転動する走行輪14と、一対の走行レール1の他方の上面を転動する走行輪14とを備えている。走行部11は、当該走行部11に備えられた走行用モータ13(
図3参照)の駆動力により走行する。具体的には、走行輪14が走行用モータ13により回転駆動されることで、走行部11が走行経路に沿って走行する。なお、走行部11には、走行部11の経路幅方向Xの移動を規制する案内輪15が備えられ、案内輪15が走行レール1の側面に接触案内された状態で、走行部11が走行レール1の延在方向に沿って(すなわち、走行経路に沿って)走行する。
【0022】
物品搬送装置2は、駆動装置26の駆動力により作動する機構であって、第二支持部5を走行部11に対して経路幅方向Xに移動させるスライド機構18を備えている。第二支持部5は、第一支持部4を吊り下げ支持しているため、第二支持部5の走行部11に対する経路幅方向Xの移動に応じて、第一支持部4も走行部11に対して経路幅方向Xの同じ側に移動する。すなわち、駆動装置26は、第二支持部5を走行部11に対して経路幅方向Xに移動させることで、経路幅方向Xを上記複数の直交方向のうちのいずれかの方向として、第一支持部4を走行部11に対して経路幅方向Xに移動させるように構成されている。駆動装置26は、走行部11を走行させる際の経路幅方向Xの基準位置(
図4において二点鎖線で示す第二支持部5の位置)に対して経路幅方向Xの両側に、第二支持部5を移動させることが可能に構成されている。なお、この基準位置(引退位置)は、走行経路内の位置であり、本実施形態では、本体部12に備えられたカバー16により経路長手方向Yの両側を区画された空間(以下、「収容空間」という。)の内部の位置である。この収容空間は、経路幅方向Xの少なくとも一方側(本実施形態では両側)に形成された開口部において、収容空間の外部の空間(走行経路の外部の空間)に連通している。そして、第一支持部4、第二支持部5、及び第一支持部4に支持された物品3は、カバー16と接触することなく、当該開口部を介して収容空間の内部と外部との間(走行経路の内部と外部との間)で経路幅方向Xに移動される。
【0023】
本実施形態では、
図3及び
図5に示すように、駆動装置26は、スライド機構18を作動させるためのスライド用モータ25(本実施形態ではサーボモータ)を備えている。また、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、スライド機構18は、第一スライド移動体23と第二スライド移動体24とを備えている。第二スライド移動体24は、本体部12における走行部11との連結部分(本体部12の上側部分)に対して、経路幅方向Xに相対移動可能に連結され、第一スライド移動体23は、第二スライド移動体24に対して経路幅方向Xに相対移動可能に連結されている。そして、第二支持部5は、第一スライド移動体23に固定されており、第一スライド移動体23と一体的に経路幅方向Xに移動する。駆動装置26は、第二支持部5が上記基準位置に位置する状態(
図4において二点鎖線で示す状態)から、スライド用モータ25の駆動力により、第二スライド移動体24を本体部12における上記連結部分に対して経路幅方向Xの外側へスライド移動させると共に、第一スライド移動体23を第二スライド移動体24に対して経路幅方向Xの外側へスライド移動させることで、第二支持部5を経路幅方向Xの外側(基準位置から離れる側)へ移動させる。
図4において実線で示す第二支持部5の位置(突出位置)は、走行経路よりも下側であって経路幅方向Xで走行経路の外側に配置された搬送対象部91(
図4では省略)と、鉛直方向Zに見て第一支持部4が重なる位置である。また、駆動装置26は、第二支持部5が上記基準位置よりも経路幅方向Xの外側に位置する状態(例えば、
図4において実線で示す状態)から、スライド用モータ25の駆動力により、第二スライド移動体24を本体部12における上記連結部分に対して経路幅方向Xの内側へスライド移動させると共に、第一スライド移動体23を第二スライド移動体24に対して経路幅方向Xの内側へスライド移動させることで、第二支持部5を経路幅方向Xの内側(基準位置に近づく側)へ移動させる。
【0024】
また、物品搬送装置2は、駆動装置26の駆動力により作動する機構であって、第一支持部4を第二支持部5に対して鉛直方向Zに移動させる(すなわち、昇降させる)昇降機構17を備えている。なお、第二支持部5は、走行部11に対して経路幅方向Xにのみ移動可能であり、第二支持部5の走行部11に対する鉛直方向Zの位置は固定される。よって、第一支持部4の第二支持部5に対する鉛直方向Zの移動量及び移動方向は、第一支持部4の走行部11に対する鉛直方向Zの移動量及び移動方向と同一である。駆動装置26は、走行部11を走行させる際の基準高さ(
図1、
図3、
図4で示す第一支持部4の高さ)に対して鉛直方向Zの両側に、第一支持部4を移動させることが可能に構成されている。なお、この基準高さ(走行用高さ)は、第二支持部5が上記基準位置に位置する状態で第一支持部4が走行経路内に位置する高さである。そのため、第一支持部4の基準高さから上側への移動可能範囲は、比較的小さい範囲となる。本実施形態では、この基準高さは、第二支持部5が基準位置に位置する状態で、カバー16により形成される上記収容空間の内部に第一支持部4が位置し、且つ、第一支持部4が物品3を支持している場合には更に当該物品3が収容空間の内部に位置する高さに設定されている。この収容空間は、下側に形成された開口部において、収容空間の外部の空間(走行経路の外部の空間)に連通している。そして、第一支持部4、及び第一支持部4に支持された物品3は、カバー16と接触することなく、当該開口部を介して収容空間の内部と外部との間(走行経路の内部と外部との間)で鉛直方向Zに移動される。
【0025】
本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、駆動装置26は、昇降機構17を作動させるための昇降用モータ21(本実施形態ではサーボモータ)を備えている。また、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、昇降機構17は、ベルト10と巻回体22(回転ドラム)とを備えている。ベルト10は、巻回体22に巻回されており、ベルト10の先端部には第一支持部4が連結されている。また、巻回体22は、第二支持部5に固定されている。すなわち、第二支持部5は、第一支持部4に接続されたベルト10を巻回した巻回体22を備えている。これにより、第二支持部5は、ベルト10により第一支持部4を吊り下げ支持している。駆動装置26は、昇降用モータ21の駆動力により巻回体22を正方向又は逆方向に回転させることにより、ベルト10を巻き取り又は繰り出して、第一支持部4を上昇又は下降させる。すなわち、駆動装置26は、巻回体22を回転させてベルト10を巻き取り又は繰り出すことで、鉛直方向Zを上記複数の直交方向のうちのいずれかの方向として、第一支持部4を走行部11に対して鉛直方向Zに移動させるように構成されている。
図2に示すように、本実施形態では3本のベルト10が昇降機構17に備えられている。本実施形態では、ベルト10が「索状体」に相当し、巻回体22が「巻回部」に相当する。なお、ワイヤ等の他の索状体をベルト10に代えて用いることも可能である。また、2本又は4本等の3本とは異なる本数のベルト10が昇降機構17に備えられても良い。
【0026】
図4に示すように、本実施形態では、物品3の上部にフランジ部が形成されており、第一支持部4は、当該フランジ部を把持する一対の把持部20を備えている。フランジ部は、物品3の本体部に対して上側に位置するように当該本体部に連結されており、本体部とフランジ部との間には挿入用空間が形成されている。一対の把持部20は、当該一対の把持部20のそれぞれの支持部分がこの挿入用空間に挿入された状態で、フランジ部の下面を下側から支持する。第一支持部4は、把持用モータ19(
図4、
図5参照)を備え、把持用モータ19の駆動力により、一対の把持部20の姿勢が、物品3を把持する把持姿勢(
図4に示す姿勢)と、物品3の把持を解除する解除姿勢との間で切り替えられる。すなわち、把持姿勢の一対の把持部20のそれぞれの支持部分を互いに離間させて、当該それぞれの支持部分を上記挿入用空間から抜き出すことで、一対の把持部20の姿勢が解除姿勢に切り替えられる。また、解除姿勢の一対の把持部20のそれぞれの支持部分を互いに接近させて、当該それぞれの支持部分を上記挿入用空間に挿入することで、一対の把持部20の姿勢が把持姿勢に切り替えられる。
【0027】
駆動装置26の作動を制御する制御装置80は、本実施形態では、走行部11の作動及び一対の把持部20の作動も制御するように構成されている。すなわち、
図5に示すように、制御装置80は、駆動装置26が備える昇降用モータ21及びスライド用モータ25の駆動に加えて、走行用モータ13及び把持用モータ19の駆動も制御するように構成されている。制御装置80は、昇降用モータ21の駆動を制御することで第一支持部4を鉛直方向Zに移動させ、スライド用モータ25の駆動を制御することで第二支持部5を経路幅方向Xに移動させ、把持用モータ19の駆動を制御することで一対の把持部20の姿勢を切り替える。また、制御装置80は、走行用モータ13の駆動を制御することで走行部11を走行させる。制御装置80は、第一支持部4が走行経路内に位置する状態で、走行部11を走行させる。本実施形態では、制御装置80は、第一支持部4及び第二支持部5が上述した収容空間の内部に位置し、第一支持部4が物品3を支持している場合には更に当該物品3が収容空間の内部に位置する状態で、走行部11を走行させる。
【0028】
制御装置80は、マイクロコンピュータ等のプロセッサを備えると共に、メモリ等の周辺回路を備え、これらのハードウェアと、プロセッサ等のハードウェア上で実行されるプログラムとの協働により、制御装置80の各機能が実現される。制御装置80は、走行部11と一体的に走行するように設けられても、走行部11と一体的に走行しないように走行部11とは独立に設けられても良い。また、制御装置80が、互いに通信可能に分離された複数のハードウェアを備える場合、当該複数のハードウェアのうちの一部のハードウェアのみが走行部11と一体的に走行するように設けられ、残りのハードウェアが走行部11とは独立に設けられても良い。
【0029】
制御装置80は、移載制御と制振制御とを実行するように構成される。移載制御は、走行部11の停止中に駆動装置26の作動を制御して、走行経路内の第一位置と、搬送対象部91と第一支持部4との間で物品3を受け渡す第二位置(
図2に示す第一支持部4の位置)との間で、第一支持部4を走行部11に対して移動させる制御である。本実施形態では、第二位置は、第一位置よりも低い高さに設定される。また、本実施形態では、第二位置は、鉛直方向Zに見て第一支持部4が搬送対象部91と重なる位置であって、一対の把持部20の姿勢を解除姿勢から把持姿勢に切り替えることで、搬送対象部91に支持された物品3の上記挿入用空間に一対の把持部20のそれぞれの支持部分を挿入することが可能であり、且つ、一対の把持部20の姿勢を把持姿勢から解除姿勢に切り替えることで、搬送対象部91に支持された物品3の上記挿入用空間から一対の把持部20のそれぞれの支持部分を抜き出すことが可能な位置(高さ)に設定される。本実施形態では、制御装置80は、上位のコントローラ(図示せず)からの指令に基づいて移載制御を実行する。
【0030】
制御装置80は、第一支持部4が物品3を支持していない状態(以下、「空荷状態」という。)の物品搬送装置2に、搬送元の搬送対象部91から物品3を受け取らせる受取制御を実行する際や、第一支持部4が物品3を支持している状態(以下、「実荷状態」という。)の物品搬送装置2に、搬送先の搬送対象部91に物品3を供給させる供給制御を実行する際に、移載制御を実行する。制御装置80は、受取制御の実行時には、空荷状態の物品搬送装置2の走行部11を、搬送元の搬送対象部91と経路長手方向Yの同じ位置に停止させた状態で、移載制御を実行する。また、制御装置80は、供給制御の実行時には、実荷状態の物品搬送装置2の走行部11を、搬送先の搬送対象部91と経路長手方向Yの同じ位置に停止させた状態で、移載制御を実行する。受取制御の実行時に実行される移載制御(以下、「第一移載制御」という。)と、供給制御の実行時に実行される移載制御(以下、「第二移載制御」という。)は、いずれも、第一支持部4を第一位置から第二位置に移動させる制御、一対の把持部20の姿勢を切り替える制御、第一支持部4を第二位置から第一位置に移動させる制御を、記載の順に実行する点で共通する。しかし、第一移載制御では、一対の把持部20の姿勢を解除姿勢から把持姿勢に切り替えるのに対して、第二移載制御では、一対の把持部20の姿勢を把持姿勢から解除姿勢に切り替える点で、第一移載制御と第二移載制御とは相違する。
【0031】
なお、搬送対象部91が、走行経路よりも下側であって経路幅方向Xで走行経路の外側に配置されている場合には、第一支持部4を第一位置と第二位置との間で移動させる際に、第一支持部4を走行経路の内部と外部との間で経路幅方向Xに移動させる必要がある。本実施形態では、この場合、第一支持部4が、経路幅方向Xで走行経路の外側に位置する状態で鉛直方向Zに移動するように、第一支持部4を支持する第二支持部5の経路幅方向Xの移動と、第一支持部4の鉛直方向Zの移動との実行順序が設定される。すなわち、第一支持部4を第一位置から第二位置に移動させる際には、第一支持部4を走行経路の外部まで経路幅方向Xに移動させ(
図4の実線で示す状態)、その後、第一支持部4を第二位置に向けて下降させる。また、第一支持部4を第二位置から第一位置に移動させる際には、第一支持部4を、経路幅方向Xで走行経路の外側に位置させた状態で第一位置と同じ高さまで上昇させ(
図4の実線で示す状態)、その後、第一支持部4を走行経路の内部まで経路幅方向Xに移動させる。
【0032】
制振制御は、走行部11が走行中であり且つ第一支持部4が物品3を支持している状態で、検出装置40により検出される特定物理量に基づいて駆動装置26の作動を制御して、第一支持部4に支持されている物品3の、走行部11の走行に伴う振動を低減する制御である。すなわち、制振制御は、実荷状態の物品搬送装置2の走行部11の走行中に実行される制御である。走行部11の走行中には、例えば、走行輪14が走行レール1から受ける衝撃(走行レール1の段差や湾曲による衝撃等)や、物品3に作用する慣性力(遠心力等)等が原因となって、物品3に振動が発生し得る。なお、物品3は、第一支持部4に対する移動が規制される状態で第一支持部4に支持される。よって、物品3は、走行部11の走行に伴い第一支持部4と一体的に振動し得る。
【0033】
本実施形態では、制御装置80は、制振制御として、第一制振制御と第二制振制御とを実行する。ここで、第一制振制御は、物品3の経路幅方向Xの振動を低減する制御である。また、第二制振制御は、物品3の鉛直方向Zの振動を低減する制御である。制御装置80は、物品3の経路幅方向Xの振動が検知された場合に、第一制振制御を実行する。本実施形態では、
図4に示すように、検出装置40は、走行部11に対する物品3の経路幅方向Xの位置を検出するための第一距離センサ41(例えば、光距離センサ等)を備えている。すなわち、本実施形態では、第一距離センサ41により、経路幅方向Xの特定物理量として、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの位置が検出される。制御装置80は、第一距離センサ41の検出情報に基づき、物品3の経路幅方向Xの振動の有無を判定する。なお、
図3に示すように、本実施形態では、第一距離センサ41の位置を、検出用の位置(
図3において破線で示す位置)と、退避用の位置(
図3において実線で示す位置)との間で切り替えることができるように構成されており、物品搬送装置2と搬送対象部91との間での物品3の移載時に、第一距離センサ41は必要に応じて上記退避用の位置に移動される。また、制御装置80は、物品3の鉛直方向Zの振動が検知された場合に、第二制振制御を実行する。本実施形態では、
図4に示すように、検出装置40は、走行部11に対する物品3の鉛直方向Zの位置を検出するための第二距離センサ42(例えば、光距離センサ等)を備えている。すなわち、本実施形態では、第二距離センサ42により、鉛直方向Zの特定物理量として、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの位置が検出される。制御装置80は、第二距離センサ42の検出情報に基づき、物品3の鉛直方向Zの振動の有無を判定する。
【0034】
図7は、物品3の経路幅方向Xの振動の説明図である。本実施形態では、第一支持部4は、ベルト10により第二支持部5に吊り下げ支持されている。そのため、単純化したモデルで考えると、
図7に示すように、ベルト10における吊り点(支点)として機能する部分からベルト10の先端部(第一支持部4との連結部分)までの長さ(以下、単に「ベルト長さ」という。)に応じた振幅で、第一支持部4に支持された物品3が第二支持部5に対して(走行部11に対して)経路幅方向Xに振動し得る。本実施形態では、物品3は半導体基板等の基板を収容する容器であるため、物品3が第二支持部5に対して経路幅方向Xに振動した場合には、物品3が傾くこと等によって基板が容器に対して移動するおそれがあり、振動の程度によっては基板が損傷するおそれもある。なお、走行部11を走行させる際には第一支持部4は走行経路内に位置するため、走行部11の走行中におけるベルト長さは短く、物品3に発生し得る経路幅方向Xの振動の振幅は、ベルト長さに応じた比較的小さい振幅の振動となるが、
図7では、ベルト長さ、ベルト10の伸縮、及び振動による物品3の傾きを、誇張して示している。
【0035】
上記のような物品3の経路幅方向Xの振動を低減すべく、制御装置80は第一制振制御を実行する。本実施形態では、第一制振制御は、第一支持部4に支持されている物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの変位が低減する向きに、第二支持部5を走行部11に対して移動させる制御である。なお、「物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの変位」は、物品3が振動していない状態での経路幅方向Xの位置に対する、物品3の経路幅方向Xの変位である。物品3が振動していない状態での物品3の経路幅方向Xの位置は、第二支持部5の経路幅方向Xの位置に応じて変化する。
図7に示すように、第一支持部4に支持されている物品3が、第二支持部5に対して経路幅方向Xの一方側(図中右側)に変位している場合には、第一制振制御の実行により、第二支持部5が走行部11に対して経路幅方向Xの同じ側(図中右側)に移動される。これにより、
図8に示すように、物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの振動を低減することができる。なお、
図8では、物品3の第二支持部5に対する変位がゼロとなる経路幅方向Xの位置まで、第二支持部5が走行部11に対して経路幅方向Xに移動した状況を示している。図示は省略するが、第一支持部4に支持されている物品3が、第二支持部5に対して経路幅方向Xの他方側(
図7における左側)に変位している場合には、第一制振制御の実行により、第二支持部5が走行部11に対して経路幅方向Xの同じ側(
図7における左側)に移動される。第一制振制御の実行により、第二支持部5は上記基準位置から経路幅方向Xに移動するが、少なくとも走行部11が走行を開始する時点で、第二支持部5は上記基準位置に位置する。
【0036】
図9は、物品3の鉛直方向Zの振動の説明図である。本実施形態では、第一支持部4は、ベルト10により第二支持部5に吊り下げ支持されている。そして、ベルト10は柔軟性を有するため、第一支持部4に支持された物品3は、第二支持部5に対して(走行部11に対して)鉛直方向Zに振動し得る。第一支持部4に支持された物品3の鉛直方向Zの振動に伴い、ベルト10の張力も変化する。以下では、物品3が振動していない状態でのベルト10の張力を「基準張力」という。ベルト10の張力が上記基準張力となる物品3の高さは、ベルト長さに応じて変化する。第一支持部4に支持された物品3が、ベルト10の張力が上記基準張力となる高さよりも上側に変位した場合には、ベルト10の張力が上記基準張力よりも小さくなる。また、第一支持部4に支持された物品3が、ベルト10の張力が上記基準張力となる高さよりも下側に変位した場合には、ベルト10の張力が上記基準張力よりも大きくなる。そして、物品3が第二支持部5に対して経路幅方向Xに振動した場合と同様、物品3が第二支持部5に対して鉛直方向Zに振動した場合には、基板が容器に対して移動するおそれがあり、振動の程度によっては基板が損傷するおそれもある。例えば、ベルト10の張力が急激に増大した場合に基板が容器から受ける衝撃によって、基板が損傷するおそれがある。なお、上述したように、走行部11の走行中におけるベルト長さは短いが、
図9では、ベルト長さ、ベルト10の撓み、物品3の鉛直方向Zの変位量を、誇張して示している。
【0037】
上記のような物品3の鉛直方向Zの振動を低減すべく、制御装置80は第二制振制御を実行する。本実施形態では、第二制振制御は、ベルト10に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、巻回体22を回転させる制御である。
図9に示すように、第一支持部4に支持されている物品3が、ベルト10の張力が上記基準張力となる高さよりも上側に変位した場合には、ベルト10に作用する張力が小さくなる。この場合、第二制振制御の実行により、ベルト10の張力の低下量を低減する回転方向、すなわち、ベルト10を巻回体22に巻き取る回転方向に、巻回体22が回転される。これにより、
図10に示すように、ベルト長さを短くしてベルト10の張力を基準張力或いはそれに近い張力に維持することができ、物品3の第二支持部5に対する(走行部11に対する)鉛直方向Zの振動を低減することができる。図示は省略するが、第一支持部4に支持されている物品3が、ベルト10の張力が上記基準張力となる高さよりも下側に変位した場合には、ベルト10の作用する張力が大きくなる。この場合、第二制振制御の実行により、ベルト10の張力の増加量を低減する回転方向、すなわち、ベルト10を巻回体22から繰り出す回転方向に、巻回体22が回転される。これにより、ベルト長さを長くしてベルト10の張力を基準張力或いはそれに近い張力に維持することができ、物品3の第二支持部5に対する鉛直方向Zの振動を低減することができる。第二制振制御の実行により、第一支持部4は上記基準高さから上側又は下側に移動するが、少なくとも走行部11が走行を開始する時点で、第一支持部4は上記基準高さに位置する。
【0038】
図11は、走行部11が走行中であり且つ第一支持部4が物品3を支持している状態で制御装置80により実行される制御フローの一例である。
図11に示すように、制御装置80は、物品3の振動が検知されると(ステップ#01:Yes)、制振制御を実行する(ステップ#02)。なお、ステップ#01の判定は、制振制御(ステップ#02)が実行されていない間、予め定められた制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
本実施形態では、制御装置80は、検出装置40の検出情報に基づき物品3の振動の有無を判定する。具体的には、制御装置80は、第一距離センサ41の検出情報に基づき、物品3の経路幅方向Xの振動の有無を判定し、第二距離センサ42の検出情報に基づき、物品3の鉛直方向Zの振動の有無を判定する。制御装置80は、例えば、物品3の第二支持部5に対する(或いは、走行部11に対する、以下同様。)経路幅方向Xの位置或いは変位量、物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの移動速度、物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの加速度等を判定対象値として、当該判定対象値が予め定められた閾値を超えた場合に、物品3の経路幅方向Xの振動を検知したと判定する。また、制御装置80は、例えば、物品3の第二支持部5に対する(或いは、走行部11に対する、以下同様。)鉛直方向Zの位置或いは変位量、物品3の第二支持部5に対する鉛直方向Zの移動速度、物品3の第二支持部5に対する鉛直方向Zの加速度等を判定対象値として、当該判定対象値が予め定められた閾値を超えた場合に、物品3の鉛直方向Zの振動を検知したと判定する。
【0040】
制御装置80は、物品3の振動が検知されている間(ステップ#03:Yes)、制振制御(ステップ#02)を繰り返し実行する。ステップ#03の判定は、予め定められた制御周期で繰り返し実行される。そして、物品3の振動が検知されなくなると(ステップ#03:No)、位置復帰制御を実行し(ステップ#04)、処理はステップ#01に戻される。制御装置80は、例えば、上述した判定対象値が予め定められた閾値以下である場合に、物品3の振動が検知されないと判定する。上述したように、第一制振制御の実行により、第二支持部5は上記基準位置から経路幅方向Xに移動し、第二制振制御の実行により、第一支持部4は上記基準高さから上側又は下側に移動する。ステップ#04の位置復帰制御は、第一制振制御を実行した場合には、第二支持部5の経路幅方向Xの位置を上記基準位置に戻す制御であり、第二制振制御を実行した場合には、第一支持部4の高さを上記基準高さに戻す制御である。この位置復帰制御における第一支持部4或いは第二支持部5の移動速度は、物品3に実質的に振動が発生しない程度の遅い速度に設定される。なお、
図11では、位置復帰制御を振動が検知されなくなった時点で毎回実行する場合を例として示しているが、他の時点で位置復帰制御が実行される構成とすることもできる。例えば、第一支持部4の第二支持部5に対する鉛直方向Zの位置が予め定められた範囲から外れた場合や、第二支持部5の走行部11に対する経路幅方向Xの位置が予め定められた範囲から外れた場合にのみ、位置復帰制御が実行される構成とすることができる。また、例えば、走行部11が停止した時点で、位置復帰制御が実行される構成とすることもできる。
【0041】
本実施形態では、制御装置80は、物品3の経路幅方向Xの振動が検知された場合に、第一制振制御を実行し、物品3の鉛直方向Zの振動が検知された場合に、第二制振制御を実行する。よって、ステップ#01の判定で、経路幅方向X及び鉛直方向Zの双方における物品3の振動が検知された場合には、ステップ#02の制振制御において第一制振制御及び第二制振制御の双方が実行される。そして、ステップ#03の判定で、経路幅方向X及び鉛直方向Zの一方のみの物品3の振動が検知されなくなった場合でも、他方の振動を低減するための第一制振制御又は第二制振制御を引き続き実行し、経路幅方向X及び鉛直方向Zの双方における物品3の振動が検知されなくなった場合に制振制御が終了される。その後、
図11に示す例では、処理が位置復帰制御(ステップ#04)に移行する。
【0042】
また、ステップ#01の判定で、経路幅方向X及び鉛直方向Zの一方のみの物品3の振動が検知された場合には、ステップ#02の制振制御において当該一方の振動を低減するための第一制振制御又は第二制振制御が実行される。そして、他方の振動が検知されることなく当該一方の振動が検知されなくなった場合には、他方の振動を低減するための制振制御を実行することなく制振制御が終了される。その後、
図11に示す例では、処理が位置復帰制御(ステップ#04)に移行する。これに対し、当該一方の振動が検知されなくなるまでに他方の振動が検知された場合には、第一制振制御及び第二制振制御の双方が実行される状態となる。なお、第一制振制御及び第二制振制御のうちの一方の制振制御を実行している間は、他方の制振制御の実行を禁止する構成とすることもできる。
【0043】
最後に、
図6を参照して、上述したような第一制振制御及び第二制振制御を実行するための、本実施形態に係る制御系の構成について説明する。以下に説明するように、本実施形態では、制御装置80は、第一制振制御において、検出装置40(第一距離センサ41)により検出される特定物理量に基づき、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの相対加速度を取得し、取得した相対加速度に応じた加速度で、第二支持部5を走行部11に対して移動させる。また、本実施形態では、制御装置80は、第二制振制御において、検出装置40(第二距離センサ42)により検出される特定物理量に基づき、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの相対加速度である鉛直加速度を取得し、取得した鉛直加速度に応じた回転加速度で、巻回体22の回転速度を変化させる。なお、検出装置40が第一距離センサ41であるか第二距離センサ42であるかと、駆動装置26がスライド用モータ25であるか昇降用モータ21であるかを除けば、第一制振制御の制御系と第二制振制御の制御系とは基本的に同様に構成されるため、
図6では、第一制振制御と第二制振制御とを区別することなく示している。
【0044】
図6に示すように、制御装置80は、差分器54及び位置制御器55を備えた位置フィードバック制御系に、検出装置40(距離センサ)、2回微分器50、フィルタ51、第一ゲイン部52、及び第二ゲイン部53を備えた制振トルク生成系を追加した制御系を有している。ここで、差分器54は、位置指令と、駆動装置26(モータ)の検出位置との差分(位置偏差)を出力し、位置制御器55は、当該位置偏差をゼロとするような基本トルクを出力する。第一制振制御の場合、基本トルクは、第二支持部5を現状の位置(少なくとも走行部11の走行開始時には上記基準位置)に維持するためのトルクに相当し、第二制振制御の場合、基本トルクは、第一支持部4を現状の高さ(少なくとも走行部11の走行開始時には上記基準高さ)に維持するためのトルクに相当する。そして、制振トルク生成系により生成された制振トルク(後述する)が加算器56により基本トルクに加算されることで、駆動装置26(モータ)に出力されるトルク指令が生成される。なお、位置制御器55が、駆動装置26(モータ)の検出速度の情報も取得して、位置制御に加えて速度制御も実行する構成としても良い。
【0045】
第一制振制御の場合、上記制振トルクは、第一支持部4に支持されている物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの変位が低減する向きに、第二支持部5を走行部11に対して移動させるためのトルクである。また、第二制振制御の場合、上記制振トルクは、ベルト10に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、巻回体22を回転させるためのトルクである。このような制振トルクは以下のように生成される。2回微分器50は、検出装置40(距離センサ)により検出される変位を2回微分することで、加速度を出力する。第一制振制御の場合、この加速度は物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの加速度であり、第二制振制御の場合、この加速度は物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの加速度である。フィルタ51は、2回微分器50から出力された加速度にローパスフィルタ処理を施し、第一ゲイン部52は、フィルタ処理後の加速度にゲインを乗じることで、制振トルクを生成する。そして、第二ゲイン部53は、この制振トルクにゲインを乗じることで、モータ軸に換算した制振トルクを生成し、加算器56に出力する。なお、ローパスフィルタ処理により、観測ノイズを除去することや、制振制御で対応することが困難な高周波の振動成分を除去すること等が可能となる。また、第一制振制御の場合、ローパスフィルタ処理により、ベルト長さに応じた振り子状の振動(固有振動)以外の振動成分を除去することが可能となる。
【0046】
上記のように制振トルク生成系によって生成される制振トルクは、物品3の加速度の大きさに比例する大きさのトルクとなる。そして、第一ゲイン部52で乗算されるゲインの大きさや符号を適切に設定することで、第一制振制御において、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの相対加速度に応じた加速度(例えば、当該相対加速度と同じ大きさの加速度)で、且つ、当該物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの変位が低減する向きに、第二支持部5を走行部11に対して移動させることができる。同様に、第一ゲイン部52で乗算されるゲインの大きさや符号を適切に設定することで、第二制振制御において、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの相対加速度である鉛直加速度に応じた回転加速度で、且つ、ベルト10に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、巻回体22の回転速度を変化させることができる。この回転加速度は、例えば、ベルト長の変化量が第一支持部4の鉛直方向Zの変位量と等しくなる回転加速度とされる。
【0047】
〔その他の実施形態〕
物品搬送装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記の実施形態では、第一制振制御が、第一支持部4に支持されている物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの変位が低減する向きに、第二支持部5を走行部11に対して移動させる制御であり、第二制振制御が、ベルト10に作用する張力の変化量が低減する回転方向に、巻回体22を回転させる制御である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第一制振制御として上記実施形態とは異なる制振制御を実行する構成や、第二制振制御として上記実施形態とは異なる制振制御を実行する構成とすることもできる。例えば、第一制振制御として、第一支持部4に支持されている物品3の第二支持部5に対する経路幅方向Xの速度の大きさが低減する向きに、第二支持部5を走行部11に対して移動させる制御を行う構成とすることができる。
【0049】
(2)上記の実施形態では、検出装置40が、経路幅方向Xの特定物理量を検出するセンサとして、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの位置を検出する第一距離センサ41を備えると共に、鉛直方向Zの特定物理量を検出するセンサとして、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの位置を検出する第二距離センサ42を備える構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、検出装置40が、経路幅方向Xの特定物理量を検出するセンサとして、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの速度を検出するセンサ、或いは、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する経路幅方向Xの加速度を検出するセンサを備える構成とすることもできる。同様に、検出装置40が、鉛直方向Zの特定物理量を検出するセンサとして、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの速度を検出するセンサ、或いは、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する鉛直方向Zの加速度を検出するセンサを備える構成とすることもできる。なお、物品3は、基本的に、走行部11の走行に伴い第一支持部4と一体的に移動するため、検出装置40が、第一支持部4に支持されている物品3の走行部11に対する運動を表す物理量(特定物理量)を間接的に検出する構成、具体的には、物品3を支持している第一支持部4の走行部11に対する運動を表す物理量を検出し、検出された当該物理量を特定物理量とみなす構成とすることもできる。
【0050】
(3)上記の実施形態では、制御装置80が、制振制御として、第一制振制御と第二制振制御との双方を実行する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、制御装置80が、第一制振制御及び第二制振制御のうちのいずれか一方の制振制御のみを実行する構成とすることもできる。
【0051】
(4)上記の実施形態では、
図4に示すように、スライド機構18が、第一支持部4に支持された物品3の全体が経路幅方向Xで走行経路の外側に配置されるまで、第二支持部5を走行部11に対して経路幅方向Xに移動させることが可能な構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、スライド機構18による第二支持部5の走行部11に対する経路幅方向Xの移動可能範囲が、第一支持部4に支持された物品3の少なくとも一部が経路幅方向Xで走行経路内に配置される範囲となる構成や、当該移動可能範囲が、第一支持部4に支持された物品3の全体が経路幅方向Xで走行経路内に配置される範囲となる構成とすることもできる。
【0052】
(5)上記の実施形態では、駆動装置26が、経路幅方向X及び鉛直方向Zのそれぞれに、第一支持部4を走行部11に対して移動させることが可能な構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、駆動装置26が、経路幅方向X及び鉛直方向Zのうちのいずれか一方の方向のみに、第一支持部4を走行部11に対して移動させることが可能な構成とすることもできる。
【0053】
(6)上記の実施形態では、本体部12が走行部11に吊り下げ支持される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本体部12が走行部11の上側に位置するように走行部11に支持される構成とすることもできる。
【0054】
(7)上記の実施形態では、物品3が半導体基板等の基板を収容する容器である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、物品3が、工業製品、食品、医薬品等の基板以外の物を収容する容器である構成としても良い。また、物品3が、容器以外の物品であっても良い。
【0055】
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎないと理解されるべきである。従って、当業者は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。